説明

残銑穿孔用ビット

【課題】 高炉の残銑に該残銑を除去するための孔を穿設する穿孔用ビットであって、ブレを生じさせることなく、残銑切り屑を円滑に排除しながら真っ直ぐな孔を能率よく穿設することができるビットを提供する。
【解決手段】 ビット本体1は、残銑を切削する超硬チップ2を装着している頭部1Aと、この頭部1Aと同径で且つ頭部よりも長さが長い胴部1Bとからなると共に、超硬チップ2の回転方向に面する側のビット本体部分に頭部1Aから胴部1Bの前半部に亘って平面視L字状の切り屑受け入れ凹部4、4を刻設してあり、さらに、この凹部4、4から胴部1Bの後端に至る全長に亘って排出溝5、5を刻設して、穿孔時にはビット本体1の外周面を全長に亘って孔壁に摺接させながら切り屑を切り屑受け入れ凹部4から排出溝4を通じて外部に排出させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の残銑の除去処理作業を行う際に、該残銑に発破用下穴等を穿孔するための穿孔ビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
穿孔機のロッド先端に穿孔ビットを装着して該穿孔ビットをロッドと一体に回転させながら高炉の残銑に穿孔を行う場合、残銑の性質上、穿孔ビットの磨耗が激しくて頻繁に交換する必要が生じる。このため、従来から交換等の取り扱いを容易にするためにできるだけ短尺の穿孔ビットを採用している。
【0003】
このような残銑穿孔用ビットとしては、例えは、特許文献1に記載されているように、短尺のシャンク部の前端部を該シャンク部よりも大径の頭部に形成し、この大径頭部の前端面(先端面)を円錐形状の傾斜面に形成すると共に該大径頭部に直径方向に貫通する一定幅と深さの溝状のチップ着座部を刻設してこのチップ着座部に前端面が大径頭部の前端傾斜面から僅かに突出した山形状の傾斜面に形成されている超硬チップを蝋付けによって固着すると共に、この超硬チップの両側端部を大径頭部の両側外周面から僅かに突出した状態に形成してなり、さらに、超硬チップにおける回転方向に面する頭部の両側部を外周面から中心部に向かって超硬チップの側面に沿って平面V字状に切り欠きすることにより切り屑受け入れ凹部(カッティングルーム)に形成すると共に、上記シャンク部内に後端が該シャンク部の後端面に開口している螺子孔を設けてこの螺子孔から頭部の先端面と切り屑受け入れ凹部に連通した注水孔を穿設してなる構造のものが知られている。
【0004】
このように構成した穿孔用ビットは、穿孔機のロッドの先端部にその螺子孔を螺合させることによって取り付けられ、この状態にして前端面を残銑に押し付けながら回転させることによって残銑に円形孔を穿孔してゆき、超硬チップによって切削された切り屑は、切り屑受け入れ凹部内に受け入れられたのち、注水孔を通じて該切り屑受け入れ凹部に供給される圧力水と共にシャンク部外周面と孔壁との間の隙間を通じて後方に排出している。
【特許文献1】実公平8−10517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記穿孔用ビットによれば、シャンク部の先端に一体に形成されている大径頭部の外周面を孔壁に沿って直進させながら穿孔していこうとしても、この大径頭部に後続する長さの長いシャンク部が大径頭部よりも小径に形成しているため、このシャンク部が穿孔中に頭部を支点として孔径方向に傾動してブレが発生し、孔に曲がりが発生して真っ直ぐな孔を穿設することが困難となる事態が発生する。このため、特許文献1においては、大径頭部の側部に補助超硬チップを突設しているが、穿孔途中のビットの摩擦抵抗が大きくなるという問題があった。また、切り屑をシャンク部の外周面と孔壁との間の僅かな隙間を通じて排出するように構成しているので、切り屑受け入れ凹部の後端からこの隙間に排出された切り屑が隙間に詰まり易くなってビット回転時の摩擦抵抗が大きくなり、そのため、穿孔能率が低下するばかりでなくビットを回転させる機構側に大きな負荷がかかって故障の発生の原因となり、その上、シャンク部の磨耗も激しくなる等の問題点がある。
【0006】
さらに、大径頭部の対向する両側部に設けている上記切り屑受け入れ凹部内に注水孔を通じて圧力水を供給し、この圧力水の流れによって切り屑を該凹部から上記シャンク部の外周面と孔壁間の隙間に排出させているが、この際、圧力水の流れがシャンク部の周方向にも拡散流動して切り屑を後方に排出しようとする作用力が低下するばかりでなく、切屑がシャンク部の外周面と孔壁との間の隙間を全面的に満たした状態となるから、上述したように、シャンク部にブレが発生した時に、そのブレが生じた方向の隙間が狭まって切り屑がシャンク部の外周面と孔壁とで強く圧着され、上述したようにシャンク部の摩損が激しくなると共に円滑な穿孔作業が行えなくなるといった問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ビット本体にブレを生じさせることなく、且つ、切り屑の排出も円滑に効率よく行って真っ直ぐな孔を確実に且つ能率よく穿設することができる残銑穿孔用ビットを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の残銑穿孔用ビットは、請求項1に記載したように、断面円形の頭部と、この頭部と同径で且つ該頭部よりも長さが長い胴部とから形成していると共に該頭部に直径方向に貫通する一定量の深さと幅を有するチップ着座部を刻設してこのチップ着座部に上記超硬チップを植設、固着してなるビット本体を有する残銑穿孔用ビットであって、頭部の前端から胴部の前半部に至るビット本体の対向する両側部に上記超硬チップの回転方向に面した板面をその一側面に露出させた正面視L字状の切り屑受け入れ凹部を形成していると共に、胴部の後半部両側面に前端が上記切り屑受け入れ凹部の後端外周部に連通した一定幅を有する排出溝を全長に亘って設けた構造としている。
【0009】
このように構成した残銑穿孔用ビットにおいて、請求項2に係る発明は、上記超硬チップの切刃の外側端と、これらの外側端から超硬チップの回転方向にそれぞれ略90度の間隔を存した外周部との間のビット本体の対向する両側部を該ビット本体の中心に達する深さまで切除することによって一側壁面に超硬チップの板面を露出させた正面視L字状の上記切り屑受け入れ凹部を形成していると共に、この切り屑受け入れ凹部の両側壁面における外端部の後端に上記排出溝の両側壁の前端を面一状に連続させてあり、さらに、切り屑受け入れ凹部の後端底面を該切り屑受け入れ凹部の他側壁面の後端から排出溝の溝幅方向に後方に傾斜した傾斜底面に形成していることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、上記超硬チップにおける切り屑受け入れ凹部側に面した切刃のすくい角を中心部側が正で外側が負のすくい角に形成していることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項4に係る発明は、上記ビット本体の頭部の前端面を、その中心から外周端に向かって緩やかに後方に傾斜した円錐形状の傾斜面に形成していると共に、この頭部に直径方向に植設、固着している超硬チップは、その前端面を頭部の傾斜前端面に沿った山形状に形成されていてその中央部に形成しているチゼルエッジを頭部の前端面中心部から前方に突出させていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記ビット本体の胴部の後端部を小径のシャンク部に形成していると共にこのシャンク部内に後端が該シャンク部の後端面に開口している中空ロッド接続用の螺子孔を設けてあり、この螺子孔から頭部の先端面と切り屑受け入れ凹部に連通した注水孔を穿設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、ビット本体を、超硬チップを植設している断面円形の頭部と、この頭部と同径で且つ該頭部よりも長さが長い胴部とから形成しているので、ビット本体を回転させながら超硬チップによって残銑に穿孔を行う際には、頭部から胴部の外周面が全長に亘って孔壁に摺接した状態となってビット本体にブレが発生するのを確実に防止しながら真っ直ぐな孔を円滑に穿設することができるものであり、その上、頭部の前端から胴部の前半部に至るビット本体の両側部に上記超硬チップの回転方向に面した板面をその一側面に露出させた平面視L字状の切り屑受け入れ凹部を形成していると共に、胴部の後半部両側面に前端が上記切り屑受け入れ凹部の後端外周部に連通した一定幅を有する排出溝を全長に亘って設けているので、超硬チップによって切削された切り屑をビット本体の胴部の外周面と孔壁間に詰まらすことなく、切り屑受け入れ凹部からこの切り屑受け入れ凹部に連通した排出溝を通じて円滑且つ確実に後方に排出することができると共に、ビット本体の回転時の摩擦抵抗を小さくすることができ、従って、摩損を低減して長時間の使用に供することができると共に穿孔作業が正確に且つ能率よく行うことができるものである。
【0014】
さらに、請求項2に係る発明によれば、超硬チップの切刃の外側端と、これらの外側端から超硬チップの回転方向にそれぞれ略90度の間隔を存した外周部との間のビット本体の両側部を該ビット本体の中心に達する深さまで切除することによって一側壁面に超硬チップの板面を露出させた正面視L字状の切り屑受け入れ凹部を形成しているので、超硬チップの先端切刃によって切削した切り屑を直接、この切り屑受け入れ凹部に取り込むことができるのは勿論、この切り屑受け入れ凹部の両側壁面における外端部の後端にビット本体の胴部の両側部に設けている排出溝の両側壁の前端を面一状に連続させているので、切り屑受け入れ凹部内の切り屑を胴部の外周面側に拡散させることなく、該切り屑受け入れ凹部から排出溝に直接、且つ集中的に送り出すことができて、ビット本体の摩損を極力防止しながら切り屑を円滑に且つ効率よく排出することができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明によれば、上記超硬チップにおける切り屑受け入れ凹部側に面している切刃のすくい角を中心部側が正で外側が負のすくい角に形成しているので、超硬チップの強度と切削能力を増大させることができ、効率のよい穿孔が可能となるものである。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、ビット本体の頭部の前端面をその中心から外周端に向かって緩やかに後方に傾斜した円錐形状の傾斜面に形成していると共に、この頭部に直径方向に植設、固着している超硬チップの前端面を頭部の傾斜前端面に沿った山形状に形成してあり、この超硬チップの中央部に形成しているチゼルエッジを頭部の前端面中心部から前方に突出させているので、このチゼルエッジによってビット本体をセンタリングした状態に保持しながら正確な方向に真っ直ぐな孔を穿設していくことができる。
【0017】
また、請求項5に係る発明によれば、ビット本体の胴部の後端部を小径のシャンク部に形成していると共にこのシャンク部内に後端が該シャンク部の後端面に開口している螺子孔を設けてあり、この螺子孔から頭部の先端面と切り屑受け入れ凹部に連通した注水孔を穿設しているので、穿孔時において、頭部の先端面から噴出する圧力水により、残銑及びビット本体を冷却しながら円滑に穿孔していくことができると共に、切り屑受け入れ凹部の後半部及びこの切り屑受け入れ凹部の後端に連通している排出溝を設けているビット本体の胴部の径を、超硬チップを設けている頭部の径と同径に形成しているから、切り屑受け入れ凹部内に供給された圧力水を排出溝に集中的に流出させながら、この切り屑受け入れ凹部内の切り屑を該圧力水によって強制的に効率よく排出溝を通じて外部に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は残銑穿孔用ビットの斜視図、図2は正面図、図3は側面図、図4は平面図であって、これらの図において、ビット本体1は鋼製であり、超硬チップ2を植設状態に装着される断面円形の頭部1Aと、この頭部1Aと同径で且つ該頭部1Aよりも長さが長い胴部1Bとから形成されている。即ち、ビット本体1は一定径と一定長さを有する短尺の鋼棒材からなり、その長さ方向の一端面から上記超硬チップ2の高さに相当する長さ部分の一端部を頭部1Aとしてその他の部分を胴部1Bとしている。
【0019】
頭部1Aの前端面(先端面)は、その中心から外周端に向かって後方に緩やかに傾斜した円錐形状の傾斜面に形成していると共に、該頭部1Aの直径方向に対向した両側面間に亘って頭部1Aの長さに相当する一定深さと幅を有する溝状のチップ着座部3を刻設してあり、このチップ着座部3内に超硬チップ2を挿入、植設して蝋付けにより固着している。超硬チップ2はその前端面を中央部から両側端に向かって頭部1Aの上記傾斜前端面と同一角度でもって緩やかに傾斜させた先端角が130 度の山形状に形成してあり、この前端中央部にチゼルエッジ2aを形成して該チゼルエッジ2aを頭部の前端面中心から前方に突出させていると共にその傾斜前端面を頭部1Aの傾斜前端面に面一状に連続させている。
【0020】
さらに、この超硬チップ2の前端面における回転方向の稜角部をその内端が上記チゼルエッジ2aの両側端にそれぞれ連続した切刃2b、2bに形成していると共に、頭部1Aの長さ方向に向けている該超硬チップ2の両側端部を全高(全長)に亘ってその前端が上記切刃2bの外端に対して直角に近い角度でもって連続したリーミング2c、2c部に形成してあり、これらのリーミング部2c、2cを頭部1Aの両側外周面から僅かに(1mm程度)突出させている。
【0021】
また、超硬チップ2は、上記切刃2b、2bを形成している側の板面をすくい面2dとして、このすくい面2dのすくい角を上記チゼルエッジ2aから超硬チップ2の外側端間の長さの略1/2の中心側部分ではその板面部分を切刃2bから後方に向かって徐々に板厚を厚くすることによって数度の正の角度に形成して所定の強度を発揮するように構成している一方、その長さ方向の中央部から外側端に至る外側部分を数度の負の角度に形成して切削能力を増大させるように構成していると共に、超硬チップ2の前端面を切刃2bから回転方向に対して一定の逃げ角でもって傾斜した逃げ面2eに形成している。なお、上記リーミング部2cも前端から後端に向かって一定角度の逃げ角が設けられている。
【0022】
さらに、ビット本体1の上記頭部1Aの前端から胴部1Bの前半部までの部分における両側部には、正面視L字状の切り屑受け入れ凹部4、4を形成している。この切り屑受け入れ凹部4は、超硬チップ2の上記リーミング部2c、2cと、これらのリーミング部2c、2cから超硬チップ2の回転方向にそれぞれ略90度の間隔を存した外周部との間のビット本体1の頭部前端から胴部1Bの前端部に亘る両側部を、該ビット本体1の中心に達する深さまで切除することによって形成されてあり、リーミング部2cの端縁部分からビット本体1の中心に向かって切り込むことにより形成された切り屑受け入れ凹部4の一側面4aに超硬チップ2の板面を全面的に露出させていると共に、切刃2bの外側端から回転方向に略90度の間隔を存した外周部からビット本体1の中心に向かって切り込むことにより形成された切り屑受け入れ凹部4の他側面4bは、頭部1Aの前端から胴部1Bの前端部に至る長さ部分を、一側面4aに対して互いに直角に対向させたビット本体1の長さ方向に平行な側面に形成している。
【0023】
この切り屑受け入れ凹部4における他側面4bの後端からビット本体1の胴部1Bにおける前半部にかけて設けられている切り屑受け入れ凹部4の後半部は、この他側面4bを形成するための切り込み方向を、その切り込み深さを変えることなく後方にゆくに従って上記一側面4b側に向かって緩やかな凹円弧状を描くように変えながら切り込むと共に、この切り込み深さに応じて超硬チップ2のリーミング部2cの後端延長方向における胴部1Bの前半外周面部からのビット本体1の中心に向かって切り込む深さを徐々に浅くすることにより、凹円弧状の傾斜底面4cに形成している。
【0024】
ビット本体1における胴部1Bの後半部両側面には、前端が上記切り屑受け入れ凹部4、4の後端外周部、即ち、上記傾斜底面4cの外端にそれぞれ連通した一定幅と一定深さを有する排出溝5、5を全長に亘って設けている。この排出溝5の溝幅は、切り屑受け入れ凹部4における両側面4a、4bの外端間の開口幅に略等しく形成されてあり、排出溝5の一側壁面5aと他側壁面5bとの前端を切り屑受け入れ凹部4の両側面4a、4bの外端部の後端にそれぞれ連続させている。
【0025】
さらに、ビット本体1の胴部1Bの後端部を小径の短いシャンク部1Cに形成していると共にこのシャンク部1C内には、図5、図6に示すように、該シャンク部1Cの後端面中央部から前方に向かって一定深さの螺子孔6を設けてあり、この螺子孔6の孔底面から頭部1Aの前端面両側部と切り屑受け入れ凹部4、4の他側面4bの下端部とに連通した注水孔7、7及び8、8をそれぞれ穿設している。また、シャンク部1Cにおける上記排出溝5、5が設けられている外周面における直径方向に対向する部分に互いに平行な平坦面に形成されたレンチ等の係止面9、9を形成している。
【0026】
このように構成した残銑穿孔用ビットを使用して残銑に所定深さの孔を穿設するには、図6に示すように、まず、ビット本体1の後端シャンク部1Cに設けている上記螺子孔6を穿孔機(図示せず)の中空ロッド10の先端外周部に形成している雄螺子部11を螺合させてこの中空ロッド10の先端部にビット本体1を一体に連結する。この状態にしてビット本体1の頭部1Aに装着している超硬チップ2を残銑12に押しつけながら中空ロッド10を回転させることにより穿孔していく。この際、中空ロッド10内を通じて圧力水をビット本体1内に設けている上記注水孔7、8を通じてビット本体1の頭部1Aの前端面と切り屑受け入れ凹部4、4内に供給し、頭部1Aの前端面から噴出する圧力水によって切削面を冷却しながら穿孔していく。
【0027】
この穿孔時において、ビット本体1は超硬チップ2を装着している頭部1Aから胴部1Bの後端部に至る全長を同一径に形成しているので、これらの外周面が超硬チップ2によって穿設される孔壁13に摺接しながらブレが生じることなく真っ直ぐに掘進すると共に切り屑が胴部1Bの外周面側に回り込むのを防止しながら切り屑受け入れ凹部4、4内に直ちに受け入れさせることができる。この切り屑受け入れ凹部4内の切り屑は、該切り屑受け入れ凹部4内に供給される圧力水と共に切り屑受け入れ凹部4の後端外周部に連通している排出溝5に流入し、この排出溝5、5内を通じて中空ロッド10の外周面と孔壁11との間の隙間に流出し、この隙間を通じて外部に排出される。
【0028】
なお、このビット本体1の胴部1Bにおける後端部のシャンク部1Cの外周面に形成している上記係止面9、9は、穿孔後において、中空ロッド10の先端部からビット本体1を取り外す時に、その係止面9、9をレンチ等によって掴持してビット本体1と中空ロッド10とを相対的に回転させ、ビット本体1の螺子孔6と中空ロッド10の雄螺子部9aとの螺合を解くために設けられているが、このような係止面9、9や、小径のシャンク部1Cは必ずしも設けておく必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の残銑穿孔用ビットの斜視図。
【図2】その正面図。
【図3】側面図。
【図4】平面図。
【図5】背面図。
【図6】穿孔している状態の一部縦断簡略断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 ビット本体
1A 頭部
1B 胴部
2 超硬チップ
3 チップ着座部
4 切り屑受け入れ凹部
5 排出溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の頭部と、この頭部と同径で且つ該頭部よりも長さが長い胴部とから形成していると共に該頭部に直径方向に貫通する一定量の深さと幅を有するチップ着座部を刻設してこのチップ着座部に上記超硬チップを植設、固着してなるビット本体を有する残銑穿孔用ビットであって、頭部の前端から胴部の前半部に至るビット本体の対向する両側部に上記超硬チップの回転方向に面した板面をその一側面に露出させた正面視L字状の切り屑受け入れ凹部を形成していると共に、胴部の後半部両側面に前端が上記切り屑受け入れ凹部の後端外周部に連通した一定幅を有する排出溝を全長に亘って設けていることを特徴とする残銑穿孔用ビット。
【請求項2】
超硬チップの切刃の外側端と、これらの外側端から超硬チップの回転方向にそれぞれ略90度の間隔を存した外周部との間のビット本体の対向する両側部を該ビット本体の中心に達する深さまで切除することによって一側壁面に超硬チップの板面を露出させた正面視L字状の切り屑受け入れ凹部を形成していると共に、この切り屑受け入れ凹部の両側壁面における外端部の後端に排出溝の両側壁の前端を面一状に連続させてあり、さらに、切り屑受け入れ凹部の後端底面を該切り屑受け入れ凹部の他側壁面の後端から排出溝の溝幅方向に向かって後方に傾斜した傾斜底面に形成していることを特徴とする請求項1に記載の残銑穿孔用ビット。
【請求項3】
超硬チップにおける切り屑受け入れ凹部側に面している切刃のすくい角を中心部側が正で外側が負のすくい角に形成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の残銑穿孔用ビット。
【請求項4】
ビット本体の頭部の前端面をその中心から外周端に向かって緩やかに後方に傾斜した円錐形状の傾斜面に形成していると共に、この頭部に直径方向に植設、固着している超硬チップの前端面を頭部の傾斜前端面に沿った山形状に形成してあり、この超硬チップの中央部に形成しているチゼルエッジを頭部の前端面中心部から前方に突出させていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の残銑穿孔用ビット。
【請求項5】
ビット本体の胴部の後端部を小径のシャンク部に形成していると共にこのシャンク部内に後端が該シャンク部の後端面に開口している中空ロッド接続用の螺子孔を設けてあり、この螺子孔から頭部の先端面と切り屑受け入れ凹部に連通した注水孔を穿設していることを特徴とする請求項1に記載の残銑穿孔用ビット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−133594(P2008−133594A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318390(P2006−318390)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000221889)東邦金属株式会社 (28)
【Fターム(参考)】