説明

気化量を増減設定可能な風力気化発生器

【課題】 気化量を増減設定可能な機器組込用の風力気化発生器を提供すること。
【解決手段】
気化対象溶液18を貯蔵する水槽2と、気化フィルター素片7を自立・保持させるための風向きに平行に複数の溝を設けた2枚のフィルター保持板5、6を2本の支柱などにより上下に連結したフィルター保持部10を、長方形の開口部を設けた水槽の蓋3に固定し、吸水・蒸発性の素材からなる気化フィルター素片7を、フィルター保持部10に挿入して、気化フィルター素片を水槽2に自立させて、風力により水槽2内の溶液18を気化させる。気化量の増減は気化フィルター素片7枚数を増減することにより可能にする。また、水槽内の溶液18が外部から見えるため、溶液の補充が容易になる。更に、水槽2と気化フィルター保持部10を一体化させた構造にしたため、本発明の気化発生器1を組み込んだ液体気化装置を小型化することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水・蒸発性素材を使い、風力により液体を強制気化させるための気化発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、強制気化式の気化装置として、加湿器が使用されている。これらは吸湿性の高い不織布などの気化フィルターの下部を水の入った容器に自立させ、気化フィルターの上部に送風ファンによる吸気を通過させて液体を気化させることを応用している。一般的には、吸気の全量が気化フィルターを通過する構造になっているため、装置を設置する空間容積や温度・湿度などの環境に合せて加湿量を増減させるためには、ファンの回転数を変えて調節している。その結果、送風ファンの回転数が低くなると気化量が減るが同時に風量が小さくなり、気化した気体を拡散させる能力も低下する。拡散能力を高いままで気化量を下げるためには、タイマーによるファンモーターのオン・オフ運転など複雑な電子制御が必要になる。また、気化対象溶液を貯蔵する水槽が装置本体と一体化しており、結果として装置が大型化する。更に、気化フィルターの配置が装置内部の奥に配置されており、気化フィルターの清掃に手間が掛かる。
【0003】
特許文献1の発明では、気化するための気化フィルターの気化面積が一定で、気化量の調節は送風機の風量を切り替えて行う。さらに、気化フィルターは装置内部の奥に配置されているため、フィルターが汚れた時の清掃に手間が掛かる。
また、特許文献2の発明では、必要な加湿量に応じて気化フィルターの構成体の枚数を増減調整することができるとあるが、運転開始後に行うとコスト増加を招く。更に腐食性のある溶液の気化には適していない。
また、特許文献3の本発明者が発明した自然気化式液体気化装置では、気化フィルターの枚数を変えて気化量を増減設定可能である。しかし、風力を使わずに気化させる自然気化方式のため、風力による強制気化に使用すると、気化フィルターが風圧で気化フィルターが変形し易く、更に、気化量を高めるためには気化フィルターの面積を大きくする必要があり、機器への組込みには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−236685
【特許文献2】特開2003−74916
【特許文献3】特願2009−261737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気化量の変更を、複雑な電子制御による送風ファンの風量の増減に頼らずに、気化量を変更可能な小型の気化発生器が要望されている。
【0006】
また、一般的に、脱臭・除菌溶液の気化ガスは空気より重く、装置から広範囲に拡散させるためには大きな風量が必要となることから、空気抵抗の小さい気化発生器が要望されている。
【0007】
液体気化装置や既設の構造物への取り付け・取り外しが容易で、気化フィルターの点検・清掃が簡単な気化発生器が要望されている。
【0008】
また、一般に気化フィルターを使用する液体気化装置の気化対象溶液は水道水などの清水に限られており、脱臭や除菌溶液などの腐食性のある液体を気化させるには装置の耐久性から困難でした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1に記載の発明は、液体気化装置に使われる気化発生器1に係わり、気化対象溶液を貯蔵する水槽2と、気化フィルター素片7を自立・保持させるための風向きに平行に複数の溝を設けた2枚のフィルター保持板5、6を2本の支柱9など介して組み立てたフィルター保持部10を、長方形の開口部を設けた水槽の蓋3に固定し、吸水・蒸発性の素材からなる気化フィルター素片7を、フィルター保持部10の上下2箇所の溝に挿入し、気化フィルター素片7の下部を気化対象の溶液18が貯蔵されている水槽2に自立させて、上部を通風路に露出させて風力により気化させる。気化量の増減は気化フィルター素片7枚数を増減することにより可能にしたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、気化フィルターが複数の気化フィルター素片7で構成されているため、任意枚数の気化フィルター素片7をフィルター保持部10の溝に装着すれば、好みの気化量が設定可能になる。水槽2と複数の気化フィルター素片7を挿入したフィルター保持部10を一体化させた構造にしたため、図6に示すように、本発明の気化発生器1を組み込むことにより液体気化装置例13を小型化できる。
【0011】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、気化フィルター素片7の中心線12を水槽蓋3の中心線11より風下側に寄せて配置し、気化フィルター素片7の風上側に広い空間を設けたこと特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、図6に示すように、気化フィルターの風上側に広い空間を設けられるので、この部分に送風ファンを配置することで、吸気口14から放出口15までの通風路を短くすることができ、装置の小型化が可能になる。
【0013】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、水槽2の材質を水槽2内の溶液18が水槽2の側面から見えるものにして、溶液18の残量状況が外部から確認できるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、水槽2材質が溶液18の残量が外部から目視できるため、溶液18の残量計を備えなくても溶液18が空の状態での運転を防ぐことが可能になる。
【0015】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、水槽蓋3の端に溶液18を補充するための溶液補充口4を設けることにより、溶液18を補充する都度、水槽の蓋3を開けないで行えるようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、本発明の気化発生器1を液体気化装置13に組み込んだ場合、図7に示すように、装置の扉14を開けるだけで、気化発生器1を取り出さなくても溶液補充用ボトル15を使えば水槽蓋3の溶液補充口4から溶液18を水槽2へ補充できる。
【0017】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、水槽2と水槽蓋3及びフィルター保持部10と気化フィルター素片7の材質を耐薬品性の高いものにし、腐食性のある溶液18の気化を可能にすることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、腐食性のある溶液18に耐えられる構造にしたことから、従来、ハンドスプレイを使って脱臭・除菌溶液を散布していたが、本発明品を組み込んだ液体気化装置13を使うことで、人手を使わずに広い空間に脱臭・除菌溶液18を微細な分子レベルで気化・拡散させることが可能になり、少ない液量で効果をあげることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の気化発生器1にあっては、設置対象とする空間容積や居住者数などの環境条件に合わせ、気化フィルター素片数7を変えるだけで気化量の増減が可能なため多様なニーズに対応できる。
【0020】
また、気化フィルター素片7が風向に対して平行に配置されて空気抵抗が小さいため、低風圧の送風ファンでも気化された気体を広範囲に拡散できる。
【0021】
また、水槽2と複数の気化フィルター素片7を挿入したフィルター保持部10を一体化させた構造にしたため、図7に示すように送風ファンを気化フィルター素片7に接近させた配置が可能になり、装置の小型化に役立つ。更に、水槽2へ溶液18の補充は気化発生器1を装置に取り付けたままでも溶液補充用ボトル15を使って可能である。
【0022】
また、空気より重い気体を発生する溶液18を気化させる場合、気化した気体を効果的に拡散させるために、卓上より高い壁面に設置することが多い。その場合、水槽の溶液18の残量が目視できるので、溶液18の補充の確認に役立つ。
【0023】
また、水槽2とフィルター保持部10と気化フィルター素片7の材質を耐食性の高いものにしているため、腐食性のある脱臭・除菌溶液18の気化にも利用できる。
【0024】
また、気化発生器1を単体でエアコンや送風機の近辺や図9のように送風ダクト内に設置すると、風力を発生させるための送風ファンが必要ないので経済的な運用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わる気化発生器を模擬的に示す斜視図
【図2】本発明に係わる気化フィルター保持部を模擬的に示す斜視図
【図3】本発明に係わる気化フィルター素片を模擬的に示す斜視図
【図4】本発明に係わる気化発生器の気化フィルター素片の配置を模擬的に示す断面図
【図5】本発明に係わる気化発生器のフィルター素片の増減状態を模擬的に示す側面図
【図6】本発明に係わる気化発生器を取り付けた液体気化装置例の断面図
【図7】本発明に係わる気化発生器を液体気化装置例に取り付けた場合の溶液の補充方法を示す断面図
【図8】本発明に係わる気化発生器を送風ダクトに設置した場合の断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明に係わる気化発生器1の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係わる気化発生器1を模擬的に示す斜視図であり、気化対象溶液18を貯蔵する水槽2と、気化フィルター素片7を自立・保持させるための風向きに平行に複数の溝を設けた2枚のフィルター保持板5、6と2本の支柱9を介して組み立てたフィルター保持部10を、長方形の開口部を設けた水槽の蓋3に固定し、吸水・蒸発性の素材からなる任意枚数の気化フィルター素片7を、フィルター保持部10の上下2箇所の溝に挿入し、気化フィルター素片7の下部を溶液18が貯蔵されている水槽2に自立させ、上部を通風路に露出させて風力により気化させる。気化量の増減は気化フィルター素片7を増減することにより可能になる。また、蓋3には溶液補充口穴4が開けられている。
【0027】
図2は、本発明に係わるフィルター保持部10を模擬的に示す斜視図であり、フィルター下保持板5とフィルター上保持板6と2本の支柱9により組み立てられたフィルター保持部10は長方形の開口部を備えた水槽蓋3に固定される。
【0028】
図3は、本発明に係わる気化フィルター素片7を模擬的に示す斜視図で、下側の吸水部分と上側の気化部分の幅を同寸法にして、加工コストの低減化を図っている。さらに、これにより気化フィルターの上部の気化部分が通気により汚れた場合、上下を変えれば再利用が可能となる。
【0029】
図4は、本発明に係わる気化発生器1の断面図で、気化フィルター素片7の中心線12を蓋の中心線11より風下側にずらして、風上側にファンの設置空間を設けている。気化フィルター素片は溶液18が入っている水槽2の底まで挿入する。
【0030】
図5は、本発明に係わる気化発生器1の気化フィルター素片7数の増減状態を示す断面図であり、装置へ組込後でも気化発生器1を装置から引き出せば、気化フィルター素片7を増減させて気化量を増減できる。
【0031】
図6は、本発明に係わる気化発生器1を取り付けた液体気化装置例13の断面図であり、気化発生器1の近傍に送風ファンを配置することが可能で、吸気口14と放出口15間の通風路が短くなり装置の小型化が可能になる。
また、送風ファンの風量を気化発生器1と気化発生器1の上部空間の両方を通過するようにすれば、風圧の低下が抑えられ、気化された気体を広範囲に拡散できる。
【0032】
図7は、本発明に係わる気化発生器1を取り付けた液体気化装置例13へ溶液18を補充する方法を示した断面図であり、液体気化装置13の扉16を開けるだけで溶液補充用ボトル17を使って気化発生器1の水槽2へ溶液18を補充することが可能である。
【0033】
図8は、本発明に係わる気化発生器1を送風ダクトに取り付けた場合の断面図であり、フィルター上保持板6の大きさの穴をダクトに開けることで設置が可能になる。この場合、ダクト内の風力を活用できるので、単独の送風ファンが必要ないため低コストでの運用が可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 気化発生器
2 水槽
3 水槽の蓋
4 溶液補充口
5 フィルター下保持板
6 フィルター上保持板
7 気化フィルター素片
8 風向
9 支柱
10 フィルター保持部
11 水槽蓋の中心線
12 気化フィルター素片の中心線
13 気化発生器を組み込んだ液体気化装置例
14 液体気化装置例の吸気口
15 液体気化装置例の放出口
16 液体気化装置例の扉
17 溶液補充用ボトル
18 溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化対象溶液を貯蔵する水槽と、気化フィルター素片を自立・保持させるための風向きに平行に複数の溝を設けた2枚のフィルター保持板を2本の支柱などを介して組み立てたフィルター保持部を、長方形の開口部を設けた水槽の蓋に固定し、吸水・蒸発性の素材からなる気化フィルター素片を、フィルター保持部の上下2箇所の溝に挿入し、気化フィルター素片の下部を気化対象の溶液が貯蔵されている水槽に自立させて、上部を通風路に露出させて風力により気化させる。気化量の増減は気化フィルター素片枚数を増減することにより可能にしたことを特徴とする気化発生器。
【請求項2】
気化フィルター素片を水槽蓋の中心位置より風下側に寄せて配置し、気化フィルター素片の風上側に広い空間を設けたこと特徴とする請求項1に記載の気化発生器。
【請求項3】
水槽の材質を水槽内の溶液が水槽の側面から見えるものにして、溶液の残量状況が外部から確認できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の気化発生器。
【請求項4】
水槽蓋の端に溶液を補充するための溶液補充口を設けることにより、溶液を補充する都度、水槽の蓋を開けないで行えるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の気化発生器。
【請求項5】
水槽と水槽蓋及びフィルター保持部と気化フィルター素片の材質を耐薬品性の高いものにし、腐食性のある溶液の気化を可能にすることを特徴とする請求項1に記載の気化発生器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−169490(P2011−169490A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32171(P2010−32171)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(304031553)
【Fターム(参考)】