説明

水冷高温バルブ及びそれを使用した燃焼試験装置

【課題】 冷却性に優れ且つ構造が簡単な高温ガスの流量や圧力調整に使用できる水冷高温バルブと、噴霧冷却装置を不要とする燃焼試験装置を得る。
【解決手段】 ガス流入路14−aとガス流出路14−bを有する水冷のバルブハウジング12と、プラグ冷却水流路を備えた円筒状のプラグ11からなり、該プラグは、前記バルブハウジングのプラグ挿入孔内に回転可能に、且つプラグと前記バルブハウジング間が気密状態で保持され、前記プラグの貫通孔11−bが前記ガス流入路及びガス流出路と連通することによりガス流路を形成し、プラグ11の回転により前記ガス流路の実効開口面積が増減し、流れるガス流量を制御する。該水冷高温バルブを調圧バルブとして使用することにより、噴霧冷却装置が不要な燃焼試験装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガスの流量や圧力の調節及び制御に使用する水冷高温バルブに関するもので、特にガスタービンやジェットエンジンの燃焼器の開発試験に用いる燃焼試験装置において燃焼器で発生した高温燃焼ガスの流量や圧力の調節を行う水冷高温プラグバルブとそれを使用した燃焼試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンやジェットエンジンの燃焼器の開発には、実機における温度、圧力、流速等の運転条件を模擬する燃焼試験装置が使用される(特許文献1参照)。図7は現在使用されている燃焼試験装置60について、試験部より下流の部分を模式的に示したものである。図示のように、上流から燃焼器61を装着する試験部62、温度センサーや排気ガス採取のプローブが取り付けられる計測ダクト63、燃焼器からの高温ガスを水噴霧により冷却する水噴霧冷却器64、燃焼ガスの流量を調節することにより試験部62の圧力を設定する調圧バルブ65、及び燃焼ガスを排煙処理装置あるいは煙突に導く排気ダクト66の順に接続されている。空気は高圧空気製造装置で製造され、流量調整バルブで流量が調節され、加熱器で所定温度に予熱されて試験部62に供給される。この流量調整バルブには、余剰空気は大気に放出する三方弁が使用されることが多い。試験部62の空気の圧力、流量は、流量調整バルブと試験部62の下流に配置された調圧バルブ65の開度の調節によって設定される。
【0003】
燃焼器からのガス温度は低い場合でも1,000℃で、最新鋭のジェットエンジンの燃焼器では1,700℃にも達する。圧力は小型産業用ガスタービンでは0.4MPa程度のものもあるが、航空用高圧力比エンジンでは4MPaを超える。
【0004】
調圧バルブには、高温仕様のものが使用されるが、使用温度の限界は400℃程度であるので、燃焼器からの高温燃焼ガスは、調圧バルブの上流に配置した水噴霧冷却器において調圧バルブの許容温度以下にまで冷される。この水噴霧冷却器方式は、噴霧水の蒸発のために大きな容積の水噴霧冷却器が必要なこと、試験部と同じ耐圧が要求されるため容器壁は厚く、したがって重く、製作費、据付工事費などが嵩むという問題がある。特に高圧ガス取締法の対象となる試験圧力で使用する装置の場合、耐圧容器証明が必要なために製作費が一層高くなる。
【0005】
上記の設置費用上の問題のほか、下記のように試験部の圧力制御に関し不都合な問題がある。水噴霧冷却器の限られた空間の中で水噴霧によって大量の高温燃焼ガスを調圧バルブの許容温度にまで下げるためには、蒸発量以上の水量の水を噴霧しなければならない。余剰の水はドレインから内部の空気圧によって排出されるようになっているが、余剰水量が過大になると水噴霧冷却器内の水位が上昇し、水が調圧バルブ内に流入すると調圧バルブの開度が実質的に減ることになり、試験部圧は設定値を超えて上昇する。そうすると装置の圧力制御機構は試験部圧を設定値に戻すように調圧バルブの開度を増加させるように動き、調圧バルブの閉塞が解消されると試験部圧は下がり始めるので、今度は調圧バルブの開度を減らすように動く。この制御はほとんどの場合、試験部圧の過剰な変動を引き起こし、最悪の場合には装置の破損につながる。制御機構がない場合でも、水による調圧バルブ流路の閉塞、その解消の繰り返しは、水噴霧冷却器及び試験部に好ましくない圧力変動を引き起こす。この現象は、未蒸発水の余剰分を排出するドレインを設けた場合にも起きることがあり、排出水量の脈動は試験部の圧力変動を誘起する。
【0006】
上記の水噴霧冷却器を備えた燃焼試験装置60に従来から使用されている代表的な調圧バルブ65の構造について図7の縦断面を用いて説明する。調圧バルブ65において、バルブハウジング71にはガス流入路73とガス流出路74が配設され、ガス流入路はバルブハウジング内で上方・下方に分岐し、上方ガス流路73−aと下方ガス流路73−bはそれぞれ別のオリフィス75−a、75−bによってガス流出路74と連通している。上記のオリフィス75−a、75−bに対応するプラグ72−aと72−bは同一の駆動軸76に配設されており、図示していない空気圧あるいは電動の駆動装置によりこの駆動軸76を上下に移動させることにより、オリフィスの実効開口面積を変化させてガスの流量を増減させるようになっている。上方ガス流路73−aからのガスは上方のオリフィス75−aを下方に流出し、下方ガス流路73−bからのガスは下方のオリフィス75−bを上方に流出し、プラグの軸に作用する流体の圧力をできるだけバランスさせるようにしている。しかし、この場合にも駆動軸断面に作用する圧力による力は打ち消されておらず、全体としてはプラグの配設された軸がバルブケーシングから抜け出るような力が発生している。この力に対抗して駆動軸を抑える構造が不可欠で、それもバルブの重量増加やバルブ開閉に必要なトルクの増大になっている。
【0007】
噴霧冷却器を無くすか、あるいは噴霧水量を極限まで減らして未蒸発量を実質的に無くすためには、1700℃、4MPaの高温高圧ガスに曝されても耐えられる高温バルブが必要になる。部分的に耐熱セラミックスを使用して耐熱温度を上げることは可能であるが、脆性材料であるので衝撃的な力や熱が加わる高温高圧バルブの主要部材には使用できない。確実な方法として水冷却が挙げられるが、従来のバルブでは、図7に示した断面図からも明らかなように、流路形状が複雑であるので、ハウジングやオリフィスなどに水冷する流路やジャケットを設けることは極めて困難である。
【特許文献1】特開2002−257334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、ガスタービンやジェットエンジンの燃焼器試験に使用される燃焼試験装置において高温燃焼ガスの流量を調節し、試験部の圧力を設定する調圧バルブとして使用される高温流体の流量制御用の高温バルブにおける上記問題点、及びそれに伴なう従来の燃焼試験装置の上記問題点を解消しようとするものであり、バルブ自体のハウジングやプラグ内部に冷却水の流路を形成して水冷が可能なように構造を単純化でき、しかも重量が軽減でき、製作コストの低減化を図ることができ、且つプラグ軸に作用する圧力を軸方向にバランスさせることができ、高温ガスの流量や圧力調整に直接使用できる水冷高温バルブを提供し、且つ該水冷高温バルブを使用して噴霧冷却装置が不要もしくは水噴霧量を少なくすることができ、従来と比べて飛躍的に装置コストを軽減できる燃焼試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため本発明の水冷高温バルブは、ガス流入路とそれにほぼ対向するガス流出路とが配設された水冷のバルブハウジングと、その内部に配設された水冷の円筒状のプラグからなり、該プラグはその内部にプラグ冷却水の流れる流路を備え、前記バルブハウジングを貫通するプラグ挿入孔内に回転可能に保持され、前記プラグと前記バルブハウジングとの間は前記プラグ挿入孔の両端に近い位置に配設したシール部材により気密に保持され、前記プラグの中心軸にほぼ交差する方向に配設した貫通孔あるいは切欠きが前記ガス流入路とガス流出路とを連通することによりガス流路を形成し、前記プラグの回転により前記ガス流路の実効開口面積が増減し、流れるガス流量、圧力を制御するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
上記のようにバルブハウジングに円筒状のプラグを回転可能に配置するのみであるので、バルブハウジングとプラグはともに非常に単純な形状にできる。そのため、強度上の問題なしに内部に冷却水流路を容易に配設することができるようになり、燃焼ガスのような高温ガスであっても従来のように大量の水噴霧により予冷却することなく流量調整が可能なバルブを実現することができた。また、プラグが円筒形でバルブハウジングの貫通孔に挿入され、その両端に近い位置においてシール部材により高圧ガスの外部への漏れが止められており、軸の両端はバルブハウジングの外部の雰囲気の圧が作用するようにしていることから、このプラグに作用するガスの圧力による軸方向の力は完全に均衡しており、高圧の場合においても特別なプラグ抜け止めの機構が不要であるという利点がある。
【0011】
また、本発明による水冷高温バルブにおいては、プラグの円筒側壁にプラグ冷却水がガス流出路内に流出する冷却水流出孔を配設した。プラグ冷却水はバルブハウジング内のガス流出路内に噴出するので、ガス流出流路壁面を冷却することができるという利点がある。この冷却水は高速の気流によって非常に細かく微粒化されるので蒸発が促進され、高温ガス温度の抑制に大きな効果がある。
【0012】
さらに、本発明による水冷高温バルブにおいては、プラグの貫通孔あるいは切欠き部の壁にプラグ冷却水がガス流路内に流出する冷却水流出孔を配設した。そのため、冷却水が高温ガスが高速で流れる貫通孔あるいは切欠き部の壁及びガス流出路壁面に水の膜、あるいは水の蒸発により生じた蒸気の膜が形成され、プラグへの熱伝達を著しく抑制できるという効果がある。この形態では、プラグ冷却水をプラグの両端部から供給することができ、プラグの形状だけでなく、冷却の点からも対象性を保つことができるという利点がある。
【0013】
また、本発明による水冷高温バルブにおいては、バルブハウジングにはガス流入路あるいはガス流出路の少なくとも一方の壁面にバルブハウジング冷却水が流出する冷却水流出孔を配設した。そのため、上流側に噴射した冷却水は高温空気の流れによって微粒化され、高温ガスと混合してガス流路開口を流れるようになり、一部は蒸発し、ガス温度を下げる効果がある。未蒸発水滴は一部壁面に膜を形成し、バルブハウジングやバルブの高温ガス接触部への熱伝達を抑制するのに有効に作用する。
【0014】
本発明による水冷高温バルブにおいては、バルブハウジングには、前記プラグ挿入孔の壁面に前記バルブハウジング冷却水がプラグ挿入孔とプラグとの間の隙間に流出する冷却水流出孔を配設した。バルブハウジング冷却水は、プラグの側面及びハウジングのプラグ挿入孔の内周面からの熱流入を抑制するとともに、潤滑作用によりプラグの回転を滑らかにする効果がある。また、バルブハウジング冷却水排出孔の配置や噴出圧を適切にすれば、プラグを上流に押し戻す力として作用し、プラグの高温ガス圧による曲げ変形を抑止し、プラグの回転を長期間にわたり容易にすることができる。
【0015】
本発明による水冷高温バルブにおいては、ガス流路は、プラグ内にその軸に交差するようにあけられた貫通孔に挿入された先細ダクトで形成され、先細ダクトの側壁面の外周にはプラグ冷却水が前記先細ダクトの側壁面に沿って流れる流路が形成され、プラグ冷却水は前記先細ダクトの下流端部とプラグの貫通孔との隙間からガス流出路内に噴出するようにした。先細ダクト壁を背面からプラグ冷却水により効率的に冷却することができるようになった。この先細ノズルは容易にプラグの貫通孔に挿入、脱着できるようにしておけば、ガス流路壁が損傷してもプラグ本体を交換することなく先細ノズルだけを交換するだけですみ、維持経費が大幅に削減できるという利点がある。また、前記先細ダクトの変形例として、前記先細ノズルを多孔質体で形成して、前記プラグ冷却水が前記先細ノズルの内周面に滲出するようにしてもよい。先細ノズルは多孔質体で構成すれば、内周面が滲出した冷却水によって保護され、気化熱によって冷却されるという効果がある。
【0016】
そして、上記問題点を解決する本発明の燃焼試験装置は、前記構成の水冷高温バルブを調圧バルブとして用いたことを特徴とするものである。本発明の燃焼試験装置は、上記構成により従来は不可欠であった調圧バルブ上流に設けられる噴霧冷却装置が不要になる、あるいは水噴霧をするにしても蒸発に見合った量だけですませることができる。燃焼ガスは、計測ダクトから水冷の先細ダクトにより直接調圧バルブに導くことができ、従来と比べて装置を大幅に単純化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バルブハウジングの貫通するプラグ挿入孔内に円筒状プラグを回転可能に保持するので、プラグの構造、バルブハウジング内のガス流入路及びガス流出路の構造が従来のバルブに比べ非常に簡単であり、それらの内部に冷却水の通路を形成することが容易である。したがって、冷却性に優れ、高温ガスの流量や圧力の調節に直に使用できる水冷高温バルブが得られる。また、ガスタービン燃焼器試験装置における調圧バルブのように、バルブの上流が高圧で下流が大気圧というように差圧が非常に大きく、バルブハウジングやプラグに大きな力が作用する場合には特に強度の大きいことが不可欠であるため、従来のバルブハウジングは内部のガス通路の形状が複雑であるため鋳造で製作されることが多いが、本発明によるバルブは、本発明は上述のように円筒形のプラグと円筒形のプラグ孔を配設したバルブハウジングが主用構造部材である単純構造であるので、それらは鍛造部材から切削等の機械加工によって製作することができる。そのため、鋳造による従来のバルブに比べ、冷却水流路を内部に配設しても格段に強度が大きい。したがって、バルブハウジングの肉厚は薄く、ガス流量あたりの大きさ、重量が必然的に小さくでき、製作コストが削減できる。特に、高圧で使用するバルブでは、この効果は非常に大きい。
【0018】
本発明によれば、プラグの両端をバルブハウジングの貫通孔を通して外部に露出させることができるので、両端のシール部の直径を同一にしておけば、プラグに作用するガスの圧力は軸方向に完全に釣り合わせることができる。したがってバルブの開閉操作に要するトルクは、プラグの回転に要する力だけですみ、基本的にはシール部におけるシールとプラグとの摩擦力とガス通路の壁面に作用する圧力に起因する力である。したがって、駆動装置の容量が小さくてすむという効果がある。
【0019】
本発明による水冷高温バルブを調圧バルブとして用いた燃焼試験装置においては、従来は不可欠であった調圧バルブ上流の噴霧冷却装置が不要になる、あるいは水噴霧をするにしても極めて少量の蒸発に見合った量だけですむということになり、装置コストが大幅に削減できると共に、前述のように水噴霧装置を用いた場合の調圧上の問題点を解決できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の実施形態を図面を基に詳細に説明する。図1は、本発明による水冷高温バルブの第1実施例を示す図である。図1(a)はプラグの軸を含む水平面での断面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はそのB−B断面図である。この水冷高温バルブの特徴は、冷却水がガス流路に流出しないことである。
【0021】
図1に示す水冷高温バルブ10において、バルブハウジング12には、フランジ面13に平行に貫通してプラグ挿入孔16が配設されており、この孔に円筒状のプラグ11が回転可能に挿入されている。バルブハウジング12にはガス流入路14−a、ガス流出路14−bが設けられており、プラグ11の軸方向中心位置にはガス流路14を形成する開口15が配設されている。冷却水17は、プラグの右端部の冷却水供給口11−cから流入し、プラグ内冷却水流路11−aを通って軸方向に左方向に流れ、ガス流路14の壁24を迂回し、左端の冷却水排出口11−dから流出する。バルブハウジング12内には水冷ジャケット18が上下に配設され、下方の冷却水供給口18−aから入り、プラグ挿入孔16の壁の周囲を回って上方の水冷ジャケットに入り、上端の冷却水排出口18−bから流出する。ガス流路14の断面形状はどの様な形でもよいが円形あるいは長方形が製造しやすい。長方形の場合にはプラグの回転角と開口面積とが比例するので流量制御がより容易である。
【0022】
プラグ11はその両端部において段状に直径が小さくなっており、この部分の側面とプラグ挿入孔16の内周面との間の環状部分にリング状のシール21が挿入され、そのシールはシール押さえ22によりガスが漏れない程度に圧縮されている。この実施例を含め本発明によるバルブにおいては、プラグに作用するガスの圧力は軸方向には完全に釣り合うという利点がある。従来のバルブでは、プラグに作用するガス圧力ができるだけ均衡するように流路形状に工夫がされるが、完全には釣り合わせることができないために、高圧での使用においてはプラグ駆動軸をバルブハウジング内の所定位置に保持する構造が不可欠である。そのため、バルブの開閉には大きな力が必要になる。
【0023】
ガスはバルブの流路内の最も面積の小さなところで音速となり、その下流で面積が増加する範囲では超音速となる。この面積が増大する部分ではガスの密度が下がり、温度が下がるので流路壁への熱伝達は小さくなる。音速になる喉部で最も熱伝達が高くなる。この付近の流路壁を最も効率よく冷却できるように冷却水流路を配置するのが好ましい。本実施例の水冷高温バルブ10は以上のように構成され、プラグを図示しないバルブ駆動装置で回転させることによって、ガス流路の実効開口面積が増減し、流れるガス流量を制御することができる。プラグには内部の冷却水流路11−aに冷却水が流れ、該冷却水流路に直角に配置されたガス流路14の壁面に当り、それに沿って流れ、最も熱伝達が高くなるガス流路壁24を効率良く冷却することができる。一方、バルブハウジングはその水冷ジャッケト18に供給される冷却水によって内部より効率的に冷却される。
【0024】
図2は、本発明による水冷高温バルブの第2実施例を示す図である。(a)はプラグの軸を含む水平面での断面図で(b)におけるA−A断面図であり、(b)はプラグの中心軸を含む鉛直面での断面図で(c)におけるC−C断面図であり、(c)は円筒状のガス流路の中心軸を含む鉛直面での断面図で(b)におけるB−B断面図である。この水冷高温バルブ20は、図1に示した水冷高温バルブと異なり、冷却水がガス流路内に流出することであり、特にガス流路開口に流出し、壁面を冷却するのでより高温ガスのバルブとして利用できる。
【0025】
図2に示す水冷高温バルブ20においては、図1に示す第1実施例と同等の機能を奏する構成要素及び部位には、同じ符号を付している。バルブハウジング12には、フランジ面13に平行に貫通してプラグ挿入孔16が配設されており、この孔に円筒状のプラグ11が回転可能に挿入されている。バルブハウジング12にはガス流入路14−a、ガス流出路14−bが設けられており、プラグ11の軸方向中心位置にはガスが流れる開口15が配設されている。冷却水17はプラグの両端部の冷却水供給口11−cから流入し、プラグ内流路19を通って軸の中心方向に流れ、ガス流路壁24にあけた孔25を通ってガス流路14内に流出する。この冷却水はガス流路14の壁面に沿って流れるようにし、ガス流路の壁面が高温ガスに直接曝されるのを防止するのがよいことは明らかである。この冷却水は最終的には高速のガスによって微粒化され、その蒸発によりガスが冷却される。バルブハウジング12内にはバルブハウジング12の冷却のための冷却水通路26が配設されている。その末端はバルブハウジング下流側フランジ面13に開口27している。
【0026】
図3は、本発明による高温バルブの第3実施例を示す図であり、(a)はプラグの中心軸を含む水平面での断面図、(b)はプラグ軸を含む鉛直面での断面図で(a)におけるA−A断面図、(c)はプラグ軸に垂直な面での断面図で(b)におけるB−B断面図である。図1あるいは図2に示した第1、第2の実施例ではプラグに配設された開口がガス流路となっていたが、この第3実施例の水冷高温バルブ30では、円筒状プラグ11に形成された切欠き11−bとバルブハウジングのプラグ挿入孔16の内周壁とでガス流路を形成するようになっている。プラグ冷却水は切欠き部11−bの背後に配設したバイパス流路31を通って右から左に流れる。また、この水冷高温バルブ30においては、プラグの円筒側壁32にプラグ冷却水が該円筒側壁32とバルブハウジングのプラグ挿入孔内周面との隙間に流出する複数の冷却水流出孔33を配設した。それにより、冷却水流出孔33から流出したプラグ冷却水はプラグ挿入孔内周面との隙間を通ってバルブハウジング内のガス流出路14−b内に噴出するので、ガス流出流路壁面を冷却することができるという利点がある。また、プラグ冷却水は条件によっては、ガス通路に流入することもあり、この場合はガス流路壁面も冷却できる。はこの冷却水は高速の気流によって非常に細かく微粒化されるので蒸発が促進され、高温ガス温度の抑制に大きな効果がある。また、プラグ挿入孔内周面との隙間に流出した冷却液は、プラグの潤滑作用をし、プラグの回転を滑らかにする効果がある。その他の構成は図1に示す第1実施例と同じである。
【0027】
なお、図3に示す実施例では、プラグ冷却水がプラグの円筒側壁とバルブハウジングのプラグ挿入孔の内周面との隙間にプラグ冷却水が流出するようにしたが、図4に示すように、逆にバルブハウジングの前記プラグ挿入孔16の壁面にバルブハウジング冷却水がプラグ挿入孔とプラグとの間の隙間に流出する冷却水流出孔34を配設するようにしてもよい。その場合、バルブハウジング冷却水は、プラグ11の側面及びバルブハウジング12のプラグ挿入孔16の内周面からの熱流入を抑制するとともに、潤滑作用によりプラグの回転を滑らかにする効果がある。また、バルブハウジング冷却水流出孔の配置や噴出圧を適切にすれば、プラグを上流に押し戻す力として作用し、プラグの高温ガス圧による曲げ変形を抑止し、プラグの回転を長期間にわたり容易にすることができる。
【0028】
図5は、本発明による高温バルブの第4実施例におけるガス流路の近傍の形態を示す図であり、(a)はプラグの中心軸を含む水平面での断面図、(b)はプラグ軸に垂直な面で(a)におけるA−A断面図、(c)はプラグ軸を含む鉛直面での断面図で(b)におけるB−B断面図である。
【0029】
本実施例による水冷高温バルブ40においては、ガス流路14は、プラグ11内にその軸に交差するように明けられた貫通孔に挿入された先細ノズル23で形成されている。そして、先細ノズル23の側壁の内部には、プラグ冷却水が該先細ノズルの側壁面に沿って流れる環状の冷却水流路41が形成され、且つ該環状の冷却水流路41とプラグ内冷却水流路19を連通する複数の流入孔42が形成されている。その他の構成は、図1に示す実施例と同様な構成とすることができる。
【0030】
第4実施例の水冷高温バルブ40は、以上のように構成され、プラグ冷却水は前記先細ノズル23の下流端部とプラグの貫通孔との隙間からガス流出路14−b内に噴出する。これにより、先細ノズル壁を背面からプラグ冷却水により効率的に冷却することができるようになった。この先細ノズルは容易にプラグの貫通孔に挿入、脱着できるようにしておけば、ガス流路壁が損傷してもプラグ本体を交換することなく先細ノズル23だけを交換するだけですみ、維持経費が大幅に削減できるという利点がある。
【0031】
以上、本発明に係る水冷高温バルブの種々の形態の実施例について説明したが、本発明の水冷高温バルブは上記実施例に限定されるものでなく、その技術的思想の範囲内で種々の設計変更が可能である。例えば、プラグ冷却水又はバルブハウジング冷却水をガス流出路に排出する冷却水排出孔、又はプラグ挿入孔の壁面とプラグとの隙間に流出する冷却水孔は、例えば図2〜図5に示すようにそれぞれ一つの形式のものを採用してもよく、これらを組み合わせて採用しても良い。
【0032】
図6は、本発明による図1に示す水冷高温バルブを調圧バルブ51として用いた本発明の実施形態に係る燃焼試験装置50を示す。図7に示す従来の燃焼試験装置と同等の機能を奏する構成要素及び部位には、同じ符号を付し、相違している部分のみ説明する。
本実施形態では、調圧バルブ51として本発明の水冷高温バルブ10を使用することにより、燃焼器61からの高温ガスを水噴霧により冷却する必要がなく、水冷高温ガスを高温バルブ10に導く先細ダクト52の外周を水冷するのみで、高温ガスを調圧バルブ51に供給することが可能となった。なお、53は先細ダクト52の外周に設けられた冷却ジャケット内に突出するように設けられたフィンであり、冷却ジャケット内に冷却水等の冷却流体を流すことによって、先細ダクトが冷却される。
【0033】
以上のように、本実施形態の燃焼試験装置50では、従来必要としていた水噴霧冷却器を省くことができ、計測ダクト63と調圧バルブ51との間を先細ダクト52で接続した単純な構造となっている。したがって、大きな容積の水噴霧冷却器が不要となり、装置を小型化でき、装置コストを大幅に削減することができる。水噴霧による余剰の水が調圧バルブの閉塞を起すようなおそれがなく、正確に試験部の空気の圧力、流量を制御することができ、正確な燃焼試験を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の水冷バルブは、単純な構造により水冷構造となっていて高温高圧ガスの流量を安定して正確に制御することができ、ガスタービンやジェットエンジンの燃焼器の燃焼試験装置の調圧バルブとして好適に利用できるばかりでなく、高温流体を取り扱う各種装置における流量制御弁として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による水冷高温バルブの第1実施例を示す図であり、(a)はプラグの軸を含む水平面での断面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はそのB−B断面図である。
【図2】本発明による水冷高温バルブの第2実施例を示す図であり、(a)はプラグの軸を含む水平面での断面図で(b)のA−A断面図であり、(b)はプラグの中心軸を含む鉛直面での断面図で(c)のC−C断面図であり、(c)は円筒状のガス流路の中心軸を含む鉛直面での断面図で(b)のB−B断面図である。
【図3】本発明による高温バルブの第3実施例を示す図であり、(a)はプラグの中心軸を含む水平面での断面図、(b)はプラグ軸を含む鉛直面での断面図で(a)におけるA−A断面図、(c)はプラグ軸に垂直な面での断面図で(b)におけるB−B断面図である。
【図4】本発明による高温バルブの第3実施例の変形例を示す図であり、(a)はプラグの中心軸を含む水平面での断面図、(b)はプラグ軸を含む鉛直面での断面図で(a)におけるA−A断面図、(c)はプラグ軸に垂直な面での断面図で(b)におけるB−B断面図である。
【図5】本発明による高温バルブの第4実施例におけるガス流路の近傍の形態を示す図であり、(a)はプラグの中心軸を含む水平面での断面図、(b)はプラグ軸に垂直な面で(a)におけるA−A断面図、(c)はプラグ軸を含む鉛直面での断面図で(b)におけるB−B断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る水冷高温バルブを調圧バルブとして用いた燃焼試験装置を示す断面模式図である。
【図7】従来の調圧バルブを使用した燃焼試験装置の1例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0036】
10、20、30、40 水冷高温バルブ 11 プラグ
11−a プラグ内冷却水流路 11−b 切欠き、貫通孔
11―c 冷却水供給口 11−d 冷却水排出口
12 バルブハウジング 13 フランジ面
14 ガス流路 14−a ガス流入路
14−b ガス流出路 15 開口
16 プラグ挿入孔 17 冷却水
18 水冷ジャケット 18−a 冷却水供給口
18−b 冷却水排出口 19 プラグ内冷却水流路
21 シール 22 シール押え
23 先細ノズル 24 ガス流路壁
25 孔 26、41 冷却水流路
27 開口 31 バイパス流路
32 円筒側壁 33、34 冷却水流出孔
42 流入孔 51 調圧バルブ
52 先細ダクト 53 フィン
60 燃焼試験装置 61 燃焼器
62 試験部 63 計測ダクト
64 水噴霧冷却器 65 調圧バルブ
66 排気ダクト 71 バルブハウジング
72−a,72−b プラグ 73 ガス流入路
73−a 上方ガス流路 73−b 下方ガス流路
74 ガス流出路 75−a、75−b オリフィス
76 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流入路とそれにほぼ対向するガス流出路とが配設された水冷のバルブハウジングと、その内部に配設された水冷の円筒状のプラグからなり、該プラグはその内部にプラグ冷却水の流れる流路を備え、前記バルブハウジングを貫通するプラグ挿入孔内に回転可能に保持され、前記プラグと前記バルブハウジングとの間は前記プラグ挿入孔の両端に近い位置に配設したシール部材により気密に保持され、前記プラグの中心軸にほぼ交差する方向に配設した貫通孔あるいは切欠きが前記ガス流入路とガス流出路とを連通することによりガス流路を形成し、前記プラグの回転により前記ガス流路の実効開口面積が増減し、流れるガス流量、圧力を調節するようにしたことを特徴とする水冷高温バルブ。
【請求項2】
前記プラグの円筒側壁に前記プラグ冷却水が流出する冷却水流出孔を配設したことを特徴とする請求項1に記載の水冷高温バルブ。
【請求項3】
前記プラグの前記貫通孔あるいは切欠き部の壁にプラグ冷却水が前記ガス流路内に流出する冷却水流出孔を配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の水冷高温バルブ。
【請求項4】
前記バルブハウジングには、前記ガス流入路あるいはガス流出路の少なくとも一方の壁面にバルブハウジング冷却水が流出する冷却水流出孔を配設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水冷高温バルブ。
【請求項5】
前記バルブハウジングには、前記プラグ挿入孔の壁面に前記バルブハウジング冷却水が前記プラグ挿入孔と前記プラグとの間の隙間に流出する冷却水流出孔を配設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水冷高温バルブ。
【請求項6】
前記ガス流路は、前記プラグ内にその軸に交差するように開けられた貫通孔に挿入された先細ノズルで形成され、前記先細ノズルの側壁面の外周には前記プラグ冷却水が前記先細ノズルの側壁面に沿って流れる流路が形成され、前記プラグ冷却水は前記先細ノズルの下流端部と前記プラグの貫通孔との隙間から前記ガス流出路内に噴出するようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水冷高温バルブ。
【請求項7】
前記ガス流路は、前記プラグ内にその軸に交差するように開けられた貫通孔に挿入された先細ノズルで形成され、前記先細ノズルは多孔質体で形成され、前記プラグ冷却水が前記先細ノズルの内周面に滲出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水冷高温バルブ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の水冷高温バルブを調圧弁として用いたことを特徴とする燃焼試験装置。
【請求項9】
上流側から順に燃焼器を装着する試験部、計測ダクト、高温ガスを調圧バルブに導く先細ダクト、前記水冷高温バルブからなる調圧弁及び排気ダクトが順接続してなることを特徴とする請求項8に記載の燃焼試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−105336(P2006−105336A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295452(P2004−295452)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】