毛に関する状態を処置する方法
本明細書中で開示されるのは、毛に関する障害を処置する方法であり、請求項1に定義される式Iの化合物であって、PPAR受容体に対して特異的であり得るか、またはPPAR受容体を調節し得る化合物を含む。毛の成長を刺激する方法もまた、提供され、この方法は、本明細書中で開示される化合物(例えば、上記、式Iによって表される化合物)を含む有効な量の組成物(例えば、薬学的に、および/または美容上受容可能な組成物)をそれを必要とする被験体へ投与することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2009年2月16日に出願された欧州特許出願公開第09425056.0号、2009年5月18日に出願された米国特許出願第61/179062号、および2009年12月17日に出願された米国特許出願第61/287461号に対する優先権を主張し、それぞれの出願はその全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーであって、遺伝子発現を調節するリガンド活性化転写因子である。特定のPPARは、高等生物の細胞分化、発生および代謝を調節する役割を担う。
【0003】
3つの型のPPARが同定されている:肝臓、腎臓、心臓および他の組織もしくは器官において発現されるα、例えば、脳において発現されるβ/δ、ならびに3つのフォームで発現されるγ:γ1、γ2、およびγ3。PPARγ受容体は、ケラチノサイト分化の刺激に関連しており、多数の疾患状態(皮膚障害(例えば、乾癬およびアトピー性皮膚炎)が挙げられる)に対する可能性のある薬物標的として働く。さらに、PPARの発現は、毛包において示されており、毛の成長に関与し得る。
【0004】
毛の喪失(hair loss)は、疾病、機能障害、または遺伝性素質の結果であり得る、よく起こる問題である。いくつかの症例において、毛の喪失は、身体に局在化(例えば、男性型禿頭症)し得るか、身体全体に起こり得る。脱毛症(alcopecia)は、毛の欠乏または喪失に対する医学用語であり、細胞毒性の薬物を用いる処置を必要とするがんに対する処置、または他の疾患に対する処置を受けている患者に起こり得る。
【0005】
毛の色素脱失もまた、よく起こる問題であり、代表的に老化過程の結果である。老化過程のある時点において、メラノサイト(melancyte)(色素を産生し、貯蔵する細胞)を産生する責任を負っている毛包の基部における幹細胞が、毛が色素をほとんど有さなくなるまで、より少ない色素を産生する。
【0006】
従って、そのような毛の障害の処置において有用である有効な剤(例えば、PPAR調節因子)が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一般的に毛に関する障害もしくは状態を処置、回復、または実質的に予防する方法に関し、例えば、本明細書中で提供するのは、毛に関する状態を処置または回復することを必要とする被験体における毛に関する状態を処置または回復する方法であって、式I:
【0008】
【化1】
によって表される化合物
(ここでXはC1〜C3アルキレン(例えば、(CH2)n、ここでnは1または2である)であって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され(例えば、R1はメチルであり得);
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素またはC1〜C6アルキル(例えば、エチルもしくはメチル)であり)
;またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシドを含む、有効な量の組成物をその被験体へ投与することを含み;ここで、その組成物は、必要に応じて、さらにキャリアを含む。例示的な化合物は、N−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸である。
【0009】
例えば、毛に関する状態(例えば、毛の色素脱失、限定された、もしくは短い毛の成長、毛の喪失、白斑、または脱毛症(例えば、成長期脱毛症、休止期脱毛症、もしくは円形脱毛症))を処置または回復する方法が、本明細書中で提供される。
【0010】
毛の成長を刺激する方法もまた、提供され、この方法は、本明細書中で開示される化合物(例えば、上記、式Iによって表される化合物)を含む有効な量の組成物(例えば、薬学的に、および/または美容上受容可能な組成物)を、それを必要とする被験体へ投与することを含む。そのような組成物は、例えば、局所的に投与され得、その組成物は、薬学的に、または美容上受容可能である。いくつかの実施形態において、開示される組成物は、毛を刺激する剤をさらに含み得る。
【0011】
また、本明細書中で企図されるのは、式Iまたは式IIによって表される化合物および例えば、薬学的に受容可能な賦形剤を含む組成物である。
【0012】
また、提供されるのは、毛の喪失もしくは毛の色素脱失の処置もしくは回復のための、治療における使用および/または医薬の製造のための、式Iおよび式IIによって表される化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、N−アセチルE2の種々の濃度についての毛幹伸長の刺激を表す。
【図2】図2は、フォンターナ−マッソン組織形態計測を用いる、N−アセチルE2の種々の濃度でのヒトの毛包の色素沈着の刺激を表す。
【図3】図3は、N−アセチルE2を用いる毛包のフォンターナ−マッソン組織化学である。
【図4】図4は、N−アセチルE2を用いる観測される毛包のKi67/Tunel免疫組織形態計測(immunhistomorphometry)を表す。
【図5】図5は、化合物Aを用いて処置される毛包におけるK15発現を表す。
【図6】図6は、化合物Aを用いて処置される毛包におけるK19細胞の調節を表す。
【図7】図7は、開示される化合物のヒトケラチノサイトに与える影響を表す。
【図8】図8は、H2O2および開示される化合物によるTNFαの阻害を表す。
【図9】図9は、IFN−γの存在により誘導されるIL−6のmRNAの発現における阻害を表す。
【図10】図10は、NF−kBの活性化の際の開示される化合物の阻害を表す。
【図11】図11は、LPSの存在によって誘導されるIL−6のタンパク質発現の際の、開示される化合物の阻害を表す。
【図12】図12は、開示される化合物のヒト皮脂腺細胞(sebocyte)に与える影響を表す。
【図13】図13は、脂質型の刺激によって誘導される皮脂生成(sebogenesis)の際の、開示される化合物の阻害能力を表す。
【図14A】図14は、皮脂生成の阻害についての脂肪酸アッセイ(A)およびスクアレン分析(B)の結果を表す。
【図14B】図14は、皮脂生成の阻害についての脂肪酸アッセイ(A)およびスクアレン分析(B)の結果を表す。
【図15】図15は、脂質生成の(lipidogenic)刺激によるリノール酸およびテストステロンを用いる処置を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の特徴および他の詳細が、次に、より具体的に記載される。本発明のさらなる記載の前に、明細書、実施例および添付される特許請求の範囲において用いられる特定の用語がここに集められる。これらの定義は、本開示の残りを考慮して読まれるべきであり、当業者により理解されるべきである。そうでないと定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的な用語は、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0015】
(定義)
用語「処置」は、状態、疾患、および障害などの改善(improvement)をもたらす、あらゆる影響(例えば、減らすこと(lessening)、軽減すること(reducing)、調節すること、または排除すること)を含む。
【0016】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和の直鎖または分枝の炭化水素(例えば、2〜12個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝の基であって、本明細書中でそれぞれC2〜C12アルケニル、C2〜C10アルケニルおよびC2〜C6アルケニルと称される)を指す。例示的なアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルコキシ」は、酸素に結合するアルキル基(−O−アルキル−)を指す。例示的なアルコキシ基としては、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、または1〜6個の炭素原子のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を含む基であって、本明細書中でそれぞれがC1〜C12アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、およびC1〜C6アルコキシと称されるものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、例示的な「アルケノキシ」基としては、ビニルオキシ、アリルオキシ、ブテノキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルキル」は、飽和の直鎖または分枝の炭化水素(例えば、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、または1〜6個の炭素原子の直鎖または分枝の基であって、本明細書中でそれぞれC1〜C12アルキル、C1〜C10アルキル、およびC1〜C6アルキルと称される)を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、アルキルは、C1〜C6アルキルを指す。特定の実施形態において、シクロアルキルは、C3〜C6シクロアルキルを指す。
【0019】
アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、いくつかの実施形態において、必要に応じて、以下から選択される少なくとも1つの基で置換され得るか、以下から選択される少なくとも1つの基によって介在され得る;アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニル。
【0020】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和の直鎖または分枝の炭化水素(例えば、2〜12個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝の基であって、本明細書中でそれぞれC2〜C12アルキニル、C2〜C8アルキニルおよびC2〜C6アルキニルと称される)を指す。例示的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、および4−ブチル−2−ヘキシニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミド(amide)」または「アミド(amido)」は、形式−RaC(O)N(Rb)−、−RaC(O)N(Rb)Rc−、または−C(O)NRbRcの基(radical)を指し、ここでRa、RbおよびRcは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amide)、アミノ、アリール、アリールアルキル、カーバメート、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、およびニトロから、それぞれ独立して選択される。上記アミド(amide)は、その炭素、その窒素、Rb、Rc、またはRaを介して別の基に結合し得る。上記アミド(amide)はまた、環式であり得る(例えば、RbおよびRc、RaおよびRb、またはRaおよびRcが結合していて、3員環〜12員環(例えば、3員環〜10員環または5員環〜6員環)を形成し得る)。用語「カルボキサミド」は、構造−C(O)NRbRcを指す。
【0022】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミジノ」は、形式−C(=NR)NR’R’’の基を指し、ここでR、R’、およびR’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amide)、アリール、アリールアルキル、シアノ、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトンおよびニトロから、それぞれ独立して選択され得る。
【0023】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミン」または「アミノ」は、形式−NRdRe、−N(Rd)Re−、または−ReN(Rd)Rf−の基を指し、ここでRd、Re、およびRfは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amide)、アミノ、アリール、アリールアルキル、カーバメート、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、およびニトロから独立して選択される。上記アミノは、その窒素、Rd、ReまたはRfを介して親分子の基に結合し得る。上記アミノはまた、環式であり得、例えば、Rd、ReまたはRfのうちの任意の2つが一緒に結びつくか、またはNと結びついて、3員環〜12員環(例えば、モルホリノまたはピペリジニル)を形成し得る。用語「アミノ」はまた、あらゆるアミノ基の対応する第四級アンモニウム塩(例えば、−[N(Rd)(Re)(Rf)]+)を含む。例示的なアミノ基としては、アミノアルキル基が挙げられ、ここでRd、ReまたはRfの少なくとも1つはアルキル基である。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、用語「アリール」は、単環、二環、または他の多環の炭素環式芳香族環系を指す。特定の実施形態において、アリールは、単環式および/または二環式の5員環〜6員環を指す。芳香族環は、1つまたはそれより多くの環位置において以下から選択される置換基で置換され得る;アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニル。用語「アリール」はまた、2つまたはそれより多くの炭素が2つの隣り合った環に共通している、2つまたはそれより多くの環式環(この環は、「縮合環」である)を有する多環式の環系を含み、ここで上記環のうちの少なくとも1つは、芳香族環であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよび/またはアリールであり得る。例示的なアリール基としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびにベンゾ縮合炭素環式部分(例えば、5,6,7,8−テトラヒドロナフチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、用語「アリールアルキル」は、少なくとも1つのアルキル置換基を有するアリール基(例えば、−アリール−アルキル−)を指す。例示的なアリールアルキル基としては、環が6個の炭素原子を含む、単環式芳香族環系を有するアリールアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、「フェニルアルキル」は、フェニルC4アルキル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチルなどを含む。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、用語「カルボニル」は、基−C(O)−を指す。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、用語「カルボキサミド」は、基−C(O)NRR’を指し、ここでRおよびR’は同じであっても異なってもよい。RおよびR’は、例えば、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択され得る。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、用語「カルボキシ」は、基−COOHまたはその対応する塩(例えば、−COONaなど)を指す。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、用語「シアノ」は、基−CNを指す。
【0030】
本明細書中で用いられる場合、用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合するシクロアルキル基を指す。
【0031】
本明細書中で用いられる場合、用語「シクロアルキル」は、3〜12個の炭素、3〜8個の炭素、4〜8個の炭素、または4〜6個の炭素の一価の飽和または不飽和の環式、二環式、または橋かけ二環式炭化水素基を指し、本明細書中で、例えば、シクロアルカンに由来する「C4〜8シクロアルキル」と称される。例示的なシクロアルキル基としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロブタンおよびシクロプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニルで置換され得る。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロシクリル基に縮合され得る。特定の実施形態において、シクロアルキルは、C3〜C6アルキルを指す。
【0032】
本明細書中で用いられる場合、用語「ハロ」または「ハロゲン」または「ハル(Hal)」は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0033】
本明細書中で用いられる場合、用語「ハロアルキル」は、1つまたはそれより多くのハロゲン原子で置換されるアルキル基を指す。
【0034】
本明細書中で用いられる場合、用語「ニトロ」は、基−NO2を指す。
【0035】
本明細書中で用いられる場合、用語「フェニル」は、6員炭素環式芳香族環を指す。フェニル基はまた、シクロヘキサン環またはシクロペンタン環に縮合され得る。フェニルは以下に挙げられる1つまたはそれより多くの置換基で置換され得る;アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニル。
【0036】
本明細書中で用いられる場合、用語「ホスフェート」は、基−OP(O)(ORaa)2またはそのアニオンを指す。用語「ホスホネート(phosphanate)」は、基−P(O)(ORaa)2またはそのアニオンを指す。用語「ホスフィネート」は、基−PRaa(O)(ORaa)またはそのアニオンを指し、ここで各Raaは、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、水素、ハロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選ばれ得る。
【0037】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」または「薬学的に受容可能な賦形剤」は、薬学的投与に適合する、任意の、および全ての、溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを指す。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当該分野において周知である。組成物はまた、補足的な、追加の、または増強された、治療上の機能を提供する他の活性化合物を含み得る。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的組成物」は、1つまたはそれより多くの薬学的に受容可能なキャリアとともに調合される、少なくとも1つの本明細書中で開示される化合物を含む組成物を指す。
【0039】
用語「個体」、「患者」または「被験体」は、交換可能に使用され、あらゆる動物(哺乳動物、より好ましくは、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ(swine)、ウシ(cattle)、ヒツジ、ウマ、または霊長類、そして最も好ましくはヒトが挙げられる)を含む。本発明の化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与され得るが、他の哺乳動物(例えば、獣医学の処置を必要とする動物(例えば、家庭用動物(domestic animal)(例えば、イヌおよびネコなど)、家畜(farm animal)(例えば、ウシ(cow)、ヒツジ、ブタ(pig)およびウマなど)、および実験用動物(例えば、ラット、マウスおよびモルモットなど)))にも投与され得る。本発明の方法で処置される哺乳動物は、望ましくは、PPARおよび/またはEGF受容体の調節が望まれる哺乳動物である。用語「調節」は、拮抗(antagonism)(例えば、阻害)、作動(agonism)、部分拮抗(partial antagonism)および/または部分作動(partial agonism)を含む。
【0040】
本明細書において、用語「治療上有効な量」は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって調べられる組織、系、動物またはヒトの生物学的反応または医学的反応を引き出す本対象の化合物の量を意味する。本発明の化合物は、治療上有効な量で投与され、疾患を処置する。あるいは、化合物の治療上有効な量は、望まれる治療効果および/または予防効果を達成するための必要とされる量(例えば、PPARおよび/またはEGF受容体に関連する疾患の予防または該疾患に関連する症状の減少(decrease)をもたらす量)である。
【0041】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な塩(複数可)」は、本組成物において使用される化合物中に存在し得る酸性基または塩基性基の塩を指す。性質において塩基性である、本組成物中に含まれる化合物は、種々の無機酸および有機酸によって広く多様な塩を形成することが可能である。そのような塩基性化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩を形成するものであって、すなわち、薬理学的に受容可能なアニオンを含む塩である。その塩としては、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられるが、これらに限定されない。アミノ部分を含む、本組成物に含まれる化合物は、上記の酸の他に種々のアミノ酸によって、薬学的に受容可能な塩を形成し得る。性質において酸性である、本組成物に含まれる化合物は、種々の薬理学的に受容可能なカチオンによって塩基塩を形成することが可能である。そのような塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩もしくは鉄塩が挙げられる。
【0042】
本開示の化合物は、1つもしくはそれより多くのキラル中心および/または二重結合を含み得、従って、立体異性体(例えば、幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体)として存在する。本明細書中で用いられる場合、用語「立体異性体」は、全ての幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体からなる。これらの化合物は、ステレオジェン炭素原子のまわりの置換基の立体配置に依存して、記号「R」または「S」によって示され得る。本発明は、これらの化合物の種々の立体異性体およびその混合物を含む。立体異性体は、鏡像異性体およびジアステレオ異性体を含む。鏡像異性体またはジアステレオ異性体の混合物は、命名法において「(±)」と示され得るが、当業者は、構造が暗示的にキラル中心を示し得ることを認識する。
【0043】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、不斉中心もしくはステレオジェン中心を含む市販されている開始材料から、または当業者に周知のラセミ混合物の調製と、続く分割方法によって、合成的に調製され得る。これらの分割方法は、以下により例示されている;(1)鏡像異性体の混合物のキラル補助剤への結合、再結晶化またはクロマトグラフィーによる、結果として生じるジアステレオ異性体の混合物の分離、および補助剤からの光学的に純粋な生成物の遊離、(2)光学的に活性な分割剤(resolving agent)を用いる塩形成、または(3)キラルクロマトグラフカラム上の光学的鏡像異性体の混合物の直接的な分離。立体異性体の混合物はまた、周知の方法(例えば、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩錯体として化合物を結晶化すること、またはキラル溶媒中で化合物を結晶化すること)によって、それを構成する立体異性体へと分割され得る。立体異性体はまた、周知の不斉の合成方法により立体異性的に(stereomerically)純粋な中間体、試薬および触媒から得られ得る。
【0044】
幾何異性体はまた、本発明の化合物において、存在し得る。記号
【0045】
【化2−1】
は、本明細書に記載される単結合、二重結合、または三重結合であり得る結合を示す。本発明は、炭素−炭素二重結合のまわりの置換基の配置または炭素環式環のまわりの置換基の配置からもたらされる種々の幾何異性体およびその混合物を含む。炭素−炭素二重結合のまわりの置換基は、「Z」または「E」の立体配置にあるものとして示され、ここで用語「Z」および「E」は、IUPAC規準に従って使用される。そうでないと特定されない限り、二重結合を示す構造は、「E」および「Z」異性体の両方を含む。
【0046】
炭素−炭素二重結合のまわりの置換基は、代替的に「シス」または「トランス」と称され得、ここで「シス」は二重結合の同じ側にある複数の置換基を表し、「トランス」は二重結合の反対側にある複数の置換基を表す。炭素環式環のまわりの置換基の配置は、「シス」または「トランス」と示される。用語「シス」は環の面の同じ側にある複数の置換基を表し、用語「トランス」は環の面の反対側にある複数の置換基を表す。環の面の同じ側および環の面の反対側の両方にある複数の置換基が配置される化合物の混合物は「シス/トランス」と示される。
【0047】
本明細書中で開示される化合物は、薬学的に受容可能な溶媒(例えば、水およびエタノールなど)による溶媒和形態および非溶媒和形態において存在し得、本発明が溶媒和形態および非溶媒和形態の両方を含むことが意図される。1つの実施形態において、その化合物は、アモルファスである。1つの実施形態において、その化合物は、多形体である。別の実施形態において、その化合物は、結晶形態にある。
【0048】
本発明はまた、本発明の同位体標識された化合物を含み、その化合物は、1つまたはそれより多くの原子が、通常自然界において見出される原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられることを除いて、本明細書中に列挙された化合物と同一である。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体(例えば、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Cl)が挙げられる。
【0049】
特定の同位体標識された開示された化合物(例えば、3Hおよび14Cで標識された化合物)は、化合物および/または基質の組織分布アッセイにおいて有用である。三重水素化(すなわち、3H)および炭素−14(すなわち、14C)同位体は、その調製および検出可能性の容易さのため、特に好ましい。さらに、より重い同位体での置換(例えば、重水素(すなわち、2H))は、より大きな代謝安定性(例えば、増大したインビボ半減期または減少した投与量要求)からもたらされる特定の治療上の利益を与え得、従って、いくつかの状況において好まれ得る。本発明の同位体標識された化合物は、例えば、本明細書中の実施例において開示される手順と類似した手順に沿って、同位体標識された試薬を同位体標識されていない試薬の代わりに用いることによって、一般的に調製され得る。
【0050】
用語「プロドラッグ」は、インビボで変換されて、開示される化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物を生じる化合物を指す。変換は、種々のメカニズムによって(例えば、血液中における加水分解を介して)起こり得る。例えば、本発明の化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物がカルボン酸官能基を含む場合、プロドラッグは、酸性基の水素原子を基(例えば、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C1〜C2)アルキルアミノ(C2〜C3)アルキル(例えば、β−ジメチルアミノエチル)、カルバモイル−(C1〜C2)アルキル、N,N−ジ(C1〜C2)アルキルカルバモイル−(C1〜C2)アルキルおよびピペリジノ(C2〜C3)アルキル、ピロリジノ(C2〜C3)アルキルまたはモルホリノ(C2〜C3)アルキル)と置き換えることにより形成されるエステルを含み得る。
【0051】
同様に、本発明の化合物がアルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子を基(例えば、(C1〜C6)アルカノイルオキシメチル、1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル (C1〜C6)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C1〜C6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1〜C6)アルカノイル、α−アミノ(C1〜C4)アルカノイル、アリールアシルおよびα−アミノアシル、またはα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで各α−アミノアシル基は、天然に存在するL−アミノ酸、P(O)(OH)2、−P(O)(O(C1〜C6)アルキル)2またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基の除去から生じる基)から独立して選択される))と置き換えることにより形成され得る。
【0052】
本発明の化合物がアミン官能基を組み込む場合、プロドラッグは、アミン基における水素原子を基(例えば、R−カルボニル、RO−カルボニル、NRR’−カルボニル(ここでRおよびR’は、それぞれ独立して(C1〜C10)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、ベンジルであるか、またはR−カルボニルが天然のα−アミノアシルもしくは天然のα−アミノアシル−天然のα−アミノアシルである)、−C(OH)C(O)OY1(ここでY1はH、(C1〜C6)アルキルまたはベンジルである)、−C(OY2)Y3(ここでY2は(C1〜C4)アルキルであり、そしてY3は(C1〜C6)アルキル、カルボキシ(C1〜C6)アルキル、アミノ(C1〜C4)アルキル、またはモノ−N−もしくはジ−N,N−(C1〜C6)アルキルアミノアルキルである)、−C(Y4)Y5(ここでY4はHまたはメチルであり、そしてY5はモノ−N−もしくはジ−N,N−(C1〜C6)アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジン−1−イルまたはピロリジン−1−イルである)と置き換えることにより形成され得る。
【0053】
(化合物)
本開示は、下に示されるような式Iによって表される化合物を、少なくとも一部、提供する。また、本明細書中で企図されるのは、式Iによって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド、および例えば、薬学的にもしくは美容上受容可能なキャリアもしくは賦形剤(expicient)を含む組成物である。
【0054】
【化2−2】
ここでXはC1〜C3アルキレンであって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、C1〜C6アルキルである。
【0055】
1つの実施形態において、R1はC1〜C6アルキル(例えば、メチル)であり得る。1つの実施形態において、R2は水素であり得る。別の実施形態において、R3は水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、およびヒドロキシルからなる群より選択され得る。さらなる実施形態において、R3は水素であり得る。1つの実施形態において、R4およびR5は、それぞれC1〜C6アルキルであり得る。別の実施形態において、R4は水素であり得、R5はメチルであり得る。1つの実施形態において、Xは(CH2)nであり得、ここでnは1または2(例えば、1)である。
【0056】
別の実施形態において、−NR2−COR1は、式IIIに示すようなXに対してメタ位にあり得る。
【0057】
【化3】
別の実施形態において、−NR2−COR1は、式IVに示すようなXに対してパラ位にあり得る。
【0058】
【化4】
本開示は、下に示されるような式IIによって表される化合物を、少なくとも一部、提供する。また、本明細書中で企図されるのは、式IIによって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド、および例えば、薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。
【0059】
【化5】
ここでR1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R5は、水素またはC1〜C6アルキルである。
【0060】
式Vの化合物もまた、下に示されるように企図され、式Vによって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド、および例えば、薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物も企図される。
【0061】
【化6】
ここでR1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素またはC1〜C6アルキルであり;ならびに
Aは、縮合された5員複素環または6員複素環である。
【0062】
1つの実施形態において、R1はC1〜C6アルキル(例えば、メチル)であり得る。別の実施形態において、R1およびR3は、それぞれC1〜C6アルキル(例えば、メチル)であり得る。1つの実施形態において、R2は水素であり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシドは
【0064】
【化7】
によって表され得、
ここでpは1または2であり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R4およびR8は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択される。
【0065】
企図される化合物、および少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物は、以下からなる群より選択され得る:N−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(化合物A)、N−アセチル−(S)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(化合物B)、ラセミ体N−アセチル−(S)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(化合物AB);
【0066】
【化8−1】
【0067】
【化8−2】
4−アセトアミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド;1−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸、5−アセトアミド−2ヒドロキシ安息香酸(例えば、アセチル化(acetalyated)5−アミノサリチル酸(salicyclic acid))、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド。
【0068】
本開示はまた、1つまたはそれより多くの薬学的にもしくは美容上受容可能なキャリアとともに調合される、本明細書中で開示される化合物を含む薬学的組成物を提供する。これらの調合物は、経口投与、直腸投与、局所投与、口腔投与および非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、もしくは静脈内)投与または局所的な使用(例えば、化粧品として)に適切な調合物を含む。しかし、あらゆる所定の症例における最も適切な投与形態は、処置されている状態の度合いおよび重症度ならびに使用されている特定の化合物の性質による。
【0069】
(治療上の適用)
本開示は、いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多くのPPARおよび/もしくはEGF受容体の活性を調節する方法であって、該受容体を本発明の化合物に曝すことを含む方法をさらに提供する。例えば、本明細書中で提供されるのは、患者における1つまたはそれより多くのPPARおよび/もしくはEGF受容体の発現または活性に関連する疾患を処置する方法であって、治療上有効な量の本発明の化合物を該患者へ投与することを含む方法である。
【0070】
本開示は、少なくとも一部、例えば、開示される化合物を用いて毛の障害を処置または回復することに関する。例えば、毛の成長を刺激する方法が提供され、ここで開示される化合物(または、例えば、開示される化合物を含む組成物)が、それを必要とする被験体へ投与される(例えば、局所投与される)。
【0071】
いくつかの実施形態において、望まれない毛の喪失もしくは望まれない毛の色素脱失に苦しんでいる(または苦しむことが懸念されている)患者において毛の喪失もしくは毛の色素脱失を処置または回復する方法が提供され、この方法は開示される化合物を含む有効な量の組成物を投与することを含む。企図される方法は、例えば、企図される処置を伴わない毛の喪失もしくは色素脱失と比較して白髪まじりの髪の形成を遅らせる、または毛の喪失を実質的に遅らせる方法を含む。白斑、円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia)、および/または休止期脱落(telogenic defluvium)を処置する方法もまた、企図される。
【0072】
例えば、ざ瘡患者において、絶え間ない皮脂の生成が増加し得、皮脂のインヒビター(例えば、本明細書中で開示されるインヒビター)の適用は、ざ瘡、脂漏、または脱毛症の処置において有用であり得る。別の例において、毛包(ケラチノサイト)の慢性炎症は、例えば、アンドロゲン性脱毛症の指標であり得る。そのような炎症のインヒビター(例えば、本明細書中で開示されるインヒビター)は、例えば、毛の喪失の処置において有用であり得る。
【0073】
本発明の化合物は、そのような処置を必要としている被験体(動物およびヒト)へ最適の薬学的効力を提供する投与量で投与され得る。あらゆる特定の適用における使用のために必要とされる用量が患者ごとに、選択される特定の化合物もしくは組成物によってだけではなく投与経路、処置されている状態の性質、患者の年齢および状態、並行する投薬または患者によってその後続けられる特別な食事、ならびに当業者が認識する他の要因によっても変動して、適切な投与量については最終的には主治医の裁量であるということが正しく認識される。上に言及された医学的状態および疾患を処置するために、本発明の化合物は、従来の非毒性の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントおよびビヒクルを含む投与量単位の調合物において、経口で、局所的に、非経口で、吸入スプレーにより、または直腸に投与され得る。本明細書中で用いられる場合、用語 非経口は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射または注入技術を含む。
【0074】
一般的に、治療上有効な量の活性な構成要素は、約0.1mg/kg〜約100mg/kgの範囲内、必要に応じて約1mg/kg〜約100mg/kgの範囲内、必要に応じて約1mg/kg〜10mg/kgの範囲内にある。投与される量は、可変物(例えば、処置される疾患または適応症の型および程度、特定の患者の全般的な健康状態、化合物の相対的な生物学的効力、化合物の調合、調合物中の賦形剤の存在および型、ならびに投与経路)による。投与される初めの投与量は、望まれる血液レベルまたは組織レベルをすばやく達成するために高い方のレベルを超えて増加されても、初めの投与量が最適なものより小さくてもよく、日々の投与量は、特定の状況によって処置の過程で次第に増加されてもよい。ヒトの投与量は、例えば、0.5mg/kg〜20mg/kgで働くように設計された従来の第I相用量漸増試験(Phase I dose escalation study)において最適化され得る。投与の頻度は、要因(例えば、投与経路、投薬量、および処置されている疾患状態)によって変動し得る。例示的な投与の頻度は、1日1回、1週間に1回、2週間ごとに1回である。
【0075】
企図される調合物または組成物は、開示される化合物を含み、代表的にはまた、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、企図される組成物は、他の剤(例えば、毛を刺激する剤(例えば、プロキャピル(商標)、ラタンプロスト(latanprost)、ミノキシジル、フィナステリド、デュタステライド、および/またはスピロノラクトン))を含み得る。また、本明細書中で企図されるのは、開示される方法であって、この方法は、いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多くの毛を刺激する剤(例えば、上記の剤)を投与することをさらに含み得る。
【0077】
企図される組成物は、当該分野において周知のような、その意図される使用による種々の手段によって投与され得る。例えば、本発明の組成物が経口で投与される場合、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤またはシロップ剤として調合され得る。あるいは、本発明の調合物は、注射剤(静脈内、筋肉内、または皮下)、点滴調製物、または浣腸剤もしくは坐剤として非経口で投与され得る。眼の粘膜経路による適用のために本発明の組成物は、点眼剤または眼軟膏剤として調合され得る。これらの調合物は、従来の手段により調製され得、望まれる場合、その組成物はあらゆる従来の添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯正剤、可溶化剤、懸濁補助剤(suspension aid)、乳化剤またはコーティング剤)と混合され得る。
【0078】
本対象の発明の調合物において、湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウム)、および着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、保存剤ならびに抗酸化剤が、その調合される剤において存在し得る。
【0079】
対象の組成物は、経口投与、鼻投与、局所(口腔および舌下が挙げられる)投与、直腸投与、膣投与、エアゾール投与および/または非経口投与のために適切であり得る。調合物は、単位剤形で都合よく提供され得、薬学分野において周知のあらゆる方法により調製され得る。単一用量を生成するための、キャリア材料と組み合わせられ得る組成物の量は、処置されている被験体、および投与の特定の様式により変動する。
【0080】
これらの調合物を調製する方法としては、本発明の組成物をそのキャリア、および、必要に応じて1つまたはそれより多くの副成分と会合させる工程が挙げられる。包括的に、その調合物は、剤を液体キャリアもしくは細かく分けられた固体キャリア、またはその両方と一様に、および密接に会合させること、そして必要な場合、製品を形作ることにより調製される。
【0081】
経口投与に適している調合物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付けされた主成分(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いる)、散剤、顆粒剤の形態、または水性もしくは非水性液体での液剤もしくは懸濁剤として、または水中油もしくは油中水乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(非活性の基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを用いる)として存在し得て、それぞれ前もって決定される量のその対象の組成物を活性成分として含む。本発明の組成物はまた、ボーラス、舐剤、またはパスタ剤として投与され得る。
【0082】
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、フィルムコートされた錠剤、糖衣錠、散剤、および顆粒剤など)において、その対象の組成物は、1つまたはそれより多くの薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウム)および/または以下のあらゆるものと混合される:(1)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア);(3)保湿剤(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム);(5)溶液遅延剤((solution retarding agent)例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤(例えば、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール);(8)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);(9)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および、これらの混合物);および(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、その組成物はまた、緩衝剤を含み得る。同様の型の固体の組成物はまた、そのような賦形剤(例えば、ラクトースすなわち乳糖)、および高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルに入った充填物として用いられる。
【0083】
経口投与のための液体剤形としては、薬学的に受容可能な乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。その対象の組成物の他に、液体剤形は、当該分野において一般に使用される非活性の希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽(germ)油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール(tetrahydrofuryl alcohol)、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、シクロデキストリンならびにこれらの混合物を含み得る。
【0084】
懸濁剤は、本対象の組成物の他に、懸濁化剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物)を含み得る。
【0085】
対象の組成物の経皮投与または局所投与の剤形としては、散剤、スプレー、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ、および吸入剤が挙げられる。活性な構成要素は、滅菌状態の下、薬学的に受容可能なキャリアと混合され得、必要とされ得るあらゆる保存剤、バッファー、またはプロペラントと混合され得る。
【0086】
軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤およびゲル剤は、対象の組成物の他に、賦形剤(例えば、動物性脂肪および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物)を含み得る。
【0087】
散剤およびスプレーは、対象の組成物の他に、賦形剤(例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物)を含み得る。スプレーは、さらに慣習のプロペラント(例えば、クロロフルオロハイドロカーボン)、および揮発性の不飽和炭化水素(例えば、ブタンおよびプロパン)を含み得る。
【0088】
本開示の組成物および化合物は、エアゾールにより代替的に投与され得る。これは、その化合物を含む、水性のエアゾール、リポソームの調製物、または固体の粒子を調製することにより達成される。非水性(例えば、フルオロカーボンプロペラント)懸濁剤が使用され得る。音波噴霧器は、その対象の組成物中に含まれる化合物の分解をもたらし得る剪断に剤を曝すことを最小限にするので使用され得る。
【0089】
通例、水性エアゾールは、対象の組成物の水性の液剤または懸濁剤を従来の薬学的に受容可能なキャリアおよび安定剤とともに調合することにより作製される。そのキャリアおよび安定剤は、特定の対象の組成物の要求によって変動するが、代表的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、またはポリエチレングリコール)、無害なタンパク質(例えば、血清アルブミン)、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、アミノ酸(例えば、グリシン)、バッファー、塩、糖、または糖アルコールを含む。エアゾールは、一般的に等張液剤から調製される。
【0090】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、1つまたはそれより多くの薬学的に受容可能な滅菌等張の水性もしくは非水性の液剤、分散体(dispersion)、懸濁剤または乳剤、あるいは滅菌散剤と組み合わせて対象の組成物を含み、使用直前に滅菌の注射可能な液剤または分散体に再構成され得、それは抗酸化剤、バッファー、静菌剤、調合物を意図される受容者の血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含み得る。
【0091】
本発明の薬学的組成物において用いられ得る適切な水性および非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えば、エチルオレエート)およびシクロデキストリンが挙げられる。ふさわしい流動性は、例えば、コーティング材料(例えば、レシチン)の使用、分散体の場合において必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持され得る。対象の組成物を用いた処置の効力は、当業者に公知の多数のやり方で決定され得る。
【0092】
組成物が特定の構成要素を有する、含む(including)、または含む(comprising)として記載される本明細書の隅から隅まで、組成物はまた、列挙される構成要素から本質的になるか、または列挙される構成要素からなることが企図される。同様に、プロセスが、特定のプロセスの工程を有する、含む(including、comprising)、または包含する(comprising)として記載される場合、そのプロセスはまた、列挙されるプロセシング工程から本質的になるか、または列挙されるプロセシング工程からなる。そうでないと示されない限り、特定の手段(action)を行うための、工程の順序、または順序は、本発明が実施可能である限り重要ではない。さらに、そうでないと言及されない限り、2つまたはそれより多くの工程または手段が同時に行われ得る。
【実施例】
【0093】
本明細書中で開示される化合物は、有機合成分野における当業者に周知の多数の方法において調製され得る。より具体的には、本発明の化合物は、本明細書中に記載される反応および技術を用いて調製され得る。下に記載される合成方法の記載において、全ての提案される反応条件(溶媒の選択、反応気圧、反応温度、実験期間および試案手順が挙げられる)は、そうでないと示されない限り、その反応に対しての標準の条件であるとして選択され得ることが理解されるべきである。分子の種々の部分において存在する機能性は、提案される試薬および反応と適合性があるべきであることが、有機合成分野における当業者により理解される。その反応条件と適合しない置換基(substituent)は、当業者に明らかであり、従って、方法を交替することが意図される。実施例のための開始材料は、市販されているか、または標準方法により公知の材料から容易に調製される。
【0094】
(実施例1 N−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(N−アセチルE2)の調製;化合物A)
0.5Lのガラス反応器に入った(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(40g)にエチルアセテート(80g)および無水酢酸(62.8g)を添加した。この混合物を90℃で1時間、攪拌した。冷却の際、減圧蒸留により溶媒を取り除いて、油性の残留物を得た。この残留物に水(120g)およびエチルアセテート(120g)を添加した。35℃で10分間、攪拌した後、これらの層を分離して、水層を捨てた。有機層の溶媒を減圧蒸留により取り除いた。次にアセトン(120g)を添加し、結果として生じる混合物を溶解が完了するまで温めた。溶液を0℃まで冷却し、濾過により回収される生成物が沈殿した。その固体をアセトン(20g)ですすぎ、65℃で乾燥して26gの表題の化合物を得た。
【0095】
(実施例2 毛包器官培養におけるインビトロテスト)
顕微解剖された、器官培養された毛包についてのフィルポット(Philpott)モデルテストシステムを使用する。毛包および皮膚パンチ(skin punch)を4つの群に分け(3HF/ウェル)、異なる濃度において、6日間の間、テスト物質である化合物Aとともにインキュベートした。0日目に毛の長さの顕微解剖測定を行う。1日目に培地を交換し、化合物Aを添加する(毛の長さの測定を伴う)。3日目に培地を交換し、化合物Aを添加する(毛の長さの測定を伴う)。6日目に、毛の長さを測定し、包埋(embedding)が起こる。図1は、化合物Aが、低用量の化合物Aにおいて毛幹伸長を刺激することを示す。
【0096】
クライオセクションにおけるフォンターナ−マッソン組織形態計測/メラニン染色を用いて、図2は、化合物Aによるヒト毛包の色素沈着の刺激を示す。図3は、化合物Aの使用の際の、毛包のフォンターナ−マッソン組織化学を表す。
【0097】
毛包において、蛍光染色法を用いてKi−67/Tunel染色をまた行った。図4は、その毛包のKi67/Tunel免疫組織形態計測を表し、高用量の化合物Aがヒトの毛のマトリックスのケラチノサイトにおける増殖およびアポトーシスの両方を刺激することを示す。
【0098】
より低用量の化合物Aにおいて、毛包の下部におけるK15発現の有意な上方調節があるが、処置される皮膚は、測定可能な発現を示さない(図5を参照のこと)。図6は、毛包の下部において、より低い濃度に対するK19細胞(cless)の有意な上方調節を示し、他方、10倍高い濃度では、下方調節を示す(図6)。この皮膚は、測定可能な発現を示さない。
【0099】
(実施例3 ケラチノサイト)
試験下にある物質の、可能性のある毒性効果または細胞増殖抑制性効果を判断するために、分光測定テスト(MTT)を実施した。皮膚生検から単離されたヒト初代ケラチノサイトを24ウェルプレートのウェルにおいて、抗生物質、カルシウム、および特定の増殖因子の添加を伴う適切な培地中にプレートした。約70%の集密において、その細胞を、24時間および48時間の間、抗生物質、カルシウムの添加を伴うが増殖因子は存在しない適切な培地中において、種々の濃度(0.1−1−2mM)における化合物Aの存在に曝した。この培養条件を続く全ての実験について行った。処置の最後に、MTTテストを行った。結果を図7に示す。使用された全ての濃度における化合物Aは、細胞生命力(cellular vitality)における影響を全く示さなかった。
【0100】
(実施例4 TNFα)
H2O2による炎症性サイトカインTNF−αのmRNA誘導についての化合物Aの阻害の分析をリアルタイムRT−PCRにより実施した。ケラチノサイトを6cm/φ(直径)のディッシュ内にプレートした。80%の集密において、その細胞を、6時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でH2O2(300μM)によって処置した。処置の最後に、その細胞を溶解バッファー中で溶解し、単離および続くRNAの逆転写(retrotranscription)に供した。化合物Aは、2つのより多い用量(0.1mM;0.5mM)において、H2O2により誘導されるTNF−αのmRNAの発現を阻害し得ることが判明した。より多い用量により、トログリタゾン(Tg)と同様の効果を伴う、炎症性サイトカインの完全な阻害が実証された(図8)。
【0101】
(実施例5 IFN−γの存在により誘導されるIL−6のmRNAの発現の阻害)
INF−γによる炎症性サイトカインIL−6のmRNA誘導についての化合物Aによる阻害の分析をリアルタイムRT−PCRによって行った。ケラチノサイトを6cm/φのディッシュ内にプレートした。
【0102】
80%の集密において、その細胞を、6時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でIFN−γ(30ng/ml)によって処置した。処置の最後に、その細胞を溶解バッファー中で溶解し、単離および続くRNAの逆転写に供した。(図9に示すような)結果により、INF−γの存在により誘導される炎症性サイトカインの発現を阻害する化合物Aの能力が明らかにされ、それは用量依存性ではないようである。
【0103】
(実施例6 H2O2の存在により誘導される核性因子NF−kBの活性化における阻害能力)
H2O2の存在により誘導される核性転写因子NF−κBの活性化についての化合物Aによる阻害の評価を、細胞蛍光測定法(cytofluorimetry)における分析により行った。
【0104】
ケラチノサイトを12ウェルプレートのウェルにプレートした。80%の集密において、その細胞を、1時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でH2O2(300μM)によって処置した。処置の最後に、その細胞をパラホルムアルデヒド中で固定し、メタノール中で浸透性にし、その後、サブユニットp65についての特異的な抗体の存在下でインキュベートした。化合物Aにより、用量依存性の様式でのNF−κBの活性化および続くトランスロケーションにおける阻害効果が明らかになった(図10)。
【0105】
(実施例7 LPSの存在により誘導されるIL−6のタンパク質発現の阻害)
LPS(リポ多糖類)によるIL−6のタンパク質誘導についての化合物Aによる阻害の分析をELISAキットを用いて行った。ケラチノサイトを24ウェルプレートのウェルにプレートした。80%の集密において、その細胞を、24時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でLPS(10μg/ml)によって処置した。処置の最後に、上清をデカントし、遠心分離してあらゆる細胞デトリタスを取り除き、分析の時まで−80℃で保存した。この上清に存在するIL−6の量をサンプル自体のタンパク質濃度により正規化した。結果(図11)により、試験下にある炎症性サイトカインのタンパク質発現を用量依存性の様式で阻害する化合物Aの能力が明らかになった。
【0106】
(実施例8 ヒト皮脂腺細胞)
試験下にある物質の、可能性のある毒性効果または細胞増殖抑制性効果を判断するために、分光測定テスト(MTT)を実施した。皮脂腺細胞を24ウェルプレートのウェルにおいて、抗生物質、カルシウム、およびEGFの添加を伴う適切な培地中にプレートした。おおよそ70%の集密において、その細胞を、24時間および48時間の間、種々の濃度(0.1−0.5−1−2mM)における化合物Aの存在に曝した。処置の最後に、MTTテストを行った。使用された全ての濃度における化合物Aは、細胞生命力に影響しないことを実証した(図12)。
【0107】
(実施例9 脂質型(リノール酸、テストステロン)の刺激により誘導される皮脂生成における化合物の阻害能力の評価)
リノール酸(LA)および、テストステロン(TST)を用いる処置により誘導される皮脂生成についての(化合物A)による阻害の分析を、細胞内脂質の選択マーカーとしてナイルレッドを用いて分光蛍光法により評価した(ナイルレッドアッセイ)。皮脂腺細胞を24ウェルプレートのウェルにプレートした。翌日、血清(2%)を除き、24時間後に、A(1mM)の存在下または非存在下でLA(10−4M)、TST(20nM)を用いて、さらに24時間の間、刺激した。処置の最後に、その皮脂腺細胞をナイルレッドで染色した。分光蛍光法により定量分析を行い、これにより、励起および発光の異なる波長に基づき中性脂質と極性脂質とを区別することが可能となった。得られたデータにより、LAを用いる処置が脂質合成を誘導し得ること、そして組み合わせたLA+TST処置がこの効果をさらに増大させることが明らかになった。化合物Aの存在により、脂質生成の刺激が減少し得ることが判明した(図13)。
【0108】
(実施例10 脂質型(リノール酸、テストステロン)の刺激により誘導される皮脂生成における阻害能力の評価:脂肪酸およびスクアレンの評価)
LAおよびTSTにより誘導される皮脂生成についての化合物Aによる阻害をより詳細に評価するために、質量分析法と一緒になったガスクロマトグラフィー(GC−MS)を用いて皮脂腺細胞の脂質抽出物においてアッセイを行った。皮脂腺細胞をナイルレッドアッセイのために記載されるスキームにより処置した。処置の最後に、細胞を取り除き、その後、脂質抽出を有機溶媒を用いて行った。その抽出物の一部分を脂肪酸組成を分析するために使用し、他方、他の部分をスクアレンの量の決定、皮脂の脂質特徴付けのために使用した。脂肪酸アッセイにより、LAおよびLA+TSTを用いる処置により誘導される脂質生成の刺激がAの存在により減少することが示された(図14A)。これらの結果は、スクアレン分析により確認される(図14B)。
【0109】
(実施例11 脂質型(リノール酸、テストステロン)の刺激により誘導される皮脂生成における阻害能力の評価)
リノール酸(LA)を用いる、およびテストステロン(TST)を用いる処置により誘導される皮脂生成についての化合物Aによる阻害の分析を、細胞内脂質の選択マーカーとしてナイルレッドを用いて、分光蛍光法により評価した(ナイルレッドアッセイ)。皮脂腺細胞を24ウェルプレートのウェルにプレートした。翌日、血清(2%)を除き、24時間後に、化合物A(1mM)の存在下または非存在下でLA(10−4M)、TST(20nM)を用いて、さらに24時間の間、刺激した。処置の最後に、その皮脂腺細胞をナイルレッドで染色した。分光蛍光法により定量分析を行い、これにより、励起および発光の異なる波長に基づき中性脂質と極性脂質とを区別することが可能となった。得られたデータ(図15)により、LAを用いる処置が脂質合成を誘導し得ること、および組み合わせたLA+TST処置がこの効果をさらに増大させることが明らかになった。化合物Aの存在により、脂質生成の刺激が減少し得ることが判明した。そのAを用いる処置の時間に関して、違いは観測されなかった。
【0110】
(参考文献)
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許(例えば、下に列挙されるそれらの項目が挙げられる)は、あたかも個々の刊行物または特許のそれぞれが具体的に、かつ個々に参考として援用されるかのごとく、本明細書によりその全体が参考として援用される。矛盾がある場合、本明細書中におけるあらゆる定義を含む本願が支配する。
【0111】
(等価物)
本対象の発明の特定の実施形態が論じられているが、上記の明細書は実例となるものであって限定するものではない。本発明の多くのバリエーションは、本明細書の検討の際に当業者に明らかとなる。本発明の全範囲は、等価物の全範囲とともに特許請求の範囲への参照、およびそのようなバリエーションとともに本明細書への参照により決定されるべきである。
【0112】
そうでないと示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量および反応条件などを表現する全ての数は、全ての例において用語「約」により修飾されるものとして理解されるべきである。従って、逆に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において明記される数のパラメーターは、本発明により得られることが求められる、望ましい特性により変動し得る近似値である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2009年2月16日に出願された欧州特許出願公開第09425056.0号、2009年5月18日に出願された米国特許出願第61/179062号、および2009年12月17日に出願された米国特許出願第61/287461号に対する優先権を主張し、それぞれの出願はその全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーであって、遺伝子発現を調節するリガンド活性化転写因子である。特定のPPARは、高等生物の細胞分化、発生および代謝を調節する役割を担う。
【0003】
3つの型のPPARが同定されている:肝臓、腎臓、心臓および他の組織もしくは器官において発現されるα、例えば、脳において発現されるβ/δ、ならびに3つのフォームで発現されるγ:γ1、γ2、およびγ3。PPARγ受容体は、ケラチノサイト分化の刺激に関連しており、多数の疾患状態(皮膚障害(例えば、乾癬およびアトピー性皮膚炎)が挙げられる)に対する可能性のある薬物標的として働く。さらに、PPARの発現は、毛包において示されており、毛の成長に関与し得る。
【0004】
毛の喪失(hair loss)は、疾病、機能障害、または遺伝性素質の結果であり得る、よく起こる問題である。いくつかの症例において、毛の喪失は、身体に局在化(例えば、男性型禿頭症)し得るか、身体全体に起こり得る。脱毛症(alcopecia)は、毛の欠乏または喪失に対する医学用語であり、細胞毒性の薬物を用いる処置を必要とするがんに対する処置、または他の疾患に対する処置を受けている患者に起こり得る。
【0005】
毛の色素脱失もまた、よく起こる問題であり、代表的に老化過程の結果である。老化過程のある時点において、メラノサイト(melancyte)(色素を産生し、貯蔵する細胞)を産生する責任を負っている毛包の基部における幹細胞が、毛が色素をほとんど有さなくなるまで、より少ない色素を産生する。
【0006】
従って、そのような毛の障害の処置において有用である有効な剤(例えば、PPAR調節因子)が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一般的に毛に関する障害もしくは状態を処置、回復、または実質的に予防する方法に関し、例えば、本明細書中で提供するのは、毛に関する状態を処置または回復することを必要とする被験体における毛に関する状態を処置または回復する方法であって、式I:
【0008】
【化1】
によって表される化合物
(ここでXはC1〜C3アルキレン(例えば、(CH2)n、ここでnは1または2である)であって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され(例えば、R1はメチルであり得);
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素またはC1〜C6アルキル(例えば、エチルもしくはメチル)であり)
;またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシドを含む、有効な量の組成物をその被験体へ投与することを含み;ここで、その組成物は、必要に応じて、さらにキャリアを含む。例示的な化合物は、N−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸である。
【0009】
例えば、毛に関する状態(例えば、毛の色素脱失、限定された、もしくは短い毛の成長、毛の喪失、白斑、または脱毛症(例えば、成長期脱毛症、休止期脱毛症、もしくは円形脱毛症))を処置または回復する方法が、本明細書中で提供される。
【0010】
毛の成長を刺激する方法もまた、提供され、この方法は、本明細書中で開示される化合物(例えば、上記、式Iによって表される化合物)を含む有効な量の組成物(例えば、薬学的に、および/または美容上受容可能な組成物)を、それを必要とする被験体へ投与することを含む。そのような組成物は、例えば、局所的に投与され得、その組成物は、薬学的に、または美容上受容可能である。いくつかの実施形態において、開示される組成物は、毛を刺激する剤をさらに含み得る。
【0011】
また、本明細書中で企図されるのは、式Iまたは式IIによって表される化合物および例えば、薬学的に受容可能な賦形剤を含む組成物である。
【0012】
また、提供されるのは、毛の喪失もしくは毛の色素脱失の処置もしくは回復のための、治療における使用および/または医薬の製造のための、式Iおよび式IIによって表される化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、N−アセチルE2の種々の濃度についての毛幹伸長の刺激を表す。
【図2】図2は、フォンターナ−マッソン組織形態計測を用いる、N−アセチルE2の種々の濃度でのヒトの毛包の色素沈着の刺激を表す。
【図3】図3は、N−アセチルE2を用いる毛包のフォンターナ−マッソン組織化学である。
【図4】図4は、N−アセチルE2を用いる観測される毛包のKi67/Tunel免疫組織形態計測(immunhistomorphometry)を表す。
【図5】図5は、化合物Aを用いて処置される毛包におけるK15発現を表す。
【図6】図6は、化合物Aを用いて処置される毛包におけるK19細胞の調節を表す。
【図7】図7は、開示される化合物のヒトケラチノサイトに与える影響を表す。
【図8】図8は、H2O2および開示される化合物によるTNFαの阻害を表す。
【図9】図9は、IFN−γの存在により誘導されるIL−6のmRNAの発現における阻害を表す。
【図10】図10は、NF−kBの活性化の際の開示される化合物の阻害を表す。
【図11】図11は、LPSの存在によって誘導されるIL−6のタンパク質発現の際の、開示される化合物の阻害を表す。
【図12】図12は、開示される化合物のヒト皮脂腺細胞(sebocyte)に与える影響を表す。
【図13】図13は、脂質型の刺激によって誘導される皮脂生成(sebogenesis)の際の、開示される化合物の阻害能力を表す。
【図14A】図14は、皮脂生成の阻害についての脂肪酸アッセイ(A)およびスクアレン分析(B)の結果を表す。
【図14B】図14は、皮脂生成の阻害についての脂肪酸アッセイ(A)およびスクアレン分析(B)の結果を表す。
【図15】図15は、脂質生成の(lipidogenic)刺激によるリノール酸およびテストステロンを用いる処置を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の特徴および他の詳細が、次に、より具体的に記載される。本発明のさらなる記載の前に、明細書、実施例および添付される特許請求の範囲において用いられる特定の用語がここに集められる。これらの定義は、本開示の残りを考慮して読まれるべきであり、当業者により理解されるべきである。そうでないと定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的な用語は、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0015】
(定義)
用語「処置」は、状態、疾患、および障害などの改善(improvement)をもたらす、あらゆる影響(例えば、減らすこと(lessening)、軽減すること(reducing)、調節すること、または排除すること)を含む。
【0016】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和の直鎖または分枝の炭化水素(例えば、2〜12個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝の基であって、本明細書中でそれぞれC2〜C12アルケニル、C2〜C10アルケニルおよびC2〜C6アルケニルと称される)を指す。例示的なアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルコキシ」は、酸素に結合するアルキル基(−O−アルキル−)を指す。例示的なアルコキシ基としては、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、または1〜6個の炭素原子のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を含む基であって、本明細書中でそれぞれがC1〜C12アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、およびC1〜C6アルコキシと称されるものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、例示的な「アルケノキシ」基としては、ビニルオキシ、アリルオキシ、ブテノキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルキル」は、飽和の直鎖または分枝の炭化水素(例えば、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、または1〜6個の炭素原子の直鎖または分枝の基であって、本明細書中でそれぞれC1〜C12アルキル、C1〜C10アルキル、およびC1〜C6アルキルと称される)を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、アルキルは、C1〜C6アルキルを指す。特定の実施形態において、シクロアルキルは、C3〜C6シクロアルキルを指す。
【0019】
アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、いくつかの実施形態において、必要に応じて、以下から選択される少なくとも1つの基で置換され得るか、以下から選択される少なくとも1つの基によって介在され得る;アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニル。
【0020】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和の直鎖または分枝の炭化水素(例えば、2〜12個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝の基であって、本明細書中でそれぞれC2〜C12アルキニル、C2〜C8アルキニルおよびC2〜C6アルキニルと称される)を指す。例示的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、および4−ブチル−2−ヘキシニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミド(amide)」または「アミド(amido)」は、形式−RaC(O)N(Rb)−、−RaC(O)N(Rb)Rc−、または−C(O)NRbRcの基(radical)を指し、ここでRa、RbおよびRcは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amide)、アミノ、アリール、アリールアルキル、カーバメート、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、およびニトロから、それぞれ独立して選択される。上記アミド(amide)は、その炭素、その窒素、Rb、Rc、またはRaを介して別の基に結合し得る。上記アミド(amide)はまた、環式であり得る(例えば、RbおよびRc、RaおよびRb、またはRaおよびRcが結合していて、3員環〜12員環(例えば、3員環〜10員環または5員環〜6員環)を形成し得る)。用語「カルボキサミド」は、構造−C(O)NRbRcを指す。
【0022】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミジノ」は、形式−C(=NR)NR’R’’の基を指し、ここでR、R’、およびR’’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amide)、アリール、アリールアルキル、シアノ、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトンおよびニトロから、それぞれ独立して選択され得る。
【0023】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミン」または「アミノ」は、形式−NRdRe、−N(Rd)Re−、または−ReN(Rd)Rf−の基を指し、ここでRd、Re、およびRfは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amide)、アミノ、アリール、アリールアルキル、カーバメート、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、およびニトロから独立して選択される。上記アミノは、その窒素、Rd、ReまたはRfを介して親分子の基に結合し得る。上記アミノはまた、環式であり得、例えば、Rd、ReまたはRfのうちの任意の2つが一緒に結びつくか、またはNと結びついて、3員環〜12員環(例えば、モルホリノまたはピペリジニル)を形成し得る。用語「アミノ」はまた、あらゆるアミノ基の対応する第四級アンモニウム塩(例えば、−[N(Rd)(Re)(Rf)]+)を含む。例示的なアミノ基としては、アミノアルキル基が挙げられ、ここでRd、ReまたはRfの少なくとも1つはアルキル基である。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、用語「アリール」は、単環、二環、または他の多環の炭素環式芳香族環系を指す。特定の実施形態において、アリールは、単環式および/または二環式の5員環〜6員環を指す。芳香族環は、1つまたはそれより多くの環位置において以下から選択される置換基で置換され得る;アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニル。用語「アリール」はまた、2つまたはそれより多くの炭素が2つの隣り合った環に共通している、2つまたはそれより多くの環式環(この環は、「縮合環」である)を有する多環式の環系を含み、ここで上記環のうちの少なくとも1つは、芳香族環であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよび/またはアリールであり得る。例示的なアリール基としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびにベンゾ縮合炭素環式部分(例えば、5,6,7,8−テトラヒドロナフチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、用語「アリールアルキル」は、少なくとも1つのアルキル置換基を有するアリール基(例えば、−アリール−アルキル−)を指す。例示的なアリールアルキル基としては、環が6個の炭素原子を含む、単環式芳香族環系を有するアリールアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、「フェニルアルキル」は、フェニルC4アルキル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチルなどを含む。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、用語「カルボニル」は、基−C(O)−を指す。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、用語「カルボキサミド」は、基−C(O)NRR’を指し、ここでRおよびR’は同じであっても異なってもよい。RおよびR’は、例えば、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択され得る。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、用語「カルボキシ」は、基−COOHまたはその対応する塩(例えば、−COONaなど)を指す。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、用語「シアノ」は、基−CNを指す。
【0030】
本明細書中で用いられる場合、用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合するシクロアルキル基を指す。
【0031】
本明細書中で用いられる場合、用語「シクロアルキル」は、3〜12個の炭素、3〜8個の炭素、4〜8個の炭素、または4〜6個の炭素の一価の飽和または不飽和の環式、二環式、または橋かけ二環式炭化水素基を指し、本明細書中で、例えば、シクロアルカンに由来する「C4〜8シクロアルキル」と称される。例示的なシクロアルキル基としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロブタンおよびシクロプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニルで置換され得る。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロシクリル基に縮合され得る。特定の実施形態において、シクロアルキルは、C3〜C6アルキルを指す。
【0032】
本明細書中で用いられる場合、用語「ハロ」または「ハロゲン」または「ハル(Hal)」は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0033】
本明細書中で用いられる場合、用語「ハロアルキル」は、1つまたはそれより多くのハロゲン原子で置換されるアルキル基を指す。
【0034】
本明細書中で用いられる場合、用語「ニトロ」は、基−NO2を指す。
【0035】
本明細書中で用いられる場合、用語「フェニル」は、6員炭素環式芳香族環を指す。フェニル基はまた、シクロヘキサン環またはシクロペンタン環に縮合され得る。フェニルは以下に挙げられる1つまたはそれより多くの置換基で置換され得る;アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド(amido)、アミジノ、アミノ、アリール、アリールアルキル、アジド、カーバメート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、スルフェート、スルフィド、スルホンアミド、スルホニルおよびチオカルボニル。
【0036】
本明細書中で用いられる場合、用語「ホスフェート」は、基−OP(O)(ORaa)2またはそのアニオンを指す。用語「ホスホネート(phosphanate)」は、基−P(O)(ORaa)2またはそのアニオンを指す。用語「ホスフィネート」は、基−PRaa(O)(ORaa)またはそのアニオンを指し、ここで各Raaは、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、水素、ハロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選ばれ得る。
【0037】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」または「薬学的に受容可能な賦形剤」は、薬学的投与に適合する、任意の、および全ての、溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを指す。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当該分野において周知である。組成物はまた、補足的な、追加の、または増強された、治療上の機能を提供する他の活性化合物を含み得る。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的組成物」は、1つまたはそれより多くの薬学的に受容可能なキャリアとともに調合される、少なくとも1つの本明細書中で開示される化合物を含む組成物を指す。
【0039】
用語「個体」、「患者」または「被験体」は、交換可能に使用され、あらゆる動物(哺乳動物、より好ましくは、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ(swine)、ウシ(cattle)、ヒツジ、ウマ、または霊長類、そして最も好ましくはヒトが挙げられる)を含む。本発明の化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与され得るが、他の哺乳動物(例えば、獣医学の処置を必要とする動物(例えば、家庭用動物(domestic animal)(例えば、イヌおよびネコなど)、家畜(farm animal)(例えば、ウシ(cow)、ヒツジ、ブタ(pig)およびウマなど)、および実験用動物(例えば、ラット、マウスおよびモルモットなど)))にも投与され得る。本発明の方法で処置される哺乳動物は、望ましくは、PPARおよび/またはEGF受容体の調節が望まれる哺乳動物である。用語「調節」は、拮抗(antagonism)(例えば、阻害)、作動(agonism)、部分拮抗(partial antagonism)および/または部分作動(partial agonism)を含む。
【0040】
本明細書において、用語「治療上有効な量」は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって調べられる組織、系、動物またはヒトの生物学的反応または医学的反応を引き出す本対象の化合物の量を意味する。本発明の化合物は、治療上有効な量で投与され、疾患を処置する。あるいは、化合物の治療上有効な量は、望まれる治療効果および/または予防効果を達成するための必要とされる量(例えば、PPARおよび/またはEGF受容体に関連する疾患の予防または該疾患に関連する症状の減少(decrease)をもたらす量)である。
【0041】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な塩(複数可)」は、本組成物において使用される化合物中に存在し得る酸性基または塩基性基の塩を指す。性質において塩基性である、本組成物中に含まれる化合物は、種々の無機酸および有機酸によって広く多様な塩を形成することが可能である。そのような塩基性化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩を形成するものであって、すなわち、薬理学的に受容可能なアニオンを含む塩である。その塩としては、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられるが、これらに限定されない。アミノ部分を含む、本組成物に含まれる化合物は、上記の酸の他に種々のアミノ酸によって、薬学的に受容可能な塩を形成し得る。性質において酸性である、本組成物に含まれる化合物は、種々の薬理学的に受容可能なカチオンによって塩基塩を形成することが可能である。そのような塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩もしくは鉄塩が挙げられる。
【0042】
本開示の化合物は、1つもしくはそれより多くのキラル中心および/または二重結合を含み得、従って、立体異性体(例えば、幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体)として存在する。本明細書中で用いられる場合、用語「立体異性体」は、全ての幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体からなる。これらの化合物は、ステレオジェン炭素原子のまわりの置換基の立体配置に依存して、記号「R」または「S」によって示され得る。本発明は、これらの化合物の種々の立体異性体およびその混合物を含む。立体異性体は、鏡像異性体およびジアステレオ異性体を含む。鏡像異性体またはジアステレオ異性体の混合物は、命名法において「(±)」と示され得るが、当業者は、構造が暗示的にキラル中心を示し得ることを認識する。
【0043】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、不斉中心もしくはステレオジェン中心を含む市販されている開始材料から、または当業者に周知のラセミ混合物の調製と、続く分割方法によって、合成的に調製され得る。これらの分割方法は、以下により例示されている;(1)鏡像異性体の混合物のキラル補助剤への結合、再結晶化またはクロマトグラフィーによる、結果として生じるジアステレオ異性体の混合物の分離、および補助剤からの光学的に純粋な生成物の遊離、(2)光学的に活性な分割剤(resolving agent)を用いる塩形成、または(3)キラルクロマトグラフカラム上の光学的鏡像異性体の混合物の直接的な分離。立体異性体の混合物はまた、周知の方法(例えば、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩錯体として化合物を結晶化すること、またはキラル溶媒中で化合物を結晶化すること)によって、それを構成する立体異性体へと分割され得る。立体異性体はまた、周知の不斉の合成方法により立体異性的に(stereomerically)純粋な中間体、試薬および触媒から得られ得る。
【0044】
幾何異性体はまた、本発明の化合物において、存在し得る。記号
【0045】
【化2−1】
は、本明細書に記載される単結合、二重結合、または三重結合であり得る結合を示す。本発明は、炭素−炭素二重結合のまわりの置換基の配置または炭素環式環のまわりの置換基の配置からもたらされる種々の幾何異性体およびその混合物を含む。炭素−炭素二重結合のまわりの置換基は、「Z」または「E」の立体配置にあるものとして示され、ここで用語「Z」および「E」は、IUPAC規準に従って使用される。そうでないと特定されない限り、二重結合を示す構造は、「E」および「Z」異性体の両方を含む。
【0046】
炭素−炭素二重結合のまわりの置換基は、代替的に「シス」または「トランス」と称され得、ここで「シス」は二重結合の同じ側にある複数の置換基を表し、「トランス」は二重結合の反対側にある複数の置換基を表す。炭素環式環のまわりの置換基の配置は、「シス」または「トランス」と示される。用語「シス」は環の面の同じ側にある複数の置換基を表し、用語「トランス」は環の面の反対側にある複数の置換基を表す。環の面の同じ側および環の面の反対側の両方にある複数の置換基が配置される化合物の混合物は「シス/トランス」と示される。
【0047】
本明細書中で開示される化合物は、薬学的に受容可能な溶媒(例えば、水およびエタノールなど)による溶媒和形態および非溶媒和形態において存在し得、本発明が溶媒和形態および非溶媒和形態の両方を含むことが意図される。1つの実施形態において、その化合物は、アモルファスである。1つの実施形態において、その化合物は、多形体である。別の実施形態において、その化合物は、結晶形態にある。
【0048】
本発明はまた、本発明の同位体標識された化合物を含み、その化合物は、1つまたはそれより多くの原子が、通常自然界において見出される原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられることを除いて、本明細書中に列挙された化合物と同一である。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体(例えば、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Cl)が挙げられる。
【0049】
特定の同位体標識された開示された化合物(例えば、3Hおよび14Cで標識された化合物)は、化合物および/または基質の組織分布アッセイにおいて有用である。三重水素化(すなわち、3H)および炭素−14(すなわち、14C)同位体は、その調製および検出可能性の容易さのため、特に好ましい。さらに、より重い同位体での置換(例えば、重水素(すなわち、2H))は、より大きな代謝安定性(例えば、増大したインビボ半減期または減少した投与量要求)からもたらされる特定の治療上の利益を与え得、従って、いくつかの状況において好まれ得る。本発明の同位体標識された化合物は、例えば、本明細書中の実施例において開示される手順と類似した手順に沿って、同位体標識された試薬を同位体標識されていない試薬の代わりに用いることによって、一般的に調製され得る。
【0050】
用語「プロドラッグ」は、インビボで変換されて、開示される化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物を生じる化合物を指す。変換は、種々のメカニズムによって(例えば、血液中における加水分解を介して)起こり得る。例えば、本発明の化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物がカルボン酸官能基を含む場合、プロドラッグは、酸性基の水素原子を基(例えば、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C1〜C2)アルキルアミノ(C2〜C3)アルキル(例えば、β−ジメチルアミノエチル)、カルバモイル−(C1〜C2)アルキル、N,N−ジ(C1〜C2)アルキルカルバモイル−(C1〜C2)アルキルおよびピペリジノ(C2〜C3)アルキル、ピロリジノ(C2〜C3)アルキルまたはモルホリノ(C2〜C3)アルキル)と置き換えることにより形成されるエステルを含み得る。
【0051】
同様に、本発明の化合物がアルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子を基(例えば、(C1〜C6)アルカノイルオキシメチル、1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル (C1〜C6)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C1〜C6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1〜C6)アルカノイル、α−アミノ(C1〜C4)アルカノイル、アリールアシルおよびα−アミノアシル、またはα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで各α−アミノアシル基は、天然に存在するL−アミノ酸、P(O)(OH)2、−P(O)(O(C1〜C6)アルキル)2またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基の除去から生じる基)から独立して選択される))と置き換えることにより形成され得る。
【0052】
本発明の化合物がアミン官能基を組み込む場合、プロドラッグは、アミン基における水素原子を基(例えば、R−カルボニル、RO−カルボニル、NRR’−カルボニル(ここでRおよびR’は、それぞれ独立して(C1〜C10)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、ベンジルであるか、またはR−カルボニルが天然のα−アミノアシルもしくは天然のα−アミノアシル−天然のα−アミノアシルである)、−C(OH)C(O)OY1(ここでY1はH、(C1〜C6)アルキルまたはベンジルである)、−C(OY2)Y3(ここでY2は(C1〜C4)アルキルであり、そしてY3は(C1〜C6)アルキル、カルボキシ(C1〜C6)アルキル、アミノ(C1〜C4)アルキル、またはモノ−N−もしくはジ−N,N−(C1〜C6)アルキルアミノアルキルである)、−C(Y4)Y5(ここでY4はHまたはメチルであり、そしてY5はモノ−N−もしくはジ−N,N−(C1〜C6)アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジン−1−イルまたはピロリジン−1−イルである)と置き換えることにより形成され得る。
【0053】
(化合物)
本開示は、下に示されるような式Iによって表される化合物を、少なくとも一部、提供する。また、本明細書中で企図されるのは、式Iによって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド、および例えば、薬学的にもしくは美容上受容可能なキャリアもしくは賦形剤(expicient)を含む組成物である。
【0054】
【化2−2】
ここでXはC1〜C3アルキレンであって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、C1〜C6アルキルである。
【0055】
1つの実施形態において、R1はC1〜C6アルキル(例えば、メチル)であり得る。1つの実施形態において、R2は水素であり得る。別の実施形態において、R3は水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、およびヒドロキシルからなる群より選択され得る。さらなる実施形態において、R3は水素であり得る。1つの実施形態において、R4およびR5は、それぞれC1〜C6アルキルであり得る。別の実施形態において、R4は水素であり得、R5はメチルであり得る。1つの実施形態において、Xは(CH2)nであり得、ここでnは1または2(例えば、1)である。
【0056】
別の実施形態において、−NR2−COR1は、式IIIに示すようなXに対してメタ位にあり得る。
【0057】
【化3】
別の実施形態において、−NR2−COR1は、式IVに示すようなXに対してパラ位にあり得る。
【0058】
【化4】
本開示は、下に示されるような式IIによって表される化合物を、少なくとも一部、提供する。また、本明細書中で企図されるのは、式IIによって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド、および例えば、薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。
【0059】
【化5】
ここでR1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R5は、水素またはC1〜C6アルキルである。
【0060】
式Vの化合物もまた、下に示されるように企図され、式Vによって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド、および例えば、薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物も企図される。
【0061】
【化6】
ここでR1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素またはC1〜C6アルキルであり;ならびに
Aは、縮合された5員複素環または6員複素環である。
【0062】
1つの実施形態において、R1はC1〜C6アルキル(例えば、メチル)であり得る。別の実施形態において、R1およびR3は、それぞれC1〜C6アルキル(例えば、メチル)であり得る。1つの実施形態において、R2は水素であり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシドは
【0064】
【化7】
によって表され得、
ここでpは1または2であり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R4およびR8は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択される。
【0065】
企図される化合物、および少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物は、以下からなる群より選択され得る:N−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(化合物A)、N−アセチル−(S)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(化合物B)、ラセミ体N−アセチル−(S)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(化合物AB);
【0066】
【化8−1】
【0067】
【化8−2】
4−アセトアミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド;1−アセチル−6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸、5−アセトアミド−2ヒドロキシ安息香酸(例えば、アセチル化(acetalyated)5−アミノサリチル酸(salicyclic acid))、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド。
【0068】
本開示はまた、1つまたはそれより多くの薬学的にもしくは美容上受容可能なキャリアとともに調合される、本明細書中で開示される化合物を含む薬学的組成物を提供する。これらの調合物は、経口投与、直腸投与、局所投与、口腔投与および非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、もしくは静脈内)投与または局所的な使用(例えば、化粧品として)に適切な調合物を含む。しかし、あらゆる所定の症例における最も適切な投与形態は、処置されている状態の度合いおよび重症度ならびに使用されている特定の化合物の性質による。
【0069】
(治療上の適用)
本開示は、いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多くのPPARおよび/もしくはEGF受容体の活性を調節する方法であって、該受容体を本発明の化合物に曝すことを含む方法をさらに提供する。例えば、本明細書中で提供されるのは、患者における1つまたはそれより多くのPPARおよび/もしくはEGF受容体の発現または活性に関連する疾患を処置する方法であって、治療上有効な量の本発明の化合物を該患者へ投与することを含む方法である。
【0070】
本開示は、少なくとも一部、例えば、開示される化合物を用いて毛の障害を処置または回復することに関する。例えば、毛の成長を刺激する方法が提供され、ここで開示される化合物(または、例えば、開示される化合物を含む組成物)が、それを必要とする被験体へ投与される(例えば、局所投与される)。
【0071】
いくつかの実施形態において、望まれない毛の喪失もしくは望まれない毛の色素脱失に苦しんでいる(または苦しむことが懸念されている)患者において毛の喪失もしくは毛の色素脱失を処置または回復する方法が提供され、この方法は開示される化合物を含む有効な量の組成物を投与することを含む。企図される方法は、例えば、企図される処置を伴わない毛の喪失もしくは色素脱失と比較して白髪まじりの髪の形成を遅らせる、または毛の喪失を実質的に遅らせる方法を含む。白斑、円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia)、および/または休止期脱落(telogenic defluvium)を処置する方法もまた、企図される。
【0072】
例えば、ざ瘡患者において、絶え間ない皮脂の生成が増加し得、皮脂のインヒビター(例えば、本明細書中で開示されるインヒビター)の適用は、ざ瘡、脂漏、または脱毛症の処置において有用であり得る。別の例において、毛包(ケラチノサイト)の慢性炎症は、例えば、アンドロゲン性脱毛症の指標であり得る。そのような炎症のインヒビター(例えば、本明細書中で開示されるインヒビター)は、例えば、毛の喪失の処置において有用であり得る。
【0073】
本発明の化合物は、そのような処置を必要としている被験体(動物およびヒト)へ最適の薬学的効力を提供する投与量で投与され得る。あらゆる特定の適用における使用のために必要とされる用量が患者ごとに、選択される特定の化合物もしくは組成物によってだけではなく投与経路、処置されている状態の性質、患者の年齢および状態、並行する投薬または患者によってその後続けられる特別な食事、ならびに当業者が認識する他の要因によっても変動して、適切な投与量については最終的には主治医の裁量であるということが正しく認識される。上に言及された医学的状態および疾患を処置するために、本発明の化合物は、従来の非毒性の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントおよびビヒクルを含む投与量単位の調合物において、経口で、局所的に、非経口で、吸入スプレーにより、または直腸に投与され得る。本明細書中で用いられる場合、用語 非経口は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射または注入技術を含む。
【0074】
一般的に、治療上有効な量の活性な構成要素は、約0.1mg/kg〜約100mg/kgの範囲内、必要に応じて約1mg/kg〜約100mg/kgの範囲内、必要に応じて約1mg/kg〜10mg/kgの範囲内にある。投与される量は、可変物(例えば、処置される疾患または適応症の型および程度、特定の患者の全般的な健康状態、化合物の相対的な生物学的効力、化合物の調合、調合物中の賦形剤の存在および型、ならびに投与経路)による。投与される初めの投与量は、望まれる血液レベルまたは組織レベルをすばやく達成するために高い方のレベルを超えて増加されても、初めの投与量が最適なものより小さくてもよく、日々の投与量は、特定の状況によって処置の過程で次第に増加されてもよい。ヒトの投与量は、例えば、0.5mg/kg〜20mg/kgで働くように設計された従来の第I相用量漸増試験(Phase I dose escalation study)において最適化され得る。投与の頻度は、要因(例えば、投与経路、投薬量、および処置されている疾患状態)によって変動し得る。例示的な投与の頻度は、1日1回、1週間に1回、2週間ごとに1回である。
【0075】
企図される調合物または組成物は、開示される化合物を含み、代表的にはまた、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、企図される組成物は、他の剤(例えば、毛を刺激する剤(例えば、プロキャピル(商標)、ラタンプロスト(latanprost)、ミノキシジル、フィナステリド、デュタステライド、および/またはスピロノラクトン))を含み得る。また、本明細書中で企図されるのは、開示される方法であって、この方法は、いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多くの毛を刺激する剤(例えば、上記の剤)を投与することをさらに含み得る。
【0077】
企図される組成物は、当該分野において周知のような、その意図される使用による種々の手段によって投与され得る。例えば、本発明の組成物が経口で投与される場合、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤またはシロップ剤として調合され得る。あるいは、本発明の調合物は、注射剤(静脈内、筋肉内、または皮下)、点滴調製物、または浣腸剤もしくは坐剤として非経口で投与され得る。眼の粘膜経路による適用のために本発明の組成物は、点眼剤または眼軟膏剤として調合され得る。これらの調合物は、従来の手段により調製され得、望まれる場合、その組成物はあらゆる従来の添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯正剤、可溶化剤、懸濁補助剤(suspension aid)、乳化剤またはコーティング剤)と混合され得る。
【0078】
本対象の発明の調合物において、湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウム)、および着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、保存剤ならびに抗酸化剤が、その調合される剤において存在し得る。
【0079】
対象の組成物は、経口投与、鼻投与、局所(口腔および舌下が挙げられる)投与、直腸投与、膣投与、エアゾール投与および/または非経口投与のために適切であり得る。調合物は、単位剤形で都合よく提供され得、薬学分野において周知のあらゆる方法により調製され得る。単一用量を生成するための、キャリア材料と組み合わせられ得る組成物の量は、処置されている被験体、および投与の特定の様式により変動する。
【0080】
これらの調合物を調製する方法としては、本発明の組成物をそのキャリア、および、必要に応じて1つまたはそれより多くの副成分と会合させる工程が挙げられる。包括的に、その調合物は、剤を液体キャリアもしくは細かく分けられた固体キャリア、またはその両方と一様に、および密接に会合させること、そして必要な場合、製品を形作ることにより調製される。
【0081】
経口投与に適している調合物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付けされた主成分(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いる)、散剤、顆粒剤の形態、または水性もしくは非水性液体での液剤もしくは懸濁剤として、または水中油もしくは油中水乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(非活性の基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを用いる)として存在し得て、それぞれ前もって決定される量のその対象の組成物を活性成分として含む。本発明の組成物はまた、ボーラス、舐剤、またはパスタ剤として投与され得る。
【0082】
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、フィルムコートされた錠剤、糖衣錠、散剤、および顆粒剤など)において、その対象の組成物は、1つまたはそれより多くの薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウム)および/または以下のあらゆるものと混合される:(1)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア);(3)保湿剤(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム);(5)溶液遅延剤((solution retarding agent)例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤(例えば、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール);(8)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);(9)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および、これらの混合物);および(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、その組成物はまた、緩衝剤を含み得る。同様の型の固体の組成物はまた、そのような賦形剤(例えば、ラクトースすなわち乳糖)、および高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルに入った充填物として用いられる。
【0083】
経口投与のための液体剤形としては、薬学的に受容可能な乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。その対象の組成物の他に、液体剤形は、当該分野において一般に使用される非活性の希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽(germ)油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール(tetrahydrofuryl alcohol)、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、シクロデキストリンならびにこれらの混合物を含み得る。
【0084】
懸濁剤は、本対象の組成物の他に、懸濁化剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物)を含み得る。
【0085】
対象の組成物の経皮投与または局所投与の剤形としては、散剤、スプレー、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ、および吸入剤が挙げられる。活性な構成要素は、滅菌状態の下、薬学的に受容可能なキャリアと混合され得、必要とされ得るあらゆる保存剤、バッファー、またはプロペラントと混合され得る。
【0086】
軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤およびゲル剤は、対象の組成物の他に、賦形剤(例えば、動物性脂肪および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物)を含み得る。
【0087】
散剤およびスプレーは、対象の組成物の他に、賦形剤(例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物)を含み得る。スプレーは、さらに慣習のプロペラント(例えば、クロロフルオロハイドロカーボン)、および揮発性の不飽和炭化水素(例えば、ブタンおよびプロパン)を含み得る。
【0088】
本開示の組成物および化合物は、エアゾールにより代替的に投与され得る。これは、その化合物を含む、水性のエアゾール、リポソームの調製物、または固体の粒子を調製することにより達成される。非水性(例えば、フルオロカーボンプロペラント)懸濁剤が使用され得る。音波噴霧器は、その対象の組成物中に含まれる化合物の分解をもたらし得る剪断に剤を曝すことを最小限にするので使用され得る。
【0089】
通例、水性エアゾールは、対象の組成物の水性の液剤または懸濁剤を従来の薬学的に受容可能なキャリアおよび安定剤とともに調合することにより作製される。そのキャリアおよび安定剤は、特定の対象の組成物の要求によって変動するが、代表的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、またはポリエチレングリコール)、無害なタンパク質(例えば、血清アルブミン)、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、アミノ酸(例えば、グリシン)、バッファー、塩、糖、または糖アルコールを含む。エアゾールは、一般的に等張液剤から調製される。
【0090】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、1つまたはそれより多くの薬学的に受容可能な滅菌等張の水性もしくは非水性の液剤、分散体(dispersion)、懸濁剤または乳剤、あるいは滅菌散剤と組み合わせて対象の組成物を含み、使用直前に滅菌の注射可能な液剤または分散体に再構成され得、それは抗酸化剤、バッファー、静菌剤、調合物を意図される受容者の血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含み得る。
【0091】
本発明の薬学的組成物において用いられ得る適切な水性および非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えば、エチルオレエート)およびシクロデキストリンが挙げられる。ふさわしい流動性は、例えば、コーティング材料(例えば、レシチン)の使用、分散体の場合において必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持され得る。対象の組成物を用いた処置の効力は、当業者に公知の多数のやり方で決定され得る。
【0092】
組成物が特定の構成要素を有する、含む(including)、または含む(comprising)として記載される本明細書の隅から隅まで、組成物はまた、列挙される構成要素から本質的になるか、または列挙される構成要素からなることが企図される。同様に、プロセスが、特定のプロセスの工程を有する、含む(including、comprising)、または包含する(comprising)として記載される場合、そのプロセスはまた、列挙されるプロセシング工程から本質的になるか、または列挙されるプロセシング工程からなる。そうでないと示されない限り、特定の手段(action)を行うための、工程の順序、または順序は、本発明が実施可能である限り重要ではない。さらに、そうでないと言及されない限り、2つまたはそれより多くの工程または手段が同時に行われ得る。
【実施例】
【0093】
本明細書中で開示される化合物は、有機合成分野における当業者に周知の多数の方法において調製され得る。より具体的には、本発明の化合物は、本明細書中に記載される反応および技術を用いて調製され得る。下に記載される合成方法の記載において、全ての提案される反応条件(溶媒の選択、反応気圧、反応温度、実験期間および試案手順が挙げられる)は、そうでないと示されない限り、その反応に対しての標準の条件であるとして選択され得ることが理解されるべきである。分子の種々の部分において存在する機能性は、提案される試薬および反応と適合性があるべきであることが、有機合成分野における当業者により理解される。その反応条件と適合しない置換基(substituent)は、当業者に明らかであり、従って、方法を交替することが意図される。実施例のための開始材料は、市販されているか、または標準方法により公知の材料から容易に調製される。
【0094】
(実施例1 N−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(N−アセチルE2)の調製;化合物A)
0.5Lのガラス反応器に入った(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸(40g)にエチルアセテート(80g)および無水酢酸(62.8g)を添加した。この混合物を90℃で1時間、攪拌した。冷却の際、減圧蒸留により溶媒を取り除いて、油性の残留物を得た。この残留物に水(120g)およびエチルアセテート(120g)を添加した。35℃で10分間、攪拌した後、これらの層を分離して、水層を捨てた。有機層の溶媒を減圧蒸留により取り除いた。次にアセトン(120g)を添加し、結果として生じる混合物を溶解が完了するまで温めた。溶液を0℃まで冷却し、濾過により回収される生成物が沈殿した。その固体をアセトン(20g)ですすぎ、65℃で乾燥して26gの表題の化合物を得た。
【0095】
(実施例2 毛包器官培養におけるインビトロテスト)
顕微解剖された、器官培養された毛包についてのフィルポット(Philpott)モデルテストシステムを使用する。毛包および皮膚パンチ(skin punch)を4つの群に分け(3HF/ウェル)、異なる濃度において、6日間の間、テスト物質である化合物Aとともにインキュベートした。0日目に毛の長さの顕微解剖測定を行う。1日目に培地を交換し、化合物Aを添加する(毛の長さの測定を伴う)。3日目に培地を交換し、化合物Aを添加する(毛の長さの測定を伴う)。6日目に、毛の長さを測定し、包埋(embedding)が起こる。図1は、化合物Aが、低用量の化合物Aにおいて毛幹伸長を刺激することを示す。
【0096】
クライオセクションにおけるフォンターナ−マッソン組織形態計測/メラニン染色を用いて、図2は、化合物Aによるヒト毛包の色素沈着の刺激を示す。図3は、化合物Aの使用の際の、毛包のフォンターナ−マッソン組織化学を表す。
【0097】
毛包において、蛍光染色法を用いてKi−67/Tunel染色をまた行った。図4は、その毛包のKi67/Tunel免疫組織形態計測を表し、高用量の化合物Aがヒトの毛のマトリックスのケラチノサイトにおける増殖およびアポトーシスの両方を刺激することを示す。
【0098】
より低用量の化合物Aにおいて、毛包の下部におけるK15発現の有意な上方調節があるが、処置される皮膚は、測定可能な発現を示さない(図5を参照のこと)。図6は、毛包の下部において、より低い濃度に対するK19細胞(cless)の有意な上方調節を示し、他方、10倍高い濃度では、下方調節を示す(図6)。この皮膚は、測定可能な発現を示さない。
【0099】
(実施例3 ケラチノサイト)
試験下にある物質の、可能性のある毒性効果または細胞増殖抑制性効果を判断するために、分光測定テスト(MTT)を実施した。皮膚生検から単離されたヒト初代ケラチノサイトを24ウェルプレートのウェルにおいて、抗生物質、カルシウム、および特定の増殖因子の添加を伴う適切な培地中にプレートした。約70%の集密において、その細胞を、24時間および48時間の間、抗生物質、カルシウムの添加を伴うが増殖因子は存在しない適切な培地中において、種々の濃度(0.1−1−2mM)における化合物Aの存在に曝した。この培養条件を続く全ての実験について行った。処置の最後に、MTTテストを行った。結果を図7に示す。使用された全ての濃度における化合物Aは、細胞生命力(cellular vitality)における影響を全く示さなかった。
【0100】
(実施例4 TNFα)
H2O2による炎症性サイトカインTNF−αのmRNA誘導についての化合物Aの阻害の分析をリアルタイムRT−PCRにより実施した。ケラチノサイトを6cm/φ(直径)のディッシュ内にプレートした。80%の集密において、その細胞を、6時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でH2O2(300μM)によって処置した。処置の最後に、その細胞を溶解バッファー中で溶解し、単離および続くRNAの逆転写(retrotranscription)に供した。化合物Aは、2つのより多い用量(0.1mM;0.5mM)において、H2O2により誘導されるTNF−αのmRNAの発現を阻害し得ることが判明した。より多い用量により、トログリタゾン(Tg)と同様の効果を伴う、炎症性サイトカインの完全な阻害が実証された(図8)。
【0101】
(実施例5 IFN−γの存在により誘導されるIL−6のmRNAの発現の阻害)
INF−γによる炎症性サイトカインIL−6のmRNA誘導についての化合物Aによる阻害の分析をリアルタイムRT−PCRによって行った。ケラチノサイトを6cm/φのディッシュ内にプレートした。
【0102】
80%の集密において、その細胞を、6時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でIFN−γ(30ng/ml)によって処置した。処置の最後に、その細胞を溶解バッファー中で溶解し、単離および続くRNAの逆転写に供した。(図9に示すような)結果により、INF−γの存在により誘導される炎症性サイトカインの発現を阻害する化合物Aの能力が明らかにされ、それは用量依存性ではないようである。
【0103】
(実施例6 H2O2の存在により誘導される核性因子NF−kBの活性化における阻害能力)
H2O2の存在により誘導される核性転写因子NF−κBの活性化についての化合物Aによる阻害の評価を、細胞蛍光測定法(cytofluorimetry)における分析により行った。
【0104】
ケラチノサイトを12ウェルプレートのウェルにプレートした。80%の集密において、その細胞を、1時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でH2O2(300μM)によって処置した。処置の最後に、その細胞をパラホルムアルデヒド中で固定し、メタノール中で浸透性にし、その後、サブユニットp65についての特異的な抗体の存在下でインキュベートした。化合物Aにより、用量依存性の様式でのNF−κBの活性化および続くトランスロケーションにおける阻害効果が明らかになった(図10)。
【0105】
(実施例7 LPSの存在により誘導されるIL−6のタンパク質発現の阻害)
LPS(リポ多糖類)によるIL−6のタンパク質誘導についての化合物Aによる阻害の分析をELISAキットを用いて行った。ケラチノサイトを24ウェルプレートのウェルにプレートした。80%の集密において、その細胞を、24時間の間、3つの濃度(0.01−0.1−0.5mM)における化合物Aの存在下でLPS(10μg/ml)によって処置した。処置の最後に、上清をデカントし、遠心分離してあらゆる細胞デトリタスを取り除き、分析の時まで−80℃で保存した。この上清に存在するIL−6の量をサンプル自体のタンパク質濃度により正規化した。結果(図11)により、試験下にある炎症性サイトカインのタンパク質発現を用量依存性の様式で阻害する化合物Aの能力が明らかになった。
【0106】
(実施例8 ヒト皮脂腺細胞)
試験下にある物質の、可能性のある毒性効果または細胞増殖抑制性効果を判断するために、分光測定テスト(MTT)を実施した。皮脂腺細胞を24ウェルプレートのウェルにおいて、抗生物質、カルシウム、およびEGFの添加を伴う適切な培地中にプレートした。おおよそ70%の集密において、その細胞を、24時間および48時間の間、種々の濃度(0.1−0.5−1−2mM)における化合物Aの存在に曝した。処置の最後に、MTTテストを行った。使用された全ての濃度における化合物Aは、細胞生命力に影響しないことを実証した(図12)。
【0107】
(実施例9 脂質型(リノール酸、テストステロン)の刺激により誘導される皮脂生成における化合物の阻害能力の評価)
リノール酸(LA)および、テストステロン(TST)を用いる処置により誘導される皮脂生成についての(化合物A)による阻害の分析を、細胞内脂質の選択マーカーとしてナイルレッドを用いて分光蛍光法により評価した(ナイルレッドアッセイ)。皮脂腺細胞を24ウェルプレートのウェルにプレートした。翌日、血清(2%)を除き、24時間後に、A(1mM)の存在下または非存在下でLA(10−4M)、TST(20nM)を用いて、さらに24時間の間、刺激した。処置の最後に、その皮脂腺細胞をナイルレッドで染色した。分光蛍光法により定量分析を行い、これにより、励起および発光の異なる波長に基づき中性脂質と極性脂質とを区別することが可能となった。得られたデータにより、LAを用いる処置が脂質合成を誘導し得ること、そして組み合わせたLA+TST処置がこの効果をさらに増大させることが明らかになった。化合物Aの存在により、脂質生成の刺激が減少し得ることが判明した(図13)。
【0108】
(実施例10 脂質型(リノール酸、テストステロン)の刺激により誘導される皮脂生成における阻害能力の評価:脂肪酸およびスクアレンの評価)
LAおよびTSTにより誘導される皮脂生成についての化合物Aによる阻害をより詳細に評価するために、質量分析法と一緒になったガスクロマトグラフィー(GC−MS)を用いて皮脂腺細胞の脂質抽出物においてアッセイを行った。皮脂腺細胞をナイルレッドアッセイのために記載されるスキームにより処置した。処置の最後に、細胞を取り除き、その後、脂質抽出を有機溶媒を用いて行った。その抽出物の一部分を脂肪酸組成を分析するために使用し、他方、他の部分をスクアレンの量の決定、皮脂の脂質特徴付けのために使用した。脂肪酸アッセイにより、LAおよびLA+TSTを用いる処置により誘導される脂質生成の刺激がAの存在により減少することが示された(図14A)。これらの結果は、スクアレン分析により確認される(図14B)。
【0109】
(実施例11 脂質型(リノール酸、テストステロン)の刺激により誘導される皮脂生成における阻害能力の評価)
リノール酸(LA)を用いる、およびテストステロン(TST)を用いる処置により誘導される皮脂生成についての化合物Aによる阻害の分析を、細胞内脂質の選択マーカーとしてナイルレッドを用いて、分光蛍光法により評価した(ナイルレッドアッセイ)。皮脂腺細胞を24ウェルプレートのウェルにプレートした。翌日、血清(2%)を除き、24時間後に、化合物A(1mM)の存在下または非存在下でLA(10−4M)、TST(20nM)を用いて、さらに24時間の間、刺激した。処置の最後に、その皮脂腺細胞をナイルレッドで染色した。分光蛍光法により定量分析を行い、これにより、励起および発光の異なる波長に基づき中性脂質と極性脂質とを区別することが可能となった。得られたデータ(図15)により、LAを用いる処置が脂質合成を誘導し得ること、および組み合わせたLA+TST処置がこの効果をさらに増大させることが明らかになった。化合物Aの存在により、脂質生成の刺激が減少し得ることが判明した。そのAを用いる処置の時間に関して、違いは観測されなかった。
【0110】
(参考文献)
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許(例えば、下に列挙されるそれらの項目が挙げられる)は、あたかも個々の刊行物または特許のそれぞれが具体的に、かつ個々に参考として援用されるかのごとく、本明細書によりその全体が参考として援用される。矛盾がある場合、本明細書中におけるあらゆる定義を含む本願が支配する。
【0111】
(等価物)
本対象の発明の特定の実施形態が論じられているが、上記の明細書は実例となるものであって限定するものではない。本発明の多くのバリエーションは、本明細書の検討の際に当業者に明らかとなる。本発明の全範囲は、等価物の全範囲とともに特許請求の範囲への参照、およびそのようなバリエーションとともに本明細書への参照により決定されるべきである。
【0112】
そうでないと示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量および反応条件などを表現する全ての数は、全ての例において用語「約」により修飾されるものとして理解されるべきである。従って、逆に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において明記される数のパラメーターは、本発明により得られることが求められる、望ましい特性により変動し得る近似値である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛に関する状態を処置または回復することを必要とする被験体における毛に関する状態を処置または回復する方法であって、式I:
【化9】
によって表される化合物
(ここでXはC1〜C3アルキレンであって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキルである)
;またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド;および賦形剤を含む、有効な量の組成物を該被験体へ投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記毛に関する状態が毛の色素脱失、限定された、もしくは短い毛の成長、毛の喪失、白斑、または脱毛症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱毛症が成長期脱毛症、休止期脱毛症、もしくは円形脱毛症からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
毛の成長を刺激する方法であって、毛の成長を刺激することを必要とする被験体へ、式I:
【化10】
によって表される化合物
(ここでXはC1〜C3アルキレンであって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキルである)
;またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド;および賦形剤を含む、有効な量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記組成物が局所的に投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が薬学的に、または美容上受容可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が毛を刺激する剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
毛を刺激する剤を投与する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
R1がC1〜C6アルキルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
R1がメチルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
それぞれの出現に対して、R3が水素である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
R5がメチルまたはエチルである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
Xが(CH2)n、ここでnは1または2である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
nが1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物がN−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
毛に関する状態を処置または回復することを必要とする被験体における毛に関する状態を処置または回復する方法であって、式I:
【化9】
によって表される化合物
(ここでXはC1〜C3アルキレンであって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキルである)
;またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド;および賦形剤を含む、有効な量の組成物を該被験体へ投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記毛に関する状態が毛の色素脱失、限定された、もしくは短い毛の成長、毛の喪失、白斑、または脱毛症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱毛症が成長期脱毛症、休止期脱毛症、もしくは円形脱毛症からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
毛の成長を刺激する方法であって、毛の成長を刺激することを必要とする被験体へ、式I:
【化10】
によって表される化合物
(ここでXはC1〜C3アルキレンであって、必要に応じて、ハロゲンもしくはヒドロキシルから選択される、1つ、2つ、または3つの置換基で置換されるC1〜C3アルキレンであり;
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルからなる群より選択され;
R2は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R3は、それぞれの出現に対して、水素、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、シアノ、C3〜C6シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より独立して選択され;
R4は、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され;
R5は、水素、C1〜C6アルキルである)
;またはその薬学的に受容可能な塩もしくはN−オキシド;および賦形剤を含む、有効な量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記組成物が局所的に投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が薬学的に、または美容上受容可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が毛を刺激する剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
毛を刺激する剤を投与する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
R1がC1〜C6アルキルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
R1がメチルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
それぞれの出現に対して、R3が水素である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
R5がメチルまたはエチルである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
Xが(CH2)n、ここでnは1または2である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
nが1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物がN−アセチル−(R)−(−)−3−(4−アミノフェニル)−2−メトキシプロピオン酸である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【公表番号】特表2012−517969(P2012−517969A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549494(P2011−549494)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000939
【国際公開番号】WO2010/091894
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511134621)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000939
【国際公開番号】WO2010/091894
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511134621)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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