説明

毛髪処理剤組成物

【課題】毛髪を前処理するだけでパーマネントウェーブ形成や染色といった化学処理が均一に施せるのみならず、化学処理後にヘアトリートメント処理を施したような滑らかで柔らかい毛髪感触を得ることのできる前処理剤を提供する。
【解決手段】(A)第3級アミン、(B)第4級アンモニウム塩、及び(C)高級アルコールを含有する毛髪処理剤であって、前記第3級アミンと第4級アンモニウム塩との合計重量に対する高級アルコールの重量の割合が0.1〜1.0の範囲内であり、かつ処理剤全体のpHが7.0以上であることを特徴とする毛髪処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、パーマネントウェーブ形成や染色といった化学処理を施す前に毛髪に主に適用され、前記化学処理後の毛髪に優れた感触を付与することのできる毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪に対するパーマネントウェーブ形成あるいは染色及び/又は脱色といった化学処理(ケミカル施術)は、毛髪に形状的又は色彩的な美的処理を施す処理として一般的に行われている。しかしながら、これらの化学処理には、酸やアルカリ、酸化剤や還元剤、あるいは染料といった化学試薬が使用され、毛髪を損傷させることも知られている。
【0003】
以前は、化学処理によって損傷を受けた毛髪にリンス等を用いてヘアトリートメント処理することにより、毛髪の滑らかさを回復させたり、毛髪の表面状態を整えたりすることが一般的であった。これらのヘアトリートメントには、通常、塩化アルキルトリメチルアンモニウムを代表例とするカチオン界面活性剤、更には油分、及び保湿剤などが配合された処理剤が使用されている(例えば、特許文献1参照)。また、ヘアトリートメントに使用される有効成分を染色又は脱色剤に配合することにより後処理の手間を省くことを意図した組成物も提案されている(特許文献2)。
【0004】
一方、パーマネントウェーブ形成や染色といった化学処理においては、処理を施す毛髪の損傷の有無によって得られる効果に差が生じることも知られており、部分的な損傷を持つ毛髪を化学処理した場合、部位によって色彩やウェーブ形成に差が生じ、色むらや形状の不均一を招くことが多い。
【0005】
このような問題を解決するため、化学処理を施す前に毛髪の損傷を修復する前処理剤が使用されるようになっている。例えば、特許文献3には、所定分子量を持つケラチン酸化分解物を含むパーマネントウェーブ処理用の前処理剤が記載され、特許文献4には、カチオン化セルロースとカチオン界面活性剤を含有するヘアカラー用前処理剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−43438号公報
【特許文献2】特開平11−193223号公報
【特許文献3】特開2003−40742 号公報
【特許文献4】特開2006−282512 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら従来の前処理剤は、毛髪の損傷を修復して良好なパーマネントウェーブ形成や染色を達成する点においては或る程度の効果が見られるが、化学処理を施した後の毛髪に、ヘアトリートメント処理を施したような優れた毛髪感触を付与することはできず、化学処理後のトリートメント処理が必要とされている。
よって本発明は、毛髪を前処理するだけでパーマネントウェーブ形成や染色といった化学処理が均一に施せるのみならず、化学処理後にヘアトリートメント処理を施したような滑らかで柔らかい毛髪感触を得ることのできる前処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、第3級アミン、第4級アンモニウム塩及び高級アルコールを所定比率で配合し、そのpHを7.0以上に調節した毛髪処理剤で前処理することにより、化学処理を施した毛髪に優れた感触を付与できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
よって本発明は、
(A)下記式(I):
【化1】

(式中、Rは、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を表し、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数8〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はR−(Y)−(Z)−基を表す。ここで、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数8〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Yは、アミド結合(−CONH−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)から選択される結合基を示し、Zは−CHCHCH−、−CHCH(OH)CH−から選択される結合基である)
で表される第3級アミン、
(B)下記式(II):
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、これらの少なくとも1つは炭素数3〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し、それ以外はヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を表し、Xはアニオンを示す)
で表される第4級アンモニウム塩、及び
(C)高級アルコールを含有する毛髪処理剤であって、
前記(A)第3級アミンと(B)第4級アンモニウム塩との合計重量([(A)+(B)])に対する前記(C)高級アルコールの重量の割合((C)/[(A)+(B)])が0.1〜1.0の範囲内であり、
かつ処理剤全体のpHが7.0以上であることを特徴とする毛髪処理剤を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の毛髪処理剤で前処することにより、パーマネントウェーブ形成や染色等の化学処理を施した後でも、化学処理後にヘアトリートメント処理を実施した場合と同等以上に優れた毛髪感触を得ることができる。
また、本発明の毛髪処理剤は一剤であり、洗い流すことなくパーマネントウェーブ剤や染色剤を適用できるため、その使用性が著しく優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1〜6及び比較例1〜2の処理剤で処理する前後における毛髪の柔軟性(しなやかさ)を毛髪の曲げ応力変化率で測定した結果を示すグラフである。
【図2】実施例7〜11及び比較例3〜5の処理剤で処理する前後における毛髪の滑らかさを動摩擦係数で測定した結果を示すグラフである。
【図3】実施例12及び比較例6の処理剤を塗布した毛髪を酸化染色した後の毛髪の滑らかさをくし通り試験で測定した結果を示すグラフである。
【図4】実施例12及び比較例6の処理剤を塗布した毛髪を酸化染色した後の毛髪の柔軟性(しなやかさ)を毛髪の曲げ応力変化率で測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の毛髪処理剤を構成する第3級アミン(A)は、下記式(I):
【化3】

(式中、Rは、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を表し、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数8〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はR−(Y)−(Z)−基を表す。ここで、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数8〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Yは、アミド結合(−CONH−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)から選択される結合基を示し、Zは−CHCHCH−、−CHCH(OH)CH−から選択される結合基である)
で表される第3級アミンから選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0013】
上記式(I)で表される第3級アミンの具体例としては、例えば、ベヘニルメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアロキシプロピルジメチルアミド、N−(2−ヒドロキシ−3−ステアロキシプロピル)−N、N−ジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルメタノールアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン等が挙げられる。
【0014】
本発明の毛髪処理剤における第3級アミンの配合量は、通常は0.01〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。配合量が0.01質量%より少ないと十分なヘアトリートメント効果が得られ難くなり、10質量%を越えて配合しても特性の更なる向上は得られない。
【0015】
本発明の毛髪処理剤を構成する第4級アンモニウム塩(B)は、下記式(II):
【化4】

(式中、R、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、これらの少なくとも1つは炭素数3〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し、それ以外はヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を表し、Xはアニオンを示す)で表される第4級アンモニウム塩から選択される1種又は2種以上の混合物である。特に、炭素数12〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するものが毛髪を柔軟化する効果が高いという点で好ましい。
上記式(II)における対アニオン(X)は、第4級アンモニウムと塩を形成しうるアニオンであれば特に限定されない。例えば、ハロゲン原子、炭素数1又は2のアルキル硫酸、有機酸などのアニオンを挙げることができる。
【0016】
上記式(II)で表される第4級アンモニウム塩の具体例としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムメタンスルホネートステアリルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化オクチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化2−デシルテトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化2−ドデシルヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0017】
本発明の毛髪処理剤における第4級アンモニウム塩の配合量は、通常は0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。配合量が0.01質量%より少ないと十分なヘアトリートメント効果が得られ難くなり、10質量%を越えて配合しても特性の更なる向上は得られない。
【0018】
本発明の毛髪処理剤を構成する高級アルコール(C)は、化粧品や医薬品等において通常使用されているものを用いることができる。中でも、炭素数16以上の直鎖アルコールが処理剤を適度な粘性に保ち、塗布時の使用感及び製剤の安定性が良好であるという点で好ましい。特にステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の炭素数16〜22の直鎖アルコールが好ましい。
【0019】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、硬化ナタネ油アルコール等)、分岐鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)、その他が挙げられる。
【0020】
本発明の毛髪処理剤における高級アルコールの配合量は、通常は0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。配合量が0.01質量%より少ないと十分なヘアトリートメント効果が得られ難くなり、10質量%を越えて配合しても特性の更なる向上は得られない。
【0021】
本発明の毛髪処理剤においては、前記第3級アミン(A)と第4級アンモニウム塩(B)の配合量の合計重量([(A)+(B)])に対する高級アルコール(C)の配合量(重量)の比率((C)/[(A)+(B)])が、通常は0.1〜1.0、好ましくは0.2〜0.8の範囲となるように調節されている。この比率が0.1より低いと製剤が分離するなど安定性上好ましくない状態となり、1.0より大きいと毛髪をなめらか・しなやかにするこの製剤の特徴が減少する傾向がある。
【0022】
さらに、本発明の毛髪処理剤は、そのpHが7.0以上、好ましくは7.2以上、より好ましくは7.5以上となるように調節されている。pHが7.0未満の酸性になると本発明所望の効果が得られない。pH値の上限は特に限定されないが、通常は約9以下、好ましくは8.5以下程度とする。
処理剤のpH調節は化粧料に通常用いられる酸性化剤又は塩基性化剤を添加することにより実施してよい。通常、上記した量の第3級アミン及び第4級アンモニウムを配合した基剤は、約9付近のpHを示すので、グルタミン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、塩酸、リン酸等の酸を適宜添加することにより中性側に調製することができる。
【0023】
上記した配合比率及びpHにおける本発明の特徴は、従来のヘアトリートメント剤(化学処理後の毛髪に適用される剤)が、通常は少量のカチオン性界面活性剤と多量の高級アルコールを含有する点及び酸性の組成物である点において対照的であり、このような特徴を有する本発明の毛髪処理剤が優れたトリートメント効果を発揮することは従来技術から予測することは不可能であった。
【0024】
本発明の毛髪処理剤は、上記の条件を満たす範囲内で、リンス等のヘアトリートメント剤に通常配合される他の任意成分を含んでもよい。
他の任意成分としては、例えば、高級アルコール以外の炭化水素油、シリコーン油等の油分、保湿剤、イオン性の高分子、非イオン性の高分子、イオン性の界面活性剤、非イオン性の界面活性剤、防腐剤、色剤等を挙げることができる。
【0025】
本発明の毛髪処理剤は、種々の形態とすることができるが、使用性の点から水中油型エマルションとするのが好ましい。エマルション形態の毛髪処理剤は、例えば、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、高級アルコール、及び他の任意成分を、例えば約80℃に加温した水に添加して攪拌溶解し、例えばホモミキサーを用いて乳化処理し冷却することにより調製できる。その他の形態の処理剤も、化粧料の製造に一般に使用されている技術を用いて調製可能である。
また、本発明の毛髪処理剤は、化学処理の前に適用する前処理剤として使用するのが好ましいが、化学処理と同時に適用してもよい。
【実施例】
【0026】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、本明細書における配合量は、特に断らない限り質量%を表す。
【0027】
(実施例1〜6及び比較例1〜2)
下記の表1に掲げた組成を有する毛髪処理剤を調製した。
製造方法:80℃の温水に他の成分を添加、攪拌溶解し、40℃まで冷却することにより各処理剤を得た。これら各処理剤を塗布する前及び塗布した後の毛髪の柔軟性(しなやかさ)の変化を測定した。
【0028】
【表1】

【0029】
(1)柔軟性(しなやかさ)の測定
200本の毛束ストランドを用意し、ストランドを水に浸漬し、試験機(カトーテック社製)に設置して曲げ応力を3回測定した。次いで、ストランドを再度水に浸漬し、同様に曲げ応力を3回測定した。得られた6回の測定値を平均し、処理前の曲げ応力値とした。
次に、ストランドに上記各処理剤0.5gを塗布し、濯いだ後の曲げ応力を塗布前と同様に6回測定して平均し、処理後の曲げ応力値とした。
各処理剤について、処理後の曲げ応力値を処理前の曲げ応力値で除した値を曲げ応力変化率とした。各処理剤について得られた曲げ応力変化率の値を図1にグラフとして示す。
【0030】
(実施例7〜11及び比較例3〜5)
下記の表2に掲げた組成を有する毛髪処理剤を調製した。
製造方法:80℃の温水に他の成分を添加、攪拌溶解し、40℃まで冷却することにより各処理剤を得た。これら各処理剤を塗布する前及び塗布した後の毛髪の柔軟性(しなやかさ)及び滑らかさの変化を測定した。
【0031】
【表2】

【0032】
(2)滑らかさの測定
滑らかさの測定にはプーリー法を用いた。具体的には、プーリーに毛髪(1本)を懸架し、毛髪の両端に同重量(W)の錘を吊す。一方の錘(T1)を上皿天秤の皿に載せ、他方(T2)は空中に吊したままとする。ここで、プーリーをT1方向に回転させながら釣り合わせたとき、T1にかかる荷重(W)、T2にかかる荷重(W−F)(但し、Fは天秤からの反力、即ち、天秤の読み)とから、毛髪の動摩擦係数μkが次の式に従って計算される。
μk=(1/π)ln(T1/T2)
この式から算出される動摩擦係数を、上記表1に掲げた各処理剤での処理前後の毛髪について測定した。結果を図2に示す。
【0033】
図1及び2に示した結果から、第3級アミンしか含まない処理剤(比較例2)では、処理前後の曲げ応力の変化が極めて小さく、毛髪を柔軟にする効果に劣ることがわかる。また毛髪の滑らかさも十分ではなかった(比較例3)。一方で第4級アンモニウム塩のみを含む処理剤では、柔軟化効果は見られるが(比較例1)、4級アンモニウム塩だけでは組み合わせても十分な滑らかさを付与することはできなかった(比較例4、5)。これに対して本発明の処理剤(実施例1〜11)で処理した場合は、毛髪に柔軟性と滑らかさが付与された。
【0034】
(実施例12及び比較例6)
下記の表3に掲げた組成を有する毛髪処理剤を調製した。
製造方法:80℃の温水に他の成分を添加、攪拌溶解し、40℃まで冷却することにより各処理剤を得た。これら各処理剤を塗布した毛髪に化学処理(市販の2剤式酸化染毛料での処理)を施し、化学処理後における毛髪の滑らかさ及び柔軟性の変化を測定した。
【0035】
【表3】

【0036】
毛髪の滑らかさについては、毛束に上記各処理剤1.5gを塗布し、市販の2剤式酸化染毛料を重ね付けして30℃で29分間染色し、濯いだ後に、毛束にくしを通すために要した力(荷重)を測定することにより評価した。結果を図3に示す。
また、柔軟性については、上述した曲げ応力変化率の値によって評価した。結果を図4に示す。
【0037】
図3に示した結果から、従来のトリートメント剤(カチオン界面活性剤を含むが第3級アミンを含まない)である比較例6で処理した場合、濡れた状態(図3、ウェット)では前処理しない毛髪より滑らかであるが、乾いた状態(図3、ドライ)では、前処理しない毛髪と同等以下の滑らかしか得られなかった。これに対し、本発明の処理剤(実施例12)で前処理した毛髪は、濡れた状態で従来のトリートメント剤(比較例6)と同等の滑らかさを示し、乾いた状態では未処理、トリートメント処理に比較して滑らかさが格段に向上した。
【0038】
図4に示した結果から、本発明の処理剤(実施例12)で処理した毛髪は、乾いた状態で従来のトリートメント剤(比較例6)と同等、濡れた状態では更に向上した柔軟性を有することがわかった。
【0039】
(処方例1)
毛髪処理剤
成分 配合量(質量%)
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 2.0
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
ステアリルアルコール 1.0
ソルビトール 10.0
1,3−ブチレングリコール 10.0
L−グルタミン酸 0.1
加水分解コムギタンパク 0.1
フェノキシエタノール 0.3
香料 0.2
水 残余
製造方法:
水を加温し、他の成分を加え攪拌溶解し、ホモミキサーによる乳化処理を行った後冷却し、毛髪処理剤を得た。
【0040】
(処方例2)
毛髪処理剤
成分 配合量(質量%)
N−(2−ヒドロキシ−3−ステアロキシプロピル) 4.0
−N、N−ジメチルアミン
塩化ラウリルトリメチルアンモニウム 0.3
セタノール 0.6
ジプロピレングリコール 13.0
クエン酸 0.1
高重合ジメチルポリシロキサン・メチル(アミノプロピル)シロキサン
共重合体エマルション 10.0
フェノキシエタノール 0.4
香料 0.3
水 残余
製造方法:
水を加温し、他の成分を加え攪拌溶解し、ホモミキサーによる乳化処理を行った後冷却し、毛髪処理剤を得た。
【0041】
(処方例3)
毛髪処理剤
成分 配合量(質量%)
N−(2−ヒドロキシ−3−ステアロキシプロピル) 1.5
−N、N−ジメチルアミン
ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド 2.3
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
ベヘニルアルコール 1.0
プロピレングリコール 10.0
グリセリン 10.0
高重合メチルポリシロキサン 5.0
O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロースクロリド 0.8
高重合ポリエチレングリコール 0.03
フェノキシエタノール 0.5
香料 0.3
水 残余
製造方法:
水を加温し、他成分を加え攪拌溶解し、ホモミキサーによる乳化処理を行った後冷却し、毛髪処理剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の毛髪処理剤は、パーマネントウェーブ形成や染色といった化学処理の前又は処理と同時に使用することにより、化学処理後の毛髪に柔軟性及び滑らかさを付与することができ、従来のヘアトリートメント等の後処理を省略することが可能となる。また、本発明の毛髪処理剤は一剤であるため使用性に優れ、特にヘアサロン等での使用に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(I):
【化1】

(式中、Rは、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を表し、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数8〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はR−(Y)−(Z)−基を表す。ここで、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数8〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Yは、アミド結合(−CONH−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)から選択される結合基を示し、Zは−CHCHCH−、−CHCH(OH)CH−から選択される結合基である)
で表される第3級アミン、
(B)下記式(II):
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、これらの少なくとも1つは炭素数3〜36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し、それ以外はヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基を表し、Xはアニオンを示す)
で表される第4級アンモニウム塩、及び
(C)高級アルコールを含有する毛髪処理剤であって、
前記(A)第3級アミンと(B)第4級アンモニウム塩との合計重量([(A)+(B)])に対する前記(C)高級アルコールの重量の割合((C)/[(A)+(B)])が0.1〜1.0の範囲内であり、
かつ処理剤全体のpHが7.0以上であることを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項2】
(A)第3級アミンの配合量が0.01〜10質量%、
(B)第4級アンモニウム塩の配合量が0.01〜10質量%、及び
(C)高級アルコールの配合量が0.01〜10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
(A)第3級アミンが、N−(2−ヒドロキシ−3−ステアロキシプロピル)−N、N−ジメチルアミン及びステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドから選択される1種又は2種の混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
(B)第4級アンモニウム塩が、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム及び塩化ステアリルトリメチルアンモニウムから選択される1種又は2種の混合物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
(C)高級アルコールが、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール及びセトステアリルアルコールから選択される1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の毛髪処理剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−208956(P2010−208956A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54019(P2009−54019)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】