説明

気泡を含有した含水ゲル組成物

【課題】軽量で、ソフトな弾性を有し、かつ冷感や温感の持続性がある気泡を含有した含水ゲル組成物を提供すること。
【解決手段】水を主成分とする溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に、気泡状のガスが含有されてなる気泡を含有した含水ゲル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡を含有した含水ゲル組成物に関し、特に、軽量で、ソフトな弾性を有し、かつ冷感や温感の持続性がある気泡を含有した含水ゲル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮物の冷却用や人体に冷感を与えるために、含水ゲル組成物が汎用されている。
しかしながら、これら従来の含水ゲル組成物は、水を主成分とするため、例えば、寝具等に適用した場合、重量が大きくなるという欠点があった。
一方、この欠点を軽減するために、使用する含水ゲル組成物の量を少なくすると、冷感や温感の持続性がなくなるというトレードオフの関係があり、両方の機能を満たすものはなかった。
一方、ベッド、枕、クッション等の寝具に適用されるウレタンフォーム等の発泡体は、軽量で、ソフトな弾性を有し、保温性を有する反面、冷感を得ることはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来の含水ゲル組成物や発泡体によっては得られない、軽量で、ソフトな弾性を有し、かつ冷感や温感の持続性がある気泡を含有した含水ゲル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物は、水を主成分とする溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に、気泡状のガスが含有されてなることを特徴とする。
【0005】
この場合において、前記ポリマーには、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール及びこれらの変性物の少なくとも1種のポリマーを用いることができる。
【0006】
また、溶媒100質量部に対してポリマーを1〜40質量部を溶解したものとすることができる。
【0007】
また、溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に対する気泡の含有割合を0.2〜5倍(容積比)とすることができる。
【0008】
また、デュロメーター硬度計Fタイプにより測定した表面硬度を50以下とすることができる。
【0009】
潜熱蓄熱材を含有したものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物によれば、従来の含水ゲル組成物や発泡体によっては得られない、軽量で、ソフトな弾性を有し、かつ冷感や温感の持続性がある気泡を含有した含水ゲル組成物を得ることができる。
【0011】
特に、潜熱蓄熱材を含有したものは、冷感や温感の持続性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】気泡を含有した含水ゲル組成物及びそれにさらに潜熱蓄熱材を含有させたものの温度特性を示すグラフである。
【図2】本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物の適用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物は、水を主成分とする溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に、気泡状のガスが含有されてなることを特徴とする。
【0015】
この場合において、水を主成分とする溶媒は、水を主成分とするが、凝固点を下げるために、アルコール、エチレングリコール、グリセリン等の有機物や、食塩、硫酸ソーダ等の無機物を加えることができる、
含水ゲル組成物の腐敗を防止するため、市販の防腐剤を加えることができる。
含水ゲル組成物を装飾するために色素や、顔料を加えることができる。
含水ゲル組成物の変色を防止するため、酸化防止剤や紫外線吸収剤等を加えることができる。
【0016】
ポリマーには、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール及びこれらの変性物の少なくとも1種のポリマーを用いることができる。
ポリアクリル酸及びその変性物としては、水に溶解できれば、酸単独、部分的に苛性ソーダ、苛性カリ、アミン等で中和したり、他のアクリル、メタアクリル酸誘導体等との共重合体であってもよい。
ポリビニルアルコール及びその変性物としては、重合度、ケン化などは任意に選択でき、さらに、アセトアセチル化や、アニオン、カチオン化等の変性物でもよい。
さらに必要であれば、他のポリマーを加えることができる。
その他のポリマーの例としては、ポリグリコール酸、デキストリン、アルギン酸、ポリアミノ酸、キトサン、ポリアクリル酸系共重合体等を挙げることができる。
これらのポリマーは架橋剤で三次元に架橋される。
ここで使用される架橋剤は、これらのポリマーと反応性を有する化合物であればよいが、例えば、メチロールメラミン誘導体、親水性エポキシ樹脂、水分散性ポリイソニアネート、ホウ酸、アルコキシチタン誘導体、アルコキシアルミニウム誘導体等を挙げることができる。
さらに、ポリマーと架橋剤の反応を促進するために、アミン、過酸化物等の触媒を加えることができる。
【0017】
ポリマーは、溶媒100質量部に対して1〜40質量部を溶解したものとすることができる。
ポリマーが、溶媒100質量部に対して1質量部未満の場合は、粘性が低くなり、混合物中に気泡を含有した状態を維持しにくくなる。
また、ポリマーが、溶媒100質量部に対して40質量部を超える場合は、硬度が高くなり、ソフトな弾性を得にくくなる。
【0018】
溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に対する気泡の含有割合は、0.2〜5倍(容積比)とすることができる。
気泡の含有割合が、0.2倍(容積比)未満の場合は、重量の軽減効果が小さくなるとともに、ソフトな弾性を得にくくなる。
また、気泡の含有割合が、5倍(容積比)を超える場合は、気泡が大きくなり、ソフトな弾性を得にくくなるとともに、混合物中に気泡を含有した状態を維持しにくくなる。
【0019】
気泡を含有した含水ゲル組成物のデュロメーター硬度計Fタイプにより測定した表面硬度は、50以下とすることができる。
これにより、ソフトな弾性を得ることができる。
【0020】
含水ゲル組成物には、潜熱蓄熱材を含有することができる。
これにより、冷感や温感の持続性をより向上することができる。
潜熱蓄熱材には、例えば、融点が20〜35℃のノルマルパラフィン、アルファオレフィンのエマルジョン等を好適に用いることができる。
すなわち、ノルマルパラフィンやアルファオレフィンは、物質ごとに固有の融点と、融解熱量を有しているが、これらの成分を混合することで、融点を選択することができる。融解熱量は、水が約330kj/kgであるのに対して、約200kj/kgである。
ノルマルパラフィンやアルファオレフィンは疎水性のため、エマルジョン化して、ポリアクリル酸やポリビニルアルコール等の水溶液に加えることができる。
潜熱蓄熱材は、含水ゲル組成物に対して、10〜25重量%添加することが好ましい。
潜熱蓄熱材の添加量が、10%未満の場合は、その効果が得にくくなる。
また、潜熱蓄熱材の添加量が、25重量%を超える場合は、ソフトな弾性を得にくくなる。
【0021】
水を主成分とする溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に気泡状のガスを含有させる方法としては、当該混合物に空気、窒素ガス、炭酸ガス等の任意のガスを添加しながら攪拌するようにしたり、当該混合物を空気、窒素ガス、炭酸ガス等の任意のガス雰囲気中で当該ガスを取り込むようにして攪拌しながら、ゲル化させることにより、当該混合物中に気泡を含有した状態を安定して形成することができる。
また、水を主成分とする溶媒にポリマーに、上記方法によって、気泡状のガスを含有させ後、架橋剤を加え、ゲル化させることにより、当該混合物中に気泡を含有した状態を安定して形成することもできる。
さらに、安定した気泡を含有した含水ゲル組成物を得るために、制泡剤、消泡剤、あるいは、気泡の発生を促進させるためにアニオン性、ノニオン性等の界面活性剤を加えることができる。
【0022】
また、水を主成分とする溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に気泡状のガスを含有させる方法としては、上記方法のほか、発泡剤を使用した化学発泡方法、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩とポリアクリル酸、クエン酸等の有機カルボン酸とを組み合わせて用いることにより、当該混合物中に気泡を含有した状態を形成することができる。
【0023】
この気泡を含有した含水ゲル組成物は、トレードオフの関係があるため従来の含水ゲル組成物や発泡体によっては得られなかった、軽量で、ソフトな弾性を有し、かつ冷感や温感の持続性があるものとすることができ、例えば、ベッド、枕、クッション等の寝具に好適に適用することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を用いて、本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物の詳細を述べるが、本発明の態様は、実施例の範囲に限定されるものではない。
【0025】
[測定方法]
・表面硬度
高分子計器社製デュロメーター硬度計Fタイプで、試料としての10mm以上の厚みを持つ気泡を含有した含水ゲル組成物上に置いたときの支持値を表面硬度とした。異なる3か所で、測定し、その平均値を採用した。
【0026】
・冷感(温感)の持続性
25℃に保持した10×15cmのポリエチレン製の袋に、試料100gを充填したゲル化物を、40℃にホットプレート上に置き、上面の温度が、35℃を超えるまでの時間を計測した。
【0027】
[実施例1]
ポリアクリル酸(互応化学社製RD−148)水溶液(ポリアクリル酸25質量部、水75質量部)100質量部、エポキシ系架橋剤(互応化学社製RD−144)2質量部、増粘剤(日光ケミカルズ社製カーボポールETD−2020)1質量部、増泡剤(川研ファインケミカル社製アミゾールFD)1質量部を混合し、フードミキサーで攪拌し泡立てた後、容器に充填し、気泡の含有割合が3倍(容積比)の含水ゲル組成物を得た。
【0028】
[比較例1]
実施例1と同一配合で、泡立てずにゲル化させた。
【0029】
[実施例2]
アセトアセチル化ポリビニルアルコール(日本合成化学社製Z−320、ケン化度約92%粘度約20mPa・s)10%水溶液100質量部、水分散型ポリイソシアネート(三井化学社製タケネートWD−725)5質量部を、実施例1と同様にして、気泡の含有割合が2倍(容積比)の含水ゲル組成物を得た。
【0030】
[比較例2]
実施例2と同じ組成で、泡立てずにゲル化させた。
【0031】
[実施例3]
実施例2のアセトアセチル化ポリビニルアルコールの代わりに、部分ケン化ポリビニルアルコール(日本合成化学社製GH−17、ケン化度約88、粘度30mPa・s)、架橋剤として、チタンラクテート(マツモトファインケミカル社製 オルガチックスTC−310)を用い、90℃に保持して含水ゲル組成物を得た。
【0032】
[実施例4]
45℃に加熱したノルマルパラフィン(JXホールディングス株式会社製TS−8)45質量部に、45℃に加熱した水51質量部、ポリビニルアルコール(日本合成化学社製GH−17)3質量部、BYK分散剤(BYK社製)1質量部の溶液を激しく攪拌しながら添加した。添加後、攪拌しながら、25℃まで冷却し、ノルマルパラフィンエマルジョンを製造した。
このようにして製造したノルマルパラフィンエマルジョン40質量部と実施例2の10%アセトアセチル化ポリビニルアルコール60質量部の混合物に、水分散型ポリイソシアネート5質量部を加え、実施例1と同様にして、気泡の含有割合が2倍(容積比)の含水ゲル組成物を得た。
【0033】
表1に、実施例1〜4及び比較例1〜2の表面硬度及び冷感持続時間を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように、実施例1〜4の気泡を含有した含水ゲル組成物は、比較例1〜2の含水ゲル組成物と比較して、表面硬度が小さく、冷感持続時間が長いことを確認した。
【0036】
次に、図1に、気泡を含有した含水ゲル組成物(実施例2)及びそれにさらに潜熱蓄熱材を含有させたもの(実施例4)の温度特性を示す。
【0037】
図1から明らかなように、潜熱蓄熱材を含有させることにより、冷感(温感)の持続性をより向上することができることを確認した。
【0038】
次に、図2に、本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物の適用例を示す。
本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物は、合成樹脂シートからなる包装材に封入したものをベッド、枕、クッション等の寝具のほか、足温具等の冷却・加温具として好適に適用することができる。
具体的には、例えば、図2(a)に示すように、気泡を含有した含水ゲル組成物を合成樹脂シートからなる包装材に封入した封入体1、保冷剤や湯たんぽ等の冷却・加温体2、発泡ポリエチレン等の断熱材3を順に積層して用いたり、図2(b)に示すように、封入体1、冷却・加温体2、封入体1、断熱材3を順に積層して用いたり、図2(c)に示すように、封入体1、冷却・加温体2、ラッセル編体等の通気性素材4、断熱材3を順に積層して用いることができる。
これにより、長時間に亘って、穏やかに冷却したり、加温することができる。
【0039】
以上、本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物について説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の気泡を含有した含水ゲル組成物は、トレードオフの関係があるため従来の含水ゲル組成物や発泡体によっては得られなかった、軽量で、ソフトな弾性を有し、かつ冷感や温感の持続性があるものとすることができることから、例えば、ベッド、枕、クッション等の寝具に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 封入体
2 冷却・加温体
3 断熱材
4 通気性素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を主成分とする溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に、気泡状のガスが含有されてなることを特徴とする気泡を含有した含水ゲル組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール及びこれらの変性物の少なくとも1種のポリマーからなることを特徴とする請求項1に記載の気泡を含有した含水ゲル組成物。
【請求項3】
溶媒100質量部に対してポリマーを1〜40質量部を溶解したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡を含有した含水ゲル組成物。
【請求項4】
溶媒にポリマー及び架橋剤を溶解した混合物に対する気泡の含有割合が0.2〜5倍(容積比)であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の気泡を含有した含水ゲル組成物。
【請求項5】
デュロメーター硬度計Fタイプにより測定した表面硬度が50以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の気泡を含有した含水ゲル組成物。
【請求項6】
潜熱蓄熱材を含有したものであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の気泡を含有した含水ゲル組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−79300(P2013−79300A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218994(P2011−218994)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(392014852)ユーザー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】