説明

毛髪化粧料入りチューブ容器

【課題】 毛髪化粧料に適した充分な酸素バリア性を備えると共に、押圧後に元の形状に戻らないような優れた変形性を備える毛髪化粧料入りチューブ容器を提供する。
【解決手段】 毛髪化粧料を内容したチューブ容器であって、最内側層がシーラント層(LDPE層)で外側層が耐水性の層(LDPE層)である多層の合成樹脂層からなり、中間層にポリグリコール酸層を設けるとともに、毛髪化粧料が、水性媒体中に0.01重量%〜3重量%のアンモニアおよび酸化染料を含有する。また多層の合成樹脂層は、少なくとも1層のポリアミド系樹脂層(Ny層)を有していることが好ましく、少なくとも1層のエチレンービニル共重合体からなる樹脂層(EVOH層)を有していても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料を内容した毛髪化粧料入りチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪化粧料を保存するにあたっては、空気中の酸素等による変質を防ぐため、気体を通しにくいバリア性の高い容器に保存する必要がある場合がある。
一方、毛髪の量には個人差があり、また、部分染めなども考えると毛髪化粧料の使用量は一定ではない。
ところが、粘度の低い毛髪化粧料では、適量を取り出すのが難しく、また、ボトル容器では取り出した分だけ中に大気が入るので酸化が進み易い。したがって、容器内の全量を一度に使い切るのが通常の使用法であった。
【0003】
ここで、毛髪化粧料をクリーム状としチューブ容器に入れることで、使用したい量だけ取り出したときにチューブが変形することにより内容積が減り、容器内に大気が入ることがなくなる。結果として大気中の酸素による酸化の進行が遅れるので、使用しなかった残りを保存して次回に使用することができる。
【0004】
しかし、長期間保存のために充分なバリア性、特に酸素バリア性を得ようとすると、樹脂の厚さを厚くする必要があり、変形させることが難しくなる。また、保香性や酸素ガスバリア性に優れたポリグリコール酸層を内外層の柔軟な熱可塑性樹脂層によって包み込んだ層構成を有し、練り歯磨きなどのペースト状物を充填収容した、押圧変形させることが可能な多層のスクイーズ容器(チューブ容器)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−267431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスクイーズ容器では、押圧変形を加えて内容物を絞り出した後に押圧を解除した際に、元の形状に戻ろうとして空気を吸引することにより内容物を劣化させるといった現象を十分に防ぐことができず、特に水性媒体中に0.01重量%〜3重量%のアンモニアおよび酸化染料を含有する毛髪化粧料を収容する場合には、このような毛髪化粧料は、僅かな空気中の酸素によっても酸化によって劣化しやすいものであることから、元の形状に戻らないような押圧後の変形がさらに容易な毛髪化粧料用のチューブ容器の開発が望まれている。
【0006】
本発明では毛髪化粧料に適した充分な酸素バリア性を備えると共に、押圧後に元の形状に戻らないような優れた変形性を備える毛髪化粧料入りチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、最内側層がシーラント層であって外側層が耐水性の層である多層の合成樹脂層からなり、中間層にポリグリコール酸層(以下「PGA層」とする。)を設けたチューブ容器に、水性媒体中に0.01重量%〜3重量%のアンモニアおよび酸化染料を含有する毛髪化粧料を内容する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の毛髪化粧料入りチューブ容器によれば、毛髪化粧料に適した充分な酸素バリア性を備えると共に、押圧後に元の形状に戻らないような優れた変形性を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、毛髪化粧料入りチューブ容器の最内側層を構成するシーラント層は、例えばオレフィン系樹脂として好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)等からなる層である。最内側層のシーラント層によってチューブ容器の末端が封止される。
【0010】
また、本発明では、毛髪化粧料入りチューブ容器の外側層を構成する耐水性の層は、例えばオレフィン系樹脂として好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)等からなる層である。外側層の耐水性の層によってPGA層が環境に直接さらされることがないので層間剥離も起きにくい。
【0011】
さらに、本発明では、毛髪化粧料入りチューブ容器の中間層に設けられるPGA層を構成するポリグリコール酸(以下「PGA」とする。)は、下記式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
で表わされる繰り返し単位を含有する単独重合体または共重合体である。ポリグリコール酸は、グリコール酸の脱水重縮合、グリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合、グリコリドの開環重合などにより合成することができる。
【0014】
ここで、外側層の耐水性の層をLDPE層とした場合、その層の厚みは内層のPGA層などを保護するためには40μm以上あるのが好ましい。また、PGA層は10μm以上の厚みとすることで、充分な酸素バリア性を確保することができ好ましい。さらに、最内側層のシーラント層をLDPE層とした場合、40μm以上の厚みを有することで、充分な封止が得られる。
【0015】
チューブ容器として実用的なものとするには押したときに変形する柔らかさが必要だが、そのためには多層の樹脂層の全厚が全部で900μmを超えないのが好ましい。一方、全体を150μm以下とすると、破れやすくなり、強い衝撃を受けたり表面が擦れることで内容物の洩れに至る場合もある。
【0016】
以上述べた点などから、外側層のLDPE層の厚みは40μm〜400μm、PGA層の厚みは10μm〜300μm、最内側層のLDPE層の厚みは40μm〜400μmとし、かつ150μm〜900μmの全厚とするのが好ましい。
【0017】
ここで、内容物の影響による層間剥離を減少させるために、例えば最内側層のLDPE層とPGA層との間に、耐内容物層として、少なくとも1層のポリアミド系樹脂層や、少なくとも1層のエチレンービニル共重合体(EVOH)からなる樹脂層を挟みこむことが好ましい。
【0018】
ポリアミド系樹脂層は、好ましくはナイロン(Ny)、特に6−ナイロン、66−ナイロン、MX−ナイロン等を用いて形成することができる。
【0019】
この場合は外側層のLDPE層の厚みは40μm〜400μm、PGA層の厚みは10μm〜300μm、耐内容物層がNyである場合はその厚みは10μm〜200μm、EVOHである場合はその厚みは10μm〜200μm、最内層のLDPE層の厚みは40μm〜400μmとするのが好ましい。この場合も、150μm〜900μmの全厚とするのが好ましい。
【0020】
また、EVOH層をPGA層の外側に設けることもできる。この場合はEVOH層があることで酸素バリア性能が更に向上するので、充分な酸素バリア性を保持しつつ全体の厚みを減らすことができる。
【0021】
さらに、EVOH層でPGA層を挟んで「LDPE/EVOH/PGA/EVOH/LDPE」としてももちろん良い。この場合はEVOH層が耐内容物バリア性および耐環境性を有すると共にPGA層と協働して酸素バリア性を促進するので、厚みを薄くすることと内容物の保存安定性の高いレベルでの両立がはかれる。また、EVOH層の酸素バリア性が低下してもPGA層では維持されるので高い保存安定性が維持される。
【0022】
さらにまた、PGA層の水分劣化を防ぐために、少なくとも1層の環状オレフィン系樹脂からなる樹脂層を設けることが好ましい。環状オレフィン系樹脂からなる樹脂層は、例えばノルボルネン系モノマーの開環重合体、該開環重合体の水素添加物等を用いて形成することができ、好ましくは、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)等を用いて形成することができる。
【0023】
なお、本発明の毛髪化粧料入りチューブ容器では、最内側層および最外側層の双方に、オレフィン系樹脂として、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)を設けることが好ましい。
【0024】
本発明のチューブ容器は、水性媒体中に0.01重量%〜3重量%のアンモニアおよび酸化染料を含有する毛髪化粧料を収容するものであり、特に二剤式の染毛剤の第1剤を収容するのに好適に用いることが出来る。
【0025】
二剤式の染毛剤は、第1剤が染料中間体(アルカリ剤)、第2剤が酸化剤であり、これらを混合して使用する。本発明のチューブ容器は第1剤を収容するのに好適である。第1剤の具体的な成分としては、アンモニア又はアンモニウム塩、炭酸塩(アンモニウム塩)、繊維金属塩、キレート剤、アルカノールアミン類などのアルカリ剤、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類等の酸化型の顕色物質、該顕色物質のカップリング剤などが挙げられる。これらの成分を含む第1剤は、クリーム状の性状を呈するように調製でき、チューブ容器に収容することで使用時に適量を取り出すことが容易にできる。本発明のチューブ容器は充分なバリア性があることから、使用前に空気中の酸素等で染毛剤が発色・劣化することを防ぐことが出来る。
【0026】
以下、実施態様につき図面を参照して具体的に説明する。
第1実施形態の毛髪化粧料入りチューブ容器は、図1(a),(b)に示すチューブ本体2とキャップ3とからなる毛髪化粧料を内容するチューブ容器1であって、多層の合成樹脂層からなるチューブ本体2の層構成が、基本層構成として、図2に示すように、LDPE/PGA/LDPEなる3層で構成されている。最内側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み110μm、中間層のポリグリコール酸(PGA)層は厚み90μm、最外側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み250μmである。
【0027】
第2実施形態の毛髪化粧料入りチューブ容器は、多層の合成樹脂層からなるチューブ本体2の層構成が、PGA層とシーラント層との間に経時による層間剥離(デラミネーション)がある場合のデラミ対策として、図3(a),(b)に示すように、LDPE/PGA/Ny/LDPEなる4層、或いはLDPE/PGA/EVOH/LDPEなる4層で構成されている。最内側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み100μm、耐内容物層としてのナイロン(Ny)層、或いはエチレンービニル共重合体(EVOH)層は厚み30μm、中間層のポリグリコール酸(PGA)層は厚み70μm、最外側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み250μmである。
【0028】
第3実施形態の毛髪化粧料入りチューブ容器は、多層の合成樹脂層からなるチューブ本体2の層構成が、酸素バリア層を追加する目的で、図4に示すように、LDPE/EVOH/PGA/LDPEなる4層で構成されている。最内側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み100μm、中間層のポリグリコール酸(PGA)層は厚み30μm、エチレンービニル共重合体(EVOH)層は厚み90μm、最外側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み230μmである。
【0029】
第4実施形態の毛髪化粧料入りチューブ容器は、多層の合成樹脂層からなるチューブ本体2の層構成が、酸素バリア層と耐内容物バリア層とを追加する目的で、図5(a),(b)に示すように、LDPE/EVOH/PGA/EVOH/LDPEなる5層、或いはLDPE/EVOH/PGA/Ny/LDPEなる5層で構成されている。最内側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み100μm、ナイロン(Ny)層、或いはエチレンービニル共重合体(EVOH)層は厚み20μm、中間層のポリグリコール酸(PGA)層は厚み30μm、エチレンービニル共重合体(EVOH)層は厚み90μm、最外側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み210μmである。
【0030】
第5実施形態の毛髪化粧料入りチューブ容器は、多層の合成樹脂層からなるチューブ本体2の層構成が、2層のPGA層でEVOH層を保護する目的で、図6に示すように、LDPE/PGA/EVOH/PGA/LDPEなる5層で構成されている。最内側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み100μm、内側のポリグリコール酸(PGA)層は厚み30μm、エチレンービニル共重合体(EVOH)層は厚み90μm、外側のポリグリコール酸(PGA)層は厚み30μm、最外側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み200μmである。
【0031】
第6実施形態の毛髪化粧料入りチューブ容器は、多層の合成樹脂層からなるチューブ本体2の層構成が、PGA層の水分劣化を防止する目的で、環状オレフィン系樹脂からなる樹脂層を有しており、図7に示すように、LDPE/PGA/COC/LDPEなる4層で構成されている。最内側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み100μm、水分バリア層としての環状オレフィン共重合体(COC)層は厚み30μm、中間層のポリグリコール酸(PGA)層は厚み70μm、最外側層の低密度ポリエチレン(LDPE)層は厚み250μmである。
【0032】
これらの第1〜第6実施形態の毛髪化粧料入りチューブ容器1において、チューブ本体2の最内側層はシーラント層として機能し、末端部1a(図1参照)でシールされる。最外側層のLDPE層には図示しない印刷が施されている。
【0033】
チューブ容器1には、表1に掲げた成分からなる二剤式染毛剤の第1剤が収容される。
【0034】
【表1】

【0035】
酸化剤である第2剤(過酸化水素)は例えば厚み450μmのポリエチレンで構成される図示しないチューブ容器に収容される。
使用に当たっては、チューブ容器1より図示しないトレーに第1剤を適量取り出し、チューブ容器より取り出した第2剤とトレー上で混合する。混合し発色した剤を図示しないブラシを用いて髪の毛に塗布する。
この際、第1剤が適度の粘性を有し、チューブ容器1に内容されていることから、必要量だけトレー上に取り出すのが容易になる。
【0036】
必要量だけ取り出した後チューブ容器1に残っている第1剤はそのまま保管され、後日再び使用することになる。
保管されているとき、用いられている樹脂層が上記の構成および厚みであることにより、チューブ容器1は変形して内容積が減少した状態を維持している。このとき、チューブ容器1内には第1剤のみが存するか、第1剤に加えわずかの大気が存在するのみである。このことと、充分な酸素バリア性を有する層構成を採用したこととにより、チューブ容器1内に残っている第1剤が、大気中の酸素と接して発色する可能性を最小限のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の好ましい第1〜第5実施形態に係る毛髪化粧料入りチューブ容器の基本構成を示す(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る毛髪化粧料入りチューブ容器の図1(b)のA部における層構成を説明する拡大断面図である。
【図3】(a),(b)は、第2実施形態に係る毛髪化粧料入りチューブ容器の図1(b)のA部における層構成を説明する拡大断面図である。
【図4】第3実施形態に係る毛髪化粧料入りチューブ容器の図1(b)のA部における層構成を説明する拡大断面図である。
【図5】(a),(b)は、第4実施形態に係る毛髪化粧料入りチューブ容器の図1(b)のA部における層構成を説明する拡大断面図である。
【図6】第5実施形態に係る毛髪化粧料入りチューブ容器の図1(b)のA部における層構成を説明する拡大断面図である。
【図7】第6実施形態に係る毛髪化粧料入りチューブ容器の図1(b)のA部における層構成を説明する拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 毛髪化粧料入りチューブ容器
2 チューブ本体
2a チューブ本体の末端部
3 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪化粧料を内容したチューブ容器であって、最内側層がシーラント層で外側層が耐水性の層である多層の合成樹脂層からなり、中間層にポリグリコール酸層を設けるとともに、上記毛髪化粧料が、水性媒体中に0.01重量%〜3重量%のアンモニアおよび酸化染料を含有する毛髪化粧料入りチューブ容器。
【請求項2】
上記多層の合成樹脂層は、少なくとも1層のポリアミド系樹脂層を有する請求項1記載の毛髪化粧料入りチューブ容器。
【請求項3】
上記多層の合成樹脂層は、少なくとも1層のエチレンービニル共重合体からなる樹脂層を有する請求項1または2記載の毛髪化粧料入りチューブ容器。
【請求項4】
上記多層の合成樹脂層は、少なくとも1層の環状オレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の毛髪化粧料入りチューブ容器。
【請求項5】
上記多層の合成樹脂層は、最内側層および最外側層にオレフィン系樹脂からなる樹脂層を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の毛髪化粧料入りチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−22571(P2007−22571A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205225(P2005−205225)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】