説明

毛髪化粧料

【課題】保存安定性が良く、損傷した毛髪を修復し、毛髪に滑らかさを付与する効果が高い酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】下記の一般式(I)
【化1】


〔式中、Rは炭素数10〜22の飽和または不飽和のアルキル基で、nは1〜5の整数である〕で表されるアルキルグルコシドを0.1〜2.0質量%とセテアリルアルコールを0.4〜12質量%含有することによって、酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料を構成する。アルキルグルコシドはセテアリルグルコシドが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縮毛矯正剤やパーマネントウェーブ剤、シャンプー、コンディショナーなどの酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料に関し、さらに詳しくは、保存安定性が良く、損傷毛髪を修復し、毛髪表面の摩擦係数を低下させ、毛髪に滑らかさを付与することができる毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
縮毛矯正やパーマネントウェーブ処理などの化学処理によって、毛髪はキューティクルが損傷し、毛髪表面が脱脂されて親水化することで、艶や滑らかさを失う。そこで従来から、パーマ剤やシャンプー、コンディショナーなどの毛髪化粧料に、加水分解タンパク質やカチオン化セルロース、シリコーンなどを配合することで、パーマや染毛などの化学的処理、および洗髪やブラッシング、ヘアドライヤーなどの物理的処理による毛髪の損傷を防止し、損傷した毛髪を回復させ、毛髪に滑らかさを与える試みがなされてきた。
【0003】
特に、特許第3446980号公報(特許文献1)に係るシリル化ペプチドとシリコーンを配合した毛髪化粧料や、特許第3516276号公報(特許文献2)係るシリル化ペプチドとカチオン性界面活性剤を配合した毛髪化粧料は、毛髪の損傷を防止し、毛髪に滑らかさを付与することができる。
【0004】
しかしながら、シリル化ペプチドを配合した縮毛矯正剤やコンディショナーなどのO/W乳化型毛髪化粧料は、保存安定性が悪く、油相と水相の分離が生じるため、毛髪に処理した際に十分な効果を発揮できないという問題があった。
【0005】
また、シャンプーなどのO/W乳化型ではない毛髪化粧料においても、シリル化ペプチドを配合したものは、シリル化ペプチドのシラノール基同士の共重合による不溶物の発生が原因で、シリル化ペプチド本来の効果が十分に発揮出来ず、毛髪に滑らかさを与えることができない場合もあった。
【特許文献1】特許第3446980号公報
【特許文献2】特許第3516276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、保存安定性が良く、損傷した毛髪を修復し、毛髪に滑らかさを付与する効果が高い酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため研究を行った結果、アルキルグルコシドとセテアリルアルコールを含有した縮毛矯正剤やパーマネントウェーブ剤、シャンプー、コンディショナーなどの毛髪化粧料が、保存安定性が良く、損傷した毛髪を修復し、さらに毛髪表面の摩擦係数を低下させ、毛髪に滑らかさを付与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、アルキルグルコシドとセテアリルアルコールを含有することを特徴とする酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の毛髪化粧料は、保存安定性が良く、損傷した毛髪を修復し、さらに毛髪表面の摩擦係数を低下させ、毛髪に滑らかさを付与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の毛髪化粧料に用いるアルキルグルコシドは、例えば、下記の一般式(I)
【化1】

〔式中、Rは炭素数10〜22の飽和または不飽和のアルキル基で、nは1〜5の整数である〕で表され、グルコースまたはポリグルコースに飽和または不飽和のアルキル基がエーテル結合したものである。このエーテル結合は切断されにくいため、アルキルグルコシドは乳化剤として安定的に機能を発揮できる。
【0011】
アルキルグルコシドにおいて、グルコースの重合度は1〜5であり、アルキル基の炭素数は10〜22が好ましく、16〜22がより好ましい。グルコースの重合度とアルキル基の炭素数が上記範囲外の場合には、本発明の毛髪化粧料を構成するために必要な親水基と疎水基のバランスが崩れてしまうため、毛髪に十分な滑らかさを付与することができない恐れがある。また、本発明の毛髪化粧料には単一物質のアルキルグルコシドを用いてもよいし、グルコースの重合度やアルキル基の異なるアルキルグルコシドを混合して用いてもよいが、セテアリルグルコシドを用いるのが最も好ましい。
【0012】
アルキルグルコシドの毛髪化粧料中での配合量は、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.2〜1.5質量%がより好ましい。配合量が上記範囲より少ない場合には、毛髪に滑らかさを付与する効果が十分に得られない。一方、配合量を上記範囲より増加させても、毛髪に滑らかさを付与する効果は上記範囲の場合と同様であるため、配合量に見合うだけの効果が得られない。
【0013】
また、セテアリルアルコールの毛髪化粧料中での配合量は、0.4〜12質量%であることが好ましく、0.8〜10質量%がより好ましい。配合量が上記範囲より少ない場合には、毛髪に滑らかさを付与する効果が十分に得られず、配合量が上記範囲より多い場合には、毛髪にべとつきを与え、本発明の毛髪化粧料が有する毛髪に滑らかさを付与する効果を損なう恐れがある。
【0014】
なお、本発明に用いるアルキルグルコシドとセテアリルアルコールは、組成物として市販されているものも用いることができ、例えば、セピック社よりモンタノブ68の商品名で販売されている混合組成物などが挙げられる。
【実施例】
【0015】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。なお、実施例や比較例中における各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示す。また、実施例に先立って、実施例の縮毛矯正剤、シャンプー、コンディショナーによる処理で使用した損傷毛髪の作製方法および毛髪表面の滑らかさと損傷度の評価方法、調製した毛髪化粧料の保存安定性評価方法を記す。
【0016】
〔損傷毛髪の作製方法〕
長さ13cmで重さが2gの毛束を作製し、2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中ですすぎ、ドライヤーで乾燥した。この毛束を、40℃に保った6%過酸化水素水と2%アンモニア水の1:1(質量比)混合液のブリーチ剤中に1時間浸漬し、水道水流水中ですすいだ後、室温で風乾して毛髪を脱色処理した。この脱色処理工程を3度繰り返した毛束を、以下の実施例や比較例で損傷毛髪として使用した。
【0017】
〔毛髪表面の滑らかさの評価〕
各毛髪化粧料で処理した毛髪20本をスライドグラスに向きをそろえて固定することで測定用試料を作製した。なお、測定用試料は、各毛髪化粧料に対して、20枚ずつ作製した。次に、摩擦感テスターKSE-SE(カト−テック社製)を用いて、摩擦静荷重25gf、試料台移動速度0.5mm/sec.、測定距離20mm、20℃、相対湿度50±1%の条件で、各測定用試料の平均摩擦係数を測定した。なお、平均摩擦係数が低いほど、毛髪の表面が滑らかであることを示している。
【0018】
〔毛髪表面の損傷度の評価〕
走査型電子顕微鏡(SEM) 日本電子(株)製 JSM−5800LVで、各毛髪化粧料で処理した毛髪の表面状態を観察した。なお、毛髪表面のキューティクルのめくれ(リフトアップ)が生じていない状態ほど、毛髪の損傷度が低いことを意味している。
【0019】
〔毛髪化粧料の保存安定性の評価〕
各毛髪化粧料を50℃恒温下で1ヶ月間保存した時の毛髪化粧料の様相を目視により観察した。評価基準は下記のとおりである。
【0020】
評価基準
++:油相と水相に分離している
+:乳化状態を維持しているが、凝集物が生じている
−:均一な乳化状態である
【0021】
実施例1
表1に示す組成の縮毛矯正剤第1剤と第2剤を調製し、前記損傷毛髪に縮毛矯正を施術した後の毛髪の滑らかさと損傷度を比較評価した。また、それぞれ縮毛矯正剤の保存安定性試験を行った。なお、比較例1および2では乳化剤として、アルキルグルコシドの代わりにポリオキシエチレン(33)セテアリルエーテルを用いた。さらに、比較例2には、毛髪に滑らかさを付与する効果が高いシリル化加水分解大豆タンパクを配合した。
【0022】

【表1】

【0023】
上記縮毛矯正剤による縮毛矯正処理は下記のように行った。すなわち、損傷毛髪の毛束に各縮毛矯正剤第1剤2gを均一に塗布した後、各毛束をラップで覆い40℃で20分間放置した。その後、ラップを外し、各毛束を水道水流水中で1分間すすぎ、タオルドライ後、ヘアドライヤーで適度に乾燥させ、180℃に設定した高温整髪用アイロンにより処理をした。次に、上記の第1剤処理を行った毛束に各縮毛矯正剤第2剤2gを均一に塗布し、ラップで覆い40℃で20分間放置した。その後、ラップを外し、各毛束を水道水流水中で1分間すすぎ、タオルドライ後、ヘアドライヤーで乾燥させた。
【0024】
上記の縮毛矯正処理を行った各毛束の毛髪表面の滑らかさと損傷度、縮毛矯正剤の保存安定性を前記方法により評価した。
【0025】
毛髪表面の摩擦係数の評価結果を表2にそれぞれ平均値で示す。
【0026】
【表2】

【0027】
表2に示したように、セテアリルグルコシドとセテアリルアルコールを配合した縮毛矯正剤で処理をした毛髪表面の摩擦係数は、他の縮毛矯正剤で処理したものより低く、本発明の縮毛矯正剤が毛髪の表面を滑らかにすることが確認できた。
【0028】
また、毛髪表面の損傷度の評価結果を図1〜3に示す。
【0029】
図1〜3に示したように、セテアリルグルコシドとセテアリルアルコールを配合した縮毛矯正剤で処理した毛髪表面のキューティクルのみがリフトアップしていなく、本発明の縮毛矯正は毛髪に与える損傷が低いことが確認できた。
【0030】
さらに、調製した上記縮毛矯正剤の保存安定性の評価結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
表3に示したように、実施例1と比較例1の縮毛矯正剤は、第1剤および第2剤共に保存安定性に優れていたのに対して、比較例2の縮毛矯正剤は保存安定性が悪かった。
【0033】
これらの結果より、本発明のアルキルグルコシドとセテアリルアルコールを配合した毛髪化粧である縮毛矯正剤は、毛髪の損傷を防止し、毛髪に滑らかさを付与することが明らかとなった。また、その効果は、毛髪に滑らかさを付与する効果が高いと言われているシリル化加水分解大豆タンパク配合品より良かった。さらに、本発明の縮毛矯正剤は保存安定性にも優れていた。
【0034】
実施例2
表4に示す組成の3種類のシャンプーを調製し、各シャンプーを用いて損傷毛髪の毛束を洗浄した。つまり、各シャンプーを水で10倍に希釈した溶液に毛束を浸漬(浴比1:20)し、40℃で10分間振とうした後、毛束を水道水流水中で1分間すすぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。この工程を5回繰り返した後、洗浄後の毛髪表面の滑らかさおよび損傷度について評価した。また、各シャンプーの保存安定性も評価した。
【0035】
【表4】

【0036】
上記のシャンプー処理を行った各毛束の毛髪表面の滑らかさと損傷度、シャンプーの保存安定性を前記方法により評価した。
【0037】
毛髪表面の摩擦係数の評価結果を表5にそれぞれ平均値で示す。
【0038】

【表5】

【0039】
表5に示したように、セテアリルグルコシドとセテアリルアルコールを配合したシャンプーで処理をした毛髪表面の摩擦係数は、他のシャンプーで処理したものより低く、本発明のシャンプーが毛髪の表面を滑らかにすることが確認できた。
【0040】
また、毛髪表面の損傷度の評価結果を図4〜6に示す。
【0041】
図4〜6に示したように、セテアリルグルコシドとセテアリルアルコールを配合したシャンプーで処理した毛髪表面のキューティクルのみがリフトアップしていなく、本発明のシャンプーは毛髪の損傷を修復していることが確認できた。
【0042】
さらに、調製した上記シャンプーの保存安定性の評価結果を表6に示す。
【0043】
【表6】

【0044】
表6に示したように、実施例2と比較例3のシャンプーは、保存安定性に優れていたのに対して、比較例4のシャンプーは保存安定性が悪かった。
【0045】
これらの結果から、本発明のアルキルグルコシドとセテアリルアルコールを配合した毛髪化粧であるシャンプーは、毛髪の損傷を修復し、毛髪に滑らかさを付与することが明らかとなった。また、その効果は、毛髪に滑らかさを付与する効果が高いと言われているシリル化加水分解小麦タンパク配合品より良かった。さらに、本発明のシャンプーは保存安定性にも優れていた。
【0046】
実施例3
表7に示す組成の3種類のコンディショナーを調製し、損傷毛髪の毛束にコンディショナー処理をした。つまり、コンディショナー5gをそれぞれ毛束に均一に塗布した。次に、毛束をラップで覆い40℃で10分間放置した後、ラップを外し、毛束を水道水流水中で1分間すすぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。この工程を5回繰り返した後、前記方法により、毛髪表面の滑らかさと損傷度、コンディショナーの保存安定性を評価した。
【0047】
【表7】

【0048】
上記のコンディショナー処理を行った各毛束の毛髪表面の滑らかさと損傷度、コンディショナーの保存安定性を前記方法により評価した。
【0049】
毛髪表面の摩擦係数の評価結果を表8にそれぞれ平均値で示す。
【0050】
【表8】

【0051】
表8に示したように、セテアリルグルコシドとセテアリルアルコールを配合したコンディショナーで処理をした毛髪表面の摩擦係数は、他のコンディショナーで処理したものより低く、本発明のコンディショナーが毛髪の表面を滑らかにすることが確認できた。
【0052】
また、毛髪表面の損傷度の評価結果を図7〜9に示す。
【0053】
図7〜9に示したように、セテアリルグルコシドとセテアリルアルコールを配合したコンディショナーで処理した毛髪表面のキューティクルのみがリフトアップしていなく、本発明のコンディショナーは毛髪の損傷を修復していることが確認できた。
【0054】
さらに、調製した上記コンディショナーの保存安定性の評価結果を表9に示す。
【0055】
【表9】

【0056】
表9に示したように、実施例3と比較例5のコンディショナーは、保存安定性に優れていたのに対して、比較例6のコンディショナーは保存安定性が悪かった。
【0057】
これらの結果から、本発明のアルキルグルコシドとセテアリルアルコールを配合した毛髪化粧であるコンディショナーは、毛髪の損傷を修復し、毛髪に滑らかさを付与することが明らかとなった。また、その効果は、毛髪に滑らかさを付与する効果が高いと言われているシリル化加水分解シルク配合品より良かった。さらに、本発明のコンディショナーは保存安定性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1の縮毛矯正剤で処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図2】比較例1の縮毛矯正剤で処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図3】比較例2の縮毛矯正剤で処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図4】実施例2のシャンプーで処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図5】比較例3のシャンプーで処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図6】比較例4のシャンプーで処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図7】実施例3のコンディショナーで処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図8】比較例5のコンディショナーで処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像
【図9】比較例6のコンディショナーで処理をした損傷毛髪の表面のSEM画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルグルコシドとセテアリルアルコールを含有することを特徴とする酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料。
【請求項2】
アルキルグルコシド0.1〜2.0質量%とセテアリルアルコール0.4〜12質量%を含有する請求項1記載の酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料。
【請求項3】
アルキルグルコシドが、下記の一般式(I)
【化1】

〔式中、Rは炭素数10〜22の飽和または不飽和のアルキル基で、nは1〜5の整数である〕で表されるアルキルグルコシドである請求項1または2に記載の酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料。
【請求項4】
アルキルグルコシドが、セテアリルグルコシドであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化型染毛剤を除く毛髪化粧料。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−208101(P2008−208101A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48503(P2007−48503)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】