説明

殺菌有機汚泥の製造方法

殺菌有機汚泥を製造する方法であって、以下に示す工程、セルロース含有成分、超吸収剤、及び脱水有機汚泥を機械的に混合する工程と、この混合物を殺菌用容器内へ誘導する工程と、所望の温度に到達するまでこの汚泥混合物に連続的に空気を供給する工程と、を含む方法について記述する。超吸収剤によって汚泥混合物の保水性が向上し、コンポスト化中の悪臭及び漏出が防止される。セルロース成分は、細断された新聞紙が好ましく、汚泥混合物への空気供給を増加させる。この方法は、下水汚泥、炭化水素汚染土壌、及び水産加工又は食肉処理場からの廃棄物の処理に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機汚泥を殺菌する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公共下水処理施設からの堆積有機汚泥、特に脱水汚泥は、特に悪臭、感染の危険性、排水などの点から大きな環境問題となる。このような汚泥を利用可能にするためには、例えば肥料又は土壌改良剤として使用できるように汚泥を殺菌しなければならない。殺菌は、マス(mass)の温度を約60℃まで上昇させて行うが、この温度では汚泥内のバクテリアの活性、すなわち感染の危険性が許容レベルにまで低下する。
【0003】
特に下水処理施設から出る汚泥の殺菌において生ずる一つの問題として、汚泥の粘性のため、コンポスト化を利用した十分に有効な殺菌を行うことが困難になるということがある。通常、汚泥は非常に細かい粒子状物質から成り、そのため、分解プロセス自体を行う好気性バクテリアがそのプロセスを満足のいくレベルで行うのに十分な酸素が供給されない。さらに、汚泥が非常に細かい粒子状物質から成るのに加えて水分形成も起こるため、酸素の供給量はさらに低下することになる。この結果、悪臭及び液体の排出という問題が生ずる。
【0004】
このような汚泥を処理する一連の方法及び設備は公知である。これまでに最もよく使われている方法は、汚泥のコンポスト化である。これは非常に時間のかかるプロセスで、悪臭及び排水という点で問題を生じ、しかも結果として得られる物質は取り扱いが困難である。
【0005】
別の公知の方法としては、マスに石灰を添加する方法があり、これによって化学反応とそれに伴うマスの温度上昇を引き起こす。この方法の欠点は、比較的大量の石灰が必要であることで、このため悪臭の問題(アンモニアの形成)が起こる場合があり、処理済み汚泥を肥料又は土壌改良剤として用いる場合に適切であるバクテリアの一部を死滅させてしまう場合もある。
【0006】
さらに別の公知の方法としては、外部熱源から熱を供給することによる汚泥の加熱処理及び/又は乾燥処理がある。これは大量のエネルギーを要する高コストのプロセスである。
【0007】
特許文献より、有機物を含有する汚泥を処理するためのいくつかの異なる解決策が公知である。
【0008】
東独特許公報第14265号より、フライアッシュ、例えば石灰などの凝固剤、及び例えばポリアクリルアミドなどの凝集剤を添加する、掘削泥水の処理方法が公知である。さらに、例えばセメント及び珪酸カリウムなどから成る結合剤も添加される。
【0009】
独国特許公報第19922872号より、人工土壌の製造方法が公知である。この製造物は、汚泥、紙、石灰、果物及び野菜の廃棄屑、硝酸塩、及び木炭から成る。この文献には、汚泥への超吸収剤の添加については記載されていない。
【0010】
国際公開公報WO97/10190より、例えば下水などの有機廃棄物の処理方法が公知である。まず、細断された紙又はボール紙を廃棄物へ添加する。その後、ミミズに有機物と紙の混合物を分解させる。次に、例えば石灰などのアルカリを添加して混合物のpH値を上昇させる。この文献にも、汚泥への超吸収剤の添加については述べられていない。
【0011】
米国特許公報第4659472号より、下水処理施設からの、コンポスト化可能な汚泥の混合物の製造方法が公知である。乾物含量が約3重量%である含水汚泥を混合タンクへ供給し、空気による撹拌中におが屑を添加する。混合タンクでの処理後、さらに高分子電解質溶液を添加した状態でこの懸濁液をポンプでくみ上げ、水分除去のためのフィルターへ供給し、得られた混合物は約30重量%の乾燥固形分を有する。この脱水混合物は次にコンポスト化プロセスに付される。この文献にかかる方法と本発明にかかる方法との最も重要な違いは、この文献では、乾物含量が約3重量%である含水(液体)汚泥の処理が記載されているが、本発明は、乾物含量が20乃至25重量%である、下水処理施設からのすでに脱水された汚泥の処理を目的としていることである(請求項4)。この乾物含量の違いにより、その後の汚泥処理が大きく異なる。本発明によると、セルロース繊維をまず超吸収剤と混合する。こうすることの目的は、本発明によると、超吸収剤を直接汚泥に添加したり、又は汚泥とセルロース繊維を混合後に添加したりした場合と比べて、得られる混合物中での超吸収剤のより良い分布を得ることである。米国特許公報第4659472号には、さらに汚泥混合物をプレスして乾物含量約30重量%とすることが記載されているが、これは、米国特許公報第4659472号に記載のプロセスから得られるマスの乾物含量が、本発明のプロセスに供されるマスと比べてわずかに高いだけであることを意味する。米国特許公報第4659472号に記載のプロセスに供される含水汚泥の乾物含量は、本発明による20乃至25重量%に対してわずかに3重量%であるため、このことは、同じ処理タンク容量においては、本発明の方法が米国特許公報第4659472号に記載の方法に比べて7乃至8倍多い体積の汚泥を処理することが可能であることを意味している。
【0012】
特開昭60‐197299号より、可燃性脱水助剤の製造方法が公知であり、この方法では、有機繊維質物質及びカチオン性高分子物質を混合し、密度0.3g/cm又はそれ以上まで高圧でプレスする。この脱水助剤をその後汚泥に添加し、最終プレスを行う。この文献には、下水処理施設からの汚泥のコンポスト化可能な混合物の作製方法について記載されておらず、要約が示唆するところによると、汚泥混合物は燃焼されることになっている。繊維質有機物質及びカチオン性物質より作製される脱水促進手段を添加する目的は、後処理工程において混合物から水分を除去することができるようにすることである。この文献には、本発明にかかるコンポスト化可能な繊維含有物質、超吸収剤、及び脱水有機汚泥の混合物の製造方法も記載されていない。
【0013】
特開昭59‐078098より、繊維質物質とカチオン性凝固剤との混合物を添加し、その後この混合物を真空乾燥することによる脱水汚泥ケーキの含有水を除去する方法が公知である。この文献にも、本出願で述べるようなコンポスト化可能な有機汚泥、繊維質物質、及び超吸収剤の混合物の製造方法は記載されていない。
【0014】
米国特許公報第4559143号より、例えば有機繊維などの繊維、及び凝固剤を汚泥に添加する汚泥の処理方法が公知である。これらの物質を添加する目的は、いわゆるフロックの形成を増加させて汚泥のろ過特性を改善し、それによって脱水汚泥をより容易に得ることである。この方法は、未脱水汚泥を処理して水分の除去をより容易にすることを課題としている。本発明にかかる汚泥はすでに脱水されたものであり、従って本発明の方法の目的は異なるものである。このことは、米国特許公報第4559143号に記載の例によってさらに裏づけられており、ここでは乾物含量が3.5重量%の未脱水汚泥が例1で用いられている。
【0015】
スイス特許公報第627718号より、乾物含量が少なくとも4重量%である汚泥の殺菌方法が公知である。汚泥を曝気用容器へ供給し、撹拌しながら酸素含有ガス又は純酸素を加える。その後、汚泥を分解用容器へ供給し、ここでメタンガスが形成される。この文献は、脱水汚泥が使われておらず、繊維及び超吸収剤の添加もないことから、本出願と関連するとは考えられない。
【特許文献1】東独特許公報第14265号
【特許文献2】独国特許公報第19922872号
【特許文献3】国際公開公報WO97/10190
【特許文献4】米国特許公報第4659472号
【特許文献5】特開昭60‐197299号
【特許文献6】特開昭59‐078098
【特許文献7】米国特許公報第4559143号
【特許文献8】スイス特許公報第627718号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の公知の方法における欠点によって妨げられることのない有機汚泥の処理方法を提供することを目的としており、ここで、処理された汚泥は、さらなる処理を行うことなく、肥料又は土壌改良剤として用いることができる。
【0017】
別の目的は、エネルギーの供給を必要とせずに汚泥の十分な殺菌が達成され、同時に排水及び悪臭の問題も回避される方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これら及びその他の目的は、以下の工程を含むことを特徴とする殺菌有機汚泥の製造方法によって達成される。
‐セルロース繊維を含む成分を超吸収剤及び脱水有機汚泥と機械的に混合する工程であって、該脱水有機汚泥が20乃至25重量%の乾物含量を有し、脱水有機汚泥に対するセルロース繊維の量が5乃至10重量%である、工程。
‐超吸収剤及びセルロース繊維を含むこの汚泥混合物を殺菌用容器へ供給する工程。
‐所望の温度に到達するまで、この汚泥混合物へ連続的に空気を供給する工程。
【0019】
セルロース繊維含有成分は、脱水有機汚泥を添加する前に超吸収剤と混合することが好ましい。
【0020】
好ましくは、セルロース繊維含有成分は細断された新聞紙であり、超吸収剤は生分解性ポリアクリルアミドである。
【0021】
有機汚泥は、炭化水素汚染土壌及び/又は水産加工/食肉処理場からの廃棄物である/あってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下において、本発明の方法を、実施形態の例を用いてより詳細に説明する。
【0023】
本発明の方法によると、有機汚泥、好ましくは下水処理施設からの脱水有機汚泥、をセルロース繊維及び超吸収剤と混合する。超吸収剤は、例えばポリアクリルアミド又は他の生分解性超吸収剤である。当業者であれば、該当する基準により、適切な超吸収剤を容易に見つけ出すことができるであろう。セルロース繊維は、新聞紙などが細断された帯状細片が好ましい。新聞紙に対する超吸収剤の量は、2重量%のオーダーである。脱水有機汚泥に対する新聞紙の量は、5乃至10重量%のオーダーである。成分の混合後、得られた汚泥混合物は空気を添加してコンポスト化に付し、その結果として殺菌温度に到達するまで行う。必要な殺菌温度は約58乃至60℃である。このコンポスト化は、外部エネルギーの供給がまったくない状態で行われる。
【0024】
本発明の方法の特に好ましい実施形態に関しては、まずセルロース繊維を超吸収剤と機械的に混合する。その後、乾物含量が約20乃至25重量%である脱水有機汚泥をセルロース繊維と超吸収剤との混合物中へ機械的に混合する。有機汚泥を混合物へ添加する前にまずセルロース繊維と超吸収剤とを混合する目的は、最終混合物中における超吸収剤のより良い分布を達成するためである。
【0025】
汚泥、セルロース繊維、及び超吸収剤を混合した後、所望の殺菌温度に到達するように例えば空気が供給される容器内などでコンポスト化することができる多孔性混合物が作製される。マスは殺菌されればすぐに、肥料又は土壌改良剤として利用することができる。本発明の方法を使用することによって、セルロース繊維を添加せず加熱した有機汚泥で約3年を要していた殺菌時間を約3日にまで短縮できることが試験によって示された。
【0026】
本発明の方法は、特に下水処理施設からの脱水下水汚泥の処理に適しているが、この方法は、例えば典型的に油分などの炭化水素含有化合物で汚染された土壌、食肉処理場/水産加工からの廃棄物などのその他の有機汚泥の処理に使用可能であることも示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌有機汚泥の製造方法において、
‐セルロース含有成分を超吸収剤及び脱水有機汚泥と機械的に混合する工程であって、該脱水有機汚泥が20乃至25重量%の乾物含量を有し、該脱水有機汚泥に対するセルロース繊維の量が5乃至10重量%である、工程と、
‐超吸収剤及びセルロース繊維を含むこの汚泥混合物を殺菌用容器へ誘導する工程と、
‐前記汚泥混合物へ、所望の温度に到達するまで連続的に空気を供給する工程と、
を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記セルロース含有成分と前記超吸収剤とを、前記脱水有機汚泥を添加する前に混合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロース繊維含有成分が細断された新聞紙であり、前記超吸収剤が生分解性ポリアクリルアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機汚泥が炭化水素汚染土壌及び/又は水産加工/食肉処理場からの廃棄物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−513336(P2009−513336A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537620(P2008−537620)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000387
【国際公開番号】WO2007/053033
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508129827)
【Fターム(参考)】