説明

水中油型化粧料

【課題】優れた経時安定性を有すると共に、良好な使用感、特にハリ感を付与する水中油型化粧料を提供する。
【解決手段】100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/sである水添ポリイソブテンを含む油相と、ステアリン酸ソルビタンと、を含有し、油相及び水相から構成された水中油型化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌にハリ感を付与することを目的として、種々の技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、肌の上で厚みのある化粧膜を形成させるため、ポリビニルアルコールや、ラテックス類、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂などの皮膜形成剤と、低級アルコール、球状粉末及び清涼剤を含有する皮膚化粧料が開示されている。また、特許文献2には、所定のショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルに、ポリエチレンワックスやミツロウのような所定の固形油を組み合わせた水中油型化粧料が開示されている。
また、特許文献3には、固形油や皮膜形成剤の代わりに、高粘性油剤と、イソノナン酸イソトリデシルと、ポリエチレングリコールなどの高分子を併用することでハリ感を付与可能な水中油型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−239139号公報
【特許文献2】特開2009−234971号公報
【特許文献3】特開2007−261971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハリ感を付与するために、皮膜形成剤を使用すると、配合量によってはべたつきを感じる場合があり、一方、固形油を大量に配合した化粧料では、乳化粒子の凝集や合一、あるいは結晶析出等が生じて、経時安定性の面で問題となる場合があった。皮膜形成剤及び固形油の代わりに、高粘性油剤と高分子を併用した化粧料でも、高分子によるべたつきを感じる場合があった。このように、優れた経時安定性を有すると共に、良好な使用感、特にハリ感を付与可能な水中油型化粧料に対する要請は依然として残されている。
【0005】
従って本発明は、優れた経時安定性を有すると共に、良好な使用感、特にハリ感を付与する水中油型化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
[1] 100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/sである水添ポリイソブテンを含む油相と、ステアリン酸ソルビタンと、を含有し、油相及び水相から構成された水中油型化粧料。
[2] 油脂、炭化水素及びロウから選ばれる融点が60℃以上の固形油の合計含有量が0又は化粧料全質量の5質量%未満である[1]に記載の水中油型化粧料。
[3] 前記油相の含有量が、化粧料全質量の45質量%〜70質量%である[1]又は[2]に記載の水中油型化粧料。
[4] 前記水添ポリイソブテンの含有量が、油相の質量の10質量%〜40質量%である[1]〜[3]のいずれかに記載の水中油型化粧料。
[5] 前記水添ポリイソブテンの含有量が、化粧料全質量の5質量%〜20質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載の水中油型化粧料。
[6] 更に、高級アルコール及び高級脂肪酸の少なくとも一方を含む[1]〜[5]のいずれかに記載の水中油型化粧料。
[7] 高級アルコール及び高級脂肪酸を共に含む[1]〜[6]のいずれかに記載の水中油型化粧料。
[8] 前記高級アルコールが、ベヘニルアルコール及びステアリルアルコールから選択された少なくとも1種である[6]又は[7]に記載の水中油型化粧料。
[9] 前記高級脂肪酸が、パルミチン酸及びステアリン酸から選択された少なくとも1種である[6]〜[8]のいずれかに記載の水中油型化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた経時安定性を有すると共に、良好な使用感、特にハリ感を付与する水中油型化粧料を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水中油型化粧料は、100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/sである水添ポリイソブテンを含む油相と、ステアリン酸ソルビタンと、を含有し、油相及び水相から構成された水中油型化粧料である。
本発明によれば、高粘性の所定の水添ポリイソブテンと、ステアリン酸ソルビタンとを組み合わせることによって、良好な使用感、特にハリ感が付与される。このため、ポリエチレングリコールなどの高分子化合物を使用しなくても、高い使用感を得ることができ、また、固形油や皮膜形成剤を使用する必要がないので、分離や析出などの発生が抑制される。
以下、本発明について説明する。
【0009】
なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
本発明の水中油型化粧料は、油相と水相とから構成された水中油型乳化組成物であり、油相は油滴(水中油型乳化粒子)として、水相中に分散している。
【0011】
本発明の水中油型化粧料には、油相成分として、100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/sである水添ポリイソブテンが含まれる。
【0012】
水添ポリイソブテンとしては、100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/sであり、1000mm/sを超える動粘度の水添ポリイソブテンでは、粘度が高すぎて、良好な使用感が得られず、安定性を損なう場合がある。一方、200mm/s未満の動粘度の水添ポリイソブテンでは、粘度が低すぎて良好な使用感が得られず、本発明の効果が期待できない。使用感及び経時安定性の観点から、100℃における動粘度が300mm/s〜800mm/sの水添ポリイソブテンであることがより好ましい。本発明における動粘度は、JIS−K−2283記載の原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法に基づいて測定したものとする。
【0013】
このような水添ポリイソブテンとしては、重質流動イソパラフィン及び水添ポリイソブテンの中から動粘度に基づいて選択されたものを挙げることができる。市販品としても入手可能であり、日油株式会社のパームリーム18(動粘度300mm/s)及びパームリーム24(動粘度800mm/s)などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明の水中油型化粧料における水添ポリイソブテンの含有量は、良好な使用感、特にハリ感の付与の観点から、化粧料の全質量の5質量%〜20質量%であることが好ましく、8質量%〜15質量%であることがより好ましく、9質量%〜12質量%であることが更に好ましい。
また、この水添ポリイソブテンは、良好な使用感、特にハリ感の付与の観点から、水中油型化粧料における油相の質量の10質量%〜40質量%であることが好ましく、16質量%〜30質量%であることがより好ましくは、18質量%〜23質量%であることが更に好ましい。
【0015】
本発明の水中油型化粧料における油相は、水中油型乳化組成物を製造する場合に、油相として添加する成分の総体のことを意味するものであり、具体的には、主として、油分(流動油分、半固形油分、固形油分)、界面活性剤(液状界面活性剤、半固形界面活性剤、固形界面活性剤)、高級アルコール、高級脂肪酸を意味するものである。そのほか、油溶性色素類、油溶性蛋白質類などがある。また、それらの混合物である、各種の植物油、動物油も含まれる。これらはそれぞれに包含される物質を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、油相として、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、酸化防止剤、香料を含むことができる。これらはそれぞれに包含される物質を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。従って、本発明の水中油型化粧料における油相は、上述の水添ポリイソブテンの他に、後述する種々の油溶性の物質を油相成分として含むことができる。
【0016】
中でも、使用感の改善効果を持続させるために、本発明の水中油型化粧料は、油相成分として、高級アルコール及び高級脂肪酸の少なくとも一方を含有することが好ましく、使用感、特にハリ感や保湿感及びこれらの持続性の観点から、高級アルコール及び高級脂肪酸を共に含有することが特に好ましい。
【0017】
高級アルコールとしては、炭素数12〜24のものを挙げることができ、例えば、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セタノール、2−オクチルドデカノールなどの高級アルコールなどが該当し、ベヘニルアルコール及びステアリルアルコールを好適に用いることができる。これらはそれぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。高級アルコールの含有量は、使用感、特にハリ感や保湿感及びそれの持続性の観点から、水中油型化粧料の全質量の0.5質量%〜5質量%であることが好ましく、1質量%〜4質量%であることがより好ましい。
【0018】
また、高級脂肪酸としては、炭素数12〜24の飽和又は不飽和の脂肪酸を挙げることができ、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキドン酸などが該当し、パルミチン酸及びステアリン酸を好適に用いることができる。これらはそれぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。高級脂肪酸の含有量は、使用感、特に保湿感及びその持続性の観点から、水中油型化粧料の全質量の0.5質量%〜5質量%であることが好ましく、1質量%〜4質量%であることがより好ましい。
【0019】
なお、本発明の水中油型化粧料が、高級アルコール及び高級脂肪酸を共に含有する場合、高級アルコール及び高級脂肪酸の組合せは特に制限されるものではなく、例えば、ベヘニルアルコール及びステアリルアルコールから選択された高級アルコールのうち少なくとも1種類と、パルミチン酸及びステアリン酸から選択された高級脂肪酸のうち少なくとも1種類との組合せを好適に挙げることができ、ステアリン酸及びステアリルアルコールの組合せ、パルミチン酸及びベヘニルアルコールの組合せがより好ましい。
【0020】
本発明の水中油型化粧料は、油相成分における油分として、油脂類を含有してもよい。
油脂類としては、例えば、硬化ヤシ油、硬化ヒマシ油、パーム油、硬化油、モクロウ等が挙げられる。ロウとしては、例えば、融点68〜72℃のキャンデリラロウ、融点80〜86℃のカルナバロウ、融点60〜67℃のミツロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ等が挙げられる。炭化水素類としては、例えば、ワセリン、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、スクワラン、水添ポリデセン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0021】
ただし本発明においては、上述した油脂、炭化水素及びロウのうち、融点が60℃以上の固形油の合計含有量は、経時安定性の観点から、0又は、化粧料の全質量の5質量%以未満であることが好ましい。このような、油脂、炭化水素及びロウから選択された融点が60℃以上の固形油としては、それらの融点に基づいて選択され、例えば、上記のキャンデリラロウ、カルナバロウ、ミツロウなどが該当し、一方、ワセリン、流動パラフィンなどは該当しない。
【0022】
その他の油分としては、コレステロール、フィトステロールなどのステロール類;パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシルなどのエステル類が挙げられる。
【0023】
また、特徴のある機能を有する機能性油分として、βカロテン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、リコピン、ルテインなどのカロテノイド類、トコフェロール、トコトリエノールなどのビタミンE類、コエンザイムQ10などのユビキノン類、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、リノレン酸などのω−3油脂類なども含むことができる。なお、本明細書における「機能性成分」とは、生体に適用した場合に、適用された生体において所定の生理学的効果の誘導が期待され得る成分を意味する。
【0024】
更に、保湿機能を持った油分として高価ではあるが、セラミドI、セラミドII、セラミドIII、セラミドV、セラミドVIなどの活性セラミド類;グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドなどのスフィンゴ糖脂質類;スフィンゴミエリン類;疑似セラミド類も含むことができる。
【0025】
これらの水添ポリイソブテン以外の油相成分は、本発明における上述した所定の水添ポリイソブテンによる機能を妨げない範囲で含むことができる。
【0026】
本発明の水中油型化粧料は、上述した所定の水添ポリイソブテンに加えて、油相成分として、ステアリン酸ソルビタンを含有する。ステアリン酸ソルビタンを上述した所定の水添ポリイソブテンと組み合わせることによって、適度な圧力で崩壊しやすい油滴を形成して、水添ポリイソブテンと共に良好な使用感を付与すると考えられる。
ステアリン酸ソルビタンは、使用感(特にハリ感)の観点から、水中油型化粧料の全質量の0.3質量%〜2質量%であることが好ましく、0.5質量%〜1.0質量%であることがより好ましい。
また、ステアリン酸ソルビタンの質量に対する上述した所定の水添ポリイソブテンの質量は、使用感の観点から、5倍〜25倍であることが好ましく、9倍〜20倍であることがより好ましい。
【0027】
本発明の水中油型化粧料は、ステアリン酸ソルビタンの他に、従来公知の界面活性剤を、本発明の効果を妨げない範囲で、油相成分として含んでもよい。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性の各界面活性剤を挙げることができ、特にノニオン性界面活性剤が好ましく、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン以外の他のソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びポリソルベート類又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
本発明の水中油型化粧料は、油相成分として、上記成分の他、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0029】
油相成分の総体としての油相の質量は、水中油型化粧料の全質量の45質量%〜70質量%であることが使用感及び安定性の観点から好ましく、47質量%〜52質量%であることがより好ましい。
【0030】
本水中油型化粧料の水相として、水の配合は必須である。配合量は、水以外の成分の残量であって、おおむね10質量%〜50質量%である。
【0031】
本水中油型化粧料は、経時安定性の観点から、水相成分として、多価アルコールを含有してもよい。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、又は、多糖類、例えば、還元水あめ、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、グルコース、ガラクトース、ソルビトール、マルトトリオース、トレハロースなどを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0032】
多価アルコールの水中油型化粧料全質量に対する含有量は、使用感の観点から、水中油型化粧料全質量に対して1質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜8質量%である。
【0033】
本発明の水中油型化粧料における水相とは、水及び水中油型乳化組成物を製造する場合に水相として添加する成分(水相成分)の総体を意味する。
【0034】
本発明の水中油型化粧料は、水相成分として、水溶性高分子を含んでいてもよい。
ここで、水溶性高分子は、少なくとも0.001質量%程度以上、水(25℃)に溶解する高分子であれば何を用いてもよい。本発明において水溶性高分子を用いることで、水中油型化粧料の安定化を図ることができる。なお、本発明における水溶性高分子とは、従来化粧用組成物に用いられてきたものであり、特に限定されるものではない。
【0035】
本発明に用いうる水溶性高分子としては、ペクチン、カッパーカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアガム、キサンタンガム、カラヤガム、タマリンド種子多糖、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストリン等の多糖類;カゼイン、アルブミン、メチル化コラーゲン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、ゼラチン等の分子量5000超のタンパク質;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体(ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等のポリオキシエチレン系高分子及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合系高分子)等の合成高分子;ヒドロキシエチルセルロース・メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;など、又はこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。これらは、合成されたものであっても、天然物であってもよい。
【0036】
本発明の水中油型化粧料における水溶性高分子の合計の含有量は、使用感の観点から、1質量%未満であることが好ましく、0.001質量%〜1質量%であることがより好ましい。1質量%未満であれば、ベタツキ感が抑制されて好ましい。
【0037】
本発明の水中油型化粧料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、例えば、グリシンベタイン・尿素・中性アミノ酸・塩基性アミノ酸等の保湿剤、アラントイン等の薬効剤、セルロースパウダー・ナイロンパウダー・架橋型シリコーン末・架橋型メチルポリシロキサン・多孔質セルロースパウダー・多孔質ナイロンパウダー等の有機粉体、無水シリカ・酸化亜鉛・酸化チタン等の無機粉体、メントール・カンファー等の清涼剤などの他、植物エキス、pH緩衝剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素等、通常、その用途で使用される他の添加物を併用することができる。
【0038】
本発明の水中油型化粧料は、常法の乳化組成物の製造方法、具体的には、水中乳化剤法、油中乳化剤法、交互添加法等によって製造することが可能である。
【0039】
本発明の水中油型化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリ−ム等のスキンケア化粧料、化粧下地等のメイクアップ化粧料を例示することができる。特に、顔、特に目元に適用するものとして好ましく使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0041】
[水中油型化粧料の調製]
下記の方法により、表1〜表7の示す実施例1〜25及び比較例1〜9の各水中油型化粧料としてクリームを作製した。なお、表1〜表7中の各成分の数値は、質量%を示す。
表1〜表7に記載の処方に従って、油相の各成分を、80℃に加熱して混合し、油相成分を調製した。次いで、表1〜表7に記載の処方に従って、水相の各成分を、80℃に加熱して混合し、調製済みの油相成分を添加して、ホモミキサーにより乳化した。得られた乳化物を30℃にまで冷却して、クリームを得た。
【0042】
[評価方法]
(1)使用感(ハリ感 ハリの持続感 保湿感 保湿の持続感)
専門パネル10名により、上記で得られた各クリームを、顔面に塗布し、塗布直後と、塗布後6時間のそれぞれにおいて、下記評価に基づいてハリ感、及び保湿感を評価した。
◎:専門パネル10名中8名以上10名未満が良好と回答した。
○:専門パネル10名中6名以上8名未満が良好と回答した。
△:専門パネル10名中4名以上6名未満が良好と回答した。
×:専門パネル10名中4名未満が良好と回答した。
【0043】
(2)安定性
上記で得られた各クリームを、100g秤量してガラス瓶に入れて密閉し、40℃/25℃/4℃の環境下でそれぞれ1ヵ月放置した。1ヵ月後に、外観、光学顕微鏡観察、粒度分布測定結果、硬度測定結果に基づいて、それぞれ経時安定性を評価した。評価は下記のとおりとした。
なお、粒度分布測定には、LA−920 HORIBA製を使用し、粒度分布d50(メジアン径)に基づいて評価した。
また硬度測定には、上記で得られたガラス瓶中の各クリームに対して、レオメーター FUDOHを使用し、20φアダプターを20mm進入させたときの硬度変化に基づいて評価した。
それぞれの評価結果を表1〜表7に示す。
【0044】
(a)外観
○:全く分離がみられない
△:ごくわずかな分離が見られる
×:著しい分離が見られる
(b)光学顕微鏡観察(×1050)
○:凝集や合一による粗大粒子の発生・結晶等の析出がなく、調製直後と同等である
△:凝集や合一による粗大粒子の発生・結晶等の析出が、わずかに見られる
×:凝集や合一による粗大粒子の発生・結晶等の析出が、大量に発生する
【0045】
(c)粒度分布測定
○:粒度分布d50が0.5μm以上2.0μm未満である。
△:粒度分布d50が2.0μm以上3.0μm未満である
×:粒度分布d50が3.0μm以上4.0μm以下である
(d)硬度測定
◎:調製直後の状態と比較して、硬度変化が5%未満
○:調製直後の状態と比較して、硬度変化が5%以上15%未満
△:調製直後の状態と比較して、硬度変化が15%以上35%未満
×:調製直後の状態と比較して、硬度変化が35%以上
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】



【0048】
【表3】






【0049】
【表4】



【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】



【0053】
表1〜表5に示されるように、100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/sである水添ポリイソブテンと、ステアリン酸ソルビタンとを組み合わせた実施例1〜25のクリームでは、固形油を多量に使用せずとも、良好なハリ感を付与し、かつ分離や析出の懸念のない安定なクリームを作製することに成功した。
【0054】
水中油型化粧料の安定性を高めるために界面活性剤の増量が(実施例5、10、20、25)知られているが、本発明においては高級脂肪酸及び高級アルコールの少なくとも一方を含む方法の方がより有効であることがわかった。
【0055】
特に、高級脂肪酸及び高級アルコールの少なくとも一方を含むクリーム(実施例2〜4、7〜9、11、13〜15、17〜19、22〜24)では、ハリ感や保湿感の使用時の持続性についても良好な結果を得た。水中油型化粧料の安定性も更に良好であり、水中油型化粧料の機能と状態が長期にわたって持続できることがわかった。
なお、ポリソルベート60の含有は、通常、ハリ感や保湿感の使用時の持続性に効果が期待される。しかし、実施例20に示されるように、ポリソルベート60を増量しても、高級脂肪酸及び/又は高級アルコールを含有する実施例と比して、ハリ感や保湿感の持続性の効果は得られておらず、本発明においては、高級脂肪酸及び/又は高級アルコールの含有がハリ感や保湿感の持続性の効果に対し、より有効であることが確認できる。
【0056】
表6〜表7に示されるように、このような使用感、特にハリ感は、水添ポリイソブテンとステアリン酸ソルビタンのどちらかが欠ける(比較例1〜3)とまったく得られない。
水添ポリイソブテンの代わりに他の油剤である流動パラフィンやワセリンを増量した場合(比較例5、6)や、ステアリン酸ソルビタンの代わりに他の界面活性剤を用いた場合(比較例8、9)でも、ハリ感は得られない。また、100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/s以外の水添ポリイソブテン(比較例4、7)では、使用感、安定性共に悪化した。
【0057】
従って、本発明の水中油型化粧料では、優れた経時安定性を有すると共に、良好な使用感、特にハリ感を付与することができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃における動粘度が200mm/s〜1000mm/sである水添ポリイソブテンを含む油相と、ステアリン酸ソルビタンと、を含有し、油相及び水相から構成された水中油型化粧料。
【請求項2】
油脂、炭化水素及びロウから選ばれる融点が60℃以上の固形油の合計含有量が0又は化粧料全質量の5質量%未満である請求項1記載の水中油型化粧料。
【請求項3】
前記油相の含有量が、化粧料全質量の45質量%〜70質量%である請求項1又は請求項2記載の水中油型化粧料。
【請求項4】
前記水添ポリイソブテンの含有量が、油相の質量の10質量%〜40質量%である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の水中油型化粧料。
【請求項5】
前記水添ポリイソブテンの含有量が、化粧料全質量の5質量%〜20質量%である請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の水中油型化粧料。
【請求項6】
更に、高級アルコール及び高級脂肪酸の少なくとも一方を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の水中油型化粧料。
【請求項7】
高級アルコール及び高級脂肪酸を共に含む請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の水中油型化粧料。
【請求項8】
前記高級アルコールが、ベヘニルアルコール及びステアリルアルコールから選択された少なくとも1種である請求項6又は請求項7に記載の水中油型化粧料。
【請求項9】
前記高級脂肪酸が、パルミチン酸及びステアリン酸から選択された少なくとも1種である請求項6〜請求項8のいずれか1項記載の水中油型化粧料。

【公開番号】特開2012−62274(P2012−62274A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207308(P2010−207308)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】