説明

毛髪洗浄剤組成物

【課題】洗髪におけるすすぎ時の指通りが良好であると共に、洗髪後の毛髪のさらさら感を良好に長時間持続させることができ、かつ高温保存安定性にも優れた、粉体含有の毛髪洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)洗浄剤成分、
(B)重量平均分子量90万〜260万のジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、
(C)有機性粉体、
(D)25℃における動粘度が500万mm2/s以上のジメチルポリシロキサン
を含有し、(B)/(C)の質量比が0.2〜1であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗髪のすすぎ時の指通りが良好であり、かつ毛髪のさらさら感を長時間持続させることができる、リンスインシャンプー等として好適な毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リンスインシャンプーでは、洗髪のすすぎ時のきしみのなさや、乾燥後の毛髪や頭皮にべたつきがない良好なさらさら感、指通りのよさが求められている。従来品は乾燥直後のさらさら感や指通りのよさは良好であっても、次回の洗髪までのさらさら感の持続や皮脂の分泌による毛髪や頭皮のべたつきのなさの持続性に不満があった。
【0003】
従来技術として、紛体やシリコーン類を配合した洗浄剤が特許文献1〜6に提案されている。しかし、粉体配合製剤で毛髪を洗浄した場合、粉体によりすすぎ時の髪の指通りの低下が生じたり、きしみにつながるため不充分であった。一方、シリコーン類の添加により髪の滑沢性は得られるが、経時でのべたつきやシリコーンの分離につながるといった不具合となるという問題があった。また、水不溶性粉体を配合すると、特に40℃程度の高温で保存した場合、粉体の沈降及び凝集による不均一化が生じやすいという不具合があった。なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−203931号公報
【特許文献2】特開平05−194157号公報
【特許文献3】特開平05−310539号公報
【特許文献4】特開平6−80559号公報
【特許文献5】国際公開第09/016905号パンフレット
【特許文献6】特表2005−511583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粉体を配合した毛髪洗浄剤組成物における上記課題を解消し、経時での毛髪同士の接着を抑制し、洗髪でのすすぎ時の指通りが良好であると共に、毛髪のさらさら感を長時間持続させることができ、かつ製剤の高温保存安定性にも優れた毛髪洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)洗浄剤成分、
(B)重量平均分子量90万〜260万のジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、(C)有機性粉体、及び(D)25℃における動粘度が500万mm2/s以上のジメチルポリシロキサンを含有し、(B)/(C)の質量比が0.2〜1であることにより、すすぎ時の毛髪の指通りが良好であると共に、洗髪後の毛髪や頭皮のべたつきがなく、経時での毛髪同士の接着を抑制して、さらさら感を長時間持続させることができる毛髪洗浄剤組成物が得られ、かかる製剤は高温保存安定性にも優れることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
本発明によれば、(A)〜(D)成分を組合せて配合し、かつ(B)成分の特定のカチオン性高分子物質と(C)成分の有機性粉体とを適切な割合で併用することによって、毛髪洗浄剤組成物に粉体を配合した場合における、洗髪でのすすぎ時の毛髪の指通り低下や経時でのべたつきの発現、製剤の高温保存後の外観安定性の低下などの課題を解消して、洗髪でのすすぎ時の毛髪の指通りのよさ、洗髪後の毛髪のさらさら感及びその持続性、並びに製剤の高温保存後の良好な外観安定性のすべてを兼ね備えた、粉体含有の毛髪洗浄剤組成物を提供できる。
【0008】
本発明では、更に(E)高重合ポリエチレングリコールを配合することで、粉体配合による泡性能低下を抑制して泡立ち性をより向上できる。
【0009】
従って、本発明は、下記の毛髪洗浄剤組成物を提供する。
請求項1:
(A)洗浄剤成分、
(B)重量平均分子量90万〜260万のジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、
(C)有機性粉体、
(D)25℃における動粘度が500万mm2/s以上のジメチルポリシロキサン
を含有し、(B)/(C)の質量比が0.2〜1であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。
請求項2:
(C)有機性粉体が、ポリスチレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、及びスチレン/ジビニルベンゼン共重合体から選ばれる1種以上の樹脂からなる粉体である請求項1記載の毛髪洗浄剤組成物。
請求項3:
(A)洗浄剤成分が、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、アルカノールアミド、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の界面活性剤である請求項1又は2記載の毛髪洗浄剤組成物。
請求項4:
更に、(E)高重合ポリエチレングリコールを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の毛髪洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗髪におけるすすぎ時の指通りが良好であると共に、洗髪後の毛髪のさらさら感を良好に長時間持続させることができ、かつ高温保存安定性にも優れた、粉体含有の毛髪洗浄剤組成物を提供することができる。本発明組成物は、リンスインシャンプー等の毛髪洗浄剤として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(A)洗浄剤成分、(B)重量平均分子量が特定範囲のジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、(C)有機性粉体、(D)動粘度が特定範囲のジメチルポリシロキサンを含有し、(B)/(C)の質量比が0.2〜1であることを特徴とする。
【0012】
(A)洗浄剤成分としては、頭皮や毛髪の洗浄のために毛髪洗浄剤組成物に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが配合され、これらから選ばれる1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0013】
アニオン性界面活性剤(a1)としては、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アシル化アミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、脂肪酸石ケン、アルキルリン酸エステル塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩、N−パルミトイルグルタミン酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩、N−パルミトイルグルタミン酸塩、N−ラウロイル−N−エチルグリシン塩、N−ラウロイルザルコシン塩、N−ミリストイル−β−アラニン塩等が挙げられる。塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸であり、より好ましくは、アルカリ金属塩である。これらの中でも、アルキルスルホン酸塩、エチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が1〜5、特に1〜3のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。なお、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩のアルキル基の炭素数は10〜18が望ましい。
アニオン性界面活性剤(a1)の配合量は、組成物中5〜25%(質量%、以下同様。)、特にさらさら感及び高温安定性の点から、8〜18%が好ましい。
【0014】
両性界面活性剤(a2)としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン系活性剤、アルキルアミドプロピルベタイン等のアミドベタイン系活性剤、スルホベタイン系活性剤、ヒドロキシスルホベタイン系活性剤、アミドスルホベタイン系活性剤、ホスホベタイン系活性剤、イミダゾリニウムベタイン系活性剤、アミノプロピオン酸系活性剤、アミノ酸系活性剤等が挙げられる。これらの中では、高温安定性の点から、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが好ましい。
【0015】
両性界面活性剤(a2)の配合量は、組成物中0.5〜15%、特に2〜10%が好ましい。
【0016】
ノニオン性界面活性剤(a3)としては、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、アルカノールアミド、アルカノールグルカミド、アルキルポリグルコシド、アルキルグリセリルエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中では、E.O.付加モル数が5〜40のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、アルカノールアミド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が好ましい。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド(2E.O.)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0017】
ノニオン性界面活性剤(a3)の配合量は、組成物中0.1〜7%、特に1〜3%が、高温安定性、皮脂の可溶化力に優れているため、さらさら感の持続性の点から好ましい。
【0018】
本発明では、(A)成分としてアニオン性界面活性剤を単独で配合してもよいが、アニオン性界面活性剤(a1)と両性界面活性剤(a2)とを併用することが、高温安定性及び泡立ちの点から好ましく、これらを併用する場合の質量比は特に限定されないが、(a1)/(a2)=1〜20、特に2〜9が好適である。
とりわけ、(A)成分として、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を併用し、かつノニオン性界面活性剤を配合することが、特に毛髪のさらさら感の持続性及び高温安定性の点から、より好ましい。
【0019】
(A)成分の総配合量は、毛髪洗浄剤組成物中5〜30%が好ましく、特に泡立ち、高温安定性の点から7〜25%がより好ましい。配合量が5%未満では十分な泡立ちやさらさら感及び高温安定性が得られない場合があり、30%を超えるとすすぎ時の指通りが悪くなったり、(A)成分自体が低温で析出するおそれがある。
【0020】
(B)成分のジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体とは、ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合体であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(CTFA:Polyquaternium−7)が好ましい。
【0021】
なお、(B)成分は、共重合体のみの粉末でも溶媒(水、アルコール、多価アルコール等)に溶解又は分散した溶液を用いてもよい。
【0022】
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体中のジメチルジアリルアンモニウム塩:アクリルアミドのモル比は、10:90〜40:60が好ましく、より好ましくは15:85〜35:65の範囲である。
【0023】
また、上記共重合体の重量平均分子量は90万〜260万が好ましく、より好ましくは130万〜220万である。90万未満では、すすぎ時の毛髪同士のからまりを抑える点で不十分であり、260万を超えるとさらさら感やその持続性、高温安定性が劣り、製剤の粘度が増加し、使用性に劣る場合がある。
なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器(GPC−MALLS)を用いて測定された値であり、条件は以下の通りである(以下、同様。)。
移動相:0.3M NaClO4、NaN3水溶液カラム:TSKgelα−M 2本、プレカラム:TSKguardcolumn α、標準物質:ポリエチレングリコール
【0024】
なお、(B)成分としては、上記の特定範囲のジメチルジアリルアンモニウム塩:アクリルアミドのモル比率及び重量平均分子量である共重合体を用いることが、最も有効である。上記範囲内の共重合体は、健常な毛髪又はカラーリングなどの化学処理を行った毛髪に対して吸着性が高いとともに、毛髪に対するすすぎ時の指通りやしっとり感の付与、及び高温安定性を向上する効果が高い。
【0025】
(B)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体の市販品としては、下記のものを例示できる。
Ultimer CG−600(商品名、ナルコジャパン(株));塩化ジメチルジアリルアンモニウム:アクリルアミド(以下、DADMAC:AcAmと略す。)=30:70(モル比)、重量平均分子量220万、
カヤクリルレジンM−50A(商品名、日本化薬(株));DADMAC:AcAm=19:81(モル比)、重量平均分子量180万、
マーコート550(商品名、ナルコジャパン(株));DADMAC:AcAm=30:70(モル比)、重量平均分子量160万、
マーコートS(商品名、ナルコジャパン(株));DADMAC:AcAm=30:70(モル比)、重量平均分子量260万、
サルケアSC10(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株));DADMAC:AcAm=45:55(モル比)、重量平均分子量100万、
マーコート2200(商品名、ナルコジャパン(株));DADMAC:AcAm=30:70(モル比)、重量平均分子量90万
【0026】
(B)成分の配合量は、すすぎ時の指通りのよさの点から、組成物中0.01〜1%、特に0.03〜0.8%が好ましく、更に好ましくは0.1〜0.5%である。
【0027】
(C)成分の有機性粉体としては、水に不溶性の有機性粉体を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(C)成分の有機性粉体としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。中でも、髪や頭皮のべたつきを防止し、さらさら感を付与する点から、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ポリスチレン、ナイロン、ポリメタクリル酸メチルが好ましく、特にポリスチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ポリスチレン、とりわけスチレン/ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0028】
有機性粉体はその形状に制限はなく、球状、扁平状、板状、不定形のものでもよいが、髪や頭皮のさらさら感付与やその持続性の点から、球状がより好ましい。粉体は、多孔質あるいは無孔質でもよいが、無孔質のものがすべりがよく、より好ましい。また、中空構造のものであってもよく、表面を改質するため化学処理を施したものでもよい。
【0029】
有機性粉体の体積平均粒径は0.5〜20μmが好ましく、1〜10μmが更に好ましい。体積平均粒径が0.5μm未満では、キューティクルの厚みより小さいためさらさら感の付与が不十分となり、20μmを超えると毛髪へのきしみ感が強くなる場合がある。
なお、体積平均粒径は、MV値(Mean Volume Diameter)を意味し、体積で重み付けされた平均粒径を意味する。粒径の測定方法は、上記に定義した平均粒径を測定できるものであれば、特に限定はなく、例として、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920型)、コールカウンター(ベックマン・コールター社製、MALTISIZER 3)を用いることができるが、有機性粉体の体積平均粒径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置による測定値である(以下、同様。)。
【0030】
(C)成分としては、有機性粉体を粉末のまま用いても、有機性粉体を溶媒(水、一価アルコール、多価アルコール等)に分散した溶液を用いてもよい。
【0031】
具体的には、ガンツパール(GANZPERL) GS−0605(商品名、ガンツ化成(株)、体積平均粒径6μm、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、真球状、無孔質)、ガンツパール GS−1105(商品名、ガンツ化成(株)、体積平均粒径11μm、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、真球状、無孔質)、スチレンビーズ6μm(商品名、三好化成(株)、ポリスチレン、真球状、無孔質)、テクポリマーSBX−6(商品名、積水化成品工業(株)、体積平均粒径6μm、ポリスチレン、真球状、無孔質)、ガンツパールGPA−550(商品名、ガンツ化成(株)、体積平均粒径5μm、ナイロン12、真球状、無孔質)、ダイアミドMSP−100(商品名、ダイセル・エボニック(株)、体積平均粒径8μm、ナイロン12、球状、無孔質)、マツモトマイクロスフェアM−305(商品名、松本油脂製薬(株)、架橋アクリル、球状、無孔質)、マツモトマイクロスフェアM−306(商品名、松本油脂製薬(株)、体積平均粒径10μm、架橋アクリル、球状、無孔質)、ジュリマーMB−1(商品名、日本純薬(株)、体積平均粒径8μm、ポリメタクリル酸メチル、真球状)、ガンツパールGBM−55COS(ガンツ化成(株)、体積平均粒径8μm、アクリレーツコポリマー、真球状)等が挙げられる。
【0032】
有機性粉体の配合量は、さらさら感付与及び高温保存安定性の点から、組成物中0.1〜1%が好ましく、特に0.2〜0.7%がより好ましい。配合量が0.1%未満では、髪のさらさら感及びその持続性が満足に改善されないことがあり、1%を超えるとすすぎ時の指通りや高温保存安定性が満足に改善されない場合がある。
【0033】
(B)成分のジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体と(C)成分の有機性粉体との配合比率((B)/(C))は、質量比で0.2〜1であり、好ましくは0.2〜1.0、より好ましくは0.3〜0.7である。この範囲であると(B)成分と(C)成分の複合体の吸着量が高く、毛髪へのさらさら感の付与及びすすぎ時の指通りを満足に改善でき、高温保存安定性も良好となる。(B)/(C)が1を超えると毛髪へのさらさら感及び高温安定性に劣る場合がある。
【0034】
本発明では、その作用機序は不明であるが、上記のような(B)成分と(C)成分とを適切に組み合わせて用いると、(B)成分と(C)成分の有機性の水不溶性粉体との静電的あるいは疎水性相互作用により複合体を形成し、これが一つの要因となって、毛髪への粉体の吸着量を高めることができ、すすぎ時の指通りのよさが得られるとともに、さらさら感を付与することが推察される。
【0035】
(D)成分は、25℃における動粘度が500万mm2/s以上のジメチルポリシロキサンであり、(D)成分の配合により、良好な毛髪のさらさら感、指通りのよさを付与できる。
【0036】
(D)成分のジメチルポリシロキサンとしては、トリメチルシリル基末端ジメチルポリシロキサン、シラノール基末端ジメチルポリシロキサン等が含まれ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
ジメチルポリシロキサンは、オイルでもエマルジョンでもよく、エマルジョン化における、乳化剤や乳化方法に特に制限はなく、市販品を使用できる。なお、他のシリコーン化合物、例えば上記動粘度に満たない低粘度のジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、EO変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜、適量を、(D)成分のジメチルポリシロキサンと併用してもよい。
【0037】
(D)成分のジメチルポリシロキサンは、25℃における動粘度が500万mm2/s以上であり、好ましくは800万mm2/s以上である。動粘度の上限は特に限定されないが、3,000万mm2/s以下が好ましい。
上記したジメチルポリシロキサン動粘度の測定方法は下記の通りである(以下、同様。)。
1g/100mL濃度のジメチルポリシロキサンのトルエン溶液を作製し、下記式(1)により比粘度ηsp(25℃)を求める。次に、下記式(2)に示すHugginsの関係式に代入し、固有粘度[η]を求める。Huggins定数は、中牟田、日化、77 588[1956]に記載のものを用いる。次に、[η]を下記式(3)に示すA.Kolorlovの式に代入し、分子量Mを求める。最後に、Mを下記式(4)に示すA.J.Barryの式に代入し、ジメチルポリシロキサンの粘度ηを求める。
ηsp=(η/η0)−1 ただしη0トルエンの粘度、η=溶液の粘度 (1)
ηsp=[η]+K’[η]2 K’:Hugginsの定数 (2)
[η]=0.215×10-40.65 M:分子量 (3)
Logη=1.00+0.0123M0.5 (4)
上記η0、ηは、化粧品原料基準一般試験法粘度測定法第1法に準拠して測定したものである。
【0038】
(D)成分の配合量は、組成物中0.001〜1%、0.005〜0.5%が好ましく、0.005〜0.2%がより好ましい。配合量が0.001%未満では、髪の指通り向上効果が不充分となるおそれがあり、1%を超えると髪が油っぽくなり、べたつくおそれがある。また、高温安定性が悪くなる場合がある。
【0039】
本発明組成物には、更に(E)高重合ポリエチレングリコール(PEG)を配合することができ、これによりすすぎ時の指通りが効果的に改善できると共に、泡立ち性が高まる。
【0040】
(E)成分の高重合ポリエチレングリコールは、泡立ちの点から、平均分子量が2万以上であることが好ましく、特に泡立ち、すすぎ時の指通り、乾燥後のさらさら感の点から、2万〜800万、とりわけ50万〜600万が好ましい。平均分子量が小さすぎると仕上がり時の指通りのよさを満足に付与できないことがある。また、平均分子量が大きすぎると仕上がり時に毛髪が感触上重く感じられる場合がある。
なお、高重合ポリエチレングリコールの平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算で測定された値である。
【0041】
具体的には、ポリオックス(Polyox) WSR N−10、N−80、N−750、N−3000、205、1105、N−12K、N−60K、301、Coagulantが挙げられる。中でも、泡立ち、仕上り時の指通りの点から、ポリオックス(Polyox) WSR N−60K(平均分子量200万),ダウケミカル(株)、ポリオックス(Polyox) WSR N−12K(平均分子量100万),ダウケミカル(株)が好適に用いられる。
【0042】
(E)高重合PEGを配合する場合、その配合量は特に制限されるものではないが、泡立ち、すすぎ時の指通り、乾燥後のさらさら感の点から、組成物中0.01〜1%、特に0.05〜0.5%が好ましい。配合量が0.01%に満たないと、仕上がり時の指通りのよさを満足に改善できず、1%を超えると毛髪の仕上がり感が少し重く感じられたり、製剤粘度が向上することにより使用性が低下する場合がある。
【0043】
本発明の毛髪洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を適宜、適量併用することができる。任意の成分としては、上記(A)〜(D)成分、更には(E)成分以外のもので、例えば半極性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、ポリオール類、有機塩類、保湿剤、可溶化剤、BHTやα−トコフェロール等の酸化防止剤、トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺菌剤、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド等の粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、タンパク誘導体、動植物抽出液、ピロクトンオラミン、ジンクピリチオン等のフケ防止剤、グリチルリチン酸ジカリウム等の坑炎症剤、安息香酸及びその塩、パラベン類、ケーソンCG等の防腐剤、クエン酸、トリエタノールアミン等のpH調整剤、エチレングリコールジ脂肪酸エステル等のパール化剤、乳濁剤、ハイドロトロープ、低級アルコール、ビタミン類、揮発性油分、疎水性溶媒、希釈性溶媒、色素、香料等を任意に添加することができる。
【0044】
香料組成物は特に限定されないが、例えば、特開2006−63044号公報[表5]〜[表10]に記載された香料A、香料B、香料C、香料D等が挙げられる。本発明の毛髪洗浄剤組成物にはかかる香料組成物が毛髪洗浄剤組成物中0.005〜40%配合され得るが、好ましくは0.01〜10%配合される。
【0045】
本発明の毛髪洗浄剤組成物のpH(25℃)は、pH3〜7が好ましく、より好ましくは4〜6である。pH3未満では地肌への刺激が懸念され、7を超えると防腐力が低下し微生物が繁殖する可能性がある。なお、pHは外原規(医薬部外品原料規格)一般試験法pH測定法に準拠して測定する。
【0046】
本発明の毛髪洗浄剤組成物の粘度(25℃)は、1,000〜6,000mPa・sの範囲が好ましい。1,000mPa・s未満では使用時に手からこぼれるため使用しにくく、6,000mPa・sを超えると容器からの排出性が悪くなるおそれがある。なお、粘度は外原規一般試験法粘度測定法第2法に準拠して測定した値である。
【0047】
本発明の毛髪洗浄剤組成物はシャンプー又はリンスインシャンプーとして用いることができ、常法に基づいて調製することができる。例えば、必須成分、任意成分、及び水(残部)を混合して得ることができる。具体的には、(A)成分に(C)粉体の分散液を混合させたものに、(B)、(D)、(E)成分を混合させて得ることもできる。
【0048】
なお、(C)有機性粉体を添加する際、有機性の不溶性粉体の製剤中における沈降又は分離を抑制し、長期保存後においても粉体の分散状態が均一な状態を得るために、有機性粉体の真比重と製剤の液比重を等しくすることが有効である。そのための液比重の調製方法としては、ソルビトール、グリセリン等の多価アルコール類から選ばれる1種類又は2種類以上を組成物中0.01〜15%添加するか、(A)洗浄剤成分の界面活性剤の配合量を調整することが有効である。
【0049】
本発明の毛髪洗浄剤組成物の容器は特に限定されず、アルミニウムラミネートチューブ、EVALチューブ、アルミチューブ、ガラス蒸着プラスチックチューブ等のチューブの他、機械的又は差圧によるディスペンサー容器及びスクイーズ容器、ラミネートフィルム容器、スポイト容器、スティック容器、ボトル容器等が挙げられる。アルミニウムラミネートチューブのラミネートフィルムは、通常2層以上の多層を有し、その材質はポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、二軸延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂、紙、アルミ蒸着プラスチック等によって構成される。強度、柔軟性、耐候性等を考慮し、一般的には2〜5層のものを用いる。ボトルの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−ビニルアルコール樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド等及びガラス等を単層ないし2層以上組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。
また、重量平均分子量、体積平均粒径、動粘度等は、上記と同様の方法で測定した値である。
【0051】
[実施例1〜32、比較例1〜11]
表1〜5に示す組成の毛髪洗浄剤組成物を下記に示す方法にて調製し、以下の方法と基準で評価した。結果を表1〜5に示す。
なお、各例の組成物は。上記と同様の方法で測定したpH(25℃)がいずれも3〜7の範囲内であり、粘度(25℃)は1,000〜6,000mPa・sの範囲内であった。
【0052】
〈調製方法〉
毛髪洗浄剤組成物を常法に準じて調製し、組成物のpHを約5に調整した。
【0053】
〈評価方法及び評価基準〉
(1)毛髪のさらさら感、毛髪や頭皮のさらさら感の持続性
パーマやヘアカラーを使用してダメージヘアーと認識している30〜50代の女性20名をパネラーに対し、調製した実施例及び比較例の各毛髪洗浄剤組成物を約6g頭髪に塗布して洗浄し、使用後にドライヤーにて頭髪を乾燥させた。乾燥直後及び洗髪してから20時間後、毛髪のさらさら感について官能評価を行い、集計した結果を下記の評価基準に基づいて判定した。
評価基準:
◎:良好であると答えた人が18名以上
○〜◎:良好であると答えた人が15名以上17名以下
○:良好であると答えた人が10名以上14名以下
△:良好であると答えた人が5名以上9名以下
×:良好であると答えた人が5名未満
【0054】
(2)すすぎ時の指通りのよさ
市販の長さ30cmの10g人毛の毛束(ビューラックス(株)製)にストレートパーマ1回及びブリーチを2回処理したものを評価に用いた。実施例及び比較例の各毛髪洗浄剤組成物を約1g、上記の毛束に塗布したものを試料とした。これをコーミングテスター(テクノハシモト社製)のチャックに取り付け、流水下において試料にブラシを10回通したときにブラシにかかる最大荷重(N)をすすぎ時の指通りのよさとして下記の評価基準により評価した。
評価基準:
◎:2.5N未満
○:2.5N以上〜4.0N未満
△:4.0N以上〜5.5N未満
×:5.5N以上
【0055】
(3)高温安定性
調製した毛髪洗浄剤組成物50mLを透明ガラス瓶に入れて、40℃の恒温槽で1ヶ月間保存した後、下記評価基準で外観の高温保存安定性を評価した。なお、3点以上のものを許容範囲内として高温安定性が良好であると判断した。
評価基準:
5点:沈殿又は析出がない。
4点:ガラス瓶底面にわずかにオリがあるか、液面にわずかに析出があるが室温で消
失する。
3点:ガラス瓶底面にわずかに沈殿があるか、液面にわずかに析出がある。
2点:ガラス瓶底面や壁面に析出物が少しある。
1点:ガラス瓶底面や壁面に析出物が多くある。
【0056】
(4)泡立ちのよさ
パーマやヘアカラーを使用してダメージヘアーと認識している30〜50代の女性20名のパネラーに対し、調製した実施例28〜32の各毛髪洗浄剤組成物を約6g頭髪に塗布して洗浄し、そのときの泡立ちについて官能評価を行った。集計した結果を下記の評価基準に基づいて判定した。
評価基準:
◎:良好であると答えた人が15名以上
○:良好であると答えた人が10名以上14名以下
△:良好であると答えた人が5名以上9名以下
×:良好であると答えた人が5名未満
【0057】
【表1】

【0058】
※表中の配合量において、( )内の数値は純分量である。(D)成分の配合量において
、表中の( )内の数字は500万mm2/s以上のシリコーン量を示す(以下、同様
。)。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
使用成分の詳細を下記に示す。
*1 ;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2E.O.)
商品名 シノリンSPE−1250,新日本理化(株)
*2 ;ラウリン酸アミドプロピルベタイン
商品名 エナジコールL30B,ライオン(株)
*3 ;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)
商品名 CW−20−90,青木油脂(株)
*4 ;塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体A
(モル比率30/70) 重量平均分子量220万
商品名 Ultimer CG−600,ナルコジャパン(株),純分20%
*5 ;塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体B
(モル比率19/81) 重量平均分子量180万
商品名 カヤクリルレジンM−50A,純分0.55%
*6 ;塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体C
(モル比率30/70) 重量平均分子量90万
商品名 マーコート2200,ナルコジャパン(株),純分100%
*7 ;スチレン/ジビニルベンゼン共重合体(体積平均粒径:6μm)
商品名 GANZPERL GS−0605,ガンツ化成(株)
*8 ;ポリスチレン(体積平均粒径:6μm)
商品名 テクノポリマーSBX−6,積水化成品工業(株)
*9 ;ナイロン(体積平均粒径:6μm)
商品名 ダイアミドMSP−100,ダイセル・エボニック(株)
*10;PMMA(体積平均粒径:10μm)
商品名 マツモトマイクロスフェアM−306,松本油脂製薬(株)
*11;ジメチルポリシロキサンA (エマルジョン)
商品名 レオフローDMS−60,一方社油脂工業(株)
(エマルジョン中に動粘度1,000万mm2/sのジメチルポリシロキサン9
%と、動粘度400万mm2/sのジメチルポリシロキサン9%と1,000m
2/sのジメチルポリシロキサン42%を含む。)
*12;ジメチルポリシロキサンB
商品名 KM−903,信越化学工業(株)
(エマルジョン中に動粘度2000万/mm2/sのジメチルポリシロキサン1
8%と動粘度200mm2/sのジメチルポリシロキサンを42%含む。)
*13;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム:
商品名 アーカードT−800,ライオン(株)
*14;安息香酸ナトリウム
商品名 安息香酸ナトリウム,伏見製薬所(株)
*15;香料A
特開2006−63044号公報記載の香料A
*16;高重合PEG(平均分子量200万)
商品名 Polyox WSR N−60K,ダウケミカル(株)
*17;高重合PEG(平均分子量100万)
商品名 Polyox WSR N−12K,ダウケミカル(株)
*18;塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体D
(モル比率24/76) 重量平均分子量10万
東レ・ダウコーニング(株)
*19;カチオン化グアーガム(分子量220万)
商品名 ジャガーエクセル,ローディア社製,純分100%
*20;カチオン化セルロース(分子量15万)
商品名 XE511K,ライオン(株),純分100%
*21;無水ケイ酸(体積平均粒径5μm)
商品名 P−1500,日揮触媒化成(株)
*22;ジメチルポリシロキサン
動粘度100万mm2/s,東レ・ダウコーニング(株)
*23;塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体D
(モル比率30/70) 重量平均分子量260万
商品名 マーコートS,ナルコジャパン(株)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)洗浄剤成分、
(B)重量平均分子量90万〜260万のジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、
(C)有機性粉体、
(D)25℃における動粘度が500万mm2/s以上のジメチルポリシロキサン
を含有し、(B)/(C)の質量比が0.2〜1であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。
【請求項2】
(C)有機性粉体が、ポリスチレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、及びスチレン/ジビニルベンゼン共重合体から選ばれる1種以上の樹脂からなる粉体である請求項1記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)洗浄剤成分が、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、アルカノールアミド、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の界面活性剤である請求項1又は2記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、(E)高重合ポリエチレングリコールを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の毛髪洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−20968(P2012−20968A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160433(P2010−160433)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】