説明

毛髪化粧料、及び、その使用方法

【課題】頭皮の潤いや柔軟性の効果を高める毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の毛髪化粧料は、成分(A)第3級アミン化合物又はその塩から選ばれるカチオン界面活性剤 0.3〜1質量%と、成分(B)炭素数14〜22である脂肪族アルコール 0.6〜4質量%と、成分(C)多価アルコール 1.5〜20質量%と、水とを含有し、成分(A)と成分(C)との質量割合が(C)/(A)=5〜40であり、濡れた頭皮及び毛髪に塗布されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料、及び、その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の毛髪化粧料としては、例えば特許文献1、2に記載のものがある。特許文献1、2の毛髪化粧料は、毛髪に塗布した後、すすぎを行い、次いでタオルドライを行い、ドライヤーで乾燥させて使用するものである。
【0003】
特許文献1の毛髪化粧料によれば、特定のアミドアミン化合物、高級アルコール、特定の有機溶剤を併用することにより、毛髪に対し良好な感触、特に塗布時からすすぎ時における滑らかなコート感、優れた柔軟性を与え、更にはダメージヘアの仕上がりに弾力性を付与し、健康な髪と同様の仕上がり感が得られるとされている。
【0004】
また、特許文献2の毛髪化粧料によれば、特定のアミドアミン化合物、有機酸、脂肪族アルコールを併用することにより、カラーリングやドライヤー乾燥等による毛髪損傷(毛髪内部の空洞)の修復・抑止効果に優れるとともに、毛髪に塗布してから洗い流す濯ぎ時に亘って、充分な滑らかなコート感を与え、更にダメージヘアにも滑らかでまとまりのある仕上がり感を付与でき、且つ安全性が高く皮膚等に対して温和な作用を示すとされている。
【0005】
近年、特許文献3のような洗い流さないタイプの毛髪化粧料も知られている。特許文献3の毛髪化粧料によれば、特定の3級アミン、モノアルキル型第4級アンモニウム塩、特定の2種の有機酸、高級アルコールを併用することにより、濡れた髪・乾いた髪どちらに対しても、滑らかでなじみ・指通りが良く、かつ繰り返し使用することにより、髪自体のまとまり性、指通り性の両方を改善することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−81780号公報
【特許文献2】特開2006−290796号公報
【特許文献3】特開2009−126850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献記載の技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0008】
特許文献1、2のような濡れた頭皮及び毛髪に適用した後シャワー等の水又は湯により洗い流して使用される毛髪化粧料は、毛髪へのコンディショナー剤の残留が必要であり、毛髪に保持された水に接触しても、保形性が維持できる製剤になっている為、頭皮までのび広がりにくい。また、毛髪からコンディショニング剤を、大量の水又は湯により洗い流す場合も、毛髪からコンディショニング剤や有効成分が水と一緒に洗い流されていた為、頭皮にコンディショニング剤や有効成分が留まらず、頭皮に対するスキンケア効果を十分に得ることはできない。
【0009】
一方、特許文献3の技術は、タオルドライ後の毛髪に塗布させるものであるため、毛髪化粧料が毛髪の一部のみにしか塗れず、十分に塗れ広がらない。特に、頭皮については、毛髪が邪魔をするため、頭皮まで塗布することがよりいっそう困難になる。また、残存率を高くすべく、多く塗布することは、頭皮や毛髪にべたつき感が生じ使用感を損なわれてしまう。したがって、頭皮に対するスキンケアやヘアケア効果を十分に得ることはできず、均一な毛髪ケアを行うためには、改善の余地がある。
【0010】
以上のように、上記文献技術の毛髪化粧料では、頭皮へ十分に行き渡らせることが困難であり、剤を多く塗布したり、一定時間塗布状態を持続させる必要があり、すすぎ時に大量の水で洗い流す必要があった。本発明では、頭皮まで十分に行き渡らせ、髪が絡まらず、しかも、毛髪のべたつきが抑制され、洗い流さずに使用できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、次の成分(A)、(B)、(C)及び水を含有し、成分(A)と成分(C)との質量割合が(C)/(A)=5〜40であり、濡れた頭皮及び毛髪に塗布される毛髪化粧料が提供される。
(A)第3級アミン化合物又はその塩から選ばれるカチオン界面活性剤
0.3〜1質量%
(B)炭素数14〜22である脂肪族アルコール 0.6〜4質量%
(C)多価アルコール 1.5〜20質量%
【0012】
また、本発明によれば、上記の毛髪化粧料を濡れた頭皮及び毛髪に塗布するステップと、塗布された毛髪化粧料を洗い流さずに頭皮及び毛髪を乾燥するステップと、を含む毛髪化粧料の使用方法が提供される。
【0013】
この発明によれば、第3級アミン化合物又はその塩から選ばれるカチオン界面活性剤に対する多価アルコールの含有量を5〜40と高くし、かつ、少量の脂肪族アルコールを含ませることにより、水に接触する前は保形性を保ちつつ、水に接触することで良好な伸び、滑り性能を持つ毛髪化粧料にすることができる。これにより、濡れた頭皮及び毛髪に塗布することで、塗布時の毛髪同士の絡まりがなくなり、頭皮のすみずみまで均一に行き渡らせることができるので、頭皮の潤いや柔軟性を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、濡れた頭皮及び毛髪に塗布することで、毛髪への伸び広がりが良くなり、頭皮のすみずみまで行き渡り、頭皮の潤いや柔軟性を高める毛髪化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(A)第3級アミン化合物又はその塩から選ばれるカチオン界面活性剤
成分(A)としては、下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
〔一般式(1)中、R11は総炭素数8〜35の−OCO−若しくは−COO−で表される官能基で分断又は−OHで置換されていてもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、又は脂肪族アシルオキシ(ポリエトキシ)エチル基を示し、R12は炭素数1〜22のアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基、又は合計付加モル数10以下のポリオキシエチレン基を示し、2個のR12は同一でも異なってもよい。〕
【0018】
上記一般式(1)で表される第3級アミン化合物としては、第3級アミンを有機酸及び/又は無機酸によって塩としたものを用いてもよいし、本発明の毛髪化粧料に酸を配合して、pH調整剤と共に組成物中で塩を形成させてもよい。かかる酸としては、例えば、アルキルリン酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸等の短鎖アルキル基を有する酸;L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;ピログルタミン酸;安息香酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族酸;グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、パントテン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;その他リン酸、塩酸、酢酸、コハク酸などが挙げられる。中でも毛髪に対する保湿及び柔軟化効果をもたらす点から、有機酸が好ましく、特に、酸性アミノ酸、ピログルタミン酸、ヒドロキシ酸が好ましく、ヒドロキシ酸がより好ましい。
【0019】
成分(A)のより具体的な例としては、例えば、以下の(A−1)、(A−2)及び(A−3)の第3級アミン化合物又はその塩等の少なくともいずれか1つが挙げられる。
【0020】
(A−1)ヒドロキシエーテルアルキルアミン又はその塩
例えば下記一般式(2)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
〔一般式(2)中、R17は、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R18及びR19は、同一又は相異なって炭素数1〜6のアルキル基又は−(AO)H(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、fは1〜6の数を示し、f個のAは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。eは1〜5の数を示す。〕
【0023】
具体的には、ヘキサデシルオキシ(2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンおよびその塩、オクタデシルオキシ(2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンおよびその塩が挙げられる。
【0024】
(A−2)エーテルアミン又はその塩
例えば下記一般式(3)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
〔一般式(3)中、R20は、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R21及びR22は、同一又は相異なって炭素数1〜6のアルキル基又は−(AO)H(Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、gは1〜6の数を示し、g個のAは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。〕
【0027】
具体的には、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミンおよびその塩、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミンおよびその塩が挙げられる。
【0028】
(A−3)アルキルアミドアミン又はその塩
例えば下記一般式(4)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0029】
【化4】

【0030】
〔一般式(4)中、R23は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R24は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは2〜4の数を示す。〕
【0031】
具体的には、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミド(ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド)又はその塩、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ステアラミド(ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド)又はその塩が挙げられる。
【0032】
上記の第3級アミン化合物から選ばれる好ましい成分(A)としては、塗布時、すすぎ時の滑らかさの観点から(A−2)エーテルアミン又はその塩、(A−3)アルキルアミドアミン又はその塩が好ましい。
【0033】
その中でも、(A−3)アルキルアミドアミン又はその塩がより好ましく、特にN−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミド又はその塩、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ステアラミド(ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド)又はその塩が好ましい。中でも、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミドが特に好ましい。
【0034】
また、本発明に用いられる第3級アミン化合物の塩は、上記一般式(1)で示す第3級アミンを無機酸、有機酸又はこれらの塩を用いて中和することによって得ることができる。
【0035】
無機酸としては塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、炭素数10以下の有機酸(特に、有機カルボン酸)が好ましく、例えば、アルキルリン酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸等の炭素数10以下の短鎖アルキル基を有する酸;酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;ピログルタミン酸;安息香酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族酸;グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、パントテン酸等のヒドロキシモノカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸等のヒドロキシジカルボン酸、クエン酸等のヒドロキシトリカルボン酸が挙げられる。中でも、ヒドロキシモノカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸、及びジカルボン酸がより好ましく、特に、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、及びマレイン酸が好ましい。無機酸又は有機酸は、2種以上を併用することもできる。
【0036】
上記無機酸及び/又は有機酸の含有量は、効果的にアミン臭を低減でき、また毛髪や頭皮に柔軟性や滑り性を高める観点から、0.05〜2質量%が好ましく、特に0.1〜1質量%が好ましく、なかでも0.1〜0.5質量%がより好ましい。
【0037】
成分(A)の第3級アミン化合物又はその塩は、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、0.3〜1質量%であり、乾燥後の毛髪を滑らかにし、かつ、櫛通りをよくするという点から、第3級アミン化合物として本発明の毛髪化粧料に0.4〜0.8質量%含有させることが好ましい。
【0038】
続いて、成分(B)について説明する。成分(B)の脂肪族アルコールとしては、直鎖及び分岐鎖、並びに、飽和及び不飽和のいずれの脂肪族アルコールでもよく、炭素数は14〜22の脂肪族アルコールが好ましい。具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等の直鎖の飽和脂肪族アルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール等の分岐鎖の飽和脂肪族アルコール、オレイルアルコール等の不飽和脂肪族アルコールが挙げられる。なかでも、炭素数18〜22の直鎖の飽和脂肪族アルコールであるものが好ましい。これらのうち、塗布時の髪の滑らかさを付与する観点からステアリルアルコールが好ましい。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
成分(B)は2種以上を併用することもでき、またその含有量は、0.6〜4質量%であり、乾燥後の毛髪の滑らかさ、及び、櫛通りの良さの観点から、本発明の毛髪化粧料の1〜3質量%とすることが好ましい。
【0040】
続いて、成分(C)について説明する。成分(C)の多価アルコールとしては、水酸基を2個以上有するグリコール類、グリセリン、及び、糖類のいずれかが好ましい。水酸基を2個以上有するグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコールなどが挙げられる。また、糖類としては、ソルビトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、マンニトールなどが挙げられる。中でもグリセリン、プロピレングリコールが好ましく、特にグリセリンが好ましい。これにより、水に触れる前は保形性を有し、水に触れた時に流動性を顕著に向上させ、のびが良く、頭皮へ均一に広がる。かつ、塗布時、乾燥後のべたつきを少なくすることができる。
【0041】
成分(C)の多価アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、その含有量は、本発明の毛髪化粧料中の1.5〜20質量%である。濡れた毛髪に塗布した時にのびが良く、頭皮へ均一に広がる、塗布時・乾燥後にべたつきを抑制する観点から、2.5〜20質量%、特に3.5〜10質量%が好ましい。
【0042】
本発明の毛髪化粧料において、成分(A)と成分(C)との質量比(C)/(A)は、水に触れる前は保形性を有しつつ、水に触れたときのびが良く、塗布時の頭皮への行き渡り易さ、髪の絡まり防止の観点から、5以上が好ましく、7以上が特に好ましい。また、塗布時、乾燥後のべたつきを抑制する観点から、40以下が好ましく、20以下が特に好ましい。中でも15以下が好ましい。
【0043】
また、成分(C)と成分(B)との質量比(C)/(B)は、塗布時の頭皮への行き渡り易さ、髪の絡まり防止の観点から、1.0以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。中でも、2以上が好ましい。また、塗布時、乾燥後のべたつきを抑制する観点から、15以下が好ましく、12以下が特に好ましい。中でも6以下が好ましい。
【0044】
本発明の毛髪化粧料は、乾燥後のさらさらした滑り感や柔軟性、或いは光沢性を付与するなど毛髪保護効果を高める目的で、油性成分を含有することができる。油性成分としては、シリコーン類やエステル油のほかに、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸等の高級脂肪酸、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワレン、スクワラン等の炭化水素油等が挙げられる。
【0045】
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンが好ましい。ジメチルポリシロキサンは、毛髪に良好な潤滑性を付与することができ、ポリエーテル変性シリコーンは、毛髪に滑らかさを付与することができ、アミノ変性シリコーンは、毛髪にしっとり感を付与することができる。本発明においては、求める性能に応じて、各種のシリコーン類を単独で又は2種以上を使用することができる。
【0046】
シリコーン類の含有量は、指通り性や、べたつき感のなさの点から、本発明の毛髪化粧料中の0.05〜10質量%が好ましく、更には0.1〜5質量%、特に0.3〜3質量%が好ましい。
【0047】
エステル油としては、モノエステル油、又は分子内に2以上のエステル結合を有するエステル油、油脂類の1種又は2種以上の混合物が好ましい。かかるエステル油としては、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボガド油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、メドウフォーム油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミルスチン酸ミリスチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリスリトールとヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸等の混合脂肪酸とのエステルなどが挙げられる。これらは2種以上を併用しても良い。
【0048】
エステル油の含有量は、毛髪化粧料中0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%が更に好ましく、0.01〜2質量%が特に好ましい。
【0049】
本発明の毛髪化粧料中の油性成分の含有量は、毛髪に良好な感触を与える点で0.1〜20質量%が好ましく、更に0.3〜10質量%、特に0.5〜5質量%が好ましい。
【0050】
本発明の毛髪化粧料には、更に、毛髪化粧料に一般に使用されるその他の成分を、目的に応じて配合することができる。例えば、カチオン化セルロース、ヒドロキシ化セルロース、高重合ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリンアルキルエーテル類、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド類等の非イオン界面活性剤;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、オクトピロックス等の抗フケ剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;メチルパラベン等の防腐剤;キレート剤;パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;ユーカリの極性溶媒抽出物、真珠層を有する貝殻又は真珠から得られる蛋白質又はその加水分解物、シルクから得られる蛋白質又はその加水分解物、マメ科植物の種子から得られる蛋白含有抽出物、オタネニンジン抽出物、米胚芽抽出物、ヒバマタ抽出物、ツバキ抽出物、アロエ抽出物、月桃葉抽出物、クロレラ抽出物等のエキス類;酸化チタン等のパール粉体;香料;色素;紫外線吸収剤;酸化防止剤等が挙げられる。
【0051】
本発明の毛髪化粧料は、水で20質量倍に希釈した際のpH(25℃)が2〜6であることが好ましい。この範囲であると、ヘアカラーなどの傷みを回復させる機能を有し、塗布時から乾燥後まで良好な柔軟性、滑らかな感触を付与できる機能に優れるものである。pH値は、特に3〜5、更には4〜5となるように調整するのが、傷んだ毛髪に滑り性、艶を付与する観点から好ましい。pHの調整には、無機酸、有機酸等の酸性物質、更に塩基性物質として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等も併用できる。有機酸は、前述したものが含まれる。
【0052】
本発明の毛髪化粧料の形態は、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状等、適宜選択できるが、溶剤として、水又は低級のアルコール、特に水を用いた液状のものが好ましい。低級アルコールの含有量は、5質量%以下、特に3質量%以下、中でも1質量%以下、さらに0.1質量%以下であることが好ましい。
【0053】
本発明の毛髪化粧料は、ヘアコンディショニング剤、ヘアスタイリング剤、頭皮用美容液等として用いるのが好ましい。剤型としては、ポンプスプレー、ポンプフォーム、スクイズフォームジェル、ローション、クリーム、ミルク等が挙げられる。
【0054】
つづいて、本発明の毛髪化粧料の使用方法について説明する。まず、通常のシャンプーの後すすぎを行う。その後、軽く水気を取る。このとき、髪は水が滴るほど濡れている。タオルドライをすると頭皮及び毛髪が乾燥してしまうため、タオルドライは行わない。具体的には、頭皮及び毛髪の表面に保持されている水分量が毛髪の質量に対して、0.5〜1.5倍量含む状態が好ましい。尚、タオルドライした時の水分量は毛髪の質量に対して、0.1〜0.3倍量含まれている。
【0055】
ついで、濡れたままの頭皮及び毛髪に本発明の毛髪化粧料を塗布する。本発明の毛髪化粧料を頭皮上で水に触れるとのびが良くなるので、頭皮及び毛髪に直接本発明の毛髪化粧料を塗布するとより好ましい。塗布量は、毛髪の質量に対して0.005〜0.05倍程度とすると好ましい。
【0056】
頭皮及び毛髪に塗布された毛髪化粧料は、頭皮及び毛髪に残存する水分に触れることで、粘性が低下し、毛髪から頭皮へと濡れ広がる。したがって、頭皮及び毛髪全体にわたってのび広がり、本発明の毛髪化粧料が塗布されることとなる。
【0057】
ついで、すすぎをせずにタオルドライを行う。これにより、頭皮の水分を除去するとともに、毛髪については水が滴らない程度に水気を切る。その後、自然に、あるいは、ドライヤー等により加熱して、毛髪を乾燥させる。
【0058】
このように本発明の毛髪化粧料によれば、水に接触させたときのびが良くなるため、濡れた頭皮及び毛髪に塗布すると、毛髪から頭皮にわたって毛髪化粧料がのび広がり、髪が絡まない。したがって、頭皮及び毛髪に均一かつ効果的に塗布することができ、頭皮ケアと毛髪ケアとの両立を図ることができる。具体的な頭皮ケアとしては、保湿効果、柔軟効果、フケ防止効果、育毛効果等がある。また、毛髪ケアとしては、まとまり性、指通り性、保水性、補修性の向上等がある。
【実施例】
【0059】
(分析条件)
実施例1の毛髪化粧料は、以下の条件で分析した。
1.pH
5質量%に濃度を調整し、25℃でpH計(製品名PH METER HM−30、東芝DKK(株)社製)により測定した。
2.粘度
B型粘度計(製品名:VISCOMETER TV−10、製造元:TOKI SANGYO Co.LMD.)、ロータNo.3、30℃、回転数12rpmで測定した。
【0060】
表1に実施例1〜9、および比較例1〜7を示す。
表1に示す毛髪化粧料は、いずれも、化粧用濃グリセリン、90%乳酸(ムサシノ乳酸(登録商標)90F、武蔵野化学研究所製)、水を60〜70℃で混合して水相を調製した後、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド(アミデットAPA−22、花王社製)もしくはステアリン酸ジメチルアミノプロプルアミド(NIKKOLアミドアミンMPS、ニッコーケミカルズ社製)とステアリルアルコール(カルコール8098、花王社製)もしくはベヘニルアルコール(カルコール220−80、花王社製)とを85℃で混合して調製した油相を添加して、60〜70℃、200rpm、15分間攪拌、乳化した。得られた乳化相に、ジメチルポリシロキサン(KHS−3、信越化学工業社製)、アミノ変性シリコーン(XS65−C3002、日硝産業社製)に精製水を室温で添加して作成したシリコーン分散相を添加し、加熱を停止して、150rpmで10分間攪拌した。さらに、適量の水で溶解したメチルパラベンを添加し、10分間攪拌した。香料を添加し、全体で1000gとなるように水を加え攪拌して毛髪化粧料を調製した。
【0061】
<評価方法>
日本人女性パネラー5名が次の方法で処理しながら官能評価を行った。
下記の組成の標準シャンプー5gを用いて洗髪した後、髪から水が滴る程度に濡れたままの状態で表1に示す毛髪化粧料を5g塗付し、頭皮と毛髪全体に十分に馴染ませた後、タオルドライを行い、ドライヤーで乾燥させた。塗布時の髪への伸び広がりの良さ、頭皮へ行き渡りやすさ、塗布時の毛髪の絡まりにくさ、塗布時の毛髪のなめらかさ、塗布後の髪のべたつきのなさ、塗布後の頭皮のべたつきのなさ、乾燥後の髪のなめらかさ、乾燥後の髪のべたつきのなさ、乾燥後の頭皮のべたつきのなさ、使用後の頭皮の潤い、使用後の頭皮の柔軟性について官能評価し、下記の基準で判定した。
・標準シャンプーの処方(pH7.0)
25%ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩
62.0%
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3%
エデト酸二ナトリウム 0.15%
安息香酸ナトリウム 0.5%
塩化ナトリウム 0.8%
75%リン酸 適量
香料、メチルパラベン 適量
精製水 残量
<評価基準>
各項目の効果を0点(効果なし)〜5点(効果あり)で評価し、5名の合計を評価得点とした。
【0062】
【表1】

【0063】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び水を含有し、成分(A)と成分(C)との質量割合が(C)/(A)=5〜40であり、濡れた頭皮及び毛髪に塗布される毛髪化粧料。
(A)第3級アミン化合物又はその塩から選ばれるカチオン界面活性剤
0.3〜1質量%
(B)炭素数14〜22である脂肪族アルコール 0.6〜4質量%
(C)多価アルコール 1.5〜20質量%
【請求項2】
成分(C)が、水酸基を2個以上有するグリコール類、グリセリン、及び糖類のいずれかである請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
成分(A)が、アルキルアミドアミン又はその塩である請求項1又は2記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
更に有機カルボン酸又はその塩を含有する請求項1乃至3いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の毛髪化粧料を濡れた頭皮及び毛髪に塗布するステップと、
塗布された毛髪化粧料を洗い流さずに頭皮及び毛髪を乾燥するステップと、
を含む毛髪化粧料の使用方法。

【公開番号】特開2012−102064(P2012−102064A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254216(P2010−254216)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】