説明

歯科用剤を歯科表面及びポリマー組成物に適用する方法

保持性高分子コーティングを歯科表面に適用する工程と、次いで、保持性高分子コーティングと、歯科用剤を含む装填組成物とを接触させる工程であって、該接触が、経時的放出中前記歯科用剤を保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件下で生じる工程とを含む、歯科用剤を歯科表面に適用する方法。疎水性セグメント、親水性セグメント、四級アミンセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマー;並びに疎水性セグメント、親水性セグメント、ケイ素含有マクロマーセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマーもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、米国特許出願第60/754934号(2005年12月29日出願)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
歯科表面上に歯科用剤(例えば、フッ化物源、増白剤、抗カリエス剤、再石灰化剤)及び/又は保持性コーティングを提供する製品及び方法に対する消費者需要が存在する。歯科用剤の多くは、歯科医及び消費者がともに利用可能であるが、全ての製品が、簡単で安価な器具を用いて便利に投与できる訳ではない。さらに、一部の製品は、所望の結果をもたらすために、十分な期間にわたって繰り返し適用しなければならない。歯科表面上に歯科用剤及び/又は保持性コーティングを提供する新規組成物及び方法が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
歯科表面上に歯科用剤及び/又は保持性コーティングを提供する新規組成物及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、歯科用剤を歯科表面及びポリマー組成物に適用する方法を提供する。具体的には、本発明は、口腔表面のコーティングに好適な組成物及び方法を提供する。かかる組成物を用いて、歯科表面上に保持性高分子コーティングを提供することができる。かかる保持性高分子コーティングは、歯科用剤を含んでよく及び/又は再補給して歯科用剤を含んでよい。
【0005】
ある実施形態では、本発明は、保持性高分子コーティングを歯科表面に適用する工程と、次いで、保持性高分子コーティングと、歯科用剤を含む装填組成物とを接触させる工程であって、該接触が、経時的放出中前記歯科用剤を保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件下で起こる工程とを含む、歯科用剤を歯科表面に適用する方法であって、保持性高分子コーティングが、ブラッシング及び摂食時の標準的な口内条件下で少なくとも12時間残存する方法を提供する。特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、実施例の部分に記載する有色顔料試験方法2に従って2回歯磨きをした後、少なくとも12時間牛歯エナメル質に残存する。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、保持性高分子コーティングを歯科表面に適用する工程と、次いで、保持性高分子コーティングと、歯科用剤を含む装填組成物とを接触させる工程であって、該接触が、経時的放出中前記歯科用剤を保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件下で起こる工程とを含む、歯科用剤を歯科表面に適用する方法であって、前記保持性高分子コーティングが、疎水性セグメント、親水性セグメント、並びに、アルコキシシラン架橋性セグメント、四級アミンセグメント、ケイ素含有マクロマーセグメント、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるセグメントを含む永続的ポリマーを含み、保持性高分子コーティングが、有色顔料試験方法2に従って2回歯磨きをした後、少なくとも12時間牛歯エナメル質に残存する方法を提供する。
【0007】
特定の実施形態では、歯科表面は、歯肉又は歯の表面を含む。特定の実施形態では、歯の表面は、象牙質又はエナメル質を含む。特定の実施形態では、歯の表面は、エナメル質を含む。
【0008】
特定の実施形態では、歯科用剤は、エナメル質を再石灰化することができる。特定の実施形態では、歯科用剤は、リン酸化合物、カルシウム化合物、リン酸カルシウム化合物、ヒドロキシアパタイト、カゼイン塩、リン化合物の表面処理を有する充填剤、リン放出ガラス(phosphorous releasing glass)、カルシウム放出ガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
特定の実施形態では、歯科用剤は、リン酸化合物である。特定の実施形態では、リン酸化合物は、一塩基性リン酸化合物、二塩基性リン酸化合物、三塩基性リン酸化合物、グリセロリン酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
特定の実施形態では、歯科用剤はカゼイン塩である。特定の実施形態では、カゼイン塩は、カルシウム、リン酸、フッ化物又はこれらの組み合わせの塩を含む。
【0011】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングが、初期に、少なくとも一部が経時的に放出される歯科用剤と、同一又は異なる歯科用剤を含む装填組成物とを含む。
【0012】
特定の実施形態では、装填組成物の前記歯科用剤は、フッ化物源、増白剤、抗カリエス剤、再石灰化剤、酵素、口臭清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応修飾物質、薬剤、指示剤、抗菌剤、抗真菌剤、口内乾燥治療剤、減感剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
特定の実施形態では、初期に適用された保持性高分子コーティングの歯科用剤は、フッ化物源、増白剤、抗カリエス剤、再石灰化剤、酵素、口臭清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応修飾物質、薬剤、指示剤、抗菌剤、抗真菌剤、口内乾燥治療剤、減感剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングと歯科用剤を含む装填組成物との接触は、組成物の塗布、組成物のブラッシング、組成物の注入、組成物の噴霧、組成物のぬぐい、組成物の散布、基材からの組成物の適用、組成物の浸漬被覆、又はこれらの組み合わせを含む。
【0015】
特定の実施形態では、装填組成物は、練り歯磨き、洗口液、歯科用発泡体、歯科用樹脂、歯科用ゲル、含嗽剤、歯科用コーティング、又はこれらの組み合わせの形態である。
【0016】
特定の実施形態では、装填組成物は練り歯磨きの形態であり、接触は歯科表面の保持性高分子コーティング上で練り歯磨きをブラッシングすることを含む。
【0017】
特定の実施形態では、経時的放出中歯科用剤を保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件は、保持性高分子コーティングと歯科用剤を少なくとも5秒間接触させることを含む。
【0018】
特定の実施形態では、経時的放出中歯科用剤を保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件は、保持性高分子コーティングと歯科用剤を少なくとも120秒間接触させることを含む。
【0019】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、永続的ポリマーを含む。特定の実施形態では、保持性高分子は水分散性である。
【0020】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティング及び歯科用剤は、歯科用剤が少なくとも24時間にわたって放出されるように選択される。
【0021】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、発泡性歯科用組成物を収容する器具から分配される歯科用発泡体の形態で歯科表面に適用される。特定の実施形態では、歯科用発泡体は、歯科表面上の保持性高分子コーティングに適用される前に、基材に分配される。
【0022】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、重合性成分(例えば、エチレン性不飽和成分)を含むコーティング組成物から形成される。
【0023】
ある実施形態では、本発明はまた、疎水性セグメント、親水性セグメント、四級アミンセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマーを提供する。
【0024】
特定の実施形態では、疎水性セグメントは、ドデシル、イソブチル、オクチル、オクタデシル及びこれらの組み合わせを含む炭化水素部分からなる群から選択される。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、疎水性セグメント、親水性セグメント、ケイ素含有マクロマーセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマーを提供する。
【0026】
定義
本明細書で使用する時、「標準条件」及び「標準的な口内条件」という用語は、飲食、ブラッシング、すすぎ等のような、口腔に関与する正常な唾液分泌及び正常な活性を伴うヒト口腔の範囲内であることを意味する。
【0027】
本明細書で使用する時、「歯科表面」という用語は、歯肉又は天然の歯の表面(例えば、象牙質又はエナメル質)を含む、口内環境の軟組織又は硬組織を意味する。
【0028】
本明細書で使用する時、「発泡性歯科用組成物」という用語は、口腔内での使用に適合し、例えば、エアゾール又は機械的器具を通して、容器から歯科用発泡体へ分配され得る組成物を意味する。
【0029】
本明細書で使用する時、「歯科用発泡体」、「発泡体」、「発泡体材料」、「発泡体組成物」という用語は、全て同じものであり、口腔に適合し、容器から分配された発泡性歯科用組成物から歯科用発泡体が形成された後30秒超過5分以下の期間、気体の細孔を有する歯科用発泡体を指す。歯科用発泡体は、容器から分配された発泡性歯科用組成物から歯科用発泡体が形成された後、好ましくは1分超過、より好ましくは約2分、且つ、好ましくは4分以下の期間気体の細孔を有する。歯科用発泡体は、表面が逆さまに配向された場合、基材(例えば、歯科用トレイ)の表面から垂れる、滴る、又は落ちることのない表面上に形成されることが好ましい。かかる特性は、通常、「自己支持」歯科用発泡体と呼ばれる。
【0030】
本明細書で使用する時、「歯科用剤」という用語は、歯科表面への適用により生じる、例えば、審美的、美容的、予防的、診断的、及び/又は治療的効果の観点から付加価値をつける成分を意味する。
【0031】
本明細書で使用する時、「塗膜形成」という用語は、塗膜形成成分(通常、永続的ポリマーを含む)を歯科表面に適用した場合、その上にコーティングが形成されるような、塗膜形成成分の作用を意味する。
【0032】
本明細書で使用する時、「永続的ポリマー」という用語は、口腔に適合し、塗膜形成成分を歯科表面に適用した場合、保持性高分子コーティングが、口腔内の標準条件下で長期間(少なくとも12時間)表面上に形成され、且つ、付着するような、塗膜形成成分に含まれるポリマーを意味する。
【0033】
本明細書で使用する時、「口腔に適合する」及び「経口に適合する」という用途は、一般に、口腔内での使用に対して非刺激性であると考えられる、組成物、成分、ポリマー、添加剤等を指す。
【0034】
本明細書で使用する時、「導入する」とは、歯科用剤をコーティングに入れることを意味する。これは、生理化学的機構のような様々な機構を通して起こり得る。
【0035】
本明細書で使用する時、「反応性」基は、選択された条件(例えば、フリーラジカルの存在下又は縮合反応条件下)下で、別の反応性基又は別の成分(例えば、架橋剤又は縮合反応部位を有する化合物)と反応し得る基である。例えば、反応性基を含むポリマー内で、反応性基は、別の反応性基及び/又は別の成分と反応して、二量化、オリゴマー化、及び/又は重合反応を通して架橋を形成することができる。
【0036】
本明細書で使用する時、「繰り返し単位」又は「モノマー単位」は、エチレン性不飽和モノマー由来のポリマー内の単位を指す。例えば、ポリプロピレンは、エチレン性不飽和モノマープロピレン、CH2=CH(CH3)由来の、−CH2CH(CH3)−モノマー単位を含む。
【0037】
本明細書で使用する時、「硬化性」とは、「硬化」し得る材料を指す。本明細書で使用する時、「硬化」とは、例えば、架橋、二量化、オリゴマー化及び/又は重合反応を含む工程を含むことを意味する。
【0038】
本明細書で使用する時、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を総称することを意図する略記である。
【0039】
本明細書で使用する時、「a」、「少なくとも1つ」及び「1以上」は互換的に使用される。
【0040】
「含む」という用語及びその活用形は、これらの用語が現れる説明及び請求項を限定する意味を有しない。
【0041】
「好ましい」及び「好ましくは」という語句は、特定の環境下で特定の利益を供し得る発明の実施形態を示す。しかしながら、同様又は他の環境下では、他の実施形態が好まれる可能性もある。さらに、1以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0042】
本発明の上述の発明の開示は、本発明の開示された各実施形態又は全ての実施を記載しようと意図していない。以下の説明は、説明に役立つ実施形態をより詳細に例示する。明細書全体にわたって幾つかの箇所で、実施例の一覧を通して説明を提供するが、実施例は各種組み合わせにて使用することが可能である。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ与えられるのであって、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明は、口腔表面をコーティングするのに好適な組成物及び方法を提供する。かかる組成物を使用して、歯科表面上に保持性高分子コーティングを提供することができる。かかる保持性高分子コーティングは、歯科用剤を含んでよく及び/又は再補給して歯科用剤を含んでよい。
【0044】
特定の実施形態では、本発明は、歯科用剤を歯科表面に適用する方法を提供する。方法は、保持性高分子コーティングを歯科表面に適用する工程と、次いで、保持性高分子コーティングと、歯科用剤を含む装填組成物とを接触させる工程であって、該接触が、経時的放出中歯科用剤を保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件下で起こる工程とを含む。
【0045】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、ブラッシング及び摂食時の標準的な口内条件下で少なくとも12時間歯科表面上に残存する。保持性高分子コーティングは、ブラッシング及び摂食時の標準的な口内条件下で、好ましくは歯科表面上に少なくとも24時間(より好ましくは少なくとも2日、さらにより好ましくは少なくとも7日、さらにより好ましくは少なくとも30日間)歯科表面上に残存する。特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、実施例の部分に記載する有色顔料試験方法2に従って2回歯磨きをした後、少なくとも12時間牛歯エナメル質に残存する。
【0046】
保持性高分子コーティング及び歯科用剤は、歯科用剤が好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも2日、さらにより好ましくは少なくとも7日、さらにより好ましくは少なくとも30日間にわたって放出されるように選択される。
【0047】
特定の実施形態では、歯科用組成物は硬化性(例えば、重合性又は架橋性)であってよい。硬化性組成物は、反応性ポリマー及び/又はポリマーではない重合性成分、及び反応開始剤系(例えば1以上の反応開始剤)を含んでよい。反応性ポリマー及び/又は重合性成分は、フリーラジカルと反応してよい。或いは、反応性ポリマー及び/又は重合性成分は、例えば水分の存在下である場合を含み、縮合反応してよい。縮合反応を促進する好適な触媒を、所望により含んでよい。所望により、縮合反応部位を有する追加化合物を含んで、ポリマー及び/又は重合性成分間の架橋化合物として作用してもよい。
【0048】
永続的ポリマーの使用により、本発明の組成物から形成される保持性コーティングが生じる。永続的ポリマーは、水分散性であってよいが、著しく水溶性ではないことが好ましい。水分散性ではないポリマーについては、純水以外の担体を用いてよい。特定の実施形態では、ポリマー(polymer)は塗膜形成ポリマーである。また、特定の実施形態では、歯科用組成物は担体を含む。好適な担体の例としては、例えば、水、アルコール(例えば、エタノール)、グリセロール、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、ピネン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
特定の実施形態では、永続的ポリマーは、極性又は分極性基を含む繰り返し単位;疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される基を含む繰り返し単位;並びに調節基を含む繰り返し単位を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの基は反応性基を含む。
【0050】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、緩衝剤、酸性化剤、フッ化水素酸、乳化剤、エマルションオイル、乳化安定剤、再石灰化促進剤、粘度調整剤、キソトロープ、充填剤、ポリオール、着香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含むコーティング組成物から形成される。
【0051】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、疎水性セグメント、親水性セグメント、及びケイ素含有マクロマーセグメントを含む永続的ポリマーを含む。特定の実施形態では、永続的ポリマーは、四級アミンセグメントをさらに含む。特定の実施形態では、永続的ポリマーは、アルコキシシラン架橋性セグメントをさらに含む。
【0052】
特定の実施形態では、保持性高分子コーティングは、疎水性セグメント、親水性セグメント、及び四級アミンセグメントを含む永続的ポリマーを含む。特定の実施形態では、永続的ポリマーは、アルコキシシラン架橋性セグメントをさらに含む。
【0053】
ある実施形態では、本発明はまた、疎水性セグメント、親水性セグメント、四級アミンセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマーを提供する。特定の実施形態では、ポリマーは、ケイ素含有マクロマーセグメントをさらに含む。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、疎水性セグメント、親水性セグメント、ケイ素含有マクロマーセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマーを提供する。
【0055】
特定の実施形態では、疎水性セグメントは、ドデシル、イソブチル、オクチル、オクタデシル及びこれらの組み合わせを含む炭化水素部分からなる群から選択される。特定の実施形態では、疎水性セグメントは、少なくとも100の重量平均分子量を有する疎水性モノマー由来である。特定の実施形態では、疎水性モノマーは最大500,000の重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、疎水性セグメントは、フッ素含有セグメントである。
【0056】
特定の実施形態では、親水性セグメントは、カルボン酸類、低級アルキル(例えば、メチル、エチル及びプロピル)エステル類、ヒドロキシアルキルステル類、アルコキシアルキルエステル類、アミノアルキルエステル類、アルキルアミノアルキルエステル類、ジアルキルアミノアルキルエステル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリプロピレングリコールエステル類、対イオンがハロゲン化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩(palnitate)、ステアリン酸塩又はこれらの組み合わせであってよいトリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
特定の実施形態では、四級アミンセグメントは、テトラフルオロホウ酸トリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、フルオロリン酸トリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、ハロゲン化トリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0058】
特定の実施形態では、アルコキシシラン架橋性セグメントは、(トリアルコキシシリル)アルキルである。
【0059】
特定の実施形態では、ケイ素含有マクロマーセグメントは、少なくとも500の分子量を有するポリシロキサン鎖である。
【0060】
本発明の歯科用組成物は、適切な成分の組み合わせによる単一成分液体(single-part liquid)、泡、ペースト又はゲルとして調製してよい。例えば、ポリマー(通常永続的ポリマー)及び歯科用剤は、所望の温度(例えば室温)で混合してよい。或いは、本発明の組成物は、歯科表面への供給に先立ち混合された、液体、泡、ペースト、ゲル又はこれらの組み合わせを含む多成分系として調製してよい。かかる多成分系は、例えば、二成分酸化還元化学に基づく反応開始剤系、及び組成物中の他の物質と不適合である添加剤(例えば反応開始剤又は触媒)を含む組成物を含む、単一成分組成物には存在しない場合のある貯蔵安定性を提供しうる。
【0061】
組成物が架橋性セグメントを有するポリマーを含む場合、通常、組成物は触媒(例えば、オクタン酸第一スズ)とともにユーザに提供される。歯科用組成物の歯科表面への適用後、触媒を適用して歯科表面上のポリマーを架橋する。
【0062】
歯科用剤
一部の実施形態では、本発明の組成物は、歯科用剤(例えば、口内環境での使用に好適な歯科用組成物のための歯科用添加剤)を含む、又は所望により含んでよい。歯科用剤の例としては、例えば、フッ化物源、増白剤、抗カリエス剤(例えばキシリトール)、再石灰化剤、酵素、口臭清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応修飾物質、薬剤、指示剤(例えば染料、顔料)、湿潤剤、抗菌剤、抗真菌剤、安定剤、口内乾燥治療剤、減感剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。歯科用剤は、口内環境での使用に好適であることが好ましい。
【0063】
一部の実施形態では、永続的ポリマーは、歯科用剤として作用し得る。例えば、ポリマーが、抗菌性四級アミンセグメント、再石灰化カルシウム含有セグメント、フッ化物放出セグメント、又はこれらの組み合わせを含む場合、ポリマー自体が歯科用剤を供給する。
【0064】
本発明で用いる有用なフッ化物源は、口腔内に又は歯科表面上にフッ化物イオンを放出する作用を有する任意の物質であってよい。通常、有用なフッ化物源は、象牙質細管の閉塞及びエナメル質の再石灰化により歯を知覚鈍麻する作用を有する。有用なフッ化物源としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、モノアンモニウム(monammonium)1,1,7−トリヒドロペルフルオロヘプチルリン酸塩のようなフルオロアルキルリン酸塩類、ドデシルトリメチル−フッ化アンモニウムのような四級フッ化アンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。他のフッ化物源は、例えば、米国特許第5,071,637号(ペリカーノ(Pellicano))に開示されている。
【0065】
特定の実施形態では、本明細書で開示する永続的ポリマーはまた、フッ化物放出基を含む繰り返し単位を含む。好ましいフッ化物放出基としては、例えば米国特許第4,871,786号(オーセン(Aasen)ら)に開示されているようなテトラフルオロホウ酸陰イオンが挙げられる。好ましいフッ化物放出基の繰り返し単位としては、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートが挙げられる。
【0066】
さらに、好適なフッ化物イオンの前駆体としては、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、フルオロリン酸ナトリウム、二フッ化水素アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸及びその塩類、モノフルオロリン酸及びその塩類、ヘキサフルオロリン酸及びその塩類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
本発明で用いる有用な再石灰化剤は、エナメル質を再石灰化することができる任意の物質であってよい。有用な再石灰化剤としては、例えば、リン酸化合物、カルシウム化合物、リン酸カルシウム化合物、ヒドロキシアパタイト、カゼイン塩、リン化合物の表面処理を有する充填剤、リン放出ガラス、カルシウム放出ガラス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、歯科用剤はリン酸化合物である。特定の実施形態では、リン酸化合物は、一塩基性リン酸化合物、二塩基性リン酸化合物、三塩基性リン酸化合物、グリセロリン酸カルシウム、又はこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、歯科用剤はカゼイン塩である。特定の実施形態では、カゼイン塩は、カルシウム、リン酸、フッ化物、又はこれらの組み合わせの塩である。様々な再石灰化剤が、米国特許第6,497,858号(高塚ら)並びに米国特許出願公開第10/989,779号、同第10/989,779号、同第10/989780号、及び同第60/628,336号(各々2004年11月16日出願)に開示されている。
【0068】
本発明で用いる有用な増白剤は、歯を白くする効果を有する任意の物質であってよい。有用な増白剤としては、例えば、次亜塩素酸塩類(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)、過酸化物類、ヒドロペルオキシド類、過酸化水素、過酸類(ペルオキシ酸としても知られる)、過酸化カルバミド(即ち、過酸化水素、CO(NH2222(過酸化尿素としても知られる)、過酸化水素カルバミド、又はペルヒドロ尿素の尿素錯体)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
有用な口臭清涼剤としては、塩化亜鉛が挙げられる。
【0070】
有用な抗菌剤としては、虫歯、歯周炎及び口臭に関連する細菌の増殖を制御する剤が挙げられる。かかる剤としては、例えば、クロルヘキシジン(chlorohexidine)、所望により酸性成分と併用される脂肪酸のグリセロールエステル類、所望により酸性成分と併用される脂肪酸のプロピレングリコールエステル類、及び四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0071】
組成物中の歯科用剤の濃度は、その活性に応じて変化してよい。本発明の組成物は、特定の用途に望ましい量の歯科用剤を含むことが望ましいように調節してよい。歯科用組成物は、組成物の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、最も好ましくは少なくとも0.5重量%の歯科用剤を含む。歯科用組成物は、組成物の総重量を基準として、好ましくは最大50重量%、より好ましくは最大45重量%、最も好ましくは最大40重量%の歯科用剤を含む。
【0072】
永続的ポリマー
本出願の組成物(例えば、発泡性歯科用組成物及び保持性高分子コーティングを歯科表面に適用するための他の組成物)に用いるポリマー(例えば、永続的ポリマー)は、以下に記載するような極性又は分極性基を含む繰り返し単位を含む。特定の実施形態では、ポリマーはまた、以下に記載するような、フッ化物放出基を含む繰り返し単位、疎水性炭化水素基を含む繰り返し単位、グラフトポリシロキサン鎖を含む繰り返し単位、疎水性フッ素含有基を含む繰り返し単位、調節基を含む繰り返し単位、又はこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、ポリマーは所望により反応性基を含む。好適な反応性基(例えば、エチレン性不飽和基、エポキシ基、又は縮合反応することができるシラン部分)は、例えば、米国特許第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0073】
ある実施形態では、歯科用組成物は、極性又は分極性基を含む繰り返し単位;及びフッ化物放出基(例えば、テトラフルオロホウ酸陰イオン)を含む繰り返し単位を含むポリマーを含む。極性又は分極性基を含む繰り返し単位は、フッ化物放出基を含む繰り返し単位と異なることが好ましい。
【0074】
別の実施形態では、組成物は、極性又は分極性基を含む繰り返し単位;及び疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される基を含む繰り返し単位を含むポリマーを含む。好ましくは、疎水性炭化水素基は160を超える分子量を有する。好ましくは、グラフトポリシロキサン鎖は、少なくとも500の分子量を有する。極性又は分極性基を含む繰り返し単位は、疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される基を含む繰り返し単位と異なることが好ましい。
【0075】
所望により、ポリマーは反応性基を含む。
【0076】
列挙したポリマーを調製する代表的な方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されたようなフリーラジカル重合条件を含む。
【0077】
本発明の歯科用組成物は、組成物の総重量を基準として、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも37重量%のポリマーを含む。本発明の歯科用組成物は、組成物の総重量を基準として、好ましくは最大99.95重量%、より好ましくは最大99.9重量%、最も好ましくは最大99.5%のポリマーを含む。
【0078】
極性又は分極性基
極性又は分極性基を含む繰り返し単位は、通常親水基であり、アクリレート類、メタクリレート類、クロトネート類、イタコネート類等のようなビニルモノマー由来である。極性基は、酸性、塩基性又は塩であってよい。これらの基はまた、イオン性又は中性であってもよい。
【0079】
極性又は分極性(例えば親水性)基の例としては、ヒドロキシ、チオ、置換及び非置換アミドのような中性基、環状エーテル類(オキサン類、オキセタン類、フラン類及びピラン類のような)、塩基性基(ホスフィン類及び、一級、二級、三級アミン類を含むアミン類のような)、酸性基(酸素酸類及び、C、S、P、Bのチオ酸素酸類(thiooxyacids)のような)、イオン性基(四級アンモニウム、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のような)、並びにこれらの基の前駆体及び保護形態が挙げられる。さらに、極性又は分極性基は、マクロモノマーであってよい。かかる基のより詳細な例を以下に示す。
【0080】
極性又は分極性基は、以下の一般式によって表される分子を含有するモノ−又は多官能カルボキシル基由来であってよい。
CH2=CR2G−(COOH)d
式中、R2は、H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシ又はカルボキシメチルであり、dは1〜5であり、並びにGは、化学結合又はd+1価、炭素数1〜12の、所望により置換又は非置換ヘテロ原子(O,S,N及びP)で置換され及び/若しくは干渉されたヒドロカルビルラジカル連結基である。所望により、この単位は塩の形態で提供されてよい。この部類の好ましいモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びN−アクリロイルグリシンである。
【0081】
極性又は分極性基は、例えば、以下の一般式によって表される分子を含有するモノ−又は多官能キドロキシ基由来であってよい。
CH2=CR2−CO−L−R3−(OH)d
式中、R2は、H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシ又はカルボキシアルキルであり、LはO、NHであり、dは1〜5であり、及びR3は、炭素数1〜12でd+1価のヒドロカルビルラジカルである。この部類の好適なモノマーは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシメチル)エタンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドである。
【0082】
極性又は分極性基は、或いは、以下の一般式によって表される分子を含有するモノ−又は多官能アミノ基由来であってよい。
CH2=CR2−CO−L−R3−(NR45d
式中、R2、L、R3、及びdは、上記で定義した通りであり、R4及びR5は、H若しくは炭素数1〜12のアルキル基である、又はそれらはともに炭素環式若しくは複素環式を構成する。この部類の好適なモノマーは、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及び4−メチル−1−アクリロイル−ピペラジンである。
【0083】
極性又は分極性基はまた、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのようなアルコキシ置換(メタ)アクリレート類又は(メタ)アクリルアミド類由来であってもよい。
【0084】
極性又は分極性基単位は、以下の一般式によって表される置換又は非置換アンモニウムモノマー由来であってよい。
【化1】

式中、R2、R3、R4、R5、L及びdは上記で定義した通りであり、R6は、H又は炭素数1〜12のアルキルであり、Q-は、有機又は無機陽イオンである。かかるモノマーの好適な例としては、2−N,N,N−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート、2−N,N,N−トリエチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート、3−N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、N(2−N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム)プロピル(メタ)アクリルアミド、又はこれらの組み合わせが挙げられ、ここで対イオンとしては、フッ化物、塩化物、臭化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、又はこれらの組み合わせが挙げられる。モノマーはまた、有機又は無機対イオンのN,N−ジメチルジアリルアンモニウム塩であってもよい。
【0085】
ポリマーを含有するアンモニウム基はまた、極性又は分極性基、上記モノマーを含有する任意のアミノ基を用い、得られたポリマーを有機又は無機酸でペンダントアミノ基が実質的にプロトン化するpHまで酸性化することにより、調製してもよい。全体的にポリマーを含有する置換アンモニウム基は、上記アミノポリマーをアルキル化基でアルキル化することにより調製してよく、該方法はメンシュトキン(Menschutkin)反応として当該技術分野において周知である。
【0086】
極性又は分極性基はまた、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸等のような、モノマーを含有するスルホン酸基由来であってもよい。或いは、極性又は分極性基は、亜リン酸又はホウ素酸基含有モノマー由来であってよい。これらのモノマーは、モノマーのようなプロトン化酸形態で用いてよく、得られる対応するポリマーは有機又は無機塩基で中性化してポリマーの塩形態を得てもよい。
【0087】
代表的な極性又は分極性基は、例えば、米国特許第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0088】
極性又は分極性基の好ましい繰り返し単位としては、アクリル酸、イタコン酸、N−イソプロピルアクリルアミド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
フッ化物放出基
好適なフッ化物放出基としては、例えば、米国特許第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されているようなフッ化物塩類が挙げられる。好ましいフッ化物放出基としては、例えば、米国特許第4,871,786号(オーセン(Aasen)ら)に開示されているようなテトラフルオロホウ酸陰イオンが挙げられる。フッ化物放出基の好ましい繰り返し単位としては、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートが挙げられる。
【0090】
疎水性炭化水素基
代表的な疎水性炭化水素基は、160を超える重量平均分子量を有するエチレン性不飽和予備形成炭化水素部分由来である。好ましくは、炭化水素部分は、少なくとも160の分子量を有する。炭化水素部分は、好ましくは最大100,000、より好ましくは最大20,000の分子量を有する。炭化水素部分は、事実上芳香族又は非芳香族であってよく、所望により部分的に又は完全に飽和した環を含有してよい。好ましい疎水性炭化水素部分は、ドデシル、イソブチル、オクチル及びオクタデシルアクリレート類及びメタクリレート類である。他の好ましい疎水性炭化水素部分としては、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びメチルメタクリレートのような重合性炭化水素から調製される所望の分子量のマクロモノマーが挙げられる。
【0091】
代表的な疎水性炭化水素基は、例えば、米国特許第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0092】
疎水性フッ素含有基
代表的な疎水性フッ素含有基の繰り返し単位としては、1,1−ジヒドロペルフルオロアルカノール類及び同族体のアクリル又はメタクリル酸エステル類:CF3(CF2xCH2OH及びCF3(CF2x(CH2yOH(式中、xは0〜20であり、yは少なくとも1から10までである);ω−ヒドロフルオロアルカノール類(HCF2(CF2x(CH2yOH)(式中、xは0〜20であり、yは少なくとも1から10までである);フルオロアルキルスルホンアミドアルコール類;環状フルオロアルキルアルコール類;及びCF3(CF2CF2O)q(CF2O)x(CH2yOH(式中、qは2〜20且つxより大きく、xは0〜20であり、yは少なくとも1から10までである)が挙げられる。
【0093】
好ましい疎水性フッ素含有基の繰り返し単位としては、2−(メチル(ノナフルオロブチル)スルホニル)アミノ)エチルアクリレート、2−(メチル(ノナフルオロブチル)スルホニル)アミノ)エチルメタクリレート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
代表的な疎水性フッ素含有基は、例えば、米国特許第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0095】
グラフトポリシロキサン鎖
グラフトポリシロキサン鎖は、エチレン性不飽和予備形成オルガノシロキサン鎖由来である。この単位の分子量は、一般に、少なくとも500である。好ましいグラフトポリシロキサン鎖の繰り返し単位としては、シリコーンマクロマーが挙げられる。
【0096】
本発明のグラフトポリシロキサン鎖を提供するのに用いるモノマーは、単一官能基(ビニル、エチレン性不飽和、アクリロイル又はメタクリロイル基)を有する末端官能性ポリマーであり、時にマクロモノマー又は「マクロマー」と呼ばれる。かかるモノマーは既知であり、例えば米国特許第3,786,116号(ミクロビッチ(Milkovich)ら)及び同第3,842,059号((ミクロビッチ(Milkovich)ら)に開示されているような方法で調製してよい。ポリジメチルシロキサンマクロモノマーの調製及び続くビニルモノマーとの共重合は、Y.ヤマシタらによる幾つかの論文に記載されている[ポリマージャーナル(Polymer J.)第14巻913頁(1982年);ACSポリマー予稿集(ACS Polymer Preprints)第25巻1号245頁(1984年);高分子化学(Makromol.Chem.)第185巻9頁(1984年)]。
【0097】
代表的なポリシロキサン鎖は、例えば、米国特許第5,468,477号(クマー(Kumar)ら)、同第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,725,882号(クマー(Kumar)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0098】
調節基
代表的な調節基は、アクリレート又はメタクリレート又は他のビニル重合性出発モノマー由来であり、所望により、ガラス転移温度、単体媒質への溶解度、親水性−疎水性バランス等のような特性を調節する官能基を含有する。
【0099】
調節基の例としては、炭素数1〜12の、直鎖、分岐、又は環状アルコールの低級〜中級メタクリル酸エステル類が挙げられる。調節基の他の例としては、スチレン、ビニルエステル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロイルモノマー等が挙げられる。
【0100】
さらなる代表的な調節基は、例えば、米国特許第5,607,663号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号(ミトラ(Mitra)ら)、及び同第6,312,668号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0101】
反応開始剤系
本発明の歯科用組成物は、所望により、組成物を硬化させる(例えば、重合する又は架橋する)ことができる反応開始剤又は触媒を含む。例えば、可視及び/又は近赤外光開始剤系を用いて、フリーラジカル重合性成分を含む組成物の光重合を開始させてよい。例えば、モノマーを、増感剤、電子供与体及び、例えば米国特許第5,545,676号(パラゾット(Palazzotto)ら)に開示されているようなヨードニウム塩を含む三成分又は第三光開始剤系と併用してよい。或いは、組成物は、増感剤(例えばカンファーキノン)及び電子供与体(例えば、米国特許第4,071,424号(ダート(Dart)ら)に開示されているような二級又は三級アルキルアミン化合物)を含む二成分反応開始剤系を含んでよい。
【0102】
有用な光開始剤の別の部類としては、欧州特許公開第173,567号(イン(Ying))に開示されているようなアシルホスフィンオキシド類が挙げられる。かかるアシルホスフィンオキシド類は、一般式(R)2P(=O)C(=O)−R1[式中、各Rは独立してヒドロカルビル基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール及びアラルキル)であってよく、これはハロ−、アルキル−、若しくはアルコキシ基で置換されてよく、又は2つのR基は結合してリン原子とともに環を形成してよく、R1は、ヒドロカルビル基、S−、O−、若しくはN−含有五若しくは六員複素環基、又は−Z−C(=O)−P(=O)−(R)2基(式中Zは炭素数2〜6の二価ヒドロカルビル基(例えば、アルキレン又はフェニレン)を表す)である]のものである。
【0103】
本発明で有用な好ましいアシルホスフィンオキシド類は、R及びR1基がフェニル又は低級アルキル又は低級アルコキシ置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」とは、炭素数1〜4のかかる基を意味する。最も好ましくは、アシルホスフィンオキシドは、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))から商品名イルガキュア(IRGACURE)819として入手可能なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである。
【0104】
多成分系中でフリーラジカル重合を誘起するための酸化剤及び還元剤を含む酸化還元触媒の使用はまた、硬化したゲルを作製するのに有用である。重合反応を開始させる好ましい方法は、酸化還元触媒系として酸化剤及び還元剤を使用する。所望により、マイクロカプセル化還元及び/又は酸化剤を含む様々な酸化還元系は、米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)ら)に開示されている。
【0105】
好ましくは、酸化剤は還元剤と反応又は別の方法で協同してフリーラジカルを生成させる。フリーラジカルは、エチレン性不飽和部分の重合を開始させることができる。酸化及び還元剤は、好ましくは、十分可溶性であり、米国特許第6,136,885号(ルーシン(Rusin)ら)に開示されているような、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量存在する。
【0106】
酸化剤の好ましい部類としては、過硫酸塩類(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びアルキル過硫酸アンモニウム)が挙げられる。酸化剤の別の好ましい部類としては、過酸化物類又は過酸化物塩類(例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、並びに、例えばクメンヒドロペルオキシド、第三ブチルヒドロペルオキシド、第三アミルヒドロペルオキシド及び2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサンを含むヒドロペルオキシド類)が挙げられる。他の好ましい酸化剤としては、コバルト(III)及び鉄(III)の塩類、過ホウ酸及びその塩類、並びに過マンガン酸陰イオンの塩類が挙げられる。上述の酸化剤の任意の組み合わせを用いてもよい。
【0107】
好ましい還元剤としては、例えば、アミン類(例えば、芳香族アミン類)、アスコルビン酸、金属錯体アスコルビン酸、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫化第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、シュウ酸、チオ尿素、及びジチオン酸の塩類、チオ硫酸、スルフィン酸ベンゼン、又はスルフィン酸陰イオンが挙げられる。
【0108】
反応開始剤が本発明の組成物に含まれる場合、組成物は、組成物の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の反応開始剤を含む。反応開始剤が本発明の組成物に含まれる場合、組成物は、組成物の総重量を基準として、好ましくは最大10重量%、より好ましくは最大5重量%の反応開始剤を含む。
【0109】
発泡性歯科用組成物及び発泡体
本発明の特定の実施形態では、組成物は、発泡性歯科用組成物の形態である。かかる発泡性歯科用組成物としては、例えば、1以上の発泡剤及び/又は1以上の噴射剤を含んでよい。
【0110】
好適な噴射剤としては、例えば、気体が挙げられる。好適な気体としては、例えば、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、亜酸化窒素、炭化水素(例えば、プロパン、n−ブタン、イソブテン、混合プロパン及びブタン)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0111】
本発明の発泡性歯科用組成物中の噴射剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%である。本発明の発泡性歯科用組成物中の発泡剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
【0112】
好適な発泡剤としては、例えば、界面活性剤、表面修飾ナノ粒子、気泡安定剤、泡壁増粘剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
好適な界面活性剤としては、例えば、イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適な界面活性剤はまた、重合性界面活性剤であってもよい。好適な界面活性剤の例は、例えば、米国特許第6,361,761号(ジョジアック(Joziak)ら)、同第5,071,637号(ペリカーノ(Pellicano))及び同第5,824,289号(ストルツ(Stoltz))に開示されている。好適な界面活性剤としては、トマー・リザーブ社(Tomah Reserve Inc.)(ルイジアナ州リザーブ(Reserve))から入手可能なトマドール(TOMADOL)45−13、及びベーカー・ペトロライト社(Baker Petrolite Corp.)(オクラホマ州タルサ(Tulsa))から入手可能なユニソックス(UNITHOX)720が挙げられる。
【0114】
一部の実施形態では、永続的ポリマーは、例えば、ポリマーが、四級アミンセグメントのような両性セグメントを含む場合、又は疎水性及び親水性セグメントの組み合わせを含む場合、界面活性剤として作用し得る。
【0115】
本発明の発泡性組成物中の界面活性剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、さらにより好ましくは少なくとも3重量%である。本発明の発泡性組成物中の界面活性剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらにより好ましくは20重量%以下である。
【0116】
好適な表面修飾ナノ粒子は、100nm未満の平均粒径を有する。かかる表面修飾ナノ粒子の例は、例えば、米国特許第6,586,483号(コルブ(Kolb))に開示されている。
【0117】
好適な気泡安定剤としては、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸ナトリウム、ココアミドジエタノールアミン、ラウラミドジエタノールアミン、プロピレングリコール14−ブチルエーテル、又はこれらの混合物が挙げられる。本発明の発泡性組成物中の気泡安定剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、さらにより好ましくは少なくとも3重量%である。本発明の発泡性組成物中の気泡安定剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらにより好ましくは20重量%以下である。
【0118】
好適な泡壁増粘剤としては、例えば、グリセロール、ソルビトール、水素添加デンプン加水分解物、2−オクタデカノール、又はこれらの混合物が挙げられる。市販されている泡壁増粘剤は、商品名ハイスターTPF(HYSTAR TPF)(ニュージャージー州、フェアローン(Fair Lawn)のロンザ社(Lonza, Inc.)、トマドール(TOMADOL)45−13(トマー・リザーブ社(Tomah Reserve Inc.))、及びユニソックス(UNITHOX)72(ベーカー・ペトロライト社(Baker Petrolite Corp.))として入手可能である。本発明の発泡性組成物中の泡壁増粘剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、さらにより好ましくは少なくとも3重量%である。本発明の発泡性組成物中の泡壁増粘剤の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらにより好ましくは20重量%以下である。噴射剤、発泡剤、エアゾール又は非エアゾール容器、ノズル等についてのさらなる情報を含む、発泡性組成物の様々な他の成分、並びに発泡性組成物及び発泡体を作製する方法は、例えば、米国特許第6,142,338号(ペリカーノ(Pellicano))米国特許第5,071,637号(ペリカーノ(Pellicano))及び同第5,824,289号(ストルツ(Stoltz))に開示されている。
【0119】
他の任意添加剤
本発明の組成物はまた、添加剤(発泡性組成物を調製するための上記添加剤以外)を含んでよい。好適な添加剤としては、例えば、緩衝剤、酸性化剤、フッ化水素酸、乳化剤、エマルションオイル、乳化安定剤、再石灰化促進剤、粘度調整剤、チキソトロープ(thixotropes)、充填剤、ポリオール、着香料、(例えば、甘味剤)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0120】
所望の効果のためのかかる添加剤の選択及び量は、当業者に周知である。
【0121】
方法
本発明の方法は、ヒト及び動物組織を含む、軟組織及び硬組織を含む歯科表面の処理を提供する。硬組織としては、例えば、骨、歯、及び歯の構成要素(例えば、エナメル質、象牙質、及びセメント質)が挙げられる。軟組織としては、例えば、粘膜(例えば、舌、歯肉、及び咽喉)が挙げられる。一部の実施形態では、歯科表面は口腔内の硬化した修復材表面を含む。
【0122】
本発明の歯科用組成物は、必要に応じて任意の方法により所望の部位へ供給されてよい。例えば、組成物は、容器又はディスペンサから直接歯科表面上に供給されてよい。好適な容器又はディスペンサとしては、例えば、瓶、バイアル瓶、注射器及びチューブが挙げられる。針の先端からバルク液体として、又はエアゾールから細かい霧として組成物を供給する能力は、多くの用途に適用できる。或いは、組成物は、組織上に組成物を塗布する又は被覆するために、ブラシ、スポンジ、塗布器、又は綿棒を使用することにより供給してよい。一部の用途では、組成物を広い領域に適用することが望ましい場合がある。これらの特定の用途では、組成物は、スプレー又はエアゾールディスペンサを介して、又は単に組成物で組織領域(例えば、口腔)全体をすすぐことにより、供給されてよい。
【0123】
或いは、組成物を基材に適用してよく、その上に(又は歯科用トレイの場合はその中に)組成物を有する該基材を所望の表面に適用してよい。好適な基材としては、例えば、高分子フィルム、紙、及び織布及び不織布シートが挙げられる。好適な基材は、トレイ型ディスペンサ、例えば、歯科用トレイである。歯科用トレイを用いる方法は既知であり、例えば、米国特許第6,361,761号(ジョジアック(Joziak)ら)、同第5,071,637号(ペリカーノ(Pellicano))及び同第5,824,289号(ストルツ(Stoltz))に記載されている。組成物はまた、所望の表面に先立ち、ブラシ、スパチュラ、医療用/歯科用器具、又は塗布器に適用してもよい。
【0124】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、例えば、塗布、ブラッシング、注入、噴霧、散布、ぬぐい、基材(例えば、歯科用トレイ)からの歯科用組成物の適用、浸漬被覆、又はこれらの組み合わせを含む方法により歯科表面に適用される。
【0125】
通常及び好ましくは、装填組成物は、歯科用剤を含む(且つ、本発明に記載するような永続的ポリマーを含まない)従来の組成物である。特定の実施形態では、装填組成物は、練り歯磨き、洗口液、歯科用発泡体、歯科用樹脂、歯科用ゲル、含嗽剤、歯科用コーティング、又はこれらの組み合わせの形態である。装填組成物が練り歯磨きの形態である場合、歯科用剤の適用は、歯科表面の保持性高分子コーティング上で練り歯磨きをブラッシングすることを含む。
【0126】
本発明の歯科用組成物が2以上の成分を含む場合、2以上の成分を適用過程直前又は適用過程中に混合することが好ましい。好適な混合装置としては、例えば、静的混合装置が挙げられる。
【0127】
組成物は、所望の効果を提供するのに十分な期間、歯科表面の表面上に静置できることが好ましい。静置時間は、使用する具体的な組成物、歯科表面の種類、使用目的、及び手順を実行するために使用可能な時間に応じて変化する。多くの用途において、組成物は、長期間歯科表面上に残存することができる。
【0128】
通常、経時的放出中保持性高分子コーティングに歯科用剤を導入するのに有効な条件は、保持性高分子コーティングを歯科用剤と少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも30秒間、より好ましくは少なくとも60秒間、さらにより好ましくは少なくとも120秒間接触させることを含む。
【0129】
組成物が発泡性歯科用組成物の形態である場合の実施形態では、方法は、歯科表面を歯科用発泡体に好ましくは5分未満、より好ましくは1分未満、さらにより好ましくは15秒未満浸漬被覆することを含む。他の好ましい方法は、歯科表面を歯科用発泡体に少なくとも1秒、より好ましくは少なくとも5秒間浸漬被覆することを含む。他の好ましい方法としては、発泡性歯科用組成物の適用直後、歯科表面をすすぐことが挙げられる。
【0130】
組成物が架橋性セグメントを含む場合、通常、組成物は触媒(例えば、オクタン酸第一スズ)とともにユーザに提供される。発泡体を介して二成分系を歯に適用する方法として少なくとも2つの可能性が存在する。1つの方法は、成分をノズルから押し出す際、成分Aが成分Bと混合することを可能にする発泡体ディスペンサを用いることを含む。2番目の方法では、歯科用組成物を歯科表面に適用した後、触媒を適用し、歯科表面上でポリマーを架橋する。
【0131】
通常、特定の実施形態では、ポリマーは「非重合性」であり、且つ、硬化し、単にコーティング、浸漬等により歯に付着する。本発明の一部の実施形態ではあるが、組成物は、例えば、反応性ポリマーの反応を誘起することにより、硬化(例えば、重合又は架橋)してよい。歯科用組成物が、反応性ポリマーとは異なる任意の重合性成分を含む場合、組成物の硬化はまた重合性成分の重合を含んでもよい。例えば、反応性ポリマー又は重合性成分がエチレン性不飽和基を含む場合、重合は、化学線の適用により誘起されてよい。組成物は、好ましくは400〜1200nmの波長、より好ましくは可視光を有する放射線を照射される。可視光線源としては、例えば、太陽、レーザー、金属蒸気(例えば、ナトリウム及び水銀)ランプ、白熱電灯、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光室内灯、懐中電灯、発光ダイオード、タングステンハロゲンランプ、及びキセノン閃光電球が挙げられる。
【0132】
或いは、反応性ポリマー又は重合性成分がエチレン性不飽和基を含む、本発明の実施形態では、組成物は2以上の成分を含み、そのうちある成分は酸化剤を含み、別の成分は還元剤を含んでよい。
【0133】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。指示がない限り、全ての部及びパーセントは重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【実施例】
【0134】
試験方法
有色顔料試験方法1
一連の試験試料(その一部は永続的ポリマーを含有する)に、0.014重量%の赤色顔料(D&Cレッド30タルクレークセンシェント、コード:K7094、センシェント・テクノロジーズ社(Sensient Technologies)、ミズーリ州セントルイス(St. Louis))を添加した。次いで、以下の手順を用いることにより、得られた染料含有試料の、歯への保持を評価した。
【0135】
抽出した牛歯を、水で満たされた保管容器から取り出し、紙タオルで軽くたたいた。次いで、個別に異なる試験試料を各歯に塗り、1分後、コーティングされた歯を37℃に維持された水槽に浸漬し、持続的に攪拌した。特定の時間間隔で、強度の具体的な変化及び歯上の赤色の持続性について、歯を視覚的に観察した。赤色のポリマーコーティングが歯上に残存した期間を「保持時間」として報告した。試験期間の最後に、コーティングされた歯を水槽から取り出し、静かに調査し、歯のコーティングの一体性を測定した。
【0136】
有色顔料試験方法2
赤色顔料を、試験試料(その一部は永続的ポリマーを含有する)に添加し、得られた染料含有試験試料を、有色顔料試験方法1で記載したように牛歯に塗布した。しかしながら、この試験方法では、歯を37℃の水槽から取り出し、約16分後、特別に設計された歯ブラシ磨耗試験機(MDRCBBミネソタ歯科大学(University of Minnesota Dental School)、ミネソタ州、ミネアポリス(Minneapolis))を用いて磨いた。試験機により、コーティングされた牛歯の表面を26周期通りすぎる歯ブラシに、約200gの特定力を適用した。1周期は、約1秒間の試験機のブラッシング1往復運動に相当し、ブラッシング間には1秒の余裕がある。26周期に約1分かかり、個人による通常の歯磨き(朝夕の歯磨き)のおよそ1日(約12時間)分に一致すると推定された。ブラッシング中、歯及びブラシをクレスト(CREST)練り歯磨きの50重量%水スラリーで取り囲んだ。
【0137】
26周期(「1等価試験日」又は「1試験日」にあたる)後、2人の観察者により歯を視覚的に観察し、各観察者が、歯の表面に残存する着色したコーティングの量を、表面全体の百分率として評価した。この評価を、歯上に残存するコーティングの平均%として報告した。次いで、この工程を、研究に応じて複数「試験日」継続した。
【0138】
有色顔料試験方法3
有色顔料試験方法3は、歯ブラシ磨耗試験機の代わりに手による歯磨きを用い、試験機の26周期を擬し、再び歯磨きの通常の1日を表すことを試みたことを除き、基本的に有色顔料試験方法2と同様に実施した。有色顔料試験方法2と同様の方法で試験結果を得、報告した。
【0139】
フッ化物放出試験方法
試験試料からのフッ化物イオン放出速度を、以下の手順で測定した。顕微鏡用スライドグラスの縁部から約1cmの位置に、フィルテック(FILTEK)Z250ユニバーサル修復材(Universal restorative)(ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社)をコーティングすることにより、歯科用基材表面を調製し、次いでメーカーの取扱説明書に従って、修復材コーティングを光硬化した。次いで、硬化した修復材表面に試験試料を塗った。スライドグラス上の試験試料の総重量を測定するために、試験試料のコーティング前後のスライドグラスを計量した。試験試料を修復材表面に塗布した1分後、処理されたスライドグラスを、25mLの蒸留水で満たした容器内に定置し、得られたアセンブリを研究の継続時間中37℃のオーブン内に定置した。特定の時間間隔で水を補給し、メーカーの取扱説明書及び標準的な方法論に従って、コール・パーマー(Cole Parmer)フッ化物イオン特殊電極(コール−パーマー・インスツルメント社(Cole-Parmer Instrument Company)イリノイ州バーノンヒルズ(Vernon Hills))を用いて蒸留水中のフッ化物イオン活性を測定した。最終結果を、試験試料1g当たりのフッ化物のμg又はmgとして報告した。
【表A】

【表B】

【0140】
出発物質の調製
出発物質1(SM−1)
リン酸化ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA−PA)の合成
機械的攪拌器、コンデンサ、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた1Lフラスコに、120部のTHF、0.01部のBHT及び59部のPOCl3を入れた。フラスコを氷/水/アセトン浴で冷却した。50部のHPA、170部のTHF及び37部のトリエチルアミンのプレミックスを、温度を5℃未満に維持する速度で滴下漏斗から添加し、混合物を15分間攪拌した。得られた混合物に、170部のTHF及び0.01部のBHTを添加した。14部のH2O、75部のトリエチルアミン、及び170部のTHFのプレミックスを、温度を5℃未満に維持するように非常にゆっくりと添加した。次いで、反応混合物を濾過し、白色固体塩を除去した。濾液を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、40℃にて真空下でロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。淡黄色の、僅かに粘稠な液体が得られた。この生成物のNMR解析により、リン酸化ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA−PA)の構造が明らかになった。
【0141】
出発物質2(SM−2)
トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートフルオロリン酸一ナトリウム(TMAEMA−FP)
機械的攪拌器、温度計及び滴下漏斗を取り付けた反応フラスコに、160部の80%TMAEMA−Cl水溶液を入れた。200部の水中の、100部のフルオロリン酸二ナトリウム(アルファ−エーサー(Alfa-Aesar)、マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill))溶液を、攪拌しながら反応フラスコに液滴添加した。反応溶液を室温で1時間攪拌し、得られた反応混合物を分液漏斗に移した。静置すると、二層を形成した。底層を分離し、廃棄した。上層のNMRスペクトルにより、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートフルオロリン酸一ナトリウムの構造が明らかになり、固体解析は水中の66重量%固形分を示した。
【0142】
出発物質3(SM−3)
トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートテトラフルオロホウ酸(TMAEMA−BF4)の合成
機械的攪拌器、滴下漏斗及びコンデンサを取り付けた三つ口フラスコに、80部のテトラフルオロホウ酸ナトリウム((アルファ−エーサー(Alfa-Aesar)インオーガンニックス(Inorganics)、マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill))及び130部の脱イオン水を入れた。混合物を15分間攪拌し、透明な溶液を得た。滴下漏斗から、202.4部のジメチルアミノエチルメタクリレート−塩化メチル(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライド;CPS社、チバ、イリノイ州クリスタルレイク(Crystal Lake))溶液及び80部の脱イオン水をゆっくりと添加した。固形生成物はすぐに沈殿し始めた。添加完了後、混合物を30分間攪拌し、固形分を濾過により分離し、30部の脱イオン水で洗浄し、40℃にて真空下で乾燥させた。固体生成物のNMR解析により、純粋なトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートテトラフルオロホウ酸の構造が明らかになった。
【0143】
出発物質4(SM−4)
ジメチルヘキサデシルアンモニウムエチルメタクリレートブロミド(DMA−C16Br)の合成
500mLの丸底フラスコに、42.2部のDMAEMA、154.7部のアセトン、93.2部の1−ブロモヘキサデカン(シグマ・アルドリッチ)及び0.34部のBHTを入れた。混合物を35℃にて16時間攪拌し、次いで室温に冷却した。得られた白色固体沈殿を濾過により分離し、冷酢酸エチルで洗浄し、40℃にて真空下で乾燥させた。固体生成物のNMR解析により、純粋なジメチルヘキサデシルアンモニウムエチルメタクリレートブロミドの構造が明らかになった。
【0144】
歯科用剤ブレンドA
NaF(49.75部)、CGP(49.75部)及びGML−12(0.5部)を24時間混合し、均質な混合物を得ることにより、歯科用剤ブレンドAを調製した。
【0145】
歯科用剤ブレンドB
NaF(49.75部)、PHOSCAL(49.75部)及びGML−12(0.5部)を24時間混合し、均質な混合物を得ることにより、歯科用剤ブレンドBを調製した。
【0146】
気泡安定剤ブレンドA
ユニリン(UNILIN)425(10部)、ユニソックス(UNITHOX)420(10部)及びエタノール(30部)をガラスジャー中で高シアーカウル混合(high sheer cowl mixing)により混合し、ヒートガンで150℃に加熱することにより、気泡安定剤ブレンドAを調製した。混合の5分後、ブレンドを白亜の安定な懸濁液として分離した。
【0147】
(実施例1〜35)
永続的ポリマー
それぞれ20/45/20/5/10重量部のモノマー単位を含有する永続的ポリマーp(NIPAAM/IBMA/AA/LA/TMAEMA−BF4)を、以下の手順に従ってイソプロピルアルコール溶液中で調製した。
【0148】
NIPAAM(20部)、IBMA(45部)、AA(20部)、LA(5部)、DMAEMA−BF4(10部)、VAZO−67(0.5部)及びIPA(200部)を反応槽中で混合し、得られた混合物を窒素で2分間パージした。槽を封止し、透明で粘稠なポリマー溶液が形成される間、一定温度の回転装置内で18時間65℃に維持した。反応槽を槽から取り出し、室温に冷却した。百分率固体解析(IPA中に33%の固形分)により、実施例1のように示したポリマーへの定量的変換が明らかになった。
【0149】
実施例2〜35で示したポリマーを、概して実施例1で記載したように調製し、表1に、指示されたモノマー単位、重量比(それぞれのモノマー単位の)、及び分離された形態(必要に応じて代替溶媒及び固形分%を含む)を列挙する。一部のポリマー調製では、他の溶媒、例えば、エタノール、エタノール/水、及びグリセロール/エタノールをIPAの代わりに約200部使用した。
【表C】

【表D】

【0150】
(実施例36〜43)
永続的ポリマーを含有する発泡性歯科用組成物
永続的ポリマーのエタノール溶液(実施例3B)を、以下の一般的手順に従って、標準的な方法論及び市販の噴射剤を用いて、発泡性歯科用組成物に配合した。
【0151】
永続的ポリマー溶液(実施例3B)(エタノール中の25%ポリマー;100部)、気泡安定剤ブレンドA(5部)、及びNaF(0、5、8又は15部)をガラスジャー内で高シアー混合により5分間混合することにより、発泡性歯科用組成物を処方した。得られた混合物を、各々エアゾールノズルを備えた個別の分配金属容器に移し、封止した。エアゾール噴射剤(A−46)(16部)を容器に添加した。得られた発泡性歯科用組成物を、それぞれ0、5、8、及び15部のNaFを含有する実施例36、37、38及び39と名付けた。
【0152】
別の発泡性歯科用組成物(実施例40A)を、歯科用剤ブレンドA(5部)をNaFに置換したことを除いて、実施例36〜39で上記したように調製した。
【0153】
別の発泡性歯科用組成物(実施例40B)を、歯科用剤ブレンドB(5部)をNaFに置換したことを除いて、実施例36〜39で上記したように調製した。
【0154】
他の3つの発泡性歯科用組成物(実施例41〜43)を、NaF(2.5部又は5.0部)を永続的ポリマー溶液実施例2(IPA中に33%;100部)又は実施例24(IPA中に33%;100部)と混合したことを除いて、実施例36〜39で上記したように調製した。得られた発泡性歯科用組成物を以下のように指定した。
(実施例41):実施例24ポリマー溶液(100部)+NaF(2.5部)
(実施例42):実施例24ポリマー溶液(100部)+NaF(5.0部)
(実施例43):実施例2ポリマー溶液(100部)+NaF(5.0部)
【0155】
全ての発泡性歯科用組成物(実施例36〜43)は、良好な発泡体組成物を分配した。分配された発泡体は、安定であり、少なくとも3分間持続した。
【0156】
(実施例44〜50)
永続的ポリマーを含有する歯科用コーティング組成物
以下の一般的手順に従って標準的な方法論を用い、永続的ポリマーを歯科用コーティング組成物に配合した。
【0157】
歯科用剤NaF(2.2部)、CGP(2.2部)、及びGML−12(0.1部;水分散液として適用される)を、既知の濃度(表1を参照のこと)で溶媒(IPA又はEtOH)に溶解した固体ポリマーを含有する永続的ポリマー溶液(100部)に溶解した。この方法で調製した、得られた歯科用コーティング組成物以下のように指定した。
(実施例44):実施例3A(100部)+NaF(2.5部)/CGP(2.2部)/GML−12(0.1部)
(実施例45):実施例8(100部)+NaF(2.5部)/CGP(2.2部)/GML−12(0.1部)
(実施例46):実施例28(100部)+NaF(2.5部)/CGP(2.2部)/GML−12(0.1部)
(実施例47):実施例29(100部)+NaF(2.5部)/CGP(2.2部)/GML−12(0.1部)
【0158】
歯科用剤NaF(5部)を実施例3A(IPA中36.8%永続的ポリマー)に溶解し、実施例48に指定した歯科用コーティング組成物(例えば、歯科用樹脂)を得た。
【0159】
実施例3A(IPA中36.8%永続的ポリマー)をコルゲート(COLGATE)「口腔保護用フッ化物;標準の香り」練り歯磨きとしっかり混合し(25重量%)、実施例49に指定した均質な歯科用コーティング組成物(例えば、練り歯磨き)を得た。
【0160】
実施例3A(IPA中36.8%永続的ポリマー)をスコープ(SCOPE)「クールペパーミント)洗口液に溶解し(70重量%)、実施例50に指定した均質な歯科用コーティング組成物(例えば、洗口液)を得た。
【0161】
評価
様々な試験試料からの、歯上のポリマーコーティングの保持
本明細書に記載した有色顔料試験方法2に従って、本発明の試験試料(実施例8、3A及び27)が牛歯表面上に保持された長さを評価し、本明細書に記載した有色顔料試験方法3に従って評価した市販材料デュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂と比較した。実施例8、3A及び27の結果を表2に示し、これは50%を超える保持性コーティングが、利用した永続的ポリマー溶液によって、少なくとも3〜4「試験日」持続することを示した。デュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂(DFV)の適用により形成されたコーティングは、1「試験日」未満で完全に除去された。
【表E】

【0162】
様々な試験試料からの、歯上のポリマーコーティングの保持
本明細書に記載した有色顔料試験方法1に従って、本発明の試験試料(実施例37、48、49及び50)が牛歯表面上に保持された長さを評価し、以下の市販材料:オーラルB発泡体、デュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂、コルゲート(COLGATE)練り歯磨き及びスコープ(SCOPE)洗口液と比較した。コーティング保持の観察結果を1分〜5日の時間間隔で作成した。試料供給元、組成物、及び試験結果を表3に示す。表3の結果から、実施例37、48、49及び50は全て5日を超えて持続する保持性コーティングを提供することが認められた。対照的に、市販のオーラルB発泡体、コルゲート(COLGATE)練り歯磨き及びスコープ(SCOPE)洗口液製品は、保持性コーティングを提供しなかった(それぞれ、歯上に1、2及び3分未満)。両方の発泡体組成物を、同様の型のエアゾール発泡体容器から分配した。デュラファット(DURAPHAT)樹脂もまた、本試験で5日を超えて持続する保持性コーティングを提供した。
【表F】

【0163】
発泡性歯科用組成物でコーティングされた表面からのフッ化物放出
本明細書に記載したフッ化物放出試験方法に従って、本発明の試験試料(実施例40A及び40B発泡体組成物)のフッ化物の経時的放出を評価し、市販のデュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂製品と比較した。表4に試験結果を示し、それは4時間の研究の間同様のフッ化物放出パターンを示した。しかしながら、発泡性製剤を同時に患者の歯列弓の全ての歯に適用すれば、一般に樹脂製剤により可能なものを超える、著しい時間節約になることが認められた。
【表G】

【0164】
発泡性歯科用組成物でコーティングされた表面からのフッ化物放出
本明細書に記載したフッ化物放出試験方法に従って、本発明の試験試料(実施例41〜43の発泡性組成物)のフッ化物の経時的放出を評価し、市販のデュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂製品と比較した。表5に試験結果を示し、いくつかの試験試料では、168時間の研究の間異なるフッ化物放出パターンを示した。
【表H】

【0165】
保持性コーティングからの経時的フッ化物放出及びそれに続く「再補給」用途
本明細書に記載したフッ化物放出試験方法に従って、本発明の試験試料(実施例44〜47)のフッ化物の経時的放出を評価し、市販のオーラルB発泡体及びデュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂製品と比較した。
【0166】
オーラルB発泡体の場合、フッ化物放出は、0.5分後8.34mgF/g、1分後8.83mgF/g、及び5分後8.89mgF/gと測定された。従って、5分間にわたって放出されたフッ化物の約94%は0.5分で放出され、1分で99%が放出された。オーラルB発泡体は、歯科用修復材表面に保持性コーティングを形成しないと考えられた。
【0167】
本発明の試験試料(実施例44〜47)及びデュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂について、0.5〜48時間のフッ化物放出を測定し、結果を表6及び例えば、図1の実施例44、45及び47に示す。4つの試験試料全ての場合、フッ化物放出は48時間依然として増加し、個々の試料によって、48時間にわたるフッ化物放出の46〜66%は1時間で放出され、79〜86%は4時間、94〜95%は24時間で放出された。歯科用修復材表面に保持性コーティングを形成した試験試料は全て、経時的にフッ化物を放出し続ける(例えば、少なくとも48時間)と結論付けた。デュラファット(DURAPHAT)フッ化物樹脂(DFV)はまた、48時間にわたってフッ化物を放出したが、この製品は本明細書に記載した有色顔料試験方法3で、歯磨きに対する耐性を有さず、ブラッシングの1「試験日」未満で歯の表面から完全に除去されることが示された。
【0168】
48時間の評価において、歯科用剤(例えば、フッ化物)に保持性コーティングを「再補給」することを試みるために、各試験試料を、5.0重量%NaF及び5.0重量%CGPを含有する水溶液中に2分間定置し、コーティングが歯科用剤を保持するかどうかを観察し、歯科用剤の放出を延長した。「再補給」処理に続いて、フッ化物放出を0.5〜3時間で測定し、結果を表6及び図1に示した。4つ全ての試験試料、並びにDFVの場合、フッ化物放出は「再補給」処理の0.5時間後に著しく増加し、「再補給」の3時間後も依然として増加していた。歯科用修復材表面に保持性コーティングを形成した本発明の試験試料(実施例44〜47)は全て、フッ化物のような歯科用剤で「再補給」され、それにより経時的歯科用剤の放出を延長できると結論付けた。


【表I】

【0169】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する、本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】経時的フッ化物放出及び実施例44、45及び47の再補給効果を示すグラフである。フッ化物の「再補給」は48時間で行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持性高分子コーティングを歯科表面に適用する工程と、
次いで、前記保持性高分子コーティングと、歯科用剤を含む装填組成物とを接触させる工程であって、前記接触が、経時的放出中に前記歯科用剤を前記保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件下で起こる工程とを含む、歯科用剤を歯科表面に適用する方法であって、
前記保持性高分子コーティングが、ブラッシング及び摂食時の標準的な口内条件下で前記歯科表面に少なくとも12時間残存する方法。
【請求項2】
前記保持性高分子コーティングが、有色顔料試験方法2に従って2回歯磨きをした後少なくとも12時間、牛歯エナメル質に残存する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記歯科表面が、歯肉又は歯の表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記歯の表面が、象牙質又はエナメル質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記歯の表面が、エナメル質を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記歯科用剤が、エナメル質を再石灰化することができる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記歯科用剤が、リン酸化合物、カルシウム化合物、リン酸カルシウム化合物、ヒドロキシアパタイト、カゼイン塩、リン化合物の表面処理を有する充填剤、リン放出ガラス、カルシウム放出ガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記歯科用剤がリン酸化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リン酸化合物が、一塩基性リン酸化合物、二塩基性リン酸化合物、三塩基性リン酸化合物、グリセロリン酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記歯科用剤がカゼイン塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記カゼイン塩が、カルシウム、リン酸、フッ化物又はこれらの組み合わせの塩を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記保持性高分子コーティングが、初期に、少なくとも一部が経時的に放出される歯科用剤と、同一又は異なる歯科用剤を含む前記装填組成物とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記装填組成物の前記歯科用剤が、フッ化物源、増白剤、抗カリエス剤、再石灰化剤、酵素、口臭清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応修飾物質、薬剤、指示剤、抗菌剤、抗真菌剤、口内乾燥治療剤、減感剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
初期に適用される前記保持性高分子コーティングの前記歯科用剤が、フッ化物源、増白剤、抗カリエス剤、再石灰化剤、酵素、口臭清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応修飾物質、薬剤、指示剤、抗菌剤、抗真菌剤、口内乾燥治療剤、減感剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記保持性高分子コーティングと歯科用剤を含む装填組成物との接触が、前記組成物の塗布、前記組成物のブラッシング、前記組成物の注入、前記組成物の噴霧、前記組成物のぬぐい、前記組成物の散布、基材からの前記組成物の適用、前記組成物の浸漬被覆、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記装填組成物が、練り歯磨き、洗口液、歯科用発泡体、歯科用樹脂、歯科用ゲル、含嗽剤、歯科用コーティング、又はこれらの組み合わせの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記装填組成物が練り歯磨きの形態であり、接触が前記歯科表面の前記保持性高分子コーティング上で前記練り歯磨きをブラッシングすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
経時的放出中前記歯科用剤を前記保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件が、前記保持性高分子コーティングと前記歯科用剤を少なくとも5秒間接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
経時的放出中、前記歯科用剤を前記保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件が、前記保持性高分子コーティングと前記歯科用剤を少なくとも120秒間接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記保持性高分子コーティングが、
極性又は分極性基を含む繰り返し単位と、
疎水性炭化水素基、グラフトポリシロキサン鎖、疎水性フッ素含有基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される基を含む繰り返し単位と、
調節基を含む繰り返し単位とを含む永続的ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記永続的なポリマーが水分散性である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基の少なくとも1つが反応性基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記保持性高分子コーティングが、緩衝剤、酸性化剤、フッ化水素酸、乳化剤、エマルションオイル、乳化安定剤、再石灰化促進剤、粘度調整剤、キソトロープ、充填剤、ポリオール、着香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含むコーティング組成物から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記保持性高分子コーティングが、疎水性セグメント、親水性セグメント及びケイ素含有マクロマーセグメントを含む永続的ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記永続的ポリマーが、四級アミンセグメントをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記永続的ポリマーが、アルコキシシラン架橋性セグメントをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記保持性高分子コーティングが、疎水性セグメント、親水性セグメント及び四級アミンセグメントを含む永続的ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記永続的ポリマーが、アルコキシシラン架橋性セグメントをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記保持性高分子コーティングが、疎水性セグメント、親水性セグメント、ケイ素含有マクロマーセグメント及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含む永続的ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記保持性高分子コーティング及び歯科用剤が、歯科用剤が少なくとも24時間にわたって放出されるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記保持性高分子コーティングが、発泡性歯科用組成物を収容する器具から分配される歯科用発泡体の形態で前記歯科表面に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記歯科用発泡体が、前記歯科表面上の前記保持性高分子コーティングに適用される前に、基材に分配される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記保持性高分子コーティングが、重合性成分を含むコーティング組成物から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
保持性高分子コーティングを歯科表面に適用する工程と、
次いで、前記保持性高分子コーティングと、歯科用剤を含む装填組成物とを接触させる工程であって、前記接触が、経時的放出中に前記歯科用剤を前記保持性高分子コーティングに導入するのに有効な条件下で生じる工程とを含む、歯科用剤を歯科表面に適用する方法であって、
前記保持性高分子コーティングが、疎水性セグメントと、親水性セグメントと、アルコキシシラン架橋性セグメント、四級アミンセグメント、ケイ素含有マクロマーセグメント、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるセグメントと、を含む永続的ポリマーを含み、
前記保持性高分子コーティングが、有色顔料試験方法2に従って2回歯磨きをした後少なくとも12時間、牛歯エナメル質に残存する方法。
【請求項35】
疎水性セグメント、親水性セグメント、四級アミンセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマー。
【請求項36】
前記疎水性セグメントが、ドデシル、イソブチル、オクチル、オクタデシル及びこれらの組み合わせを含む炭化水素部分からなる群から選択される、請求項35に記載のポリマー。
【請求項37】
前記疎水性セグメントが、少なくとも100の重量平均分子量を有する疎水性モノマー由来である、請求項36に記載のポリマー。
【請求項38】
前記疎水性モノマーが最大500,000の重量平均分子量を有する、請求項36に記載のポリマー。
【請求項39】
前記疎水性セグメントが、フッ素含有セグメントである、請求項35に記載のポリマー。
【請求項40】
前記親水性セグメントが、カルボン酸類、低級アルキルエステル類、ヒドロキシアルキルエステル類、アルコキシアルキルエステル類、アミノアルキルエステル類、アルキルアミノアルキルエステル類、ジアルキルアミノアルキルエステル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリプロピレングリコールエステル類、対イオンがハロゲン化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩又はこれらの組み合わせであってよいトリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載のポリマー。
【請求項41】
前記四級アミンセグメントが、テトラフルオロホウ酸トリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、フルオロリン酸トリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、ハロゲン化トリアルキルアンモニウムアルキルエステル類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載のポリマー。
【請求項42】
前記アルコキシシラン架橋性セグメントが、(トリアルコキシシリル)アルキルである、請求項35に記載のポリマー。
【請求項43】
ケイ素含有マクロマーセグメントをさらに含む、請求項35に記載のポリマー。
【請求項44】
前記ケイ素含有マクロマーセグメントが、少なくとも500の分子量を有するポリシロキサン鎖を含む、請求項43に記載のポリマー。
【請求項45】
疎水性セグメント、親水性セグメント、ケイ素含有マクロマーセグメント、及びアルコキシシラン架橋性セグメントを含むポリマー。

【図1】
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【公表番号】特表2009−522285(P2009−522285A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548738(P2008−548738)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/049467
【国際公開番号】WO2007/079170
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】