説明

気体供給システム

【課題】不具合が発生した部位の特定が容易になることにより異常発生時のメンテナンスの効率が向上されるとともに気体を用いた処理の効率の低下が防止された気体供給システムを提供する。
【解決手段】フッ素ガス発生システム100は、複数のフッ素ガス供給系100aおよび制御装置90を備える。各フッ素ガス供給系100aは、フッ素ガス発生装置50を含む。各フッ素ガス供給系100aは、CVD装置群100bに接続される。フッ素ガス発生装置50はフッ素ガス発生部1およびバッファタンク2を含む。配管4には、開閉バルブ3bが介挿される。配管4の他端部は、複数の配管7に分岐する。各配管7がCVD装置8に接続される。隣り合うフッ素ガス供給系100aの配管4は、配管4aにより互いに接続される。各配管4aには、開閉バルブ3cが介挿される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、例えば基板上にシリコン等の薄膜を形成するCVD(化学気相成長)装置が用いられる。CVD装置において、気体(例えば、フッ素ガス)を用いて基板の洗浄等の処理を行うために、気体を発生する気体発生装置がCVD装置に接続される。
【0003】
例えば、特許文献1に示される半導体製造プラントにおいては、複数のフッ素ガス発生装置、複数のCVD装置、および貯蔵タンクが配管を介して互いに接続される。具体的には、複数のフッ素ガス発生装置の各々から延びる複数の配管が互いに合流して貯蔵タンクに接続される。また、貯蔵タンクから延びる1つの配管が複数の配管に分岐して複数のCVD装置にそれぞれ接続される。この場合、複数のフッ素ガス発生装置において発生したフッ素ガスが共通の配管を通して一旦貯蔵タンクに貯蔵される。そして、貯蔵タンクに貯蔵されたフッ素ガスが、共通の配管を通して各CVD装置に供給される。
【0004】
上記半導体製造プラントにおいては、貯蔵タンクを設けることにより、一のフッ素ガス発生装置に問題が生じた場合、稼動している他のフッ素ガス発生装置を停止することなく、一のフッ素ガス発生装置の修理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−211261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、フッ素ガス発生装置内の部品または配管が老朽化すると、フッ素ガス発生装置内または配管内で鉄、ニッケルまたは銅等の金属が露出する場合がある。この場合、フッ素ガス発生装置内または配管内でフッ素ガスが鉄、ニッケルおよび銅等の金属と反応することにより、金属フッ化物が生成されることがある。この金属フッ化物は、気体またはパーティクルとしてフッ素ガスに混入する。許容量を超える量の金属フッ化物を含むフッ素ガスがCVD装置に送られると、CVD装置内で、基板の金属汚染が発生する。この場合、フッ素ガス発生装置の稼動を停止し、フッ素ガス発生装置およびCVD装置のメンテナンスを行う必要がある。
【0007】
しかしながら、上記の半導体製造プラントでは、複数のフッ素ガス発生装置において発生したフッ素ガスが共通の配管を通して複数のCVD装置に供給される。したがって、いずれかのCVD装置内で金属汚染が発生した場合、その金属汚染が複数のフッ素ガス発生装置のうちいずれのフッ素ガス発生装置を起因とした金属汚染であるかを特定することができない。したがって、金属汚染の原因となったフッ素ガス発生装置を含めて全てのフッ素ガス発生装置の稼動を停止し、全てのフッ素ガス発生装置のメンテナンスを行う必要がある。その結果、メンテナンスの効率が大幅に低下する。また、全てのフッ素ガス発生装置の稼動が停止されるので、全てのCVD装置における基板の処理も停止する必要がある。したがって、CVD装置の稼動効率も低下する。
【0008】
本発明の目的は、不具合が発生した部位の特定が容易になることにより異常発生時のメンテナンスの効率が向上されるとともに気体を用いた処理の効率の低下が防止された気体供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る気体供給システムは、気体を用いた処理を行う複数の処理装置に気体を供給する気体供給システムであって、気体を発生させる複数の第1の気体発生装置と、複数の第1の気体発生装置にそれぞれ接続され、複数の第1の気体発生装置により発生された気体を複数の処理装置に供給するための複数の第1の配管と、複数の第1の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第1の開閉手段と、各第1の配管と他の第1の配管との間に接続される第2の配管と、第2の配管に設けられ、流路を開閉するための第2の開閉手段とを備えるものである。
【0010】
その気体供給システムにおいては、複数の第1の開閉手段が開放状態でありかつ第2の開閉手段が閉止状態である場合に、複数の第1の気体発生装置で発生された気体が複数の第1の配管を通して複数の処理装置にそれぞれ供給される。この状態で、複数の第1の気体発生装置のいずれかの異常に起因していずれかの処理装置における処理に不具合が発生した場合に、いずれの第1の気体発生装置に異常が発生したかを容易に特定することができる。したがって、メンテナンスを行うべき第1の気体発生装置を容易に特定することができる。
【0011】
この場合、異常が発生した第1の気体発生装置に対応する第1の開閉手段を閉止状態にしかつ第2の開閉手段を開放状態にすることにより、異常が発生した第1の気体発生装置から不具合が発生した処理装置への気体の供給を停止することができるとともに、正常な他の第1の気体発生装置から第2の配管を通して不具合が発生した処理装置に気体を供給することができる。したがって、異常が発生した第1の気体発生装置のメンテナンスを行いつつ、その第1の気体発生装置の異常に起因する不具合が発生した処理装置において処理を続行することができる。
【0012】
その結果、不具合が発生した部位の特定が容易になることにより異常発生時の第1の気体発生装置のメンテナンスの効率を向上させることが可能になるとともに複数の処理装置での気体を用いた処理の効率の低下を防止することが可能になる。
【0013】
(2)気体供給システムは、複数の第1の開閉手段および第2の開閉手段の開閉を制御する制御手段をさらに備え、制御手段は、複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、一の第1の配管に接続される処理装置に他の第1の配管に接続される第1の気体発生装置から気体が供給されるように第2の開閉手段を開放状態にするように構成されてもよい。
【0014】
この場合、制御手段により、複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段が閉止状態にされた場合、一の第1の配管に接続される処理装置に他の第1の配管に接続される第1の気体発生装置から気体が供給されるように第2の開閉手段が開放状態にされる。したがって、異常が発生した第1の気体発生装置から処理装置への気体の供給が停止されるとともに、正常な他の第1の気体発生装置からその処理装置へ気体が供給される。
【0015】
(3)制御手段は、一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、第2の開閉手段の上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなったときに第2の開閉手段を開放状態にするように構成されてもよい。
【0016】
この場合、第1の気体発生装置の異常に起因する不具合が発生した処理装置から正常な第1の気体発生装置へ気体が逆流することが確実に防止される。
【0017】
(4)第2の発明に係る気体供給システムは、気体を用いた処理を行う複数の処理装置に気体を供給する気体発生システムであって、気体を発生させる複数の第1の気体発生装置と、複数の第1の気体発生装置にそれぞれ接続され、複数の第1の気体発生装置により発生された気体を複数の処理装置に供給するための複数の第1の配管と、複数の第1の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第1の開閉手段と、複数の処理装置に共通に設けられ、気体を発生させる第2の気体発生装置と、第2の気体発生装置により発生された気体を複数の処理装置にそれぞれ供給するための複数の第3の配管と、複数の第3の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第3の開閉手段とを備えるものである。
【0018】
その気体供給システムにおいては、複数の第1の開閉手段が開放状態でありかつ第3の開放手段が閉止状態である場合に、複数の第1の気体発生装置で発生された気体が複数の第1の配管を通して複数の処理装置にそれぞれ供給される。この状態で、複数の第1の気体発生装置のいずれかの異常に起因していずれかの処理装置における処理に不具合が発生した場合に、いずれの第1の気体発生装置に異常が発生したかを容易に特定することができる。
【0019】
この場合、異常が発生した第1の気体発生装置に対応する第1の開閉手段を閉止状態にしかつ第3の開閉手段を開放状態にすることにより、異常が発生した第1の気体発生装置から不具合が発生した処理装置への気体の供給を停止することができるとともに、第2の気体発生装置から第3の配管を通して不具合が発生した処理装置に気体を供給することができる。したがって、異常が発生した第1の気体発生装置のメンテナンスを行いつつ、その第1の気体発生装置の異常に起因する不具合が発生した処理装置において処理を続行することができる。
【0020】
その結果、不具合が発生した部位の特定が容易になることにより異常発生時の第1の気体発生装置のメンテナンスの効率を向上させることが可能になるとともに複数の処理装置での気体を用いた処理の効率の低下を防止することが可能になる。
【0021】
(5)気体供給システムは、複数の第1の開閉手段および複数の第3の開閉手段の開閉動作を制御する制御手段をさらに備え、制御手段は、複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、一の第1の配管に接続される処理装置に第2の気体発生装置から気体が供給されるように一の第1の配管に対応する第3の開閉手段を開放状態にするように構成されてもよい。
【0022】
この場合、制御手段により、複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段が閉止状態にされた場合、一の第1の配管に接続される処理装置に第2の気体発生装置から気体が供給されるように一の第1の配管に対応する第3の開閉手段が開放状態にされる。したがって、異常が発生した第1の気体発生装置から処理装置への気体の供給が停止されるとともに、第2の気体発生装置からその処理装置へ気体が供給される。
【0023】
(6)第3の発明に係る気体供給システムは、気体を用いた処理を行う複数の処理装置に気体を供給する気体発生システムであって、気体を発生させる複数の第1の気体発生装置と、複数の第1の気体発生装置にそれぞれ接続され、複数の第1の気体発生装置により発生された気体を複数の処理装置に供給するための複数の第1の配管と、複数の第1の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第1の開閉手段と、複数の処理装置に共通に設けられ、気体を発生させる第3の気体発生装置と、第3の気体発生装置に接続される第4の配管と、第4の配管と複数の第1の開閉手段の下流側における複数の第1の配管の部分との間にそれぞれ接続される複数の第5の配管と、複数の第5の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第4の開閉手段とを備えるものである。
【0024】
その気体供給システムにおいては、複数の第1の開閉手段が開放状態でありかつ第4の開閉手段が閉止状態である場合に、複数の第1の気体発生装置で発生された気体が複数の第1の配管を通して複数の処理装置にそれぞれ供給される。この状態で、複数の第1の気体発生装置のいずれかの異常に起因していずれかの処理装置における処理に不具合が発生した場合に、いずれの第1の気体発生装置に異常が発生したかを容易に特定することができる。したがって、メンテナンスを行うべき第1の気体発生装置を容易に特定することができる。
【0025】
この場合、異常が発生した第1の気体発生装置に対応する第1の開閉手段を閉止状態にしかつ第4の開閉手段を開放状態にすることにより、異常が発生した第1の気体発生装置から不具合が発生した処理装置への気体の供給を停止することができるとともに、第3の気体発生装置から第4および第5の配管を通して不具合が発生した処理装置に気体を供給することができる。したがって、異常が発生した第1の気体発生装置のメンテナンスを行いつつ、その第1の気体発生装置の異常に起因する不具合が発生した処理装置において処理を続行することができる。
【0026】
その結果、不具合が発生した部位の特定が容易になることにより異常発生時の第1の気体発生装置のメンテナンスの効率を向上させることが可能になるとともに複数の処理装置での気体を用いた処理の効率の低下を防止することが可能になる。
【0027】
(7)気体供給システムは、複数の第1の開放手段および複数の第4の開放手段の開閉動作を制御する制御手段をさらに備え、制御手段は、複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、一の第1の配管に接続される処理装置に第3の気体発生装置から気体が供給されるように一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されてもよい。
【0028】
この場合、制御手段により、複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段が閉止状態にされた場合、一の第1の配管に接続される処理装置に第3の気体発生装置から気体が供給されるように一の第1の配管に対応する第4の開閉手段が開放状態にされる。したがって、異常が発生した第1の気体発生装置から処理装置への気体の供給が停止されるとともに、第3の気体発生装置からその処理装置へ気体が供給される。
【0029】
(8)制御手段は、一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、一の第1の配管に対応する第4の開閉手段の上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなったときに一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されてもよい。
【0030】
この場合、第1の気体発生装置の異常に起因する不具合が発生した処理装置から第3の気体発生装置へ気体が逆流することが確実に防止される。
【0031】
(9)制御手段は、一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にした場合、第4の配管内の圧力が予め定められた値よりも低い場合に、一の第1の配管に接続される処理装置に他の第1の配管に接続される第1の気体発生装置から気体が供給されるように他の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されてもよい。
【0032】
この場合、制御手段により、複数の第1の配管のうち一の第1の配管に対応する第4の開閉手段が開放状態にされた場合、第4の配管内の圧力が予め定められた値よりも低い場合に、一の第1の配管に接続される処理装置に他の第1の配管に接続される第1の気体発生装置から気体が供給されるように他の第1の配管に対応する第4の開閉手段が開放状態にされる。これにより、第3の気体発生装置から不具合が発生した処理装置への気体の供給能力が不足している場合に、他の第1の気体発生装置からその処理装置へ自動的に気体が供給される。その結果、第3の気体発生装置の供給能力を他の第1の気体発生装置により補うことができる。
【0033】
(10)制御手段は、一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にした場合、他の第1の配管に対応する第4の開閉手段の上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなったときに他の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されてもよい。
【0034】
この場合、第1の気体発生装置の異常に起因する不具合が発生した処理装置かから正常な第1の気体発生装置へ気体が逆流することが確実に防止される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、メンテナンスを行うべき第1の気体発生装置を容易に特定することができる。また、異常が発生した第1の気体発生装置のメンテナンスを行いつつ、その第1の気体発生装置の異常に起因する不具合が発生した処理装置において処理を続行することができる。その結果、不具合が発生した部位の特定が容易になることにより異常発生時の第1の気体発生装置のメンテナンスの効率を向上させることが可能になるとともに複数の処理装置での気体を用いた処理の効率の低下を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態に係るフッ素ガス供給システム構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係るフッ素ガス供給システムにおける制御系の一部を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る制御装置による供給経路切替処理のフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係るフッ素ガス供給システムの構成を示す模式図である。
【図5】第2の実施形態に係るフッ素ガス供給システムにおける制御系の一部を示すブロック図である。
【図6】第2の実施形態に係る制御装置による供給経路切替処理のフローチャートである。
【図7】第3の実施形態に係るフッ素ガス供給システムの構成を示す模式図である。
【図8】第3の実施形態に係るフッ素ガス供給システムにおける制御系の一部を示すブロック図である。
【図9】第3の実施形態に係る制御装置による供給経路切替処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施の形態に係る気体供給システムについて図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態においては、気体供給システムの一例として、フッ素ガスを発生するフッ素ガス供給システムについて説明する。
【0038】
(1)第1の実施の形態
(1−1)フッ素ガス供給システムの構成
図1は、第1の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100の構成を示す模式図である。図1に示すように、フッ素ガス供給システム100は、複数のフッ素ガス供給系100aおよび制御装置90を備える。各フッ素ガス供給系100aは、複数(本例では8つ)のCVD(化学気相成長)装置を含むCVD装置群100bに接続される。
【0039】
各フッ素ガス供給系100aは、フッ素ガス発生装置50を含む。フッ素ガス発生装置50はフッ素ガス発生部1およびバッファタンク2を有する。フッ素ガス発生部1とバッファタンク2とは配管3を介して接続される。
【0040】
各フッ素ガス発生部1は、例えばKF−HF系混合溶融塩からなる電解浴が形成された電解槽を備える。電解槽内でHF(フッ化水素)の電気分解が行われることにより、フッ素ガスが発生する。フッ素ガス発生部1で発生したフッ素ガスは配管3を通してバッファタンク2に送られ、貯蔵される。なお、配管3に開閉バルブが介挿されてもよい。この場合、フッ素ガス発生部1からバッファタンク2へのフッ素ガスの供給のタイミングを制御することができるとともに、バッファタンク2からフッ素ガス発生部1へのフッ素ガスの逆流を防止することができる。
【0041】
各フッ素ガス発生装置50には、異常検知センサ11が取り付けられる。異常検知センサ11は、フッ素ガス発生装置50の異常を検出する。フッ素ガス発生装置50の異常としては、例えば外部へのフッ素ガスの漏洩または電気系統の異常等がある。
【0042】
各フッ素ガス発生装置50のバッファタンク2に、配管4の一端部が接続される。配管4には、開閉バルブ3bが介挿される。また、開閉バルブ3bの一方側および他方側における配管4の部分に圧力計5a,5bがそれぞれ取り付けられる。
【0043】
配管4の他端部は、複数(本例では8つ)の配管7に分岐する。各配管7がCVD装置群100bのCVD装置8に接続される。
【0044】
隣り合うフッ素ガス供給系100aの配管4は、配管4aにより互いに接続される。これにより、複数のフッ素ガス供給系100aが配管4,4aを介して互いに接続される。各配管4aには、開閉バルブ3cが介挿される。また、開閉バルブ3cの一方側および他方側における配管4aの部分に圧力計5c,5dがそれぞれ取り付けられる。
【0045】
各CVD装置8においては、フッ素ガスを用いて基板の処理が行われる。各CVD装置8には、異常検知センサ10が取り付けられる。異常検知センサ10は、CVD装置8内における基板の金属汚染の発生を検出する。
【0046】
制御装置90は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリまたはマイクロコンピュータを含み、フッ素ガス供給システム100の各構成要素の動作を制御する。本実施の形態では、金属汚染の発生時に、制御装置90によりフッ素ガスの供給経路が切り替えられる。制御装置90の制御動作の詳細については後述する。
【0047】
ここで、CVD装置8における金属汚染の発生原因について説明する。フッ素ガス発生装置50内の部品または配管4,4aの老朽化等により、フッ素ガス発生装置50内または配管4,4a内で金属が露出する場合がある。フッ素ガス発生装置50内または各配管4,4a内でフッ素ガスと金属とが反応することにより、金属フッ化物が生成される。この場合、金属フッ化物がフッ素ガスと共にCVD装置8に供給される。これにより、CVD装置8において、金属フッ化物を含むフッ素ガスが基板に供給され、基板の金属汚染が発生する。このように、フッ素ガス供給系100aの異常に起因してCVD装置8で金属汚染が発生する。したがって、金属汚染の発生時には、フッ素ガス発生装置50内および各配管4,4aのメンテナンスを行う必要がある。ここで、メンテナンスとは、清掃または部品交換等を含む。
【0048】
(1−2)フッ素ガス供給システムの制御系
図2は、図1のフッ素ガス供給システム100における制御系の一部を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置90には、圧力計5a〜5dおよび異常検知センサ10,11の出力信号が与えられる。制御装置90は、圧力計5a〜5dおよび異常検知センサ10,11から与えられる出力信号に基づいて、開閉バルブ3b,3cを制御する。
【0049】
(1−3)開閉バルブの制御
本実施の形態ではフッ素ガス供給システム100の動作時に、制御装置90により以下の供給経路切替処理が行われる。これにより、フッ素ガス供給系100aが正常である場合とフッ素ガス供給系100aに異常が発生した場合とでフッ素ガスの供給経路が切り替えられる。
【0050】
全てのフッ素ガス供給系100aが正常に動作している場合、全ての開閉バルブ3bが開かれるとともに、全ての開閉バルブ3cが閉じられる。それにより、全てのフッ素ガス供給系100aのフッ素ガス発生装置50により発生されたフッ素ガスが配管4,7を通して複数のCVD装置8に供給される。
【0051】
なお、各フッ素ガス供給系100aにおいて、フッ素ガス発生装置50から複数のCVD装置8へのフッ素ガスの供給を開始する際には、圧力計5aの計測値が圧力計5bの計測値よりも高くなった状態で開閉バルブ3bが開かれる。これにより、フッ素ガスがフッ素ガス発生装置50に逆流することが防止される。
【0052】
一方、いずれかのフッ素ガス供給系100aにおいて異常が発生した場合、対応する開閉バルブ3bが選択的に閉じられるとともに、対応する開閉バルブ3cが選択的に開かれる。これにより、正常なフッ素ガス供給系100aのフッ素ガス発生装置50により発生されたフッ素ガスが配管4aを通して異常なフッ素ガス供給系100aに接続された複数のCVD装置8に供給される。
【0053】
以下、制御装置90による供給経路切替処理について詳細に説明する。図3は、第1の実施の形態におけるフッ素ガス供給システム100の制御装置90による供給経路切替処理のフローチャートである。本例では、初期状態として全てのフッ素ガス供給系100aが正常に動作している。すなわち、全ての開閉バルブ3bが開かれるとともに、全ての開閉バルブ3cが閉じられている。また、以下の説明においては、正常なフッ素ガス供給系100aを正常供給系100aと呼び、異常が発生したフッ素ガス供給系100aを異常供給系100aと呼ぶ。
【0054】
図3に示すように、まず、制御装置90は、いずれかの異常検知センサ10によってCVD装置8内で金属汚染が検出されたか否かを判定する(ステップS1)。
【0055】
金属汚染が検出されない場合、制御装置90は、いずれかの異常検知センサ11によってフッ素ガス発生装置50の異常が検出されたか否かを判定する(ステップS2)。フッ素ガス発生装置50の異常が検出されない場合、制御装置90は、ステップS1の処理に戻る。
【0056】
ステップS1で金属汚染が検出された場合、またはステップS2でフッ素ガス発生装置50の異常が検出された場合、制御装置90は、異常が発生したフッ素ガス供給系100a(異常供給系100a)の開閉バルブ3bを閉じる(ステップS3)。これにより、異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50からCVD装置8へのフッ素ガスの供給が停止される。
【0057】
次に、制御装置90は、異常供給系100aに隣り合う2つのフッ素ガス供給系100aのうち一方を選択する(ステップS4)。異常供給系100aに隣り合う2つのフッ素ガス供給系100aがともに正常に動作している場合、制御装置90は、例えば予め記憶された優先順位に基づいて一方のフッ素ガス供給系100aを選択する。
【0058】
一方のフッ素ガス供給系100aのみが正常に動作している場合、制御装置90は、正常に動作しているフッ素ガス供給系100a(正常供給系100a)を選択する。
【0059】
次に、制御装置90は、異常供給系100aとステップS4で選択した正常供給系100aとの間の配管4aに設けられた圧力計5c,5dの計測値を比較する。そして、制御装置90は圧力計5c,5dのうちの正常供給系100a側に配置された圧力計の計測値(以下、正常側圧力値P3と呼ぶ)が、異常供給系100a側に配置された圧力計の計測値(以下、異常側圧力値P4と呼ぶ)よりも高いか否かを判定する(ステップS5)。
【0060】
例えば、図1において、上段に示されるフッ素ガス供給系100aにおいて異常が発生し、下段に示されるフッ素ガス供給系100aが正常に動作している場合、制御装置90は、圧力計5dの計測値が圧力計5cの計測値よりも高いか否かを判定する。
【0061】
この場合、上記のように、異常供給系100aにおいては、フッ素ガス発生装置50からのフッ素ガスの供給が停止されている。そのため、徐々に異常側圧力値P4が低下し、正常側圧力値P3が異常側圧力値P4よりも高くなる。
【0062】
正常側圧力値P3が異常側圧力値P4以下である場合、制御装置90は、正常側圧力値P3が異常側圧力値P4よりも高くなるまで待機する。正常側圧力値P3が異常側圧力値P4よりも高くなると、制御装置90は、異常供給系100aとステップS4で選択された正常供給系100bとの間の配管4aに設けられた開閉バルブ3cを開く(ステップS6)。
【0063】
この場合、正常供給系100aから配管4aを通して異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される。また、正常側圧力値P3が異常側圧力値P4よりも高くなった状態で開閉バルブ3cが開かれるので、異常供給系100aから正常供給系100aにフッ素ガスが逆流することが防止される。それにより、金属フッ化物を含むフッ素ガスが正常供給系100aに進入することが防止される。その後、制御装置90は、ステップS1の処理に戻る。
【0064】
このように、いずれかのフッ素ガス供給系100aに起因する金属汚染が発生した場合、およびいずれかのフッ素ガス供給系100aにおいてフッ素ガス発生装置50の異常が発生した場合、その異常供給系100aの開閉バルブ3bが閉じられるとともに、その異常供給系100aに接続される配管4aの開閉バルブ3cが開かれる。
【0065】
それにより、異常供給系100aにより発生されたフッ素ガスの供給が停止されるとともに、正常供給系100aのフッ素ガス発生装置50により発生されたフッ素ガスが異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に供給される。
【0066】
この状態で、異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50のメンテナンスが行われる。異常供給系100aが正常な状態に復旧すると、ステップS5で開かれた開閉バルブ3cが閉じられ、ステップS3で閉じられた開閉バルブ3bが開かれる。この場合、圧力計5aの計測値が圧力計5bの計測値よりも高くなった状態で開閉バルブ3bが開かれる。それにより、フッ素ガスがフッ素ガス発生装置50に逆流することが防止される。
【0067】
(1−4)効果
第1の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100においては、全てのフッ素ガス供給系100aが正常である場合、1つのフッ素ガス発生装置50から複数のCVD装置8にフッ素ガスがそれぞれ供給される。この場合、いずれかのCVD装置8において金属汚染が発生した場合に、メンテナンスを行うべき異常供給系100aを容易に特定することができる。したがって、正常供給系100aのフッ素ガス発生装置50を稼動させた状態で、異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50のメンテナンスを効率よく行うことができる。
【0068】
また、いずれかのフッ素ガス供給系100aで異常が発生した場合、その異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50からCVD装置8へのフッ素ガスの供給が停止されるとともに、正常供給系100aのフッ素ガス発生装置50により発生されたフッ素ガスが異常供給系100aに接続されたCVD装置8に供給される。
【0069】
そのため、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に継続的にフッ素ガスを供給しつつ、異常供給系100aのメンテナンスを行うことができる。その結果、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8における基板の処理を中断することなく、異常供給系100aを正常な状態に復旧させることができる。
【0070】
また、異常の発生によってフッ素ガスの供給経路が切り替えられた状態でも、各CVD装置8には1つのフッ素ガス発生装置50からフッ素ガスが供給される。それにより、その状態でさらにいずれかのCVD装置8において金属汚染が発生した場合でも、メンテナンスを行うべき異常供給系100aを容易に特定することができる。したがって、効率よく異常供給系100aのメンテナンスを行うことができる。
【0071】
(1−5)他の制御例
図3の例では、いずれかのフッ素ガス供給系100aで異常が発生した場合、その異常供給系100aに隣り合う2つのフッ素ガス供給系100aのうち一方のフッ素ガス供給系100aから異常供給系100aにフッ素ガスが供給される。この場合、異常供給系100aに隣り合う2つのフッ素ガス供給系100aがともに正常であれば、その両方の正常供給系100aから異常供給系100aにフッ素ガスが供給されてもよい。それにより、異常供給系100aに接続されたCVD装置8に十分なフッ素ガスが供給される。
【0072】
(2)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100について、上記第1の実施の形態のフッ素ガス供給システム100と異なる点を説明する。
【0073】
(2−1)フッ素ガス供給システムの構成
図4は、第2の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100の構成を示す模式図である。図4に示すように、第2の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100は、バックアップ用のフッ素ガス発生装置40を備える。フッ素ガス発生装置40は、フッ素ガス発生装置50と同様の構成を有する。なお、フッ素ガス発生装置40は、バッファタンク2を有さなくてもよい。
【0074】
フッ素ガス発生装置40には、配管41が接続される。配管41は複数のフッ素ガス供給系100aにそれぞれ対応する複数の配管42に分岐する。配管42には、開閉バルブ42aが介挿される。各配管42は、各フッ素ガス供給系100aの複数のCVD装置8にそれぞれ対応する複数の配管7に接続される。
【0075】
(2−2)フッ素ガス供給システムの制御系
図5は、図4のフッ素ガス供給システム100における制御系の一部を示すブロック図である。図5に示すように、制御装置90には、圧力計5a〜5dおよび異常検知センサ10,11から出力信号が与えられる。制御装置90は、圧力計5a〜5dおよび異常検知センサ10,11から与えられる出力信号に基づいて、開閉バルブ3b,3c,42aを制御する。
【0076】
(2−3)開閉バルブの制御
第2の実施の形態では、全てのフッ素供給系100aが正常に動作している場合、全ての開閉バルブ3bが開かれるとともに、全ての開閉バルブ3c,42aが閉じられる。それにより、全てのフッ素ガス供給系100aのフッ素ガス発生装置50により発生されたフッ素ガスが配管4,7を通して複数のCVD装置8に供給される。
【0077】
一方、いずれかのフッ素ガス供給系100aにおいて異常が発生した場合、対応する開閉バルブ3bが選択的に閉じられるともに、対応する開閉バルブ42aが選択的に開かれる。これにより、バックアップ用のフッ素ガス発生装置40により発生されたフッ素ガスが配管41,42,7を通して異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に供給される。
【0078】
図6は、第2の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100の制御装置90による供給経路切替処理のフローチャートである。なお、本実施の形態においては、初期状態として全てのフッ素ガス供給系100aが正常に動作しており、全ての開閉バルブ3bが開かれるとともに、全ての開閉バルブ3c,42aが閉じられている。
【0079】
図6のステップS1〜S3の処理は、図3のステップS1〜S3の処理と同様である。制御装置90は、ステップS3で異常供給系100aの開閉バルブ3bを閉じた後、異常供給系100aに対応する開閉バルブ42aを開く(ステップS4a)。
【0080】
この場合、フッ素ガス発生装置40から配管41,42,7を通して、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される。その後、制御装置90は、ステップ1の処理に戻る。
【0081】
このように、いずれかのフッ素ガス供給系100aに起因して金属汚染が発生した場合、およびいずれかのフッ素ガス供給系100aにおいてフッ素ガス発生装置50の異常が発生した場合、その異常供給系100aの開閉バルブ3bが閉じられるとともに、その異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に接続される配管42の開閉バルブ42aが開かれる。
【0082】
それにより、異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50により発生されたフッ素ガスの供給が停止されるとともに、バックアップ用のフッ素ガス発生装置40により発生されたフッ素ガスが異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に供給される。
【0083】
この状態で、異常供給系100aのメンテナンスが行われる。異常供給系100aが正常な状態に復旧すると、ステップS4aで開かれた開閉バルブ42aが閉じられ、ステップS3で閉じられた開閉バルブ3bが開かれる。
【0084】
(2−4)効果
第2の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100においては、いずれかのフッ素ガス供給系100aに異常が発生した場合、その異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50から複数のCVD装置8へのフッ素ガスの供給が停止されるとともに、バックアップ用のフッ素ガス発生装置40からその異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される。そのため、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に継続的にフッ素ガスを供給しつつ、異常供給系100aのメンテナンスを行うことができる。その結果、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8における基板の処理を中断することなく、異常供給系100aを正常な状態に復旧させることができる。
【0085】
(2−5)他の制御例
上記第1の実施の形態と同様に、いずれかのフッ素ガス供給系100aで異常が発生した場合、対応する開閉バルブ3cが選択的に開かれることにより、正常供給系100aから異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給されてもよい。この場合、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に十分な量のフッ素ガスが供給される。
【0086】
(3)第3の実施の形態
第3の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100について、上記第1の実施の形態のフッ素ガス供給システム100と異なる点を説明する。
【0087】
(3−1)フッ素ガス供給システムの構成
図7は、第3の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100の構成を示す模式図である。図7に示すように、第3の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100は、バックアップ用のフッ素ガス発生装置60を備える。フッ素ガス発生装置60は、フッ素ガス発生装置50と同様の構成を有する。なお、フッ素ガス発生装置60は、バッファタンク2を有さなくてもよい。フッ素ガス発生装置60には、配管65が接続される。また、各フッ素ガス供給系100aの配管4は、圧力計5bの下流側の位置で配管61を介して配管65に接続される。各配管61には開閉バルブ63が介挿される。配管61との接続点よりも下流側における配管4の位置に開閉バルブ64が介挿される。開閉バルブ64と配管7との間の配管4の部分には、圧力計5jが取り付けられる。開閉バルブ63と配管65との間における配管61の部分には圧力計5iが取り付けられる。
【0088】
(3−2)フッ素ガス供給システムの制御系
図8は、図7のフッ素ガス供給システム100における制御系の一部を示すブロック図である。図8に示すように、制御装置90には、圧力計5a,5b,5i,5jおよび異常検知センサ10,11の出力信号が与えられる。制御装置90は、圧力計5a,5b,5i,5jおよび異常検知センサ10,11から与えられる出力信号に基づいて、開閉バルブ3b,63,64を制御する。
【0089】
(3−3)開閉バルブの制御
第3の実施の形態では、全てのフッ素ガス供給系100aが正常に動作している場合、全ての開閉バルブ3b,64が開かれるとともに、全ての開閉バルブ63が閉じられる。それにより、全てのフッ素ガス供給系100aのフッ素ガス発生装置50により発生されたフッ素ガスが配管4,7を通して複数のCVD装置8に供給される。
【0090】
一方、いずれかのフッ素ガス供給系100aにおいて異常が発生した場合、対応する開閉バルブ3bが選択的に閉じられるとともに、対応する開閉バルブ63が選択的に開かれる。これにより、フッ素ガス発生装置60により発生されたフッ素ガスが配管65,61,4,7を通して異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に供給される。
【0091】
図9は、第3の実施の形態に係るフッ素ガス発生システム100の制御装置90による供給経路切替処理のフローチャートである。本実施の形態においては、初期状態として全てのフッ素ガス供給系100aが正常に動作しており、全ての開閉バルブ3b,64が開かれるとともに、全ての開閉バルブ63が閉じられている。
【0092】
図9のステップS1、S2の処理は、図3のステップS1、S2の処理と同様である。ステップS1でいずれかの異常検知センサ10によってCVD装置8内で金属汚染が検出された場合、またはステップS2でいずれかの異常検知センサ11によってフッ素ガス発生装置50の異常が検出された場合、制御装置90は異常供給系100aの開閉バルブ3bを閉じる(ステップS3b)。これにより、異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50からのフッ素ガスの供給が停止される。
【0093】
次に、制御装置90は、異常供給系100aの配管61に設けられた圧力計5iの計測値(以下、バックアップ側圧力値P5と呼ぶ)および異常供給系100aの配管4に設けられた圧力計5bの計測値(以下、異常側圧力値P6と呼ぶ)を比較する。
【0094】
そして、制御装置90は、バックアップ側圧力値P5が異常側圧力値P6よりも高いか否かを判定する(ステップS4b)。
【0095】
この場合、上記のように、異常供給系100aにおいては、フッ素ガス発生装置50からのフッ素ガスの供給が停止されている。そのため、徐々に異常側圧力値P6が低下する。したがって、バックアップ側圧力値P5が異常側圧力値P6よりも高くなる。
【0096】
バックアップ側圧力値P5が異常側圧力値P6以下である場合、制御装置90は、バックアップ側圧力値P5が異常側圧力値P6よりも高くなるまで待機する。バックアップ側圧力値P5が異常側圧力値P6よりも高くなると、制御装置90は異常供給系100aの開閉バルブ63を開く(ステップS5b)。
【0097】
この場合、フッ素ガス発生装置60から配管65,61,4,7を通して異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される。また、バックアップ側圧力値P5が異常側圧力値P6よりも高くなった状態で、開閉バルブ63が開かれるので、異常供給系100aから配管65にフッ素ガスが逆流することが防止される。それにより、金属フッ化物を含むフッ素ガスがフッ素ガス発生装置60に進入することが防止される。
【0098】
次に、制御装置90は配管65内の圧力(以下、供給圧力値P7と呼ぶ)が予め定められたしきい値T1よりも高いか否かを判定する(ステップS6b)。配管65内の圧力としては、異常供給系100aの圧力計5jの計測値を用いてもよく、異常供給系100aの圧力計5bの計測値を用いてもよく、異常供給系100aの圧力計5iの計測値を用いてもよい。この場合、異常供給系100aに
接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが十分に供給されているか否かが判定される。供給圧力値P7がしきい値T1よりも高い場合、制御装置90は、ステップS1の処理に戻る。
【0099】
供給圧力値P7がしきい値T1以下である場合、制御装置90は、例えば予め記憶された優先順位に基づいて、いずれかの正常供給系100aを選択する(ステップS6b)。次に、制御装置90は、選択した正常供給系100aの圧力計5bの計測値(以下、正常側圧力値P8と呼ぶ)と選択した正常供給系100aの圧力計5iの圧力値(以下、バックアップ側圧力値P9と呼ぶ)とを比較する。そして、制御装置90は、正常側圧力値P8がバックアップ側圧力値P9よりも高いか否かを判定する(ステップS8b)。
【0100】
正常側圧力値P8がバックアップ側圧力値P9以下である場合、制御装置90は、正常側圧力値P8がバックアップ側圧力値P9よりも高くなるまで待機する。正常側圧力値P8がバックアップ側圧力値P9よりも高くなると、制御装置90は、ステップS7bで選択した正常供給系100aの配管61に設けられた開閉バルブ63を開く(ステップS9b)。その後、制御装置90は、ステップ1の処理に戻る。
【0101】
この場合、正常供給系100aのフッ素ガス発生装置50から配管4,61,65,4,7を通して異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される。また、正常側圧力値P8がバックアップ側圧力値P9よりも高くなった状態で開閉バルブ63が開かれるので、正常供給系100aにフッ素ガスが逆流することが防止される。
【0102】
(3−4)効果
第3の実施の形態に係るフッ素ガス供給システム100においては、いずれかのフッ素ガス供給系100aに異常が発生した場合、異常供給系100aのフッ素ガス発生装置50からのフッ素ガスの供給が停止されるとともに、バックアップ用のフッ素ガス発生装置60から異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される。そのため、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に継続的にフッ素ガスを供給しつつ、異常供給系100aのメンテナンスを行うことができる。その結果、異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8における基板の処理を中断することなく、異常供給系100aを正常な状態に復旧させることができる。
【0103】
なお、複数のフッ素ガス供給系100aに異常が生じた場合には、フッ素ガス発生装置60から複数の異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される。フッ素ガス発生装置60におけるフッ素ガスの発生量は一定であるので、フッ素ガス発生装置60から複数の異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にフッ素ガスが供給される場合、供給されるフッ素ガスが不足することがある。
【0104】
そこで、本実施の形態では、CVD装置8に供給されるフッ素ガスが不足している場合、正常供給系100aから異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8にさらにフッ素ガスが供給される。これにより、複数のフッ素ガス供給系100aに異常が発生した場合でも、各異常供給系100aに接続された複数のCVD装置8に十分な量のフッ素ガスが供給される。
【0105】
1または複数のフッ素ガス供給系100aに接続されたCVD装置群100bにおいて、フッ素ガスを用いた処理を行わない場合、そのフッ素ガス供給系100aの開閉バルブ64を閉じるとともに、そのフッ素ガス供給系100aの開閉バルブ63および他のフッ素ガス供給系100aの開閉バルブ63を開いてもよい。
【0106】
この場合、CVD装置群100bにフッ素ガスを供給する必要がないフッ素ガス供給系100aから配管61,65,61と通して他のフッ素ガス供給系100aにフッ素ガスを供給することができる。それにより、他のフッ素ガス供給系100aからCVD装置群100bにより十分な量のフッ素ガスを供給することができる。
【0107】
(4)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0108】
上記実施の形態においては、CVD装置8が処理装置の例であり、フッ素ガス供給システム100が気体供給システムの例であり、フッ素ガス発生装置50が第1の気体発生装置の例であり、配管4,7が第1の配管の例であり、開閉バルブ3bが第1の開閉手段の例であり、配管4aが第2の配管の例であり、開閉バルブ3cが第2の開閉手段の例であり、制御装置90が制御手段の例であり、フッ素ガス発生装置40が第2の気体発生装置の例であり、配管41,42が第3の配管の例であり、開閉バルブ42aが第3の開閉手段の例であり、フッ素ガス発生装置60が第3の気体発生装置の例であり、配管65が第4の配管の例であり、配管61が第5の配管の例であり、開閉バルブ63が第4の開閉手段の例である。
【0109】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、種々の処理装置への気体の供給に利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 フッ素ガス発生部
40,50,60 フッ素ガス発生装置
2 バッファタンク
3,4,4a,7,41,42,61,65 配管
3b,3c,42a,63,64 開閉バルブ
5a,5b,5c,5d,5i,5j 圧力計
8 CVD装置
10,11 異常検知センサ
90 制御装置
100 フッ素ガス供給システム
100a フッ素ガス供給系
100b CVD装置群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を用いた処理を行う複数の処理装置に気体を供給する気体供給システムであって、
気体を発生させる複数の第1の気体発生装置と、
前記複数の第1の気体発生装置にそれぞれ接続され、前記複数の第1の気体発生装置により発生された気体を前記複数の処理装置に供給するための複数の第1の配管と、
前記複数の第1の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第1の開閉手段と、
各第1の配管と他の第1の配管との間に接続される第2の配管と、
前記第2の配管に設けられ、流路を開閉するための第2の開閉手段とを備えることを特徴とする気体供給システム。
【請求項2】
前記複数の第1の開閉手段および第2の開閉手段の開閉を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、前記一の第1の配管に接続される処理装置に他の第1の配管に接続される第1の気体発生装置から気体が供給されるように前記第2の開閉手段を開放状態にするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の気体供給システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、前記第2の開閉手段を上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなったときに前記第2の開閉手段を開放状態にするように構成されていることを特徴とする請求項2記載の気体供給システム。
【請求項4】
気体を用いた処理を行う複数の処理装置に気体を供給する気体供給システムであって、
気体を発生させる複数の第1の気体発生装置と、
前記複数の第1の気体発生装置にそれぞれ接続され、前記複数の第1の気体発生装置により発生された気体を前記複数の処理装置に供給するための複数の第1の配管と、
前記複数の第1の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第1の開閉手段と、
前記複数の処理装置に共通に設けられ、気体を発生させる第2の気体発生装置と、
前記第2の気体発生装置により発生された気体を前記複数の処理装置にそれぞれ供給するための複数の第3の配管と、
前記複数の第3の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第3の開閉手段とを備えることを特徴とする気体供給システム。
【請求項5】
前記複数の第1の開閉手段および前記複数の第3の開閉手段の開閉動作を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、前記一の第1の配管に接続される処理装置に前記第2の気体発生装置から気体が供給されるように前記一の第1の配管に対応する第3の開閉手段を開放状態にするように構成されていることを特徴とする請求項4記載の気体供給システム。
【請求項6】
気体を用いた処理を行う複数の処理装置に気体を供給する気体供給システムであって、
気体を発生させる複数の第1の気体発生装置と、
前記複数の第1の気体発生装置にそれぞれ接続され、前記複数の第1の気体発生装置により発生された気体を前記複数の処理装置に供給するための複数の第1の配管と、
前記複数の第1の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第1の開閉手段と、
前記複数の処理装置に共通に設けられ、気体を発生させる第3の気体発生装置と、
前記第3の気体発生装置に接続される第4の配管と、
前記第4の配管と前記複数の第1の開閉手段の下流側における前記複数の第1の配管の部分との間にそれぞれ接続される複数の第5の配管と、
前記複数の第5の配管にそれぞれ設けられ、流路を開閉するための複数の第4の開閉手段とを備えることを特徴とする気体供給システム。
【請求項7】
前記複数の第1の開放手段および前記複数の第4の開放手段の開閉動作を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記複数の第1の配管のうち一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、前記一の第1の配管に接続される処理装置に前記第3の気体発生装置から気体が供給されるように前記一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されていることを特徴とする請求項6記載の気体供給システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記一の第1の配管に設けられた第1の開閉手段を閉止状態にした場合、前記一の第1の配管に対応する第4の開閉手段の上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなったときに前記一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されていることを特徴とする請求項7記載の気体供給システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にした場合、前記第4の配管内の圧力が予め定められた値よりも低い場合に、前記一の第1の配管に接続される処理装置に他の第1の配管に接続される第1の気体発生装置から気体が供給されるように前記他の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されていることを特徴とする請求項7または8記載の気体供給システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記一の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にした場合、前記他の第1の配管に対応する第4の開閉手段の上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなったときに前記他の第1の配管に対応する第4の開閉手段を開放状態にするように構成されていることを特徴とする請求項9記載の気体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−52314(P2011−52314A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205162(P2009−205162)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】