説明

水力発電装置

【課題】浮き(フロート)と水車を一体化して、点検・保守管理を容易に実施できるようにし、水力発電装置をワイヤ等の牽引部材でフレキシブルに係留して単純な構成とした。
【解決手段】水車本体の一部が水面に浮いた状態で、水車本体の下側の流水により回転する回転羽根部と、水車の回転軸に接続されて回転する発電機と、水車本体を係留するための係留部材により構成した。前記係留部材にワイヤ等のフレキシブルな牽引部材を接続した。また水車本体を、回転羽根部の回転軸が水面より上側に位置するように係留した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る水力発電装置は、小規模の流水エネルギーを利用する水力発電機に関するもので、大規模な工事が不要で設置や移動が簡便かつ容易にでき、低コストでしかも発電効率が高い水力発電装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
一般に河川や用水路等に水力発電装置を設置、運転して発電する場合は、比較的小形の装置であっても大規模な工事が必要である。また、場所によっては当該装置の設置に大がかりな基礎工事が必要な場合もある。さらに河川の水位の増減に対しても、流量の調整が必要になり、そのための専用の施設を河川に設置するものもある。これらには多額のコストが必要であり、水力発電の適用促進を阻害する要因であった。
【0003】
この問題を解決するために
【特許文献1】特開2008−267369号公報に開示されているような、浮き水車式水力発電装置が提案されている。該浮き水車式水力発電装置は、2本の支柱を川の流れに直角に建て、これに水車を水面に浮かせるための補助装置としての浮き(フロート)を固定する。河川の増水時には水車が浮き上がり、渇水時には川底に降り、水流があるかぎり発電を続ける。移動に際しては構造が単純なため、分解、組み立て、輸送も容易である。運用においても、構造が単純であるため容易に管理できる。水車を設置するために必要な河川の工事としては、2本の支柱を建てるだけなので、設置コストが低い。
【0004】

【特許文献1】特開2008−267369号公報
【特許文献2】特開2001−289145号公報
【特許文献3】特開2002−81362号公報
【特許文献4】特開2003−286935号公報
【特許文献5】特開2007−205342号公報
【特許文献6】特開2008−151151号公報
【特許文献7】特開2008−163784号公報これらの文献に開示されている先行技術は、前記
【特許文献1】に記載されている先行技術と類似しており、何らかの浮力体(船や筏など)を用いて、水車本体を水上に支持する構造の水力発電装置に関する技術である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記「特許文献1」、及び前記「特許文献2〜7」に開示されている水力発電装置は、河川や水路の流水の速度や水量が急激に変化すると、浮き(フロート)が不安定になり、水車が安定な姿勢を保つことが困難になるおそれがあるという問題がある。
また、水力発電装置を係留するための支柱は、河川や水路の上流から流れてくる大型のゴミなどの異物が衝突して傾くおそれがあり、人身事故を防止するために支柱の定期的な点検・保守管理が必要であるという問題がある。従って、前記「特許文献1」、及び前記「特許文献2〜7」に開示されている先行技術の課題として、
(1)必然的に構造が大掛かりになるために高コスト・高環境負荷となりやすいこと、
(2)非回転体(浮力体)と回転体(水車部分)が隣接しあう構造のため、異物の巻込み事故や深刻な人身事故に至る可能性が大きいこと等が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの先行技術の課題に対して、本発明に係る水力発電装置においては、水力発電装置そのものを浮力体とした構造をしており、これにより、上記(1)、(2)の課題を解決できる。すなわち、本発明による水力発電装置は、浮力体(フロート)と水車を一体化して単純な構成となし、水車の回転軸を水面より上部に位置するようにして、ワイヤまたはケーブル等の牽引部材で水力発電装置を川岸や水路の側縁に係留したものである。
【発明の効果】
【0007】
これにより、河川や水路の流水の速度や水量が急激に変化した場合でも、水車は安定な姿勢を保つことが可能になる。水力発電装置を係留するワイヤは設置コストが低く、河川や水路の上流から流れてくる大型のゴミなどの異物に対しても安定で事故のおそれがない。また、水車の羽根は、比較的流速が速い水中の上層部に位置しているので、流水のエネルギーを効率よく水車の回転エネルギーに変換でき、このため発電出力が大きい。さらに、水力発電装置を設置するための河川の大規模な工事は不要であり、極端な増水時でも水力発電装置が水没することはなく、運用に関しても、点検・保守管理を容易に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る水力発電装置は、主に農業用の用水路や小規模河川等(流水の幅は0.3〜3m程度)に設置して運用する。上流から大きなゴミなどの異物が流れてきた場合においても、流水は一方向で比較的安定であり、このため水車の回転羽根部はなめらかに回転するので、流水のエネルギーを水車の回転エネルギーに効率良く変換できるので発電効率が高い。
【実施例】
【0009】
図1に本発明に係る水力発電装置の構成、動作を説明する概略図を示す。小規模の河川や農業用水路等での運用を想定しているが、条件がそろえば多様な水路での運用が可能と考えられる。図1において、水車本体は部分的に水面に浮かんでおり、水車本体の下を通過する水流により回転羽根部が回転する。水車本体をフレキシブルなワイヤ、又はケーブル等の牽引部材を使って、川岸や水路の側縁に係留して水車の位置を固定する。水路の水位が増減しても、水車は常に比較的流速が速い水中の上層部に浮かんでいるので、発電効率が高い。また、ゴミ等の異物は容易に下流に通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る水力発電装置の構成、動作を示す概略図
【図2】本発明に係る水力発電装置の実施例を示す概略図
【符号の説明】
【0011】
1・・・回転羽根部
2・・・発電部(水車本体に内蔵)
3・・・係留部材
4・・・河川等の流水
5・・・水車本体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車本体の一部が水面に浮いた状態で、前記水車本体の下側の流水により回転する回転羽根部と、前記水車の回転軸に接続されて回転する発電機と、前記水車本体を係留するための係留部材により構成した水力発電装置。
【請求項2】
前記係留部材にワイヤ等のフレキシブルな牽引部材を接続したことを特徴とする請求項1に記載した水力発電装置。
【請求項3】
前記水車本体を、前記回転羽根部の回転軸が水面より上側に位置するように係留したことを特徴とする請求項1または2に記載した水力発電装置。


【図1】
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【図2】
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