説明

気流分離装置

【課題】合成樹脂ペレット等の粒状材料に混入している軽い夾雑物を気流によって分離除去するための気流分離装置を提供する。
【解決手段】上部に排気口11、下端に材料搬出口12を備える縦円筒形の分離器本体1内の中間部に、円錐状の上端部21を有するバッフル筒2が配置し、バッフル筒2の円筒部20に臨んで接線方向に開口する材料供給口13が設けられ、軽い夾雑物f,pを含む粒状材料gを一次空気A1と共に材料供給口13へ供給する材料供給手段と、下部空間32に二次空気A2を導入する二次空気導入手段とを具備し、送り込まれた軽い夾雑物f,pを含む粒状材料gは、一次空気A1と下方から吹き上がる二次空気A2に乗って環状空間30を周回しつつ螺旋状に上昇し、上部空間31へ至って粒状材料gが空気流速の低下に伴って落下する一方、遊離した軽い夾雑物f,pが上昇気流に乗って排気口11より排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂ペレット等の粒状材料に混入している軽い夾雑物を気流によって分離除去するのに用いる気流分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、射出成形等の樹脂成形原料に用いる合成樹脂ペレットは、配管を通して空気輸送されることが多いが、その輸送中にフロスと称される夾雑物の混入が避けられない。このフロスは、接触摩擦によって管内壁に付着した樹脂成分が成長してフィルム状の皮膜を形成し、該皮膜が紐状や糸状に剥離したものを主とするが、これに加えて該皮膜の細塵化、ペレット同士の衝突や管内壁との擦過等で生じる粉状のものも含まれ、様々な問題を惹起する要因になる。例えば、フロスは形態的又はサイズ的にペレットよりも格段に融け易いため、フロスを含むペレットを用いた樹脂成形では、先に融けたフロスがペレットの溶融までに熱劣化し、成形物の品質低下や歩留り低下を招くことになる。また、輸送する樹脂の種類を換えた場合に、管内壁から剥離した前の樹脂成分のフロスが不純物として混入し、やはり成形物の品質低下に繋がる。更に、フロスがロータリーバルブ等に絡まって作動不良や詰まりを生じることもある。
【0003】
そこで、従来より、ペレットからフロスを分離するためのフロスセパレーターとして、下部が縮径した縦円筒内に、空気輸送管から送出されるフロス混入ペレットを空気流と共に送り込み、該縦円筒内で螺旋状の上昇流を生じさせ、軽いフロスを空気流と共に上部の排出口に導く一方、重いペレットを自重で落下させて下部の搬出口へ導くようにしたサイクロン式の分離装置が汎用されている。更に、空気輸送の空気を一次空気としてフロス混入ペレットと共に上記縦円筒内へ斜め上向きに送り込むと共に、該縦円筒の下方側から別途に二次空気、更には三次空気を導入することにより、フロスを2段階あるいは3段階で分離する方式も提案されている(特許文献1,2)。なお、本明細書における「重い」と「軽い」の表現は、対象物の物理量としての比重ではなく、下方からの風圧による浮き易さの度合を表し、同じ比重の材料でも粒子サイズ及び嵩密度が小さいほど、また空気抵抗を受け易い形態であるほど軽いことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−267939号公報
【特許文献2】特開2004−313994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来汎用の上記サイクロン式の分離装置では、遊離状態のフロスは容易にペレットと分離できるが、ペレットに付着しているフロス、とりわけ粉状フロスの分離が困難であった。また、上記従来提案の2段階あるいは3段階でフロスを分離する方式では、フロスの除去率を高め得るが、材料供給速度が上がると分離困難になるために処理能率を大きく設定できない上、二次空気及び三次空気の導入部の構造が複雑であるため、製作コストが高く付くと共に、フロス除去率を高める上で一次空気の導入風量に対応して二次空気及び三次空気の導入風量を微妙に調整せねばならず、そのために高度な制御機構が必要になるという難点があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、上記合成樹脂ペレット等の粒状材料に混入している軽い夾雑物を気流によって分離除去するための気流分離装置として、高い処理能率に設定して、しかも制御容易で安定的に高い夾雑物除去率が得られる上、構造的に簡素で安価に製作できるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る気流分離装置は、上部に排気口11、下端に材料搬出口12を備える縦円筒形の分離器本体1内の中間部に、上下端を閉塞した縦短円筒状のバッフル筒2が同心状に配置し、このバッフル筒2の周囲に分離器本体1内の上下部空間31,32と連通する環状空間30が構成され、分離器本体1の周壁部に、該環状空間30に対して材料供給方向が接線方向になるように開口した材料供給口13が設けられ、
バッフル筒2の上端部21が円錐状に上方へ突出すると共に、該バッフル筒2の円筒部20に臨んで材料供給口13aが開口し、
軽い夾雑物(粗大フロスf,粉状フロスp)を含む粒状材料gを一次空気A1の空気流に伴って材料供給口13aへ供給する材料供給手段(材料供給管13,ブロアーB1)と、分離器本体1内の下部空間32に二次空気A2を導入する二次空気導入手段(ブロアーB2,二次空気導入管4)とを具備し、分離器本体内へ導入する一次空気/二次空気の風量比が1/1〜1/5の比率に設定され、
材料供給口13より分離器本体1内に送り込まれた軽い夾雑物を含む粒状材料gが一次空気A1と下方から吹き上がる二次空気A2に乗って環状空間30を周回しつつ螺旋状に上昇し、分離器本体1内の上部空間31へ至って粒状材料gが空気流速の低下に伴って落下する一方、遊離した軽い夾雑物が螺旋状に上昇する空気流に乗って排気口11より排出されると共に、落下する粒状材料gに付着していた軽い夾雑物も前記環状空間32における空気A1,A2の攪拌作用で分離して上方へ運ばれ、粒状材料gのみが分離器本体1内の下部空間32を落下して前記材料搬出口12に至るように構成されてなる。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1の気流分離装置において、バッフル筒2の円錐状の上端部21の円錐角αが40〜80°である構成としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の気流分離装置において、二次空気A2の放出口4aは、分離器本体1の中心部に配置する二次空気導入管4の上端部に開口した複数の小孔にて構成されてなるものとしている。
【0010】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3の何れかの気流分離装置において、バッフル筒2の円筒部20における環状空間30の横断面積が上部空間31の横断面積の40〜80%である構成としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る気流分離装置では、材料供給口13より分離器本体1内に送り込まれる軽い夾雑物(粗大フロスf,粉状フロスp)を含む粒状材料gは、その輸送媒体である一次空気A1と下方から吹き上がる二次空気A2に乗り、環状空間30を上昇して分離器本体1内の上部空間31へ至る。このとき、材料供給口13より送り込まれる一次空気A1がバッフル筒2の円筒部20に臨む位置で分離器本体1の接線方向に流入して、且つ環状空間30によって強制的に周方向に沿う流れになる上、該円筒部31周囲の狭い環状空間30によって流速が速くなるから、下方から吹き上がる二次空気A2と相俟って強い螺旋状の上昇流を生じ、上部空間31に至っても排気口11まで螺旋状の上昇流が維持される。そして、この上部空間31では、流路面積の拡大によって該上昇流の流速が大幅に低下するから、重い粒状材料gが上昇流から外れて落下する一方、遊離した軽い夾雑物はた螺旋状の上昇流に乗ったまま確実に排気口11へ運ばれて排出される。しかも、環状空間30から上部空間31への移行部分では、バッフル筒2の円錐状の上端部21によって流路面積が連続的に拡大する形になり、空気Aの上昇速度が次第に低下してゆくことから、上部空間31での空気Aの螺旋状の上昇流に乱れを生じにくく、もって粒状材料gが乱れた上昇流に捲き込まれて排気口11へ運ばれるのを防止でき、それだけ夾雑物除去率が向上すると共に、より処理能率を高めることができる。
【0012】
また、粒状材料gには粉状フロスpを主とした軽い夾雑物の一部が付着していることが多いが、落下する該粒状材料gが環状空間30を通過する際、材料供給口13より送り込まれる一次空気A1の周回流と下方からの二次空気A2の上昇流との衝突による激しい攪拌作用を受けるため、付着していた軽い夾雑物は粒状材料gから容易に分離して、上昇する空気Aによって上方へ運ばれて排気口11より排出される。従って、粒状材料gのみが環状空間30を降下して下部空間32へ達するが、流路面積の大きい下部空間32では二次空気A2の上昇流が弱く、更に二次空気A2の放出口4aよりも下位では該上昇流がないために再上昇に転じる懸念はなく、該粒状材料gは確実に下端の材料搬出口12まで落下して搬出されることになる。
【0013】
しかして、この気流分離装置によれば、分離器本体1内へ導入する一次空気A1と二次空気A2の風量比が特定範囲にあることから、環状空間30から上部空間31への空気Aの螺旋状の上昇流が適度な上層速度になると共に、環状空間30において充分な攪拌作用が得られ、もって安定した高い夾雑物除去率を確保できることに加え、粒状材料gの供給速度を大きく設定して高い処理能率を達成できる。また、この気流分離装置は、分離器本体1内に縦短円筒状のバッフル筒2を同心状に配置し、該分離器本体1内の下部空間32に二次空気A2を導入する空気導入手段を付設するだけでよいから、構造的に簡素で安価に製作できると共に、二次空気A2の風量設定も容易で高度な制御機構を必要とせず、それだけ設備コストを低減できるという利点がある。
【0014】
請求項2の発明によれば、バッフル筒2の円錐状の上端部21の円錐角αが特定範囲にあることから、分離器本体1内の環状空間30から上部空間31への流路面積を連続的に拡大する移行部分における空気Aの低下速度勾配が適度になり、上部空間31での空気Aの螺旋状の上昇流がより安定化し、それだけ夾雑物の分離がより効率よく進行する。
【0015】
請求項3の発明によれば、二次空気A2の放出口4aが分離器本体1の中心部に配置する二次空気導入管4の上端部にあるから、下部空間32への二次空気A2の放出風量、ひいては下部空間32から環状空間30へ吹き上がる二次空気A2の風量が周方向に均等になり、もって環状空間30で分離した細かい夾雑物の下部空間32への落ち込みや下部空間32に達した粒状材料gの再上昇を確実に防止できると共に、上部空間31における空気Aの螺旋状の上昇流もより安定化するため、粒状材料gと遊離した軽い夾雑物との分離効率がより高くなる。また、粒状材料gが環状空間32を通って下部空間32の周辺側へ落下してくるため、中心部の放出口4aを避ける形になる上、該放出口4aが複数の小孔にて構成されるから、粒状材料gの入り込みを生じにくく、もって粒状材料gによる放出口4aの閉塞や部分的な詰まりによる二次空気A2の放出不均等化を回避できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、環状空間30と上部空間31の横断面積が特定の比率範囲にあるから、該環状空間30と上部空間31の空気の上昇速度の差が適度になり、もって安定した高い夾雑物除去率でより大きな処理能力を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る気流分離装置全体の要部破断正面図である。
【図2】図1のX−X線の断面矢視図である。
【図3】図1のY−Y線の断面矢視図である。
【図4】同気流分離装置による粒状材料と軽い夾雑物の分離状態を模式的に示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る気流分離装置の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1で示すように、この気流分離装置は、上端が端板1aによって閉塞された縦短円筒状の分離器本体1と、該分離器本体1内の高さ方向中間部に同心状に配置した縦短円筒状のバッフル筒2と、該分離器本体1の縮径した下部1bに側方外部から突入した二次空気導入管4と、該分離器本体1の下端に連結一体化されたロータリーバルブ5とを備えている。
【0019】
分離器本体1は、上部に側方へ開口した排気口11を備えると共に、ロータリーバルブ5に臨む下端が材料搬出口12を構成し、高さ方向中間部の外周には接線方向に沿う材料供給管13が一体的に突設されている。そして、分離器本体1の内部は、高さ方向中間部においてその内周とバッフル筒2の外周との間で環状空間30が構成され、この環状空間30を介して上部空間31と下部空間32とが連通している。そして、材料供給管13の材料供給口13aは、環状空間30の上部寄りの位置において、当該環状空間30に対して材料供給方向が接線方向になるように開口している。
【0020】
バッフル筒2は、円筒部20の両端が円錐状の上下端部21,22にて閉塞しており、図2でも示すように、円筒部20の下部寄り位置の外周に等配形成された複数個(図では3個)の各取付突片23において、分離器本体1の内周に突設された各支持突片14にボルト・ナット24を介して取り付けられている。しかして、分離器本体1の各支持突片14のボルト挿通部は上下方向の長孔15(図1参照)になっているため、バッフル筒2は該長孔15の範囲で上下に位置調整可能である。
【0021】
二次空気導入管4は、外部から分離器本体1の下部1bの周壁部を貫通して、当該分離器本体1内の中心位置で上向きに曲がった管本体40と、この管本体40の上端に嵌着したパンチングメタルからなる多孔キャップ41とからなり、該キャップ41の多数のパンチ孔によって二次空気A2の放出口4aを構成している。そして、この二次空気導入管4の管本体40は、分離器本体1の周壁部を貫通する部分で溶接固着されると共に、図3でも示すように、その上端部外周と分離器本体1の内周との間に周方向に等配して橋架した複数本(図では4本)の水平支持片42により、放出口4aが分離器本体1の中心に配置するように固定されされている。
【0022】
ロータリーバルブ5は、水平回転軸周りに放射状に配置した複数枚(図では4枚)の羽根板5aを備えており、モーター等で回転駆動することにより、上向きになった羽根板5a間に分離器本体1の材料搬出口12から落下した粒状材料g(図3参照)を収容し、回転して下向きになった際に下方に開く取出口5bより該粒状材料gを放出するが、その回転駆動中及び停止中に材料搬出口12と取出口5bとの間を羽根板5aで常時エアーロックするようになっている。
【0023】
上記構成の気流分離装置によって合成樹脂ペレット等の粒状材料から軽い夾雑物を分離除去するには、図4に示すように、材料供給管13に空気輸送管Lを接続し、ホッパー型タンクTに装填された材料Mを、材料供給手段のブロアーB1から送給される一次空気A1に乗せて該空気輸送管L及び材料供給管13を通して、材料供給口13aより分離器本体1内の環状空間30へ連続的に送り込む。そして、同時に、二次空気導入手段のブロアーB2から送給される一次空気A2を、二次空気導入管4を通して放出口4aより分離器本体1内の下部空間32の中心部から上方へ連続的に放出する。
【0024】
上記の材料供給口13aより環状空間30へ送り込まれた材料Mは、回収すべき粒状材料gに分離除去すべき軽い夾雑物として粗大フロスfや粉状フロスpが混入したものであるが、その輸送媒体である一次空気A1と下方から吹き上がる二次空気A2に乗り、環状空間30を上昇して分離器本体1内の上部空間31へ至る。このとき、材料供給口13より送り込まれる一次空気A1が環状空間30へ接線方向に流入して、且つ該環状空間30の環形によって強制的に周方向に沿う流れになる上、狭い環状空間30では流速が速くなるから、下方から吹き上がる二次空気A2と相俟って強い螺旋状の上昇流を生じ、上部空間31に至っても排気口11まで安定した螺旋状の上昇流が維持される。しかるに、この上部空間31では、環状空間30からの流路面積の拡大によって該上昇流の流速が大幅に低下するから、一次分離ゾーンZ1として、重い粒状材料gが直ちに効率よく上昇流から外れて落下する一方、遊離した軽い夾雑物は安定した螺旋状の上昇流に乗ったまま確実に排気口11へ運ばれて排出される。
【0025】
また、粒状材料gには粉状フロスpを主とした軽い夾雑物の一部が付着していることが多いが、一次分離ゾーンZ1から落下する該粒状材料gが環状空間30を通過する際、材料供給口13より送り込まれる一次空気A1の周回流と下方からの二次空気A2の上昇流との衝突による激しい攪拌作用を受ける。従って、この環状空間30では、二次分離ゾーンZ2として、落下する粒状材料gに付着していた軽い夾雑物が容易に分離して、上昇する空気A(一次空気A1+二次空気A2)によって上方へ運ばれて排気口11より排出され、粒状材料gのみが降下して下部空間32へ達することになる。そして、下部空間32では大きな流路面積で二次空気A2の上昇流が弱いため、該下部空間32に達した粒状材料gは、再上昇に転じる懸念はなく、確実に下端の材料搬出口12まで落下してロータリーバルブ5の回転駆動によって取出口5bから取り出される。
【0026】
従って、この気流分離装置によれば、分離器本体1内の上部空間31の下部側における空気Aの上昇速度が粒状材料gの浮遊速度よりも低くなるように、二次空気A2の導入風量を設定しておけば、粗大フロスfや粉状フロスpの如き軽い夾雑物を極めて高効率で安定的に分離除去できると共に、粒状材料gの供給速度を大きく設定して高い処理能率を達成できる。また、この気流分離装置は、分離器本体1内に縦短円筒状のバッフル筒2を同心状に配置し、該分離器本体1内の下部空間32に二次空気A2を導入する空気導入手段を付設するだけでよいから、構造的に簡素で安価に製作できると共に、二次空気A2の風量設定も容易で高度な制御機構を必要とせず、それだけ設備コスト及びランニングコストを低減できるという利点がある。
【0027】
なお、分離器本体1内の環状空間30の広さは、特に制約されないが、その横断面積が上部空間31の横断面積に対して40〜80%の範囲とすることが推奨される。また、一次空気A1/二次空気A2の風量比は、1/1〜1/5の範囲とすることが推奨される。すなわち、前者の横断面積比率によって環状空間30と上部空間31の空気の上昇速度の差が適度になると共に、後者の風量比によって該環状空間30から上部空間31への空気Aの螺旋状の上昇流が適度な上層速度になり、これらによって安定した高い夾雑物除去率でより大きな処理能力が付与される。
【0028】
本発明の気流分離装置において、バッフル筒2の上下端部21,22の形状は、凸型が好ましく、とりわけ上端部21については実施形態のような円錐状が推奨される。これは、円錐状の上端部21を有することにより、該上端部21に粒状材料g及び夾雑物が溜まるのを防止できることに加え、分離器本体1内の環状空間30から上部空間31への移行部分で流路面積が連続的に拡大する形になり、該移行部分で空気Aの上昇速度が次第に低下してゆくことから、上部空間31での空気Aの螺旋状の上昇流に乱れを生じにくく、もって粒状材料gが乱れた上昇流に捲き込まれて排気口11へ運ばれるのを防止でき、それだけ夾雑物除去率が向上すると共に、より処理能率が高まることによる。
【0029】
このようにバッフル筒2の上端部21を円錐状にすることにより、図4に示すように、分離器本体1の上部空間30の第一分離ゾーンZ1は、バッフル筒2の円筒部20の上端から上端部21の円錐状の頂端までの気流減速ゾーンZ11と、該頂端よりも上側の気流定速ゾーンZ12とに分けられる。
【0030】
ここで、バッフル筒2における上記円錐状の上端部21は、その円錐角αが40〜80°の範囲の鋭角とするのがよい。このように上端部21の円錐角αを鋭角に設定すれば、気流減速ゾーンZ11が長くなり、それだけ該気流減速ゾーンZ11における空気Aの上昇速度の低下が緩やかになるから、上部空間31(一次分離ゾーンZ1)での空気Aの螺旋状の上昇流がより安定化し、遊離した粗大フロスgや粉状フロスpの如き軽い夾雑物の分離が効率よく進行する。
【0031】
一方、バッフル筒2の下端部22は、下向き凸型であることにより、分離器本体1内下部空間32の中心に配置した放出口4aから放出される二次空気2Aが環状空間30へ吹き上がる際の抵抗が少なくなり、それだけ二次空気2Aの上昇流が安定する。しかして、該下端部22の下向き凸型としては、円錐状や凸球面状があるが、加工製作面より円錐状が好ましく、特に円錐角β90°以上、より好適には100〜150°の鈍角の円錐状が推奨される。これは、該下端部22が鈍角の円錐状であることにより、環状空間30から下部空間32への移行部分が短く、該移行部分での圧力勾配が急になるため、環状空間30から下部空間32へ落下した粒状材料gに対する上向きの風圧が急減し、もって該粒状材料gの再上昇を確実に防止できることによる。
【0032】
なお、上記実施形態では、分離器本体1内におけるバッフル筒2の取付位置を上下調整でき、その上下位置によって材料供給口13から送り込まれる粒状材料g及び一次空気A1が周回する環状空間30の上下幅が変わるから、該粒状材料gの粒度や比重、供給速度等に応じて、一次分離ゾーンZ1における螺旋状の上昇流が適度な状態になるように容易に設定できるという利点がある。
【0033】
二次空気A2の放出口4aについては、実施形態のように、分離器本体1の中心部に配置する二次空気導入管4の上端部に開口する複数の小孔にて構成することが推奨される。その利点の一つは、中心部からの二次空気A2の放出により、下部空間32での二次空気A2の放出風量、ひいては下部空間32から環状空間30へ吹き上がる二次空気A2の風量が周方向に均等になり、もって環状空間30で分離した細かい夾雑物の下部空間32への落ち込みや下部空間32に達した粒状材料gの再上昇を確実に防止できると共に、一次分離ゾーンZ1における空気Aの螺旋状の上昇流もより安定化するため、粒状材料gと遊離した軽い夾雑物との分離効率がより高くなることである。更に他の利点としては、粒状材料gが二次分離ゾーンZ2の環状空間30を通って下部空間32の周辺側へ落下してくるため、中心部の放出口4aを避ける形になる上、該放出口4aが小孔であることで粒状材料gの入り込みを生じにくく、もって粒状材料gによる放出口4aの閉塞や部分的な詰まりによる二次空気A2の放出不均等化を回避できることである。
【0034】
また、実施形態では材料搬出口12に設けたロータリーバルブ5によってエアーロック状態で連続的に材料搬出を行えるが、本発明の気流分離装置は材料搬出を非連続的に行う構成でもよい。例えば、材料搬出口12にシャッターやダンパー等の開閉手段を設け、気流分離中には該開閉手段の閉止によるエアーロック状態で落下してくる粒状材料gを貯留し、所定量の気流分離終了後に該開閉手段を開放して材料搬出を行うようにしてもよく、この場合には貯留部分の容積を大きく設定することで一回の処理量を多くできる。なお、分離器本体1の材質としては、通常はステンレス鋼等の金属材料が使用されるが、ガラス、セラミック、合成樹脂等も採用可能である。しかして、不透明材料からなる分離器本体1では、分離状態を外部から視認できるように、要所に透明板を嵌装した覗き窓を設けてもよい。その他、本発明の気流分離装置の細部構成については、実施形態以外に種々設計変更可能である。
【0035】
〔実機テスト〕
下記装置仕様の気流分離装置を用い、下記の処理条件で次の2種の合成樹脂ペレットP1,P2の各々からのフロス分離除去を行ったところ、その分離除去率はペレットP1,P2のいずれにおいてもほぼ100%であった。
【0036】
<合成樹脂ペレット>
ペレットP1・・・ポリエチレンペレット(平均径約3mm,平均長さ約3mm)、 フロス混入率:平均約0.1重量%
ペレットP2・・・ポリプロピレンペレット(平均径約3mm,平均長さ約3mm) 、フロス混入率:平均約0.1重量%
【0037】
<装置仕様>
分離器本体1
全長:約2000mm、上部空間31における内径:400mm
本体上端から材料供給口13aの中心までの距離:約1250mm
本体上端から縮径した下部1a上端までの距離:約1580mm
バッフル筒2
円筒部20の外径:250mm、長さ:250mm
上端部21の円錐角α:60°、下端部22の円錐角β:120°
材料供給口13aの中心に対する円筒部20の上端高さ:60mm
二次空気導入管
放出口4aの小孔径:2mm
多孔キャップ41の頂端とバッフル筒2の下端部22の頂端との距離:45mm
上部空間31に対する環状空間30の横断面積比:約60%
【0038】
<処理条件>
粒状材料gの供給量:22.5kg/分
一次空気A1の供給量:5m3 /分、二次空気A2の供給量:14m3 /分
粒状材料gの浮遊速度:約7m/秒
気流定速ゾーンZ12における空気上昇速度:約2.5m/秒
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の気流分離装置は、合成樹脂ペレット等の粒状材料に混入している軽い夾雑物を気流によって分離除去するのに好適であるが、粒状物と粉体の混合物を始めとして、サイズや形態によって空気抵抗が大きく異なる異種材料の混合物を処理対象として、軽い材料と重い材料とに分離するのにも利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 分離器本体
11 排気口
12 材料搬出口
13 材料供給管(材料供給手段)
13a 材料供給口
2 バッフル筒
20 円筒部
21 上端部
22 下端部
30 環状空間
31 上部空間
32 下部空間
4 二次空気導入管(二次空気導入手段)
4a 放出口
α,β 円錐角
A 空気
A1 一次空気
A2 二次空気
B1 ブロアー(材料供給手段)
B2 ブロアー(二次空気導入手段)
f 粗大フロス(軽い夾雑物)
g 粒状材料
M 材料
p 粉状フロスp(軽い夾雑物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に排気口、下端に材料搬出口を備える縦円筒形の分離器本体内の中間部に、上下端を閉塞した縦短円筒状のバッフル筒が同心状に配置し、このバッフル筒の周囲に分離器本体内の上下部空間と連通する環状空間が構成され、分離器本体の周壁部に、該環状空間に対して材料供給方向が接線方向になるように開口した材料供給口が設けられ、
前記バッフル筒の上端部が円錐状に上方へ突出すると共に、該バッフル筒の円筒部に臨んで前記材料供給口が開口し、
軽い夾雑物を含む粒状材料を一次空気の空気流に伴って前記材料供給口へ供給する材料供給手段と、分離器本体内の下部空間に二次空気を導入する二次空気導入手段とを具備し、分離器本体内へ導入する一次空気/二次空気の風量比が1/1〜1/5の比率に設定され、
前記材料供給口より分離器本体内に送り込まれた軽い夾雑物を含む粒状材料が前記一次空気と下方から吹き上がる前記二次空気に乗って前記環状空間を周回しつつ螺旋状に上昇し、分離器本体内の上部空間へ至って粒状材料が空気流速の低下に伴って落下する一方、遊離した軽い夾雑物が螺旋状に上昇する空気流に乗って前記排気口より排出されると共に、落下する粒状材料に付着していた軽い夾雑物が前記環状空間における空気の攪拌作用で分離して上方へ運ばれ、粒状材料のみが分離器本体内の下部空間を落下して前記材料搬出口に至るように構成されてなる気流分離装置。
【請求項2】
前記バッフル筒の円錐状の上端部の円錐角が40〜80°である請求項1に記載の気流分離装置。
【請求項3】
前記二次空気の放出口は、分離器本体の中心部に配置する二次空気導入管の上端部に開口した複数の小孔にて構成されてなる請求項1又は2に記載の気流分離装置。
【請求項4】
前記バッフル筒の円筒部における前記環状空間の横断面積が前記上部空間の横断面積の40〜80%である請求項1〜3の何れかに記載の気流分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−56501(P2011−56501A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214131(P2010−214131)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2009−34775(P2009−34775)の分割
【原出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(509047993)マテハンエンジ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】