説明

歯科用接着性組成物

重合可能な歯科用接着性組成物であって、(i)組成物の総重量を基準として10重量%〜90重量%の、加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物であって、化学式(I):R(A)(B)(化学式(I))(式中、Rは、単結合、又は1個〜20個の炭素原子並びに任意に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の群から選択される1個〜5個の原子を有するm+n価の有機基である;Aは化学式(II)(式中、Lは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は化学式(III)(式中、R’は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり;XはO、S、NH(NII)又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり;aは0(O)又は1である)の基であり;Mは以下の化学式(IV)(式中、YはO、S、NH又はNR’’’であり、NR’’’においてR’’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり;bは0〜3の整数であり;cは0又は1であり;dは0〜3の整数であり;ただし、bが0である場合にはYはO又はSではあり得ない)の基であり;xは0又は1(i)であり;yは0又は1であり;ただし、x及びyは共に1ではあり得ず、ただし、L、又は化学式(III)の基が水素原子である場合にはxは1ではあり得ず、ただし、xが0である場合にはaも0であり、ただし、yが0である場合には、bは0より大きい又はcは0である)の部分を独立して表し;Bは抗菌活性を有する基、又は酸性基を独立して表し;mは1〜5の整数であり;nは0〜3の整数であり;m+nは少なくとも2である)の加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物と、(ii)水溶性の有機溶媒と、(iii)開始剤及び安定剤と、を含み、nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが抗菌活性を有する基である化学式(I)の抗菌性モノマー部分が、混合物の総重量を基準として少なくとも0.01重量%であり、nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが酸性基である化学式(I)の酸性モノマー部分が、混合物の総重量を基準として少なくとも0.1重量%である、重合可能な歯科用接着性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化前に殺菌活性と高い貯蔵安定性とを有し、且つ硬化時に静菌活性を有する一方で、硬化後の修復物(restoration)の存続期間全体にわたり高い機械的耐性と高い接着性とをもたらす、歯科用接着性組成物に関する。本発明の歯科用接着性組成物は、硬化前に高い貯蔵安定性を有し、且つ硬化後に、硬化した接着性フィルムから抗菌性物質が浸出することなく、高い接着強度と長期間の静菌活性とを有する、一成分(one-part)組成物であり得る。本発明は、歯科用接着性組成物を調製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌活性基を有するモノマーを含有する歯科用接着剤は既知である。特許文献1は、水及び重合(polymedrization)触媒と組み合わせた、抗菌性モノマーと、少なくとも1個の酸性基を含有するモノマーと、少なくとも1個のアルコール性ヒドロキシ基を含有するモノマーとを含む歯科用の抗菌接着性組成物を開示している。特許文献2は、抗細菌性塩化合物と、酸性基を含有する重合可能なモノマーと、親水性の重合可能なモノマーと、水とを含む抗細菌組成物を開示している。
【0003】
従来技術において使用される抗菌活性基は、接着層から浸出したときに細胞傷害効果を示し得る。従来技術から既知の抗菌接着性組成物は加水分解性基を含有するので、抗菌活性基は、接着層から加水分解され得るし、接着層から浸出し得る。細胞傷害性基の浸出は、抗菌活性基を含有する側鎖の加水分解によって生じ得る。細胞傷害性基の浸出は、抗菌活性基を含有するポリマー骨格の加水分解によっても生じ得る。加水分解による抗菌活性基の浸出のために、従来技術から既知の組成物を、強酸性の組成物として構築することはできない。したがって、特許文献2に係る発明は、pHを1.5〜4.5の範囲で調整することにより組成物の貯蔵安定性を向上させるために、アルカリ金属水酸化物と、芳香族基を有しない強塩基酸塩(strong basic acid salts)と、脂肪族アミンとから選択される塩基性化合物を必要とする。さらに、重合可能なモノマーの加水分解と、抗菌性物質の浸出とが、歯質への接着性結合の劣化と、ポリマーのネットワークの弱体化とを引き起こす。さらに、HEMA等のモノマーが高い割合で存在することにより、口腔内で膨潤及び加水分解しやすい膨潤性の硬化物が生成される。さらに、HEMAの最終的な加水分解生成物としてのエチレングリコールは、硬化前後における接着性組成物の特性の劣化をさらに促進する。したがって、約30重量%のHEMAと、酸性の重合可能なメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとを含有する、特許文献2から既知である組成物は、象牙質への満足な初期接着性を示し得るが、その接着性は、硬化した接着剤の膨潤及び加水分解のために時間とともに劣化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,733,949号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1285947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、硬化前に高い貯蔵安定性と殺菌活性とを有し、且つ硬化された時に静菌活性を有する一方で、硬化後の修復物の存続期間全体にわたり高い機械的耐性及び接着性をもたらす、歯科用接着性組成物を提供することが、本発明の課題である。さらに、抗菌性分子の浸出が回避され得る歯科用接着性組成物を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、重合可能な歯科用接着性組成物であって、
(i)組成物の総重量を基準として10重量%〜90重量%の、加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物であって、以下の化学式(I):
R(A)(B) 化学式(I)
(式中、
Rは、単結合、又は1個〜20個の炭素原子並びに任意に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の群から選択される1個〜5個の原子を有するm+n価の有機基であり、
Aは、以下の化学式(II):
【化1】

(式中、
Lは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は以下の化学式(III):
【化2】

(式中、
R’は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、
XはO、S、NH又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
aは0又は1である)
の基であり、
Mは、以下の化学式(IV):
【化3】

(式中、
YはO、S、NH又はNR’’’であり、NR’’’においてR’’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
bは0〜3の整数であり、
cは0又は1であり、
dは0〜3の整数であり、
ただし、bが0である場合にはYはO又はSではない)
の基であり、
xは0又は1であり、
yは0又は1であり、
ただし、x及びyが共に1であることはなく、
ただし、L、又は化学式(III)の基が水素原子である場合にはxは1ではなく、
ただし、xが0である場合にはaも0であり、
ただし、yが0である場合には、bは0より大きい又はcは0である)
の部分を独立して表し、
Bは抗菌活性を有する基、又は酸性基を独立して表し、
mは1〜5の整数であり、
nは0〜3の整数であり、
m+nは少なくとも2である)
の加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物と、
(ii)水溶性の有機溶媒と、
(iii)開始剤及び安定剤と、
を含み、
nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが抗菌活性を有する基である化学式(I)の抗菌性モノマー部分が、混合物の総重量を基準として少なくとも0.01重量%であり、nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが酸性基である化学式(I)の酸性モノマー部分が、混合物の総重量を基準として少なくとも0.1重量%である、重合可能な歯科用接着性組成物を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、請求項1〜18のいずれか一項により規定される歯科用接着性組成物を調製する方法であって、
(i)組成物の総重量を基準として10重量%〜90重量%の、加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物であって、以下の化学式(I):
R(A)(B) 化学式(I)
(式中、
Rは、単結合、又は1個〜20個の炭素原子並びに任意に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の群から選択される1個〜5個の原子を有するm+n価の有機基であり、
Aは、以下の化学式(II):
【化4】

(式中、
Lは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は以下の化学式(III):
【化5】

(式中、
R’は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、
XはO、S、NH又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
aは0又は1である)
の基であり、
Mは、以下の化学式(IV):
【化6】

(式中、
YはO、S、NH又はNR’’’であり、NR’’’においてR’’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
bは0〜3の整数であり、
cは0又は1であり、
dは0〜3の整数であり、
ただし、bが0である場合にはYはO又はSではない)
の基であり、
xは0又は1であり、
yは0又は1であり、
ただし、x及びyが共に1であることはなく、
ただし、L、又は化学式(III)の基が水素原子である場合にはxは1ではなく、
ただし、xが0である場合にはaも0であり、
ただし、yが0である場合には、bは0より大きい又はcは0である)
の部分を独立して表し、
Bは−V−Wを表し、−V−Wにおいて
Vは単結合又は加水分解性リンカーを表し、
Wは抗菌活性を有する基を表し、
mは1〜5の整数であり、
nは0〜3の整数であり、
m+nは少なくとも2である)
の加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物と、
(ii)水溶性の有機溶媒と、
(iii)開始剤システムと、
を混合する工程を含み、
nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが抗菌活性を有する基である化学式(I)の抗菌性モノマー部分が、混合物の総重量を基準として少なくとも0.01重量%であり、nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが酸性基である化学式(I)の酸性モノマー部分が、混合物の総重量を基準として少なくとも0.1重量%である、歯科用接着性組成物を調製する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明による歯科用接着性組成物は、加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物を含有する。この加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの一部分には、抗菌活性基を含有する。この加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの一部分には、酸性基を含有する。この加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの一部分には、架橋重合が可能なモノマーを含有する。この重合可能なモノマーは、加水分解に対し安定である。具体的には、この重合可能なモノマーは、pH3の水性媒体中で室温で1ヶ月以内に加水分解する主鎖において、エステル基等の基を含有しない。
【0009】
この重合可能なモノマーは、化学式(I)の化合物である。化学式(I)のモノマーは、部分Rと、最大5個の重合可能な置換基Aと、任意に、酸性基及び/又は抗菌活性基から選択される最大3個の基Bとを含む。したがって、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数である。m及びnの合計は、少なくとも2である。したがって、単一の重合可能な置換基Aの場合には、重合可能なモノマーは、酸性基又は抗菌活性基を含む。
【0010】
部分Aは、1個〜20個の炭素原子と、任意に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の群から選択される1個〜5個の原子とを有する有機基である。好ましい一実施形態では、Rは、1個〜6個の炭素原子を有する有機基である。この有機基は、置換基A及び置換基Bの総数に対応した少なくとも2以上の結合価を有する。したがって、Rは、二価(n=2)、三価(n=3)、四価(n=4)、五価(n=5)又は六価(n=6)であり得る。好ましくは、Rは二価又は三価、最も好ましくは二価である。Aは、脂肪族及び/又は芳香族である炭化水素基であり得る。炭化水素基は、1個〜6個の、炭素数1〜4のアルキル基により置換され得る(ただし、Rの炭素原子の総数は20個を超えない)。アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基又はtert.−ブチル基である。好ましい一実施形態では、炭化水素基は、脂肪族エーテル結合若しくは芳香族エーテル結合、ケト基、カルボン酸基、又はヒドロキシル基の形態で、炭化水素基中に1個〜5個の酸素原子を含有し得る。エステル基は、重合可能なモノマーの加水分解に対する安定性の観点から、部分Rにおいては、好ましくない。脂肪族基の場合には、Rは直鎖又は分枝鎖のアルキレン基又はシクロアルキレン基であり得る。芳香族基の場合には、Rはアリーレン基又はヘテロアリーレン基であり得る。具体的には、Rは、二価の置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換又は非置換の炭素数6〜14のアリーレン基、置換又は非置換の炭素数3〜20のシクロアルキレン基、置換又は非置換の炭素数7〜20のアリーレンアルキレンアリーレン基であり得る。好ましくは、Rは、2個〜4個の酸素原子を含有してもよく1個〜6個の炭素数1〜4のアルキル基により置換されてもよい、飽和脂肪族の炭素数2〜20の炭化水素鎖を表し、又はRは、1個〜6個の炭素数1〜4のアルキル基により置換されてもよい、置換又は非置換の炭素数7〜20のアリーレンアルキレンアリーレン基であり得る。
【0011】
化学式(I)の重合可能なモノマーは、少なくとも1個及び最大5個の重合可能な置換基Aを含有する。2個以上のAが存在する場合には、各々のAは、以下の化学式(II)の部分を独立して表す。したがって、一実施形態では、全てのAが同一である。さらなる一実施形態では、重合可能な置換基Aは、お互いに異なる。
【0012】
化学式(II)において、Aは重合可能な二重結合を含有する。カルボニル基がその二重結合に隣接し得る。したがって、xは0又は1であり得るし、yは0又は1であり得る。同じ重合可能な二重結合に隣接する2個のカルボニル基は、1個の置換基Aにおいて存在し得ない。したがって、x及びyは共に1ではあり得ない。
【0013】
置換基Aは、部分L及び部分Mをさらに含有する。Lは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は化学式(III)の基である。炭素数1〜6のアルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基又はtert.−ブチル基である。炭素数3〜8のシクロアルキル基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。炭素数6〜14のアリール基の具体例は、フェニル基又はナフチル基である。炭素数1〜6のアルキル基と、炭素数3〜14のシクロアルキル基と、炭素数6〜14のアリール基とは、炭素数1〜4のアルキル基と、炭素数1〜4のアルコキシ基と、フェニル基とから選択される基の1つ又は複数のメンバーにより任意に置換され得る。炭素数1〜4のアルキル基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基を含み得る。炭素数1〜4のアルコキシ基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基を含み得る。
【0014】
Lが化学式(III)の基である場合には、R’は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基である。炭素数1〜6のアルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基又はtert.−ブチル基である。炭素数3〜8のシクロアルキル基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。炭素数6〜14のアリール基の具体例は、フェニル基又はナフチル基である。炭素数1〜6のアルキル基と、炭素数3〜14のシクロアルキル基と、炭素数6〜14のアリール基とは、炭素数1〜4のアルキル基と、炭素数1〜4のアルコキシ基と、フェニル基とから選択される基の1つ又は複数のメンバーにより任意に置換され得る。炭素数1〜4のアルキル基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を含み得る。炭素数1〜4のアルコキシ基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基を含み得る。
【0015】
Lが化学式(III)の基である場合には、XはO、S、NH又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基である。炭素数1〜6のアルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基又はtert.−ブチル基である。炭素数3〜8のシクロアルキル基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。炭素数6〜14のアリール基の具体例は、フェニル基又はナフチル基である。炭素数1〜6のアルキル基と、炭素数3〜14のシクロアルキル基と、炭素数6〜14のアリール基とは、炭素数1〜4のアルキル基と、炭素数1〜4のアルコキシ基と、フェニル基とから選択される基の1つ又は複数のメンバーにより任意に置換され得る。炭素数1〜4のアルキル基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を含み得る。炭素数1〜4のアルコキシ基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基を含み得る。
【0016】
Lが化学式(III)の基である場合には、aは0又は1である。
【0017】
化学式(II)の基において、Mは化学式(IV)の基である。化学式(IV)におけるb、c及びdが0である場合には、Mは単結合を表す。
【0018】
Mが単結合ではない場合には、化学式(IV)におけるYはO、S、NH又はNR’’’であり、NR’’’においてR’’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基である。炭素数1〜6のアルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基又はtert.−ブチル基である。炭素数3〜8のシクロアルキル基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。炭素数6〜14のアリール基の具体例は、フェニル基又はナフチル基である。炭素数1〜6のアルキル基と、炭素数3〜14のシクロアルキル基と、炭素数6〜14のアリール基とは、炭素数1〜4のアルキル基と、炭素数1〜4のアルコキシ基と、フェニル基とから選択される基の1つ又は複数のメンバーにより任意に置換され得る。炭素数1〜4のアルキル基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を含み得る。炭素数1〜4のアルコキシ基についての例は、1個〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基を含み得る。
【0019】
Mが単結合ではない場合には、bは0〜3の整数であり、cは0又は1であり、dは0〜3の整数である。
【0020】
化学式(IV)において、bが0でありyが1である場合には、Yは酸素原子ではあり得ない。なぜなら、置換基Aの重合可能な二重結合が、加水分解性エステル結合により連結されることになるからである。さらに、アルデヒド基は、重合可能な二重結合に隣接し得ない。
【0021】
したがって、L、又は化学式(III)の基が水素原子である場合には、xは1ではあり得ない。またさらに、酸素、硫黄及び窒素等のヘテロ原子は、重合可能な二重結合に隣接し得ない。したがって、xが0である場合にはaも0であり、yが0である場合には、bは0より大きい又はcは0である。
【0022】
化学式(I)の化合物は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ抗菌活性を有する基、又は酸性基を独立して表す、最大3個の置換基Bを含有し得る。
【0023】
好ましくは、抗菌活性を有する基Bは、
【化7】

(式中、
R2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ビニル基、若しくはシアノ基により任意に置換されるフェニル基から選択される1つ又は複数の置換基により置換され得る炭素数1〜18のアルキル基を独立して表し、又はR2、R3及びR4から選択される2個の置換基は、それらが結合する窒素原子若しくはリン原子(phosphorous atom)と共に3員環〜7員環を形成する炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し;R6及びR6’は存在し又は存在せず、R6又はR6’が存在する場合には、陰性基Qも存在し且つR6又はR6’は水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基を独立して表し、ただし、少なくとも1個のR6及びR6’が存在し、又はR5とR6若しくはR6’とは炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し;R7は1つ又は複数のハロゲン原子により置換され得る炭素数6〜18のアルキル基を表し、又はR6若しくはR6’とR7とは炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し;R8及びR9は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、若しくは炭素数1〜6のアルキル基により任意に置換されるフェニル基から選択される1つ又は複数の置換基により置換され得る炭素数6〜18のアルキル基を独立して表し;R10は、水素原子、若しくは炭素数1〜18のアルキル基を表し、又はR10とR8若しくはR9とは炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し;Qは、単結合又はリンカーにより重合性基に結合している陰性基を表す)から選択される。リンカーは、最大12個の炭素原子を有する炭化水素基であってもよく、O、N及びSから選択される最大6個のヘテロ原子を含有してもよい。
好ましくは、酸性基は、スルホン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基及びカルボン酸基から選択される。
【0024】
化学式(I)の加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物は、組成物の総重量を基準として10重量%〜90重量%、好ましくは10重量%〜60重量%の量で、歯科用接着性組成物中に含有される。より好ましくは、15重量%〜40重量%が含有される。
【0025】
nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが抗菌活性を有する基である化学式(I)の抗菌性モノマー部分は、混合物の総重量を基準として少なくとも0.01重量%である。好ましくは該部分は、0.05重量%〜30重量%の範囲、より好ましくは0.1重量%〜20重量%の範囲である。
【0026】
nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが酸性基である化学式(I)の酸性モノマー部分は、混合物の総重量を基準として少なくとも0.1重量%である。好ましくは該部分は、0.2重量%〜15重量%の範囲である。
【0027】
化学式(I)のモノマーの好ましい群は、化学式(I)においてnが0であり、Aが化学式(II)の部分であり、化学式(II)においてLが水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、xが0であるものである。より好ましくは、この群において、Aは化学式(II)の部分であり、化学式(II)においてyは1であり、Mは化学式(IV)の部分であり、化学式(IV)においてbは0であり、cは1であり、dは0〜3の整数であり、YはNH又はNR’’’であり、NR’’’においてR’’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基である。
【0028】
化学式(I)のモノマーのさらに好ましい群は、化学式(I)においてnが0であり、Aが化学式(II)の部分であり、化学式(II)においてxが1であるものである。より好ましくは、Lは化学式(III)の基であり、化学式(III)においてaは1であり、R’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、XはO、S、NH又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基である。
【0029】
化学式(I)のモノマーのさらに好ましい群は、化学式(I)においてnが0より大きく、Aが化学式(II)の部分であり、化学式(II)においてLが水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、xが0であるものである。より好ましくは、Aは化学式(II)の部分であり、化学式(II)においてyは0であり、Lは水素原子であり、Mは化学式(IV)の基であり、化学式(IV)においてYはOであり、b及びcは1であり、dは0〜3の整数である。
【0030】
化学式(I)のモノマーのさらに好ましい群は、化学式(I)においてAが化学式(II)の部分であり、化学式(II)においてyが0であり、Lが水素原子であり、Mが化学式(IV)の基であり、化学式(IV)においてbが0であり、cが1であり、dが0〜3の整数であり、YがNH又はNR’’であり、NR’’においてR’’が炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であるものである。
【0031】
本発明による歯科用接着性組成物は、充填剤を含有し得る。充填剤は、無機充填剤若しくは有機充填剤、又はそれらの組合せであり得る。一実施形態では、適切な無機粒子充填剤は、ポリマーでコーティングしたコロイド性シリカ又はサブミクロンシリカを含み得る。歯の様々な色調に組成物を適合させるための小量の色素が含まれ得る。一実施形態では、充填剤は、5重量%未満の量で歯科用接着性組成物中に含有される。
【0032】
本発明による歯科用接着性組成物は、重合開始剤及び安定剤を含有する。開始剤は特に限定されず、好ましくは光開始剤であり得る。具体的には、カンファーキノンが言及され得る。
【0033】
本発明による歯科用接着性組成物は、水溶性有機溶媒及び/又は水を含み得る。水溶性有機溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、及び/又はアセトン及びメチルエチルケトン等のケトンから選択され得る。アセトン、エタノール及び/又はtert−ブタノールが特に好ましい。好ましくは、歯科用接着性組成物中における、溶媒と、含まれる場合には水との総量は、10重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜60重量%の範囲である。
【0034】
好ましくは、化学式(I)の化合物の分子量は、100〜1000、より好ましくは最大500までの範囲である。
【0035】
本発明による歯科用接着性組成物は、反応性希釈剤をさらに含有し得る。反応性希釈剤の具体例は、メタクリル酸又はアクリル酸とイタコン酸とから選択される。
【0036】
歯科用接着性組成物は、少なくとも10MPaの、象牙質への接着性を有することが好ましい。
【0037】
本発明による歯科用接着性組成物は、好ましくは一成分組成物である。一成分組成物は、本発明による歯科用接着性組成物を1個の容器のみに収めて貯蔵することができ、適用前に混合せずとも且つ特別な設備がなくとも、歯科用接着性組成物の適用が可能であることを意味する。
【0038】
化学式(I)の加水分解に対し安定な重合可能なモノマーは、国際公開第02/13768号パンフレット、国際公開第03/013444号パンフレット、国際公開第03/035013号パンフレット、国際公開第2004/078100号パンフレット、国際公開第2005/063778号パンフレット、欧州特許出願公開第050229301号明細書及び欧州特許出願公開第060215407号明細書において開示される方法により、調製され得る。
【0039】
本発明を、ここで、以下の実施例を参照して、さらに詳細に説明する。
【実施例】
【0040】
実施例1
1−[3,7−ジオキサ−4−オキソ−5−メチレン−オクタデシル]ピリジニウムブロマイド
【化8】

20.0g(0.055mol)の2−[11−ブロモ−2−オキサトリデシル]アクリル酸エチルと、4.78g(0.0605mol)のピリジンとを200mlのトルエンに溶解した溶液を、100℃で2時間撹拌する。反応混合物の冷却後、生成物を単離し、エーテルで洗浄し、回転蒸発器で真空中、40℃で乾燥する。収量:12.95g(理論値(th.)の53%)
【0041】
実施例2
1−[3,7−ジオキサ−4−オキソ−5−メチレン−オクタデシル]−トリ−tert.−ブチルホスホニウムブロマイド
【化9】

14.67g(0.040mol)の2−[11−ブロモ−2−オキサトリデシル]アクリル酸エチルと、8.986g(0.044mol)のトリ−tert.−ブチルホスフィンとを200mlのトルエンに溶解した溶液を、100℃で2時間撹拌する。反応溶液の冷却後、生成物を単離し、エーテルで洗浄し、回転蒸発器で真空中、40℃で乾燥する。収量:8.60g(理論値(th.)の63.7%)
【0042】
適用実施例1
0.4611gのN,N’−ビスアクリルアミド−N,N’−ジエチル−1,3−プロパンと、0.3596gのビスアクリルアミド−2,4,4−(2,2,4)−トリメチルヘキサンと、0.1320gの2−[4−ホスホリル二水素−4,2−ジオキサペンチル]アクリル酸エチルと、0.0240gの1−[3,7−ジオキサ−4−オキソ−5−メチレン−オクタデシル]ピリジニウムブロマイドと、0.1076gの2−アクリルアミド−2−メチル−プロパン−スルホン酸と、0.0085gのカンファーキノンと、0.0213gのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィン酸化物と、0.0099gのジメチルアミノ安息香酸エチルエステルとを、0.5850gのエタノールと0.3150gの水とから構成される溶媒混合物中に溶解する。この製剤は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)に対して抗菌活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能な歯科用接着性組成物であって、
(i)該組成物の総重量を基準として10重量%〜90重量%の、加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物であって、以下の化学式(I):
R(A)(B) 化学式(I)
(式中、
Rは、単結合、又は1個〜20個の炭素原子並びに任意に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の群から選択される1個〜5個の原子を有するm+n価の有機基であり、
Aは、以下の化学式(II):
【化1】

(式中、
Lは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は以下の化学式(III):
【化2】

(式中、
R’は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、
XはO、S、NH又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
aは0又は1である)
の基であり、
Mは、以下の化学式(IV):
【化3】

(式中、
YはO、S、NH又はNR’’’であり、NR’’’においてR’’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
bは0〜3の整数であり、
cは0又は1であり、
dは0〜3の整数であり、
ただし、bが0である場合にはYはO又はSではない)
の基であり、
xは0又は1であり、
yは0又は1であり、
ただし、x及びyが共に1であることはなく、
ただし、L、又は化学式(III)の基が水素原子である場合にはxは1ではなく、
ただし、xが0である場合にはaも0であり、
ただし、yが0である場合には、bは0より大きい又はcは0である)
の部分を独立して表し、
Bは抗菌活性を有する基、又は酸性基を独立して表し、
mは1〜5の整数であり、
nは0〜3の整数であり、
m+nは少なくとも2である)
の加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物と、
(ii)水溶性の有機溶媒と、
(iii)開始剤及び安定剤と、
を含み、
nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが抗菌活性を有する基である化学式(I)の抗菌性モノマー部分が、前記混合物の総重量を基準として少なくとも0.01重量%であり、nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが酸性基である化学式(I)の酸性モノマー部分が、前記混合物の総重量を基準として少なくとも0.1重量%である、重合可能な歯科用接着性組成物。
【請求項2】
Bが
【化4】

(式中、
R2、R3、R4及びR5は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ビニル基、若しくはシアノ基により任意に置換されるフェニル基から選択される1つ又は複数の置換基により置換され得る炭素数1〜18のアルキル基、を独立して表し、又はR2、R3及びR4から選択される2個の置換基は、それらが結合する窒素原子若しくはリン原子と共に3員環〜7員環を形成する炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し、
R6及びR6’は存在し又は存在せず、R6又はR6’が存在する場合には、陰性基Qも存在し且つR6又はR6’は水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基を独立して表し、ただし、少なくとも1個のR6及びR6’が存在し、又はR5とR6若しくはR6’とは炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し、
R7は1つ又は複数のハロゲン原子により置換され得る炭素数6〜18のアルキル基を表し、又はR6若しくはR6’とR7とは炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し、
R8及びR9は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基により任意に置換されるフェニル基から選択される1つ又は複数の置換基により置換され得る炭素数6〜18のアルキル基を独立して表し、
R10は、水素原子、若しくは炭素数1〜18のアルキル基を表し、又はR10とR8若しくはR9とは炭素数2〜6のアルキレン基を共に表し、
は、単結合又はリンカーにより重合性基に結合している陰性基を表す)
から選択される基を含有する、請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項3】
Rが1個〜18個の炭素原子を有するm+n価の有機基である、請求項1又は2に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項4】
化学式(I)(式中、Vはエステル基である)のモノマーを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項5】
化学式(I)(式中、nは0より大きく、Aは化学式(II)の部分であり、化学式(II)においてLは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、xは0である)のモノマーを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項6】
Aが化学式(II)(式中、yは0であり、Lは水素原子であり、Mは化学式(IV)の基であり、化学式(IV)においてYはOであり、b及びcは1であり、dは0〜3の整数である)の部分である、請求項5に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項7】
Aが化学式(II)(式中、yは0であり、Lは水素原子であり、Mは化学式(IV)の基であり、化学式(IV)においてbは0であり、cは1であり、dは0〜3の整数であり、YはNH又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基である)の部分である、請求項5に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項8】
充填剤をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項9】
化学式(I)の化合物の分子量が100〜1000の範囲である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項10】
少なくとも10MPaの、象牙質への接着性を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項11】
一成分組成物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項12】
水性歯科用接着性組成物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項により規定される歯科用接着性組成物を調製する方法であって、
(i)該組成物の総重量を基準として10重量%〜60重量%の、加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物であって、以下の化学式(I):
R(A)(B) 化学式(I)
(式中、
Rは、単結合、又は1個〜20個の炭素原子並びに任意に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の群から選択される1個〜5個の原子を有するm+n価の有機基であり、
Aは、以下の化学式(II):
【化5】

(式中、
Lは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は以下の化学式(III):
【化6】

(式中、
R’は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基であり、
XはO、S、NH又はNR’’であり、NR’’においてR’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
aは0又は1である)
の基であり、
Mは、以下の化学式(IV):
【化7】

(式中、
YはO、S、NH又はNR’’’であり、NR’’’においてR’’’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基であり、
bは0〜3の整数であり、
cは0又は1であり、
dは0〜3の整数であり、
ただし、bが0である場合にはYはO又はSではない)
の基であり、
xは0又は1であり、
yは0又は1であり、
ただし、x及びyは共に1であることはなく、
ただし、L、又は化学式(III)の基が水素原子である場合にはxは1ではなく、
ただし、xが0である場合にはaも0であり、
ただし、yが0である場合には、bは0より大きい又はcは0である)
の部分を独立して表し、
Bは抗菌活性を有する基、又は酸性基を独立して表し、
mは1〜5の整数であり、
nは0〜3の整数であり、
m+nは少なくとも2である)
の加水分解に対し安定な重合可能なモノマーの混合物と、
(ii)水溶性の有機溶媒と、
(iii)開始剤及び安定剤と、
を混合する工程を含み、
nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが抗菌活性を有する基である化学式(I)の抗菌性モノマー部分が、前記混合物の総重量を基準として少なくとも0.01重量%であり、nが0より大きく且つ少なくとも1個のBが酸性基である化学式(I)の酸性モノマー部分が、前記混合物の総重量を基準として少なくとも0.1重量%である、歯科用接着性組成物を調製する方法。

【公表番号】特表2010−536895(P2010−536895A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522208(P2010−522208)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006404
【国際公開番号】WO2009/027005
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】