説明

毛髪処理用組成物

【課題】毛髪に対してうるおい感を付与しながら、毛髪の根元付近の弾力性を向上させることができる毛髪処理用組成物を提供する。
【解決手段】毛髪処理用組成物において、(A)L−テアニン、並びに(B)変性ポリペプチド、例えばシリル化ポリペプチド及びカチオン化ポリペプチドから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリペプチドを含有する毛髪処理用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪処理用組成物、例えば、ヘアトリートメント、シャンプー、リンス、染毛用組成物において一般に、毛髪に保湿性を付与するための成分として加水分解ポリペプチドが知られている。毛髪に適用される加水分解ポリペプチドとしては、例えば、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、加水分解シルク及び加水分解大豆タンパク質が知られている。これらの加水分解ポリペプチドは、ケラチンタンパク質から構成される毛髪との親和性が高いため、毛髪の表面において、保湿性の保護膜を形成する。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、加水分解ポリペプチドに別の特性を付与した変性ポリペプチドについて開示する。特許文献1には、ケラチンを加水分解することによって得られる加水分解ケラチンと高級脂肪酸とを縮合させて、界面活性能を加水分解ケラチンに付与した変性ポリペプチドについて開示する。また、引用文献2には、加水分解ポリペプチドのアミノ基にケイ素原子を含む官能基が共有結合したシリル化ペプチドについて開示する。そのシリル化ペプチドは、毛髪に対し例えば、艶及び光沢を付与する効果を有するシリコーンオイルの特性、並びに毛髪に対しうるおい感を付与する効果を有する加水分解ポリペプチドの特性の両方を有する。
【特許文献1】特開昭59−101449号公報
【特許文献2】特開平8−59424号公報
【特許文献3】特開平10−87448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1,2に開示される加水分解ポリペプチドは、高い保湿効果を有するため毛髪のうるおい感が過剰になる場合があるといった問題があった。そのため、毛髪全体が重くなり毛髪、特に毛髪の根元付近の弾力性が低下し、ボリューム感のある髪型を作ることが困難であるといった問題があった。
【0005】
ところで、特許文献3には、整髪性を付与する化合物として、合成高分子、例えばポリビニルピロリドンを配合する整髪剤について開示されている。しかしながら、このような合成高分子は、毛髪に適用された際、毛髪の柔軟性が低下するとともに毛髪の感触が劣るという問題があった。したがって、合成高分子を使用したとしても、毛髪に対してうるおい感を付与しながら、ボリューム感のある髪型を作ることは困難であった。
【0006】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、変性ポリペプチドが使用される毛髪処理用組成物において、毛髪処理用組成物にL−テアニンを配合することにより上記問題が解決されることを見出したことによりなされたものである。本発明の目的は、毛髪に対してうるおい感を付与しながら、毛髪の根元付近の弾力性を向上させることができる毛髪処理用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の毛髪処理用組成物は、(A)L−テアニン及び(B)変性ポリペプチドを含有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の毛髪処理用組成物において、前記(B)変性ポリペプチドは、シリル化ポリペプチド及びカチオン化ポリペプチドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の毛髪処理用組成物において、前記(A)L−テアニンと(B)変性ポリペプチドとの配合比は、質量比として1:0.1〜1000であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、毛髪に対してうるおい感を付与しながら、毛髪の根元付近の弾力性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を毛髪処理用組成物に具体化した実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る毛髪処理用組成物は、(A)L−テアニン及び(B)変性ポリペプチドを含有している。
【0011】
(A)L−テアニンは、(B)変性ポリペプチドとの併用により、毛髪に対してうるおい感を付与しながら、毛髪の根元付近の弾力性を向上させる効果を発揮する。(A)L−テアニンは、それ単独で毛髪の修復効果も有する。(A)L−テアニンは、L−グルタミン酸の誘導体であり、アミノ酸の一種である。L−テアニンは、茶葉、特に玉露に多く含まれる成分であり、緑茶の旨味成分として知られている。L−テアニンは茶葉から常法によって抽出して得られる他、化学的な合成によっても得ることができる。毛髪処理用組成物には、そうした天然由来及び合成由来のいずれのL−テアニンも使用することができる。
【0012】
毛髪処理用組成物中における(A)L−テアニンの含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%である。(A)L−テアニンの含有量が0.001質量%未満であると、毛髪に対して弾力性を向上させる効果を十分に発揮することができない。(A)L−テアニンの含有量が5質量%を超えて配合しても、それ以上の毛髪に対する弾力性の向上効果は得られない。
【0013】
(B)変性ポリペプチドは、毛髪に対し、保湿性を付与するために配合される。(B)変性ポリペプチドは、毛髪との親和性が高いため、毛髪の表面において、保湿性の保護膜を形成する。(B)変性ポリペプチドとして、例えば加水分解ポリペプチドを公知の修飾法を用いて処理することにより得られる加水分解ポリペプチドの誘導体を挙げることができる。加水分解ポリペプチドは、タンパク質、例えば大豆タンパク、アーモンドタンパク、ブラジルナッツタンパク、ヘーゼルナッツタンパク、オオムギタンパク、カラスムギタンパク、小麦タンパク、ゴマタンパク、米(米糠)タンパク、トウモロコシタンパク、ジャガイモタンパク、卵殻膜、卵白、ケラチン、コラーゲン、シルク、アコヤ貝糖タンパク、コンキオリン、及び乳タンパクを加水分解処理することにより得られる。加水分解処理としては、例えば、酸処理、アルカリ処理及びプロテアーゼ処理が挙げられる。加水分解ポリペプチドの分子量は、特に限定されないが数百〜数千の範囲に分解されたものが好ましい。加水分解ポリペプチドの分子量は小さい方が毛髪に対する吸着性が高い。
【0014】
加水分解ポリペプチドの誘導体としては、例えばカチオン化誘導体(カチオン化ポリペプチド)、シリル化誘導体(シリル化ポリペプチド)、及びアシル化誘導体(アシル化ポリペプチド)を挙げることができる。加水分解ポリペプチドのカチオン化に用いられる化合物としては、例えば、トリメチルアンモニウム塩、及びアルキル第4級アンモニウム塩を挙げることができる。カチオン化誘導体は、加水分解ポリペプチドの毛髪に対する吸着性を向上させることができる。シリル化誘導体は、例えば加水分解ポリペプチド中の活性水素、例えば水酸基、アミノ基、及びカルボキシル基内の炭素原子に結合した水素を3置換シリル基−SiR(Rは例えば水酸基、メチル基を示す)で置換することにより得られる。加水分解ポリペプチドのシリル化誘導体は、加水分解ポリペプチドにシリコーンオイルの効果、例えば、毛髪に対する艶及び光沢を付与する効果、毛髪処理用組成物に対する粘度を付与する効果、並びに頭皮に対する刺激を緩和する効果を付加することができる。加水分解ポリペプチドのアシル化誘導体は、加水分解ポリペプチドと高級脂肪酸とを縮合反応させることにより得られる。加水分解ポリペプチドのアシル化誘導体は、加水分解ポリペプチドに界面活性能を付与することができる。
【0015】
(B)変性ポリペプチドとして、例えばヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、カチオン化加水分解ダイズタンパク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コムギタンパク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、加水分解ゴマタンパクPGプロピルメチルシランジオール、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解シルク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コラーゲン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、カチオン化加水分解コンキオリン−2、ココイル加水分解ダイズタンパクカリウム、及びイソステアロイル加水分解コラーゲンが挙げられる。これらの(B)変性ポリペプチドの具体例は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0016】
毛髪処理用組成物中における(B)変性ポリペプチドの含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%である。(B)変性ポリペプチドの含有量が0.001質量%未満であると、毛髪に対して保湿性の向上効果を十分に発揮することができない。(B)変性ポリペプチドの含有量が10質量%を超えて配合しても、それ以上の毛髪に対する保湿性の向上効果は得られず、毛髪にべたつき感を生じさせるおそれがある。
【0017】
(A)L−テアニンと(B)変性ポリペプチドとの併用による、毛髪に対するうるおい感の付与効果、及び毛髪の根元付近の弾力性の向上効果をさらに発揮するために(A)L−テアニンと(B)変性ポリペプチドの配合比は、次のように調整されることが好ましい。(A)L−テアニン:(B)変性ポリペプチドは、質量比として、好ましくは1:0.1〜1000であり、より好ましくは1:0.5〜100である。
【0018】
毛髪処理用組成物は、必要に応じて、例えば水、水溶性高分子化合物、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、糖類、防腐剤、キレート剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、及び紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0019】
水は、各成分の溶媒又は分散媒として使用される。水は界面活性剤とともに適量配合されて、毛髪処理用組成物を乳化させる。毛髪処理用組成物中における水の含有量は、好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは70〜90質量%である。水の含有量が50質量%未満であると、毛髪処理用組成物の乳化が不十分となるおそれがある。水の含有量が95質量%を超えて配合すると、毛髪処理用組成物の均一性及び安定性を確保しにくくなる。
【0020】
水溶性高分子化合物としては、例えばアラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸、及びポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウムが挙げられる。架橋ポリアクリル酸としては、例えばカルボマーが挙げられる。
【0021】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、毛髪処理用組成物は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂類、ロウ類、高級アルコール、炭化水素類、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、及びシリコーン類が挙げられる。
【0022】
油脂類としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウ類としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。
【0023】
高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0024】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0025】
エステル類としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、及びコハク酸ジオクチルが挙げられる。
【0026】
シリコーン類としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えばPEG−12ジメチコンが挙げられる。これらの油性成分の具体例は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0027】
多価アルコールとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、及び1,3−ブチレングリコール(BG)が挙げられる。
【0028】
界面活性剤は、組成物の乳化剤又は組成物中の各成分の可溶化剤として毛髪処理用組成物の安定性を保持するために好適に配合される。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩としては、例えばラウレス硫酸ナトリウムが挙げられる。N−アシルアミノ酸型界面活性剤としては、例えばN−ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウムが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。
【0029】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルケニルジメチルアンモニウム塩、ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、及びアルキロイルアミドプロピルジメチルアミンが挙げられる。アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが挙げられる。ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが挙げられる。これらの界面活性剤のカチオン基の対イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキル硫酸イオン、及びサッカリンが挙げられる。
【0030】
両性界面活性剤としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、及びココアンホ酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0031】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルサッカライド界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、及びアルキルアミンオキサイドが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばラウレス、セテス、ステアレス、及びパレスが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例は、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0032】
糖類としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA−2Na)が挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えば乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン(TEA)、及びアルギニンが挙げられる。
【0033】
毛髪処理用組成物は、液状、ミスト状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等の剤型にすることが可能である。この毛髪処理用組成物は、保湿効果を付与するためのヘアケア剤、例えばシャンプー、リンス、及びヘアトリートメント剤として使用することができる。この毛髪処理用組成物は、毛髪に適用した後に水や温水で洗い流すようにして使用してもよく、毛髪に付着した同組成物を水や温水で洗い流さないようにして使用してもよい。この毛髪処理用組成物は、整髪剤として使用してもよい。この毛髪処理用組成物は、毛髪に適用した後に水や温水で洗い流すようにして使用してもよく、毛髪に付着した同組成物を水や温水で洗い流さないようにして使用してもよい。この毛髪処理用組成物は、例えば染料をさらに配合することにより染毛処理剤、例えば酸化染毛剤及び酸性染毛料として使用してもよい。この毛髪処理用組成物は、例えば酸化剤を配合することにより、ブリーチ剤として適用してもよい。この毛髪処理用組成物は、例えば還元剤を配合することによりパーマネントウェーブ剤、縮毛矯正剤及び脱染剤として使用してもよい。
【0034】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)本実施形態では、(B)変性ポリペプチドを含有する毛髪処理用組成物に(A)L−テアニンを配合した。したがって、毛髪に対してうるおい感を付与しながら、毛髪の根元付近の弾力性を向上させることができる。
【0035】
(2)本実施形態では、毛髪処理用組成物に(B)変性ポリペプチドを配合した場合であっても、ボリューム感のある髪型を作ることができる。特に、高い保湿効果によりボリューム感のある髪型をつくることが難しい細毛の毛髪に対しても、ボリューム感のある髪型を作ることができる。
【0036】
(3)本実施形態では、毛髪の保湿効果を有する(B)変性ポリペプチドと、(A)L−テアニンとを併用している。そのため、(B)変性ポリペプチドによって発揮される毛髪の保湿効果をさらに向上させることができる。また、その保湿効果の持続性も良好である。
【0037】
(4)本実施形態において、(B)変性ポリペプチドとして加水分解ポリペプチドを使用する場合、毛髪に対するポリペプチドの吸着性を向上させることができる。
(5)本実施形態において、(B)変性ポリペプチドとして、加水分解ポリペプチドに付加物を結合させた誘導体、例えばカチオン化誘導体、シリル化誘導体、及びアシル化誘導体を使用した。したがって、(B)変性ポリペプチドに加水分解ポリペプチドによってもたらされる毛髪に対する保湿性のみならず、各付加物によってもたらされる効果も付与することができる。
【0038】
(6)本実施形態において、毛髪処理用組成物中に(A)L−テアニンが配合される。したがって、組成物は、例えば染毛処理、脱色処理、パーマネント処理及び紫外線照射により損傷を受けた毛髪に対して損傷の修復効果を発揮する。また、その修復効果の持続性も良好である。
【0039】
(7)本実施形態では、(A)L−テアニンと(B)変性ポリペプチドとを併用する場合、(A)L−テアニンによって発揮される毛髪の修復効果をさらに向上させることができる。
【0040】
なお、上記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・上記実施形態において、毛髪処理用組成物に配合される各成分を分割し、複数剤型として構成してもよい。
【実施例】
【0041】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(ヘアトリートメント剤)
表1,2に示す各例において、各成分を混合することにより、ヘアトリートメント剤としての毛髪処理用組成物を調製した。各組成物をヒト黒毛束又はストレートボブスタイルのかつら(ウイッグ:図1参照)に塗布し、毛髪になじませた。次に、毛髪を3分間放置した後、温水ですすぎ、ドライヤーで乾燥させた。表1において、各成分の配合量を示す数値の単位は質量%である。
【0042】
(毛髪のボリューム感(量感))
毛髪のボリューム感は、各例の毛髪処理用組成物で処理したかつらについて、目視にて観察することにより判断した。毛髪のボリューム感の評価について、毛髪の根元付近の弾力性が十分にあることにより、ボリューム感が十分にある場合を「優れる」とし、毛髪の根元付近の弾力性があり、ボリューム感がある場合を「良好」とし、毛髪の根元付近の弾力性がやや失われ、ボリューム感がやや劣る場合を「やや悪い」とし、及毛髪の根元付近の弾力性が失われ、ボリューム感がない場合を「悪い」とした。
【0043】
尚、図1において、毛髪のボリューム感の評価を参考に示す。図1の毛髪(かつら)において、頭頂部より左側の毛髪が、毛髪の根元付近の弾力性が十分にあることにより、ボリューム感が十分にある(「優れる」)と評価した。頭頂部より右側に毛髪が、毛髪の根元付近の弾力性が失われ、ボリューム感がない(「悪い」)と評価した。
【0044】
(毛髪の引っ張り強度)
各例の毛髪処理用組成物で処理する前後のヒト黒毛束について、引張試験機(テンシロン(商品名)UTM−II、東洋ボールドウィン社製)を用いて破断応力値を測定し、その値の増加率を強度増加率(%)とした。
【0045】
そして、求めた強度増加率から毛髪の強度について、次の基準で評価した。強度増加率が9%以上を「優れる」とし、強度増加率が7%以上9%未満を「良好」とし、強度増加率が5%以上7%未満を「やや悪い」とし、強度増加率が5%未満を「悪い」とした。
【0046】
(毛髪のうるおい感)
各例の毛髪処理用組成物で処理したヒト黒毛束について、5名のパネラーが手で触れることにより、うるおい感が非常に良い場合を4点、良い場合を3点、やや悪い場合を2点、及び悪い場合を1点とする4段階で採点した。そして、うるおい感の評価として、5名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、その平均点が3.6点以上の場合を「優れる」とし、2.6点以上3.6点未満の場合を「良好」とし、1.6点以上2.6点未満の場合を「やや悪い」とし、及び1.6点未満の場合を「悪い」とした。
【0047】
(毛髪の水分保持性)
各例の毛髪処理用組成物で処理したヒト黒毛束について、まず25℃湿度50%RHの雰囲気中に24時間放置し、初期毛髪質量(X)を測定した。次に、同一の毛束をさらに25℃湿度10%RHの雰囲気中に24時間放置し、二次毛髪質量(Y)を測定した。次に、同一の毛束を五酸化二リンとともにデシケータ中に減圧状態で1週間放置し、完全に乾燥させた時の乾燥毛髪質量(Z)を測定した。乾燥毛髪質量(Z)を初期毛髪質量(X)及び二次毛髪質量(Y)からそれぞれ差し引き、各乾燥工程での毛髪水分量を得た。水のみで処理した毛髪(コントロール毛髪)も同様の乾燥処理を施し、コントロール毛髪の各乾燥工程での毛髪水分量を得た。各例における各乾燥工程の水分量を、コントロール毛髪の各乾燥工程での水分量を100%とした場合、その比率([各例の毛髪水分量]×100/[コントロールの毛髪水分量])(%)として表わした。各例について各工程におけるコントロール毛髪に対する比率(%)の平均を算出した。水分保持性の評価として、110%以上の場合を「優れる」とし、105%以上110%未満の場合を「良好」とし、101%以上105%未満の場合を「やや悪い」とし、101%未満の場合を「悪い」とした。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

表1に示されるように、(A)L−テアニン及び(B)変性ポリペプチドを含有する実施例1〜14では、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感、及び水分保持性のいずれの評価も「優れる」又は「良好」であることが確認された。特に、(B)変性ポリペプチドが、カチオン化誘導体及びシリル化誘導体である実施例1〜12では、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感、及び水分保持性のいずれの評価も「優れる」であることが確認された。
【0050】
一方、(A)L−テアニンを含有しない比較例1では、表2に示されるように、ボリューム感が低下する結果となった。比較例1では、実施例1と比較し、うるおい感及び水分保持性が低下している。これは実施例1において、(A)L−テアニンと(B)変性ポリペプチドとを併用することによって、(B)変性ポリペプチドによる毛髪の保湿効果が向上していることによるものと思料される。
【0051】
(B)変性ポリペプチドとアミノ酸としてのグルタミンとを併用する比較例2では、毛髪のボリューム感は改善されないことが確認された。尚、(B)変性ポリペプチドとグルタミンとを併用する比較例2では、アミノ酸類が配合されていない比較例1と比較すると、うるおい感及び水分保持性が低下することが確認された。
【0052】
(A)L−テアニンと加水分解タンパク質とを併用する比較例4〜8では、ボリューム感は「悪い」ことが確認された。ポリペプチドを使用しない比較例3では、各実施例と比較すると、引っ張り強度が低下していることから、(A)L−テアニンと(B)変性ポリペプチドとを併用することによって、(A)L−テアニンによる毛髪の修復効果がさらに向上することがわかる。

尚、表中における(A)及び(B)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す(以下、同様)。一方、表中におけるa及びbの表記は、本願請求項記載の各成分の対比化合物を示す。
【0053】
(シャンプー)
表3に示す各例において、各成分を混合することにより、シャンプーとしての毛髪処理用組成物を調製した。各組成物をヒト黒毛束又はストレートボブスタイルのかつら(ウイッグ:図1参照)に塗布し、洗髪し、温水で洗い流した。次に、その毛髪をドライヤーで乾燥させて、乾燥後の毛髪について、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感及び水分保持性を評価した。各評価は、ヘアトリートメント剤欄に記載の方法にしたがった。表3において、各成分の配合量を示す数値の単位は質量%である。
【0054】
【表3】

表3に示されるように、(A)L−テアニン及び(B)変性ポリペプチドを含有する実施例15〜18では、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感、及び水分保持性のいずれの評価も「優れる」であることが確認された。
【0055】
(アウトバストリートメント剤)
表4に示す各例において、各成分を混合することにより、アウトバストリートメント剤としての毛髪処理用組成物を調製した。各組成物を水洗後のヒト黒毛束又はストレートボブスタイルのかつら(ウイッグ:図1参照)に適量を塗布した。次に、毛髪をドライヤーを用いて乾燥させた。乾燥後の毛髪について、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感及び水分保持性について評価した。各評価はヘアトリートメント剤欄に記載の方法にしたがった。表4において、各成分の配合量を示す数値の単位は質量%である。
【0056】
【表4】

表4に示されるように、(A)L−テアニン及び(B)変性ポリペプチドを含有する実施例19〜23では、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感、及び水分保持性のいずれの評価も「優れる」であることが確認された。
【0057】
(酸化染毛剤)
酸化染毛剤としての毛髪処理用組成物は、酸化染料及びアルカリ剤を含有する酸化染毛剤第1剤(以下「第1剤」とする)と、酸化剤を含有する酸化染毛剤第2剤(以下「第2剤」とする)とから構成されている。表5に示す各例の第1剤及び第2剤を調製し、これらの第1剤及び第2剤を1:2の質量比で混合し、その混合物をヒト黒毛束又はストレートボブスタイルのかつら(ウイッグ:図1参照)に塗布した後、20分間放置した。その後、毛髪に付着した混合物を水で洗い流し乾燥させることにより、各毛髪に染毛処理を施した。このように酸化染毛剤で処理した各毛髪を使用して、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感及び水分保持性について評価した。各評価は、ヘアトリートメント剤欄に記載の方法にしたがった。表5において、各成分の配合量を示す数値の単位は質量%である。
【0058】
【表5】

表5に示されるように、(A)L−テアニン及び(B)変性ポリペプチドを含有する実施例24〜27では、毛髪のボリューム感、引っ張り強度、うるおい感、及び水分保持性のいずれの評価も「優れる」であることが確認された。
【0059】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(a)前記(B)変性ポリペプチドは、加水分解ポリペプチドを修飾処理することにより得られる加水分解ポリペプチドの誘導体である前記毛髪処理用組成物。
【0060】
(b)前記加水分解ポリペプチドは、大豆タンパク、ゴマタンパク、小麦タンパク、ケラチン、コラーゲン、及びシルクを加水分解処理することにより得られることを特徴とする前記毛髪処理用組成物。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】毛髪のボリューム感の評価を示す参考図。頭頂部より左側の毛髪が、毛髪の根元付近の弾力性が十分にあることにより、ボリューム感が十分にある場合(「優れる」)を示す。頭頂部より右側に毛髪が、毛髪の根元付近の弾力性が失われ、ボリューム感がない場合(「悪い」)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)L−テアニン及び(B)変性ポリペプチドを含有することを特徴とする毛髪処理用組成物。
【請求項2】
前記(B)変性ポリペプチドは、シリル化ポリペプチド及びカチオン化ポリペプチドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理用組成物。
【請求項3】
前記(A)L−テアニンと(B)変性ポリペプチドとの配合比は、質量比として1:0.1〜1000であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪処理用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−308441(P2008−308441A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157778(P2007−157778)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】