説明

水力発電装置

【課題】山岳地域を流れる河川のように、高低差を有する地形を流れる河川の流水を利用して、小規模の設備でありながら、効率的に電力を得るようにした水力発電装置を提供する。
【解決手段】
高低差を有する地形を流れる河川を分流するように構築した水路を設け、該水路を地形の高低差を利用して下り勾配に設けると共に該水路の途中に段差を設け、該段差の流水落下位置に水車装置を設置した水力発電装置において、水車装置は軸部材に複数の水車を同軸状態で並設し、該水車装置の軸部材を回転自在に支持すると共に、該軸部材に設けたギヤにチェーン等の回転伝達手段を連結し、加速機を介して発電機の回転軸に設けたギヤに接続した。また、水路に設けた段差は該水路に沿って複数箇所に設けると共に、各段差の流水落下位置に設けた水車装置は軸部材に水車を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の流水による水力エネルギーを電力エネルギーに変換することにより、効率的に電力を得ることができるようにした水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川等の水力エネルギーを利用することにより電力を得る方法は、山間部に設けたダムや急流を利用した大型の水力発電設備が主流とされていた。しかしながら、近年、環境問題等が原因で、山間部に大規模なダムを建設することが困難であり、また火力発電機は、二酸化炭素の発生が環境に悪影響を及ぼす等の問題があるため、電力の供給を原子力発電機に依存する傾向にあった。
【0003】
ところが、原子力発電機は、地震等が原因となって引き起こされる放射能汚染等の問題が社会問題となっているため、規模を縮小する傾向にある。そこで、今後においては、原子力を利用することなく、小規模でありながら、効率的に電力を得るようにした技術が期待されている。
【0004】
そのような技術として、特許文献1に記載されている水力発電設備を参照する。この文献の水力発電設備は、海面下または河川の水面下に設けられた取水口を導水管を介して地下に設けられた発電室の水力タービンに導き、さらに発電後の海水または河川水を発電室から揚水手段を介して海または河川に戻すようにしたものである。
【0005】
しかしながら、このような水力発電設備は、従来のダム設備に比較すれば小規模であるが、海面下または河川の水面下より低い地中に発電室を設けると共に、地中に導水管や揚水手段を設ける必要があるため、工事が大掛かりになるという不都合がある。
【0006】
ところで、一方、山岳が多く存在する日本の国土事情を考慮して、河川の流水を使用した発電機の開発が期待されている。ちなみに、特許文献2を参照すると、この文献には、河川に浮かべた浮き架台に水車羽を設けると共に、水底のアンカーに固定したワイヤー等で浮き架台を引くようにした水流発電機が記載されている。
【0007】
しかしながら、上記のように、浮き架台を河川に浮かべた状態で水車羽を回転することによって電力を得る構造は、河川に洪水等の激流が発生すると、水底のアンカーが破壊されたり、ワイヤーが切断され、また発電装置そのものが破壊されるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−214187号公報
【特許文献2】特開2005−351125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、山岳地域を流れる河川のように、高低差を有する地形を流れる河川の流水を利用して、小規模の設備でありながら、効率的に電力を得るようにした水力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の水力発電装置は、高低差を有する地形を流れる河川を分流するように構築した水路を設け、該水路を地形の高低差を利用して下り勾配に設けると共に該水路の途中に段差を設け、該段差の流水落下位置に水車装置を設置した水力発電装置において、水車装置は軸部材に複数の水車を同軸状態で並設し、該水車装置の軸部材を回転自在に支持すると共に、該軸部材に設けたギヤにチェーン等の回転伝達手段を連結し、加速機を介して発電機の回転軸に設けたギヤに接続したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2の水力発電装置は、高低差を有する地形を流れる河川を分流するように構築した水路を設け、該水路を地形の高低差を利用して下り勾配に設けると共に該水路の途中に段差を設け、該段差の流水落下位置に水車装置を設置した水力発電装置において、水路に設けた段差は該水路に沿って複数箇所に設けると共に、各段差の流水落下位置に設けた水車装置は軸部材に水車を設けた構成とし、各水車装置の軸部材を回転自在に支持すると共に、水路の各段差に設けた複数の水車装置の各軸部材に設けた複数のギヤをチェーン等の回転伝達手段によって連結し、加速機を介して発電機の回転軸に設けたギヤに接続したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3の水力発電装置は、請求項1又は2において、河川を分流するように構築した水路は、河川の側部に沿って形成したことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の請求項4の水力発電装置は、請求項1又は2において、河川を分流するように構築した水路は、河川内の上部に沿って形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の水力発電装置は、上記のように、高低差を有する水路の途中に設けた段差において、水路の流水口から流水が落下する位置、即ち流水落下位置に複数の水車を同軸状態で並設した水車装置を設置した構成としている。この水車装置の軸部材は、チェーン等の回転伝達手段を加速機(増速機とも云う)を介して発電機に接続しているため、加速機のギヤ比に応じて増速された回転速度で発電機を回転することにより高能率的に電力を得ることが可能となる。
【0015】
従って、この水力発電装置は、上記のように、軸部材に複数の水車を同軸状態で並設した構成を有するため、比較的幅の広い水路に適するものであり、軸方向に設けた複数の水車による回転を加速機のギヤ比に応じて増速することにより、河川の分流によって発生する流水の水力エネルギーを効率的に電力エネルギーに変換することが可能となる。このため、火力発電や原子力発電のように高価な資源を必要とすることなく、日本においては豊富に存在する水資源という自然力を利用することによって、ランニングコストを安価にすることが可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項2の水力発電装置は、上記のように、水路に設けた段差を水路に沿って複数箇所に設けると共に、各段差の流水落下位置に水車装置を設け、各水車装置をチェーン等の回転伝達手段で連結すると共に、加速機を介して発電機に接続した構成としたため、加速機のギヤ比に応じて増速された回転速度で発電機を回転し、電力を得ることが可能となる。
【0017】
従って、このような水力発電装置は、段差が多く存在する傾斜地に設けた比較的狭い水路に適するものであり、水路に沿った複数の水車による回転を加速機のギヤ比に応じて増速することにより、水力エネルギーを電力エネルギーに効率的に変換することが可能となる。このため、この水力発電装置においても、火力発電や原子力発電のように高価な資源を必要とすることなく、日本においては豊富に存在する水資源という自然力を利用することによって、ランニングコストを安価にすることが可能となる。
【0018】
なお、請求項1又は請求項2の水力発電装置において、河川を分流するように構築した水路は、河川の側部に沿って形成することが可能である。この場合、地形的に河川の側部に水路を構築するスペースが必要であるが、河川の状況に影響されずに水路を構築することが可能となる。
【0019】
また、請求項1又は2の水力発電装置において、河川を分流するように構築した水路は、河川内の上部に沿って形成することが可能である。この場合、水路を河川自体に構築するものであるため、河川の側部に水路を構築するスペースは不要となり、しかも水路の流水口から水車装置へ流下した流水をそのまま河川に流すことができ、その分、水路を低コストに構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す部分拡大平面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る水力発電装置の正面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例1の他の実施例に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す平面図である。
【図6】本発明の実施例1の他の実施例に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す側面図である。
【図7】本発明の実施例2に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す平面図である。
【図8】本発明の実施例2に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す部分拡大平面図である。
【図9】本発明の実施例2に係る水力発電装置の正面図である。
【図10】本発明の実施例2に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す側面図である。
【図11】本発明の実施例2の他の実施例に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す平面図である。
【図12】本発明の実施例2の他の実施例に係る水力発電装置を水路に設置した状況を示す側面図である。
【図13】本発明の実施例3に係る水力発電装置を滝の下部に設置した状況を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例の水力発電装置1Aは、図1に示すように、山岳地域等のように高低差を有する地形を流れる河川2を分流するように構築した水路3Aに適用するものであり、水路幅が比較的広く形成された水路3Aに適する。
【0023】
また、このような水路3Aは、図3に示すように、規模に応じて金属製又は鉄筋コンクリート製等によって断面凹形の連続溝形状に造成すると共に、図1に示すように、河川2から水路3Aに分流する境界部に、広い幅から水路3Aの狭い幅に案内するガイド部4を形成したことによって河川2からの流水Fを水路3Aに円滑に導くようにしている。
【0024】
また、多量の降水や洪水等のように水量が増した際に水路3Aを流れる水量を制限すると共に、一定の水量に調整するため、図1、2、3に示すように、水路3Aの上部に増水分の掻き落としを行う掻き落とし部材5を固定している。この掻き落とし部材5は、コンクリート製等によって形成した棒状又は板状の長尺部材を水路3Aの両端に傾斜状に掛けて固定したものである。
【0025】
また、上記の水路3Aは、地形の高低差を利用して下り勾配に設けられ、水路3Aの途中には地形を利用した段差6、又は地形を利用して造られた段差6が設けられている。このような水路3Aは、段差6の上方で水路3Aが一旦中断されると共に、中断された箇所が流水口7として機能するものであり、このような流水口7の下方における流水落下位置に水車装置8Aを設置している。
【0026】
また、水路3Aの流水口7の下方は、流水口7から流下した流水Fを受け止めるために、水路3Aよりも広い幅の受水室22が形成され、受水室22の流水は、図1に示すように、受水室22からその下流の水路3Aを経て元の河川2に戻されることになる。
【0027】
また、本実施例の水車装置8Aは、図1、2、3、4に示すように、軸部材10に複数の水車9a、9b、9cを同軸状態に並設すると共に、軸部材10を回転自在に支持したものである。
【0028】
即ち、図3に示すように、軸部材10の外周に設けられた円筒形の軸胴部12を介して複数枚の羽根板11(図4参照)が固定された構造により1個の水車9aが形成され、このような複数の水車9a、9b・・・が軸部材10の軸胴部12の外周に形成されたことにより、水車装置8Aが構成されている。なお、本実施例において、水車装置8Aは、3個の水車9a、9b、9cを並設した構成としてあるが、必ずしも3個に限定する必要はなく、各水車9a、9b・・・の幅や水路3Aの幅等の関係から設定することが可能である。
【0029】
なお、図4に示すように、各水車9a、9b、9cに設けた夫々の羽根板11は中途部分が回転方向に向けて鈍角状に折れ曲げられた形状に形成され、水路3Aの流水口7から流下した流水を確実に受け止めることが可能とされている。ただし、羽根板11は折れ曲げ部を形成せずに、直状に形成することも可能である。また、図3又は図4に示すように、水車装置8Aは各羽根板11の両側部に横板11a、11bを固設することにより、水路3Aの流水口7から流下した流水Fを外方に漏らすことなく確実に各羽根板11に当てることによって水車装置8Aを能率的に回転することが可能となる。
【0030】
このような水車装置8Aは、図3に示すように、軸部材10の両端付近に設けられた不図示のベアリングを介して水車支持台13、13に回転自在に固定されている。また、本実施例は、水路幅が比較的広く形成された水路3Aに適するものである。従って、水路幅が広くなると、水車装置8Aの軸部材10の長さも長くなるため、軸部材10の剛性を補強するために、軸部材10の途中である水車9a、9b、9cの間ごとに中間支持部材14を立設した構成としている。
【0031】
さらに、図2に示すように、水車装置8Aの軸部材10の端部には、軸部材10に設けたギヤ16にチェーン17等の回転伝達手段を結合し、加速ギヤ装置21を介して発電機18の回転軸18aに設けたギヤ19に接続している。
【0032】
このような構成において、加速ギヤ装置21は、ギヤ径の異なるギヤ21a、21bの夫々をギヤ支持台15で支持すると共に、水車装置8Aの軸部材10に設けたギヤ16にチェーン17を介して一方のギヤ21aに連結する。また、他方のギヤ21bに連結したチェーン17を介して発電機18のギヤ19に連結することにより、水車装置8Aの回転を増速した状態で発電機18に伝達して、電力に変換するようにしている。
【0033】
また、発電機18は、防水のために、ケーシング20内に設けるようにするとよい。さらに、図4に示すように、大量の降雨時や洪水等にも水没しないように、発電機18はなるべく高所に設けるのが望ましい。このため、水力発電装置1Aの設置位置から離れた高い位置に設けるか、不図示であるが、発電機18を高い架台の上部に固定するようにしても良い。
【0034】
本実施例の水力発電装置1Aは、上記のように、比較的幅の広い水路3Aに適するものであり、この水車装置8Aを軸部材10に複数の水車9a、9b・・・を同軸状態で並設した構成とする。また、複数の水車9a、9b・・・による回転力を加速ギヤ装置21におけるギヤ21a、21bのギヤ比に応じて増速された回転速度に変換することにより、河川2の分流によって発生する流水Fの水力エネルギーを効率的に電力エネルギーに変換することができる。
【0035】
上記の実施例は、水路3Aを河川2の側部に沿って形成したものである。この場合、地形的に河川2の側部に水路3Aを構築するスペースが必要であるが、河川2の状況に影響されずに水路3Aを構築することが可能となる。
【0036】
また、実施例1の他の実施例として、水路3Aを河川2内の上部に沿って形成することも可能である。即ち、図5又は図6に示すように、河川2内の底部に脚部材23を構築して水路3Aを下り勾配に構築し、水路3Aが中断された箇所を流水口7とし、この流水口7の下方における流水落下位置に水車装置8Aを設置する。
【0037】
なお、図6に示すように、上記の水路3Aの上流側はその下部と河川2の底面との間に高さ50cm程度の隙間Gができるように構築するのが好ましい。こうすることにより、河川2内を移動する岩石等が隙間Gを通過するため、岩石等が水路3Aを通過することがなく、水車装置8Aの損傷を防止することが可能となる。また、水路3Aの下部の隙間Gを魚類等が通過することも可能となる。
【0038】
本実施例の水車装置8Aは、図5に示すように、実施例1と同様に、軸部材10に複数の水車9a、9b、9cを同軸状態に並設すると共に、軸部材10を不図示のベアリングを介して水車支持台13、13に回転自在に固定している。なお、本実施例においては、図5又は図6に示すように、各羽根板11を直状に形成すると共に、各羽根板11の両側部に横板11a、11bを固設することにより、水路3Aの流水口7から流下した流水Fを外方に漏らすことなく確実に各羽根板11に当てることによって水車装置8Aを能率的に回転することが可能となる。
【0039】
さらに、水車装置8Aの軸部材10の端部には、軸部材10に設けたギヤ16にチェーン17等の回転伝達手段を結合し、加速ギヤ装置21の一方のギヤ21aに連結する。また、一方のギヤ21aとはギヤ径の異なるギヤ21bに連結したチェーン17を発電機18のギヤ19に連結することにより、水車装置8Aの回転をギヤ21a、21bのギヤ比に応じて増速した状態で発電機18に伝達し、電力に変換することが可能となる。
【0040】
このような実施例の場合、水路3Aを河川自体に構築するものであるため、河川2の側部に水路3Aを構築するスペースは不要となり、しかも水路3Aの流水口7から水車装置8Aへ流下した流水Fをそのまま河川2に戻すことができ、その分、水路8Aを低コストに構築することが可能となる。
【実施例2】
【0041】
上記の実施例1と同様に、本実施例の水力発電装置1Bは、図7に示すように、山岳地域等のように高低差を有する地形を流れる河川2を分流するように構築した水路3Bに適用するものであり、段差が多く存在する傾斜地に設けた比較的狭い水路に適するものである。
【0042】
また、このような水路3Bは、実施例1と同様に、規模に応じて金属製又は鉄筋コンクリート製等によって断面凹形の連続溝形状に造成し、河川2から水路3Bに分流する境界部に、広い幅から水路3Bの狭い幅に案内するガイド部4を形成したことによって河川2からの流水Fが水路3Bに円滑に導かれるようにしている。
【0043】
また、本実施例においても、多量の降水や洪水等のように水量が増した際に水路3Bを流れる水流を制限し、一定の水量に調整するため、図7〜10に示すように、水路3Bの上部に増水分の掻き落としを行う掻き落とし部材5を固定している。この掻き落とし部材5は、実施例1と同様に、コンクリート製等によって形成した棒状又は板状の長尺部材を水路3Bの両端に傾斜状に掛けて固定したものである。
【0044】
また、本実施例の水路3Bは、図10に示すように、地形の高低差を利用して下り勾配に設けられ、水路3Bの途中には地形を利用した複数の段差6、又は地形を利用して造られた複数の段差6が設けられている。このような水路3Bは、夫々の段差6の上方で水路3Bが一旦中断されると共に、中断された箇所が流水口7として機能するものであり、このような複数の流水口7の下方における夫々の流水落下位置に水車装置8Bを設置している。
【0045】
また、本実施例においても、図7に示すように、水路3Bの流水口7の下方は、該流水口7から流下した流水Fを受け止めるために、水路3Bよりも広い受水室22が形成され、受水室22の流水は、受水室22から水路3Bを経て元の河川2に戻されることになる。
【0046】
さらに、本実施例の水車装置8Bは、図7〜10に示すように、水路3Bに設けた段差6を水路3Bに沿って複数箇所に設けると共に、各段差6の流水口7の下方の流水落下位置に水車装置8Bを設け、各水車装置8Bをチェーン17等の回転伝達手段で連結したものである。
【0047】
即ち、本実施例においては、図10に示すように、水路3Bに設けた複数の段差6ごとに、水路3Bの流下口7の下方に水車装置8Bを設け、また、図9に示すように、各水車装置8Bは、単一の水車9aで形成した構成としている。また、図10に示すように、水車9aは、軸部材10の外周に設けられた円筒形の軸胴部12を介して複数枚の羽根板11が固定された構造とされている。
【0048】
なお、本実施例においても、図10に示すように、夫々の羽根板11は中途部分が回転方向に向けて鈍角状に折れ曲げられた形状に形成され、水路3Bの流水口7から流下した流水を確実に受け止めることが可能とされている。また、図9又は図10に示すように、水車装置8Bは各羽根板11の両側部に横板11a、11bを固設することにより、水路3Bの流水口7から流下した流水Fを外方に漏らすことなく確実に各羽根板11に当てることによって水車装置8Bを能率的に回転することが可能となる。
【0049】
このような各水車装置8Bは、図8又は図9に示すように、夫々の軸部材10の両端付近に設けられた不図示のベアリングを介して水車支持台13に回転自在に固定されている。また、本実施例においては、上記のように、水路3Bに沿った複数の段差6ごとに水車装置8Bが設けられ、例えば、下流側の水車装置8Bの軸部材10に設けられたギヤ16をギヤ支持台15aで支持すると共に、ギヤ16にチェーン17等の回転伝達手段を結合して、その上流の段差6に設けた水車装置8Bの軸部材10に設けられた加速ギヤ装置21の一方のギヤ21aに連結している。
【0050】
また、加速ギヤ装置21において同軸に設けられた他方のギヤ21bは互いにギヤ径の異なる構成であり、夫々のギヤ21a、21bはギヤ支持台15bで支持した構成としている。そして、この加速ギヤ装置21の他方のギヤ21bは、さらに上流側に設けられたギヤ支持台15cに支持された回転軸18aのギヤ19に結合され、この回転軸18aが発電機18の回転軸として構成されている。
【0051】
このような構成において、本実施例においても、発電機18は、防水のために、ケーシング20内に設けるようにする。また、図10に示すように、大量の降雨時や洪水等にも水没しないように、発電機18はなるべく高所に設けるのが望ましい。このため、水力発電装置1Bの設置位置から離れた高い位置に設けるか、不図示であるが、発電機18を高い架台の上部に固定するようにしても良い。
【0052】
また、本実施例の水力発電装置1Bは、上記のように、比較的幅の狭い水路3Bに適するものであり、この水路3Bに設けた複数の段差6ごとに各流下口7の下方に水車装置8Bを設け、各水車装置8Bの軸部材10のギヤ16をチェーン17等の回転伝達手段で連結すると共に、加速ギヤ装置21を介して発電機18に接続した構成とすることにより、加速ギヤ装置21のギヤ比に応じた回転速度の増速を得て、発電機18を回転して電力を得ることが可能となる。
【0053】
従って、このような水力発電装置1Bを、段差6が多く存在する傾斜地に設けた比較的狭い水路3Bに適用し、水路3Bに沿った複数の水車装置8Bによる回転力を加速ギヤ装置21におけるギヤ21a、21bのギヤ比に応じて増速された回転速度に変換することにより、水力エネルギーを電力エネルギーに変換して効率的に電力を得ることが可能となる。
【0054】
上記の実施例は、水路3Bを河川2の側部に沿って形成したものである。従って、この実施例においてもまた、他の実施例として、水路3Bを河川2内の上部に沿って形成することが可能である。即ち、図11又は図12に示すように、河川2内の底部に脚部材23を構築して複数の水路3Bを下り勾配に構築し、水路3Bが中断された箇所を流水口7とし、この流水口7の下方における流水落下位置に水車装置8Bを設置する。
【0055】
なお、この実施例においても、上記の水路3Bの上流側は河川2の水面Wが水路3Bよりも高くなるように構築すると共に、水路3Bの下部と河川2の底面との間に高さ50cm程度の隙間Gができるように構築するのが好ましい。こうすることにより、河川2の底部を移動する岩石等が隙間Gを通過することとなり、岩石等が水路3Bを通過することがなく、水車装置8Bの損傷等を防止することが可能となる。また、水路3Bの下部の隙間Gを魚類等が通過することも可能となる。
【0056】
また、水車装置8Bは、図11又は図12に示すように、水路3Bに設けた複数の段差6ごとに各流下口7の下方に水車装置8Bを設け、各羽根板11を直状に形成すると共に、各羽根板11の両側部に横板11a、11bを固設することにより、水路3Bの流水口7から流下した流水Fを外方に漏らすことなく確実に各羽根板11に当てることによって水車装置8Bを能率的に回転することが可能となる。また、各水車装置8Bの軸部材10のギヤ16をチェーン17等の回転伝達手段で連結すると共に、上記実施例のように加速ギヤ装置21を介して発電機18に接続した構成とすることにより、加速ギヤ装置21のギヤ21a、21bのギヤ比に応じて回転速度を増速した状態で効率的に発電機18を回転して電力を得ることが可能となる。
【0057】
このような実施例の場合、水路3Bを河川2自体に構築するものであるため、河川2の側部に水路3Bを構築するスペースは不要となり、しかも水路3Bの流水口7から水車装置8Bへ流下した流水Fをそのまま河川2に戻すことができ、その分、水路3Bを低コストに構築することが可能となる。
【実施例3】
【0058】
本実施例の水力発電装置1Cは、図13に示すように、自然の滝24を水路として利用し、滝24によって生じた段差6の流水落下位置に本発明による水車装置8Cを設置したものである。この場合、水車装置8Cとしては、実施例1のように複数の水車9a、9b、9cを同軸に並設した構造を用いることが可能である。
【0059】
なお、上記の構成において、水車装置8Cの羽根板11は短尺として小型化すると共に、この水車装置8Cを滝24の下側部に形成した窪み部25の内部に設置することにより、この水車装置8Cを目立たないようにして自然の景観を損なわないようにしている。また、各羽根板11の両側部に、横板11a、11bを固設することにより、滝24から流下した流水Fを外方に漏らすことなく確実に各羽根板11に当てることによって水車装置8Cを能率的に回転することが可能となる。なお、この水車装置8Cは、木製等で古風な形状に作成することによって、滝24の景観にふさわしい外観とすることも可能である。
【0060】
また、図13に示すように、上記のように水車装置8Cを滝24の窪み部25に設けることにより、滝24の流水Fを水車装置8Cの羽根板11の回転軸10を超えた側(図13における回転軸10の左方側)の羽根板11に当たるようにしている。このような構成により、滝24の流水Fが水車装置8Cの羽根板11を押圧する際の当たりが柔らかくなる。また、仮に滝24の流水Fに岩石等が混在しており、この岩石が羽根板11に当たることがあっても、水車装置8Cの本体に当たることがないため、この水車装置8Cを保護することが可能となる。
【0061】
また、本実施例においても、水車装置8Cの軸部材10の端部には、軸部材10に設けたギヤ16にチェーン17等の回転伝達手段を結合している。さらに、加速ギヤ装置21は、ギヤ径の異なるギヤ21a、21bの夫々をギヤ支持台15bで支持した構成とし、上記のように水車装置8Cのギヤ16に掛けたチェーン17を介して一方のギヤ21aに連結し、また他方のギヤ21bに連結したチェーン17を介して発電機18のギヤ19に連結する。このような構成により、加速ギヤ装置21のギヤ21a、21bのギヤ比に応じて増速された回転を発電機18に伝達して電力に変換することが可能となる。
【0062】
このような構成により、自然の滝等を水路として利用した場合でも、水車9a、9b・・・による回転力を加速ギヤ装置21におけるギヤ21a、21bのギヤ比に応じて増速した回転速度に変換し、河川2の分流によって発生する流水の水力エネルギーを効率的に電力エネルギーに変換することが可能となる。
【0063】
また、本実施例の場合、自然界に存在する滝等のような段差を本発明の水路3Cの段差6として利用することにより、水路を構築する必要がなく、その分、工事費の削減に寄与することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の水力発電装置は、山岳地域を流れる河川のように、高低差を有する地形を流れる河川の流水を利用して、小規模の設備でありながら、効率的に電力を得るようにした水力発電装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1A、1B、1C 水力発電装置
2 河川
3A、3B、3C 水路
4 ガイド部
5 掻き落とし部材
6 段差
7 流水口
8A、8B、8C 水車装置
9a、9b、9c 水車
10 軸部材
11 羽根板
11a、11b 横板
12 軸胴部
13 水車支持台
14 中間支持部材
15(15a、15b、15c) ギヤ支持台
16 ギヤ
17 チェーン
18 発電機
18a 回転軸
19 ギヤ
20 ケーシング
21 加速ギヤ装置
21a、21b ギヤ径の異なるギヤ
22 受水室
23 脚部材
24 滝
F 流水
G 隙間
W 河川の水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差を有する地形を流れる河川を分流するように構築した水路を設け、該水路を地形の高低差を利用して下り勾配に設けると共に該水路の途中に段差を設け、該段差の流水落下位置に水車装置を設置した水力発電装置において、
水車装置は軸部材に複数の水車を同軸状態で並設し、該水車装置の軸部材を回転自在に支持すると共に、該軸部材に設けたギヤにチェーン等の回転伝達手段を連結し、加速機を介して発電機の回転軸に設けたギヤに接続したことを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
高低差を有する地形を流れる河川を分流するように構築した水路を設け、該水路を地形の高低差を利用して下り勾配に設けると共に該水路の途中に段差を設け、該段差の流水落下位置に水車装置を設置した水力発電装置において、
水路に設けた段差は該水路に沿って複数箇所に設けると共に、各段差の流水落下位置に設けた水車装置は軸部材に水車を設けた構成とし、各水車装置の軸部材を回転自在に支持すると共に、水路の各段差に設けた複数の水車装置の各軸部材に設けた複数のギヤをチェーン等の回転伝達手段によって連結し、加速機を介して発電機の回転軸に設けたギヤに接続したことを特徴とする水力発電装置。
【請求項3】
河川を分流するように構築した水路は、河川の側部に沿って形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の水力発電装置。
【請求項4】
河川を分流するように構築した水路は、河川内の上部に沿って形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の水力発電装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−68196(P2013−68196A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208829(P2011−208829)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(507174237)
【Fターム(参考)】