説明

気圧センサを用いて制御データの送信タイミングを制御する携帯端末、位置管理サーバ、プログラム及び方法

【課題】携帯端末に内蔵されたセンサによって検出されたセンサ情報を、ユーザ操作に基づく通話通信データの送受信に影響を与えないタイミングで、サーバへ送信することができる携帯端末、位置管理サーバ、プログラム及び方法を提供する。
【解決手段】携帯端末は、気圧センサを内蔵しており、気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する移行状態検出手段と、移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して通信可能な基地局へ送信する制御データ送信手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に搭載されたセンサによって検出されたセンサ情報を、サーバへ送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサの小型化及び高精度化に伴って、携帯電話機のような携帯端末に、1つ以上のセンサが内蔵されてきている。センサとしては、例えば、加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ等があり、種々の周囲情報を計測することができる。
【0003】
従来、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信できないような屋内にあっても、複数のセンサによって検出されたセンサ情報に基づいて、その携帯端末を所持する歩行者の位置を推定する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、加速度センサを用いて利用者の移動距離を推定し、磁気センサを用いて水平方向の移動方向を推定する。そして、これら2つのセンサ情報を用いて、携帯端末の向きを推定し、利用者の体の向きを推定する。更に、気圧センサを用いて、鉛直方向の移動距離及び方向を推定することができる。
【0004】
また、屋内における歩行者の歩行挙動を検出し、その歩行挙動と地図上の特徴地点とを比較し、歩行者の位置を推定する技術がある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、携帯端末に内蔵された距離センサ、方位センサ、気圧(高度)センサ等によって検出されたセンサ情報に基づいて、歩行挙動を判定する。特に、気圧センサによって検出された気圧値に基づいて、屋内における位置を推定している。ここで、エレベータや階段のように、特徴的な気圧変化を表す位置を特徴点とする。このような特徴的な気圧変化が検出された際に、その特徴点を通過したと判断して推定位置を補正する。これによって、位置の推定精度を向上させることができる。
【0005】
尚、カメラ画像を用いて、特定の位置における人の混雑度を推定する技術もある(例えば特許文献3参照)。この技術によれば、画像から捉えられる人物の動きベクトルに着目し、人物の流量を推定する。これによって、人の混雑度を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−281494号公報
【特許文献2】特開2009−229204号公報
【特許文献3】特開2009−110152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献1及び2に記載された技術によれば、検出されたセンサ情報は、携帯端末内における位置推定のために用いられている。このようなセンサ情報は、携帯端末内に留まることなく、位置管理サーバへ送信することも好ましい。位置管理サーバは、多数の携帯端末からセンサ情報を受信することによって、地図全体から見た、人の流量や混雑度を推定することもできる。
【0008】
しかしながら、センサ情報をサーバへ送信するタイミングによっては、ユーザ操作に基づく通話通信データを送受信できない状況が発生する。センサ情報をサーバへ送信するための無線リンクが確立されている場合、携帯端末は、ユーザ操作に基づく発呼を拒否することとなる。
【0009】
そこで、本発明は、ユーザ操作に基づく通話通信データの送受信に影響を与えないタイミングで、制御データを位置管理サーバへ送信することができる携帯端末、位置管理サーバ、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、気圧センサを内蔵した携帯端末であって、
気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する移行状態検出手段と、
移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して基地局へ送信する制御データ送信手段と
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、移行状態検出手段について、
安定状態は、気圧値が時間経過に応じてほぼ一定に変化していない状態であり、
変動状態は、気圧値が時間経過に応じてほぼ一定に増分又は減分している状態であることも好ましい。
【0012】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、制御データ送信手段は、制御データとして気圧値を送信することも好ましい。
【0013】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、制御データ送信手段は、移行状態の検出後、所定時間単位毎に、気圧値を含む制御データを複数回、送信することも好ましい。
【0014】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、制御データ送信手段は、制御データに、加速度センサに基づく加速度データ、地磁気センサに基づく地磁気データ、及び/又は、通話通信用の制御データを更に含めることも好ましい。
【0015】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
当該携帯端末は、スキー場で、リフトに乗車し且つコースを滑走する利用者によって所持されており、
移行状態検出手段について、
第1の移行状態は、低い高度の位置でリフト乗車直後の状態、又は、高い高度の位置でコース滑走開始直後の状態を表し、
第2の移行状態は、高い高度の位置でリフト降車直後の状態、又は、低い高度の位置でコース滑走終了直後の状態を表すことも好ましい。
【0016】
本発明によれば、前述した携帯端末から、制御データとして気圧値を受信する位置管理サーバであって、
気圧値毎に、高度を登録した高度テーブルと、
高度テーブルの基準となる気圧値及び高度を対応付けた基準位置情報を、外部計測装置から受信する基準位置情報受信手段と、
地図情報を蓄積した地図情報蓄積手段と、
高度テーブルを用いて気圧値から高度を導出し、該高度を地図情報に対応付けて現在位置を推定する現在位置推定手段と
を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の位置管理サーバによれば、現在位置推定手段によって推定された多数の携帯端末の現在位置に基づいて、所定位置範囲に応じた混雑度を導出する混雑度推定手段を更に有することも好ましい。
【0018】
前述した位置管理サーバと通信可能な外部計測装置であって、
当該外部計測装置は、利用者によって所持される携帯端末が存在するいずれかの箇所に設置されており、
気圧センサと、
気圧センサによって検出された気圧値、及び、当該設置位置における固定的な高度データを含む基準位置情報を、位置管理サーバへ送信する送信手段と
を有することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前述した携帯端末と、前述した位置管理サーバとを有するシステムであって、
地図情報蓄積手段は、リフト乗車口、リフト降車口、コース滑走開始口及び/又はコース滑走終了口における高度と、リフトにおける経過時間に応じた気圧値の変化(傾斜)及び/又はコースにおける経過時間に応じた気圧値の変化とを蓄積しており、
現在位置推定手段は、携帯端末が移行状態にある際に、複数回、気圧値を受信した場合、時刻tにおける気圧値と、それ以前の時刻t−tmにおける気圧値との差分から、経過時間に応じた気圧値の変化を算出し、その気圧値の変化に最も近い地図情報におけるリフト及びコースの気圧値の変化を検出し、現在、そのリフト又はコースに位置すると推定することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、気圧センサを内蔵した携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する移行状態検出手段と、
移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して基地局へ送信する制御データ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、前述した携帯端末から、制御データとして気圧値を受信する位置管理サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
気圧値毎に、高度を登録した高度テーブルと、
高度テーブルの基準となる気圧値及び高度を対応付けた基準位置情報を、外部計測装置から受信する基準位置情報受信手段と、
地図情報を蓄積した地図情報蓄積手段と、
高度テーブルを用いて気圧値から高度を導出し、該高度を地図情報に対応付けて現在位置を推定する現在位置推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、気圧センサを内蔵した携帯端末を用いた制御データ送信方法において、
気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する第1のステップと、
移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して基地局へ送信する第2のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の携帯端末、位置管理サーバ、プログラム及び方法によれば、携帯端末に内蔵された気圧センサを用いて、その気圧値の変化の状態に基づいて、ユーザ操作に基づく通話通信データの送受信に影響を与えないタイミングで、制御データを位置管理サーバへ送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】スキー場における本発明のシステム構成図である。
【図2】図1における高度と気圧値との関係を表す説明図である。
【図3】利用者の高度変化を伴う移動に応じた、気圧値の変化を表す説明図である。
【図4】本発明における携帯端末の機能構成図である。
【図5】本発明における位置管理サーバの機能構成図である。
【図6】地図の中のリフト及びコースについて、時間経過に応じた気圧値を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、スキー場における本発明のシステム構成図である。
【0027】
図1によれば、スキー場のゲレンデが表されており、スキー客(利用者)が乗車するリフトと、利用者が滑走するコースとが整備されている。利用者は、例えば携帯電話機のような携帯端末1を所持している。グループでスキー場に来ている利用者同士は、携帯電話機を用いて、互いの位置を確認するために、通話やメールによって通信する場合も多い。
【0028】
携帯電話機1は、アクセスネットワーク(携帯電話網)に接続される基地局3との間で無線リンクによって接続される。アクセスネットワークは、インターネットに相互接続されており、図1によれば、そのインターネットには、位置管理サーバ2が接続されている。位置管理サーバ2は、利用者が所持する携帯電話機1から、制御データを受信することによって、スキー場全体の利用者の流量や混雑度を判定することができる。
【0029】
本発明によれば、携帯電話機1は、気圧センサを内蔵している。勿論、加速度センサや地磁気センサ等を別途内蔵するものであってもよい。気圧センサは、その携帯電話機1の高度に応じて、気圧値に基づく電圧値を出力する。
【0030】
また、図1によれば、スキー場における1つ以上のいずれかの箇所に、外部計測装置4が設置されている。外部計測装置4は、設置されているために、高度は固定値となる。また、外部計測装置4は、気圧センサを有し、その高度における気圧値を計測する。
【0031】
図2は、図1における高度と気圧値との関係を表す説明図である。
【0032】
図2によれば、高度が低いほど、気圧は高い。一方で、高度が高いほど、気圧は低い。しかしながら、気圧は、天候等によって変化する。そのために、外部計測装置4によって、基準点の高度と気圧との関係を対応付ける。例えば、地図上であっても、同じ高度は、等高線によって表される。高度変化が大きい場所ほど、気圧によって、地図上の位置が大まかに推定できる。
【0033】
図3は、利用者の高度変化を伴う移動に応じた、気圧値の変化を表す説明図である。
【0034】
図3によれば、利用者が、低い高度の位置からリフトAに乗車して頂上に到達し、その頂上からコースAを滑走している。この時間経過に応じて、携帯電話機1に内蔵された気圧センサによって検出された気圧値の変化が、図3に表されている。気圧センサは、所定時間単位(tm)毎に計測される。現時刻tの気圧値と、それ以前の時刻t−tmの気圧値との差を算出し続けることによって、時間経過に応じた気圧変化を検出することができる。尚、所定時間単位tmは、システムに応じて任意に設定される。
【0035】
本発明によれば、気圧値の変化に基づいて、「安定状態」及び「変動状態」を検出する。これら2つの状態は、例えば以下のように「状態判別コード」に対応付けられる。
「安定状態」:[状態判別コード1]
気圧値が時間経過に応じてほぼ一定に変化していない状態
「変動状態」:[状態判別コード2]
気圧値が時間経過に応じてほぼ一定に増分又は減分している状態
【0036】
また、気圧値の変化に基づいて、2つの移行状態を検出する。これら2つの状態は、例えば以下のように「送信タイミング判別コード」に対応付けられる。
「第1の移行状態」:[送信タイミング判別コード1]
時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行している状態
「第2の移行状態」:[送信タイミング判別コード2]
時間経過に伴って、変動状態から安定状態へ移行している状態
【0037】
当該携帯端末が、スキー場で、リフトに乗車し且つコースを滑走するユーザによって所持されているとする。このような場合、第1の移行状態及び第2の移行状態は、以下のように表される。
「第1の移行状態」:低い高度の位置でリフト乗車直後の状態、又は、高い高度の位置でコース滑走開始直後の状態を表す。
「第2の移行状態」:高い高度の位置でリフト降車直後の状態、又は、低い高度の位置でコース滑走終了直後の状態を表す。
【0038】
(S31)リフト乗車口における乗車前の待ち状態(安定状態)
気圧値(高度)の変化が無い。利用者の位置する高度は低いために、気圧値が高い状態で一定時間経過する。この時間帯は、利用者は、携帯電話機を操作し、他者と通話するか又はデータを送受信する可能性が高い。
【0039】
(S32)リフト乗車直後(安定状態->変動状態)
気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行している状態(第1の移行状態)となる。この時間帯に、利用者が携帯電話機を操作する可能性はほとんどない。
【0040】
(S33)リフト乗車中(変動状態)
気圧値が、時間経過に伴って、一定の割合で低下している状態、即ち、高度が一定の割合で上昇している状態となる。この時間帯は、利用者は、リフト乗車中であるので、携帯電話機を操作する可能性がある。
【0041】
(S34)リフト降車直後(変動状態->安定状態)
気圧値が、時間経過に伴って、変動状態から安定状態へ移行している状態(第2の移行状態)となる。この時間帯に、利用者が携帯電話機を操作する可能性はほとんどない。
【0042】
(S35)コース頂上における滑走前の待ち状態(安定状態)
気圧値(高度)の変化が無い。利用者の位置する高度は高いために、気圧値が低い状態で一定時間経過する。この時間帯は、利用者は、携帯電話機を操作し、他者と通話するか又はデータを送受信する可能性が高い。
【0043】
(S36)滑走開始直後(安定状態->変動状態)
気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行している状態(第1の移行状態)となる。この時間帯に、利用者が携帯電話機を操作する可能性はほとんどない。
【0044】
(S37)滑走中(変動状態)
気圧値が、時間経過に伴って、一定の割合で上昇している状態、即ち、高度が一定の割合で低下している状態となる。この時間帯は、利用者は、携帯電話機を操作する可能性はあまり無いのかもしれない。
【0045】
(S38)滑走終了直後(変動状態->安定状態)
気圧値が、時間経過に伴って、変動状態から安定状態へ移行している状態(第2の移行状態)となる。この時間帯に、利用者が携帯電話機を操作する可能性はほとんどない。
【0046】
(S39)停止中(安定状態)
利用者は、滑走後、休憩状態にある。そのために、気圧値(高度)の変化が無い。利用者の位置する高度は低いために、気圧値が高い状態で一定時間経過する。この時間帯は、利用者は、携帯電話機を操作し、他者と通話するか又はデータを送受信する可能性がある。
【0047】
図3のように、スキー場のゲレンデでは、利用者が携帯端末を操作するタイミングは、ある程度限定される。即ち、リフト乗車直後(S32)、リフト降車直後(S34)、滑走開始直後(S36)及び滑走終了直後(S38)には、ユーザ操作に基づく通話通信データは送受信されない。そのため、この時間帯に、制御データを送信することによって、ユーザ操作に基づく通話通信データの送受信に影響を与えないようにすることができる。
【0048】
図4は、本発明における携帯端末の機能構成図である。
【0049】
図4によれば、携帯端末1は、少なくとも気圧センサ100を内蔵する。その他、加速度センサ101及び地磁気センサ102を備えるものであってもよい。また、携帯端末1は、無線通信インタフェース部111と、ユーザインタフェース部112とを有する。更に、携帯端末1は、ユーザデータ送受信部120と、移行状態検出部121と、制御データ送信部122とを有する。これら機能構成部は、携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0050】
ユーザデータ送受信部120は、ユーザ操作に基づく通話通信データを、無線通信インタフェース部111を介して、相手方装置と通信する。
【0051】
移行状態検出部121は、気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する。
【0052】
制御データ送信部122は、移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して通信可能な基地局へ送信する。携帯端末1が位置管理サーバ2へ送信する制御データとして、例えば以下のようなデータある。
(1)端末ID(識別子)
(2)時刻
(3)気圧センサによって計測された気圧値
(4)加速度センサによって計測された加速度データ
(5)地磁気センサによって計測された地磁気データ
(6)移動状態判別コード
(7)サーバ通信タイミング判別コード
【0053】
制御データ送信部122は、制御データを送信した後、そのデータを消去する。そして、次の送信タイミングまで、センサ情報を収集し且つ蓄積する。そして、その送信タイミングに達した際に、そのセンサ情報を含む制御データを、位置管理サーバ2へ送信する。尚、送信される制御データは、センサ情報に限られず、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外のデータであってよい。
【0054】
図5は、本発明における位置管理サーバの機能構成図である。
【0055】
図5によれば、位置管理サーバ2は、携帯端末1から、制御データとして気圧値を受信する。位置管理サーバ2は、通信インタフェース部20と、センサ情報受信部21と、センサ情報蓄積部22と、基準位置情報受信部23と、高度テーブル24と、地図情報蓄積部25と、現在位置推定部26と、混雑度推定部27とを有する。通信インタフェース部20は、ネットワークを介して、携帯端末1及び外部計測装置4と通信する。通信インタフェース部以外のこれら機能構成部は、位置管理サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0056】
センサ情報受信部21は、携帯端末1から、通信インタフェース部20を介して、気圧値を含む制御データを受信する。図1によれば、利用者におけるリフト乗車直後(S32)、リフト降車直後(S34)、滑走開始直後(S36)及び滑走終了直後(S38)に、携帯端末1から制御データを受信する。制御データに含まれる気圧値は、センサ情報蓄積部22へ出力される。制御データが、気圧値以外に、加速度データ、地磁気データ及び位置情報等を含む場合、それら情報も、センサ情報蓄積部22へ出力される。
【0057】
センサ情報蓄積部22は、携帯端末の識別子(ID)に対応付けて、気圧値を蓄積する。尚、その他のセンサ情報を蓄積することも好ましい。
【0058】
基準位置情報受信部23は、外部計測装置4から、通信インタフェース部20を介して、基準位置情報を受信する。基準位置情報は、高度テーブルの基準となる気圧値及び高度を対応付けたものである。この基準位置情報は、高度テーブル24へ出力される。
【0059】
高度テーブル24は、複数の気圧値に対応する高度を登録する。高度テーブル24は、基準位置情報に基づいて、気圧値と高度との関係を更新する。
【0060】
地図情報蓄積部25は、地図情報を蓄積する。この地図情報は、等高線のような高度を含む。例えば、図1によれば、地図情報蓄積部25は、リフト乗車口、リフト降車口、コース滑走開始口及び/又はコース滑走終了口における高度と、リフトにおける経過時間に応じた気圧値の変化(傾斜)及び/又はコースにおける経過時間に応じた気圧値の変化とを蓄積する。
【0061】
現在位置推定部26は、高度テーブル24を用いて気圧値から高度を導出し、その高度を地図情報に対応付けて現在位置を推定する。
【0062】
図6は、地図の中のリフト及びコースについて、時間経過に応じた気圧値を表すグラフである。
【0063】
図6のグラフは、リフト及びコースについて、時間経過に対する気圧値の変化(傾斜)を表す。このグラフによって、少なくとも気圧値のみの変化に基づいて、いずれのリフト及びコースに位置しているかを推定することができる。従って、携帯端末にとって多くの消費電力を要するような、GPS衛星からの電波に基づいて測位する必要がない。
【0064】
図6のグラフによれば、リフト及びコース毎に、以下の情報が対応付けられている。
(1)リフト又はコースの識別子(ID)
(2)始点高度:リフトに乗る低い高度、又は、滑走開始の高い高度
(3)終点高度:リフトから降りる高い高度、又は、滑走終了の低い高度
(4)気圧変化:時間間隔tm毎の気圧値
(5)乗車時間:リフト乗車時間、又は、滑走時間
【0065】
現在位置推定部26は、気圧値から高度を導出することができるが、その高度から直接的に位置まで推定することはできない。その高度に、1つのリフト乗車口(若しくは降車口)又は1つのコースの滑走開始場所(若しくは滑走終了場所)しかない場合、リフト又はコースを特定することができる。一方で、その高度に、複数のリフト乗車口又は複数のコース滑走開始場所がある場合、いずれのリフト又はコースかを、直接的に選択することができない。
【0066】
本発明によれば、携帯端末1は、所定時間単位毎に、気圧値を含む制御データを、位置管理サーバ2へ送信する。従って、位置管理サーバ2は、時刻tの気圧値と、その以前の時刻t−tmの気圧値との差分を算出することができる。そうすると、経過時間(t−tm)における気圧値の変化、即ち傾斜を、導出することができる。この傾斜と、図5のグラフとを比較し、最も傾斜が近いリフト又はコースを選択することができる。
【0067】
傾斜に基づくリフト又はコースの現在位置の推定は、リフト乗車直後(S32)とリフト降車直後(S34)とで、2回、実行することができる。従って、リフト乗車直後に現在位置の推定を誤ったとしても、リフト降車直後にその位置の推定を補正することができる。同様に、滑走開始直後(S36)と滑走終了直後とでも、2回、実行することができる。
【0068】
尚、他の実施形態として、リフト及びコースの方位角を更に用いて、現在位置を推定することも好ましい。リフト及びコースの方位角は、地図情報に予め登録されている。方位角とは、基準方位に対する、リフト又はコースの始点と終点とを結ぶ線の角度をいう。方位角を更に用いる場合、制御データに、更に地磁気データ(又は加速度データ)が含まれる。例えば、特許文献2に記載の技術によれば、加速度センサ及び地磁気センサを用いて、携帯端末の向きから方位角を推定することができる。そして、携帯端末1は、その方位角を含む制御データを、所定時間単位毎に、位置管理サーバ2へ送信する。位置管理サーバ2は、時刻tにおける方位角と、その以前の時刻t−tmにおける方位角との差を算出し、地図情報を用いてリフト又はコースの方位角と比較して、その現在位置を推定することもできる。
【0069】
混雑度推定部27は、現在位置推定部26によって推定された多数の携帯端末の現在位置に基づいて、所定位置範囲に応じた混雑度を導出する。本発明によれば、各端末のリフト乗車タイミング、リフト降車タイミング、滑走開始タイミング、滑走終了タイミングを管理することができるので、リフトの乗車待ち人数、リフトの乗車人数、コースの滑走待ち人数、コースの滑走人数を推定することができる。
【0070】
尚、本発明によれば、リフトの乗車待ち人数やコースの滑走待ち人数は、その時点で、制御データが送信されないので、リアルタイムには推定することはできない。しかしながら、リフトの乗車人数やコースの滑走人数は、リフトの乗車待ち人数やコースの滑走待ち人数に対して相関がある。即ち、過去のリフトの乗車人数と、現在のコースの滑走待ち人数とは、ほぼ一致する。
【0071】
そして、混雑度推定部27は、推定された地図上の混雑度を、携帯端末1へ送信することができる。携帯端末1は、地図上に混雑度を表示する。これによって、携帯端末1を操作するユーザは、地図上のいずれの場所が混雑しているかを知ることができる。
【0072】
以上、詳細に説明したように、本発明の携帯端末、位置管理サーバ、プログラム及び方法によれば、携帯端末に内蔵された気圧センサを用いて、その気圧値の変化の状態に基づいて、ユーザ操作に基づく通話通信データの送受信に影響を与えないタイミングで、制御データを位置管理サーバへ送信することができる。また、位置管理サーバは、多数の携帯端末から、気圧値を含む制御データを受信することによって、携帯端末の位置を推定することができる。これによって、地図上の混雑度も推定することがでる。
【0073】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0074】
1 携帯端末、携帯電話機
100 気圧センサ
101 加速度センサ
102 地磁気センサ
111 無線通信インタフェース部
112 ユーザインタフェース部
120 ユーザデータ送受信部
121 移行状態検出部
122 制御データ送信部
2 位置管理サーバ
20 通信インタフェース部
21 センサ情報受信部
22 センサ情報蓄積部
23 基準位置情報受信部
24 高度テーブル
25 地図情報蓄積部
26 現在位置推定部
27 混雑度推定部
3 基地局
4 外部計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気圧センサを内蔵した携帯端末であって、
前記気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する移行状態検出手段と、
前記移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して基地局へ送信する制御データ送信手段と
を有することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記移行状態検出手段について、
前記安定状態は、前記気圧値が時間経過に応じてほぼ一定に変化していない状態であり、
前記変動状態は、前記気圧値が時間経過に応じてほぼ一定に増分又は減分している状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記制御データ送信手段は、前記制御データとして前記気圧値を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記制御データ送信手段は、前記移行状態の検出後、所定時間単位毎に、前記気圧値を含む前記制御データを複数回、送信することを特徴とする請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記制御データ送信手段は、前記制御データに、加速度センサに基づく加速度データ、地磁気センサに基づく地磁気データ、及び/又は、通話通信用の制御データを更に含めることを特徴とする請求項3又は4に記載の携帯端末。
【請求項6】
当該携帯端末は、スキー場で、リフトに乗車し且つコースを滑走する利用者によって所持されており、
前記移行状態検出手段について、
第1の移行状態は、低い高度の位置でリフト乗車直後の状態、又は、高い高度の位置でコース滑走開始直後の状態を表し、
第2の移行状態は、高い高度の位置でリフト降車直後の状態、又は、低い高度の位置でコース滑走終了直後の状態を表す
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の携帯端末から、前記制御データとして前記気圧値を受信する位置管理サーバであって、
気圧値毎に、高度を登録した高度テーブルと、
前記高度テーブルの基準となる気圧値及び高度を対応付けた基準位置情報を、外部計測装置から受信する基準位置情報受信手段と、
地図情報を蓄積した地図情報蓄積手段と、
前記高度テーブルを用いて前記気圧値から高度を導出し、該高度を前記地図情報に対応付けて現在位置を推定する現在位置推定手段と
を有することを特徴とする位置管理サーバ。
【請求項8】
前記現在位置推定手段によって推定された多数の携帯端末の現在位置に基づいて、所定位置範囲に応じた混雑度を導出する混雑度推定手段を更に有することを特徴とする請求項7に記載の位置管理サーバ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の位置管理サーバと通信可能な前記外部計測装置であって、
当該外部計測装置は、利用者によって所持される前記携帯端末が存在するいずれかの箇所に設置されており、
気圧センサと、
前記気圧センサによって検出された気圧値、及び、当該設置位置における固定的な高度データを含む基準位置情報を、前記位置管理サーバへ送信する送信手段と
を有することを特徴とする外部計測装置。
【請求項10】
請求項6に記載の携帯端末と、請求項7又は8に記載の位置管理サーバとを有するシステムであって、
前記地図情報蓄積手段は、リフト乗車口、リフト降車口、コース滑走開始口及び/又はコース滑走終了口における高度と、リフトにおける経過時間に応じた気圧値の変化(傾斜)及び/又はコースにおける経過時間に応じた気圧値の変化とを蓄積しており、
前記現在位置推定手段は、前記携帯端末が前記移行状態にある際に、複数回、前記気圧値を受信した場合、時刻tにおける気圧値と、それ以前の時刻t−tmにおける気圧値との差分から、経過時間に応じた気圧値の変化を算出し、その気圧値の変化に最も近い前記地図情報におけるリフト及びコースの気圧値の変化を検出し、現在、そのリフト又はコースに位置すると推定する
ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
気圧センサを内蔵した携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する移行状態検出手段と、
前記移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して基地局へ送信する制御データ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする携帯端末用のプログラム。
【請求項12】
請求項3から6のいずれか1項に記載の携帯端末から、前記制御データとして前記気圧値を受信する位置管理サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
気圧値毎に、高度を登録した高度テーブルと、
前記高度テーブルの基準となる気圧値及び高度を対応付けた基準位置情報を、外部計測装置から受信する基準位置情報受信手段と、
地図情報を蓄積した地図情報蓄積手段と、
前記高度テーブルを用いて前記気圧値から高度を導出し、該高度を前記地図情報に対応付けて現在位置を推定する現在位置推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする位置管理サーバ用のプログラム。
【請求項13】
気圧センサを内蔵した携帯端末を用いた制御データ送信方法において、
前記気圧センサによって計測された気圧値が、時間経過に伴って、安定状態から変動状態へ移行する第1の移行状態、及び/又は、変動状態から安定状態へ移行する第2の移行状態を検出する第1のステップと、
前記移行状態を検出した際に、ユーザ操作に基づく通話通信データ以外の制御データを、無線リンクを介して基地局へ送信する第2のステップと
を有することを特徴とする制御データ送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−229091(P2011−229091A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99340(P2010−99340)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】