説明

水中作業管理装置

【課題】水中ポジショニングシステムを利用した水中作業において、潜水士に喚起する手段、例えば、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接送る伝達手段を提供する。
【解決手段】水中作業管理装置は、船11に設けた送受波器12から発射される超音波を、潜水士13が携帯するトランスポンダ14で受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、前記トランスポンダに、前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信するとバイブレートするバイブレーション機構16を備えたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いた水中ポジショニングシステムにおける潜水士の水中位置を測定して監視するものに関するもので、詳しくは、水中で作業をしている潜水士に対して、水中電話等の伝達手段の他に、確実に且つ迅速に潜水士に警報及び退避指示等を伝達できる伝達手法を備えた潜水士の水中ポジショニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における潜水士が水中で作業する潜水作業においては、一般航路付近での水中作業や、水中施工機械・吊荷付近での潜水士の安全確保のため、潜水士の位置を監視する水中ポジショニングシステムが存在する。
【0003】
水中ポジショニングシステムは、作業エリア内の潜水士位置をリアルタイムに監視するもので、水中で稼動する機械周辺での作業の安全性向上や、磁気探査作業の探査漏れの防止など作業効率の向上を目的として開発されたものであり、潜水士位置は潜水士が携帯するトランスポンダの位置を潜水士船若しくは監視船にて計測して施工平面図などにマッピングして潜水作業指揮者がこれを監視するというものである。
【0004】
図6は、水中ポジショニングシステムを搭載した潜水士船11を示したもので、船底に超音波を発射させると共に超音波を受信する機能を備えた送受波器12を取り付けた構成になっている。
一方、潜水士13は、トランスポンダ14を携帯し、船上からの送気ホース15を装着し、この送気ホース15には水中電話用のケーブルが這わせてある。
【0005】
トランスポンダ14は、Transmitter(送信機)とResponder(応答機)からの合成語で、送受波器12からの電気信号(トリガー信号)を受信し、この受信に対して超音波信号を発生させる構成になっている。又、トランスポンダ14には水深センサが取り付けられており、この水深センサで得られた水深データを送受波器12に送信する。
【0006】
このような水中ポジショニングシステムにおいては、超音波の伝搬時間を測定し、この伝搬時間に音速を乗ずることによって距離を算出し、トランスポンダ14からの水深センサからの水深データにより、トランスポンダ14の現在位置、即ち、潜水士13の現在位置を算出することができるのである。
【0007】
この水中ポジショニングシステムの運用にあたっては、図7に示すように、システムの管理モニタを潜水士船に設置して、船上にいる連絡員や水中作業監視員(監視員)が潜水士の配置状況を把握する(ステップST1、ST2)。
また、モニタ情報をみながら、管理区域への近接状況や退避指示を通信装置(水中電話)を介して行う(ステップST3、ST4)。
具体的には、重機を使用した作業や構造物の据付、一般航路付近での作業においては、これらの誘導指示は適時する必要があり、その都度水中電話を使用して潜水士に指示を送る構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−131418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来技術で説明した、潜水士の作業形態において、例えば、管理区域への近接・侵入警報などは、連絡員や監視員が水中ポジショニングシステムの管理モニタに表示された警告を確認して潜水士に水中電話を利用して移動指示を出すが、人為的なミスで連絡が遅れたり、指示ができなかったりする恐れがある。
【0010】
従って、潜水士に喚起する手段、例えば、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接送る手法として下記に示す様々な形態を実現することが必要である。
(1)先ず、潜水士へ喚起するために、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接、潜水士へ無線で送り人為的な伝達ミスを防ぐ。この潜水士への警報は、船の管理モニタに表示すると同時に潜水士が携帯するトランスポンダに警報信号が直接伝送されるため、人的伝達より確実でスピーディに行える。
(2)潜水士は船上からの警報信号、退避指示を次に示す手段で受け取るようにする。
1)バイブレータによる船上からの信号を把握する。
潜水士は、バイブレーション間隔やバイブレート発停のバリエーションを変化させて取り決めるパターンやモールス信号に準拠したパターンによって船上からの情報を把握する。
【0011】
これには2つの方法があり、
1つは、潜水士が携帯するトランスポンダにバイブレータを組み込み、船上からの警報信号、退避指示を携帯しているトランスポンダで受け取り、バイブレータを駆動して潜水士に注意を喚起させるというものである。
もう1つは、トランスポンダの他に潜水士は信号受信器付バイブレータを携帯する。そして、船上からの警報信号、退避指示をこの信号受信器付バイブレータで受け取り、バイブレータを駆動させて潜水士に注意を喚起させるというものである。
【0012】
2)発光体による船上からの信号を把握する。
潜水士は、発光体の点滅や点灯カラーのバリエーションを変化させて取り決めるパターンやモールス信号に準拠したパターンによって船上からの情報を把握するというものである。
1つの手法としては、ランプは、潜水士の水中マスクのフレーム枠に発光体(LED)を組み込み、別途携帯する信号受信器で船上からの警報信号及び退避指示を受け取り、発光体を発光させて潜水士に注意喚起を行う。
もう1つの手法としては、潜水士が作業をしている領域の視界が届く範囲内に発光体である水中ランプを要所に設置しておき、その水中ランプに船上からの警報信号及び退避指示を受け取る信号受信器を設置しておく。
【0013】
水中ランプは、任意に取り決めた水中ランプを常時点灯させておくことができ、安全エリアにいる場合の色、危険区域に近づいた場合の色、管理区域に入った場合の色などを特定することで、現状の状況をモニタすることができる。
【0014】
図5に示すように、予め設定した作業範囲(管理エリア)に水中ランプを設置し、正常状態を示す緑色ランプを点灯させておく。この管理エリアから潜水士が出たら、潜水士の発光体或いはバイブレータを動作させると同時に、最寄の水中ランプを赤色に点灯する。これにより、潜水士は、水中ランプの赤色点灯を視覚で感じると共に、バイブレータによる振動による感触で感じることができ、潜水士は作業エリア外に出たことを把握することができる。
また、管理エリアは侵入禁止エリアとしても設定でき、侵入した潜水士への注意喚起も行える。水中ランプは、水中の状況に合わせて水中電光掲示板、チューブライトやストロボでも代用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本願発明の水中作業管理装置は、次に示す構成にしたことである。
【0016】
(1)水中作業管理装置は、船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、前記トランスポンダに、前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信するとバイブレートする機能を備えたことである。
(2)水中作業管理装置は、船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信する信号受信器を前記潜水士が携帯し、前記潜水士が携帯する前記信号受信器には前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信するとバイブレートする機能を備えたことである。
(3)水中作業管理装置は、船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信する信号受信器を前記潜水士が携帯し、前記信号受信器が前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信すると発光する発光体を前記潜水士が視認できる位置に設けたことである。
(4)水中作業管理装置は、船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信する信号受信器を前記潜水士が作業する作業範囲を特定する管理エリアの要所に設置されている水中ランプに取り付け、前記水中ランプに取り付けた前記信号受信器が前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信すると、特定の超音波信号を受信した信号受信器が取付けてある水中ランプを点滅させ、或いは、該水中ランプが発光する発光色を特定の色に変化させることである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水中作業管理装置は、水中ポジショニングシステムを利用した潜水士の作業形態において、潜水士に喚起する手段、例えば、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接送るようにしたことで、従来の如く人為的なミスで連絡が遅れたり、指示ができなかったりすることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明に係る第1の実施例の水中作業管理装置を略示的に示した説明図である。
【図2】同、水中ポジショニングシステムから直接潜水士に伝達するためのフローチャートである。
【図3】本願発明に係る第2の実施例の水中作業管理装置を略示的に示した説明図である。
【図4】本願発明に係る第3の実施例の水中作業管理装置を略示的に示した説明図である。
【図5】本願発明に係る第4の実施例の水中作業管理装置を略示的に示した説明図である。
【図6】従来技術における水中ポジショニングシステムを利用した水中作業管理装置を略示的に示した説明図である。
【図7】従来技術における水中ポジショニングシステムを利用した水中作業管理装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本願発明に係る水中作業管理装置の実施形態について、図面を参照して以下説明する。
【0020】
本願発明の水中作業管理装置は、水中ポジショニングシステムを利用して、潜水士に警報や退避指示等の伝達手段を備えたものである。
【0021】
水中ポジショニングシステムの運用にあたっては、図1に示すように、システムの管理モニタを潜水士船に設置して、船上にいる連絡員や水中作業監視員(監視員)が潜水士の配置状況を把握する(ステップST1、ST2)。
また、モニタ情報をみながら、管理区域への近接状況や退避指示を通信装置(水中電話)を介して行う。具体的には、重機を使用した作業や構造物の据付、一般航路付近での作業においては、これらの誘導指示は適時する必要があり、その都度水中電話を使用して潜水士に指示を送る(ステップST3、ST4)。
そして、潜水士に警報や退避指示が発生したときには、水中ポジショニングシステムから直接伝達するようにしたもので、伝達のしかたは船に設けてある送受波器からの超音波信号を潜水士に直接送るようにしている(ステップST1、ST4)。
【0022】
第1の実施例の水中作業管理装置は、潜水士へ喚起するために、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接、潜水士が携帯しているトランスポンダへ無線で送り、トランスポンダに組み込まれているバイブレーション機能を駆動させるというものである。
図1は、水中ポジショニングシステムを搭載した潜水士船11を示したもので、船底に超音波を発射させると共に超音波を受信する機能を備えた送受波器12を取り付けた構成になっている。
【0023】
この送受波器12は、潜水士13が携帯しているトランスポンダ14からの超音波を受け、トランスポンダの座標位置を検知する。
【0024】
トランスポンダ14は、送受波器12から発射されるトリガー信号を受信すると、この受信した信号に対応して、超音波信号を発射させる。このトランスポンダ14には、自分の位置を測定するための超音波信号を発生させる機構を備えると共に、送受波器12からの特定の超音波信号である警報信号を受信して振動させる機能を有するバイブレーション機構16を組み込んだ構造となっている。
【0025】
このようなバイブレーション機構16を備えたトランスポンダ14を潜水士13が携帯して水中で作業をすると、その様子は潜水士船11に搭載されている管理モニタに表示され、同時に作業領域等も表示され、例えば、表示されている作業領域から潜水士13が外れたことを察知すると、警報信号を送受波器12を介して発射させ、その発射された警報信号をトランスポンダ14が受信すると、警報信号に基きバイブレーション機構16を駆動させ、振動を起こさせて潜水士13に喚起させる。
【0026】
このバイブレーション機構16の振動形態は様々に発生させることが可能で、例えば、バイブレーション間隔やバイブレート発停のバリエーションを変化させて取り決めるパターンやモールス信号に準拠したパターンによることによって、振動により、現在送られてきた警報信号は何かを知ることができ、作業領域から逸脱しているとか退避指示であるとかが解る構造となっている。
【0027】
次の第2の実施例の水中作業管理装置は、潜水士へ喚起するために、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接、潜水士が携帯している信号受信器付バイブレータへ送受波器から送り、信号受信器付バイブレータをバイブレーションさせるというものである。
水中ポジショニングシステムを利用する点、及びトランスポンダを潜水士が携帯する点は第1の実施例と同じで、加えて、信号受信器付バイブレータを別途潜水士が携帯する点で第1の実施例とは相違するものである。
【0028】
図3は、水中ポジショニングシステムを搭載した潜水士船11を示したもので、船底に超音波を発射させると共に超音波を受信する機能を備えた送受波器12を取り付けた構成になっている。
この送受波器12は、図示しないが、潜水士13が携帯しているトランスポンダ14からの超音波を受け、トランスポンダ14の座標位置を検知する。
【0029】
トランスポンダ14は、送受波器12から発射されるトリガー信号を受信すると、この受信した信号に対応して、超音波信号を発射させる。このトランスポンダ14には、自分の位置を測定するための超音波信号を発生させる機構を備えている。
更に、潜水士13は、トランスポンダ14を携帯することに加えて信号受信器付バイブレータ17を携帯する構成になっている。
【0030】
信号受信器付バイブレータ17は、送受波器12からの超音波信号(特定の超音波信号である警報信号)を受信する受信部を設け、受信部で受信した信号に基いて振動するバイブレータを備えた構成になっている。
【0031】
このような信号受信器付バイブレータ17及びトランスポンダ14を携帯した潜水士13が水中で作業をすると、その様子は潜水士船11に搭載されている管理モニタに表示され、同時に作業領域等も表示され、例えば、表示されている作業領域から潜水士13が外れたことを察知すると、警報信号を送受波器12を介して発射させ、その発射された警報信号を信号受信器付バイブレータ17が受信すると、警報信号に基きバイブレーションを駆動させ、振動を起こさせて潜水士13に喚起させる。
このバイブレーションの振動形態は様々に発生させることが可能で、例えば、バイブレーション間隔やバイブレート発停のバリエーションを変化させて取り決めるパターンやモールス信号に準拠したパターンによることによって、振動により、現在送られてきた警報信号は何かを知ることができ、作業領域から逸脱しているとか退避指示であるとかが解る構造となっている。
【0032】
次の第3の実施例の水中作業管理装置は、潜水士へ喚起するために、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接、発光体を点滅や点灯させるというもので、潜水士の水中マスクのフレーム枠に発光体(LED)を組み込み、別途携帯する信号受信器で船上からの警報信号及び退避指示の信号を受け取り、発光体を発光させて潜水士に注意喚起させるというものである。
水中ポジショニングシステムを利用する点、及びトランスポンダを潜水士が携帯する点は第1の実施例と同じで、加えて、発光体を点滅点灯させる信号受信器を別途潜水士が携帯する点で第1の実施例とは相違するものである。
【0033】
図4は、水中ポジショニングシステムを搭載した潜水士船11を示したもので、船底に超音波を発射させると共に超音波を受信する機能を備えた送受波器12を取り付けた構成になっている。
この送受波器12は、図示しないが、潜水士13が携帯しているトランスポンダ14からの超音波を受け、トランスポンダ14の座標位置を検知する。
【0034】
トランスポンダ14は、送受波器12から発射されるトリガー信号を受信すると、この受信した信号に対応して、超音波信号を発射させる。このトランスポンダ14には、自分の位置を測定するための超音波信号を発生させる機構を備えている。
【0035】
更に、潜水士13は、トランスポンダ14を携帯することに加えて潜水士13の水中マスクのフレーム枠に発光体19、実施例においてはLED、を組み込み、別途この発光体19に接続されている信号受信器18を携帯する構成になっている。
【0036】
信号受信器18は、送受波器12からの超音波信号を受信する受信部を設け、受信部で受信した信号に基いて発光体19を点滅或いは点灯させるように駆動させる。この発光体19の点滅や点灯は、カラー点灯点滅で、そのバリエーションを変化させることにより、予め取り決めるパターンやモールス信号に準拠したパターンによることで船上からの警報信号が即時に退避する指示なのか、作業領域から逸脱してしまっているのか等が容易に解るようになっている。
尚、発光体19は水中マスクのフレーム枠に取り付けたが、この場所に限定されることなく、要は水中での作業をしていて、明瞭に視認できる場所であればよい。
【0037】
このような発光体19を駆動させるための信号受信器18及びトランスポンダ14を携帯した潜水士13が水中で作業をすると、その様子は潜水士船11に搭載されている管理モニタに表示され、同時に作業領域等も表示され、例えば、表示されている作業領域から潜水士13が外れたことを察知すると、警報信号を送受波器12を介して発射させ、その発射された警報信号を信号受信器18が受信すると、警報信号に基き発光体19を発光させ、光による警報等を潜水士13に知らせることができる。
【0038】
次の第4の実施例の水中作業管理装置は、潜水士へ喚起するために、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接、作業範囲である管理エリアに設置されている水中ランプのそれぞれに設置されている信号受信器に送受波器から発射される警報信号を受け取ることで、水中ランプが発光している色、例えば安全灯であればグリーン色(緑色)の発光、を警報信号にふさわしい色、例えば、警告灯であれば赤色に替え、且つ点滅させることで、その作業範囲で作業をしている潜水士に警報状態が発生していることを喚起させるというものである。
水中ポジショニングシステムを利用する点、及びトランスポンダを潜水士が携帯する点は第1の実施例と同じで、作業範囲における管理エリアの中継位置に水中ランプを設置し、通常は安全灯を点灯させ、警告状態が発生したときに関係する水中ランプを警告灯に替えるように制御する点で第1の実施例とは相違する。
【0039】
図5は、水中ポジショニングシステムを搭載した潜水士船11を示したもので、船底に超音波を発射させると共に超音波を受信する機能を備えた送受波器12を取り付けた構成になっている。
この送受波器12は、図示しないが、潜水士13が携帯しているトランスポンダ14からの超音波を受け、トランスポンダ14の座標位置を検知する。
【0040】
トランスポンダ14は、送受波器12から発射されるトリガー信号を受信すると、この受信した信号に対応して、超音波信号を発射させる。このトランスポンダ14には、自分の位置を測定するための超音波信号を発生させる機構を備えると共に、送受波器12からの警報信号を受信して振動させる機能を有するバイブレーション機構を組み込んだ構造となっている。
【0041】
作業範囲である管理エリア21の要所、実施例においては6箇所に水中ランプ22a、22b、22c、22d、22e、22fが設置されており、これらそれぞれの水中ランプ22a、22b、22c、22d、22e、22fには、送受波器12からの超音波信号を受信する信号受信器が設置されている。そして、水中ランプ22a、22b、22c、22d、22e、22fが設置された範囲内でトランスポンダ14を携帯した潜水士13が作業を行う構成になっており、それぞれの水中ランプ22a、22b、22c、22d、22e、22fは、潜水士13が管理エリア21内での作業をしているときにはランプの色は緑色の安全灯を常時点灯させる構成になっている(図5において水中ランプ22a、22b、22c、22f)。
【0042】
このように、水中ランプ22a、22b、22c、22d、22e、22fは、任意に取り決めた色のランプを常時点灯させておくことができ、安全エリアにいる場合の色、実施例においては緑色の安全灯(図5において水中ランプ22a、22b、22c)、危険区域に近づいた場合の色、実施例においては赤色の警告灯(図5において水中ランプ22d、22e)、管理区域に入った場合の色などを特定することで、現状の状況をモニタすることができる。
【0043】
このように、予め設定した作業範囲である管理エリア21に水中ランプ22a、22b、22c、22d、22e、22fを設置し、正常状態のときには緑色ランプを点灯させておくことで、潜水士13は作業範囲内での作業であることが容易に解る。
【0044】
そして、バイブレーション機構を備えたトランスポンダ14を潜水士13が携帯して水中で作業をすると、その様子は潜水士船に搭載されている管理モニタに表示され、同時に管理エリア21も表示され、表示されている管理エリア21から潜水士13が外れたことを察知すると、警報信号を送受波器12を介して発射させ、その発射された警報信号をトランスポンダ14が受信すると、警報信号に基きバイブレーション機構を駆動させ、振動を起こさせて潜水士13に喚起させる。同時に、潜水士13が管理エリア21を外れた箇所に設置されている水中ランプ22d、22eの信号受信器に特定の超音波信号からなる警報信号を送受波器12aから発射する。この警報信号を受信した水中ランプ22d、22eは、緑色の点灯から赤色の点灯に替え、或いは赤色の点灯に替えて点滅させる。これにより、潜水士13は、水中ランプ22d、22eの赤色点灯を視覚で感じると共に、バイブレータ14による振動による感触で感じることができ、潜水士13は作業エリア21外に出たことを把握することができる。
【0045】
尚、管理エリアは侵入禁止エリアとしても設定でき、侵入エリアに侵入した潜水士へ、水中ランプの点灯及びトランスポンダのバイブレータによる振動で注意喚起させることもできる。
更に、潜水士が携帯するトランスポンダにバイブレーション機能を取り付けた構成になっているが、これに限定されることなく、上述した実施例に示す如く、信号受信器付きバイブレータを潜水士が携帯する構成でもよく、更に、発光体を水中マスクに取り付けた構成でもよく、これらを組み合わせた構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
水中ポジショニングシステムを利用した水中作業において、潜水士に喚起する手段、例えば、警報や退避指示を水中ポジショニングシステムから直接送る伝達手段を提供する。
【符号の説明】
【0047】
11 潜水士船
12 送受波器
13 潜水士
14 トランスポンダ
15 送気ホース
16 バイブレーション機構
17 信号受信器バイブレータ
18 信号受信器
19 発光体
21 管理エリア
22a 水中ランプ
22b 水中ランプ
22c 水中ランプ
22d 水中ランプ
22e 水中ランプ
22f 水中ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、
前記トランスポンダに、前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信するとバイブレートする機能を備えたことを特徴とする水中作業管理装置。
【請求項2】
船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、
前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信する信号受信器を前記潜水士が携帯し、前記潜水士が携帯する前記信号受信器には前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信するとバイブレートする機能を備えたことを特徴とする水中作業管理装置。
【請求項3】
船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、
前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信する信号受信器を前記潜水士が携帯し、前記信号受信器が前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信すると発光する発光体を前記潜水士が視認できる位置に設けたことを特徴とする水中作業管理装置。
【請求項4】
船に設けた送受波器から発射される超音波を、潜水士が携帯するトランスポンダで受信し、該受信した信号に対応する超音波信号を発射し、該発射した超音波信号を前記船に設けた送受波器で受信することで、前記潜水士が携帯するトランスポンダの位置を測定する水中ポジショニングシステムであって、
前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信する信号受信器を前記潜水士が作業する作業範囲を特定する管理エリアの要所に設置されている水中ランプに取り付け、前記水中ランプに取り付けた前記信号受信器が前記送受波器から発射される特定の超音波信号を受信すると、特定の超音波信号を受信した信号受信器が取付けてある水中ランプを点滅させ、或いは、該水中ランプが発光する発光色を特定の色に変化させることを特徴とする水中作業管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−35734(P2012−35734A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177265(P2010−177265)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】