説明

水平弁

【課題】弁棒に水平方向の進退力を伝達するレバーなどの弁棒に下向きの加重をかける重量物が存在し、例えば蒸気タービンの蒸気弁など500℃以上の高温環境下で使用する場合であっても、弁棒に曲がりが発生し弁棒として機能しなくなることを防止できる水平弁を提供する。
【解決手段】先端側において弁体と連結され、水平方向に延在する弁棒と、前記弁棒を摺動自在に支持するスリーブと、前記弁棒の基端側に取り付けられ、前記弁棒に水平方向の進退力を伝達する伝達機構と、前記スリーブよりも前記伝達機構側に配設され、前記弁棒の下面を支持するガイド板とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端側において弁体と連結され水平方向に延在する弁棒と、前記弁棒を摺動自在に支持するスリーブと、前記弁棒の基端側に取り付けられ前記弁棒に水平方向の進退力を伝達する伝達機構とを有する水平弁に関するものであり、特に500℃以上の高温条件下で使用して好適な水平弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば蒸気タービンには、蒸気タービンへの蒸気の流入を制御する蒸気弁が設けられている。蒸気タービンの蒸気弁は、配置の都合上、先端側において弁体と連結された弁棒が水平方向に延在し、該弁棒が水平方向に動作する水平弁とすることがある。
【0003】
従来の水平弁の適用例として、蒸気タービン用蒸気弁について、図4を用いて説明する。
図4は、従来の蒸気タービン用蒸気弁の断面図である。なお、図4においては、紙面は水平面を表し、紙面手前方向が上側、紙面奥側方向が下側を表している。図4において、符号10で示される蒸気弁は、蒸気タービンに供給される駆動用蒸気を制御するための蒸気弁であり、弁体18を内包する弁室20と、該弁室20を形成するケーシング本体6と、該ケーシング本体6の蓋体であるボンネット2と、ケーシング本体6の内部に形成され弁体のシート面18aと当接する弁座16と、先端側において弁体18と連結され該弁体18を摺動自在に駆動させる弁軸24と、該弁軸24を支持するブッシュ8などで構成されている。また、ボンネット2はケーシング本体6にボルト22で締め付けられて、ボンネット2とケーシング本体6が一体となってケーシングを形成している。
【0004】
また、弁軸24はその一端が弁体18に連結されるとともに、その他端が弁体18の周壁に形成される内部空間を通して延び、細長い円筒状のブッシュ8の内部を摺動自在に貫通し、支持されている。このブッシュ8は、ケーシング本体6の上部開口部に取付けられたボンネット2の中央部分を貫通していると共に、このボンネット2により支持されている。
また、弁軸24は弁体18が連結された端部と反対側の端部でバネ案内棒26とねじ締結されて一体化されており、バネ案内棒26は連結棒28とピン30によって連結されて一体化されている。即ち、弁軸24、バネ案内棒26及び連結棒28が一体化して弁棒4を形成している。
弁棒4を形成する連結棒28は、その先端部付近をピン32によってレバー34に連結されている。レバー34は、駆動機構であるアクチュエーター36の駆動により連結棒28との連結部(ピン32)が弁棒4の軸方向に移動するように、アクチュエーター36に連結されている。
【0005】
図4に示した構成の蒸気弁10において、図4の矢印Aで示される蒸気タービンのボイラからの蒸気は、蒸気入口管12を介して弁室20内へ流入され、弁体のシート面18aと弁座16を接離自在となるように取付けられた弁体18の移動により蒸気の遮断及び流出が行われ、蒸気出口管14から矢印Bのように蒸気タービンへ流れるように構成されている。
【0006】
以上に説明した構成の蒸気弁10においては、全閉時には、弁体のシート面18aが弁座16に当接し、ケーシング6に形成される蒸気入口管12からケーシング6の内部に入る蒸気の流れは、弁体のシート面18aと弁座16との当接部分で遮断され、蒸気出口管14を通して流れない。そして、弁体18は弁軸4を動かすことによって移動して開状態となり、蒸気は弁体のシート面18aと弁座16との間に形成された隙間を通って蒸気出口管14から排出される。
【0007】
図5は、図4におけるA−A断面図である。蒸気弁10においては、バネ案内棒26にはボイラ側蒸気をバンキングするため、ステムリークが発生しないようにバックシート2bが設けられている。またバネ案内棒26とボンネット2との間にはバネ案内棒26の上側に空間sが形成される。
【0008】
図6は、図4における別の形態のA−A断面図である。バネ案内棒26には、その端部に設けたレバー34等の重量物により図6に矢印wで示したように下向きの加重がかかる。その結果、図6に示したようにバネ案内棒26は、A、B、Cの3箇所でボンネットと接触し、曲げ応力が発生する。このとき、蒸気弁10を低温環境で使用する場合には特に問題はないが、蒸気弁10は通常500℃以上の高温環境下で使用する。前記曲げ応力が発生した状態で500℃以上の高温条件下で使用すると前記曲げ応力が平均化し、応力緩和する過程で弁棒4に曲がりが発生し、弁棒4として機能することが困難になる可能性がある。しかも、弁棒4のバックシート2bへの当たりもよくない。
【0009】
また、その他の弁の構造として、特許文献1には弁体に弁棒の一端側を格納する弁棒格納空間を設け、弁体を弁棒に形成したネジ部に螺合する弁棒カバーを介して連結し、弁箱に弁体を格納する格納する弁体格納空間をなす胴部を設け、弁棒の他端に連結して減速機を設けた仕切弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−149470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された弁を、弁棒が水平方向に延在し該弁棒が水平方向に動作する水平弁として、蒸気タービンの蒸気弁として使用する場合、図4に示した従来の蒸気弁と同様に弁棒に発生した曲げ応力が高温により平均化し応力緩和する過程で弁棒に曲がりが発生し、弁棒として機能することが困難になる可能性を排除することも低減もすることもできない。
【0012】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、弁棒に水平方向の進退力を伝達するレバーなどの弁棒に下向きの加重をかける重量物が存在し、例えば蒸気タービンの蒸気弁など500℃以上の高温環境下で使用する場合であっても、弁棒に曲がりが発生し弁棒として機能しなくなることを防止できる水平弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明においては、先端側において弁体と連結され、水平方向に延在する弁棒と、前記弁棒を摺動自在に支持するスリーブと、前記弁棒の基端側に取り付けられ前記弁棒に水平方向の進退力を伝達する伝達機構と、前記スリーブよりも前記伝達機構側に配設され、前記弁棒の下面を支持するガイド板とを備えることを特徴とする。
ここで、前記伝達機構とは前記弁棒に水平方向の進退力を伝達する機構を意味し、例えば図4に示したレバーや、スプリング、弁を手動操作する場合にはハンドルを例示することができる。
【0014】
これにより、前記弁棒は、前記スリーブと、前記ガイド板によって2点で支持されることになり、前記伝達機構により前記弁棒にかかる下向き方向の加重を低減される。従って前記伝達機構の重量に起因する前記弁棒に加わる曲げ力を低減することができ、高温であっても弁棒の曲げを低減することができる。
また、弁の全閉時におけるバックシートの当たりを安定させることもできる。
【0015】
また、前記弁棒は、前記ガイド板との摺接部が平面となるように面取り加工されているとよい。
これにより、前記伝達機構によって前記弁棒に与えられた水平方向への進退力が、前記ガイド板との摩擦によって低減することを抑制することができる。
【0016】
また、前記弁棒の基端は、前記弁体を収納するケーシングを貫通しており、前記ガイド板は、前記弁棒が貫通する前記ケーシングの端部の外表面に固定されているとよい。
これにより、前記ガイド板の設置が簡単になり、またガイド板を設けていない既設の設備に対しても簡単に前記ガイド板を追設することができる。
【0017】
また、前記ガイド板は、上下位置が調節可能な支持板を介して前記ケーシングの前記外表面に固定されているとよい。
これにより、前記ガイド板の上下位置を調節することができる、つまりガイド板による前記弁棒の指示位置の上下位置を調節することができる。そのため、前記弁棒に曲がりが生じないようにガイド板の高さを調節することができるとともに、前記伝達機構の交換、改造等により前記伝達機構による前記弁棒への加重が変化した場合でも前記ガイド板の上下位置を適宜調節することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弁棒に水平方向の進退力を伝達するレバーなどの弁棒に下向きの加重をかける重量物が存在し、例えば蒸気タービンの蒸気弁など500℃以上の高温環境下で使用する場合であっても、弁棒に曲がりが発生し弁棒として機能しなくなることを防止できる水平弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例に係る蒸気タービン用蒸気弁の断面図である。
【図2】図1におけるH−H断面図である。
【図3】図2におけるK方向矢視図である。
【図4】従来の蒸気タービン用蒸気弁の断面図である。
【図5】図4におけるA−A断面図である。
【図6】図4における別の形態のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0021】
本発明の水平弁の適用例として、蒸気タービン用蒸気弁について説明する。
図1は、実施例に係る蒸気タービン用蒸気弁の断面図である。なお、図1においては、紙面は水平面を表し、紙面手前方向が上側、紙面奥側方向が下側を表している。
【0022】
図1において、符号10で示される蒸気タービンの蒸気弁は、蒸気タービン(不図示)に供給される駆動用蒸気を制御するための蒸気弁である。
蒸気弁10は、弁体18を内包する弁室20と、該弁室20を形成するケーシング本体6と、該ケーシング本体6の蓋体であるボンネット2と、ケーシング本体6の内部に形成され弁体のシート面18aと当接する弁座16と、先端側において弁体18と連結され該弁体18を摺動自在に駆動させる弁軸24と、該弁軸24を支持するブッシュ8などで構成されている。また、ボンネット2はケーシング本体6にボルト22で締め付けられて、ボンネット2とケーシング本体6が一体となってケーシングを形成している。
【0023】
また、弁軸24はその一端が前述の通り弁体18に連結されるとともに、他端側が弁体18の周壁に形成される内部空間を通して延び、細長い円筒状のブッシュ8の内部を摺動自在に貫通し、ブッシュ8により支持されている。このブッシュ8は、ケーシング本体6の上部開口部に取付けられたボンネット2の中央部分を貫通していると共に、このボンネット2により支持されている。
【0024】
また、弁軸24は弁体18が連結された端部と反対側の端部でバネ案内棒26とねじ締結されて一体化されており、バネ案内棒26は連結棒28とピン30によって連結されて一体化されている。即ち、弁軸24、バネ案内棒26及び連結棒28が一体化して弁棒4を形成している。
弁棒4を形成する連結棒28は、その先端部付近をピン32によってレバー34に連結されている。レバー34は、駆動機構であるアクチュエーター36の駆動により連結棒28との連結部(ピン32)が弁棒4の軸方向に移動するように、アクチュエーター36に連結されている。
【0025】
また、図1に示した構成の蒸気弁10において、図1の矢印Aで示される蒸気タービンのボイラからの蒸気は、蒸気入口管12を介して弁室20内へ流入され、弁体のシート面18aと弁座16を接離自在となるように取付けられた弁体18の移動により蒸気の遮断及び流出が行われ、蒸気出口管14から矢印Bのように蒸気タービンへ流れるように構成されている。
【0026】
さらに、本発明に特に特徴的な構成として、弁棒4はケーシング本体6とボンネット2により形成されるケーシングを貫通しており、該ケーシングの外表面にはガイド部材40が設けられており、ガイド部材40は弁棒4(弁棒4を構成する連結棒28)を支持している。なお、ガイド部材40については後述する。
【0027】
以上に説明した構成の蒸気弁10は、全閉時には、弁体のシート面18aが弁座16に当接し、ケーシング6に形成される蒸気入口管12からケーシング6の内部に入る蒸気の流れは、弁体のシート面18aと弁座16との当接部分で遮断され、蒸気出口管14を通して流れない。そして、弁体18を弁軸4を動かすことによって移動させることで開状態となり、蒸気は弁体のシート面18aと弁座16との間に形成された隙間を通って蒸気出口管14から排出される。なお、弁の開閉はアクチュエーター36によってレバー34を動かすことにより、弁棒4を軸方向に水平移動させて行う。
【0028】
次にガイド部材40について説明する。
図2は図1におけるH−H断面図であり、図3は図2におけるK方向矢視図である。
図2及び図3に示したように、ガイド部材40は、支え台42、ガイド板44、2つの吊り上げ板46及び2つの調整ボルト45から構成されている。
【0029】
支え台42とガイド板44はボルト48で締結され一体物となっている。ガイド板44は、平面状の上面に弁棒4を構成する連結棒28を乗せて支持する。弁棒28は、ガイド板44上に乗って支持される下面が平面となるように面取り加工されており、ガイド板44上に摺接している。
【0030】
また、吊り上げ板46と支え台42は調整ボルト45によって連結されており、調整ボルト45の締め具合によって吊り上げ板46と支え台42との間の距離を調節できるように構成されている。そして、吊り上げ板46はボルト47によってボンネット2の外表面に固定され、支え台42はボルト43によってボンネット2の外表面に固定されている。
【0031】
本発明では、ガイド部材40を設けることによって、前記弁棒は、前記スリーブと、前記ガイド板によって2点で支持されることになり、前記伝達機構により前記弁棒にかかる下向き方向の加重を低減される。従って前記伝達機構の重量に起因する前記弁棒に加わる曲げ力を低減することができ、高温であっても弁棒の曲げを低減することができる。
【0032】
さらに、ガイド板44及び該ガイド板44と一体となっている支え台42は上下位置を調整することができる。ガイド板44及び支え台42の上下位置を調整する際は、まずボルト43を外して支え板42のボンネット2への固定を解除する。次いで調節ボルト45の締め具合を調節して支え板42と吊り上げ板46との距離を変更する。このとき、吊り上げ板46はボルト47によってボンネット2に固定されていて移動しないため、調節ボルト45の締め具合の調節により支え板42の上下位置が変わる。支え板42の上下位置が適切な位置となったら、ボルト43によって支え板42をボンネット2の外表面に固定する。
このようにして、ガイド板44の上下位置を調節することで、弁棒4に曲がりが生じないようにガイド板44の上下位置を適切に調節することができる
【産業上の利用可能性】
【0033】
弁棒に水平方向の進退力を伝達するレバーなどの弁棒に下向きの加重をかける重量物が存在し、例えば蒸気タービンの蒸気弁など500℃以上の高温環境下で使用する場合であっても、弁棒に曲がりが発生し弁棒として機能しなくなることを防止できる水平弁として利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
2 ボンネット
4 弁棒
6 ケーシング本体
18 弁体
24 弁軸
26 バネ案内棒
28 連結棒
34 レバー
40 ガイド部材
44 ガイド板
45 調節ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側において弁体と連結され、水平方向に延在する弁棒と、
前記弁棒を摺動自在に支持するスリーブと、
前記弁棒の基端側に取り付けられ、前記弁棒に水平方向の進退力を伝達する伝達機構と、
前記スリーブよりも前記伝達機構側に配設され、前記弁棒の下面を支持するガイド板とを備えることを特徴とする水平弁。
【請求項2】
前記弁棒は、前記ガイド板との摺接部が平面となるように面取り加工されていることを特徴とする請求項1に記載の水平弁。
【請求項3】
前記弁棒の基端は、前記弁体を収納するケーシングを貫通しており、
前記ガイド板は、前記弁棒が貫通する前記ケーシングの端部の外表面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水平弁。
【請求項4】
前記ガイド板は、上下位置が調節可能な支持板を介して前記ケーシングの前記外表面に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の水平弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21568(P2012−21568A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159303(P2010−159303)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】