説明

毛羽伏せ装置、張力付与ユニット、及び自動ワインダ

【課題】簡単な構成で効果的な毛羽の抑制が可能であり、しかも自動ワインダの高速な巻取りに対応できる毛羽伏せ装置を提供する。
【解決手段】毛羽伏せ装置16は、毛羽伏せローラ45と、糸ガイド機構と、を備える。前記毛羽伏せローラ45は、糸走行経路に対して軸線が斜めになるように配置されるとともに、前記軸線を中心として回転可能に設けられている。前記糸ガイド機構は、毛羽伏せローラ45の外周面の一部に紡績糸20を接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、自動ワインダが備える毛羽伏せ装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
リング精紡等で生産された紡績糸は、給糸ボビンに巻かれて自動ワインダに搬送される。この自動ワインダは、紡績糸の欠陥を除去しつつ、複数の給糸ボビンを糸継ぎしてコーンやチーズ状のパッケージに巻き返す。ここで、紡績糸とは、短い繊維を平行に並べて集束し、これに撚りをかけて一定の太さと長さを持たせた糸である。紡績糸は、比較的短い繊維で構成されているため、連続した長い繊維からなるフィラメント糸に比べると、毛羽(けば)が発生し易い傾向にある。
【0003】
上記の自動ワインダによる巻き返し工程は、給糸ボビンから解舒する紡績糸に対して張力を付与しつつ、多数の糸ガイドにて前記紡績糸をガイドしてパッケージまで巻き取る工程である。従って、前記紡績糸が張力付与装置や糸ガイドを通過する度に摩擦を受け、当該紡績糸に存在する毛羽が増大するという傾向がある。
【0004】
そのため、従来の自動ワインダによる巻き返し工程においては、紡績糸の走行経路中に毛羽伏せ装置を設け、毛羽の発生を抑制することが行われている。この毛羽伏せ装置は、紡績糸が通過する糸通路内へ圧縮空気等の気体を噴射して旋回流を起こし、紡績糸をバルーニングさせることにより、毛羽を繊維に絡ませて巻き込む、或いは糸の構成に寄与しない不要な繊維を振り飛ばすことにより、毛羽伏せ処理をするものである。この種の毛羽伏せ装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
また、別の種類の毛羽伏せ装置として、複数のフリクションディスクを備え、当該ディスクの回転により、作用位置を走行する紡績糸に仮撚りを施し、紡績糸の表面から突出した毛羽を、当該紡績糸を構成する繊維に巻き込ませることで、毛羽伏せ処理を行う複数ディスク方式のものも知られている。この種の毛羽伏せ装置は、例えば特許文献2に記載されている。
【0006】
しかし、上記のような毛羽伏せ装置は、圧縮空気や駆動部材により毛羽伏せを行うため、複雑な機構となっていた。また、毛羽伏せ量を制御するために、圧縮空気の空気量や、駆動部材の駆動量を調整しなければならなかった。
【0007】
一方、紡績機についてであるが、特許文献3には、糸を螺旋状に巻き付けるローラを備えた毛羽抑制装置が記載されている。特許文献3は、回転するローラの周面状を糸が転動しながら摺動することにより、糸表面に遊離している毛羽繊維が糸自体に巻き付けられ、実質的に毛羽のない紡績糸を得ることができるとしている。この特許文献3の構成は、ローラが1つのみという単純な構成であり、上記特許文献1及び特許文献2のような複雑な機構を必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−139231号公報
【特許文献2】特開2002−348042号公報
【特許文献3】実開平6−83774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献3の構成は、ローラ表面に糸が螺旋状に巻き付けられているので、糸をローラから引き出す方向に引っ張ると、当該糸がローラを締め付けることになる結果、ローラ表面で糸が滑りにくくなる。ここで、糸がローラ表面で滑らないとした場合、ローラの下流側で糸の走行速度が急激に変動すると、糸が張りきって切れてしまう可能性が高い。
【0010】
この点、精紡機は比較的巻取速度が遅いため、糸の走行速度が大きく変化することは少なく、特許文献3の構成であっても十分に実用的であった。しかしながら、自動ワインダの場合は、精紡機に比べて糸の走行速度(糸の巻取速度)が速いため、走行速度の変動幅も大きい。しかも自動ワインダにおいては、リボン巻きを防止するためのディスターブ制御等が行われる結果、糸の走行速度が急激に変動することがある。従って、特許文献3に記載の毛羽抑制装置では、上記のような自動ワインダにおける糸走行速度の変動に対応できず、糸切れが多発してしまうと考えられる。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成で効果的に毛羽の抑制が可能であり、しかも自動ワインダの高速な巻取りに対応できる毛羽伏せ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の第1の観点によれば、走行する紡績糸の毛羽の発生を抑制する毛羽伏せ装置であって、以下の構成の毛羽伏せ装置が提供される。即ち、この毛羽伏せ装置は、毛羽伏せローラと、糸ガイド機構と、を備える。前記毛羽伏せローラは、糸走行経路に対して軸線が斜めになるように配置されるとともに、前記軸線を中心として回転自在に設けられる。前記糸ガイド機構は、前記毛羽伏せローラの外周面の一部に前記紡績糸を接触させる。
【0014】
この構成により、毛羽伏せローラ表面を紡績糸が摺動しながら走行するとともに、回転する毛羽伏せローラによって糸が捻られる。この捻り作用及び摺動時の擦り作用により、紡績糸表面に遊離している毛羽繊維が紡績糸自体に巻き付けられて毛羽を抑制することができる。このように、ローラを1つ備えるという簡単な構成で、毛羽伏せの効果を実現することができる。また、毛羽伏せローラに紡績糸を巻き付けず、毛羽伏せローラ外周面の一部に紡績糸を接触させるだけなので、紡績糸の巻取速度が大きく変動した場合に毛羽伏せローラの外周面上で紡績糸が滑ることが可能となり、糸切れを防止できる。
【0015】
前記の毛羽伏せ装置において、前記毛羽伏せローラは、前記紡績糸の走行方向下流側の端部を片持ち支持されていることが好ましい。
【0016】
即ち、本願発明の毛羽伏せ装置においては、紡績糸の走行経路に対して斜めに配置された毛羽伏せローラの表面を糸が摺動しながら走行するので、当該紡績糸は、毛羽伏せローラの走行経路上流側の端部に向かって流される。従って、仮に、毛羽伏せローラの糸走行経路上流側の端部を支持する構成とした場合、その支持軸に対して紡績糸が絡み付き易いという問題がある。この点、上記のように構成することにより、毛羽伏せローラの支持軸に対して紡績糸が絡み付きにくくすることができる。
【0017】
前記の毛羽伏せ装置は、前記毛羽伏せローラの前記軸線の傾きを切り換え可能な切換機構を有することが好ましい。
【0018】
これにより、紡績糸の撚り方向に応じてローラの傾きを変更することができるので、紡績糸の撚り方向がZ撚りとS撚りの何れの場合であっても、毛羽伏せローラより上流側で追撚させて毛羽を巻き込むことができる。
【0019】
前記の毛羽伏せ装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記糸ガイド機構は、前記糸走行経路を横切る方向に移動可能に設けられている。そして、当該糸ガイド機構は、前記糸走行経路を走行する紡績糸を屈曲させることにより、前記毛羽伏せローラの外周面に接触する紡績糸の接触長さを変化させる。
【0020】
このように毛羽伏せローラに対する紡績糸の接触長さを変化させることにより、毛羽伏せ効果を調整することが可能となる。
【0021】
前記の毛羽伏せ装置において、前記毛羽伏せローラの表面には、当該毛羽伏せローラの軸線と略直交する方向に沿った溝が形成されていることが好ましい。
【0022】
このように、毛羽伏せローラの表面に溝を形成することにより、表面を平滑にした場合と比べて、大きな毛羽伏せ効果を得ることができる。
【0023】
前記の毛羽伏せ装置においては、前記毛羽伏せローラの表面の材質はゴムであることが好ましい。
【0024】
このように、ローラ表面をゴム製とすることで、紡績糸とローラ表面との間に適度な摩擦を発生させることができるので、大きな毛羽伏せ効果を発揮することができる。
【0025】
前記の毛羽伏せ装置において、前記毛羽伏せローラの表面は、ニトリルゴム製であることが好ましい。
【0026】
即ち、ニトリルゴムは耐摩耗性、耐老化性に優れ、引裂にも強いことから、毛羽伏せローラの材質として特に好適である。
【0027】
前記の毛羽伏せ装置において、前記毛羽伏せローラの表面は、ウレタン製であっても良い。
【0028】
このように、毛羽伏せローラをウレタン製とすることにより、例えばアルミ等の金属製とする場合と比べて、大きな毛羽伏せ効果を得ることができる。
【0029】
前記の毛羽伏せ装置は、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、前記糸ガイド機構は、上流側ガイド部材と、下流側ガイド部材と、糸ガイド移動部と、から構成される。前記上流側ガイド部材は、前記毛羽伏せローラから見て前記糸走方向上流側の紡績糸を、上流側糸ガイドポイントを介して前記毛羽伏せローラの表面に案内する。前記下流側ガイドは、前記毛羽伏せローラの表面に接触した紡績糸を、下流側糸ガイドポイントを介して前記毛羽伏せローラから更に下流側に案内する。前記糸ガイド移動部は、前記上流側糸ガイドポイントと前記下流側糸ガイドポイントを結ぶ仮想線が、前記毛羽伏せローラの前記軸線に対して接近又は離間する方向に、前記上流側ガイド部材及び前記下流側ガイド部材を移動させることが可能である。
【0030】
この構成により、紡績糸を毛羽伏せローラに対して押し当てる量を適宜調節することができるので、毛羽伏せ装置を、一種の張力調節装置として機能させることができる。
【0031】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の張力付与ユニットが提供される。即ち、この張力付与ユニットは、前記の毛羽伏せ装置と、可動の櫛歯部と固定の櫛歯部との間隔を適宜調節して、走行する紡績糸のテンションを調整するゲート式張力付与装置と、ブラケットと、を備える。前記可動の櫛歯部の櫛歯のうち、少なくとも1本の櫛歯は、前記固定の櫛歯部の櫛歯よりも前記毛羽伏せローラ側に位置している。これにより、前記可動の櫛歯部が、前記毛羽伏せ装置の前記上流側ガイド部材を兼ねている。また、前記下流側ガイド部材は、前記可動の櫛歯部と一体として構成される。そして、前記毛羽伏せ装置及び前記ゲート式張力付与装置は、前記ブラケットに対して取り付けられている。
【0032】
このように構成することにより、上流側ガイド(可動の櫛歯部)と下流側ガイドとが、紡績糸の解舒テンションに応じて移動するので、毛羽伏せローラに対して紡績糸を押し当てる量を、紡績糸の解舒テンションに応じて調整することができる。また、上記のように、毛羽伏せ装置は、一種の張力調節装置として機能する。従って、従来のゲート式張力付与装置の機能の一部を毛羽伏せ装置が担うことができる結果、ゲート式張力付与装置を小型化することができる。更に、毛羽伏せ装置とゲート式張力付与装置とをブラケットに固定することで、毛羽伏せ装置及びゲート式張力付与装置を、1まとまりのユニット(張力付与ユニット)として扱うことができる。
【0033】
本発明の第3の観点によれば、前記の毛羽伏せ装置と、給糸ボビンを支持する給糸ボビン支持部と、巻取ボビンに前記給糸ボビンの紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、を備える自動ワインダが提供される。
【0034】
この自動ワインダは、簡単な構成で毛羽を抑制できる毛羽伏せ装置を備えているので、低コストで高品質なパッケージを形成することができる。
【0035】
本発明の第4の観点によれば、前記の張力付与ユニットと、給糸ボビンを支持する給糸ボビン支持部と、巻取ボビンに前記給糸ボビンの紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、を備え、前記張力付与ユニットを着脱自在に構成された自動ワインダが提供される。
【0036】
この自動ワインダは、簡単な構成で毛羽を抑制できる毛羽伏せ装置を備えているので、低コストで高品質なパッケージを形成することができる。また、この自動ワインダは、張力付与ユニットを取り外すことができるので、メンテナンス性に優れる。
【0037】
前記の自動ワインダは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この自動ワインダは、糸継装置と、制御部と、を備える。前記糸継装置は、前記給糸ボビン側の糸端と、前記巻取ボビン側の糸端とを糸継ぎする。前記制御部は、前記糸継装置が糸継ぎ作業を行う際に、前記糸ガイド機構を開放し、糸継ぎ作業が完了して前記巻取部が巻取作業を再開した際には、前記糸ガイド機構を移動させて前記紡績糸を前記毛羽付せローラの外周面に接触させる。
【0038】
即ち、糸ガイド機構を開放した状態で糸を糸継装置に案内することで、毛羽付せ装置に糸を簡単に導入することができる。このように、自動ワインダの糸継ぎ作業時に糸ガイド機構を開閉することにより、容易に毛羽付せをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニットの概略的な正面図。
【図2】ワインダユニットの概略的な側面図。
【図3】張力付与ユニットを取り外した状態を示す正面図。
【図4】(a)毛羽伏せ装置の構成を示す側面図。(b)毛羽伏せ装置の構成を示す正面図。
【図5】変形例に係る毛羽伏せ装置の構成を示す側面図。
【図6】毛羽伏せローラをその軸線方向で見た様子を示す図。
【図7】(a)櫛歯が深く噛み合った様子を示す図。(b)櫛歯の噛み合いが浅くなったときの様子を示す図。
【図8】本実施形態の毛羽伏せ装置の効果を示すグラフ。
【図9】素材別の毛羽伏せローラの毛羽伏せ効果を示すグラフ。
【図10】表面がゴム製の毛羽伏せローラの構造を示す断面図。
【図11】表面に溝を形成した毛羽伏せローラの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る糸巻取機としての自動ワインダが備えるワインダユニット10の概略図である。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数のワインダユニット10と、図略の機台制御装置を備えている。
【0041】
それぞれのワインダユニット10は、ボビン支持部31と、巻取部32と、解舒補助装置12と、張力付与装置13と、毛羽伏せ装置16と、スプライサ装置14と、糸品質測定器15と、を備えている。また、ワインダユニットはユニット本体部11を備えており、前記各構成(巻取部32、解舒補助装置12、張力付与装置13、毛羽伏せ装置16、スプライサ装置14、糸品質測定器15等)は、ユニット本体部11の側面に取り付けられている。
【0042】
ボビン支持部31は、精紡工程で製造された紡績糸を巻き付けた給糸ボビン21を、略直立状態で保持することができるように構成されている。
【0043】
巻取部32は、給糸ボビン21から解舒される紡績糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30を形成するように構成されており、巻取ドラム24と、クレードル23と、を備えている。
【0044】
巻取ドラム24は、巻取ボビン22に対向するように配置されている。また、巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって紡績糸20をトラバース(綾振り)させるように構成している。巻取ボビン22(又は当該巻取ボビン22の外周に糸層が形成されたパッケージ30)の外周面は前記巻取ドラム24の外周面に接触しており、当該巻取ドラム24が回転駆動することにより、巻取ボビン22が回転駆動される。この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動は図略のモータ制御部によって制御されている。
【0045】
前記モータ制御部は、ドラム駆動モータ53を適宜制御して巻取ドラム24を所定の回転速度で回転させることにより、給糸ボビン21から解舒された紡績糸20を適切な速度で巻取ボビン22に巻き取るように構成されている。また、モータ制御部は、リボン巻きを防止するためのディスターブ制御を行うように構成されている。このディスターブ制御とは、リボン巻き発生径の近傍で巻取ドラム24の回転を急激に増減速させてパッケージ30と巻取ドラム24間にスリップを生じさせ、綾振られる紡績糸20の糸道を分散させて巻き取る制御である。これによりリボン巻きを崩し、解舒性に優れたパッケージ30を形成することができる。
【0046】
クレードル23は、巻取ボビン22を回転可能に把持するよう構成されている。また、クレードル23は、図略の回動軸(支持軸)を中心にして、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に回動可能に構成されている。このようにクレードル23が回動することによって、巻取ボビン22への紡績糸20の巻取りに伴うパッケージ30の径の増大を吸収できるように構成されている。これにより、パッケージ30が巻き太って糸層径が増大しても、当該パッケージ30の表面を常に適切に巻取ドラム24に接触させた状態で紡績糸20を巻き取ることができる。
【0047】
本実施形態のワインダユニット10は、給糸ボビン21と巻取ボビン22との間の糸走行経路中に、上流側から順に、解舒補助装置12と、張力付与装置13と、毛羽伏せ装置16と、スプライサ装置14と、糸品質測定器15と、を配置した構成となっている。なお、本明細書において、「上流側」「下流側」というときには、紡績糸20の走行方向で見たときの上流側及び下流側をいうものとする。
【0048】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンを適切な大きさに制御することによって糸の解舒を補助する。
【0049】
張力付与装置13は、走行する紡績糸20に所定のテンションを付与するものである。張力付与装置13は、固定の櫛歯(固定櫛歯41)に対して可動の櫛歯(可動櫛歯42)を配置するゲート式のものとして構成されている。図1に示すように、固定櫛歯41と可動櫛歯42は、互いに所定の隙間を空けて噛み合わせ状態とすることができるように構成されている。給糸ボビン21から解舒された紡績糸20は、この噛み合った櫛歯41,42の間を屈曲して走行する。これにより、巻取部32でパッケージ30に巻き取られる紡績糸20に所定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0050】
また、可動櫛歯42は、固定櫛歯41に対して接近又は離間するように移動可能に構成されており、固定櫛歯41と可動櫛歯42との噛み合いの深さを変化させることができるようになっている。ここで、固定櫛歯41と可動櫛歯42との噛み合いが深いほど、走行する紡績糸20はより大きく屈曲することになるので、当該紡績糸20に付与するテンションを大きくすることができる。即ち、上記のように固定櫛歯41と可動櫛歯42との噛み合いの深さを変化させることを可能とすることにより、状況に応じた適切なテンションを紡績糸20に付与することができる。
【0051】
図1等に示すように、可動櫛歯42は、櫛歯駆動アーム43の先端に固定されている。この櫛歯駆動アーム43は回動可能に構成されており、櫛歯駆動アーム43が回動することにより、可動櫛歯42を前述のように移動させることができる。また、図2に示すように、張力付与装置13はロータリソレノイド44を備えている。このロータリソレノイド44には、リンク機構等を介して前記櫛歯駆動アーム43が連結されている。また、ワインダユニット10は、ロータリソレノイド44の動作を制御する制御部(図略)を備えている。この構成により、制御部は、ロータリソレノイド44の動作を制御することによって、可動櫛歯42を、固定櫛歯41に対して接近又は離間する方向に移動させることができる。なお通常の巻き取り時においては、ロータリソレノイド44によって、固定櫛歯41に接近する方向の力が可動櫛歯42に加えられている。これにより、両櫛歯41,42を噛み合った状態に保つことができる。
【0052】
ところで、巻取ボビン22下端部で解舒テンションが高くなってくると、糸が直線状の状態(糸が張った状態)になろうとする力が強くなる。これにより、櫛歯41,42の間を屈曲して走行する糸が直線状の状態に戻ろうとする結果、櫛歯41,42を押し退けるような力が働き、可動櫛歯42が前記ロータリソレノイド44の力に逆らって移動する。従って、紡績糸20のテンションが高くなると、櫛歯41,42の噛み合いが浅くなるという現象が発生する。即ち、紡績糸20の解舒テンションが低い状態では、櫛歯41,42は、ロータリソレノイド44の力によって深く噛み合った状態であるが、紡績糸20の解舒テンションが高くなるに従って、紡績糸20が可動櫛歯42を押し退けて、櫛歯41,42の噛み合いが浅くなるようになっている。
【0053】
このように、ゲート式の張力付与装置13では、糸の解舒テンションに応じて櫛歯41,42の噛み合いの深さが変化し、結果として紡績糸20に付与するテンションが自動的に調節される。即ち、紡績糸20に対して、当該紡績糸20の上端から下端まで安定したテンションを付与することができ、安定した毛羽伏せ(後述)を行うことができる。
【0054】
張力付与装置13のすぐ下流側には、毛羽伏せ装置16が配置されている。毛羽伏せ装置16は、回転自在に支持された円柱状の毛羽伏せローラ45を備えており、紡績糸20が毛羽伏せローラ45に接触しながら走行することにより、当該紡績糸20の毛羽を抑制することができるように構成されている。なお、毛羽伏せ装置16の詳しい構成については後述する。
【0055】
張力付与装置13と毛羽伏せ装置16はブラケット29に固定されており、1つのユニット(張力付与ユニット28)として扱うことができるようになっている。この張力付与ユニットは、図3に示すように、適宜の取り外し作業によってユニット本体部11から簡単に取り外すことができるように構成されている。これにより、張力付与ユニット28及びユニット本体部11のメンテナンス性を向上させることができる。
【0056】
糸品質測定器15は、走行する紡績糸20の太さを監視することにより糸欠陥を検出するように構成されている。また、前記糸品質測定器15の近傍には、当該糸品質測定器15が糸欠点を検出したときに直ちに紡績糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0057】
スプライサ装置14は、糸品質測定器15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。このように上糸と下糸とを糸継ぎする糸継装置としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0058】
前記スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉してスプライサ装置14に案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉してスプライサ装置14に案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。また、下糸案内パイプ25と上糸案内パイプ26は、それぞれ軸33,35を中心にして回動可能に構成されている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口36が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口36及びサクションマウス34に吸引流を発生させて、上糸及び下糸の糸端を吸引捕捉できるように構成されている。
【0059】
次に、図4を参照して、毛羽伏せ装置16について詳しく説明する。この毛羽伏せ装置16は、毛羽伏せローラ45と、糸ガイド機構と、を備えている。なお、図4においては、紡績糸20の撚り方向を図示するために、当該紡績糸20の太さを実際よりも強調して描かれている。
【0060】
糸ガイド機構は、上流側ガイド(上流側ガイド部材)48と、下流側ガイド(下流側ガイド部材)47と、糸ガイド移動部と、を備えている。なお、後述するように、本実施形態では、前述のロータリソレノイド44が糸ガイド移動部を兼ねている。
【0061】
毛羽伏せローラ45の上流側には、上流側の紡績糸20をガイドして毛羽伏せローラ45まで案内する上流側ガイド48が配置されている。一方、毛羽伏せローラ45の下流側には、当該毛羽伏せローラ45から更に下流側に向かって走行する紡績糸20をガイドするための下流側ガイド47が配置されている。紡績糸20と上流側ガイド48とが接触する点を上流側ガイドポイント、紡績糸20と下流側ガイド47とが接触する点を下流側ガイドポイントとする。即ち、紡績糸20は、上流側ガイドポイントを介して毛羽伏せローラまで案内され、下流側ガイドポイントを介して毛羽伏せローラから更に下流側に向けて案内される。
【0062】
なお、本実施形態では、毛羽伏せローラ45の上流側には張力付与装置13が配置されており、図1に示すように、一番下流側の櫛歯によって紡績糸20がガイドされつつ、張力付与装置13から毛羽伏せローラ45側に引き出されている。この一番下流側の櫛歯は、可動櫛歯42を構成する櫛歯のうちの一本である。即ち、本実施形態では、この可動櫛歯42の一番下流側の歯が、毛羽伏せ装置16の上流側ガイド48としての機能を兼ねているということができる。
【0063】
一方図4(a)の側面図に示すように、毛羽伏せローラ45は、その軸線が、糸走行経路に対して、45度傾いて配置されている(より精確に言うと、上流側ガイドポイント及び下流側ガイドポイントとを結ぶ仮想線と、前記軸線と、に直交する方向から見たときに、前記仮想線に対して前記軸線が45度傾いて配置されている)。なお、以下の説明では、斜めに配置された毛羽伏せローラの両端部のうち、巻取ボビン22に近い方の端部を下流側端部45a、給糸ボビン21に近い方の端部を上流側端部45bと呼ぶ。この毛羽伏せローラ45は、その軸線回りで回転自在であるように、ローラ支持部材46によって支持されている。なお、このローラ支持部材46は、前記ブラケット29に固定されている。
【0064】
そして、毛羽伏せローラ45は、図4(b)に示すように、上流側ガイドポイントと下流側ガイドポイントとを結ぶ仮想線に干渉するように配置されている。この構成で、上流側ガイドポイントと下流側ガイドポイントとの間の紡績糸20は、図4(b)に示すように、毛羽伏せローラ45の表面に接触しつつ当該毛羽伏せローラ45の表面に沿って湾曲した経路を走行する。
【0065】
ところで上記のように、上流側ガイドポイントと下流側ガイドポイントの間の紡績糸20は、毛羽伏せローラ45の表面に沿って湾曲した経路を走行しているが、この紡績糸20には張力付与装置13によって所定のテンションが付与されているので、直線状の状態(糸が張った状態)に戻ろうとする力が働いている。従って、当該紡績糸20は、毛羽伏せローラ45の表面に押し付けられながら走行することになる。この結果、紡績糸20と毛羽伏せローラ45の表面との間で摩擦力が発生し、回転自在に指示されている毛羽伏せローラ45は、走行する紡績糸20からの力を受けて軸線回りに従動回転することになる。紡績糸20の走行方向及び毛羽伏せローラ45の回転方向を、図4に太線の矢印で示した。
【0066】
ここで、毛羽伏せローラが45の軸線が、仮に糸の走行経路に対して直交するように配置されていたとすると、紡績糸20と毛羽伏せローラ45の表面との接触部分において、紡績糸20の走行方向と、回転する毛羽伏せローラ45の表面が移動する方向と、は一致することになる。従って、この場合、紡績糸20は、従動回転する毛羽伏せローラ45の表面に押し付けられたままスリップすることなく走行することができる(実際には全くスリップが発生しないことはありえないが、ここでは簡単のため無視する)。
【0067】
しかしながら、本実施形態では、毛羽伏せローラ45の軸線は、糸の走行経路に対して斜めに配置されているので、紡績糸20と毛羽伏せローラ45の表面との接触部分において、紡績糸20の走行方向と、回転する毛羽伏せローラ45の表面が移動する方向と、が一致しない。より具体的には、糸の走行経路と、毛羽伏せローラ45の軸線方向と、に直交する方向で見たとき(図4(a)の状態)に、糸の走行方向と、毛羽伏せローラ45の表面が移動する方向と、の間にズレが発生する。従って、紡績糸20は、毛羽伏せローラ45の表面で摺動しながら走行することになる。
【0068】
この摺動作用により、遊離している毛羽繊維を紡績糸20自体に巻き付け、紡績糸20の毛羽を減少させることができる。
【0069】
また、毛羽伏せローラ45の表面が上記のように斜めに移動するので、当該表面に押し付けられて走行している紡績糸20は、斜め方向(図4(a)の場合は左上方向)に向かって流されるような力を受ける。しかし、紡績糸20は、上流側ガイド48及び下流側ガイド47によって位置が規制されているので、毛羽伏せローラ45の表面上を一定距離以上は流されずに当該表面上で転がることとなる。これにより、図4(a)に示すように、紡績糸20と毛羽伏せローラ45との接触部分において、紡績糸20が一定方向に捻られる。
【0070】
なお、毛羽伏せローラ45によって紡績糸20が捻られる方向は、紡績糸20の走行方向と、毛羽伏せローラ45の傾きと、の関係によって決まる。本実施形態では、紡績糸20の毛羽伏せローラ45より上流側の部分に撚りが加えられるように、毛羽伏せローラ45が配置されている。例えば図4の例は、紡績糸20がZ撚りの場合に、当該紡績糸20に撚りが加えられている様子を示している。即ち、図4(a)に示すように、紡績糸20の走行方向及び毛羽伏せローラ45の軸線に直交する方向で、かつ紡績糸20が毛羽伏せローラ45よりも手前側となる位置から見たときに、紡績糸20の繊維の螺旋が見えている部分の傾き方向と、毛羽伏せローラ45の軸線の傾き方向と、が一致するように、当該毛羽伏せローラ45が配置されている。
【0071】
上記のように、毛羽伏せローラ45によって糸が加撚される方向に捻られるので、上流側ガイド48から毛羽伏せローラ45の表面までの間の紡績糸20は、撚りが加えられつつある糸であるといえる。一方、毛羽伏せローラ45の表面から離れた紡績糸20は、上記捻る力が無くなるので、当該紡績糸20の復元力によって元に戻ろうとする。従って、毛羽伏せローラ45の表面から下流側ガイド47までの間の糸は、加えられた撚りが解けつつある糸であるといえる。このように、紡績糸20を一時的に加撚することにより、遊離している毛羽繊維を紡績糸自体に巻き付け、毛羽を減少させることができる。
【0072】
ただし、毛羽伏せローラ45を図4の配置としたままS撚りの紡績糸を走行させると、前記捻る力によって紡績糸が解撚されてしまう。従って、S撚りの紡績糸を走行させる場合は図5のように毛羽伏せローラ45を前後逆に配置すれば良い。本実施形態の毛羽伏せ装置16は、Z撚り及びS撚りの両方に対応するため、毛羽伏せローラ45の配置を、図4の配置と図5の配置で切り換えることができる切換機構を有している。この切換機構は図には示さないが、毛羽伏せローラ45を、紡績糸20の走行する糸道を中心として180°回転させる機構である。この機構により、糸の撚り方向に応じて毛羽伏せローラ45の配置を容易に切り換えることができる。
【0073】
以上のように、本実施形態の毛羽伏せ装置16は、毛羽伏せローラ45が1つだけで、しかも当該毛羽伏せローラ45の駆動源が必要ないという簡単な構成により、紡績糸20の毛羽を抑制することができる。また、毛羽伏せローラ45は従動回転する構成であり、回転駆動するためのエネルギーを必要としていないので、省エネルギーを実現することができる。
【0074】
また、上記のように、毛羽伏せローラ45を、走行する紡績糸20によって従動回転させる構成とすることで、当該毛羽伏せローラ45は、紡績糸20の走行速度に応じた速度で回転することになる。即ち、上記のような簡単な構成により、紡績糸20の走行速度に応じて安定した毛羽伏せを実現することができる。
【0075】
なお、自動ワインダが糸欠点除去作業を行う際、もしくは給糸ボビン21の交換を行う際には、毛羽伏せローラ45の表面に紡績糸20が一時的に接触していない状態となる。しかしこの状態においても、毛羽伏せローラ45は、それまでの回転エネルギによって継続して回転する。そして、自動ワインダが糸継ぎを完了して紡績糸20の巻取作業を再開したきにも、毛羽伏せローラ45は継続回転しているので、紡績糸20の走行速度に応じた回転速度まで短時間で加速することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、図4(a)に示すように、毛羽伏せローラ45の下流側端部45aを、ローラ支持部材46によって片持ち支持している。これは、紡績糸20がローラ支持部材に絡み付いてしまうことを防止するためである。即ち、前述のように紡績糸20は図4(a)の左上方に向かって流され易いので、当該紡績糸20が切れた場合等には、糸端が図4(a)の左側に向かって飛び易い。従って、仮に毛羽伏せローラ45の上流側端部45bをローラ支持部材によって支持する構成とした場合、当該ローラ支持部材は毛羽伏せローラ45から見て図4(a)の左側(正確には左下方)に配置されることになるので、切れた糸端が当該ローラ支持部材に向かって行き易く、結果として、ローラ支持部材に紡績糸20が絡み付き易い。
【0077】
この点、上記のように毛羽伏せローラ45の上流側端部45bをローラ支持部材46によって片持ち支持すると、ローラ支持部材46は、切れた糸端が飛び易い方向とは反対側に位置することになるので、当該ローラ支持部材46に対する紡績糸20の絡み付きを防止することができる。
【0078】
また、本実施形態では、図4等に示すように、紡績糸20を毛羽伏せローラ45の外周面に接触させているだけであり、当該毛羽伏せローラ45に紡績糸20を巻き付けてはいない。具体的には、図6に示すように、毛羽伏せローラ45の軸線方向で見たときに、紡績糸20は毛羽伏せローラ45の外周面の約半周にのみ接触している。このように、毛羽伏せローラ45に紡績糸20を巻き付けていないので、紡績糸20が毛羽伏せローラ45の表面をある程度滑ることができる。従って、綾振りによる速度変動や、ディスターブ制御等が行われることによる急激な速度変化が発生し、紡績糸20が下流側に向かって瞬間的に引っ張られた場合であっても、毛羽伏せローラ45上を紡績糸が滑ることにより前記速度変動を吸収することができるので、糸が切れてしまうことを防止できる。
【0079】
また、仮に紡績糸20を毛羽伏せローラ45に巻き付ける構成とした場合において、糸切れが発生した場合には、糸継のために給糸ボビン21側の糸をスプライサ装置14まで案内する際に、給糸ボビン21側の紡績糸20を毛羽伏せローラ45に再び巻き付けなければならない。しかし、このように紡績糸20を巻き付ける操作を自動的に実現するためには装置が極めて複雑になると予想される。この点、本実施形態では、毛羽伏せローラ45の外周の約半周にのみ紡績糸20が接触する構成となっているので、糸切れが発生した場合には、給糸ボビン21側の紡績糸20を下糸案内パイプ25によってスプライサ装置14まで案内する際に、下流側ガイド47及び上流側ガイド48に紡績糸20を渡すようにして案内することにより、当該紡績糸20を図4の状態にセットすることができる。このように、紡績糸20を毛羽伏せローラ45の約半周にのみ接触させる構成とすることにより、当該毛羽伏せローラ45の周囲に糸を巻き付けるための複雑な構成が不要となる。
【0080】
次に、下流側ガイド47の構成について説明する。図7等に示すように、下流側ガイド47は、上流側ガイド48(可動櫛歯42)に対して固定されている。より具体的には、下流側ガイド47は、可動櫛歯42を駆動するための櫛歯駆動アーム43に取り付けられている。また前述のように、可動櫛歯42は、固定櫛歯41に対して接近又は離間する方向に、ロータリソレノイド44によって移動させることができる。ここで、可動櫛歯(上流側ガイド)42がロータリソレノイド44によって移動させられると、この可動櫛歯42に固定された下流側ガイド47も一体的に移動する。このように、ロータリソレノイド44は、糸ガイド移動部としての機能を有していると言うことができる。
【0081】
そして、上流側ガイド48及び下流側ガイド47が上記のように移動することにより、上流側ガイドポイントと下流側ガイドポイントとを結ぶ仮想線が、毛羽伏せローラ45の軸線に対して接近又は離間する方向に移動するように構成されている。制御部は、ロータリソレノイド44を制御して、糸走行経路を横切る方向に上流側ガイド48及び下流側ガイド47を移動させることができるので、図7(a)及び図7(b)に示すように、毛羽伏せローラ45の表面に接触する紡績糸20を、どの程度湾曲して走行させるかを調整することができる。そして、図7に示すように、可動櫛歯42と固定櫛歯41との噛み合いが深くなるほど、上流側ガイドポイントと下流側ガイドポイントとの間の紡績糸20が毛羽伏せローラ45の表面に対して強く押し付けられるように構成されている。この結果、当該紡績糸20は毛羽伏せローラ45の表面に沿って大きく湾曲して走行する。
【0082】
上述のように、糸走行経路を横切る方向に移動可能に設けられた上流側ガイド48及び下流側ガイド47をロータリソレノイド44によって移動させ、糸走行経路を屈曲させて毛羽伏せローラ45の外周面に対する紡績糸20の接触長さを変化させることができるので、毛羽伏せ作用の調整を行うことができる。
【0083】
また、ロータリソレノイド44を制御して、可動櫛歯42と固定櫛歯41が離間する方向に上流側ガイド48及び下流側ガイド47を移動させることによって、上流側ガイドポイントと下流側ガイドポイントとを結ぶ仮想線が毛羽伏せローラ45に干渉しない状態とすることができるように構成されている。この位置を、上流側ガイド48及び下流側ガイド47の「開放位置」とする。即ち、制御部は、ロータリソレノイド44を制御して、上流側ガイド48及び下流側ガイド47を開放位置まで移動させることにより、紡績糸20が毛羽伏せローラ45の表面に接触しないようにすることができる。この開放位置に対して、紡績糸20を毛羽伏せローラ45の表面に押し付けているときの上流側ガイド48及び下流側ガイド47の位置(図4や図7に示す位置)のことを、「閉鎖位置」とする。
【0084】
この構成で、糸切れが発生し糸継作業を行う際には、制御部は、ロータリソレノイド44を制御して、上流側ガイド48及び下流側ガイド47を開放位置まで移動させておく。この状態で、給糸ボビン21側の紡績糸20を下糸案内パイプ25によってスプライサ装置14まで案内することにより、下流側ガイド47及び上流側ガイド48に紡績糸20を渡すことができる。そして、スプライサ装置14での糸継作業が完了して巻取部が巻き取りを再開すると、制御部は、ロータリソレノイド44を制御して、下流側ガイド47及び上流側ガイド48を閉鎖位置まで移動させる。これにより、紡績糸20を図4の状態にセットすることができる。このように、糸継ぎ時に下流側ガイド47及び上流側ガイド48を開閉することで、毛羽伏せ装置16に紡績糸20を簡単に導入することができる。
【0085】
また前述のように、本実施形態の張力付与装置13は、巻取ボビン22下端部で解舒テンションが増加するに従い、櫛歯41,42の噛み合いが浅くなるように構成されている。従って、本実施形態の毛羽伏せ装置16は、解舒テンションが増加するに従って、毛羽伏せローラ45の表面に対する紡績糸20の押し付けを弱めるように(紡績糸20の毛羽伏せローラ45の表面における湾曲を小さくするように)構成されている。このように、毛羽伏せローラ45に対する紡績糸20の押し付け量が、紡績糸20の解舒テンションの変化に応じて自動的に調整されるので、紡績糸20の上端から下端まで一定の安定した毛羽伏せを実現することができる。
【0086】
また、本実施形態の毛羽伏せ装置16においては、紡績糸20が毛羽伏せローラ45に押し付けられ、更に当該紡績糸20が毛羽伏せローラ45の表面で湾曲して走行するので、この毛羽伏せ装置16を通過する紡績糸20には一定の抵抗が掛かる。見方を変えると、本実施形態の毛羽伏せ装置16は、一種の張力付与装置として機能していると言うことができる。更に、上述のように、本実施形態の毛羽伏せ装置16は、紡績糸20の解舒テンションの変化に応じて、毛羽伏せローラ45の表面に対する紡績糸20の押し付け量、及び紡績糸の湾曲量を調節することができる。即ち、張力付与装置としての本実施形態の毛羽伏せ装置16は、紡績糸20に付与するテンションを、当該紡績糸20の解舒テンションに応じて調節する機能も備えている。このように、本実施形態の毛羽伏せ装置16は、ゲート式の張力付与装置13の機能の一部を有している。
【0087】
そこで、本実施形態の張力付与装置13は、従来のゲート式の張力付与装置に比べて小型化している。具体的には、従来のゲート式の張力付与装置に比べて櫛歯41,42の歯の数を減らし、図7の縦方向の寸法を小さくしている。このように張力付与装置13を小型化しても、毛羽伏せ装置16が張力付与装置の機能を補うことができるので、張力付与ユニット28全体としては、従来のゲート式張力付与装置と同等の張力付与機能を発揮することができる。また、張力付与装置13を縦方向で小型化することにより、当該張力付与装置13の下流側に毛羽伏せ装置16を配置するスペースを確保することができるので、張力付与ユニット28全体をコンパクトに構成することができる。
【0088】
次に、本実施形態の毛羽伏せ装置16による毛羽伏せの効果について説明する。本願発明者らは、毛羽伏せローラ45による毛羽伏せ効果について確認するため、毛羽伏せ装置16を備えた自動ワインダによって実際に巻取りを行い、毛羽数の増加率を測定する実験を行った。図8にその結果を示す。ここで、毛羽数の増加率とは、紡績糸の100mあたりに含まれる3mm以上の毛羽の数が、自動ワインダによる巻取りによって増加した割合をパーセントで表したものである。なお、図8の実験では、ウレタン溝付(後述)の毛羽伏せローラを用いている。
【0089】
図8には、比較のために、毛羽伏せ装置を備えていない自動ワインダで巻取りを行った結果と、本願発明の毛羽伏せ装置を採用した自動ワインダで巻取りを行った場合の結果と、を示している。図8に示すように、毛羽伏せ装置の無い自動ワインダで紡績糸の巻取りを行った場合、毛羽数の増加率はほぼ140%となっており、毛羽が増加していることがわかる。一方、本実施形態の毛羽伏せ装置を採用した自動ワインダの場合、毛羽数の増加率は35%程度である。従って、本実施形態の毛羽伏せ装置を用いることにより、毛羽伏せ装置が無い場合に比べて大幅に毛羽を抑制することができていることがわかった。このように、本発明の効果を確認することができた。
【0090】
次に、毛羽伏せローラ45の素材について説明する。本願発明者らは、毛羽伏せローラ45に最適な素材を決定するため、毛羽伏せローラ45の表面を各種素材を用いて形成し、その毛羽伏せローラを用いて紡績糸20の巻き取りを行い、毛羽の増加量を測定する実験を行った。図9にその結果を示す。図9に示すように、この実験では、アルミバフ(アルミ製のローラをバフ研磨したもの)、NBR(ニトリルゴム製で表面が円滑なローラ)、ウレタン滑(ウレタン製のローラを研磨したもの)等のローラについて比較を行っている。
【0091】
なお、毛羽伏せローラ45の表面の素材をニトリルゴムなどのゴム製とした場合、当該毛羽伏せローラ45の剛性を確保するための構造が必要となる。このような毛羽伏せローラ45の構造の例を、図10の断面図に示す。図10に示した毛羽伏せローラ45は、当該毛羽伏せローラ45の外周表面を構成するゴム管54の内部に、更にアルミ管55を配置した構成となっている。これにより、毛羽伏せローラ45の表面をゴム製としつつ、アルミ管55によって当該ローラの剛性を確保することができる。更に、このゴム管54及びアルミ管55の両端部をアルミ製の蓋部材56によって塞ぐとともに、当該蓋部材56を、ベアリング57を介して回転軸58に取り付けている。この構成により、毛羽伏せローラ45を中空状に形成して、イナーシャを低減させることができる。
【0092】
上記実験の結果、図9に示すように、ニトリルゴム製及びウレタン製の毛羽伏せローラを用いた場合に、毛羽数の増加率が少ない(毛羽伏せ効果が大きい)ということがわかった。特に、毛羽伏せローラ45の表面をゴム製とすることにより、当該毛羽伏せローラ45と紡績糸20との間で適度な摩擦力を発生させることができるので、大きな毛羽伏せ効果を得ることができると考えられる。また、ニトリルゴムは、耐摩耗性及び耐老化性に優れ、引裂にも強いという特性がある。本実施形態の毛羽伏せローラ45は、紡績糸20の摺動によって表面の摩耗が発生し易いと考えられるので、上記のような特性を持ったニトリルゴムは、毛羽伏せローラ45の表面の素材として特に好適である。
【0093】
また、本願発明者らは、ニトリルゴム製で表面に微細な溝を付したローラ(NBR溝付)と、ウレタン製で表面に微細な溝を付したローラ(ウレタン溝付)を作成して、上記実験を行った。具体的には、図11に示すように、毛羽伏せローラ45の外周表面に、当該毛羽伏せローラ45の軸線に略直交する方向に沿った溝59を、当該毛羽伏せローラ45の軸線方向に並べて形成したものである。この溝59の形状は特に限定されないが、紡績糸20に与えるダメージを抑えるため、鋭い部分の無い形状であることが好ましい。例えば、ローラの軸線を通る平面で切断したときの断面輪郭が波状の溝とすることができる。
【0094】
図9に示すように、ニトリルゴム製及びウレタン製の何れの場合においても、ローラ表面を平滑な形状とした場合に比べて、ローラ表面に溝を形成した場合の方が、毛羽を抑制する効果がより大きいことが確認できた。このように、毛羽伏せローラ45の表面に溝を形成することにより、毛羽伏せの効果を向上させることができることがわかった。
【0095】
以上で説明したように、本実施形態の毛羽伏せ装置16は、毛羽伏せローラ45と、糸ガイド機構と、を備える。前記毛羽伏せローラ45は、糸走行経路に対して軸線が斜めになるように配置されるとともに、前記軸線を中心として回転自在に設けられている。前記糸ガイド機構は、前記軸線方向で見たときに、毛羽伏せローラ45の外周面の一部に紡績糸20を接触させる。
【0096】
この構成により、毛羽伏せローラ45の表面を紡績糸20が摺動しながら走行するとともに、回転する毛羽伏せローラ45によって糸が捻られる。この捻り作用及び摺動時の擦り作用により、紡績糸20の表面に遊離している毛羽繊維が紡績糸20自体に巻き付けられて毛羽を抑制することができる。このように、ローラを1つ備えるという簡単な構成で、毛羽伏せの効果を実現することができる。また、毛羽伏せローラ45に糸を巻き付けず、毛羽伏せローラ45の外周面の一部に紡績糸20を接触させるだけなので、紡績糸20の巻取速度が大きく変動した場合に毛羽伏せローラの外周面上を紡績糸20が滑ることが可能となり、糸切れを防止できる。
【0097】
また本実施形態の毛羽伏せ装置16において、毛羽伏せローラ45は、下流側端部45aを片持ち支持されている。
【0098】
即ち、本実施形態の毛羽伏せ装置16においては、紡績糸20の走行経路に対して斜めに配置された毛羽伏せローラ45の表面を紡績糸20が摺動しながら走行するので、当該紡績糸20は、毛羽伏せローラ45の走行経路上流側の端部に向かって流される。従って、仮に、毛羽伏せローラ45の糸走行経路上流側の端部を支持する構成とした場合、その支持軸に対して糸が絡み付き易いという問題がある。この点、上記のように構成することにより、毛羽伏せローラ45の支持軸に対して紡績糸20が絡み付きにくくすることができる。
【0099】
また本実施形態の毛羽伏せ装置16は、前記毛羽伏せローラの前記軸線の傾きを切り換え可能な切換機構を有している。
【0100】
これにより、紡績糸20の撚り方向に応じて毛羽伏せローラ45の傾きを変更することができるので、紡績糸20の撚り方向がZ撚りとS撚りの何れの場合であっても、毛羽伏せローラ45より上流側で追撚させて毛羽を巻き込むことができる。
【0101】
また、本実施形態の毛羽伏せ装置16において、上流側ガイド48及び下流側ガイド47は、糸走行経路を横切る方向に移動可能に設けられている。そして、糸ガイド機構は、糸走行経路を走行する紡績糸20を屈曲させることにより、毛羽伏せローラ45の外周面に接触する紡績糸20の接触長さを変化させる。
【0102】
このように毛羽伏せローラ45に対する紡績糸20の接触長さを変化させることにより、毛羽伏せ効果を調整することが可能となる。
【0103】
また本実施形態の毛羽伏せ装置16において、毛羽伏せローラ45の表面には、当該毛羽伏せローラ45の軸線と略直交する方向に沿った溝が形成されていることが好ましい。
【0104】
このように、毛羽伏せローラ45の表面に溝を形成することにより、表面を平滑にした場合と比べて、大きな毛羽伏せ効果を得ることができる。
【0105】
また本実施形態の毛羽伏せ装置16において、毛羽伏せローラ45の表面は、ニトリルゴム製であることが好ましい。
【0106】
即ち、ニトリルゴムは耐摩耗性、耐老化性に優れ、引裂にも強いことから、毛羽伏せローラの材質として特に好適である。
【0107】
また本実施形態の毛羽伏せ装置16において、毛羽伏せローラ45の表面は、ウレタン製とすることも同様に効果的である。即ち、毛羽伏せローラ45をウレタン製とすることにより、例えばアルミ等の金属製とする場合と比べて、大きな毛羽伏せ効果を得ることができる。
【0108】
また本実施形態の毛羽伏せ装置16において、糸ガイド機構は、上流側ガイド48と、下流側ガイド47と、ロータリソレノイド44と、から構成されている。を備えている。上流側ガイド48は、毛羽伏せローラ45から見て糸走方向上流側の紡績糸20を、上流側糸ガイドポイントを介して毛羽伏せローラ45の表面に案内する。下流側ガイド47は、毛羽伏せローラ45の表面に接触した紡績糸20を、下流側ガイドポイントを介して前記毛羽伏せローラ45から更に下流側に案内する。そして、ロータリソレノイド44は、上流側ガイドポイントと下流側ガイドポイントを結ぶ仮想線が、毛羽伏せローラ45の前記軸線に対して接近又は離間する方向に、上流側ガイド48及び下流側ガイド47を移動させることが可能である。
【0109】
この構成により、毛羽伏せローラ45に対して紡績糸20を押し当てる量を適宜調節することができるので、毛羽伏せ装置16を、一種の張力調節装置として機能させることができる。
【0110】
また本実施形態の張力付与ユニット28は、前記の毛羽伏せ装置16と、可動櫛歯42と固定櫛歯41との間隔を適宜調節して、走行する紡績糸20のテンションを調整するゲート式の張力付与装置13と、ブラケット29と、を備えている。可動櫛歯42の櫛歯のうち、少なくとも1本の櫛歯は、固定櫛歯41の櫛歯よりも毛羽伏せローラ45側に位置している。これにより、可動櫛歯42が、毛羽伏せ装置16の上流側ガイド48を兼ねている。また、下流側ガイド47は、可動櫛歯42と一体として構成されている。そして、毛羽伏せ装置16及び張力付与装置13は、前記ブラケット29に対して取り付けられている。
【0111】
このように構成することにより、上流側ガイド48と下流側ガイド47とが、紡績糸20の解舒テンションに応じて移動するので、毛羽伏せローラ45に対して紡績糸20を押し当てる量を、紡績糸20の解舒テンションに応じて調整することができる。また、上記のように、毛羽伏せ装置16は、一種の張力調節装置として機能する。従って、従来のゲート式張力付与装置の機能の一部を毛羽伏せ装置16が担うことができる結果、張力付与装置13を小型化することができる。更に、毛羽伏せ装置16と張力付与装置13とをブラケット29に固定することで、毛羽伏せ装置16及び張力付与装置13を、1まとまりのユニット(張力付与ユニット28)として扱うことができる。
【0112】
また、本実施形態の自動ワインダは、前記の毛羽伏せ装置16と、給糸ボビン21を支持するボビン支持部31と、巻取ボビン22に給糸ボビン21の紡績糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する巻取部32と、を備えている。
【0113】
この自動ワインダは、簡単な構成で毛羽を抑制できる毛羽伏せ装置16を備えているので、低コストで高品質なパッケージを形成することができる。
【0114】
また、本実施形態の自動ワインダは、張力付与ユニット28を着脱自在に構成されている。
【0115】
この自動ワインダは、張力付与ユニット28を取り外すことができるので、メンテナンス性に優れる。
【0116】
また本実施形態の自動ワインダは、以下のように構成されている。即ち、この自動ワインダは、スプライサ装置14と、制御部と、を備える。スプライサ装置14は、給糸ボビン21側の糸端と、巻取ボビン22側の糸端とを糸継ぎする。制御部は、スプライサ装置14が糸継ぎ作業を行う際に、上流側ガイド48及び下流側ガイド47を開放位置まで移動させ、糸継ぎ作業が完了して巻取部が巻取作業を再開した際には、上流側ガイド48及び下流側ガイド47を閉鎖位置まで移動させて紡績糸20を毛羽伏せローラ45の外周面に接触させる。
【0117】
即ち、糸ガイド機構を開放した状態で紡績糸20をスプライサ装置14に案内することで、毛羽伏せ装置16に紡績糸20を簡単に導入することができる。このように、自動ワインダの糸継ぎ作業時に糸ガイド機構を開閉することにより、容易に毛羽付せをすることができる。
【0118】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0119】
上記実施形態では、糸走行経路に対して毛羽伏せローラの軸線を傾ける角度は45度としたが、これに限らず、毛羽伏せローラの軸線を傾ける角度は何度でも良い。ただし、糸走行経路に対して毛羽伏せローラの軸線が並行に近くなるほど、紡績糸が捻られる力が大きくなる代わりに毛羽伏せローラを回転させにくくなる。逆に、糸走行経路に対して毛羽伏せローラの軸線が直角に近くなるほど、毛羽伏せローラを回転させ易くなる代わりに紡績糸が捻られる力が小さくなる。以上の点を考慮すれば、糸走行経路に対して毛羽伏せローラの軸線を傾ける角度は、大き過ぎても小さ過ぎても不適切であるので、上記実施形態のように45度とすることが特に好適である。
【0120】
上記実施形態では、張力付与装置はゲート式のものとしたが、これに限らず、例えばディスク式の張力付与装置を用いても良い。ただし、上記実施形態のようにゲート式の張力付与装置13を用いた場合、当該張力付与装置13の可動櫛歯42が上流側ガイド48を兼ねることができる。従って、本実施形態の毛羽伏せ装置16は、ゲート式の張力付与装置と組み合わせることが特に好適である。
【0121】
上記実施形態では、毛羽伏せ装置16と張力付与装置とを1つのユニットとしてまとめて扱う構成としたが、この構成は省略しても良い。
【0122】
上記実施形態では、上流側ガイド48及び下流側ガイド47は移動可能な構成としたが、この構成を省略し、例えば上流側ガイド48及び下流側ガイド47は固定されていても良い。ただし、上記のように上流側ガイド48及び下流側ガイド47を移動可能とすることで、毛羽伏せローラ45に対する紡績糸20の押し当て量等を調節できるので、紡績糸20の解舒テンションに応じた毛羽伏せ処理が可能である。また、上流側ガイド48及び下流側ガイド47を固定し、毛羽伏せローラ45を移動可能に構成しても良い。
【0123】
図10等では毛羽伏せローラ45を中空状に形成した例について説明したが、毛羽伏せローラ45は中が詰まった状態に形成されていても良いことはもちろんである。また、図10等では、毛羽伏せローラ45をゴムとアルミなどの複数の素材を利用して形成した例について説明しているが、毛羽伏せローラ全体を1つの素材で形成しても良い。
【0124】
本発明の毛羽付せ装置、張力付与ユニットは、自動ワインダに限らず、例えば紡績機などの他の種類の糸巻取機に適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
10 ワインダユニット
13 張力付与装置
16 毛羽伏せ装置
20 紡績糸
21 給糸ボビン
22 巻取ボビン
28 張力付与ユニット
29 ブラケット
30 パッケージ
31 ボビン支持部
32 巻取部
41 固定櫛歯(固定の櫛歯部)
42 可動櫛歯(可動の櫛歯部)
45 毛羽伏せローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する紡績糸の毛羽の発生を抑制する毛羽伏せ装置であって、
糸走行経路に対して軸線が斜めになるように配置されるとともに、前記軸線を中心として回転自在に設けられた毛羽伏せローラと、
前記毛羽伏せローラの外周面の一部に前記紡績糸を接触させる糸ガイド機構と、
を備えることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記毛羽伏せローラは、前記紡績糸の走行方向下流側の端部を片持ち支持されていることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記毛羽伏せローラの前記軸線の傾きを切り換え可能な切換機構を有することを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記糸ガイド機構は、前記糸走行経路を横切る方向に移動可能に設けられており、
当該糸ガイド機構は、前記糸走行経路を走行する紡績糸を屈曲させることにより、前記毛羽伏せローラの外周面に接触する紡績糸の接触長さを変化させることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記毛羽伏せローラの表面には、当該毛羽伏せローラの軸線と略直交する方向に沿った溝が形成されていることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記毛羽伏せローラの表面の材質はゴムであることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記毛羽伏せローラの表面は、ニトリルゴム製であることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項8】
請求項1から5までの何れか一項に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記毛羽伏せローラの表面は、ウレタン製であることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の毛羽伏せ装置であって、
前記糸ガイド機構は、
前記毛羽伏せローラから見て糸走行方向上流側の紡績糸を、上流側糸ガイドポイントを介して前記毛羽伏せローラの表面に案内する上流側ガイド部材と、
前記毛羽伏せローラの表面に接触した紡績糸を、下流側糸ガイドポイントを介して前記毛羽伏せローラから更に下流側に案内する下流側ガイド部材と、
前記上流側糸ガイドポイントと前記下流側糸ガイドポイントを結ぶ仮想線が、前記毛羽伏せローラの前記軸線に対して接近又は離間する方向に、前記上流側ガイド部材及び前記下流側ガイド部材を移動させることが可能な糸ガイド移動部と、
で構成されることを特徴とする毛羽伏せ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の毛羽伏せ装置と、
可動の櫛歯部と固定の櫛歯部との間隔適宜調節して、走行する紡績糸のテンションを調整するゲート式張力付与装置と、
ブラケットと、
を備え、
前記可動の櫛歯部の櫛歯のうち、少なくとも1本の櫛歯が、前記固定の櫛歯部の櫛歯よりも前記毛羽伏せローラ側に位置していることにより、当該可動の櫛歯部が、前記毛羽伏せ装置の前記上流側ガイド部材を兼ねているとともに、
前記下流側ガイド部材は、前記可動の櫛歯部と一体として構成され、
前記毛羽伏せ装置及び前記ゲート式張力付与装置は、前記ブラケットに対して取り付けられていることを特徴とする張力付与ユニット。
【請求項11】
請求項1から9までの何れか一項に記載の毛羽伏せ装置と、
給糸ボビンを支持する給糸ボビン支持部と、
巻取ボビンに前記給糸ボビンの紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
を備えることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項12】
請求項10に記載の張力付与ユニットと、
給糸ボビンを支持する給糸ボビン支持部と、
巻取ボビンに前記給糸ボビンの紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
を備え、
前記張力付与ユニットを着脱自在に構成されていることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の自動ワインダであって、
当該自動ワインダは、前記給糸ボビン側の糸端と、前記巻取ボビン側の糸端とを糸継ぎする糸継装置と、
前記糸継装置が糸継ぎ作業を行う際に、前記糸ガイド機構を開放し、糸継ぎ作業が完了して前記巻取部が巻取作業を再開した際には、前記糸ガイド機構を移動させて前記紡績糸を前記毛羽付せローラの外周面に接触させる制御部と、
を備えることを特徴とする自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−20837(P2012−20837A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159920(P2010−159920)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】