説明

水処理装置

【課題】 濾過および脱気を効率よく行うことにある。
【解決手段】 給水ポンプ2a,2bと濾過膜部3a,3bと、膜式脱気部4a,4bとを直列に接続した水処理単位5a,5bを複数互いに並列に接続した水処理装置であって、給水ポンプ2a,2bを停止,低流量運転,高流量運転とすることで、各水処理単位5a,5bを停止,半負荷運転,全負荷運転とする制御器14を備え、制御器14は、複数の給水ポンプ2a,2bを低流量運転とする第一制御状態と、複数の給水ポンプ2a,2bの一方を高流量運転とし他方を停止する第二制御状態とを選択可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ等の熱機器へ供給する水を処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の水処理装置において、給水ポンプと、熱機器の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉する濾過膜を用いて濾過する濾過膜部と、給水中の溶存気体を透過する気体透過膜を用いて脱気する膜式脱気部とを直列に接続したもの(水処理単位という。)は、特許文献1などにて知られている。この水処理装置においては、濾過膜部は、通水量の減少や水温が上昇すると、濾過性能が低下する。一方、前記膜式脱気部は、通水量の増加や水温の下降により、脱気性能が低下するというように濾過膜部と相反する特性を有している。このため水温の変化に応じて通水量を制御することにより、濾過および脱気を効率よく行うように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−279459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、複数の前記水処理単位を互いに並列接続した水処理装置が使用されるようになってきたが、このタイプの水処理装置では、濾過および脱気を効率よく行うための制御が行われていなかった。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、給水ポンプと、熱機器の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉する濾過膜を用いて濾過する濾過膜部と、給水中の溶存気体を透過する気体透過膜を用いて脱気する膜式脱気部とを直列に接続した水処理単位を複数互いに並列に接続した水処理装置において、濾過および脱気を効率よく行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するために成されたものであって、請求項1記載の発明は、停止,低流量運転および高流量運転が選択可能な流量調整手段と、熱機器の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉する濾過膜を用いて濾過する濾過膜部と、給水中の溶存気体を透過する気体透過膜を用いて脱気する膜式脱気部とを直列に接続した水処理単位を複数互いに並列に接続した水処理装置であって、前記各水処理単位の流量調整手段を停止,低流量運転,高流量運転とすることで、前記各水処理単位を停止,半負荷運転,全負荷運転とする制御手段を備え、前記制御手段は、複数の前記水処理単位の流量調整手段を低流量運転とする第一制御状態と、複数の前記流量調整手段を低流量運転とする代わりに一方を高流量運転とし他方を停止する第二制御状態とを選択可能としたことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記流量調整手段が給水ポンプであることを特徴としている。
【0008】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、前記第一制御状態とすることにより、前記膜式脱気部による脱気性能を向上させる脱気性能優先制御を行い、前記第二制御状態とすることにより、前記濾過膜部による濾過性能を向上させる濾過性能優先制御を行うことができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記給水または前記処理水の温度を検出する水温ンサを備え、前記制御手段は、前記水温センサの検出水温が設定
値未満のとき、前記第一制御状態とし、前記水温センサの検出水温が設定値以上のとき、前記第二制御状態とすることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、水温が低いときは、前記第一制御状態として、前記各膜濾過部および前記各膜式脱気部の通水量を低くし、濾過性能をさほど低下させることなく、脱気性能を向上させ、水温が高いときは、前記第二制御状態として、前記濾過膜部の通水量を多くし、脱気性能をさほど低下させることなく濾過性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、前記水処理単位を複数互いに並列に接続した水処理装置において、必要に応じて脱気性能優先制御と濾過性能優先制御とを選択することにより、濾過および脱気を効率よく行うができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施の形態は、停止,低流量運転および高流量運転が選択可能な流量調整手段と、熱機器の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉する濾過膜を用いて濾過する濾過膜部と、給水中の溶存気体を透過する気体透過膜を用いて脱気する膜式脱気部とを直列に接続した水処理単位を複数互いに並列に接続した水処理装置であって、前記各水処理単位の流量調整手段を停止,低流量運転,高流量運転とすることで、前記各水処理単位を停止,半負荷運転,全負荷運転とする制御手段を備え、前記制御手段は、複数の前記水処理単位の流量調整手段を低流量運転とする第一制御状態と、複数の前記流量調整手段を低流量運転とする代わりに一方を高流量運転とし他方を停止する第二制御状態とを選択可能としたことを特徴とする。
【0013】
この実施の形態においては、水温が低いときなど、脱気性能を向上させる必要があるときには、前記制御手段は、前記第一制御状態とする。すると、複数の前記水処理単位の流量調整手段が低流量運転されて、脱気性能の高い運転が行われ、溶存酸素濃度の低い処理水を供給する。また、水温が高いときなど、濾過性能を向上させる必要があるときには、前記制御手段は、前記第二制御状態とする。すると、複数の前記水処理単位の低流量運転に代えて一方の前記水処理単位の流量調整手段が高流量運転され、他方の前記水処理単位の流量調整手段が停止されて、濾過性能の高い運転が行われ、腐食促進成分濃度の低い処理水を供給する。
【0014】
ここで、この実施の形態の構成要素について説明する。前記濾過膜部は、腐食促進成分を捕捉する濾過膜を用いて濾過する機能を有する。この濾過膜としては、好ましくは、給水中に含まれている塩化物イオンや硫酸イオンといった腐食促進成分を捕捉し、腐食抑制成分として認められるシリカを透過させるナノ濾過膜が用いられる。この濾過膜部は、被処理水流量が低下するか、水温が上昇するなどによって有効圧力が低下すると濾過性能が低下する特性を有している。
【0015】
前記ナノ濾過膜は、ポリアミド系、ポリエーテル系等の合成高分子膜である。また、ナノ濾過膜は、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度のもの)の透過を阻止できる液体分離膜である。また、ナノ濾過膜は、その濾過機能の点において、限外濾過膜(分子量が1,000〜300,000程度のものを濾別可能な膜)と、逆浸透膜(分子量が数十程度のものをろ別可能な膜)との中間に位置する機能を有する液体分離膜である。ちなみに、ナノ濾過膜は、市販されており、容易に入手することができる。
【0016】
前記流量調整手段は、好ましくは、インバータ制御などの回転数制御により、停止と低流量運転と高流量運転とが選択可能な給水ポンプとするが、給水ポンプと流量調整バルブ
とを直列接続するなどして組み合わせることにより、停止と低流量運転と高流量運転が選択可能に構成することができる。低流量運転は、好ましくは、高流量運転の50%とするが、これに限定されるものではなく、60%〜70%の間で設定することができる。
【0017】
前記膜式脱気部は、給水中の溶存気体を透過する気体透過膜を用いて脱気するものである。この膜式脱気部は、気体透過膜を、管状,中空糸状,プリーツ状,スパイラル形状(のり巻き形状)等の形状に成形し、この状態で適宜の容器に収容して1個の構成部品とした,いわゆる膜モジュールとして使用する。この脱気装置は、被処理水量が増加するか、水温が低下すると脱気性能が低下する特性を有している。
【0018】
前記膜モジュールの内部は、液相側と気相側とに区画されており、液相側には、脱気処理を行う被処理水(原水と称することもでき、井戸水,水道水,各種工業用水,その他液状製品等を含む)を供給する給水ポンプを備えた被処理水供給ラインと、脱気処理後の処理水を貯留する処理水タンクへ供給する処理水供給ラインとが接続されている。
【0019】
また、気相側には、この区画内を真空吸引するための減圧手段に真空吸引ラインが接続されている。そして、前記膜モジュール内における被処理水の流通過程において、気体透過膜を介して真空吸引することにより、被処理水中の溶存気体を吸引除去し、脱気された処理水を処理水供給ラインから処理水タンクへ供給するように構成されている。前記減圧手段は、好ましくは、水封式真空ポンプとする。
【0020】
前記水処理単位の数は、2に限定されるものではなく、3以上とすることができる。また、各流量調整手段を、停止,低流量,高流量の3段階制御とするだけでなく、4段階以上に制御するように構成することができる。
【0021】
前記制御手段は、予め記憶された水処理プログラムにより、前記処理水タンクの水位に応じて、前記各流量調整手段の流量を停止,低流量運転,高流量運転とすることで、前記各水処理単位を停止,半負荷運転,全負荷運転に選択的に制御するとともに、複数の前記水処理単位の流量調整手段を低流量運転とする第一制御状態と、複数の前記流量調整手段を低流量運転とする代わりに一方を高流量運転とし他方を停止する第二制御状態とを選択するように構成されている。前記第一制御状態と前記第二制御状態とは、好ましくは、水温に応じて選択されるが、これに限定されない。水温に応じて制御する場合は、水温が設定値未満のとき前記第一制御状態とされ、水温が設定値以上のとき前記第二制御状態とされる。
【実施例1】
【0022】
以下、この発明に係る水処理装置の実施例1を図1〜図4に基づき説明する。図1は、同実施例1の概略説明図であり、図2および3は、互いに異なる運転パターンを説明する図であり、図4は、同実施例1の水処理プログラムの説明図である。
【0023】
本実施例1の水処理装置は、外部の水源(図示省略)から供給される水道水、工業用水、地下水等の給水を、蒸気ボイラ、温水ボイラ、クーリングタワー、給湯器等の熱機器に供給する給水ライン1上に構築されている。
【0024】
前記給水ライン1から分岐した第一給水ライン1aには、流量調整手段としての第一給水ポンプ2aと熱機器の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉する濾過膜を用いて濾過する第一濾過膜部3aと前記第一膜式脱気部4aとが互いに直列に接続されて、第一水処理ユニット5aを形成している。また、前記給水ライン1から分岐した第二給水ライン1bには、流量調整手段としての第二給水ポンプ2bと第二濾過膜部3bと前記第二膜式脱気部4bとが互いに直列に接続されて、第二水処理ユニット5bを形成している。各水処理
ユニット5a,5bは、互いに並列に接続されて、処理水ライン6を介して処理水ランク7に接続されている。
【0025】
前記濾過膜部2の濾過膜としては、前記ナノ濾過膜が用いられる。また、前記各給水ポンプ2a,2bは、インバータ制御により、低流量運転と高流量運転と停止が選択可能に構成されている。前記各水処理ユニット5a,5bは、前記各給水ポンプ2a,2bの低流量運転と高流量運転に応じて半負荷運転,全負荷運転とされる。前記各ポンプ2a,2bの前記高流量は、水温が設定値以上のとき前記各濾過膜部3a,3bの濾過膜の有効圧力に要求される一定の水量を供給するようにインバータ制御される。また、前記各ポンプ2a,2bの前記低流量は、水温が設定値以下のとき、給水中の溶存気体の脱気後の溶存気体濃度が、予め定めておいた溶存気体残存許容値を超えない程度の脱気が行えるようにインバータ制御される。
【0026】
また、給水ライン1の任意の位置、本実施例1では前記各水処理単位4a,4bの上流側の給水ライン1に、給水の温度を測定する水温センサ8を備えている。
【0027】
また、本実施例1では前記各ポンプ2a,2bの上流側の給水ライン1上に、原水側から、給水中に溶存している次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を吸着除去する活性炭濾過部9と、給水中に含まれているカルシウム、マグネシウム等の硬度成分をイオン交換樹脂により除去する軟水処理部10と、ゴミ等による各濾過膜部2a,2bの濾過膜の目詰まりを防止するためのフィルター11が配置されている。また、前記各濾過膜部3a,3bには、濾過により生成した濃縮水を排水する第一,第二濃縮水排水ライン12a,12bが接続されている。
【0028】
前記各給水ポンプ2a,2bは、前記水温センサ8および前記処理水タンク7の水位を検出する水位センサ13の検出信号を入力する制御器14により、予め記憶した水処理プログラムに基づき制御される。前記水処理プログラムは、図4に示すように、前記水温センサ8の信号に応じて、水温が設定値未満のとき、前記各水処理単位5a,5bの給水ポンプ2a,2bを低流量運転とする第一制御状態を含む第一制御パターンと、水温が設定値以上のとき、前記各給水ポンプ2a,2bを低流量運転とする代わりに一方を高流量運転とし他方を停止する第二制御状態を含む第二制御パターンとを選択可能に構成している。前記第一制御パターンは、図2に、前記第二制御パターンは、図3にそれぞれ示す。
【0029】
上記のように構成された本実施例1の水処理装置の動作を説明する。図4を参照して、S1にて、前記水温センサ8の検出値が設定値未満かどうかを判定する。ここで、YESが判定されると、S2へ移行して、前記制御器14は、図2に示す第一制御パターンを実行する。すなわち、前記処理水タンク7の水位が第一設定水位L1以下のとき、前記第一水処理単位5aおよび前記第二水処理単位5bの各給水ポンプ2a,2bを高流量運転に制御し、両者を全負荷運転とする(トータル全負荷運転)。そして、前記水位が第一設定水位L1を超えると、前記第二水処理単位5bの給水ポンプ2bを低流量運転として、半負荷運転とする(トータル3/4負荷運転)。
【0030】
さらに、前記水位が第二設定水位L2を超えると、前記第一水処理単位5aおよび前記第二水処理単位5bの各給水ポンプ2a,2bを共に低流量運転に制御し、両者を半負荷運転とする(トータル半負荷運転)。このトータル半負荷運転は、前記第一制御状態であり、前記各膜式脱気部4a,4bに対しては、流量を半減させることで、脱気性能を向上させることができる。この第一制御状態の運転は、脱気性能優先運転である。そして、前記水位が第三設定水位Hを越えると、前記各給水ポンプ2a,2bを停止する(トータル停止運転)。
【0031】
S1にて、前記水温が高く、NOが判定されると、S3へ移行して、前記制御器14は、図3に示す第二制御パターンを実行する。この第二制御パターンは、前記第一制御パターンと前記水位が第二水位L2〜前記第三水位Hの間のみ異なる。すなわち、この第二制御パターンでは、前記水位が第二水位L2を超えると、前記第一水処理単位5aを全負荷運転するとともに、前記第二水処理単位5bを停止する第二制御状態で運転する(トータル半負荷運転)。このトータル半負荷運転は、前記第二制御状態であり、前記膜濾過部3aに対しては、流量を高流量とすることで、濾過性能を向上させることができる。この第二制御状態の運転は、濾過性能優先運転である。
【0032】
この実施例1によれば、水温が低いとき、前記第一制御状態で運転を行うことにより、脱気性能優先の制御を行い、水温が高いとき、前記第二制御状態で運転を行うことにより、濾過性能優先の制御を行うことができるので、水温変化に対応して、適切な水処理を行うことができる。
【0033】
また、この実施例1では、複数の水処理単位5a,5bを同じ負荷状態とするのではなく、全負荷運転のものと半負荷運転のものとを組み合わせた運転状態を含ませることにより、よりきめ細かい水処理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る水処理装置の実施1を示す概略説明図である。
【図2】同実施例の制御パターンの説明図である。
【図3】同実施例の他の制御パターンの説明図である。
【図4】同実施例の要部制御手順を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0035】
1 給水ライン
1a 第一給水ライン
1b 第二給水ライン
2a 第一給水ポンプ(流量調整手段)
2b 第二給水ポンプ(流量調整手段)
3a 第一膜濾過部
3b 第二膜濾過部
4a 第一膜式暖脱気部
4b 第二膜式脱気部
5a 第一水処理単位
5b 第二水処理単位
14 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止,低流量運転および高流量運転が選択可能な流量調整手段と、熱機器の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉する濾過膜を用いて濾過する濾過膜部と、給水中の溶存気体を透過する気体透過膜を用いて脱気する膜式脱気部とを直列に接続した水処理単位を複数互いに並列に接続した水処理装置であって、
前記各水処理単位の流量調整手段を停止,低流量運転,高流量運転とすることで、前記各水処理単位を停止,半負荷運転,全負荷運転とする制御手段を備え、
前記制御手段は、複数の前記水処理単位の流量調整手段を低流量運転とする第一制御状態と、複数の前記流量調整手段を低流量運転とする代わりに一方を高流量運転とし他方を停止する第二制御状態とを選択可能としたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記流量調整手段が給水ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記給水または前記処理水の温度を検出する水温ンサを備え、
前記制御手段は、前記水温センサの検出水温が設定値未満のとき、前記第一制御状態とし、前記水温センサの検出水温が設定値以上のとき、前記第二制御状態とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−237979(P2008−237979A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78639(P2007−78639)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】