説明

毛髪の染毛又は脱色方法

【課題】二剤式染毛用又は脱色用組成物の第1剤と第2剤の混合液を、スクイズ容器を用いて、きめ細かく安定的に泡状に吐出させる。
【解決手段】二剤式染毛用又は脱色用組成物の第1剤A1 と第2剤A2 の混合液A3 をスクイズ容器6から泡状に吐出させて毛髪に適用する毛髪の染毛又は脱色方法であって、スクイズ容器6として、容器本体4及びスクイズフォーマー5を備えるものを使用する。第1剤A1 及び第2剤A2 は、少なくとも一方が起泡剤を含有し、混合液の粘度(25℃)が1〜100mPa・sとなるものを使用する。容器本体4内で第1剤A1 と第2剤A2を泡立てないように混合し、混合液A3 がスクイズフォーマー5の空気導入路12に達しないようにスクイズ容器6を起立させてスクイズする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いた毛髪の染毛又は脱色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤とからなる二剤式染毛用組成物あるいは二剤式脱色用組成物が広く用いられている。一般にこのような二剤式染毛用又は脱色用組成物は、毛髪に適用後、放置している間に剤が垂れ落ちないように、混合後の粘度が数千〜数万mPa・s程度のジェル状又はクリーム状の剤型であるのが一般的である。
【0003】
ジェル状又はクリーム状の二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いてムラなく染毛又は脱色するには、最初に第1剤と第2剤の混合を念入り行うために、混合容器内で激しく振り、あるいは激しくかき混ぜなければならない。加えてジェル状又はクリーム状の二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いてムラなく染毛又は脱色するには、それらの混合液の粘度が前述の通り高いため、熟練を要する上に、予め毛髪をブロッキング(毛髪を、前頭部、側頭部、後頭部などの部位ごとに束ねておくこと)する必要があり、非常に手間と時間を要する。
【0004】
一方、第1剤と第2剤の少なくとも一方に起泡剤として界面活性剤を含有させ、第1剤と第2剤の混合液をフォーマー容器から泡状に吐出させるようにした二剤式染毛用又は脱色用組成物が知られている(特許文献1、特許文献2)。この二剤式染毛用又は脱色用組成物によれば、第1剤と第2剤の混合液を泡状に吐出させることにより、混合液を簡単に毛髪にムラなく適用することができるので、ジェル状又はクリーム状の染毛用又は脱色用組成物を塗布する場合に比して、容易に色ムラのない仕上がりを得ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2004-339216号公報
【特許文献2】特開2006-124279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二剤式染毛用又は脱色用組成物の第1剤と第2剤の混合液を、スクイズ容器を用いて泡状に吐出させ、毛髪に適用する場合、毛髪全体に混合液の泡が容易にいきわたるようにし、かつ混合液の泡を毛髪に適用後、一般に必要とされる30分程度の放置時間に液だれが生じないようにするため、泡質をきめ細かくすることが求められる。また、混合液の使い初めから使い終わりまで安定して泡状に吐出させる必要がある。
【0007】
これに対し、本発明は、二剤式染毛用又は脱色用組成物の第1剤と第2剤の混合液を、スクイズ容器を用いて泡状に吐出させるにあたり、きめ細い泡を最初から最後まで安定的に吐出できるようにして、一層色ムラのない仕上がりを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、二剤式染毛用又は脱色用組成物の第1剤と第2剤をスクイズ容器の容器本体で混合し、スクイズ容器から泡状に吐出させる場合に、特定のスクイズフォーマーを備えたスクイズ容器を使用し、第1剤と第2剤として、それらの混合液が特定の粘度範囲になるものを使用し、かつ第1剤と第2剤を泡立てないように混合することにより、その後に泡状に吐出される混合液の泡質を大きく改善し、かつ最後まで安定的に吐出させることができ、一層色ムラのない仕上がりを得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤との混合液をスクイズ容器から泡状に吐出させて毛髪に適用する二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いた染毛又は脱色方法であって、
スクイズ容器として、容器本体及びスクイズフォーマーを備え、スクイズフォーマーが、容器本体内の空気と混合液との混合により混合液を発泡させる気液混合室、気液混合室で発泡した混合液の泡を均質化する泡均質化手段、及び均質化した泡を吐出させる吐出口を有するものを使用し、
第1剤及び第2剤として、それらの少なくとも一方が起泡剤を含有し、
それらの混合液の粘度(25℃)が1〜100mPa・sとなるものを使用し、
スクイズ容器の容器本体内で第1剤と第2剤を泡立てないように混合し、
混合液がスクイズフォーマーの空気導入路に達しないようにスクイズ容器を起立させてスクイズする二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いた染毛又は脱色方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、フォーマー容器として特定のスクイズ容器を用いる。このスクイズ容器では、スクイズフォーマーの空気導入路が、スクイズ時に混合液や混合液の泡で塞がれていると、きめ細かい泡を吐出させることができないが、混合液が容器本体内で泡だっておらず、また、空気導入路が混合液や混合液の泡で覆われないと、きめ細かい泡を吐出させることができる。
【0011】
一方、本発明では、二剤式染毛用又は脱色用組成物の第1剤と第2剤として、それらの混合液の粘度が特定の範囲にあるものを使用する。この第1剤と第2剤は、それぞれの粘度が従来のゼリー状又はクリーム状のものに比して相当に低い。このため、第1剤と第2剤は、それらを充填した容器を強く振とうしなくても、それらの混合液が泡立たないようにゆっくりと容器の上下の位置を置き換えるように振とうするだけで均一に混合する。
【0012】
したがって、本発明に従い、第1剤と第2剤を泡立てないように混合し、かつスクイズフォーマーの空気導入路が混合液で覆われないように、混合液や混合液の泡が容器本体の上部開口部に達しない程度にスクイズ容器を起立させて使用することにより、安定的にきめの細かい泡を吐出させることが可能となる。
【0013】
よって、本発明の二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いた毛髪染毛又は脱色方法によれば、泡状の混合液を毛髪全体にいきわたらせることが容易となり、色ムラのない仕上がりを得ることが可能となる。また、毛髪に泡状の混合液を適用後の放置時間に液だれが生じることも解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
図1Aは、本発明で使用する二剤式染毛用又は脱色用組成物及びスクイズ容器を備えた二剤式染毛用又は脱色用毛髪化粧品1の一態様の模式図であって、第1剤と第2剤の混合前の状態を表し、図1Bは、この二剤式染毛用又は脱色用組成物の第1剤と第2剤の混合後の状態を表している。
【0016】
図1Aに示すように、この二剤式染毛用又は脱色用毛髪化粧品1は、第1容器2に充填された第1剤A1 と、第2容器3に充填された第2剤A2 と、スクイズフォーマー5からなっている。第2容器3の容器本体4はスクイズ容器の容器本体ともなっており、容器本体4とスクイズフォーマー5から図1Bに示すようにスクイズ容器6が構成される。ここでスクイズ容器は、同一容器本体内の空気と混合液との混合により混合液を発泡させる方式であることが好ましく、このような方式のスクイズ容器としては、図1Bに示すスクイズ容器6のように正立で内容物を吐出させるタイプ(例えば大和製罐製 S1スクイズフォーマー)の他、図5に示すスクイズ容器6Bのように、液の吐出経路に逆止弁(図示せず)を設けることにより、正立時は空気導入路である部分が倒立時は液導入路となり、一方で正立時は液導入路であるディップチューブが倒立時は空気導入路となることで正立・倒立いずれでも内容物を吐出させることができるタイプ(例えば東洋製罐製スクイズフォーマー RF−270)などを使用することができる。泡の吐出性能の点からは、図1Bに示すような正立で内容物を吐出させるタイプが好ましい。
【0017】
なお、本発明において二剤式染毛用又は脱色用組成物とは、第1剤と第2剤からなり、それらを使用時に混合して用いる染毛用あるいは脱色用の組成物を含む概念であり、染毛用の場合、第1剤A1 はアルカリ剤と染料を含有し、第2剤A2 は過酸化水素を含有する。また、脱色用の場合、第1剤A1 は染料を含有することなくアルカリ剤を含有し、第2剤A2 は、過酸化水素を含有する。また、過硫酸塩を含有する第3剤を用いる形態も含まれる概念であり、その場合には、第1剤、第2剤及び第3剤が混合して用いられる。
【0018】
ここで、第1剤A1 が含有するアルカリ剤としては、アンモニア、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。また、適宜、緩衝剤として、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩や、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩などを添加することができる。
【0019】
アルカリ剤の濃度は、第1剤A1 と第2剤A2 の混合液A3 におけるpHが8〜12、好ましくは9〜11となるように適宜定められる。
【0020】
一方、第2剤A2における過酸化水素の濃度は、好ましくは1〜9質量%、より好ましくは3〜6質量%であり、第1剤A1 と第2剤A2 の混合液中の過酸化水素濃度を、好ましくは1〜6質量%、より好ましくは2〜5質量%とする。また、第2剤A2 のpHは、過酸化水素の分解抑制のため、好ましくはpH2〜6、より好ましくはpH2.5〜4とする。
【0021】
第1剤A1 と第2剤A2 は、いずれも水を主たる媒体とするものが好ましい。
【0022】
また、本発明で使用する第1剤A1 と第2剤A2 は、少なくとも一方が起泡剤を含有する。これにより、第1剤A1 と第2剤A2 の混合液A3 をスクイズ容器6から吐出させることにより、容易に混合液A3 を発泡させ、かつその泡を持続させることができる。起泡剤としては、起泡性を有すれば何であってもよいが、界面活性剤が好ましい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤等が挙げられる。この中でもアニオン界面活性剤を使用することが好ましく、さらに両性界面活性剤も併用することがより好ましい。アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等を使用することができ、両性界面活性剤としては、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、スルホベタイン等を使用することができる。
【0023】
また、一般に、第1剤A1 がアンモニアや炭酸塩を含み、高いイオン強度を有している場合が多い点に鑑み、第1剤A1 には、染料の可溶化のため、あるいは感触向上のために、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、アルキルアルカノールアミド等の非イオン界面活性剤を含有させることが好ましく、中でも、アルキルポリグルコシド又はポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。より具体的には、好ましいアルキルポリグルコシドとしては、アルキル基の炭素数が8〜14であって、グルコシドの縮合度が平均で1〜2のものが挙げられる。また、好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が10〜18であって、ポリオキシエチレンの平均重合度が5〜40のものが挙げられる。
【0024】
また、第2剤A2 にも、感触向上のためポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、アルキルアルカノールアミド等の非イオン界面活性剤や、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤を使用することができる。
【0025】
二剤式染毛用又は脱色用組成物が染毛用のものである場合に、第1剤A1 が含有する染料としては、酸化染料又は直接染料をあげることができる。この酸化染料としては、パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、トルエン−2,5−ジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、2−(2−ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、4−アミノ−3−メチルフェノール、6−アミノ−3−メチルフェノール、オルトアミノフェノール、1−ヒドロキシエチル−4,5−ジアミノピラゾール等の染料前駆体、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、メタアミノフェノール、パラアミノオルトクレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、1−ナフトール等のカップラーが挙げられる。直接染料としては、パラニトロオルトフェニレンジアミン、パラニトロメタフェニレンジアミン、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド12、ベーシックレッド51、ベーシックブルー99、アシッドオレンジ7等をあげることができる。
【0026】
また、第1剤A1 と第2剤A2 の少なくとも一方には、スクイズ容器6から吐出した混合液の泡の泡持ちをよくし、泡を毛髪に適用した後にその泡がつぶれて液だれが生じることを抑制するため、高級アルコールを含有させたものが好ましい。高級アルコールとしては、炭素数14〜24のものが好ましく、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。これらは、二種以上を併用することができ、第1剤と第2剤との混合後の染毛用組成物全体に対して、0.01〜3質量%、好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.2〜1質量%、最も好ましくは0.3〜0.8質量%含有する。
【0027】
この他、第1剤A1 と第2剤A2 は必要に応じて種々の添加剤を含有したものを使用することができる。例えば、第1剤A1 と第2剤A2 の混合液A3 を毛髪に適用後、水分が蒸発し、過酸化水素等の刺激性成分が濃縮されて頭皮が刺激を受けることをなくすため、ポリオール類、その低級アルキルエーテル類等の不揮発性親水性溶剤を添加したものが好ましい。また、コンディショニング効果を毛髪に付与するため、両性若しくはカチオン性ポリマー、又はシリコーン類等を含有させたものも好ましい。香料、紫外線吸収剤、エデト酸等の金属封鎖剤、殺菌剤、パラオキシ安息香酸メチル等の防腐剤、ジブチルヒドロキシトルエン、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、硫酸オキシキノリン等の安定化剤、エタノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の有機溶剤、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子化合物、保湿剤等を適宜含有させたものも使用することができる。
【0028】
また、第1剤A1 の粘度(25℃)は、好ましくは1〜50mPa・s、より好ましくは3〜40mPa・s、最も好ましくは5〜30mPa・sである。第2剤A2 の粘度(25℃)は、好ましくは1〜300mPa・s、より好ましくは3〜200mPa・s、最も好ましくは5〜100mPa・sである。第1剤A1 と第2剤A2 との混合液A3 の粘度(25℃)が1〜100mPa・s、好ましくは3〜50mPa・s、最も好ましくは5〜30mPa・sである。なお、粘度の数値は、株式会社トキメック製B型回転粘度計(モデルTV-10)で、ローターNo.1を用い、ローターを1分間回転させた後の値である。測定対象が100mPa・s以下の場合の回転速度は60rpm、100〜200mPa・sの場合は30rpm、200〜500mPa・sの場合は12rpmで測定する。粘度は、第1剤、第2剤、混合液のいずれも、25℃の恒温槽において測定するものとする。なお、混合液の場合、混合後ただちに測定するものとし、反応熱による温度変化は無視するものとする。混合液の粘度を上述の範囲とすることにより混合液を泡立てずに均質に混合することを可能とし、さらに、毛髪へ適用し易く、毛髪との泡馴染みがよく、毛髪に適用した後の液だれが生じにくい均質な泡を得ることができる。
【0029】
なお、第1剤A1 、第2剤A2 及びこれらの混合液A3 の粘度を上述の範囲に調整するには、第1剤A1 及び第2剤A2 にエタノール等の水溶性溶剤を添加したり、あるいは前述の界面活性剤、ポリオール類又は高級アルコールの種類や添加量を適宜調整すればよい。
【0030】
一方、二剤式染毛用又は脱色用組成物を起泡させるスクイズ容器6は、特開平7-215352号公報等に記載の公知のスクイズ容器と同様の基本構成を備えており、図2に示すように、可撓性の容器本体4とスクイズフォーマー5からなっている。スクイズフォーマー5は、容器本体4の開口部に被着するキャップ部7と、キャップ部7に冠着するヘッド部8からなる。
【0031】
キャップ部7には混合器10が嵌着し、垂下している。混合器10の内部には気液混合室11と、容器本体4内の内部空間と気液混合室11とを連通させる空気導入路12が設けられている。また、混合器10にはディップチューブ13が容器本体4内に伸びて嵌合しており、さらに気液混合室11の天面には泡均質化手段14としてネットが取り付けられ、泡均質化手段14のヘッド部8側が通液路15となっている。
【0032】
一方、ヘッド部8には、キャップ部7の通液路15に連通する通液路16と、通液路16に連通する吐出口17が設けられ、さらに、吐出口17近傍の通液路16内には泡均質化手段18としてネットが設けられている。
【0033】
なお、本発明において、気液混合室側及び吐出口側の泡均質化手段14、18としては、それぞれネットに限らず、スポンジ、焼結体等の多孔性物質を使用してもよい。
【0034】
このような二剤式染毛用又は脱色用組成物の使用方法としては、使用時に、まず、第1容器2に充填されていた第1剤A1 の全量を、第2剤A2 が充填されている第2容器3の容器本体4に移して混合液A3 を作るが、本発明においては、この混合を第1剤A1 と第2剤A2 の混合をできる限り泡立てないように、あるいは泡立たないように行う。ここで泡立てない、あるいは泡立たないとは、意図して泡立てることを排除する意味であり、以下に示す具体例のように混合した際に、意図せず僅かな泡が発生することは含む概念であるものとする。混合時に泡立たないのであれば、混合方法に制限は無いが、例えば試験管を振とうする様な混合方法、あるいは容器本体4を略正立状態から倒立乃至横倒し状態とし再度略正立状態に戻す混合方法が挙げられる。より具体的には、第1剤A1と第2剤A2 が入っている容器本体4に第2容器3の蓋をし、容器本体4を略正立状態から倒立乃至横倒し状態とし再度略正立状態に戻すサイクルを10秒間に1〜30回、好ましくは1.5〜20回、最も好ましくは2〜10回の速さで行うと良い。略正立状態から倒立乃至横倒し状態とし再度略正立状態に戻す操作は1〜15回、好ましくは2〜10回、最も好ましくは3〜7回行う。このように容器本体4をゆっくりと振とうしても、本発明に用いられる第1剤A1 と第2剤A2 は、粘度がジェル状やクリーム状の剤型と比較してはるかに低いから、容易に均一な混合液A3 を得ることができ、しかも泡立つことがない。
【0035】
第1剤A1 と第2剤A2 を混合した後は、図1Bに示すように、この容器本体4にスクイズフォーマー5を取り付ける。なお、第1剤A1 と第2剤A2 の混合時に、第1剤A1の全量を、第2剤A2 が充填されている第2容器の容器本体4に移した後、容器本体4に、第2容器3の蓋に代えてスクイズフォーマー5を取り付け、試験管を振とうする様な混合方法で容器本体4をゆっくりと振とうしてもよい。
そして、容器本体4を片手で持ち、容器本体4をスクイズする。
【0036】
このスクイズ時には、混合液A3や混合液の泡が容器本体4の上部開口部に達しないように、即ち、空気導入路12が混合液A3 や混合液の泡で塞がれないように、スクイズ容器4を起立させてスクイズする。このときのスクイズ容器4の起立方向は、容器本体4に占める混合液A3 の割合にもよるが、図3に示すように、鉛直方向とのなす角θが0〜60°、好ましくは5〜50°、最も好ましくは10〜40°となるようにすればよい。これにより、図4に示すように、容器本体4内の混合液A3 がチューブ10を通して矢印のように気液混合室11に押し上げられると共に容器本体4内の空気も空気導入路12を通して気液混合室11に押し込まれるため、気液混合室11では、混合液A3 が発泡し、2段の泡均質化手段14,18を経て吐出口17から泡状の混合液A3 が吐出する。
【0037】
また、この容器本体4のスクイズは、容器本体4を押し始めてから押しきった状態となるまでの1回のスクイズに要する時間が0.5〜5秒、好ましくは1〜4秒、最も好ましくは2〜3秒となるように、ゆっくり行うことが好ましい。これにより、混合液A3 の泡質が安定したものとなる。
【0038】
スクイズ時の容器本体4の変形度合に関しては、1回のスクイズによる混合液A3 の吐出量を多くするためには、容器本体4の対向する側面が互いに接触する程度にスクイズすることが好ましい。一方で、利き手で容器本体4の高さ方向の中央部付近を程よい力加減でスクイズするためには、短径方向の厚みが1/3〜2/3になるまでスクイズすることが好ましい。
【0039】
なお、容器本体4のスクイズを解除すると、キャップ部7とヘッド部8との間隙19から外界の空気がヘッド部8内に流入し、逆止弁20を通して容器本体4内に入るので、容器本体4はスクイズ前の形状に復元され、再度スクイズすることが可能となる。こうして、1〜3回のスクイズを繰り返すことにより、混合液A3 の泡を片手の上で扱いやすいレモン1個分の大きさに吐出させることができる。
【0040】
吐出された混合液A3 の泡は手袋をした手のひらにとり、例えばシャンプーをするように毛髪にもみ込み、さらに泡立てるように毛髪に適用することが好ましい。毛髪全体に適用する場合には、毛髪全体を泡で包み込むようにすることが好ましい。毛髪の生え際又は分け目部分は、染め残しを防止する観点から、他の部分よりも多く混合液A3 の泡を適用することが好ましい。また、毛髪の生え際又は分け目部分に対しては、液ダレや染め残しを防止する観点から、円を描くようにもみ込むことが好ましい。
【0041】
この場合、従来、一般に染毛用組成物の塗布でなされているブロッキング操作は不要である。混合液A3 の泡を手でもみ込むことにより、短時間で泡を毛髪の根元から毛先までいきわたらせることができる。したがって、毛髪に混合液A3 の泡を適用後、洗い流すまでの時間の差による色ムラも生じにくくなる。加えて泡立てるように適用するので適用した泡がつぶれて液ダレが生じるのを抑制することができる。
【0042】
また、短時間で泡を毛髪にいきわたらせることが可能なことから、混合液A3 の泡を適用する毛髪部位はどこからでもよく、従来の液状乃至クリーム状の二剤式染毛用組成物のように襟足から適用することは不要である。気になる部分から適用すればよく、通常は、毛髪の生え際又は分け目部分から適用することが好ましい。
【0043】
こうして毛髪に混合液A3 を適用した後は、所定時間、好ましくは3〜60分、より好ましくは5〜45分放置し、洗い流すことにより、毛髪の染毛ないし脱色を行うことができる。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は全て室温(25℃)で行った。
【0045】
実施例1
表1、表2に示す配合組成の二剤式染毛用組成物の第1剤と第2剤を調製した。この第1剤と第2剤のそれぞれの粘度とpH、及び第1剤と第2剤との質量比4:6の混合液の粘度とpHを、測定した。粘度はB型回転粘度計でローターNo.1を用い、30rpmで1分間回転させることで測定し、pHはpH計(堀場製作所製F−52 電極9611−10D)で測定した。これらの結果を表1〜表3に示す。
【0046】
一方、スクイズ容器として、図1Bのスクイズ容器6を、可撓性の容器本体4とスクイズフォーマー(大和製罐社、S1スクイズフォーマー)から構成した。この可撓性の容器本体4は、ポリプロピレン(PP)製で、樹脂量17g、内容積210mLであり、この樹脂量と内容積から算出される2/3乗係数α(α=w/V2/3)は0.46であった。容器本体4の高さ方向の中央部に相当する、底部から55mmの高さの横断面形状は楕円(長径60mm、短径44mm、面積21cm2 )であり、短径Laと長径Lb の比La/Lbは0.72であった。
【0047】
このスクイズ容器の容器本体に、第1剤40gと第2剤60gを入れ、容器本体を略正立状態から倒立状態とし再度略正立状態に戻す操作を10秒間に3回の割合で、5回振とうすることにより、第1剤と第2剤の混合液が泡立たないように混合し、スクイズフォーマーを取り付けた。
【0048】
次に、スクイズ容器を正立させ、1回のスクイズあたり3秒でスクイズ容器を利き手で容器本体4の高さ方向の中央部付近を短径方向の厚みが1/2になるまでスクイズし、泡状の混合液を吐出させ、その泡質を(a)気液混合比、(b)泡持ち、(c)液だれについて以下のように評価した。
【0049】
また、同様に吐出させた泡を、ウィッグ(ビューラックス社製、(型番)775Sをショートヘア(あご下3cmの長さ)にカットしたもの)の毛髪にすり込むように適用した。このスクイズと毛髪への適用を繰り返し、毛髪全体に泡をいきわたらせ、その後30分間放置した。この際、毛髪への適用開始から放置開始までの塗布時間を測った(適用方法1)。また、これとは別に、同様に吐出させた泡を同型のウイッグの毛髪にすり込むように適用し、毛髪上でさらに泡立てた。この適用と泡立てのサイクルを繰り返し、毛髪全体が泡で包まれるようにした。その後30分間放置した。この際、毛髪への適用開始から放置開始までの塗布時間を測った(適用方法2)。放置時間経過後、洗い流し、シャンプー、リンス、乾燥を順次行い、乾燥させた髪について、色ムラを次のように評価した。なお、適用量は、どちらの適用方法でも75gとした。
【0050】
これらの結果を表4に示す。
【0051】
(1)泡質の評価方法
(a)気液混合比
スクイズ容器中の混合液を端切りのため0.5g吐出した後、250mLのメスシリンダーに5g吐出させ、最初の吐出から1分後の泡と液との合計体積(mL)を5gで割ることにより気液混合比(mL/g)を求め、この数値によって、次のように評価した。
◎:20mL/g以上30mL/g未満
○:15mL/g以上20mL/g未満、又は30mL/g以上40mL/g未満
△:10mL/g以上15mL/g未満、又は40mL/g以上50mL/g未満
×:10mL/g未満、又は50mL/g以上
なお、この評価基準は、手に載せる量や、髪に塗布した際の浴比の観点から定めたものである。
【0052】
(b)泡持ち
スクイズ容器中の混合液を端切りのため0.5g吐出した後、250mLのメスシリンダーに5g吐出し、最初の吐出から5分後に、液に戻った部分を5mLメスシリンダーに移しかえて体積を測定し、次の基準で泡持ちを評価した。
◎:0mL以上0.6mL未満
○:0.6mL以上1.2mL未満
△:1.2mL以上1.8mL未満
×:1.8mL以上
【0053】
(c)液だれ
適用方法1又は適用方法2で泡を毛髪に適用した後、放置を開始してから30分後に、液だれの状態について目視観察し、次の基準で3段階に評価した。
○:全く液だれしていない
△:若干液だれしている(目安として、襟足から皮膚を伝って数滴流れる)
×:液だれしている(目安として、毛先から液がポタポタ落ちる)
【0054】
(2)色ムラの評価方法
染毛処理後の毛髪を、5人の専門パネラーが目視評価することにより、次の基準で5段階に評価点をつけ、その平均点をもって評価結果とした。
1:頭髪表面の広範囲に渡り明らかに色ムラがある
2:頭髪表面の一部に色ムラがある
3:頭髪全体にわたり髪の根元の染まりが不十分
4:頭髪の一部の根元の染まりが不十分
5:頭髪全体にわたり色ムラがほとんどない













【0055】
【表1】

















【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
実施例2
1回のスクイズの速さを1回あたり1.5秒とした以外は実施例1と同様に二剤式染毛用組成物を使用し、評価した。結果を表4に示す。
【0059】
実施例3
スクイズ容器の起立方向と鉛直方向とのなす角度が斜め(θ=60°)となるように傾けてスクイズした以外は実施例1と同様に二剤式染毛用組成物を使用し、評価した。結果を表4に示す。なお、θ=60°に傾けてスクイズしても、混合液はスクイズフォーマーの空気導入路に達しなかった。
【0060】
比較例1
スクイズフォーマーを備えたスクイズ容器に代えて、先端に行くに従い細径となる管状の注出ノズルを備えたスクイズ容器(ただしフォーマー及びディップチューブは有しない)を使用し、スクイズ容器から毛髪に直接混合液を吐出させた以外は実施例1と同様の二剤式染毛用組成物を使用し、評価した。結果を表4に示す。
【0061】
比較例2
第1剤と第2剤の混合時に、容器本体を略正立状態から倒立乃至横倒し状態とし再度略正立状態に戻す操作を1秒間に4回の速さで30回振とうし、容器本体内で混合液を泡立てた以外は実施例1と同様に二剤式染毛用組成物を使用し、評価した。結果を表4に示す。
【0062】
比較例3
スクイズ容器を傾け(θ=75°)、混合液が容器本体の上部開口部に達するようにしてスクイズした以外は実施例1と同様に二剤式染毛用組成物を使用し、評価した。結果を表4に示す。
【0063】
【表4】





【0064】
表4の結果から、実施例1〜3のように第1剤と第2剤を泡立てずに混合し、混合液を泡状に吐出させて毛髪に適用すると気液混合比が高く、泡持ちがよく、液だれも生じないが、比較例1のように泡状にせずに、液状のまま毛髪に適用し、毛髪上で泡立てると液だれが生じることがわかる。
【0065】
また、比較例2のように第1剤と第2剤の混合時に泡立てた場合には混合液の泡質が劣り、気液混合比が低く、泡持ちが悪く、液だれがし易いことがわかる。
【0066】
さらに、比較例3のようにスクイズ時にスクイズ容器を傾け、混合液が容器本体の上部開口部に達するようにすると、混合液の泡質が劣り、気液混合比が低く、泡持ちが悪く、液だれがし易いことがわかる。
【0067】
また、毛髪上でさらに泡立て、毛髪全体が泡で包まれるようにすることで、液だれしにくくなり、色ムラも生じにくくなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いた毛髪の染毛又は脱色方法は、毛髪の染毛あるいは脱色を快適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1A】本発明で使用する二剤式染毛用又は脱色用組成物の、第1剤と第2剤の混合前の模式図である。
【図1B】本発明で使用する二剤式染毛用又は脱色用組成物であって、第1剤と第2剤の混合後の模式図である。
【図2】スクイズ容器の断面図である。
【図3】スクイズ容器の起立方向の説明図である。
【図4】スクイズ時のスクイズ容器の断面図である。
【図5】第1剤と第2剤の混合後のスクイズ容器の模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1 二剤式染毛用又は脱色用毛髪化粧品
2 第1容器
3 第2容器
4 第2容器の容器本体、スクイズ容器の容器本体
5 スクイズフォーマー
6、6B スクイズ容器
7 キャップ部
8 ヘッド部
10 混合器
11 気液混合室
12 空気導入路
13 ディップチューブ
14 泡均質化手段
15 通液路
16 通液路
17 吐出口
18 泡均質化手段
19 間隙
20 逆止弁
A1 第1剤
A2 第2剤
A3 混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤との混合液をスクイズ容器から泡状に吐出させて毛髪に適用する二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いた毛髪の染毛又は脱色方法であって、
スクイズ容器として、容器本体及びスクイズフォーマーを備え、スクイズフォーマーが、容器本体内の空気と混合液との混合により混合液を発泡させる気液混合室、気液混合室で発泡した混合液の泡を均質化する泡均質化手段、及び均質化した泡を吐出させる吐出口を有するものを使用し、
第1剤及び第2剤として、それらの少なくとも一方が起泡剤を含有し、それらの混合液の粘度(25℃)が1〜100mPa・sであり、
スクイズ容器の容器本体内で第1剤と第2剤を泡立てないように混合し、
混合液がスクイズフォーマーの空気導入路に達しないようにスクイズ容器を起立させてスクイズする二剤式染毛用又は脱色用組成物を用いた染毛又は脱色方法。
【請求項2】
第1剤と第2剤が入っている容器本体を、略正立状態から倒立乃至横倒し状態とし再度略正立状態に戻すサイクルを10秒間に1〜30回の速さで1〜15回行うことにより第1剤と第2剤を混合する請求項1記載の染毛又は脱色方法。
【請求項3】
1回のスクイズを0.5〜5秒で行う請求項1記載の染毛又は脱色方法。
【請求項4】
前記スクイズ容器が、正立吐出タイプである請求項1記載の染毛又は脱色方法。
【請求項5】
スクイズ容器の起立方向と鉛直方向とのなす角度が0〜60°の状態でスクイズする請求項4記載の染毛又は脱色方法。
【請求項6】
泡状に吐出させた混合液を、毛髪の生え際又は分け目部分から適用する請求項1記載の染毛又は脱色方法。
【請求項7】
泡状に吐出させた混合液を毛髪の生え際又は分け目部分に多く適用する請求項1記載の染毛又は脱色方法。
【請求項8】
泡状に吐出させた混合液を毛髪にもみこむ請求項1記載の染毛又は脱色方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−291020(P2008−291020A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115126(P2008−115126)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】