説明

水及び水混和性有機溶媒中に懸濁する低濃度過酸化ベンゾイルを含む局所用医薬品製剤

皮膚に局所塗布する水溶性製剤であって、水と、水混和性有機溶媒と、過酸化ベンゾイルとを有し、前記有機溶媒の濃度は、前記水溶性製剤に過酸化ベンゾイルの安定した懸濁を前記製剤中に界面活性剤を含めることなく提供するのに十分な濃度であって、前記製剤中の水と有機溶媒の濃度の比率は、皮膚に塗布後の製剤中の前記過酸化ベンゾイルを飽和溶解度に保つのに十分な比率であって、前記製剤中の過酸化ベンゾイルの濃度は、5.0%に満たずかつ少なくとも1.0%w/wの濃度であることを特徴とする水溶性製剤である。前記製剤は、さらに、過酸化ベンゾイルに加え、ニキビの治療に効果的な化合物を含むこともある。本発明による前記水溶性製剤はニキビ及び酒さ(acne rosacea)の治療に有効なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚疾患治療を目的とし局所塗布する医薬品製剤に関する。特に本発明は過酸化ベンゾイルと任意に抗生物質等のニキビ抑制性のある化合物を含む製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過酸化ベンゾイルは、一般的にニキビと呼ばれる尋常性座瘡等の皮膚疾患の治療用の局所医薬品製剤に広く使用されている。また、局所塗布用抗生物質もニキビ等の皮膚疾患治療用の局所製剤に使用されている。ニキビ治療用に局所的に使用される抗生物質の例としてエリスロマイシン等のマクロライド系抗生物質、クリンダマイシンやリンコマイシン等のリンコマイシン系抗生物質がある。
【0003】
過酸化ベンゾイルと抗生物質を含む併用製品はこれまでも使用されてきたものであり、過酸化ベンゾイルか抗生物質かの何れかを単体で含む製剤と比べより高いニキビ抑制の有効性を提供する。クライン(Klein)の米国特許第4,497,794号は、ニキビ治療用に過酸化ベンゾイルとエリスロマイシンを含む併用製剤を開示する。クラインの'794号に記載の通りに概ね調合された組成物は、商品名ベンザマイシン(Benzamycin)(登録商標)(ダーミック・ラボラトリーズ社、ペンシルバニア州バーウィン)として市販されている。過酸化ベンゾイルとリンコマイシン系の抗生物質(例えばクリンダマイシン)の併用は、クラインの米国特許第5,767,098号、バルーディ(Baroody)の米国特許第5,733,866号、およびスティーフェル(Stiefel)の米国特許第5,466,446号に開示されている。クラインの'098号に記載の通りに概ね調合された組成物は、商品名ベンザクライン(Benzaclin)(登録商標)(ダーミック・ラボラトリーズ社)として、また、スティーフェルに記載の通りに概ね調合された組成物は、商品名デュアック(Duac)(登録商標)(スティーフェル・ラボラトリーズ社、フロリダ州コーラルゲイブルス)として市販されている。
【0004】
単独で又は抗生物質と併用して過酸化ベンゾイルを含む組成物を局所治療に用いた場合にまつわる問題の1つとして、塗布される部分への局部的な刺激がある。過酸化ベンゾイルは、濃度依存的な刺激を起こす可能性が示されてきた。Mills et al、International Journal of Dermatology、25(10):664−667(1986)、及びLassus、Current Medical Research and Opinion、7(6):370−373(1981)を参照。上記のそれぞれの製品は過酸化ベンゾイルを5%w/wの濃度で含むものであり、この濃度は刺激と関連するとされる。
【0005】
過酸化ベンゾイルは実質的に水に溶けない。過酸化ベンゾイルを含む組成物の塗布による刺激は、過酸化ベンゾイルの懸濁している部分によって引き起こされると特定されている。一方、溶解した過酸化ベンゾイルは、ほとんどあるいは全く皮膚への刺激を引き起こさない。シュワルツ(Schwarz)の米国特許第7,153,888号、およびデ・ビルズ(DeVillez)の米国特許第4,923,900号を参照。シュワルツは、過酸化ベンゾイルを含む組成物を開示し、前記組成物中の前記過酸化ベンゾイルの全ては有機溶媒中に溶解しているものである。過酸化ベンゾイルの溶解は過酸化ベンゾイルの劣化を促進するため、シュワルツは前記組成物中に抗酸化物質を含むことで前記溶液の安定性を向上することを開示している。
【0006】
シュワルツの1つの欠点は、過酸化ベンゾイルを溶解するには高濃度の有機溶媒を必要とすることである。高濃度の有機溶媒は皮膚を刺激する傾向を有し、特に皮膚脂質が可溶化することによる乾燥作用が原因で刺激される。シュワルツは表1から表3に様々な有機溶媒と過酸化ベンゾイルを含む組成物に関する複数の実施例を開示している。前記実施例のそれぞれにおける有機溶媒の濃度は前記組成物中の前記過酸化ベンゾイルの濃度の10倍を上回り、通常、15倍を上回る。
【0007】
デ・ビルズは、過酸化ベンゾイルと、水と、水混和性の有機溶媒であって水よりも揮発性が低くかつ前記過酸化ベンゾイルが溶解するような有機溶媒とを含む組成物を開示している。皮膚に塗布する前は前記過酸化ベンゾイルは前記組成物中に懸濁している。しかし皮膚に塗布されると、前記組成物中の水が前記有機溶媒に比べて比較的早く蒸発する。前記組成物の前記過酸化ベンゾイルは、それから前記有機溶媒にその場で溶解し、結果的に全ての水が蒸発した後は過酸化ベンゾイルの溶液となる。
【0008】
前記デ・ビルズの組成物が懸濁液から溶液へと変化するためには、前記組成物中の水が蒸発するのに十分な時間の間、前記組成物が皮膚の表面上にそのまま存在していなければならない。当該時間の間、前記過酸化ベンゾイルは前記組成物中に懸濁し、当該懸濁粒子は皮膚と接触して刺激を引き起こす可能性がある。更に、デ・ビルズは、シュワルツと同じく、比較的高濃度の有機溶媒を必要とするため、このような組成物による刺激の可能性を上昇させる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
驚くことに、5.0%の過酸化ベンゾイルを含む水溶性局所製剤の使用によって得られるものと実質的に類似するニキビ抑制の臨床的有効性が、水と水混和性有機溶媒との飽和水溶液中に、低濃度の過酸化ベンゾイルを懸濁状態で含む水溶性局所製剤を提供することによって得られることが発見された。本明細書におけるすべての%濃度は%w/wを意味する。本発明の前記製剤は、それに類似する5.0%過酸化ベンゾイル製剤を塗布する場合と比較して臨床的有効性を損なうことなく、製剤を塗布した場合に起因する皮膚への刺激を軽減する。
【0010】
1実施例において、本発明は、水と、水混和性有機溶媒と、過酸化ベンゾイルとを含む局所塗布用の医薬品製剤であって、前記製剤中の水と有機溶媒の濃度の比率は高く、過酸化ベンゾイルの濃度は低い医薬品製剤である。本明細書で使用される用語「低濃度」とは、製剤中の過酸化ベンゾイルの濃度を指す場合は5.0%w/wに満たないことを意味する。好ましくは前記医薬品製剤は水溶性ゲル製剤である。好ましくは前記医薬品製剤は界面活性剤を含まないものである。
【0011】
前記過酸化ベンゾイルは、均一的な懸濁状態で前記製剤中に分散している。好ましくは前記懸濁過酸化ベンゾイルは平均粒子サイズが100ミクロンに満たないものであり、より好ましくは1ミクロンから50ミクロンの間、さらに最も好ましくは2.5ミクロンから30ミクロンの間であるものである。必然的に、前記過酸化ベンゾイルの一部は前記有機溶媒に溶解し、前記過酸化ベンゾイルのごく一部が前記水に溶解しているものとなる。従って前記製剤は過酸化ベンゾイルの飽和溶液となり、過酸化ベンゾイルの溶解濃度は、前記有機溶媒を含まない水に溶解しているものより高くなるものである。
【0012】
好ましい実施形態において、ただし必ずしもこの限りではないが、本発明の前記製剤はさらに少なくとも1つのニキビの治療に有効な化合物を含む。ニキビ抑制作用のある前記化合物は、前記製剤中に懸濁するか溶解していてもよい。好ましくは、ニキビ抑制作用の前記化合物は水溶性であり、当該製剤中で溶解しているものがよい。ニキビ抑制作用のあるこのような好ましい化合物の1つは抗生物質である。好ましい抗生物質はマクロライド系抗生物質、及びリンコマイシン系抗生物質であり、マクロライド系抗生物質はエリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、チルミコシン、およびタイロシン、リンコマイシン系抗生物質はクリンダマイシン、およびリンコマイシンを含むものである。本発明にかかる前記製剤において、過酸化ベンゾイルと併用して使用するのにあたり特に好ましい抗生物質は、塩酸クリンダマイシン、又はリン酸クリンダマイシン等のクリンダマイシンである。更なる局所用ニキビ抑制有効成分であって、抗生物質の含有の有無にかかわらず本発明の前記製剤に含めることができるものとして、サリチル酸、アゼライン酸、ナイアシンアミド、尿素、および、トレチノイン、アダパレン、タザロテン等のレチノイドが含まれる。
【0013】
前記更なるニキビ抑制化合物が本発明にかかる前記製剤に含まれる場合には、過酸化ベンゾイルの非存在下で明らかなニキビ抑制効果が表れる濃度で存在することが好ましい。例えばもしシリンダマイシンが本発明の前記製剤に存在する場合は、前記シリンダマイシンの濃度は少なくとも0.5%が好ましく、より好ましい濃度は1%である。更に高いシリンダマイシンの濃度、例えば2.5%か、5.0%、若しくはそれ以上の濃度で前記製剤中に使用されてもよい。
【0014】
本発明にかかる前記製剤の前記有機溶媒は以下の性質を有する:
(1)水混和性がある
(2)0℃から40℃の間の温度で過酸化ベンゾイルと化学的に反応しない
(3)0℃から40℃の間の温度で液体である
(4)少なくとも0.1%の濃度で、外界温度において、過酸化ベンゾイルを溶解可能である
(5)界面活性剤の非存在下で水溶性ゲル状の過酸化ベンゾイルを分散可能である
【0015】
本発明にかかる前記製剤の好ましい有機溶媒の例として、多価アルコールとして知られるポリオールがある。ポリオールの代表的な例はグリコール及び糖アルコールを含む。本発明の前記製剤用に好ましいポリオールは、エトキシジグリコール等のポリエーテルグリコール、及びプロピレングリコールを含む。好ましい水混和性有機溶媒はプロピレングリコールである。本願発明者はHPLC分析によって過酸化ベンゾイルが室温で100%プロピレングリコールに0.2%から0.3%w/wの濃度で溶けることを測定した。第2の好ましい有機溶媒はエトキシジグリコールであり、商品名トランスクトール(Transcutol)(登録商標)(ガテフォッセ社、フランス、サンプリエスト)等として市販されている。HPLC分析によると、過酸化ベンゾイルは室温でエトキシジグリコールに約4.9%の濃度で溶けると測定された。もう1つの好ましい有機溶媒は、PEG400等のポリエチレングリコールである。
【0016】
前記製剤中の前記有機溶媒の濃度は、界面活性剤を含まない水溶性の流体中において、安定的な過酸化ベンゾイルの懸濁を提供するのに十分高いものであるべきである。また、前記有機溶媒の濃度は、前記製剤から全ての水が除去された後、前記製剤中の前記過酸化ベンゾイルの全てが溶解するときの濃度より低いものであるべきである。概ね、前記有機溶媒の濃度は前記製剤中の過酸化ベンゾイルの濃度の1から4倍の間であるべきである。
【0017】
さらに、前記製剤中の水と有機溶媒の濃度の比率は高くあるべきである。これは、前記製剤を塗布した後それに続いて水が前記製剤から蒸発し皮膚に残った製剤における前記過酸化ベンゾイルを、飽和溶解度か若しくはその付近に保ち、それによって皮膚上に残った製剤中の前記過酸化ベンゾイルの熱力学的活量を最大にするためである。従って、本発明の前記製剤における水と前記有機溶媒の相対濃度は、少なくとも7:1、例えば少なくとも9:1又は10:1、好ましくは少なくとも12:1、1、及び最も好ましくは少なくとも20:1、例えば98:1までであることが好まれる
【0018】
前記製剤中の過酸化ベンゾイルの濃度は5.0%よりも少ない量であり、すなわち、ニキビの兆候及び、又は症状を治療するのに有効な量である。本発明の前記製剤における過酸化ベンゾイルの濃度では、5.0%の過酸化ベンゾイルを含有する製剤に比べ、皮膚への刺激は軽減される。従って1.0%から4.5%の間の過酸化ベンゾイルの濃度が本発明に適している。好ましい過酸化ベンゾイルの濃度の範囲は2.0%から3.5%の間である。最も好ましい過酸化ベンゾイルの濃度は約2.5%であり、すなわち2.3%から2.7%の間である。
【0019】
前記製剤は、主成分として水を含む多くの局所製剤の種類の内の1つであり、液剤、ゲル製剤、クリーム製剤、スプレー製剤、発泡製剤等が含まれる。必須ではないが、前記製剤は水溶性ゲルの状態であることが好まれる。従って、本発明による前記製剤はゲル化剤又は増粘剤を含むことがある。水分散性であるゲル化剤は皮膚のような上皮組織に使用するのに適しており、実質的に均一な濃度の水溶性ゲル状態であれば本発明の前記組成物での使用に適している。好ましいゲル化剤の1つはヒドロキシプロピルセルロースであり、例えば商品名KLUCEL(登録商標)(ヘラクレス・インコーポレーテッド社、アメリカ合衆国、デラウェア州ウィルミントン)として市販されている。もう1つの好ましいゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロースであり、例えば商品名NATROSOL(登録商標)(ヘラクレス・インコーポレーテッド)として市販されている。その他の適するゲル化剤は、カルボマーとしても知られているカルボキシビニルポリマーであり、例えば商標名CARBOPOL(登録商標)934、940、941、980、及び981(B.F. Goodrich Co.社、アメリカ合衆国、オハイオ州アクロン)やETD2020(商標)、及びULTRZ(登録商標)(Noveon、Inc.社、アメリカ合衆国、オハイオ州クリーブランド)として市販されているものがある。これらに加え、適するゲル化剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、アルギン酸プロピレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びキサンタンやカラギーナンなどの天然のポリマーガムが含まれる。前記組成物中のゲル化剤の濃度は、いくつかの因子によって変化し得るものであり、前記因子とはBPO懸濁物の望ましい安定性の度合いやゲル組成物の望ましい粘度が含まれる。
【0020】
必要に応じて、本発明の製剤はさらに製剤中に一般的に使用され当業者に周知な、かつ医薬品として許容される賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤として例えば、保湿剤、皮膚軟化剤、pH安定剤、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤などが含まれる。
【0021】
本発明の製剤は、皮膚の患部、つまり顔面、首、背中、及び腰などに前記製剤を塗布することによってニキビを治療するのに使用することができる。前記製剤は、ニキビの症状を改善するのに十分な期間の間1日1度かそれ以上塗布することが好ましい。驚くことに、過酸化ベンゾイルを2.5%含む本発明の前記製剤は、過酸化ベンゾイルを5.0%含む製剤によって得られるものと同等の有効性を有することが発見された。これら両方の製剤はクリンダマイシン1%の抗生物質を含むものである。更に驚くべきことに、この同等の有効性は、本発明の前記製剤は1日1度のみ、過酸化ベンゾイルを5.0%含む製剤は1日2度それぞれ塗布した場合に観察されたものである。
【0022】
本発明の前記製剤は、酒さ(acne rosacea)の治療にも使用することができる。酒さの治療を行うには、本発明の製剤を1日1度かそれ以上患部に塗布し酒さの兆候や症状が改善するまで十分な期間の間塗布することが好ましい。
【0023】
本発明の製剤は、本発明の成分が混合され医薬品製剤を提供するようなあらゆる方法によって調整することができる。例えば過酸化ベンゾイルの懸濁は、水、前記水混和性有機溶媒、および過酸化ベンゾイルを混合して調整される。好ましくはそれらの混合物に例えば攪拌・超音波分解・製粉及び、又は振動を加えることによって混ぜ合わされ、それにより均一な過酸化ベンゾイル粒子の懸濁が水及び有機溶媒中に生成される。付加的な成分としては、例えばゲル化剤やその他の賦形剤を前記均一な懸濁が作り出される前かその後のどちらかに添加してもよい。
【0024】
付加的なニキビ抑制薬剤を前記製剤に含有させる場合には、過酸化ベンゾイルの懸濁が生成される後かその前に他の成分と混合してもよい。代替え方法としては、前記ニキビ抑制薬剤の水溶性溶液(例えばクリンダマイシン)を提供し、当該溶液と前記過酸化ベンゾイルの懸濁を混合し最終製剤を得る方法がある。
【0025】
本発明はさらに下記の実施例によって図示されるが、これらは例示的なものであり限定を意図するものではない。
【0026】
実施例1−本発明の例示的な製剤
本発明の医薬品製剤を図1に示される以下の成分を含むように製剤した。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例2−本発明の例示的な製剤
過酸化ベンゾイルに加えニキビ抑制薬剤を含む本発明の医薬品製剤を、図2に示される以下の成分を含むように製剤した。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例3−比較有効性
前記実施例2の水溶性ゲル製剤であり、過酸化ベンゾイル2.5%、プロピレングリコール5%、水89%、およびクリンダマイシン1%を含む前記水溶性ゲル製剤のニキビ病変に対するその有効性を399名の患者が治療される大規模な臨床調査においてテストした。本発明による製剤を製剤Aとする。過酸化ベンゾイル5.0%、プロピレングリコール10%、水82.5%、およびクリンダマイシン1.0%を含む類似の水溶性ゲル製剤を調整し、ニキビ病変に対するその有効性をよく似た設定の第2の臨床調査でテストした。この製剤(本発明によるものではない)を製剤Bとする。これらの結果を過酸化ベンゾイル5.0%、クリンダマイシン1%、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(界面活性剤)、及び水を含む水溶性ゲル市販製品(BenzaClin(登録商標)局所ゲル、ダーミック・ラボラトリーズ社、ブリッジウォーター、ニュージャージー州)の有効性について処方情報に提供されたデータと比較した。本先行技術製剤を製剤Cとする。製剤AおよびBは界面活性剤を含まない。製剤Aは1日1回のみ塗布したが、製剤B及びC(それぞれ過酸化ベンゾイルを5.0%含む)は、12週間の治療期間中1日2回塗布した。製剤Aを12週間の塗布の後にテストした。製剤B及びCのデータは10週間の塗布の後のものである。
【0031】
被験者は製剤B及びCの場合は1日2回、製剤Aの場合は1日1回顔面に塗布するよう指示された。製剤B及びCは10週間後、製剤Aは12週間後に炎症性病変及び非炎症性ニキビ病変の平均軽減率を測定した。炎症性病変(膿疱と丘疹)の軽減率は炎症性病変数の合計の基準値から当該調査終了時点(10週間又は12週間後)の炎症性病変数の合計値を差引いた値に100を掛け、かつ前記炎症性病変数の合計の基準値によって割ることで計算した。非炎症性病変は開放面皰及び閉鎖面皰を有し、非炎症性病変の軽減率は同じ方法によって計算した。当該ニキビ調査の結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3のデータは過酸化ベンゾイルを2.5%だけ含む製剤Aの有効性が、製剤B及びCの有効性と似通っていることを示す。これらの結果は製剤Aを1日1度しか塗布せず、一方製剤BおよびCは1日2度塗布された点について特に驚くべき結果である。
【0034】
実施例4−刺激の可能性
実施例3の製剤AおよびBはそれぞれ過酸化ベンゾイルと1.0%のクリンダマイシンを含み、これら2つの製剤の刺激の可能性の比較を検証するためのテストが行われた。本発明による製剤Aは過酸化ベンゾイルを2.5%、過酸化ベンゾイルの濃度の2倍のプロピレングリコール、プロピレングリコールの濃度の17.8倍の水を含む。製剤Bは過酸化ベンゾイルを5.0%、過酸化ベンゾイルの濃度の2倍のプロピレングリコール、プロピレングリコールの濃度の8.25倍の水を含む。
【0035】
ゲル製剤A及びBは33の健康な被験者の背中に、3週間の間1週間に3回別々の閉鎖性パッチの下に塗布した。それぞれの塗布について、それぞれの塗布から48時間後に刺激や炎症の兆候を評価者によって観察し、評価尺度の0(炎症の兆候なし)から4(浮腫及び水疱形成がみられる紅斑)を基準とする刺激の標準化評点方式を用いてスコアを決定した。本調査からのデータは、本発明の製剤Aの使用は製剤Bの使用と比較して累積炎症スコア全体から33%の軽減を示した。
【0036】
本明細書に記載される本発明のさらなる変更、使用、及び応用は当業者にとって明確なものである。そのような変更は上記の記述及び以下の請求項に包含されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に局所塗布する水溶性製剤であって、水と、水混和性有機溶媒と、過酸化ベンゾイルとを有し、前記有機溶媒の濃度は、前記製剤中に界面活性剤を含めることなく前記水溶性製剤中において安定な過酸化ベンゾイル懸濁物を与えるのに十分な濃度であって、前記製剤中の水と有機溶媒の濃度の比率は、皮膚に塗布後の製剤中の前記過酸化ベンゾイルを飽和溶解度に保つのに十分な比率であって、前記製剤中の過酸化ベンゾイルの濃度は、5.0%未満かつ少なくとも1.0%w/wの濃度であることを特徴とする水溶性製剤。
【請求項2】
請求項1記載の水溶性製剤であって、過酸化ベンゾイルの濃度は2.0%から3.5%w/wの間である、水溶性製剤。
【請求項3】
請求項2記載の水溶性製剤であって、過酸化ベンゾイルの濃度は約2.5%w/wである、水溶性製剤。
【請求項4】
請求項1記載の水溶性製剤であって、前記有機溶媒はポリオールである、水溶性製剤。
【請求項5】
請求項4記載の水溶性製剤であって、前記ポリオールはプロピレングリコールである、水溶性製剤。
【請求項6】
請求項1記載の水溶性製剤であって、前記有機溶媒の濃度は、前記製剤から全ての水を除去した後の製剤中に全ての前記過酸化ベンゾイルが溶解するときの有機溶媒の濃度よりも低いものである、水溶性製剤。
【請求項7】
請求項1記載の水溶性製剤であって、前記有機溶媒の濃度は、前記製剤中における前記過酸化ベンゾイルの濃度の1から4倍である、水溶性製剤。
【請求項8】
請求項1記載の水溶性製剤であって、前記製剤中の水の有機溶媒に対する比率(w/w)は少なくとも7:1である、水溶性製剤。
【請求項9】
請求項8記載の水溶性製剤であって、前記比率は少なくとも10:1である、水溶性製剤。
【請求項10】
請求項9記載の水溶性製剤であって、前記比率は少なくとも20:1である、水溶性製剤。
【請求項11】
請求項1記載の水溶性製剤であって、当該水溶性製剤は、界面活性剤を含まないものである、水溶性製剤。
【請求項12】
請求項1記載の水溶性製剤であって、当該水溶性製剤は、界面活性剤を含むものである、水溶性製剤。
【請求項13】
請求項1記載の水溶性製剤であって、この水溶性製剤は、さらに、水分散性ゲル化剤を有するものである、水溶性製剤。
【請求項14】
請求項1記載の水溶性製剤であって、この水溶性製剤は、さらに、過酸化ベンゾイルに加えて、ニキビの治療に有効な化合物を有するものである、水溶性製剤。
【請求項15】
請求項14記載の水溶性製剤であって、前記化合物は水に溶けるものである、水溶性製剤。
【請求項16】
請求項14記載の水溶性製剤であって、前記化合物は抗生物質である、水溶性製剤。
【請求項17】
請求項16記載の水溶性製剤であって、前記抗生物質は、マクロライド系若しくはリンコマイシン系の抗生物質である、水溶性製剤。
【請求項18】
請求項17記載の水溶性製剤であって、前記抗生物質はクリンダマイシンである、水溶性製剤。
【請求項19】
皮膚に局所塗布する水溶性製剤を調製する方法であって、水と、水混和性有機溶媒と、過酸化ベンゾイルとを混合する工程を有し、混合物中の前記有機溶媒の混合濃度は、前記製剤中に界面活性剤を含めることなく前記水溶性製剤において安定した過酸化ベンゾイル懸濁物を与えるのに十分な濃度であって、前記製剤中に混合される水と有機溶媒の濃度の比率は、皮膚に塗布後の製剤中の前記過酸化ベンゾイルを飽和溶解度に保つのに十分な比率であって、前記製剤中に混合される過酸化ベンゾイルの濃度は、5.0%未満かつ少なくとも1.0%w/wの濃度であることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法であって、過酸化ベンゾイルの濃度は2.0%から3.5%w/wの間である、方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、過酸化ベンゾイルの濃度は約2.5%w/wである、方法。
【請求項22】
請求項19記載の方法であって、前記有機溶媒はポリオールである、方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法であって、前記ポリオールはプロピレングリコールである、方法。
【請求項24】
請求項19記載の方法であって、前記有機溶媒の混合濃度は、前記製剤から全ての水を除去した後の製剤中に全ての前記過酸化ベンゾイルが溶解するときの有機溶剤の濃度よりも低いものである、方法。
【請求項25】
請求項19記載の方法であって、前記有機溶媒の混合濃度は、前記製剤中に混合される前記過酸化ベンゾイルの濃度の1から4倍である、方法。
【請求項26】
請求項19記載の方法であって、前記製剤中に混合された水に対する有機溶媒の比率(w/w)は少なくとも7:1である、方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法であって、前記比率は少なくとも10:1である、方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法であって、前記比率は少なくとも20:1である、方法。
【請求項29】
請求項19記載の方法であって、前記製剤中に界面活性剤は混合されない方法。
【請求項30】
請求項19記載の方法であって、前記製剤中に界面活性剤が混合される方法。
【請求項31】
請求項19記載の方法であって、この方法は、さらに、前記製剤中に水分散性ゲル化剤を有するものである、方法。
【請求項32】
請求項19記載の方法であって、この方法は、さらに、過酸化ベンゾイルに加えて、ニキビの治療に有効な化合物を有するものである、方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法であって、前記化合物は水に溶けるものである、方法。
【請求項34】
請求項32記載の方法であって、前記化合物は抗生物質である、方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法であって、前記抗生物質は、マクロライド系若しくはリンコマイシン系の抗生物質である、方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法であって、前記抗生物質はクリンダマイシンである、方法。
【請求項37】
ニキビ治療用の方法であって、水と、水混和性有機溶媒と、過酸化ベンゾイルとを有する、皮膚への局所塗布用水溶性製剤を皮膚の患部に塗布する工程を有し、前記有機溶媒の濃度は、前記製剤中に界面活性剤を含めることなく前記水溶性製剤に安定した過酸化ベンゾイル懸濁物を提供するのに十分な濃度であって、前記製剤中の水と有機溶媒の濃度の比率は、皮膚に塗布後の製剤中の前記過酸化ベンゾイルを飽和溶解度に保つのに十分な比率であって、前記製剤中の過酸化ベンゾイルの濃度は、5.0%未満かつ少なくとも1.0%w/wの濃度であることを特徴とする、方法。
【請求項38】
請求項37記載の方法であって、前記水溶性製剤の過酸化ベンゾイルの濃度は2.0%から3.5%w/wの間である、方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法であって、過酸化ベンゾイルの濃度は約2.5%w/wである、方法。
【請求項40】
請求項37記載の方法であって、前記有機溶媒はポリオールである、方法。
【請求項41】
請求項40記載の方法であって、前記ポリオールはプロピレングリコールである、方法。
【請求項42】
請求項37記載の方法であって、前記有機溶媒の濃度は、前記製剤から全ての水を除去した後の製剤中に全ての前記過酸化ベンゾイルが溶解するときの有機溶媒の濃度よりも低いものである、方法。
【請求項43】
請求項37記載の方法であって、前記有機溶媒の濃度は、前記製剤中の前記過酸化ベンゾイルの濃度の1から4倍である、方法。
【請求項44】
請求項37記載の方法であって、前記製剤中の水に対する有機溶媒の比率(w/w)は少なくとも7:1である、方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法であって、前記比率は少なくとも10:1である、方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法であって、前記比率は少なくとも20:1である、方法。
【請求項47】
請求項37記載の方法であって、前記水溶性製剤は界面活性剤を含まない方法。
【請求項48】
請求項37記載の方法であって、前記水溶性製剤は界面活性剤を含む方法。
【請求項49】
請求項37記載の方法であって、この方法は、さらに、前記製剤中に水分散性ゲル化剤を有するものである、方法。
【請求項50】
請求項19記載の方法であって、前記製剤は過酸化ベンゾイルに加えてニキビの治療に有効な化合物をさらに有するものである、方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法であって、前記化合物は水に溶けるものである、方法。
【請求項52】
請求項50記載の方法であって、前記化合物は抗生物質である、方法。
【請求項53】
請求項52記載の方法であって、前記抗生物質は、マクロライド系若しくはリンコマイシン系の抗生物質である、方法。
【請求項54】
請求項53記載の方法であって、前記抗生物質はクリンダマイシンである、方法。

【公表番号】特表2011−522820(P2011−522820A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512469(P2011−512469)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/003367
【国際公開番号】WO2009/148584
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510061667)ドウ ファーマシューティカル サイエンシーズ、インク. (7)
【Fターム(参考)】