説明

毛髪処理剤用キット

【課題】各剤の経時保存安定性に優れ、かつ、混合後は最適な粘度を有して毛髪からの液垂れを防止して毛髪上での延展性に優れ、さらにアルカリ剤などの刺激臭を低減することができる、毛髪処理剤用キットを提供すること。
【解決手段】アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを含む毛髪処理剤用キットであって、非イオン性界面活性剤を含有せず、(A)リン酸ジアルキル、及び(B)水溶性多糖類を含有してなる毛髪脱色用又は酸化染毛用の毛髪処理剤用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1剤及び第2剤を含有する毛髪脱色用又は酸化染毛用の毛髪処理剤用キットに関する。さらに詳しくは、各剤の保存安定性に優れ、混合後は最適な粘度を有して毛髪からの液垂れを防止することができ、さらに毛髪上での延展性にも優れる、刺激臭を低減した毛髪処理剤用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
2剤式、3剤式などの多剤式の脱色剤又は染毛剤の場合、各剤の保存安定性を向上させるとともに、毛髪への塗布のし易さ(液垂れ防止)、毛髪上での延展性(均一塗布)などの観点から、使用時の粘度を最適な粘度とすることが最も重要である。また、使用時のアルカリ剤などの原料由来の刺激臭を低減させることも重要である。
【0003】
従来より、使用時の粘度を最適な粘度とする手段として、増粘性化合物を添加する試みがなされている。例えば、特許文献1ではキサンタンガムを配合することにより、粘度安定性を向上している。特許文献2では、粘度発現がpHに依存するカルボキシビニルポリマーを用いて、第1剤と第2剤の混合でpHを調整することにより粘性を付与している。特許文献3では、アルカリ性物質の添加により増粘化する増粘性共重合体を第2剤に配合して、アルカリ性物質を含有する第1剤と混合することにより、粘性を付与している。特許文献4ではヒドロキシプロピルスターチリン酸と水性増粘剤を配合することにより、良好な粘度安定性が得られている。
【0004】
また、アルカリ剤などの刺激臭を低減する手段として、特定油剤の配合が提案されている。例えば、特許文献5ではイソパラフィンと非イオン性界面活性剤と高分子化合物を配合することにより、刺激臭を低減している。特許文献6ではトリグリセリドを構成成分とする油剤と高級アルコールとエステル型非イオン性界面活性剤を配合することにより、刺激臭を低減している。特許文献7では炭素数20〜25の高級アルコールと炭素数10〜19の高級アルコールと界面活性剤を配合することにより、刺激臭を低減している。
【特許文献1】特開平9−67235号公報
【特許文献2】特開平11−286421号公報
【特許文献3】特開平11−349454号公報
【特許文献4】特開2005−336126号公報
【特許文献5】特開2003−221319号公報
【特許文献6】特開2003−73243号公報
【特許文献7】特開2004−189638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら試みに拠って使用時に最適な粘度とすることや刺激臭を低減することができるものの、各剤においては、粘度低下、粘度上昇あるいは分離などが生じ、経時保存安定性に劣るといった問題があった。また、各剤の混合後、粘性の変動が生じ、粘度安定性が低下しやすくなることから、使用時の毛髪からの液垂れや毛髪上での延展性に劣るといった問題や、刺激臭の低減効果が発揮され難くなるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、多剤式の毛髪処理剤用キットが、リン酸ジアルキルと水溶性多糖類を含有することにより、各剤の経時保存安定性に優れ、かつ、混合後は最適な粘度を有して毛髪からの液垂れを防止して毛髪上での延展性に優れること、さらにアルカリ剤などの刺激臭を低減することも見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを含む毛髪処理剤用キットであって、非イオン性界面活性剤を含有せず、(A)リン酸ジアルキル、及び(B)水溶性多糖類を含有してなる毛髪脱色用又は酸化染毛用の毛髪処理剤用キット、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の毛髪処理剤用キットは、各剤の経時保存安定性に優れるとともに、混合時に最適な粘度とし、その粘度安定性に優れた効果を奏する。また、最適な粘度とすることで毛髪からの液垂れを防止して毛髪上での延展性に優れることから、脱色性や染色性を向上させることができる。さらには、アルカリ剤などの原料由来の刺激臭を低減させることができるという優れた効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の毛髪処理剤用キットは、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを含むキットであって、非イオン性界面活性剤成分を含有せず、(A)リン酸ジアルキル成分、及び(B)水溶性多糖類成分を含有することに大きな特徴を有する。
【0010】
(A)リン酸ジアルキル成分としては、式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数12〜22の飽和又は不飽和直鎖のアルキル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0013】
本発明では、式(I)で表される化合物のなかでも、R及びRが炭素数14〜18の飽和又は不飽和直鎖のアルキル基であるリン酸ジアルキルを用いるのが好ましく、R及びRが炭素数16の飽和アルキル基であるリン酸ジセチルを用いるのがより好ましい。
【0014】
式(I)で表される化合物の市販品としては、例えば、R及びRが炭素数16の飽和アルキル基である「DP−10」(リン酸ジセチル、日光ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0015】
(A)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、混合時に最適な粘度とする観点、毛髪からの液垂れを抑制し、延展性を向上させる観点、及びアルカリ剤などの原料由来の刺激臭を低減させる観点から、毛髪処理剤用キット中、0.01〜4重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。
【0016】
(B)水溶性多糖類成分としては、例えば、種子粘質物、樹液粘質物、産生粘質物及びセルロース系成分などが例示される。
【0017】
種子粘質物としては、グアーガム、クインスシード、コンニャクマンナン、タマリンドガム、タラガム、デキストリン、デンプン、ローカストビーンガムなどが挙げられる。樹液粘質物としては、アラビアガム、ガッティガム、カラヤガム、トンガカントガムなどが挙げられる。
【0018】
産生粘質物としては、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、シクロデキストリン、デキストラン、プルランなどが挙げられる。セルロース系成分としては、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースなどが挙げられる。
【0019】
上記化合物は、単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができるが、本発明においてはキサンタンガムが好ましい。また、キサンタンガムの誘導体も好ましく、具体的には、アセチル化キサンタンガム、オキシアルキレン化キサンタンガム(ヒドロキシプロピルキサンタンガムなど)などが例示される。
【0020】
(B)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、混合時に最適な粘度とする観点から、毛髪処理剤用キット中、0.01〜2重量%が好ましく、0.05〜1重量%がより好ましい。
【0021】
なお、本発明の毛髪処理剤用キットは、非イオン性界面活性剤成分を含有しない。その理由は、前記(A)成分と非イオン性界面活性剤成分を併用すると、各剤での経時安定性は優れるが、混合後の粘度が高くなりすぎることにより、毛髪での延展性、粘度安定性に劣り、ひいては、脱色性・染毛性に劣ることになるからである。
【0022】
また、本発明の毛髪処理剤用キットは、各剤の経時保存安定性及び混合後の粘度安定性を向上させる観点から、前記(A)及び(B)成分以外に、さらに(C)多価アルコール成分を含有することが好ましい。
【0023】
(C)多価アルコール成分としては、グリコール類、グリセリン類などを例示される。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールが挙げられ、グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、濃グリセリンが挙げられる。これら成分は、単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0024】
(C)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、混合後の粘度安定性を向上させる観点から、毛髪処理剤用キット中、0.1〜8重量%が好ましく、1〜6重量%がより好ましい。
【0025】
第1剤におけるアルカリ剤としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
第1剤におけるアルカリ剤の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、脱色・染毛効果を向上させる観点から、0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
【0027】
また、第1剤に酸化染料を含有させてもよく、かかる酸化染料としては、染料中間体及びカップラーが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0028】
染料中間体の代表例としては、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類及びそれらの塩類などが挙げられ、その具体例としては、パラフェニレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、硫酸オルトクロロパラフェニレンジアミン、硫酸4,4'−ジアミノジフェニルアミン、硫酸トルエン−2,5−ジアミン、硫酸パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノールなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0029】
カップラーの具体例としては、レゾルシン、メタアミノフェノール、2,6−ジアミノピリジン、メタフェニレンジアミン、硫酸メタフェニレンジアミン、塩酸メタフェニレンジアミン、5−アミノオルトクレゾール、塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、β−ナフトール、カテコールなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0030】
また、色調を調色するために、第1剤にさらに直接染料を含有することができる。直接染料の具体例としては、パラニトロオルトフェニレンジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、硫酸パラニトロメタフェニレンジアミン、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸などをはじめ、医薬品、医薬部外品又は化粧品の着色に使用することが許されている「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)に記載されている酸性染料、例えば、黄色403号(1)などのニトロ系色素、だいだい色205号、黄色4号、黒色401号などのアゾ染料、緑色401号などのニトロソ染料、青色205号などのトリフェニルメタン染料、赤色106号、黄色202号の(1)などのキサンテン染料、黄色203号などのキノリン染料、紫色401号、緑色201号などのアントラキノン染料、青色2号などのインジゴ染料、緑色204号などのピレン系タール染料などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0031】
なお、本発明においては、必要により、例えば、Basic Blue 99、Basic Yellow 57、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Red 76などの塩基性染料、HC Blue No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Orange No.1などのHC染料、DISPERSE BLACK 9、DISPERSE VIOLET 1などの分散染料を本発明の目的が阻害されない範囲内で適宜、前記第1剤に配合することができる。
【0032】
前記各染料の種類やそれらの配合比率は、第1剤が所望の色彩を有するように調整することが好ましい。第1剤における酸化染料の含有量は、充分な染毛効果を発現させる観点から、0.001〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%がより好ましい。
【0033】
第2剤における酸化剤としては、過酸化水素、過酸化尿素、過硫酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、臭素酸塩、過ヨウ素酸塩などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
【0034】
第2剤における酸化剤の含有量は、充分な酸化力を得る観点から、0.1〜20重量%が好ましく、1〜16重量%がより好ましい。
【0035】
なお、本発明の効果が損なわれない範囲内であれば、第1剤及び第2剤には、油性成分、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、低級アルコール、高級アルコール、金属封鎖剤、pH調整剤、動植物抽出物などを適宜配合することができる。また、各剤において、(A)〜(C)成分及び上記成分の残部は、精製水などの水である。
【0036】
第1剤及び第2剤の製造方法としては、従来公知の方法が挙げられる。例えば、加熱して溶解させた(A)成分を含有する油相に、同様に加熱した(B)、(C)成分などを含有する水相を混合・攪拌し、乳化を行う。乳化後、冷却し、第1剤はアルカリ剤を、第2剤は酸化剤を添加して製造することができる。
【0037】
第1剤と第2剤の重量比(第1剤/第2剤)は、混合時に最適な粘度となる観点から、好ましくは3/1〜1/4、より好ましくは2/1〜1/3となるように調整される。
【0038】
本発明の毛髪処理剤用キットは、前記第1剤と第2剤を、そのまま混合して用いる2剤式毛髪処理剤として、又は過硫酸塩などの第3剤と混合して3剤式毛髪処理剤として用いることができる。
【実施例】
【0039】
実施例1〜6及び比較例1〜6
表1又は表2に示す組成の第1剤及び第2剤を下記方法により製造し、実施例1〜6及び比較例1〜6の毛髪処理剤用キットを得た。
【0040】
<第1剤製造方法>
油相を80℃に加熱して十分溶解させたところに、同様に80℃に加熱した水相を徐々に投入する。ホモミキサーで3000r/min、10分間攪拌し、乳化を行う。乳化後、35℃まで冷却し、アルカリ剤を投入する。投入後、十分に均一攪拌する。
【0041】
<第2剤製造方法>
油相を80℃に加熱して十分溶解させたところに、同様に80℃に加熱した水相を徐々に投入する。ホモミキサーで3000rpm、10分間攪拌し、乳化を行う。乳化後、35℃まで冷却し、酸化剤を投入する。投入後、十分に均一攪拌する。
【0042】
次に、得られた毛髪処理剤用キットについて、以下の試験例1〜5の評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0043】
試験例1(各剤の保存安定性(性状・粘度安定性))
各実施例及び各比較例の毛髪処理剤用キットについて、第1剤と第2剤の製造直後の外観及び粘性を目視で観察し、その後、第1剤をポリエチレンチューブに、第2剤をポリエチレン容器にそれぞれ充填し、45℃の恒温槽内にて4週間放置した。4週間後、各剤の中身を取り出し、系の外観及び粘性を目視観察してそれぞれ、以下の評価基準に従って性状及び粘度安定性を評価した。
【0044】
〔性状の評価基準〕
◎:製造直後と変化無し
○:僅かに生地あれが認められる
△:明らかに生地あれが認められる
×:著しい生地あれ又は分離が認められる
【0045】
〔粘度安定性の評価基準〕
◎:製造直後と粘度変動無し
○:僅かに粘度上昇若しくは低下が認められる
△:明らかな粘度上昇若しくは低下が認められる
×:著しい粘度上昇若しくは低下が認められる
【0046】
試験例2(混合時の最適粘度)
専門パネル20名により実施した。23℃、湿度60%の恒温恒湿下で一晩放置した試験用毛束(長さ10cm、重量1g)に、各実施例及び各比較例の毛髪処理剤用キットについて、第1剤及び第2剤を1:2の比率(重量比)でトレー上で混合して調製した毛髪処理剤を2g塗布し、垂れ落ち及び延展性について以下の評価基準に従って評価した。
【0047】
〔垂れ落ちの評価基準〕
◎:20名中16名以上が毛束からの垂れ落ちが全くないと回答
○:20名中11〜15名が毛束からの垂れ落ちが全くないと回答
△:20名中6〜10名が毛束からの垂れ落ちが全くないと回答
×:20名中5名以下が毛束からの垂れ落ちが全くないと回答
【0048】
〔延展性の評価基準〕
◎:20名中16名以上が毛髪上での延展性に優れると回答
○:20名中11〜15名が毛髪上での延展性に優れると回答
△:20名中6〜10名が毛髪上での延展性に優れると回答
×:20名中5名以下が毛髪上での延展性に優れると回答
【0049】
試験例3(粘度安定性)
試験例2で得られた各毛髪処理剤について、トレー上でかき混ぜることにより、混合直後の粘度と、室温で1時間放置後の粘度とを比較し、粘度の変動を以下の評価基準に従って評価した。
【0050】
〔粘度安定性の評価基準〕
◎:混合直後と粘度変動無し
○:混合直後と比べ、僅かに粘度上昇若しくは低下が認められる
△:混合直後と比べ、明らかな粘度上昇若しくは低下が認められる
×:混合直後と比べ、著しい粘度上昇若しくは低下が認められる
【0051】
試験例4(刺激臭の抑制及び脱色性・染色性の評価)
専門パネル20名により実施した。試験例2で各毛髪処理剤を塗布した毛束を、塗布後30℃で30分間放置し、その後、水道水で洗浄しドライヤーを用いて毛束を乾燥した。施術中の刺激臭及び乾燥後の毛束の脱色性・染毛性について以下の評価基準に従って評価した。
【0052】
〔刺激臭の評価基準〕
◎:20名中16名以上がアルカリ剤などの刺激臭を全く感じないと回答
○:20名中11〜15名がアルカリ剤などの刺激臭を全く感じないと回答
△:20名中6〜10名がアルカリ剤などの刺激臭を全く感じないと回答
×:20名中5名以下がアルカリ剤などの刺激臭を全く感じないと回答
【0053】
〔脱色性・染色性の評価基準〕
◎:20名中16名以上が毛束にムラがなく均一に脱色・染色されていると回答
○:20名中11〜15名が毛束にムラがなく均一に脱色・染色されていると回答
△:20名中6〜10名が毛束にムラがなく均一に脱色・染色されていると回答
×:20名中5名以下が毛束にムラがなく均一に脱色・染色されていると回答
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
以上の結果より、実施例の毛髪処理剤用キットは、各剤の保存安定性にも優れ、かつ混合後の垂れ落ち・粘度安定性など全ての特性において優れていることが分かる。一方、水溶性多糖類成分を含有しない比較例2及び5は、リン酸ジアルキル成分との相乗効果が得られないために、粘性の低下が認められ、混合後の粘度安定性に劣るものと考えられる。また、非イオン性界面活性剤成分を含有する比較例3及び6は、粘性が高くなりすぎることにより、延展性に劣ると考えられる。
【0057】
以下、本発明の毛髪処理剤用キットの処方例1〜4を示す。なお、含有量は重量%である。
【0058】
(処方例1:2剤式染毛剤)
(第1剤:クリーム状)
パラフェニレンジアミン 0.15
レゾルシン 0.1
メタアミノフェノール 0.05
リン酸ジセチル 2.0
セチルアルコール 3.0
ジプロピレングリコール 3.0
キサンタンガム 0.2
グルタミン酸 0.5
アルギニン 0.5
プロリン 0.5
メチルポリシロキサン 1.0
香料 適 量
アンモニア水(28%) 5.0
モノエタノールアミン 2.0
炭酸アンモニウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
(第2剤:クリーム状)
過酸化水素(35%) 16.0
リン酸ジセチル 1.0
セチルアルコール 2.0
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.5
ピロリン酸四ナトリウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
【0059】
(処方例2:2剤式染毛剤)
(第1剤:クリーム状)
パラフェニレンジアミン 0.15
レゾルシン 0.1
メタアミノフェノール 0.05
リン酸ジセチル 1.0
セチルアルコール 3.0
ステアリルアルコール 2.0
ジプロピレングリコール 2.0
濃グリセリン 5.0
キサンタンガム 0.5
グルタミン酸 0.2
プロリン 0.3
メチルフェニルポリシロキサン 1.0
香料 適 量
アンモニア水(28%) 5.0
モノエタノールアミン 2.0
炭酸アンモニウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
(第2剤:クリーム状)
過酸化水素(35%) 16.0
リン酸ジセチル 2.0
セチルアルコール 3.0
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.5
ピロリン酸四ナトリウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
【0060】
(処方例3:2剤式染毛剤)
(第1剤:クリーム状)
パラフェニレンジアミン 0.15
レゾルシン 0.1
メタアミノフェノール 0.05
リン酸ジセチル 0.5
ステアリルアルコール 5.0
濃グリセリン 7.0
キサンタンガム 0.15
アルギニン 0.5
プロリン 1.0
アミノ変性シリコーン 0.5
香料 適 量
アンモニア水(28%) 5.0
モノエタノールアミン 2.0
炭酸アンモニウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
(第2剤:クリーム状)
過酸化水素(35%) 16.0
リン酸ジセチル 1.5
セチルアルコール 1.0
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.5
ピロリン酸四ナトリウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
【0061】
(処方例4:3剤式脱色剤)
(第1剤:クリーム状)
リン酸ジセチル 2.0
セチルアルコール 2.0
ステアリルアルコール 2.0
ジプロピレングリコール 6.0
キサンタンガム 0.3
プロリン 1.0
メチルフェニルポリシロキサン 1.0
アミノ変性シリコーン 2.0
香料 適 量
アンモニア水(28%) 5.0
モノエタノールアミン 2.0
炭酸アンモニウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
(第2剤:クリーム状)
過酸化水素(35%) 16.0
リン酸ジセチル 1.0
セチルアルコール 3.0
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.5
ピロリン酸四ナトリウム 0.5
精製水 残 部
合計 100.0
(第3剤:粉末状)
過硫酸カリウム 25.0
過硫酸アンモニウム 20.0
メタケイ酸ナトリウム 20.0
ステアリン酸マグネシウム 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 10.0
無水ケイ酸 13.5
EDTA 1.0
酸化クロム 0.5
合計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の毛髪処理剤用キットは、第1剤と第2剤の保存安定性に優れ、かつ混合後に最適な粘度を有することから、脱色剤又は染毛剤などに好適に用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを含む毛髪処理剤用キットであって、非イオン性界面活性剤を含有せず、(A)リン酸ジアルキル、及び(B)水溶性多糖類を含有してなる毛髪脱色用又は酸化染毛用の毛髪処理剤用キット。
【請求項2】
(A)成分がリン酸ジセチルである、請求項1記載の毛髪処理剤用キット。
【請求項3】
(B)成分がキサンタンガム及び/又はキサンタンガム誘導体である、請求項1又は2記載の毛髪処理剤用キット。
【請求項4】
さらに、(C)多価アルコールを含有してなる、請求項1〜3いずれか記載の毛髪処理剤用キット。


【公開番号】特開2008−143828(P2008−143828A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332371(P2006−332371)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】