説明

水噴射装置

【課題】管路内のケーブル布設部位に堆積する堆積物を効率よく破砕できるようにする。
【解決手段】内部にケーブルを布設された管路の開口部から管路内に挿入され、管路内のケーブル布設部位に高圧水を噴射する水噴射装置であって、一端を閉塞されるとともに、一端側の所定部に噴射孔71を設けられ、他端から一端に水を送水される導水部100と、噴射孔71の反対側から導水部100を支持する支持部101とを備え、導水部100の一端の噴射孔71からケーブル布設部位に高圧水を噴射するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、埋没された管路内に布設された地下ケーブルの撤去作業に適用可能な水噴射装置に関する。詳しくは、閉塞された一端側の所定部に噴射孔を設けられ、他端から水を送水される導水部を、噴射孔の反対側から支持する支持部を備え、導水部の噴射孔からケーブル布設部位に高圧水を噴射するようにして、噴射孔の反対側の支持部が、管路内に押し当てられた状態を保持できるようにするとともに、ケーブル布設部位に堆積する堆積物を効率よく破砕できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
現在、特に都市部では、安全性や美観を向上する為、架空線に替えて地下ケーブル(地中線)を布設する場合が増えている。
【0003】
地下ケーブルは、管路式、埋没式、暗きょ式等の布設方式で布設される。例えば管路式では、ヒューム管、石綿セメント管、鋼管等の管材による管路を、例えば1.2m程度の埋没深さで布設するとともに要所にマンホールを築造し、管路の内部にケーブルを挿入するようになされる。ケーブルには、油入ケーブルやCVケーブル等が使用される。
【0004】
管路内に挿入されたケーブルを経年等により取替、撤去する場合は、マンホール下に位置する管路の接合部を分断し、分断された管路の開口部からケーブルを引き抜くようにすることがある。しかし、管路内には、長年を掛けて地下水に含まれるカルシウム等が浸透し、ケーブルと管路との間に堆積して両者を固着させている場合がある。
【0005】
その場合、ケーブルの撤去時に管路の開口部からケーブルを引き抜くことができないので、100m〜400m程度もあるマンホール間の管路内に調査用カメラを挿入して堆積物が付着する部分を確認し、付着部上部の路面を開削して管路を更に切断し、堆積物を除去するようにしている。道路の開削工事をする場合は、工事許可用の申請期間が必要になるとともに、工事期間及び多額の工費が必要となる。
【0006】
こうした開削工事に替えて、ケーブルを引き抜く前に、高圧水で管路内を清掃する方法がある。このような清掃に適用可能な装置として、特許文献1に示すような管内清掃具が開示されている。この管内清掃具によれば、管内清掃具の前端から後端にかけて形成される断面略C字形状のケーブルガイド溝と、ケーブルガイド溝を覆う円弧状の板体でなるカバー体とを備え、管路内を清掃する場合、まず、ケーブルガイド溝にケーブルを係合されるとともに、ケーブルを覆うようにカバー体を取り付けられて、管内に挿入される。次に、外周に設けられた噴出孔から高圧水を放射状に噴出して清掃を開始するようになされる。このように構成すると、ケーブルを高圧水から保護できるので、ケーブルを傷付けることなく、ケーブルが布設された管内を清掃できるようになるというものである。
【0007】
【特許文献1】特開2005−21799号公報(第4及び5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に係る管内清掃具によれば、ケーブルを保護するカバー体の外周が管体と接して推進するので、カバー体が摩擦により損傷することが想定される。また、高圧水を放射状に噴出するので、管路内のケーブル布設部位に向けて効率よく高圧水を噴射することができない。従って、管路とケーブルとの間で固化した堆積物を破砕できずに、清掃具が管路内を推進できなくなるおそれがある。
【0009】
更に、清掃具を管内に挿入するにあたり、カバー体を外してから、ケーブルにケーブルガイド溝を係合して、カバー体をネジで取り付ける必要があるので、清掃を開始するまでの準備に手間が掛かるという問題もある。そこで本発明は、上述の問題に鑑み創作されたものであり、ケーブル布設部位に堆積する堆積物を効率よく破砕できるようにした水噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る水噴射装置は、内部にケーブルを布設された管路の開口部から管路内に挿入され、当該管路内のケーブル布設部位に高圧水を噴射する水噴射装置であって、一端を閉塞されるとともに、一端側の所定部に噴射孔を設けられ、他端から一端に水を送水される導水部と、噴射孔の反対側から導水部を支持する支持部とを備え、導水部の一端の噴射孔からケーブル布設部位に高圧水を噴射することを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る水噴射装置によれば、閉塞された一端側の所定部に噴射孔を有して、他端から水を送水される導水部が、噴射孔の反対側から支持部に支持され、管路内のケーブル布設部位に高圧水を噴射するようになされる。従って、噴射孔の反対側の支持部が、噴射された水の水圧で管路内に押し当てられた状態を保持できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る水噴射装置によれば、閉塞された一端側の所定部に噴射孔を設けられ、他端から水を送水される導水部を、噴射孔の反対側から支持する支持部を備え、導水部の一端の噴射孔からケーブル布設部位に高圧水を噴射するものである。
【0013】
この構成により、噴射孔の反対側の支持部が、噴射された水の水圧で管路内に押し当てられた状態を保持できるようになる。従って、支持部に支持された導水部が、噴射孔の噴射位置及び噴射角度を維持できる。これにより、ケーブル布設部位に的確に高圧水を噴射できるので、ケーブル布設部位に堆積する堆積物を効率よく破砕できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、この発明に係る実施の形態としての水噴射装置について、図面を参照しながら説明をする。図1は、本発明の実施の形態としての堆積物除去装置1の構成例を示す斜視図である。図1に示す堆積物除去装置1は、水噴射装置の一例を構成し、例えば地下ケーブルの撤去作業時に、内部にケーブルを布設された管路の一端から、管路内に挿入されるものである。
【0015】
堆積物除去装置1は、管路内のケーブル布設部位に高圧水を噴射し、管路とケーブルとの間に固着する堆積物を除去するようになされる。堆積物除去装置1は、高圧水を管路内に導水する導水部100と、導水部100を支持する支持部101とで構成される。
【0016】
導水部100は、ホース70と、ホース用のヘッド72とを備えている。導水部100には、高圧水用の給水ポンプ73(図5参照)が連結される。給水ポンプ73は、加圧送水装置の一例を構成し、例えば、搬送車に搭載された給水タンクに連結されて、給水タンクの水を所定の水圧に加圧して後段に送水する。給水ポンプ73の後段には、ホース70が連結される。
【0017】
ホース70は、一端を閉塞されるとともに他端を給水ポンプ73に連結されて、他端から一端に水を送水されるものである。ホース70は、例えば100m〜400mの長さを有し、他端から送水される水を管路内に導水する。ホース70の一端には、ヘッド72が連結される。
【0018】
ヘッド72は、例えば金属製のホース用ヘッドで構成され、ホース70の一端を閉塞するものである。この例のヘッド72は、一方の側面に噴射孔71を有している。噴射孔71は、導水部100の導水方向であるとともに、堆積物除去装置1の推進方向である矢印線A1に示す方向を前方向としたとき、斜め後方向に向けて開孔されている。ここで導水方向とは、ホース70内を水が流れる方向である。
【0019】
給水ポンプ73から送水された水は、ホース70により管路内に導水され、ヘッド72の噴射孔71から管路内に噴射される。このように構成される導水部100は、この例では左右一対で設けられ、噴射孔71の反対側から支持部101に支持される。
【0020】
支持部101は、導水部100の上部側から、この例ではホース70を左右に把持する。支持部101は、噴射孔71からケーブル布設部位に噴射される高圧水5で浮き上がり、管路の内壁に押し当てられた状態を保持するようになされる(図4参照)。また、支持部101は、高圧水5が斜め後方向に噴射されることにより、矢印線A1に示す推進方向に推進する。つまり、高圧水5は、ケーブル布設部位に固着する堆積物を順次破砕するとともに、支持部101の状態を保持し、更に堆積物除去装置1を管路内で推進させる(図5参照)。
【0021】
支持部101は、フレーム10と、4つの配管バンド50及びブラケット60とを備えている。フレーム10は、推進方向に垂直な扇形状の推進具11と、推進方向に平行な連結部17、翼部18及び19とで構成される。推進具11は、円弧状の支持部材12と、棒状の支持部材13及び14と、2つのブラケット連結部15と、5つの車輪部16とで構成される。推進具11は、この例では前後一対で設けられる。
【0022】
円弧状の支持部材12は、オーステナイト系ステンレス(SUS304)や、アルミニウム等の錆び難く、比較的軽い金属性の素材でなる断面形状が円形又は矩形の細い棒体から構成され、管路の内壁面の円弧形状に沿うように湾曲されている。この例の支持部材12は、半円よりも多少短い円弧状に構成される(図4参照)。支持部材12は、棒状の支持部材13に両端部を連結され、湾曲形状を固定されるとともに、横方向(左右方向)の強度を補強される。支持部材13は、支持部材12と同様の棒体から切り出される。支持部材12と支持部材13との略中心部には、同様の棒体から切り出された支持部材14が両端部を連結され、推進具11の縦方向(上下方向)の強度を補強する(図2参照)。
【0023】
支持部材12、支持部材13及び14からなる扇形状の骨組みの一方の側面には、2つのブラケット連結部15が左右一対で設けられる。ブラケット連結部15は、例えばSUS304で板状に構成され、ネジ止用の2つの孔部15aを有している(図2参照)。ブラケット連結部15には、ブラケット60を介して配管バンド50が連結されるようになる。
【0024】
ブラケット連結部15は、配管バンド50に把持されるホース70が管路内で好適な配置位置になるように、下側の距離を広くした所定の角度で連結される。ブランケット連結部15は、一方の端部を支持部材12に溶接されるとともに、他方の端部を支持部材13に溶接されて状態を固定される。
【0025】
支持部材12の円弧状の外周部には、この例では5つの車輪部16が連結されている。車輪部16は、摺動部の一例を構成し、例えば、金属製の車軸部16aと、シリコン又はゴム製の車輪16bとを有している。車輪部16は、車輪16bを外周方向に突出させるように、車軸部16aを支持部材12の側面に溶接される。また車軸部16aを溶接する位置は、支持部材12の外周面でもよい。車輪16bは、管路の内壁に接触して回転するようになる。
【0026】
前後一対の推進具11は、連結部17を介して互いに連結される。連結部17は、例えばSUS304による角型の管状に構成される。このとき、推進具11は、ブラケット連結部15が内側になるように配される。また、この例の連結部17の上面には、車輪部16が1つ連結され、第2の摺動部として機能する。この車輪部16は、車輪16bが管路の内壁の上面に接するように、車軸部16aを連結部17の上面に連結される。
【0027】
更に、推進具11の前後には、例えば連結部17と同様の金属素材から形成された翼部18及び19が溶接される。翼部18は、側面に孔部18aを開孔されて前方に配される。翼部19は、側面に孔部19aを開孔されて、後方に配される。孔部18a及び19aには、必要に応じてロープが連結され、管路内での移動を制御する場合に操作される。以上のようにして、一対の推進具11、連結部17、翼部18及び19でなるフレーム10が構成される。
【0028】
このように構成されたフレーム10のブラケット連結部15には、それぞれブラケット60が連結される。ブラケット60は、例えばSUS304でなるL字型の部材で構成される。L字型に屈曲された2つの面には、それぞれ孔部60aが2つずつ開孔される。
【0029】
ブラケット60は、例えば六角ボルト及びナットにより、一方の面をブラケット連結部15にネジ止めされる。六角ボルトは、軸部を孔部60aと孔部15aとに挿入され、軸部の端部からナットを螺合されて両者を固定するようになされる。また、孔部15aにネジ溝を形成して、ナットを省略することもできる。ブラケット60は、フレーム10と配管バンド50とを連結する連結具として機能する。
【0030】
またこの例では、一対の推進具11が、互いに対向する内側面に、左右一対でブラケット連結部15を有するように配されているので、ブラケット60は一対の推進具11の内側に連結される。ブラケット60は、屈曲された角を外側にして左右一対でネジ止めされる。ブラケット60の屈曲した他方の面には、左右方向から配管バンド50が連結される。
【0031】
配管バンド50は、把持部の一例を構成し、支持部材12の内周側(下側)に設けられ、導水部100のホース70を把持するものである。配管バンド50は、ホース用の把持部51と、連結部52から構成される。配管バンド50には、例えば市販のステンレス製の配管支持具が用いられる。配管バンド50は、中心部が輪状に湾曲されて把持部51をなし、把持部51の両端部が延在されて連結部52をなすように構成されている。両端部の連結部52には、互いに連通可能な孔部52aが2つずつ開孔されている。
【0032】
互いに対面する2つの孔部52a及び孔部60aに六角ボルトを通してナットで締めると、配管バンド50をブラケット60にネジ止めすることができる。更にこのとき、把持部51にホース70を通しておくと、六角ボルト及びナットにより把持部51が締まり、配管バンド50がホース70を強固に把持できるようになる。このようにして、支持部101が構成される。
【0033】
この例で支持部101は、前後の配管バンド50で1つのホース70を保持し、左右一対でホース70を支持する。導水部100は、支持部101の下側に左右一対で設けられ、管路内に並行して延在される。左右のヘッド72は、真下より少し内側に噴射孔71を配するように支持され、管路とケーブルとの接触部周辺に堆積する堆積物に、左右両側から高圧水を噴射する(図4参照)。
【0034】
また、導水部100は、管路内を推進する支持部101により管路内に延在される。導水部100のヘッド72は、高圧水5の水力で、管路の一方の開口部から他方の開孔部まで移動する。これにより、噴射孔71から管路全域の堆積物に高圧水を噴射できるようになる。このようにして堆積物除去装置1が構成される。次に、支持部101の製造方法について説明をする。
【0035】
ところで、ケーブル布設用の管路には、150、200、250mm等の内径を有するものがある。この例では、150mm内径の管路用の堆積物除去装置1を製造する場合について説明する。図2は、推進具11の製造例を示す斜視図である。図2に示す推進具11は、フレーム10の前後に一対で設けられるものである。推進具11を製造するには、まず、SUS304又はアルミニウム等による例えば5mm径程度の円柱の細い棒部材を準備する。棒部材を準備できたら、所定の長さの支持部材12用の棒体を切り出す。棒体を切り出したら、加熱加圧等により例えば直径12mm程度の円弧状に湾曲加工する。また、支持部材12の形成に使用する棒部材は、断面が矩形のものでもよい。
【0036】
次に、同様の棒部材から支持部材12の左右方向の両端部に合う長さに支持部材13を切り出し、その両端部を支持部材12の両端部に例えば溶接で連結する。更に支持部材12及び支持部材13を縦方向に連結する支持部材14を切り出して溶接する。このようにして、棒部材から扇形状の部材を形成できる。
【0037】
更に、円弧状に固定された支持部材12の側面に、車輪部16を例えば5つ連結する。車輪部16には、20mm径程度のシリコン製の車輪16bを有する汎用の車輪を用いるとよい。車輪部16を連結する際には、150mm内径の管路に、車輪16bがそれぞれ直角に接するように放射状に配置し、車軸部16aを溶接するようにする(図4参照)。
【0038】
次に、ブラケット連結部15を2つ製造する。ブラケット連結部15は、例えば、厚さ8mm程度の金属製の板部材から、縦46mm、横17mm程度の長方形に切り出される。また、長方形の部材を切り出したら、必要に応じて切削加工して角を取る。ブラケット連結部15には、ネジ止め用の孔部15aを2つ開孔する。
【0039】
ブラケット連結部15を先程形成した扇形状の部材に連結する。その際には、支持部材13を下側に配置したとき、ブラケット連結部15が左右対象になるようにする。このとき、下側の距離が広がるように斜めに配置する。ブラケット連結部15の連結位置により、ホース70及びヘッド72の位置が決まるので、後で連結されるブラケット60及び配管バンド50の長さや大きさを考慮して、ブラケット連結部15の溶接位置を決めるようにする。このようにして、推進具11を製造することができる。推進具11を製造できたら、更に、同形状のものをもう1つ製造し、2つの推進具11を準備する。
【0040】
2つの推進具11が準備できたら、それに基づいて支持部101を製造する。図3は、支持部101の製造例を示す斜視図である。図3に示す支持部101を製造するには、まずフレーム10を製造する。はじめに一対の推進具11を連結する為の連結部17を製造する。例えば、厚さ2mm程度の金属製の板部材から、幅100mm、長さ160mm程度の板部材を切り出し、横15mm、縦35mm程度の長方形の角柱を屈曲加工する。このとき、屈曲した板部材の両端部は溶接して固定し、中空の角管とする。この例では、連結部17の上部側の面にも車輪部16を連結する。この車輪部16を連結する際には、車輪16bを上側にして車軸部16aを溶接する。
【0041】
次に、推進具11の支持部材13及び14に、連結部17の長さ方向の両端部を溶接する。このとき、ブラケット連結部15が内側になるように、一対の推進具11を配置するようにする。また、連結部17の上面の車輪16bと、推進具11の上面の車輪16bとが同一平面に接するようにする(図5参照)。
【0042】
次に、翼部18及び19を厚さ2mm程度の板部材から切り出す。翼部18及び19には、ロープ連結用の孔部18a及び19aを開孔する。また、推進部11の製造時に使用した5mm径の棒体を湾曲加工して板部材の縁部に溶接し、補強することもできる。翼部18及び19は、それぞれ推進具11の支持部材14に溶接する。以上により、フレーム10を製造することができる。
【0043】
次に、ブラケット60を準備する。ブラケット60は、まず例えば厚さ3mm程度の所定の金属製の板部材から、縦46mm、横52mm程度の長方形の板として切り出される。次に切り出された板を、屈曲後の横幅が、それぞれ、20mm、32mmになるようにL字型に屈曲加工する。屈曲された両方の面に孔部60aを縦方向に2つずつ開孔する。
【0044】
更に、ブラケット60に連結される配管バンド50を準備する。配管バンド50には、この例では、汎用品の配管支持具を使用する。配管バンド50には、例えば、把持部51の内径が27mm、連結部52の長さが45mm程度で、全長が84mm程度の大きさのステンレス製のものを準備するとよい。配管バンド50は4つ準備する。
【0045】
このように、フレーム10、ブラケット60及び配管バンド50を用意できたら、支持部101を組み立てる。これらの部材から支持部101を組み立てるには、六角ボルト80及びナット81を、ここでは16組準備する。まず、ブラケット60をフレーム10に連結する。ブラケット60の横幅が短い方、この例では20mmの方を、ブラケット連結部15にあてる。このとき、ブラケット60のL字型の屈曲部が外側になるように、ブラケット連結部15を左右に配置する。六角ボルト80の軸部を、それぞれ孔部60a及び孔部15aに貫通させ、端部からナット81を螺合する。ここでは、上下2つの六角ボルト80及びナット81で固定する。また、孔部15aにネジ溝を形成しておいて、ブラケット60側から六角ボルト80を螺合し、ナット81を省略することもできる。
【0046】
次に、ブラケット60の横幅が長い方の面に配管バンド50を連結する。六角ボルト80の軸部を、2つの孔部52a及び孔部60aに貫通させ、端部からナット81を螺合する。ここでも、上下2つの六角ボルト80及びナット81で固定する。またこのとき、ホース70を把持部51に挿入しておくと、六角ボルト80を締めることで、ホース70がしっかりと把持される。図3では、簡略化の為図示しないが、以後、同様の手順で、他の3つのブラケット60及び配管バンド50を、フレーム10に連結するようにする。このようにして、支持部101を製造することができる。次に、堆積物除去装置1による堆積物除去機能について説明する。
【0047】
図4は、堆積物除去装置1の機能例(その1)を示す正面図である。図4に示す堆積物除去装置1は、管路2内に挿入された場合であり、推進方向から見たものである。管路2内部には、ケーブル3が布設されている。管路2内のケーブル3の布設部位には、カルシウム等が石灰化してなる堆積物4が堆積し、両者を固着している。支持部101は、噴射孔71から噴射される高圧水5の水力で浮き上がり、上側の内壁に車輪部16を接して状態を保持する。導水部100は、ケーブル3の上部側の左右方向から、管路2とケーブル3との接触部周辺に向けて高圧水5を噴射する。
【0048】
この例では、高圧水5が堆積物4に向けて噴射されるように、導水部100の噴射孔71は真下より多少内側に向くように開孔されている。こうした噴射孔71の噴射方向は、把持部50の連結用の六角ボルト80を緩め、導水部100の設置角度をかえることにより、容易に調節することができる。高水圧5を噴射された堆積物4は破砕され、破砕された破片は、管路2内に飛散するようになる。
【0049】
図5は、堆積物除去装置1の機能例(その2)を示す側面図である。図5に示す堆積物除去装置1は、管路2内に挿入された場合であり、管路2を透過して横方向から見たものである。ホース70の一方の端部70aは、ヘッド72に閉塞されるとともに、支持部101に支持されて管路2内に挿入される。ホース70の他方の端部70bは給水ポンプ73に連結されて、矢印線A2に示す導水方向に高圧水を送水される。
【0050】
給水ポンプ73からホース70に送水された水は、ホース70を介して管路2内に導水され、ヘッド72に設けられた噴射孔71から、斜め後ろ方向に向けて噴射される。堆積物除去装置1は、噴射孔71から噴射された高圧水5で管路全域の堆積物4を破砕するとともに、高圧水5の水圧から推進力を得て、矢印線A1に示す推進方向に自動的に推進する。
【0051】
図6は、堆積物除去装置1の機能例(その3)を示す側面図である。図6に示す堆積物除去装置1は、側面に防水カメラ9を搭載された場合である。防水カメラ9は、この例では、翼部18にゴム紐9bで固定されている。ゴム紐9bは、孔部18aに通されて、防水カメラ9の周辺に巻き付けられて両端部を結束され、防水カメラ9を翼部18の下側周辺に固定するものである。なお、画像データ通信用のコード9aは、ホース70にゴム紐9bで固定されている。
【0052】
このように堆積物除去装置1に防水カメラ9を搭載して管路内を撮影すると、撮影する画像の方向を略固定できるので、撮影したい場所を安定して撮影することができる。なお、防水カメラ9を連結する位置は翼部18に限られず、ホース70、連結部17等の他の部位にしてもよい。また、防水カメラ9用の連結具として、金具、ビニールテープ等を用いることもできる。また、防水カメラ9を、前方を下に傾けるように設置すると、下側の堆積物を効率よく撮影できるようになる。
【0053】
このように、この発明の実施の形態に係る堆積物除去装置1によれば、閉塞された一端側の所定部に噴射孔71を有し、他端から水を送水される導水部100を、噴射孔71の反対側から支持する支持部101を備え、導水部100の一端の噴射孔71から管路2内のケーブル3布設部位に高圧水5を噴射するものである。
【0054】
この構成によって、噴射孔71の反対側の支持部101が、噴射された水の水圧で管路内に押し当てられた状態を保持できるようになる。従って、支持部101に支持された導水部100が、噴射孔71の噴射位置及び噴射角度を維持できる。これにより、ケーブル3の布設部位に的確に高圧水を噴射できるので、ケーブル布設部位に堆積する堆積物4を効率よく破砕できる。
【0055】
従って、堆積物により管路2に固着されたケーブル3を引き抜く際に、道路を開削工事する必要がなくなるので、工事時間及び工費を大幅に削減できる。更に、当該水噴射装置1を管路に挿入して高圧水の噴射を開始するだけで堆積物除去作業を開始できるので、作業の準備時間を短縮できる。
【0056】
なお、ホース70として、一端がヘッド72で閉塞された2本のホースを準備し、それぞれを給水ポンプ73に連結して左右一対で用いるようにすることもできるが、支持部100に支持される部位のみが分岐されたY字型のホースを1本準備して、それぞれの一端にヘッド72を連結し、左右一対の導水部100として用いることもできる。
【0057】
また、この例では、ヘッド72に噴射孔71を1つ開孔するようにしたが、それに限られることはなく、噴射孔71を複数開孔するようにしてもよい。また、ホース70の下側の側面に、噴射孔71を開孔することもできる。この場合は、例えば、支持部100に支持される所定距離に渡ってホース70の長さ方向に沿った複数の孔部を開孔してもよい。
【0058】
更にまた、孔部18a又は孔部19aにロープを巻き付け、管路2の両端部から堆積物除去装置1の推進位置や推進速度を制御することもできる。特に、後部に位置する孔部19aにロープを巻き付けた場合は、堆積物4が特に付着する部分でロープを引いて堆積物除去装置1を停止させ、集中的に高圧水を噴射させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明は、埋没された管路内に布設された地下ケーブルの撤去作業に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態としての堆積物除去装置1の構成例を示す斜視図である。
【図2】推進具11の製造例を示す斜視図である。
【図3】支持部101の製造例を示す斜視図である。
【図4】堆積物除去装置1の機能例(その1)を示す正面図である。
【図5】堆積物除去装置1の機能例(その2)を示す側面図である。
【図6】堆積物除去装置1の機能例(その3)を示す側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・堆積物除去装置、2・・・管路、3・・・ケーブル、4・・・堆積物、5・・・高圧水、9・・・防水カメラ、10・・・フレーム、11・・・推進具、12,13,14・・・支持部材、15・・・ブラケット連結部、16・・・車輪部、17・・・連結部、18,19・・・翼部、50・・・ホース把持部、60・・・ブラケット、70・・・ホース、71・・・噴射孔、72・・・ヘッド、73・・・給水ポンプ、100・・・導水部、101・・・支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にケーブルを布設された管路の開口部から管路内に挿入され、当該管路内のケーブル布設部位に高圧水を噴射する水噴射装置であって、
一端を閉塞されるとともに、一端側の所定部に噴射孔を設けられ、他端から一端に水を送水される導水部と、
前記噴射孔の反対側から前記導水部を支持する支持部とを備え、
前記導水部の一端の前記噴射孔から前記ケーブル布設部位に高圧水を噴射することを特徴とする水噴射装置。
【請求項2】
前記噴射孔は、
前記導水部の導水方向を前方向としたとき、斜め後方向に向けて開孔されることを特徴とする請求項1に記載の水噴射装置。
【請求項3】
前記噴射孔は、
前記導水部の下側に開孔されていることを特徴とする請求項1に記載の水噴射装置。
【請求項4】
前記導水部に水を加圧送水する加圧送水装置を備え、
前記導水部は、
一端を閉塞されるとともに他端を前記加圧送水装置に連結され、他端から水を送水されるホースと、
前記ホースの一端を閉塞するヘッドとを有し、
前記ホース又はヘッドの側面には、
前記噴射孔が開孔されることを特徴とする請求項1に記載の水噴射装置。
【請求項5】
前記支持部は、
前記導水部の支持方向の反対側に摺動部を有し、
当該摺動部が管路内に押し当てられることを特徴とする請求項1に記載の水噴射装置。
【請求項6】
前記支持部は、
前後一対で設けられる推進具と、
当該一対の推進具を連結する連結部とを備え、
前記推進具は、
前記管路の内壁面に沿うような円弧状の支持部材と、
前記支持部材の内周側に設けられ、前記導水部を把持する把持部と、
前記支持部材の外周側に設けられ、前記管路の内壁で回転する1つ以上の車輪部とでなることを特徴する請求項1に記載の水噴射装置。
【請求項7】
前記導水部は、
第1及び第2のヘッドを有し、
前記第1及び第2のヘッドは、前記管路内に並行して設けられることを特徴とする請求項4に記載の水噴射装置。
【請求項8】
当該水噴射装置には、
管路内を撮影するカメラが搭載されることを特徴とする請求項1に記載の水噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−61427(P2009−61427A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233280(P2007−233280)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】