説明

水力発電設備

【課題】海水の潮位差を利用することにより、継続的に発電を行うことができ、さらに、発電後の海水を電気を使用しない揚水手段によって揚水することにより、発電効率の良い水力発電設備を提供する。
【解決手段】水力タービン11が収納された発電室10と、発電後の海水を貯水する貯水場POと、取水口12が海面下に配置され、排水口13が水力タービン11の近傍に配置された導水管Dと、流入口16が発電室10に連通され、流出口17が貯水場POに配置された揚水管Yと、導水管D内に配設され、海水の圧力及び流速により回転する回転動力発生手段と、回転動力発生手段に連結されると共に揚水管Y内に配設され、回転動力発生手段の回転動力により回転する揚水手段と、を備え、揚水された海水は、いったん貯水場POに貯水され、引き潮時に貯水場POの周壁21に設けられた排水管22を通して海に排水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水力発電設備に係り、特に海水を地下の発電室に落とし込んで発電を行い、発電後の海水を揚水して海に排水することにより、継続的に発電を行うことが可能な水力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、海水を地下の発電室に落とし込んで発電を行い、揚水機能を用いて発電後の海水を海へ排水する構成とした水力発電設備が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の水力発電設備では、発電後の海水が、揚水管の絞り管構造による流速の増大化の作用と、揚水ポンプによる揚水力により揚水されるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3687790号公報(段落0018、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水力発電設備では、揚水ポンプを駆動するのに電動モータを用いており、駆動に電気が使用され、発電される電気量が少なくなってしまうという不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、海水を地下の発電室に落とし込んで発電を行い、発電後の海水を、電気を必要としない揚水手段によって揚水することにより、発電効率の良い水力発電設備を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、海水の潮位差を利用して、継続的に発電を行うことが可能な水力発電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の水力発電設備によれば、海水を地下の発電室に落とし込んで発電を行い、発電後の海水を揚水して海に排水することにより、継続的に発電を行うことが可能な水力発電設備において、満潮時に海水が貯水空間に流れ込まない高さの周壁を有し、該周壁の底部側に、引き潮時に海面から露出する開閉弁を備えた排水管が連通され、発電後の海水を貯水する貯水場と、地下の発電室に収納された水力発電機と、海面下に位置する取水口から前記水力発電機の近傍に位置する排水口に向けて先細りするように配設された導水管と、前記発電室に連通する流入口から前記貯水場に位置する流出口に向けて先細りするように配設され、前記流出口側に海面からいったん上方に突出した後、前記貯水場の海面下に達するまで下方に湾曲した湾曲部を有した揚水管と、前記導水管内に配設され、海水の圧力及び流速により回転する回転動力発生手段と、該回転動力発生手段に連結されると共に前記揚水管内に配設され、前記回転動力発生手段の回転動力により回転し、発電後の海水を揚水する揚水手段と、を備えたことにより解決される。
【0007】
このように、本発明の水力発電設備は、導水管内に海水の圧力及び流速により回転する回転動力発生手段が配設され、揚水管内に回転動力発生手段に連結されて回転動力発生手段の回転動力により回転する揚水手段が配設され、揚水手段が回転することにより発電後の海水が揚水される構成としている。このため、発電後の海水を、電気を使用せずに揚水することができ、発電効率の良い水力発電設備を得ることができる。
また、海水を地下の発電室に落とし込んで発電を行い、発電後の海水を揚水し、引き潮時に貯水場から海に排水することにより、海水の潮位差を利用して継続的に発電を行うことが可能である。
【0008】
また、前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、一本の回転軸で連結され、水流方向に回転可能に配設されていると好適である。このように構成すると、回転動力発生手段から得られた回転動力を、回転軸を介して揚水手段へ伝達することができ、揚水手段を回転動力発生手段と同じ方向に回転させることができる。
【0009】
また、前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、水流方向に回転可能に配設され、前記回転動力発生手段の回転軸は前記揚水管側へ延出し、前記揚水手段の回転軸は前記導水管側へ延出して設けられ、前記回転動力発生手段の回転軸に配設された第1の傘歯車と、前記揚水手段の回転軸に配設された第2の傘歯車と、前記第1の傘歯車及び前記第2の傘歯車に噛合する第3の傘歯車とからなる動力伝達手段によって、前記回転動力発生手段からの回転動力が、前記揚水手段へ伝達されると好適である。このように構成すると、第1の傘歯車、第2の傘歯車、第3の傘歯車からなる動力伝達手段を介して、回転動力発生手段の回転動力が揚水手段へ伝達され、揚水手段を回転させることができる。
【0010】
また、前記回転軸は、前記導水管及び前記揚水管以外で軸支され、少なくとも軸支された部分は水密性が保持されてなると好適である。このように構成すると、回転軸を水密性が保持されたベアリングによって軸支することができる。
【0011】
また、前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、水車であると好適である。このように構成すると、導水管内に導水された海水が、水車の周囲に設けられた羽根に衝突して、海水の圧力及び流速を回転動力に変換することができる。また、揚水管内に配設された水車が回転することにより、発電後の海水が揚水作用を受けて揚水される。
【0012】
また、前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、水流と略直交する方向に回転可能に配設され、回転軸が前記発電室側に延出して設けられ、前記回転動力発生手段の回転軸に配設された第1の傘歯車と、記揚水手段の回転軸に配設された第2の傘歯車と、端部に前記第1の傘歯車に噛合する第3の傘歯車と前記第2の傘歯車に噛合する第4の傘歯車を備えた回転可能な連結棒からなる動力伝達手段によって、前記回転動力発生手段からの回転動力が、前記揚水手段へ伝達されると好適である。このように構成すると、第1の傘歯車、第2の傘歯車、端部に第3の傘歯車と第4の傘歯車を備えた連結棒からなる動力伝達手段を介して、回転動力発生手段の回転動力が揚水手段へ伝達され、揚水手段を回転させることができる。
【0013】
また、前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、その下部に水密ケースを備え、該水密ケース内部には、前記第1の傘歯車、前記第2の傘歯車、前記第3の傘歯車、前記第4の傘歯車及び前記回転軸が収納され、前記回転動力発生手段側の前記水密ケースと前記揚水手段側の前記水密ケースとの間には、内部に前記連結棒が挿通された連結棒受が架設されていると好適である。このように構成すると、海水が浸入しない水密ケース及び連結棒受の内部で傘歯車及び連結棒を回転させることができる。
【0014】
また、前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、スクリュープロペラであると好適である。このように構成すると、導水管内に導水された海水が、スクリュープロペラの羽根に衝突して、海水の圧力及び流速の圧力を回転動力に変換することができる。また、揚水管内に配設されたスクリュープロペラが回転することにより、発電後の海水が揚水作用を受けて揚水される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の水力発電設備によれば、導水管内に海水の圧力及び流速により回転する回転動力発生手段が配設され、揚水管内に回転動力発生手段に連結されて回転動力発生手段の回転動力により回転する揚水手段が配設され、揚水手段が回転することによって発電後の海水が揚水される構成としていることにより、電気を使用することなく発電後の海水を揚水することができ、発電効率の良い水力発電設備を提供することが可能である。
また、海水を地下の発電室に落とし込んで発電を行い、発電後の海水を揚水し、引き潮時に貯水場から海に排水することにより、海水の潮位差を利用して継続的に発電を行うことができる水力発電設備を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0017】
図1,2は本発明の一実施形態に係るものであり、図1は水力発電設備の説明図、図2は図1の回転動力発生手段及び揚水手段の拡大説明図である。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る水力発電設備Sは、地下の発電室10に収納された水力タービン11(水力発電機)と、発電後の海水を貯水する貯水場POと、海面下に位置する取水口12から水力タービン11の近傍に位置する排水口13に向けて先細りするように配設された導水管Dと、発電室10に連通する流入口16から貯水場POに位置する流出口17に向けて先細りするように配設され、流出口17側に海面からいったん上方に突出した後、貯水場POの海面下に達するまで下方に湾曲した略下向きU字形状の湾曲部18を有した揚水管Yを備えている。また、導水管Dには回転動力発生手段としての水車30が内設され、揚水管Yには揚水手段としての水車130が内設されている。
【0019】
発電室10は岸壁近くの地下に設けられ、その内部に水力発電機としての水力タービン11を配設している。水力タービン11は、回転軸を中心にして回転自在な動翼列を有した水車であれば、その形状、大きさは限定されない。なお、本例では、ペルトン水車を採用しているが、これに限らずフランシス水車、プロペラ水車などを用いることも可能である。
【0020】
また、発電室10の真上の地上には変電所91が配置されている。変電所91の制御室では、水力タービン11や後述する開閉扉14の開閉操作等が行われる。さらに、発電室10には地上から作業者が出入りするエレベータ90が連通されている。なお、エレベータ90は、発電室10掘削のために掘削された立坑を利用したものである。
【0021】
また、導水管Dと揚水管Yは、一定距離だけ離間した状態で平行に配置されている。そして、発電室10の下部には、導水管Dの排水口13と、揚水管Yの流入口16とを垂直に連通し、水力タービン11から排出された海水を揚水管Y側へ流入させる連通管19が配設されている。
【0022】
本例では、導水管Dに、取水口12側の管径aが5.2m、排水口13側の管径bが3m 、長さが300mの絞り管を用いている。また、取水口12が海面から5〜10mの深さに配置されていることにより、引き潮時でも取水口12は海面下に位置するように維持される。本例においては、土中埋設状態での導水管Dの傾斜角度θは25゜としている。
【0023】
また、揚水管Yには、流入口16側の管径cが5.2m、流出口17側の管径dが3mの絞り管を用いている。土中埋設状態での揚水管Yの傾斜角度θは、導水管Dと同じく25゜としている。なお、導水管D及び揚水管Yの取水口12、排水口13、流入口16、流出口17の管径、管の長さ(全長)、埋設状態での傾斜角度は、上記数値に限定されるものではない。
【0024】
また、揚水管Yの近傍には、揚水された海水を溜める貯水場POが設けられている。貯水場POの周壁20,21は、コンクリートブロック等によって海岸付近に形成され、満潮時に海水が貯水空間に流れ込まない高さを有している。なお、本例では揚水管Y側の周壁20によって揚水管Yの湾曲部18が支持されている。
【0025】
そして、湾曲部18を支持する周壁20よりも海側に形成された周壁21の底部側には、引き潮時に海面Lから露出する開閉弁22aを備えた排水管22が連通されている。この排水管22は、引き潮時に、貯水場POに貯水された海水を海へ排水するためのものである。なお、図1中、記号Wは満潮時の海面、記号Lは干潮時の海面を示すものである。本例では、貯水場POを、略1日の発電で排水される海水を貯留可能な大きさとしているが、貯水場POの大きさはこれに限定されるものではない。
【0026】
また、導水管Dの取水口12付近には、不図示の電動モータにより導水管D内を開閉操作する開閉扉14が内設されている。なお、異物による水力タービン11の損傷を低減させるために、取水口12にフィルタを設けても良い。
【0027】
さらに、図1、図2に示すように、導水管Dの所定位置には、回転動力発生手段としての水車30が内設され、揚水管Yの所定位置には、揚水手段としての水車130が内設されている。そして、水車30と水車130は一本の回転軸32で連結されている。本例では、水車30,130を導水管D,揚水管Yの略中央部に設けているが、取り付け位置はこれに限るものではない。ただし、導水管D,揚水管Yの上流部から中央部の範囲が好ましい。
【0028】
また、水車30,130は、水流方向に回転可能なドラム形状とされている。本例の水車30,130は、水流に略直交する方向の長さ(幅)がその直径よりも小さいが、水車の大きさ、形状はこれに限定されるものではない。
【0029】
図2に示すように、水車30,130の周囲に設けられた羽根31,131は、水流に略直交する方向に区分されている。なお、水車30の羽根31は、水車30がどちらか一方の方向に回転し易いように、所定角度傾斜して配設されていると良い。また、羽根31として、中心側から外側へ湾曲した形状をなしたものを使用しても良い。これにより、導水管D内に導水された海水が、水車30の羽根31に衝突して、海水の圧力及び流速を回転動力に変換することができる。なお、水車130の羽根131は、特にこのような形状に形成されていなくても良いが、羽根31と同様に、所定角度傾斜して配設されたり、湾曲形状のものを使用しても良い。
【0030】
また、水車30,130には、水車30,130と共に回転する回転軸32,37,137が配設されている。なお、水車30,130が内設される導水管Dと揚水管Yとの間の部分には、中空間70が形成されており、水車30と水車130が回転軸32によって連結されている。
【0031】
また、回転軸32,37,137は、導水管D及び揚水管Y以外で軸支されている。本例では、回転軸32は略筒状の回転軸受33内に挿通され、回転軸37,137は略筒状の回転軸受38,138内に挿通されている。そして、回転軸32,37,137が回転軸受33,38,138の内部に設けられたベアリング75によって回転可能に軸支されている。
【0032】
本例では、水車30,130の羽根31,131が設けられていない側面部を2重構造としており、回転軸受33,38,138が固定される非回転部35,135と、羽根31,131が設けられた水車本体と連結し、非回転部35,135に対して回転する回転部34,134によって構成されている。なお、水車本体を挟んで設けられた一対の非回転部35,135は、所定箇所で連結部材36,136によって連結されている。
【0033】
また、回転軸32は、一端が中空間70側の回転部34に固定され、他端が中空間70側の回転部134に固定されている。そして、中空間70側の非回転部35,135の略中央には、回転軸受33の端部が固定され、回転軸受33内に回転軸32が挿通される。なお、回転軸受33は、導水管Dまたは揚水管Yの管周壁15を貫通しており、管周壁15にボルト・ナット等の公知の固定手段によって固定される。
【0034】
また、回転軸受33が固定されない方の非回転部35,135の略中央には、回転軸受38,138の一端が固定されている。なお、回転軸受38,138の他端は、導水管Dまたは揚水管Yの管周壁15を貫通し、管周壁15に固定されている。そして、回転軸受38,138の内部には、非回転部35,135から延出した回転軸37,137が挿通されている。
【0035】
これにより、導水管Dに流入した海水によって水車30が回転すると、回転軸32が水車30と共に回転し、回転軸32の回転によって水車130が回転させられる。
【0036】
なお、ベアリング部分は、不図示の軸封装置によって水密性が保持されている。また、回転軸受33,38,138が導水管D,揚水管Yの管周壁15を貫通する部分には、水密性を保持するためのシーリング材が装着されており、回転軸受33,38,138内部や中空間70に海水が浸入しないように構成されている。
【0037】
なお、水車30,130の構造、回転軸32,37,137及び回転軸受33,38,138の配設構造は本例に限定されるものではなく、公知の技術によって、導水管D内の水車30の回転動力が揚水管Y内の水車130へ伝達されるように構成されていれば良い。
【0038】
次に、本例に係る水力発電設備Sを利用した発電方法について説明する。まず、変電所91からの指令により開閉扉14を開けて取水口12から導水管Dに海水を流し込む。すると、導水管Dに流入した海水の圧力及び流速により水車30が流水方向に回転する。
【0039】
そして、水車30が回転すると回転軸32が回転し、回転軸32に連結された水車130が水車30と同じ方向に回転させられる。このように、水車30と水車130が回転軸32で連結されていることにより、導水管D内の水車30の回転動力が、回転軸32を介して揚水管Y内の水車130へ伝達される。
【0040】
導水管Dを流下する海水は、高低差から生じた位置エネルギーだけでなく、導水管Dを通過中、その絞り管構造によってもその流速が高められる。そして、高速で落とし込まれた海水により、発電室10内の水力タービン11が回転し、発電が行われる。
【0041】
発電後の海水は、発電室10から連通管19内を垂直に落下し、その後、方向転換して揚水管Yに流れ込む。このとき、水車130が回転していることにより、海水が水車130の回転による揚水力と、揚水管Yの絞り管構造による流速の増大化の作用により揚水され、貯水場POに排水される。
【0042】
このように、揚水管Y内に流れ込んだ海水は、その流速が、水車130の揚水作用により補足され、かつ絞り管構造により高まりながら押し上げられる。その結果、電気を使用することなく発電後の海水を揚水することができ、発電効率の良い水力発電設備Sを得ることができる。
【0043】
また、発電室10から貯水場POへ揚水された海水は、いったん貯水場POに貯水され、引き潮時に開閉弁22aを開くことで、排水管22を通して海に排水される。
【0044】
そして、揚水管Yの流出口17が取水口12側の海面の数m下に位置すること、さらに、貯水場POの海水を引き潮時に海に排水し、貯水場POの海面を取水口12側の海面よりも低くすることにより、継続的な発電を行うことが可能となっている。
【0045】
なお、本例では、海水の潮位差を利用して発電を行う例を示したが、水力発電設備Sを設ける場所は海に限定されるものではない。すなわち、本例の水力発電設備Sは、潮の満ち引きが起こる場所に設けられればよく、川や湖等の地上水を利用して発電を行うことも可能である。
【0046】
また、図3は別の例を示す回転動力発生手段及び揚水手段の拡大説明図である。なお、前記実施例と同一部材には、同一符号を付してその説明を省略する。図3に示すように、本例では、上述した実施例と同様に、導水管Dの所定位置には回転動力発生手段として水車30が内設され、揚水管Yの所定位置には揚水手段としての水車130が内設されている。なお、水車30,130は、水流方向に回転可能に配設されている。
【0047】
また、本例の水車30,130には、水車30,130と共に回転する回転軸42,142が配設されている。回転軸42,142は、中空間70側の回転部34,134の略中央から延出している。そして、回転軸42,142は、略筒状の回転軸受43,143に挿通され、回転軸受43,143の内部に設けられたベアリング75によって回転可能に軸支されている。
【0048】
なお、回転軸受43,143は、一端が中空間70側の非回転部35,135の略中央に固定され、他端が導水管D,揚水管Yの管周壁15を貫通して中空間70内に位置している。さらに、回転軸受43,143は管周壁15に固定されている。
【0049】
これにより、導水管Dに流入した海水によって水車30が回転すると、回転軸42が水車30と共に回転する。なお、水車30の回転軸42は揚水管Y側へ延出し、水車130の回転軸142は導水管Y側へ延出し、回転軸42,142の一端は、中空間70まで延出している。
【0050】
なお、ベアリング部分は、不図示の軸封装置によって水密性が保持されている。また、回転軸受43,143が導水管D,揚水管Yの管周壁15を貫通する部分には、水密性を保持するための、シーリング材が装着されており、回転軸受43,143内部や中空間70に海水が浸入しないように構成されている。
【0051】
そして、中空間70には、導水管D内の水車30の回転動力を揚水管Y内の水車130へ伝達するための動力伝達手段41が配設されている。動力伝達手段41は、水車30の回転軸42に配設され、水流方向に回転可能な第1の傘歯車と、水車130の回転軸142に配設され、水流方向に回転可能な第2の傘歯車と、第1の傘歯車及び第2の傘歯車に噛合し、水流と略直交する方向に回転可能な第3の傘歯車によって構成されている。なお、本例では、回転軸42に配設されに配設された第1の傘歯車を80a、回転軸142に配設された第2の傘歯車を80c、第1の傘歯車及び第2の傘歯車に噛合する第3の傘歯車を80bとする。
【0052】
中空間70には、一端が導水管Dの管周壁15に固定され、他端が揚水管Yの管周壁15に固定された支持部材46が配設されており、傘歯車80bは回転部材47を介して支持部材46に連結されている。なお、回転部材47は、一端が傘歯車80bに固定され、他端が支持部材46に回動可能に連結されている。
【0053】
このように構成すると、取水口12から導水管Dに海水を流し込むと、導水管Dに流入した海水の圧力及び流速により水車30が流水方向に回転する。そして、水車30が回転すると、水車30に連結された回転軸42が水車30と同じ方向に回転する。なお、本例では、水車30,回転軸42が図3中矢印A方向に回転する場合について説明する。回転軸42には傘歯車80aが配設されており、回転軸42が回転すると、傘歯車80aが水車30と同じ方向(図中矢印A方向)に回転する。
【0054】
また、傘歯車80aが図中矢印A方向に回転すると、傘歯車80bが図中矢印B方向へ回転する。さらに、傘歯車80bが回転することにより、傘歯車80cが図中矢印C方向へ回転し、回転軸142が回転する。そして、回転軸142が図中矢印C方向に回転することにより、回転軸142に連結された水車130が水車30と逆の方向(図中矢印C方向)に回転させられる。このように、本例では、導水管D内の水車30の回転動力が、3つの傘歯車80a,80b,80cからなる動力伝達手段41を介して揚水管Y内の水車130へ伝達される。
【0055】
そして、発電後の海水が揚水管Yに流れ込むと、水車130が図中矢印C方向へ回転していることにより、海水が水車130の回転による揚水力と、揚水管Yの絞り管構造による流速の増大化の作用により揚水され、貯水場POに排水される。このように、揚水管Y内に流れ込んだ海水は、その流速が、水車130の揚水作用により補足され、かつ絞り管構造により高まりながら押し上げられる。その結果、電気を使用することなく発電後の海水を揚水することができ、発電効率の良い水力発電設備Sを得ることができる。
【0056】
なお、本例では、傘歯車80a,80b,80cとして直歯傘歯車を使用しているが、斜歯傘歯車や曲歯傘歯車を使用しても良い。
【0057】
図4,5は本発明の他の実施形態に係るものであり、図4は水力発電設備の説明図、図5は図4の回転動力発生手段及び揚水手段の拡大説明図である。なお、前記実施例と同一部材には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
本例では、導水管Dに回転動力発生手段としてのスクリュープロペラ50が内設され、揚水管Yに揚水手段としてのスクリュープロペラ150が内設されている。図4に示すように、スクリュープロペラ50,150は、水流と略直交する方向に回転可能なように配設されている。なお、本例では、スクリュープロペラ50,150を導水管D,揚水管Yの略中央部に設けている。
【0059】
図5に示すように、スクリュープロペラ50,150は、ボス部56,156に複数の羽根51,151を取り付けることにより構成されている。なお、ボス部56,156の下側には回転軸52,152が取り付けられている。また、羽根51,151はボス部56,156側から外周側へ湾曲した形状をなしていると共に、ボス部56,156に所定角度傾斜して取り付けられている。これにより、海水がプロペラに衝突し、海水の圧力及び流速を回転動力に変換することができる。なお、スクリュープロペラ50,150の大きさ、形状は本例に限定されるものではない。
【0060】
また、スクリュープロペラ50,150の外周側には枠体53,153が配置されている。枠体53,153は、略C型断面の固定手段54,154によって導水管D,揚水管Yの管周壁15に固定されている。なお、本例の固定手段54,154はウェブ部分が導水管D,揚水管Yから突出し、地面の中に固定されている。
【0061】
また、枠体53,153には支持部材55,155が架設されている。なお、支持部材5,155は、スクリュープロペラを挟んで1対設けられている。そして、ボス部56,156が支持部材55,155の略中央部分に不図示のベアリング等を介して回動可能に連結されている。
【0062】
また、ボス部56,156には発電室10側に延出する回転軸52,152が取り付けられており、回転軸52,152の下端部には、第1の傘歯車,第2の傘歯車が配設されている。本例では、スクリュープロペラ50の回転軸52に配設された第1の傘歯車を80e、スクリュープロペラ150の回転軸152に配設された第2の傘歯車を80hとする。なお、傘歯車80e,80hは、水流と略直交する方向に回転可能なように配設されている。
【0063】
さらに、回転軸52,152が延出する側の支持部材55(不図示)には、水密性を保持した水密ケース65,165が配設されている。そして、導水管D側の水密ケース65と揚水管Y側の水密ケース165の間には、略筒状の連結棒受63が架設されている。連結棒受63は、導水管D,揚水管Yの管周壁15及び水密ケース65,165を貫通し、端部が水密ケース65,165内に位置するように配設され、その内部に連結棒62が挿通されている。本例の連結棒62は、連結棒受63の内部に設けられたベアリング75によって回転可能に支持されている。なお、連結棒受63は、導水管D,揚水管Yの管周壁15に固定されている。
【0064】
そして、水密ケース65内に位置する連結棒62の端部には、傘歯車80eと噛合すると共に水流方向に回転可能な第3の傘歯車が配設され、水密ケース165内に位置する連結棒62の端部には、傘歯車80hと噛合すると共に水流方向に回転可能な第4の傘歯車が配設されている。本例では、傘歯車80eと噛合する第3の傘歯車を80f、傘歯車80hと噛合する第4の傘歯車を80gとする。
【0065】
つまり、水密ケース65内には、スクリュープロペラ50から下方へ延出した回転軸52と、回転軸52の下端部に配設された傘歯車80eと、連結棒62の端部に配設され、傘歯車80eと噛合する傘歯車80fが収納されている。
【0066】
また、水密ケース165内には、スクリュープロペラ150から下方へ延出した回転軸152と、回転軸152の下端部に配設された傘歯車80hと、連結棒62の端部に配設され、傘歯車80hと噛合する傘歯車80gが収納されている。
【0067】
このように、本例では、傘歯車80e,80h,端部に傘歯車80fと傘歯車80gを備えた連結棒62からなる動力伝達手段61を介して、スクリュープロペラ50の回転動力がスクリュープロペラ150へ伝達されるように構成されている。
【0068】
なお、ベアリング部分は、不図示の軸封装置によって水密性が保持されている。また、水密ケース65,165の接続部分には、水密性を保持するためのシーリング材が装着されている。これにより、連結棒受63や水密ケース65,165内部に海水が浸入しないように構成されている。水密ケース65,165としては、アクリル製等の水密ケースを用いることができる。
【0069】
次に、本例に係る水力発電設備Sを利用した発電方法について説明する。なお、前記実施例と同様の部分についてはその説明を省略する。
【0070】
まず、開閉扉14を開けて取水口12から導水管Dに海水を流し込むと、海水の圧力及び流速によってスクリュープロペラ50が回転する。なお、本例では、スクリュープロペラ50が図5中矢印E方向に回転する場合について説明する。スクリュープロペラ50が図中矢印E方向に回転すると、スクリュープロペラ50に連結された回転軸52がスクリュープロペラ50と同じ方向に回転する。そして、回転軸52には傘歯車80eが配設されており、回転軸52が回転すると、傘歯車80eがスクリュープロペラ50と同じ方向(図中矢印E方向)に回転する。
【0071】
また、傘歯車80eが図中矢印E方向に回転すると、傘歯車80fが図中矢印F方向へ回転する。傘歯車80fが回転することにより、連結棒62が傘歯車80fと同じ方向(図中矢印F方向)へ回転し、傘歯車80gが図中矢印G方向へ回転する。そして、傘歯車80gが図中矢印G方向へ回転することにより、傘歯車80hが図中矢印H方向へ回転する。
【0072】
さらに、傘歯車80hが回転することにより、回転軸152が回転し、回転軸152に連結されたスクリュープロペラ150がスクリュープロペラ50と逆の方向(図中矢印H方向)に回転させられる。このように、本例では、導水管D内のスクリュープロペラ50の回転動力が、傘歯車80e,80h,端部に傘歯車80fと傘歯車80gを備えた連結棒62からなる動力伝達手段61を介して揚水管Y内のスクリュープロペラ150へ伝達される。
【0073】
なお、導水管Dを流下する海水は、高低差から生じた位置エネルギーだけでなく、導水管Dを通過中、その絞り管構造によってもその流速が高められ、発電室10内の水力タービン11を回転させることにより発電が行われる。
【0074】
そして、発電後の海水は、発電室10から連通管19内を垂直に落下し、その後、方向転換して揚水管Yに流れ込む。このとき、スクリュープロペラ150が図中矢印H方向へ回転していることにより、海水がスクリュープロペラ150の回転による揚水力と、揚水管Yの絞り管構造による流速の増大化の作用により揚水され、貯水場POに排水される。このように、揚水管Y内に流れ込んだ海水は、その流速が、スクリュープロペラ150の揚水作用により補足され、かつ絞り管構造により高まりながら押し上げられる。その結果、電気を使用することなく発電後の海水を揚水することができ、発電効率の良い水力発電設備Sを得ることができる。
【0075】
なお、本例では、スクリュープロペラ50が図中矢印E方向に回転し、スクリュープロペラ150が図中矢印H方向へ回転する例を示したが、羽根51の形状等を変えて、スクリュープロペラ50,150が本例と逆方向に回転するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態に係る水力発電設備の説明図である。
【図2】図1の回転動力発生手段及び揚水手段の拡大説明図である。
【図3】別の例を示す回転動力発生手段及び揚水手段の拡大説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る水力発電設備の説明図である。
【図5】図4の回転動力発生手段及び揚水手段の拡大説明図である。
【符号の説明】
【0077】
10 発電室
11 水力タービン(水力発電機)
12 取水口
13 排水口
14 開閉扉
15 管周壁
16 流入口
17 流出口
18 湾曲部
19 連通管
20,21 貯水場周壁
22 排水管
22a 開閉弁
30,130 水車(回転手段)
31,131 羽根
32,37,137 回転軸
33,38,138 回転軸受
34,134 回転部
35,135 非回転部
36,136 連結部材
41 動力伝達手段
42,142 回転軸
43,143 回転軸受
46 支持部材
47 回転部材
50,150 スクリュープロペラ(回転手段)
51,151 羽根
52,152 回転軸
53,153 枠体
54,154 固定手段
55,155 支持部材
56,156 ボス部
61 動力伝達手段
62 連結棒
63 連結棒受
65,165 水密ケース
70 中空間
75 ベアリング
80a,80b,80c,80e,80f,80g,80h 傘歯車
90 エレベータ
91 変電所
D 導水管
PO 貯水場
Y 揚水管
S 水力発電設備
W 満潮時の海面
L 干潮時の海面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を地下の発電室に落とし込んで発電を行い、発電後の海水を揚水して海に排水することにより、継続的に発電を行うことが可能な水力発電設備において、
満潮時に海水が貯水空間に流れ込まない高さの周壁を有し、該周壁の底部側に、引き潮時に海面から露出する開閉弁を備えた排水管が連通され、発電後の海水を貯水する貯水場と、
地下の発電室に収納された水力発電機と、
海面下に位置する取水口から前記水力発電機の近傍に位置する排水口に向けて先細りするように配設された導水管と、
前記発電室に連通する流入口から前記貯水場に位置する流出口に向けて先細りするように配設され、前記流出口側に海面からいったん上方に突出した後、前記貯水場の海面下に達するまで下方に湾曲した湾曲部を有した揚水管と、
前記導水管内に配設され、海水の圧力及び流速により回転する回転動力発生手段と、
該回転動力発生手段に連結されると共に前記揚水管内に配設され、前記回転動力発生手段の回転動力により回転し、発電後の海水を揚水する揚水手段と、を備えたことを特徴とする水力発電設備。
【請求項2】
前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、一本の回転軸で連結され、水流方向に回転可能に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の水力発電設備。
【請求項3】
前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、水流方向に回転可能に配設され、
前記回転動力発生手段の回転軸は前記揚水管側へ延出し、前記揚水手段の回転軸は前記導水管側へ延出して設けられ、
前記回転動力発生手段の回転軸に配設された第1の傘歯車と、前記揚水手段の回転軸に配設された第2の傘歯車と、前記第1の傘歯車及び前記第2の傘歯車に噛合する第3の傘歯車とからなる動力伝達手段によって、前記回転動力発生手段からの回転動力が、前記揚水手段へ伝達されることを特徴とする請求項1に記載の水力発電設備。
【請求項4】
前記回転軸は、前記導水管及び前記揚水管以外で軸支され、少なくとも軸支された部分は水密性が保持されてなることを特徴とする請求項2又は3に記載の水力発電設備。
【請求項5】
前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、水車であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の水力発電設備。
【請求項6】
前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、水流と略直交する方向に回転可能に配設され、その回転軸が前記発電室側に延出して設けられ、
前記回転動力発生手段の回転軸に配設された第1の傘歯車と、
前記揚水手段の回転軸に配設された第2の傘歯車と、
端部に前記第1の傘歯車に噛合する第3の傘歯車と前記第2の傘歯車に噛合する第4の傘歯車を備えた回転可能な連結棒からなる動力伝達手段によって、前記回転動力発生手段からの回転動力が、前記揚水手段へ伝達されることを特徴とする請求項1に記載の水力発電設備。
【請求項7】
前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、その下部に水密ケースを備え、該水密ケース内部には、前記第1の傘歯車、前記第2の傘歯車、前記第3の傘歯車、前記第4の傘歯車及び前記回転軸が収納され、前記回転動力発生手段側の前記水密ケースと前記揚水手段側の前記水密ケースとの間には、内部に前記連結棒が挿通された連結棒受が架設されていることを特徴とする請求項6に記載の水力発電設備。
【請求項8】
前記回転動力発生手段及び前記揚水手段は、スクリュープロペラであることを特徴とする請求項6又は7に記載の水力発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−281142(P2009−281142A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3935(P2007−3935)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507011356)シャーマン ホールディングス リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SHAMAN HOLDINGS LIMITED
【住所又は居所原語表記】12th Floor, Ruttonjee House, 11 Duddell Street, Central, Hong Kong
【Fターム(参考)】