説明

水冷式の電流を通電する電極支持アームのための壁要素、及び該壁要素から成る電極支持アーム

本発明の特定の目的は、水冷式の電流を通電する電極支持アームのための壁要素の費用効率が高い製造である。
本発明において、導電金属から成る平坦な外形を備えると共に、電極支持アームの外面を形成する平坦な面に、少なくとも1つの凹部が設けられ、当該凹部は、外形の長さに亘って延びると共に、外側の端面側にカバーを備え、カバーは、溶接によって平坦な外形と組み合わされて、閉じられた冷却チャンネルを形成すると共に、いずれの場合にも、チャンネルを通じて流れる冷却水のための少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有する壁要素が生み出される。壁要素の構成部は、連続材料から費用効率の高い方法で形成でき、また、壁要素から形成される電極支持アームにおけるそれらの寸法に関する個々の要件を考慮に入れて、この壁要素から電極支持アームを費用効率の高い方法で形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水冷式の電流を通電する電極支持アームのための壁要素、及び該壁要素から形成される電極支持アームに関する。
【背景技術】
【0002】
アーク炉の電極のための支持アームは、溶融プロセスによって生じる高温に起因して、少なくとも炉容器の近傍で水冷却を必要とする。
【0003】
これに関連して、従来、中空体として形成された電極支持アーム自体と水を衝突させたり、冷却水を導き且つ支持アームを挿通するチューブを中空体として形成された電極支持アームに結合することが提案されてきた(特許文献1,2,3)。
【0004】
中空体として形成される電極支持アームの内部と冷却水とを直接衝突させる結果として、支持アームが十分な座屈耐性を有していなければならないという事実を考慮すると、支持アームの壁厚の寸法設定に配慮しなければならない。
【0005】
電極テンションブラケット及び接触ジョーに対しても一般になされる冷却は、電極テンションブラケット及び接触ジョーに対して冷却水を給排するために、電極支持アームに連結したチューブを通じ、冷却水を電極テンションブラケット及び接触ジョーへ個別に供給する必要がある。
【0006】
冷却水供給のため、最近、電極支持アームを形成する押出成形壁要素に対して冷却水の循環のためのボアホールを設けることも提案されてきている(特許文献4)。
【0007】
この場合、電極支持アームを挿通し或いは支持アームと組み合わされる別個のチューブシステムが省かれる。
【0008】
しかしながら、押出成形による壁要素の製造及びボアホールの導入は複雑で不利であることが分かってきた。
【0009】
また、異なる寸法及び/又は断面の冷却水チャンネルを有する壁要素の製造に壁要素を貫通する別個の工具を必要とするので、費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP0061612B1号公報
【特許文献2】US3,602,624号公報
【特許文献3】US3,686,421号公報
【特許文献4】EP0594272B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在の技術を基礎とし、本発明の目的は、電極支持アームを形成する壁要素に組み込まれると共に、壁要素及び冷却水チャンネルの断面に関して更なる自由度を可能にする、より経済的な冷却システムを設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的は、水冷式の電流を通電する電極支持アームのための壁要素であって、本発明に従って、導電金属から形成される平坦な外形を備えると共に、電極支持アームの外面を形成する平坦な面に、少なくとも1つの凹部が設けられ、当該凹部は、外形の長さに亘って延びると共に、外側の端面側にカバーを備え、該カバーは、溶接によって平坦な外形と組み合わされて、閉じられた冷却チャンネルを生成すると共に、いずれの場合にも、冷却チャンネルを通じて流れる冷却水のための少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有する壁要素を使用することによって達成される。
【0013】
本発明に係る壁要素の実施形態は、従属請求項2乃至従属請求項7によってもたらされる。従属請求項8乃至従属請求項11は、本発明に係る壁要素から形成できる電極支持アームに関係している。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る壁要素の製造は特定の工具を必要としない。電極支持アームの製造メーカは本発明に係る壁要素、即ち凹部と冷却チャンネルを形成する凹部のカバーとを有する壁要素の構成部品を、製造メーカが利用できるノコギリ、フライス、溶接ユニット、及びドリルなどの標準的な工具を使用して、経済的に入手可能な連続材料から製造することができると共に、壁要素の構成部品を組み合わせ、それにより、その後に電極支持アームを現場で組み立てることができる。
【0015】
この場合、特定の用途に適合できるために、異なる幅及び長さの壁要素を、従って異なる冷却チャンネル断面を有する壁要素も、利用可能な工具を使用して簡単に製造できることが特に有利であることが分かった。
【0016】
また、本発明に係る壁要素から電極支持アームを製造すると、該電極支持アームの望ましい重量減少がもたらされる。
【0017】
図中の1つの典型的な実施形態に関連して、本発明を更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】アーク炉溶融ユニットの概略図を示している。
【図1b】アーク炉溶融ユニットの概略図を示している。
【図2a】電極支持アームの側壁のためにカットされた出発材料を1つの断面で示している。
【図2b】壁要素のベース体に凹部がフライス加工された図2aに対応する図を示している。
【図2c】本発明に係る完成した壁要素を示している。
【図3a】電極支持アームの下側及び上側壁要素のためにカットされた出発材料を1つの断面で示している。
【図3b】ベース体に凹部がフライス加工された図3aに対応する図を示している。
【図3c】完成した壁要素を示している。
【図4】本発明に係る壁要素から形成される電極支持アームの炉容器の近傍の断面を示している。
【図5】電極支持アームの炉容器の近傍における図4に対応する断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1a及び図1bに概略的に示される電気溶融ユニットにおいて、参照符号11は炉容器を示しており、この炉容器内で一般的に使用済み廃材が炉容器内へ下降する電極12,12’,12”の影響下で溶融される。
【0020】
電極12,12’,12”は電極支持アーム13,13’,13”の自由端にクランプ(131)されており、漸進的な燃焼に対応する溶融プロセス中に下降し、燃焼が進行した後交換される。
【0021】
溶融プロセスが終了した後、一般に、炉容器11を傾けて炉容器11を空にするため、また電極の交換のため、電極12,12’,12”は下降、上昇し、炉容器11の直ぐ近傍から旋回できるようにしなければならない。
【0022】
このため、電極支持アーム13,13’,13”は、二重矢印Aで示されるように昇降でき、且つ二重矢印Bで示されるように水平に旋回できるように支持アーム支柱14に支持される。
【0023】
電極支持アーム及び電極支持アーム13,13’,13”の自由端に位置される電極12,12’,12”のためのテンションブラケット131は、溶融プロセス中に炉容器11の周囲で発生する高温に起因して、一般に支持アーム及びテンションブラケットを通じて導かれる冷却水を使用する集中的な冷却を必要とする。
【0024】
連続材料からカットされる電極支持アームのための本発明に係る壁要素の構成部品が図2a及び図3aに示されている。
【0025】
これらの構成部品は、幅広い側壁を形成するベース体22と、電極支持アームの下側壁及び上側壁を形成する幅の狭いベース体32と、壁要素を完成させる薄厚カバー23,23’,33とを備えている。
【0026】
図2b,3bは、フライス加工された凹部24,34を有する壁要素21,31のそれぞれのベース体22,32を示している。
【0027】
図2c,3cは、それぞれの完成した壁要素21,31を、その内部に設けられた冷却水チャンネル27,27’,37と共に示している。
【0028】
ギザギザ状(25)の溶接線26による壁要素21のベース体22とカバー23との組み合わせが図2cに示されている。
【0029】
図3cに示される壁要素31の構成部品は、対応する態様(36)で組み合わされる。
【0030】
カバー23,23’,33は、チャンネル27,27’,37を通じて流れる水のための入口、出口、及び移送ラインを接続するために必要とされるそれぞれのボアホール28,38を有している。
【0031】
図4に示される炉周辺における本発明に係る壁要素から形成される電極支持アーム41の断面では、電極支持アームの側壁を形成する壁要素が参照符号42,42’によって示され、また、電極支持アームの下面及び上面を形成する壁要素が参照符号43,43’によって示されている。
【0032】
支持アーム及び電極テンションブラケットに衝突する冷却水は、側壁42,42’に設けられた冷却チャンネル44...,44”’を通過する。
【0033】
電極テンションブラケット(図示しない)に対する冷却水の給排は矢印列C−C’によって示されている。
【0034】
特定のケースでは、一方において側壁42,42’が、他方において電極支持アームの下面及び上面を形成する壁要素43,43’が個別に冷却水と衝突する。
【0035】
しかしながら、側壁の冷却チャンネルに対応する分岐部を設け、一緒にまとめて冷却水と衝突させることができる。
【0036】
参照符号46,46’は、側壁42,42’の冷却チャンネル44’,44”に位置される電極テンションブラケットの冷却水回路のための炉側接続部を示している。
【0037】
側壁の長さに亘って延び且つ複数のセクションに分割される冷却チャンネル44...,44”’の1つと幾つかの他のセクションのうちの1つとの接続部が、参照符号47,47’によって示される。参照符号49は電極支持アーム41の、アーム検査用の領域である。
【0038】
図5は、重量軽減のための切り取り部48’が設けられた仕切り48の挿入による電極支持アームの補強法を示している。
【0039】
電極支持アームの壁厚の設定は、特定の用途、及び冷却チャンネル断面の形状によって決まる。
【0040】
支持アーム壁に設けられる冷却チャンネルによる電極支持アームの選択的冷却は、この仕切られた領域内へ冷却水を供給して炉に隣接する電極支持アームの領域を冷却することを排除しない。
【0041】
また、冷却水回路は、電極支持アームの側壁を貫通して延び且つ冷却水を導くチャンネルのための1つの入口及び1つの出口によって確保される。
【符号の説明】
【0042】
11 炉容器
12,12’,12” 電極
13,13’,13” 電極支持アーム
131 テンションブラケット
14 支持アーム支柱
21 壁要素
22 ベース体
23 薄厚カバー
24 凹部
25 ギザギザ状
26 溶接線
27,27’ 冷却水チャンネル
28 ボアホール
31 壁要素
32 ベース体
33 薄厚カバー
34 凹部
36 溶接線
37 冷却水チャンネル
38 ボアホール
41 電極支持アーム
42,42’ 壁要素
43,43’ 壁要素
44...,44”’ 冷却チャンネル
46,46’ 炉側接続部
47,47’ 接続部
48 仕切り
48’ 切り取り部
49 アーム検査用領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷式の電流を通電する電極支持アームのための壁要素であって、導電金属から形成される平坦な外形を備え、電極支持アームの外面を形成する平坦な面に少なくとも1つの凹部が設けられ、前記凹部は前記外形の長さに亘って延びると共に、外側の端面側にカバーを備え、前記カバーは溶接によって前記平坦な外形と組み合わされて、閉じられた冷却チャンネルを形成し、前記冷却チャンネルを通じて流れる冷却水のための少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有することを特徴とする壁要素。
【請求項2】
前記壁要素はアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されることを特徴とする請求項1に記載の壁要素。
【請求項3】
前記カバーは前記電極支持アームの平坦な外壁をもたらすと共に、前記凹部の境界領域に形成される窪みに挿入されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の壁要素。
【請求項4】
前記電極支持アームを形成する前記壁要素の幅は前記電極支持アームの断面に適合されることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の壁要素。
【請求項5】
前記壁要素の材料厚さが20〜70mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4記載の壁要素。
【請求項6】
複数の冷却チャンネルが前記壁要素の長さに亘って互いに離間して延びていることを特徴とする請求項1乃至5記載の壁要素。
【請求項7】
支持アームに装着される電極テンションブラケットと冷却水との衝突のための接続部は前記電極支持アームの前記自由端を形成する壁要素の領域の部位に設けられることを特徴とする請求項1乃至6記載の壁要素。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つ以上に記載の壁要素から形成される水冷式の電流を通電するボックス形状の電極支持アームであって、前記電極支持アームの内側に互いに離間して挿入され且つ前記壁要素に支持される安定化ウェブによって特徴付けられる電極支持アーム。
【請求項9】
前記電極支持アームの内側で特に垂直壁要素上に互いに離間して支持される安定化仕切りによって特徴付けられる請求項8記載の電極支持アーム。
【請求項10】
前記仕切りにはフレームを形成する切り取り部が設けられることを特徴とする請求項9記載の電極支持アーム。
【請求項11】
前記電極支持アームを形成する隣接する前記壁要素が隣接部位でギザギザ状の溶接線によって互いに結合されることを特徴とする請求項8乃至10記載の電極支持アーム。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−540260(P2009−540260A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514698(P2009−514698)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005198
【国際公開番号】WO2007/144154
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(506352005)
【Fターム(参考)】