説明

水中探知装置、水中探知方法及びプログラム

【課題】所定レベル以上のエコー信号を取得できない場合でも、信頼性のある水深を取得することができる水中探知装置、水中探知方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】送信された信号が水中で反射してなるエコー信号に基づいて、水深を検出する水中探知装置であって、自装置の位置を取得する。位置の水深を示す水深データを取得する。取得した位置及び取得した水深データに基づいて、検出すべき水深を推定する。エコー信号に基づく画像と、推定した水深とを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信された信号が水中で反射してなるエコー信号を取得して水中探知を行う水中探知装置、水中探知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を水中へ送波し、その反射波(エコー信号)から物標を探知する水中探知装置がある。この水中探知装置は、送波した超音波が魚群や水底等に反射した反射波を受波することで、魚群や水底の探知を行うことができる。良好な水中探知を行うためには、水中探知装置は、所定レベル以上の反射波を受波する必要があるが、搭載された船舶のスクリューなどから生じる泡や水底に堆積したヘドロなどによって、水中探知装置は、所定レベル以上の反射波を受波できず、水中探知を行えない場合がある。
【0003】
特許文献1には、水底にヘドロなどが堆積していて反射波を受波できない場合であっても、水底を検知することができる水中探知装置が開示されている。特許文献1に記載の水中探知装置は、何らかの理由で水底を検知できない場合には、前回算出した水深を表示する。これにより、正確な値ではないが、現在位置の水深がどの程度であるかをユーザに把握させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−220468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば船舶が殆ど動いていないなど、水底の位置に略変化がない場合には、特許文献1のように、前回算出した水深を利用することはできる。しかしながら、前回水深を算出した位置から離れた位置に移動した場合や、水底の起伏等が大きい位置では、前回算出した水深の信頼性は低くなるため、前回算出した水深を利用することはできない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、所定レベル以上のエコー信号を取得できない場合でも、信頼性のある水中情報(例えば水深)を取得することができる水中探知装置、水中探知方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、送信された信号が水中で反射してなるエコー信号に基づいて、水中情報を検出する水中探知装置であって、位置取得手段と、海図データ取得手段と、推定手段と、出力手段とを備える。位置取得手段は、自装置の位置を取得する。海図データ取得手段は、位置取得手段が取得した位置に対応する海図データを取得する。推定手段は、位置取得手段が取得した位置及び海図データ取得手段が取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定する。出力手段は、前記推定手段が推定した水中情報を出力する。
【0008】
この構成では、例えば、水中探知装置が船舶に搭載された場合、船舶の現在位置に対応する海図データを取得し、海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定し、出力する。海図データは、例えば船舶に搭載されており、水中情報(例えば、水深など)等を有している。エコー信号から水中情報が検出できない場合には、その状況下で海図データから水中情報を推定することができる。また、水中の泡や魚群等の弊害により所定レベル以上のエコー信号が取得できず、エコー信号から水中情報を精度よく検出できない場合があっても、推定した水中情報を例えば表示装置に出力して、エコー信号に基づく画像に、推定した水中情報を重畳して表示することで、より信頼性のある水中情報をユーザに把握させることができる。
【0009】
本発明に係る水中探知装置において、前記海図データは水深を示す水深データを含み、前記推定手段は、前記海図データ取得手段が取得した海図データに含まれる水深データを用いて、水深を推定する。
【0010】
この構成では、海図データに含まれる水深データに基づいて、検出すべき水深を推定し、表示する。これにより、エコー信号から水深が検出できない場合には、その状況下で水深データから水深を推定することができる。
【0011】
本発明に係る水中探知装置において、前記海図データは岩礁又は漁礁に係る情報を示す海底データを含み、前記エコー信号に基づいて、該エコー信号に係る反射物の長さを計測する長さ計測手段と、前記海図データ取得手段が取得した海図データに含まれる海底データに基づいて、前記長さ計測手段による計測を無効にする手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
この構成では、水中探知装置が、反射物の長さ、例えば魚体長を計測する機能を有しており、例えば、海底データから水中探知装置が搭載された船舶が岩礁又は漁礁ポイントに位置している場合、岩礁等近傍における魚体長の計測を無効とする。これにより、魚と岩等との誤判別するおそれを軽減できる。
【0013】
本発明に係る水中探知装置において、前記海図データは底質情報を含み、前記エコー信号に基づいて底質を判別する底質判別手段、をさらに備え、前記出力手段は、前記底質判別手段が底質を判別できない場合、前記海図データ取得手段が取得した海図データに含まれる底質情報を出力することを特徴とする。
【0014】
この構成では、水中の泡等によりエコー信号を受信できず、底質を判別できない場合、海図データの底質情報を取得し、表示装置等に出力する。これにより、より精度の高い底質情報を、オペレータに提供することができる。
【0015】
本発明に係る水中探知装置は、位置に応じた魚情報を記憶する手段と、エコー信号および前記位置取得手段が取得した位置に応じた魚情報に基づいて魚種を判別する魚種判別手段と、をさらに備え、前記出力手段は、前記魚種判別手段が判別した魚種を出力する。
【0016】
この構成では、エコー信号から魚群を探知した場合に、現在位置における魚情報を参照して、魚種を判別し、表示装置等に出力し、表示することができる。これにより、より確度の高い魚種判別を行える。
【0017】
本発明に係る水中探知装置は、エコー信号に基づいて、水中情報が検出されたか否かを判定する検出判定手段をさらに備える。推定手段は、検出判定手段により水中情報が検出されていないと判定した場合、海図データ取得手段が取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定する。
【0018】
この構成では、エコー信号から水中情報が検出できなくても、海図データから水中情報を推定し、オペレータに把握させることができる。水中情報が検出できない場合とは、例えば、水中に送信した信号のエコー信号が、水中の泡や魚群等の弊害により取得できず、水中情報を検出できない場合、又は、取得したエコー信号の信号レベルが不足して、水中情報を検出できない場合などである。
【0019】
本発明に係る水中探知装置は、時刻取得手段と、特定手段と、水位補正手段とを備える。時刻取得手段は、時刻を取得する。特定手段は、時刻取得手段が取得した時刻に基づいて、位置取得手段が取得した位置における水位を特定する。水位補正手段は、特定手段が特定した水位に基づいて、推定手段が推定した水中情報を補正する。
【0020】
この構成では、海面の場合、時刻によって潮の干満により水位が変化するため、時刻に応じた潮の干満を考慮して推定した水中情報を補正することで、より信頼性の高い水中情報を得ることができる。
【0021】
本発明に係る水中探知装置は、船舶に搭載されている場合、吃水線位置取得手段と、吃水線補正手段とを備える。吃水線位置取得手段は、自船の吃水線位置を取得する。吃水線補正手段は、水線位置取得手段が取得した吃水線位置に基づいて、推定手段が推定した水中情報を補正する。
【0022】
この構成では、自船の吃水線の位置に基づいて、推定した水中情報を補正する。これにより、水中探知装置を搭載する船舶の大きさに関係なく、好適な水中情報を得ることができる。
【0023】
本発明に係る水中探知装置は、周囲データ取得手段と、周囲データ補正手段とを備える。周囲データ取得手段は、位置取得手段が取得した位置から所定距離内の位置に対応する海図データを取得する。周囲データ補正手段は、周囲データ取得手段が取得した海図データに基づいて、推定手段が推定した水中情報を補正する。
【0024】
この構成では、現在の位置の周囲の海図データを取得し、取得した海図データに基づいて、推定した水中情報を補正する。これにより、例えば起伏が激しい水底の場合には、周囲の水中情報を考慮することで、より信頼性の高い水中情報を得ることができる。
【0025】
本発明に係る水中探知装置は、取得判定手段と、周囲データ取得手段とを備える。取得判定手段は、海図データ取得手段が海図データを取得したか否かを判定する。周囲データ取得手段は、位置取得手段が取得した位置から所定距離内の位置に対応する海図データを取得する。推定手段は、取得判定手段が自装置の位置における海図データを取得していないと判定した場合、周囲データ取得手段が取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定する。
【0026】
この構成では、現在の位置に対応する海図データが記憶されておらず、水中情報を推定できない場合であっても、周囲の海図データから、現在位置における水中情報を推定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所定レベル以上のエコー信号を取得できない場合でも、信頼性のある水中情報(例えば水深)を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態に係る水中探知装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】演算処理部が有する機能を模式的に示すブロック図である。
【図3】魚群探知装置の場合の表示画面の一例を示す図である。
【図4】フォワードルッキングソナーの場合の表示画面の一例を示す図である。
【図5】水中探知装置で実行される動作の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る水中探知装置、水中探知方法及びプログラムの好適な実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る水中探知装置は、搭載された船舶(以下、自船という)から海底に向けて超音波を送波し、海底に反射した反射波を受波して、自船から自船直下、又はその周囲の海底までの水深を検出する。この水中探知装置は、魚群探知装置、スキャニングソナー、サイドルッキングソナー又はフォワードルッキングソナー等に用いることができる。
【0030】
図1は、本実施形態に係る水中探知装置の構成を模式的に示すブロック図である。水中探知装置1は、送受波器10、送信部11、受信部12、演算処理部13、表示制御部14、表示器15、記憶部16及び操作部17を備える。記憶部16は、例えばROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリであり、必要なプログラム16A及び各種データを記憶する。操作部17は、水中探知装置1による探知及び結果表示に関するオペレータ(漁撈者)による種々の指示(例えば、探知する海底までの距離を示す探知レンジ)を受け付ける。
【0031】
送信部11は、所定周波数の超音波送信信号を所定のタイミング間隔(PING毎)で、送受波器10へ出力する。
【0032】
送受波器10は、船底等に配置され、超音波振動子を備えている。送受波器10は、送信部11で生成された超音波送信信号に基づいて、海中へ超音波を送波する。送受波器10は、送波した超音波が魚群等の物標や海底に反射することで生じる反射波を超音波振動子で受波し、エコー信号を生成して、受信部12へ出力する。
【0033】
受信部12は、送受波器10から入力されたPING毎のエコー信号を所定のサンプリングタイミング間隔でサンプリングし、受信データを生成する。このサンプリングタイミング間隔は、深度方向の距離分解能に基づいて設定されている。受信部12は、PING毎の受信データを、演算処理部13へ出力する。
【0034】
演算処理部13は、例えばマイクロコンピュータで構成され、記憶部16に記憶されたプログラム16Aを読み出して実行することで、受信部12から出力された受信データに基づいて、水深の算出等の処理を行う。図2は、演算処理部13が有する機能を模式的に示すブロック図である。演算処理部13は、記憶部16に記憶されるプログラムを実行することで、水深算出部21、算出判定部22、位置取得部23、水深データ取得部24、日時取得部25、潮高データ取得部26、吃水値取得部27及び水深推定部28等の機能を備える。なお、図2に示す各機能は、全部又は一部がハードウェアで実現されてもよい。
【0035】
水深算出部21は、受信部12から出力された受信データに基づいて、海底までの水深を算出する。水深算出部21は、例えば、受信データの信号レベルが急激な立ち上がり(閾値以上の立ち上がり)となる場合の場合、受信部12から出力された受信データが海底に反射してなる受信データであると判定する。そして、水深算出部21は、送受波器10が超音波を送波してから反射波を受波するまでの時間から、海底までの水深を算出する。
【0036】
算出判定部(検出判定手段)22は、水深算出部21により水深が算出されたか否かを判定する。水深が算出されない原因は、例えば、自船のスクリューの回転により発生した泡等の弊害により反射波を受波できない場合、魚群により、海底に超音波が届かない場合などがある。また、操作部17から設定された探知レンジからある水深を想定して超音波を送波したが、実際がそれ以上の水深であり、反射波を受波できない場合などがある。算出判定部22は、例えば、受信データの信号レベルに急激に立ち上がりがない場合など、海底までの水深が算出されていないと判定した場合、位置取得部23へ通知する。また、水深が算出された場合、水深算出部21は、算出した水深を表示制御部14へ出力する。
【0037】
位置取得部(位置取得手段)23は、自船の位置を取得する。ここで、位置とは経度及び緯度をいう。位置取得部23は、例えばGPS(Global Positioning System)測位方法を用いて経緯及び緯度を算出してもよいし、ロラン航法を用いて経緯及び緯度を算出してもよい。位置取得部23は、水中探知装置1の種別によって、取得する位置を適宜変更してもよい。例えば、水中探知装置1が魚群探知装置の場合、位置取得部23は、自船の位置を取得するようにしてもよい。また、水中探知装置1がフォワードルッキングソナーの場合、位置取得部23は、自船の位置を取得し、その位置から前方一定間隔毎の位置を複数取得してもよい。
【0038】
水深データ取得部(海図データ取得手段)24は、位置取得部23が取得した位置に基づいて、水深データ記憶部161から水深データを取得する。水深データ記憶部161は、複数の水深データを記憶する。水深データは、干潮時の海面(最低水面)を基準としたときの水深の情報であって、緯度及び経度に対応付けられている。なお、水深データは、船舶に必須として備えられる海図データに含まれている。水深データ記憶部161は、水中探知装置1の記憶部16に内蔵してあってもよいし、外部装置、例えば海図プロッタ等に備えられていてもよい。
【0039】
なお、位置取得部23が取得した位置に対応する水深データが水深データ記憶部161に記憶されておらず、水深データを取得できない場合、水深データ取得部24は、その位置に最も近い(又は、所定距離内)位置に対応する水深データを取得するようにしてもよい。また、水深データ取得部24は、位置取得部23が取得した位置の周囲の位置に対応する水深データを複数取得し、対応する水深データを補完するようにしてもよい。
【0040】
日時取得部25は、現在の日時を取得する。日時取得部25は、GPS衛星から日時情報を受信してもよいし、船舶に供えられた時計装置などから日時を取得してもよい。
【0041】
潮高データ取得部26は、位置取得部23が取得した位置と、日時取得部25が取得した日時とに基づいて、潮高データ記憶部162から潮高データを取得する。潮高データ記憶部162は、潮高データを複数記憶する。潮高データは、潮高の情報であって、位置(経度及び緯度)と日時とに対応付けられている。潮高データは、海図データに含まれている。潮高データ記憶部162は、水中探知装置1の記憶部16に内蔵してあってもよいし、例えば、海図プロッタ等に備えられていてもよい。
【0042】
吃水値取得部27は、自船の吃水値を取得する。吃水値は、船体側面の水線から船底までの深さである。なお、吃水値は、既知の固定値であってもよいし、漁撈者が吃水計測を行い操作部17から入力された値であってもよい。また、船首と船尾との吃水には差が生じることが多いため、吃水値取得部27は、吃水値の平均を取得してもよいし、一方のみを取得してもよい。海面から海底までの距離を得たい場合には、吃水値取得部27は、吃水値による補正を行わなくてもよい。
【0043】
水深推定部(推定手段)28は、水深算出部21が水深を算出できない場合、水深を推定する。水深推定部28は、水深データ取得部24が取得した水深データから水深を推定する。これにより、水深推定部28は、エコー信号から水深を算出できない場合であっても、現在位置に対応する海図データ(水深データ)から、その位置における水深を推定することができる。
【0044】
また、水深推定部28は、潮高データ取得部26が取得した潮高データに基づいて、推定した水深を補正する。海面は、潮の干満により変化する。上述のように水深データ記憶部161に記憶されている水深データは干潮時の水深であるため、水深推定部28は、推定した水深から、取得した潮高を加算することで、現位置の干潮又は満潮を考慮した水深を推定できる。
【0045】
さらに、水深推定部28は、吃水値取得部27が取得した吃水値に基づいて、推定した水深を補正する。水深推定部28が水深データから推定する水深は、海面から海底までの距離である。吃水値は、船舶の大きさや重量などによって変化するため、水深推定部28は、推定した水深から、吃水値取得部27が取得した自船の吃水値を減算することで、自船の船底から海底までの水深を得ることができる。
【0046】
なお、水深推定部28が行う水深データからの水深の推定は、常に行ってもよいし、水深算出部21がエコー信号から水深を算出できない場合にのみ行ってもよいし、水深算出部21がエコー信号から水深を算出できないときから一定時間繰り返し行ってもよい。また、水深データ取得部24は、位置取得部23が取得した位置から所定領域内(例えば、半径5m範囲内)の位置に対応する水深データを複数取得し、水深推定部28は、複数の水深データの平均値を、位置取得部23が取得した位置の水深として推定するようにしてもよい。この場合、水深推定部28は、例えば、位置取得部23が取得した位置に近い水深データの重み付けを大きくして、水深を推定してもよい。海底は起伏が激しい場所もあるため、複数の水深データから位置取得部23が取得した位置の水深を推定することで、水深推定部28は、より精度の高い水深を推定することができる場合がある。
【0047】
表示制御部14は、演算処理部13での処理結果に基づいて描画処理を行い、画像データを生成する。表示器15は、例えば液晶ディスプレイであって、表示制御部14で生成された画像データに基づいて画面出力する。以下に、表示器15に表示する画面について説明する。なお、表示器15および表示制御部14は、水中探知装置1が備えていなくてもよく、表示制御部14で生成される画像データは、外部の表示装置で生成される構成であってもよい。また水中探知装置1が表示器15を備えず、表示制御部14で生成される画像データは、外部の表示装置で表示される構成であってもよい。
【0048】
図3は、魚群探知装置の場合の表示画面の一例を示す図である。図3は、最上位置が海面であって、海面から深度方向に探知した結果の画像を示している。水中探知装置1が魚群探知機の場合、表示器15には、送波した超音波の海面反射や海底反射、魚の反射により得られた画像などが表示される。表示器15は、この表示画像に、演算処理部13で推定された水深を示す線状の画像100を重畳して表示する。これにより、水中探知装置1は、送波した超音波が海底で反射した反射波の受信の有無に拘らず、漁撈者等に対して自船直下の水深(海底)を把握させることができる。
【0049】
なお、図3では、常に水深データから水深を推定し、表示した場合を示しているが、水深算出部21により水深が算出できない場合に水深を推定したときには、画像100を、画面の一部(水深が算出できない部分)のみに表示していてもよい。また、水中探知装置1は、自船の位置に基づいて、海図データから漁礁情報を取得し、表示器15に漁礁を表示するようにしてもよい。図3では、略長方形状の画像101を漁礁として表示している。この場合、漁撈者に対して、漁礁であることを認識させ易くするために、表示色を変えるなどしてもよい。
【0050】
図4は、フォワードルッキングソナーの場合の表示画面の一例を示す図である。フォワードルッキングソナーは、自船直下以外に、自船前方に対しても超音波を送波し、その反射波を受波することで、自船前方の水中探知を行う。図4は、図面左上に自船を表示し、自船から直下及び前方に探知した結果の画像を示している。水中探知装置1がフォワードルッキングソナーの場合、表示器15には、送波した超音波の海面反射や海底反射により得られた画像などが表示される。
【0051】
表示器15は、この表示画像に、演算処理部13で推定された水深を示す線状の画像102を重畳して表示する。これにより、水中探知装置1は、送波した超音波が海底で反射した反射波の受信の有無に拘らず、漁撈者等に対して、自船直下及び前方の水深(海底)を把握させることができる。なお、図4では、図3と同様に、略長方形上の画像103を漁礁として表示している。
【0052】
以下に、水中探知装置1における動作について説明する。
【0053】
図5は、水中探知装置1で実行される動作の処理手順を示すフローチャートである。なお、図5に示すフローチャートは、水深算出部21により水深が算出できない場合に水深を推定するときの処理を示す。水中探知装置1の送受波器10は、送信部11からの超音波送信信号に基づいて、水中に超音波を送受する(S1)。演算処理部13は、送受波器10が受波した反射波に係るエコー信号に基づいて、水深を算出する(S2)。
【0054】
次に、演算処理部13は、水深が算出できたか否かを判定する(S3)。なお、水深推定部28が常に水深データから水深を推定する場合、S3は省略される。算出できた場合(S3:YES)、演算処理部13は、表示制御部14へ算出結果を出力して、表示制御部14は、エコー信号に基づいて、表示器15へ画像(例えば、図3において画像100,101がない画像)を表示する(S10)。そして、本処理は終了する。
【0055】
水深が算出できない場合(S3:NO)、演算処理部13は、自船の位置(経度及び緯度)を取得する(S4)。S3において、水深が算出できない場合とは、上述したように海底を検出できない場合である。また、演算処理部13は、GPS測位方法又はロラン航法などにより、経度及び緯度を算出する。このとき、演算処理部13は、水中探知装置1の用途に応じて、自船の位置を取得してもよいし、自船周囲(例えば前方)の位置を取得するようにしてもよい。
【0056】
次に、演算処理部13は、取得した自船の位置に対応する水深データを、水深データ記憶部161から取得する(S5)。このとき、演算処理部13は、対応する水深データが水深データ記憶部161に記憶されていない場合、取得した自船の位置近傍の位置に対応する水深データを一又は複数取得してもよい。
【0057】
演算処理部13は、日時を取得し(S6)、自船の位置及び日時に対応する潮高データを潮高データ記憶部162から取得する(S7)。続いて、演算処理部13は、吃水値を取得する(S8)。演算処理部13は、S5で水深データ記憶部161から取得した水深データを補正する(S9)。なお、演算処理部13は、潮高データや吃水値などに基づいて、水深データを補正しなくてもよい。その後、演算処理部13は、図3又は図4などに示すように、表示器15へ画像を表示し(S10)、本処理は終了する。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態では、水中に送波した超音波の反射波を受波できないなどの理由で、水深を算出できない場合、海図データとして記憶された水深データから、現在位置における水深を推定し、表示する。これにより、オペレータに信頼性の高い水深を把握させることができる。
【0059】
なお、水中探知装置1の具体的構成などは、適宜設計変更可能であり、上述の実施形態に記載された作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0060】
例えば、水中探知装置1は、魚の体長を計測する機能を備えていてもよい。斯かる機能は、海底の岩礁や漁礁を魚と判断し、海底に大きな魚がいると誤判別するおそれがある。そこで、水中探知装置1は、水深推定のために取得した自船の位置を利用し、岩礁又は漁礁の情報を含む海図データに基づいて、自船が漁礁ポイント付近に位置したかを判定する。漁礁ポイント付近に位置した場合、漁礁付近の深度領域については計測を無効とする。計測の無効とは、計測した結果を無効としてもよいし、計測処理そのものを行わないようにしてもよい。
【0061】
また、計測を無効とした領域より浅い領域(漁礁の深度から漁礁の高さに相当する所定のオフセット量を差し引いた深度より浅い領域)では、魚体長の計測を有効とする。これにより、魚と岩等との誤判別するおそれを軽減できる。
【0062】
また、水中探知装置1は、反射波から海底質を判別する機能を備えていてもよい。水中探知装置1が水中の泡等により反射波を受波できず、海底質を判別できない場合、水中探知装置1は、水深推定のために取得した自船の位置を利用し、海図データの底質情報を取得し、表示器15に表示するようにしてもよい。この場合、より精度の高い海底底質情報を、オペレータに提供することができる。
【0063】
さらに、水中探知装置1は、魚の種別を判別する機能をさらに備えていてもよい。記憶部16等に、位置に応じた魚群の情報を記憶しておき、水中探知装置1は、取得した自船の位置から、その位置に対応する魚群の情報を取得する。そして、水中探知装置1が、反射波から魚群を探知した場合に、取得した魚群の情報と参照し、魚種を推定(判別)し、表示器15などに表示する。これにより、より確度の高い魚種判別を行える。
【符号の説明】
【0064】
1−水中探知装置、14−表示制御部(出力手段)、15−表示器、16−記憶部、21−水深算出部、22−算出判定部(検出判定手段)、23−位置取得部(位置取得手段、周囲データ取得手段)、24−水深データ取得部(海図データ取得手段、周囲データ取得手段、取得判定手段)、25−日時取得部(時刻取得手段)、26−潮高データ取得部(特定手段)、27−吃水値取得部(吃水線位置取得手段)、28−水深推定部(推定手段、水位補正手段、吃水線補正手段、周囲データ補正手段)161−水深データ記憶部、162−潮高データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信された信号が水中で反射してなるエコー信号に基づいて、水中情報を検出する水中探知装置であって、
自装置の位置を取得する位置取得手段と、
該位置取得手段が取得した位置に対応する海図データを取得する海図データ取得手段と、
前記位置取得手段が取得した位置及び前記海図データ取得手段が取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定する推定手段と、
前記推定手段が推定した水中情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水中探知装置であって、
前記海図データは水深を示す水深データを含み、
前記推定手段は、
前記海図データ取得手段が取得した海図データに含まれる水深データを用いて、水深を推定する
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中探知装置であって、
前記海図データは岩礁又は漁礁に係る情報を示す海底データを含み、
前記エコー信号に基づいて、該エコー信号に係る反射物の長さを計測する長さ計測手段と、
前記海図データ取得手段が取得した海図データに含まれる海底データに基づいて、前記長さ計測手段による計測を無効にする手段と、
をさらに備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
前記海図データは底質情報を含み、
前記エコー信号に基づいて底質を判別する底質判別手段、
をさらに備え、
前記出力手段は、
前記底質判別手段が底質を判別できない場合、前記海図データ取得手段が取得した海図データに含まれる底質情報を出力する
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
位置に応じた魚情報を記憶する手段と、
エコー信号および前記位置取得手段が取得した位置に応じた魚情報に基づいて魚種を判別する魚種判別手段と、
をさらに備え、
前記出力手段は、
前記魚種判別手段が判別した魚種を出力する、
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
エコー信号に基づいて、水中情報が検出されたか否かを判定する検出判定手段
をさらに備え、
前記推定手段は、
前記検出判定手段により水中情報が検出されていないと判定した場合、前記海図データ取得手段が取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定する
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
時刻を取得する時刻取得手段と、
該時刻取得手段が取得した時刻に基づいて、前記位置取得手段が取得した位置における水位を特定する特定手段と、
該特定手段が特定した水位に基づいて、前記推定手段が推定した水中情報を補正する水位補正手段と
をさらに備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
船舶に搭載されている場合、
自船の吃水線位置を取得する吃水線位置取得手段と、
該水線位置取得手段が取得した吃水線位置に基づいて、前記推定手段が推定した水中情報を補正する吃水線補正手段と
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
前記位置取得手段が取得した位置から所定距離内の位置に対応する海図データを取得する周囲データ取得手段と、
前記周囲データ取得手段が取得した海図データに基づいて、前記推定手段が推定した水中情報を補正する周囲データ補正手段と
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
前記海図データ取得手段が海図データを取得したか否かを判定する取得判定手段と、
前記位置取得手段が取得した位置から所定距離内の位置に対応する海図データを取得する周囲データ取得手段と
をさらに備え、
前記推定手段は、
前記取得判定手段が自装置の位置における海図データを取得していないと判定した場合、前記周囲データ取得手段が取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定する
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項11】
送信された信号が水中で反射してなるエコー信号に基づいて、水中情報を検出する水中探知方法であって、
自装置の位置を取得し、
取得した位置に対応する海図データを取得し、
取得した位置及び取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定し、
推定した水中情報を出力する
ことを特徴とする水中探知方法。
【請求項12】
送信された信号が水中で反射してなるエコー信号に基づいて、水中情報を検出するコンピュータで実行されるプログラムであって、
コンピュータを、
取得した自身の位置に対応する海図データを取得する海図データ取得手段、
取得した自身の位置及び前記水中情報データ取得手段が取得した海図データに基づいて、検出すべき水中情報を推定する推定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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