説明

殺生物効力を強化するためのカチオン性ポリサッカライドの使用

コンタクトレンズを消毒する及び眼レンズ用組成物を保存するための、1種又はそれ以上の抗微生物剤との組合わせにての1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドの組成物の使用が記載される。1種又はそれ以上の抗微生物剤との組合わせにての1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドの組成物を含有する眼レンズ用溶液、並びにそれらを作る及び用いる方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒及び保存を強化するための1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドの使用に向けられる。より特には、本発明は、眼用の溶液及び用具の消毒及び保存を強化するための、1種又はそれ以上の抗微生物剤との組合わせにての1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドの使用に向けられる。
【背景技術】
【0002】
今日広く用いられているコンタクトレンズは、2つの一般カテゴリーすなわちハード及びソフトに入る。ハード角膜タイプレンズは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のようなアクリル酸エステルの重合により製造された物質から形成される。ゲル、ヒドロゲル又はソフトタイプレンズは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のようなモノマーを重合することにより、あるいは連続装用レンズの場合にはケイ素を含有するモノマー又はマクロモノマーを重合することにより作られる。ハードタイプ及びソフトタイプのコンタクトレンズの両方共、正常な装用中に広範囲の微生物に曝され、そして比較的速く汚されるようになる。それ故、コンタクトレンズは、ハードであろうがソフトであろうが、日常的な洗浄及び消毒を要求する。日常的にコンタクトレンズを適正に洗浄及び消毒しないことは、装用されている時の単なる不快感から重大な眼感染症にわたる様々な問題に通じ得る。緑膿菌のようなビルレント微生物により引き起こされた眼感染症は、もし未処置のままにされるならば又はもし処置の開始前に進行段階に達するようにされるならば、感染眼の失明に通じ得る。
【0003】
米国特許第4,758,595号は、緩衝剤好ましくはホウ酸塩緩衝剤たとえばホウ酸、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム又はそれらの混合物との組合わせにてビグアニド又はその水溶性塩を含有するコンタクトレンズ用消毒剤兼保存剤を開示する。
【0004】
米国特許第4,361,548号は、ポリマーすなわち約10,000から1,000,000の範囲の分子量を有するジメチルジアリルアンモニウムクロライド(DMDAAC)の希薄水溶液を含有するコンタクトレンズ用消毒剤兼保存剤を開示する。チメロサール、ソルビン酸又はフェニル第2水銀塩のような強化剤が一緒に用いられる場合、0.00001質量パーセントくらいの低い量のDMDAACホモポリマーが用いられ得る。DMDAACとのレンズの結合及び付随する眼組織の刺激は低減されたけれども、何人かの使用者において、望ましい臨床レベルを超えることが分かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱、過酸化水素、ビグアニド、ポリマー状ビグアニド、第4級アンモニウムポリエステル、アミドアミン及び他の化学薬剤のような様々な商業的に入手できるコンタクトレンズ用消毒系の入手可能性にもかかわらず、改善消毒系に対するニーズが存続している。かかる改善消毒系は、用いるのが簡単であり、広範囲の微生物に有効であり、非毒性であり及びコンタクトレンズ物質への結合の結果としての眼刺激を引き起こさない系を包含する。コンタクトレンズ消毒及び眼用組成物保存の分野において、抗微生物活性を備えた安全で有効な化学薬剤に対する特別なニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハード透過性コンタクトレンズを含めてあらゆるタイプのコンタクトレンズを洗浄する、消毒する、浸漬する、すすぐ、濡らす及び状態調整するために有用な多目的コンタクトレンズ用溶液の強化殺生物活性に関する。より特には、本発明は、眼用の溶液及び用具の強化消毒及び保存に関して低下レベル又は低減量の1種又はそれ以上の抗微生物剤の使用を可能にする1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドの使用に関する。低下レベルの1種又はそれ以上の抗微生物剤との組合わせにて1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを含む組成物は優秀な消毒及び/又は保存効果示す一方、レンズ装用者の快適さも増加する、ということが分かった。本発明のポリサッカライド含有組成物はまた、微生物汚染に抗しての製薬、人工涙及び快適用点滴剤のような眼用組成物の保存のために有用である。
【0007】
本ポリサッカライド含有組成物は、非毒性であり、用いるのが簡単であり且つ眼刺激を引き起こさない多目的溶液の製造に有効である。
【0008】
従って、本発明の目的は、眼用消毒系の製造に有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、医療用具の消毒において強化殺生物活性を備えた組成物を用いる方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、コンタクトレンズを消毒するための眼用系において有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、微生物汚染から眼用系を防護するのに有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、眼刺激性が低減又は除去されているところの、コンタクトレンズを消毒するための眼用系において有用な強化殺生物活性を備えた組成物を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、眼用系において有用な強化殺生物活性を備えた組成物を作る方法を提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、消毒剤及び保存剤として有用な強化殺生物活性を備えた組成物を作る方法を提供することである。
【0015】
本発明のこれらの及び他の目的及び利点(それらのうちのいくつかは特定的に記載され、そして他のものは記載されていない)は、以下の詳細な説明及び請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の組成物は、従来のハード及びソフトレンズ並びにハード及びソフトガス透過性レンズのようなあらゆるコンタクトレンズに関して用いられ得る。かかる適当なレンズは、ヒドロゲルレンズ及び非ヒドロゲルレンズの両方、並びにシリコーン含有及びフッ素含有レンズを包含する。本明細書において用いられる場合の用語「ソフトコンタクトレンズ」は、一般に、少量の力下で容易に曲がるコンタクトレンズを指す。典型的には、ソフトコンタクトレンズは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又は他の親水性モノマーのようなモノマーに由来する或る割合の反復単位を有するポリマー(典型的には、架橋剤で架橋されている)から処方される。しかしながら、より最近のソフトレンズ特に連続装用用のものは、高Dkシリコーン含有物質から作られつつある。
【0017】
本発明の組成物は、1種又はそれ以上の抗微生物剤との組合わせにて1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを含む。本ポリサッカライド含有組成物が、1種又はそれ以上の抗微生物剤の標準的なレベル又は量より低いレベル又は量でもって用いられる場合でさえ、優秀な消毒及び/又は保存効果を示す、ということは驚きである。レンズケア用溶液中の抗微生物剤の標準的総量は、0.5部毎100万部(ppm)から15ppmの範囲にある。消毒量を達成するために、抗微生物剤の標準的総量の5から30パーセントまでの低減が、本発明の組成物において用いられ得る。
【0018】
本発明のポリサッカライド含有組成物は、医療用具を消毒するために有用である。たとえば、本ポリサッカライド含有組成物は、コンタクトレンズを消毒するためのコンタクトレンズケア用溶液において有用である。本発明の組成物は、好ましくは、推奨最小浸漬時間内でコンタクトレンズの表面上の有害な微生物を破壊するのに十分な濃度にて溶解状態にある。推奨最小浸漬時間は、その溶液の使用のためのパッケージの説明書に含められる。用語「消毒溶液」は、本組成物を含有する特定の処方物に依存して、該溶液が保存溶液としても有用であり得るという可能性又は該消毒溶液がコンタクトレンズの毎日の洗浄、すすぎ及び保管のような他の目的のために有用であり得るという可能性を排除しない。加えて、本発明の組成物は、所望される場合、他の公知の消毒性又は保存性化合物と共に用いられ得る。
【0019】
溶解状態の本発明の組成物は、コンタクトレンズに関しての使用について、生理学的に適合性がありすなわち「眼に安全」である。本明細書において用いられる場合の眼に安全は、本溶液で又は本溶液中で処理されたコンタクトレンズがすすぎなしに眼上に直接的に置かれるのに一般に適しており且つ安全であることを意味する。本溶液は、該溶液で濡らされたコンタクトレンズを介しての眼との毎日の接触について安全で且つ快適である。眼に安全な溶液は眼に対して適合性がある張度及びpHを有し、そしてISO(国際標準規格機構)標準規格及び米国FDA(食品医薬品局)規制に従って非細胞毒性である物質及びそれらの量を含む。該溶液は、放出前のその製品中の微生物汚染物の不存在がかかる製品に必要な程度まで統計的に示されるべきであることにおいて無菌であるべきである。
【0020】
本発明の組成物は、1種又はそれ以上の抗微生物剤との組合わせにて1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを含む。1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドは、組成物の総質量を基準としておおよそ0.001からおおよそ0.5質量パーセントしかし一層好ましくは約0.005から約0.05質量パーセントの総量にて本組成物中に存在する。本発明の組成物における使用のための適当なカチオン性ポリサッカライドは、たとえば、たとえば75〜125cPの2パーセント溶液粘度及び1.5から2.2パーセント窒素を有するPolymer JR 125TM(ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Company)、300から500cPの2パーセント溶液粘度及び1.5から2.2パーセント窒素を有するPolymer JR 400TM(Dow Chemical Company)、1,000から2,500cPの1パーセント溶液粘度及び1.5から2.2パーセント窒素を有するPolymer JR 30MTM(Dow Chemical Company)、300から500cPの2パーセント溶液粘度及び0.8から1.1パーセント窒素を有するPolymer LR 400TM(Dow Chemical Company)、1,250から2,250cPの1パーセント溶液粘度及び0.8から1.1パーセント窒素を有するPolymer LR 30MTM(Dow Chemical Company)並びに300から500cPの2パーセント溶液粘度及び0.8から1.1パーセント窒素を有するPolymer LKTM(Dow Chemical Company)のような、ポリクォターニウム−10の異型を包含するが、しかしそれらに限定されない。本発明における使用のための好ましいカチオン性ポリサッカライドは、Polymer JR 125TM又はPolymer JR 400TMである。
【0021】
本発明の組成物はまた、1種又はそれ以上の抗微生物剤を含む。1種又はそれ以上の抗微生物剤は、組成物の総質量を基準としておおよそ0.00005からおおよそ0.0015質量パーセントしかし一層好ましくは約0.0007から約0.0015質量パーセントの総量にて本組成物中に存在する。本発明における使用のための適当な抗微生物は、たとえば、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニド](クロルヘキシジン)又はその水溶性塩、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(2−エチルヘキシル)ビグアニド](アレキシジン)又はその水溶性塩、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)又はその水溶性塩、ポリクォターニウム−1及び第4級アンモニウムエステルを包含するが、しかしそれらに限定されない。ビグアニドは米国特許第5,990,174号、第4,758,595号及び第3,428,576号に記載されており、しかしてそれらの各々は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。容易な商業的入手可能性の故に好ましい抗微生物剤は、普通にはポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)とも称されるポリ(アミノプロピルビグアニド)(PAPB)であり、そして最も好ましくは抗微生物剤は1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(2−エチルヘキシル)ビグアニド(アレキシジン)である。
【0022】
本発明の組成物は、随意に、組成物の総質量を基準としておおよそ0.02からおおよそ3.0質量パーセントの総量にて存在するところの、エタノールアミン緩衝剤のような1種又はそれ以上のアミノアルコール緩衝剤を含み得る。適当なアミノアルコール緩衝剤は、たとえば、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパンジオール(DMAMP)、2−アミノ−2−エチルプロパノール(AEP)、2−アミノ−1−ブタノール(AB)及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、しかし好ましくはMEA、DEA又はTEAを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0023】
本発明の組成物はまた、洗浄効力及び快適さの点で知られた利点を有する少なくとも1種の界面活性剤を含む。界面活性剤は、組成物の総質量を基準としておおよそ0.001からおおよそ25.0質量パーセントしかし一層好ましくは約0.001から約5.0質量パーセントの総量にて本組成物中に存在する。適当な界面活性剤は、たとえば、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)すなわち(PEO−PPO−PEO)若しくはポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)すなわち(PPO−PEO−PPO)又はそれらの組合わせに基づいたポリエーテルを包含するが、しかしそれらに限定されない。PEO−PPO−PEO及びPPO−PEO−PPOは商品名PluronicsTM、R-PluronicsTM、TetronicsTM及びR-TetronicsTM(ミシガン州ワイアンドットのBASF Wyandotte Corp.)下で商業的に入手でき、また更に米国特許第4,820,352号(参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)に記載されている。本組成物における使用のための適当な界面活性剤はレンズケア用溶液に可溶であるべきであり、濁るようになるべきでなく、また眼組織に対して非刺激性であるべきである。
【0024】
別の有用なクラスの界面活性剤は、米国特許第5,858,937号(Richards等)に開示されているもののようなヒドロキシアルキルホスホネート(HAP)であり、しかして商品名Dequest(登録商標)(ミズーリ州セントルイスのMontsanto Co.)そして最も好ましくはDequest(登録商標)2016下で入手できる。
【0025】
随意に、1種又はそれ以上の水溶性増粘剤を本組成物中に含めることが望ましくあり得る。増粘剤の刺激軽減効果の故に、それらは眼への衝撃を和らげるところのレンズ表面上の膜により、レンズ装用者の快適さを強化する傾向を有する。適当な増粘剤は、たとえば、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロースポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、等を包含するが、しかしそれらに限定されない。増粘剤は、約0.01から約4.0質量パーセントの範囲の量又はそれ以下にて用いられ得る。
【0026】
溶解状態にある場合、本発明の組成物はまた、その溶液の最終pHを調整するために、アミノアルコール緩衝剤に加えて1種若しくはそれ以上の緩衝剤又は緩衝系を含む。適当な緩衝剤は、たとえば、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)緩衝剤、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン(ビス−トリス)緩衝剤、重炭酸ナトリウム及びそれらの組合わせを包含するが、しかしそれらに限定されない。適当な緩衝系は、たとえば、少なくとも1種のリン酸塩緩衝剤と少なくとも1種のホウ酸塩緩衝剤を含み得、しかも該緩衝系はpHを1単位変化させるために、0.01から0.5mM好ましくは0.03から0.45mMの0.01NのHCl及び0.01から0.3mM好ましくは0.025から0.25mMの0.01NのNaOHの緩衝容量を有する。緩衝容量は、緩衝剤のみの溶液により測定される。
本発明のレンズケア用溶液のpHは、好ましくは5.0から8.0一層好ましくは約6.0から8.0最も好ましくは約6.5から7.8の範囲内に維持される。
【0027】
本発明の組成物はまた、正常な涙液の浸透圧(0.9パーセント塩化ナトリウム溶液又は2.5パーセントグリセリン溶液に等価である)に近づけるために、1種又はそれ以上の等張化剤を含む。適当な等張化剤の例は、ナトリウム及びカリウムの塩化物、デキストロース、マンノース、グリセリン、カルシウム及びマグネシウムの塩化物を包含するが、しかしそれらに限定されない。これらの作用剤は、典型的には、個々に約0.01から2.5パーセントw/vそして好ましくは約0.2から約1.5パーセントw/vの範囲の量にて用いられる。等張化剤は、好ましくは200から450mOsm/kgそして一層好ましくは約220から約350mOsm/kgの間そして最も好ましくは約220から約320mOsm/kgの間の最終浸透価をもたらす量にて用いられる。
【0028】
本発明の組成物は、随意に、金属イオンと結合する1種又はそれ以上の金属イオン封鎖剤を含み得、しかして眼用溶液の場合において、さもないと金属イオンはタンパク質析出物と反応しそしてコンタクトレンズ上に集まり得る。適当な金属イオン封鎖剤は、たとえば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩を包含するが、しかしそれらに限定されない。金属イオン封鎖剤は、好ましくは、約0.01から約0.2質量パーセントの範囲の量にて用いられる。
【0029】
本発明の組成物は、以下の例にて更に一層詳細に記載される。
例1 − 試験試料溶液の作製
下記において表1に示された処方に従って、試験のための試料溶液を作製した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
例2 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験試料の殺生物試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、10パーセント有機汚れのある場合のISO/FDA微生物殺生物効力について、上記の例1に従って作製された試験溶液を各々試験した。細菌について規定された一次合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が最小推奨消毒期間内で3.0logより小さくない値低減されることを要求する。酵母及び糸状菌について規定された一次合格基準は、+/−0.5logの実験誤差内で、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が最小推奨消毒時間内で1.0logより小さくない値低減されると共に、最小推奨消毒時間の4倍より小さくない時間において増加がないことを要求する。細菌についての二次合格基準は、3種の細菌のすべての平均値についての総合対数低減が推奨消毒期間内で5.0logより小さくないことを要求する。任意の単一細菌タイプについての最小の合格可能平均対数低減は1.0logである。酵母及び糸状菌についての発育阻止は、最小推奨消毒期間認められねばならない。対象試験溶液のISO/FDA微生物殺生物効力試験の結果は、下記において表2に示されている。
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
例3 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験試料の殺生物試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、有機汚れのない場合のISO/FDA微生物殺生物効力について、上記の例1に従って作製された試験溶液を各々試験した。細菌について規定された一次合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が最小推奨消毒期間内で3.0logより小さくない値低減されることを要求する。酵母及び糸状菌について規定された一次合格基準は、+/−0.5logの実験誤差内で、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が最小推奨消毒時間内で1.0logより小さくない値低減されると共に、最小推奨消毒時間の4倍より小さくない時間において増加がないことを要求する。細菌についての二次合格基準は、3種の細菌のすべての平均値についての総合対数低減が推奨消毒期間内で5.0logより小さくないことを要求する。任意の単一細菌タイプについての最小の合格可能平均対数低減は1.0logである。酵母及び糸状菌についての発育阻止は、最小推奨消毒期間認められねばならない。対象試験溶液のISO/FDA微生物殺生物効力試験の結果は、下記において表3に示されている。
【0038】
【表7】

【0039】
【表8】

【0040】
例4 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験試料の殺生物試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、10パーセント有機汚れのある場合のISO/FDA微生物殺生物効力について、上記の例1に従って作製された試験溶液を各々試験した。細菌について規定された一次合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が最小推奨消毒期間内で3.0logより小さくない値低減されることを要求する。酵母及び糸状菌について規定された一次合格基準は、+/−0.5logの実験誤差内で、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が最小推奨消毒時間内で1.0logより小さくない値低減されると共に、最小推奨消毒時間の4倍より小さくない時間において増加がないことを要求する。細菌についての二次合格基準は、3種の細菌のすべての平均値についての総合対数低減が推奨消毒期間内で5.0logより小さくないことを要求する。任意の単一細菌タイプについての最小の合格可能平均対数低減は1.0logである。酵母及び糸状菌についての発育阻止は、最小推奨消毒期間認められねばならない。対象試験溶液のISO/FDA微生物殺生物効力試験の結果は、下記において表4に示されている。
【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
例5 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験試料の殺生物試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、10パーセント有機汚れのある場合のISO/FDA微生物殺生物効力について、上記の例1に従って作製された試験溶液を各々試験した。細菌について規定された一次合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が最小推奨消毒期間内で3.0logより小さくない値低減されることを要求する。酵母及び糸状菌について規定された一次合格基準は、+/−0.5logの実験誤差内で、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が最小推奨消毒時間内で1.0logより小さくない値低減されると共に、最小推奨消毒時間の4倍より小さくない時間において増加がないことを要求する。細菌についての二次合格基準は、3種の細菌のすべての平均値についての総合対数低減が推奨消毒期間内で5.0logより小さくないことを要求する。任意の単一細菌タイプについての最小の合格可能平均対数低減は1.0logである。酵母及び糸状菌についての発育阻止は、最小推奨消毒期間認められねばならない。対象試験溶液のISO/FDA微生物殺生物効力試験の結果は、下記において表5に示されている。
【0044】
【表11】

【0045】
【表12】

【0046】
例6 − 5種のFDA/ISO接種微生物に関しての試験試料の殺生物試験
5種のFDA/ISO接種微生物すなわち3種の細菌及び2種の真菌を用いて、10パーセント有機汚れのある場合のISO/FDA微生物殺生物効力について、上記の例1に従って作製された試験溶液を各々試験した。細菌について規定された一次合格基準は、ml当たり回復された生存可能細菌数が最小推奨消毒期間内で3.0logより小さくない値低減されることを要求する。酵母及び糸状菌について規定された一次合格基準は、+/−0.5logの実験誤差内で、ml当たり回復された生存可能酵母及び糸状菌数が最小推奨消毒時間内で1.0logより小さくない値低減されると共に、最小推奨消毒時間の4倍より小さくない時間において増加がないことを要求する。細菌についての二次合格基準は、3種の細菌のすべての平均値についての総合対数低減が推奨消毒期間内で5.0logより小さくないことを要求する。任意の単一細菌タイプについての最小の合格可能平均対数低減は1.0logである。酵母及び糸状菌についての発育阻止は、最小推奨消毒期間認められねばならない。対象試験溶液のISO/FDA微生物殺生物効力試験の結果は、下記において表6に示されている。
【0047】
【表13】

【0048】
本発明のカチオン性ポリサッカライド含有組成物は、コンタクトレンズを消毒するためのコンタクトレンズケア用溶液として有用である。抗微生物剤の消毒量は、使用処方物中の微生物母集団を少なくとも部分的に低減する量である。好ましくは、消毒量は、代表細菌の微生物負荷量を4時間で2対数桁そして一層好ましくは1時間で1対数桁低減する量である。最も好ましくは、消毒量は、投薬計画(FDA化学的消毒効力試験−1985年7月コンタクトレンズ用溶液ドラフトガイドライン)に従って推奨浸漬時間用いられる場合、コンタクトレンズ上の微生物負荷量を除去する量である。典型的には、かかる病原体は、約0.00001から約0.5パーセント質量/容量(w/v)そして一層好ましくは約0.00003から約0.5パーセントw/vの範囲の濃度にて存在する。予期せぬことに、消毒量を達成するために、1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドの存在下では、抗微生物剤のより少量(すなわち、5から30パーセント低減そして一層好ましくは15から30パーセント低減)しか要求されない。
【0049】
上記に述べられたように、コンタクトレンズは、該レンズを本発明の1種又はそれ以上の組成物の溶液と接触させることにより消毒される。これは単にレンズを本溶液中に浸漬することにより成し遂げられ得るけれども、該溶液の数滴を最初にレンズの各側上に置きそしてこれらのレンズをある期間たとえばおおよそ20秒擦る場合、より強い洗浄が達成され得る。その場合に、レンズは引き続いて数ミリリットルの本溶液内に浸され得る。好ましくは、レンズは溶液中に少なくとも4時間浸漬するようにされる。次いで、レンズは溶液から取り出され、同じ又は異なる溶液たとえば保存等張食塩水ですすがれ、そして次いで眼上に戻される。
【0050】
本発明の1種又はそれ以上の組成物を含有する溶液は、眼科学の分野において慣用であるような使用のために、特定のコンタクトレンズケア用製品に処方され得る。かかる製品は、濡らし溶液、浸漬溶液、洗浄及び状態調整溶液、並びに多目的型レンズケア用溶液並びに眼内の洗浄及び状態調整溶液を包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0051】
本発明はその特定の例と共に記載されてきたけれども、これは例示にすぎない。従って、前記の説明に照らして数多くの代替手段、改変及び変型が当業者に明らかであり、そしてそれ故かかる代替手段、改変及び変型のすべてを添付請求項の精神及び範囲内に入るように包含するよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライド及び低減量における消毒量の1種又はそれ以上の抗微生物剤を含む組成物。
【請求項2】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリクォターニウム−10の異型から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリマー(Polymer)JR 125、ポリマー(Polymer)JR 400、ポリマー(Polymer)JR 30M、ポリマー(Polymer)LR 400、ポリマー(Polymer)LR 30 M及びポリマー(Polymer)LKから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1種又はそれ以上の抗微生物剤が、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニド]、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニド]の水溶性塩、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(2−エチルヘキシル)ビグアニド]、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(2−エチルヘキシル)ビグアニド]の水溶性塩、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)の水溶性塩、ポリクォターニウム−1及び第4級アンモニウムエステルから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1種又はそれ以上の抗微生物剤が1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニド]を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1種又はそれ以上の抗微生物剤の消毒量が、5から30パーセント低減された標準量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを低減量における消毒量の1種又はそれ以上の抗微生物剤と一緒にすることを含む方法。
【請求項8】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリクォターニウム−10の異型から成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドが、ポリマー(Polymer)JR 125、ポリマー(Polymer)JR 400、ポリマー(Polymer)JR 30M、ポリマー(Polymer)LR 400、ポリマー(Polymer)LR 30 M及びポリマー(Polymer)LKから成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
1種又はそれ以上の抗微生物剤が、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニド]、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニド]の水溶性塩、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(2−エチルヘキシル)ビグアニド]、1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(2−エチルヘキシル)ビグアニド]の水溶性塩、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)の水溶性塩、ポリクォターニウム−1及び第4級アンモニウムエステルから成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
1種又はそれ以上の抗微生物剤が1,1′−ヘキサメチレン−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニド]を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
1種又はそれ以上の抗微生物剤の消毒量が、5から30パーセント低減された標準量である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
1種又はそれ以上の請求項1に記載の組成物を含む溶液。
【請求項14】
溶液が、1種又はそれ以上の緩衝剤又は緩衝系を含む、請求項13に記載の溶液。
【請求項15】
溶液が、1種又はそれ以上の等張化剤を含む、請求項13に記載の溶液。
【請求項16】
溶液が、1種又はそれ以上の界面活性剤を含む、請求項13に記載の溶液。
【請求項17】
溶液が、1種又はそれ以上の増粘剤を含む、請求項13に記載の溶液。
【請求項18】
請求項13に記載の溶液を用いる方法であって、コンタクトレンズの表面を該溶液と、該コンタクトレンズ上の微生物負荷量を除去するのに適した期間接触させることを含む方法。
【請求項19】
請求項13に記載の溶液を製造する方法であって、低減容量の消毒量の1種又はそれ以上の抗微生物剤及び1種又はそれ以上のカチオン性ポリサッカライドを溶液に添加することを含む方法。

【公表番号】特表2007−513157(P2007−513157A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542626(P2006−542626)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/039278
【国際公開番号】WO2005/053760
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】