説明

毛乳頭細胞増殖促進剤及び育毛剤

【課題】 天然抽出物を含有した毛乳頭細胞増殖促進剤、及び当該毛乳頭細胞増殖促進剤を配合した育毛剤を提供する。
【解決手段】 毛乳頭細胞増殖促進剤に、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物を有効成分として含有せしめる。また、育毛剤に、上記毛乳頭細胞増殖促進剤を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛乳頭細胞増殖促進剤及び育毛剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、成長期、退行期及び休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期にかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられており、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞に働きかけてその増殖を促進する等、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において重要な役割を担っている(非特許文献1参照)。
【0003】
このように、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成において最も重要な役割を果たしており、従来、培養毛乳頭細胞に対象物質を接触させて、その細胞の増殖活性の有無及び/又は強弱を特定することで、その対象物質の育毛効果を検定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、従来、毛乳頭細胞増殖促進作用を有する生薬として、例えば、オウギ抽出物、オウレン抽出物、クマノギク抽出物等が提案されている(特許文献2及び特許文献3参照)。このように、安全性及び生産性に優れ、日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有する天然系の各種製剤に対する需要者の要望はきわめて強いが、いまだ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平10−229978号公報
【特許文献2】特開平9−208431号公報
【特許文献3】特開平11−12134号公報
【非特許文献1】「Trends Genet」,1992年,第8巻,p.56−61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全性の高い天然物の中から毛乳頭細胞増殖促進作用を有する物質を見出し、それを有効成分とする毛乳頭細胞増殖促進剤、及び当該毛乳頭細胞増殖促進剤を配合した育毛剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物を有効成分として含有することを特徴とし、本発明の育毛剤は、前記毛乳頭細胞増殖促進剤を配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物を有効成分として含有し、安全性に優れた毛乳頭細胞増殖促進剤、及び当該毛乳頭細胞増殖促進剤を配合した育毛剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について説明する。
〔毛乳頭細胞増殖促進剤〕
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物を有効成分として含有する。
【0009】
ここで、本発明において「抽出物」には、ハトムギ、ワイルドタイム、スギナ、ショウブ、ローズマリー、ウコン、シラカバ及びコウチャからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0010】
本発明において使用する抽出原料は、ハトムギ(学名:Coix lachrymal-jobi L.)、ワイルドタイム(学名:Thymus serpyllum L.)、スギナ(学名:Equisetum arvense L.)、ショウブ(学名:Acorus calamus L.)、ローズマリー(学名:Rosmarinus officinalis L.)、ウコン(学名:Curcuma longa L.)、シラカバ(学名:Betula alba L.)又はコウチャ(植物名:チャ,学名:Camellia sinensis)である。2種以上の植物を抽出原料として用いる場合、上記植物を任意に組み合わせて使用することができる。
【0011】
ハトムギ(Coix lachrymal-jobi L.)は、中国、インドシナ地方原産の植物であって、日本では西南部の暖地で栽培されているイネ科に属する一年草であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは種子部である。ハトムギの種子部は特にヨクイニンと呼ばれ、利水滲湿、清熱、排膿、除痺、健脾止痛等の用途に用いられている。
【0012】
ワイルドタイム(Thymus serpyllum L.)は、アフガニスタンから中国、ヒマラヤ及び日本等に分布しているシソ科に属する多年生の植物であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは地上部である。
【0013】
スギナ(Equisetum arvense L.)は、北半球の暖帯以北に広く分布しているトクサ科に属する夏緑多年生シダ植物であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは全草である。
【0014】
ショウブ(Acorus calamus L.)は、東アジア、インド、日本等に分布しているサトイモ科に属する多年草の植物であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根茎部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根茎部である。
【0015】
ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)は、ヨーロッパ、日本等に分布しているシソ科に属する常緑低木であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部及び花部である。
【0016】
ウコン(Curcuma longa L.)は、中国、インド、インドネシア、台湾、日本等に分布しているショウガ科に属する多年草の植物であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根茎部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根茎部である。
【0017】
シラカバ(Betula alba L.)は、中国からモンゴルに分布しているカバノキ科に属する落葉高木の植物であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根茎部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは樹皮部である。
【0018】
コウチャとは、チャ(学名:Camellia sinensis)の葉部及び/又は茎部を完全発酵させたものをいう。チャは、中国、インド、日本等に分布しているツバキ科に属する常緑小低木であり、これらの地域から容易に入手することができる。本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤の抽出原料としてのコウチャは、アッサムチャ(学名:Camellia sinensis var. assamica Pierre)の葉部及び/又は茎部を完全発酵させたものであることが好ましい。
【0019】
ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物又はコウチャ抽出物に含有される毛乳頭細胞増殖促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、これらの植物から毛乳頭細胞増殖促進作用を有する抽出物を得ることができる。
【0020】
例えば、上記植物を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより、毛乳頭細胞増殖促進作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、上記植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0021】
抽出溶媒としては、極性溶媒を用いるのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0022】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0023】
抽出溶媒として使用することのできる親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0024】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90質量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40質量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して多価アルコール10〜90質量部を混合することが好ましい。
【0025】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0026】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでも毛乳頭細胞増殖促進剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0027】
上記植物抽出物は、それぞれ特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、育毛剤に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0028】
以上のようにして得られるハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物又はコウチャ抽出物は、毛乳頭細胞増殖促進作用を有しているため、その作用を利用して毛乳頭細胞増殖促進剤の有効成分として用いることができる。
【0029】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物から選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物のみからなるものであってもよいし、上記植物抽出物を製剤化したものであってもよい。
【0030】
上記植物抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記植物抽出物は、他の組成物(頭髪化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0031】
なお、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、必要に応じて、毛乳頭細胞増殖促進作用を有する他の天然抽出物を配合して有効成分として用いることができる。
【0032】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物又はコウチャ抽出物が有する毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、毛乳頭細胞を活性化し、毛包上皮系細胞の増殖・分化及び毛髪の形成を促進することができるとともに、毛周期において成長期から退行期及び休止期へと移行するのを防ぎ、成長期を延長させることができる。この結果、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、育毛及び/又は養毛を促進することができ、種々の脱毛症(例えば、男性型脱毛症、円形脱毛症等)を予防・改善することができる。ただし、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、これらの用途以外にも毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0033】
〔育毛剤〕
本発明の育毛剤は、上記毛乳頭細胞増殖促進剤(ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物のみからなるものを含む。)を配合したものである。
【0034】
ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物又はコウチャ抽出物は、毛乳頭細胞増殖促進作用を有しており、頭皮に適用した場合の使用感及び安全性に優れているため、皮膚外用剤としての育毛剤に配合するのに好適である。この場合、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物から製剤化した毛乳頭細胞増殖促進剤を配合してもよいし、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物又はコウチャ抽出物をそのまま配合してもよい。上記毛乳頭細胞増殖促進剤又は上記植物抽出物を育毛剤に配合することによって、育毛剤に毛乳頭細胞増殖促進作用を付与することができる。この結果、本発明の育毛剤は、育毛及び/又は養毛を促進することができ、種々の脱毛症(例えば、男性型脱毛症、円形脱毛症等)を予防・改善することができる。
【0035】
本発明の育毛剤の形態は特に限定されるものではないが、その具体例として、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、リンス、ポマード等が挙げられる。
【0036】
育毛剤中における有効成分の配合量は、その育毛剤の種類に応じて適宜調整することができるが、植物抽出物に換算して約0.0001〜10質量%であることが好ましく、特に約0.001〜1質量%であることが好ましい。
【0037】
本発明の育毛剤は、上記毛乳頭細胞増殖促進剤とともに、用途に応じた任意の生理活性物質や助剤、例えば収斂剤、殺菌、抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素消去剤等を併用することができる。このように併用することにより、より一般性のある製品になることがあり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0038】
なお、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤又は育毛剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0039】
以下、製造例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0040】
〔製造例1〕各植物抽出物の製造
ハトムギ種子部の粗粉砕物300gに抽出溶媒3000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた濾液を40℃で減圧下にて濃縮し、さらに減圧乾燥機で乾燥してハトムギ抽出物を得た。抽出溶媒として、水、50質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)、エタノールを用いたときの各抽出物の収率を表1に示す。
【0041】
上記と同様にして、ワイルドタイム葉部、スギナ全草、ショウブ根茎部、ローズマリー葉部、ウコン根茎部、シラカバ樹皮部又はコウチャ(アッサムチャの葉部を完全発酵させたもの)の粗粉砕物を抽出原料として、それぞれの植物からの抽出物を得た。抽出溶媒として、水、50質量%エタノール、エタノールを用いたときの各抽出物の収率を表1に示す
【0042】
【表1】

【0043】
〔試験例1〕毛乳頭細胞増殖促進作用試験
製造例1により得られた各植物抽出物について、以下のようにして毛乳頭細胞増殖促進作用を試験した。
【0044】
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞を、2%牛胎児血清(FBS)及び増殖添加剤を含有した毛乳頭細胞増殖培地(Cell Application Inc.製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS含有DMEM培地を用いて1.0×10cells/mLの細胞密度に希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、3日間培養した。培養後、培地を抜き、各植物抽出物を無血清DMEMに溶解した試料溶液を各ウェルに200μLずつ添加し、さらに4日間培養した。
【0045】
毛乳頭細胞増殖促進作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を除き、無血清DMEMに溶解したMTT(終濃度0.4mg/mL)を、各ウェルに100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。なお、コントロールとして、試料溶液の代わりに無血清DMEMを添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記計算式に基づき、毛乳頭細胞増殖促進率(%)を算出した。
【0046】
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100
なお、式中、Aは「試料添加時の吸光度」を表し、Bは「試料無添加時の吸光度」を表す。
上記試験の結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示すように、ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤及び育毛剤は、種々の脱毛症(例えば、男性型脱毛症、円形脱毛症等)等の予防・改善に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物及びコウチャ抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物を有効成分として含有することを特徴とする毛乳頭細胞増殖促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載の毛乳頭細胞増殖促進剤を配合したことを特徴とする育毛剤。

【公開番号】特開2006−219407(P2006−219407A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33689(P2005−33689)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】