説明

水中油型乳化組成物

【課題】アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩及び/又はアスコルビン酸2−グルコシドを高濃度で配合可能な、安定な水中油型乳化組成物を開発する
【解決手段】(A)3質量%のアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩と(B)2質量%のアスコルビン酸2−グルコシドと(C)ポリオキシエチレンステロールエーテルと(D)分子量が1×10〜2×10のポリエチレングリコールを含有する水中油型乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
美白効果を有するアスコルビン酸誘導体として、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸2−グルコシドが知られている。
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩含有製剤はアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩の有効性と製剤の安定性の兼ね合いから、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩の配合濃度を3質量%とするものが一般的であった(特許文献1:特開平3−227907号公報)。
アスコルビン酸2−グルコシド含有製剤については、アスコルビン酸2−グルコシドの有効性と製剤の安定性の兼ね合いから、アスコルビン酸2−グルコシドの配合濃度を約2質量%とするものが一般的であった(特許文献2:特開平8−333260号公報)。
【0003】
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩とアスコルビン酸2−グルコシドを同時に配合する技術が知られているが(特許文献3:特開2003−73252号公報)、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩とアスコルビン酸2−グルコシドのような電解質の性質を有する成分を5質量%以上の高濃度で配合して、安定な低粘度の乳化組成物を得ることは困難であった。
本発明者はアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩とアスコルビン酸2−グルコシドを含有する乳化組成物の研究を継続しており、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩、アスコルビン酸2−グルコシド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステロール又はポリオキシエチレンステロール、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド又はセレブロシドを含有する安定な水中油型乳化組成物を特許出願している(特願2009−99475)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−227907号公報
【特許文献2】特開平8−333260号公報
【特許文献3】特開2003−73252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩及び/又はアスコルビン酸2−グルコシドを高濃度で配合可能な、安定な水中油型乳化組成物を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定のポリエチレングリコールを配合することにより、安定な半透明の水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)(A)3質量%のアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩と(B)2質量%のアスコルビン酸2−グルコシドと(C)ポリオキシエチレンステロールエーテルと(D)分子量が1×10〜2×10のポリエチレングリコールを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(2)平均粒子径が180nm以下であることを特徴とする(1)に記載の水中油型乳化組成物
(3)(E)1質量%の油剤を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載された水中油型乳化組成物
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載された水中油型乳化組成物からなる美白化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩及び/又はアスコルビン酸2−グルコシドを配合し、高濃度の電解質の配合を可能にするために外に2種類の成分と組み合わせることによって、安定で、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩の析出が生じない水中油型乳化組成物を実現できた。本発明の水中油型乳化組成物は、半透明で用いることができ、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩、アスコルビン酸2−グルコシドを同時に配合することにより、美白効果を長時間にわたって発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(A)アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩と(B)アスコルビン酸2−グルコシドと(C)ポリオキシエチレンステロールエーテルと(D)分子量が1×10〜2×10のポリエチレングリコールの成分を配合することにより、(A)アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩及び(B)アスコルビン酸2−グルコシドを高配合することのできる水中油型乳化組成物である。本発明の水中油型乳化組成物には(E)1質量%の油剤を含有させることができる。
【0009】
本発明に用いる(A)成分であるアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩は、酵素、熱に不安定なL−アスコルビン酸をリン酸エステル化して安定化したアスコルビン酸誘導体であり、市販品(昭和電工製アスコルビン酸PM、日本サーファクタント工業製NIKKOL VC-PMG等)を使用することができる。本発明に用いるアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩の配合量は3質量%である。3質量%の濃度でアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩を配合した製剤は美白効果を有する医薬部外品として認められており、美白効果が発揮される。
【0010】
本発明に用いる(B)成分であるアスコルビン酸2−グルコシドは、アスコルビン酸の2位のOH基にグルコースがα型でエーテル結合したものである。アスコルビン酸2−グルコシドは市販品(林原製アスコルビン酸2−グルコシド等)を用いることができる。2質量%のアスコルビン酸2−グルコシドを配合した製剤は美白効果を有する医薬部外品として認められており、美白効果が発揮される。
(A)成分のアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩は表皮及び真皮内でホスファターゼによって速やかに分解され、アスコルビン酸が生成し、美白効果を発揮する。(B)成分のアスコルビン酸2−グルコシドは表皮及び真皮内でα−グルコシダーゼによって徐々にアスコルビン酸とグルコースに分解され、美白効果を発揮する。アスコルビン酸2−グルコシドの分解速度は、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩の分解速度よりも遅いことが知られている(フレグランスジャーナル,25(3),62〜70(1997))。従って、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩、アスコルビン酸2−グルコシドを同時に配合することにより、美白効果が長時間にわたって発揮される。
【0011】
本発明に用いる(C)成分であるポリオキシエチレンステロールエーテルは、ポリオキシエチレンとステロール類がエーテル結合した非イオン性界面活性剤である。市販品を用いることができ、コグニスジャパン製POE(5)ナタネステロール(GENEROL RE5)、POE(10)ナタネステロール(GENEROL RE10)、POE(5)フィトステロール(GENEROL 122N E5)、POE(10)フィトステロール(GENEROL 122N E10)、日本サーファクタント工業製PEG−5ダイズステロール(NIKKOL BPS-5)、PEG−10ダイズステロール(NIKKOL BPS-10)、PEG−20ダイズステロール(NIKKOL BPS-20)、PEG−30ダイズステロール(NIKKOL BPS-30)、ポリオキシエチレンフィトスタノール(NIKKOL BPSH-25)等を用いることができる。
【0012】
本発明に用いる(D)成分である分子量が1×10〜2×10のポリエチレングリコールは、市販品を用いることができる。具体的には、東邦化学製 トーホーポリエチレングリコール11000、第一工業製薬製 PEG11000、日油製 PEG#11000(PEG11000 分子量11,000)、ADEKA製 アデカPEG−20000、東邦化学製 トーホーポリエチレングリコール20000、三洋化成製 PEG−20000、日油製 PEG#20000(PEG20000 分子量20,000)等が挙げられる。
【0013】
本発明に用いる(E)成分である油剤としては、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、動植物油、シリコーン油、油性の香料、紫外線吸収剤、薬効剤等が挙げられる。
炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、ポリブテンなどが挙げられる。
エステル油としては、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソノナン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン)酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、テトラミリスチン酸ペンタエリスリトール、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル等が挙げられる。
高級アルコールとしては、オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
動植物油としては、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ミンク油等が挙げられる。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
油性の香料としては、ベンジルアルコール、アネトール、カンファー、シトロネラール、ゲラニオール、リモネン、l−メントール等が挙げられる。
油性の紫外線吸収剤としては、パラメトキシケイ皮酸オクチル等が挙げられる。
油性の薬効剤としては、ビタミンA油、dl−α−トコフェロール、コメ胚芽油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物を調製する際に、上記(A)〜(E)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で通常の皮膚外用剤の原料を用いることができる。例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料等を配合することができる。また、トコフェロール、レチノール誘導体等のビタミン類や植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0015】
本発明の水中油型乳化組成物は乳液状の化粧料、医薬部外品、医薬品として使用することができる。特に、美白化粧料として有用である。
【0016】
[試験例1]
表1、表2の組成にて、実施例1、2の水中油型乳化組成物、並びに、比較例1〜18の水中油型乳化組成物を調製した。
【0017】
製法
事前に表1及び表2の1、2、8、9の一部を室温にて混合、溶解させアスコルビン酸誘導体水溶液を調製する。4、5、9の水相成分を混合し、85℃で均一溶解させる。3、6、7の油相成分を混合し、85℃で均一溶解させ、水相成分に添加し、6000rpm、10分間ホモミキサー(プライミクス製TKホモミキサーMARKII)で乳化を行う。調製した乳化物を40℃まで冷却し、事前に調製したアスコルビン酸誘導体水溶液を混合し、高圧乳化機(みづほ工業製マイクロフルイダイザー)にて160MPaで3パス処理した。
【0018】
尚、表1及び表2中の成分A〜Dは以下の原料を用いた。
A成分
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩(昭和電工製アスコルビン酸PM)
B成分
アスコルビン酸2−グルコシド(林原製アスコルビン酸2−グルコシド)
C成分
PEG20ダイズステロール(日本サーファクタント工業製NIKKOL BPS-20)
D成分
PEG11000(日油製PEG#11000)、分子量11,000
PEG20000(日油製PEG#20000)、分子量20,000
【0019】
実施例1,2及び比較例1〜18の水中油型乳化組成物について、平均粒子径、透過率、50℃1ヶ月保管安定性、外観を測定・評価した。尚、比較例1〜6については、分離が生じたため、平均粒子径と透過率を測定しなかった。
【0020】
平均粒子径の測定
製造後25℃で1週間保管した水中油型乳化組成物について、動的光散乱法によるキュムラント解析から平均粒子径を測定した。
装置:大塚電子株式会社製レーザーゼータ電位計ELS−8000
【0021】
透過率の測定
製造後25℃で1週間保管した水中油型乳化組成物について、光路長1cmの石英セルを用いて波長750nmの透過率を測定した。対照試料として精製水を用いた。
装置:分光光度計 HITACHI U−2000A
【0022】
安定性
製造後、50℃で1ヶ月保管した水中油型乳化組成物について、安定性を評価した。変化がなく安定なものを○と評価し、変化があったものについては、変化の内容を表1、表2中に記載した。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
実施例1,2は平均粒子径が180nm以下と小さく、半透明を示し、50℃1ヶ月保管しても安定であった。
ポリオキシエチレンステロールエーテルに代えて、各種界面活性剤を配合した比較例1〜6については、製造後すぐに分離し、安定な水中油型乳化組成物は得られなかった。
ポリエチレングリコールを配合しない比較例7及び分子量が1×10未満のポリエチレングリコールを配合した比較例8〜11ではアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩が析出した(ビンの底に微細な不規則な粒子形で析出)。
分子量が2×10を超えるポリエチレングリコールを配合した比較例12〜15では、ポリエチレングリコールが析出した(固まりとなって浮く)。
ポリエチレングリコールに代えてグルコース等の保湿剤を配合した比較例16〜18についてもアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩が析出した(ビンの底に微細な不規則な粒子形で析出)。
【0026】
[処方例1]
美白化粧料
成分 配合量(質量%)
1.アスコルビン酸-2-リン酸エステルMg塩 3.0
2.アスコルビン酸2−グルコシド 2.0
3.PEG−10ナタネステロール 2.0
4.PEG20000 1.5
5.フィトステロール 0.05
6.ジメチコン 0.6
7.精製水 残余
8.1,2−ペンタンジオール 3.0
9.1,3−ブチレングルコール 10.0
10.キサンタンガム 0.2
11.クエン酸緩衝液 5.0
12.水酸化カリウム 適量

【0027】
[処方例2]
美白化粧料
成分 配合量(質量%)
1.アスコルビン酸-2-リン酸エステルMg塩 3.0
2.アスコルビン酸2−グルコシド 2.0
3.ポリオキシエチレンフィトスタノール 3.0
4.PEG11000 0.8
5.オリーブ油 1.4
6.プロピレングリコール 3.0
7.ジプロピレングリコール 5.0
8.クエン酸緩衝液 5.0
9.水酸化カリウム 適量
10.精製水 残余

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)3質量%のアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム塩と(B)2質量%のアスコルビン酸2−グルコシドと(C)ポリオキシエチレンステロールエーテルと(D)分子量が1×10〜2×10のポリエチレングリコールを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項2】
平均粒子径が180nm以下であることを特徴とする請求項1記載の水中油型乳化組成物
【請求項3】
(E)1質量%の油剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載された水中油型乳化組成物
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された水中油型乳化組成物からなる美白化粧料。


【公開番号】特開2011−178736(P2011−178736A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46070(P2010−46070)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】