説明

水平搬送型表面処理装置

【課題】板体が、薄物(例えば厚み0.06mm未満)搬送時であっても、板体の搬送性を確保しながら、表面処理を効率よく行うことができる水平搬送型表面処理装置を提供する。
【解決手段】板体5を上下のローラ1〜3で挟持し水平搬送しながら、板体に表面処理液を接触させて表面処理を施す装置において、スプレーにより液を噴射するスプレー領域23と、このスプレー領域より下流にて板体に付着した液体を液切りする液切り領域24を備え、上記スプレー領域が板体を搬送する搬送ローラ1を有し、上記液切り領域が板体を搬送し液切りする搬送ローラ2を有し、上記搬送ローラ1の径を搬送ローラ2の径よりも大とする水平搬送型表面処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板体(板状ワーク)を上下のローラで挟むようにして水平に搬送しながら、板体に粗化処理等の表面処理を施す水平搬送型表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水平搬送型表面処理装置は、図5に示すように、板体を上側ローラ20と下側ローラ21とで挟むようにして水平搬送しながら、板体に対して上下からスプレーノズル4により表面処理液を噴霧し、表面処理を施す。
板体の搬送経路は、スプレーノズル4により板体に表面処理液を接触させるスプレー領域23と、このスプレー領域より下流にて板体に付着した液体を液切する液切領域24の組合せになる。
そして、図6に示すように、スプレー領域23には、表面処理液と板体を効率よく接触させるため、軸棒の周囲に適宜間隔を設けてリングを固着させたリングローラ25を用い、液切領域24には、液切り性能を確保するため、ストレートローラ26を用いている。
更に、リングローラ25とストレートローラ26とは、共通の回転駆動シャフトにより回転させるため、同じ径のものを用いている。
【0003】
液切領域24におけるストレートローラ間の水平方向距離は、相互のローラが干渉しないように、ローラ外径より大きくなっている。一方のスプレー領域23では、板体上にスプレーの力及び表面処理液の重量が掛かっているので、搬送性を確保するため、リングローラが互い違いでオーバーラップしており、ローラ間の水平方向距離は、ローラ外径より小さくなっている。
【0004】
図5及び図6にて説明した水平搬送型表面処理装置は、主にプリント配線板の製造工程に用いられることが多く、近年の電子機器に対する小型化、軽量化の影響を受け、それに使用されるプリント配線板も薄葉化が進み、搬送性を確保するため、ローラの外径が小さくなってきている。
【特許文献1】特開2000−315849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ローラの外径を小さくすることは、即ち、ローラ間の距離が狭くなり、スプレー領域において、板体とスプレーとの間に介在するリングローラ及びシャフトにより、スプレーから噴霧される液体が板体に降りかかる面積を減少させ、表面処理液と板体との接触効率が悪くなる課題がある。
【0006】
また、ローラ間の距離が狭くなるにつれ、駆動受動歯車取り付け寸法の制約で、メインの駆動シャフトを装置の表側と裏側の両方で取り付ける必要が生じる可能性があり、このようになると、清掃点検等のメンテナンスのため、装置の表側と裏側の両方で点検窓を取り付ける必要性がでてくる。
【0007】
更に、ローラ間の距離が狭くなるにつれ、部品総数が増えるため、装置の製造コストが上がる上に、メンテナンスの手間が増えて、作業効率が悪くなる。
【0008】
本発明は、板体が、薄物(例えば厚み0.06mm未満)搬送時であっても、板体の搬送性を確保しながら、表面処理を効率よく行うことができる水平搬送型表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のものに関する。
(1)板体を上下のローラで挟持し水平搬送しながら、上記板体に表面処理液を接触させて表面処理を施す装置において、スプレーにより液を噴射するスプレー領域と、このスプレー領域より下流にて板体に付着した液体を液切りする液切り領域を備え、上記スプレー領域が板体を搬送する搬送ローラAを有し、上記液切り領域が板体を搬送し液切りする搬送ローラBを有し、上記搬送ローラAの径を搬送ローラBの径よりも大とする水平搬送型表面処理装置。
(2)項(1)において、搬送ローラA、Bが共通の回転シャフトからの回転力を用いて回転させられる水平搬送型表面処理装置。
(3)項(1)又は(2)において、搬送ローラAと搬送ローラBとが、同じ周速度にて回転させられる水平搬送型表面処理装置。
(4)項(1)乃至(3)の何れかにおいて、搬送ローラA及び搬送ローラBが、各々のローラを駆動する駆動歯車A、駆動歯車Bを転位させ、駆動シャフトの中心から搬送ローラの上面までの距離を同じとする水平搬送型表面処理装置。
(5)項(1)乃至(4)の何れかにおいて、搬送ローラAと搬送ローラBとが、その間に搬送ローラBと同径の搬送ローラCを設置される水平搬送型表面処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプレー領域に使用されるローラの径と、液切り領域に使用されるローラの径とで、その径を変化させることにより、板体が薄物であっても、搬送性を確保しながら、表面処理を効率よく行うことができる。
より詳細に述べると、液切領域の搬送ローラBの径を小さくしたまま、スプレー領域の搬送ローラAの水平方向ローラ間距離を十分に確保できるので、スプレー領域で液とワークを効率よく接触させることができる。
また、搬送ローラAと、搬送ローラBとを、共通の回転シャフトからの回転力を用いて回転させることにより、異なる径の搬送ローラAと搬送ローラBであっても、一つの駆動力で回転させることができるので、装置コストやメンテナンス作業を低減することができる。
更に、搬送ローラAと、搬送ローラBとを、同じ周速度にて回転させることにより、異なる径の搬送ローラAと搬送ローラBであっても、スプレー領域と液切領域の搬送速度を同じにできるので、安定した搬送を行うことができる。
搬送ローラA、Bの駆動歯車A、Bを転位させ、駆動シャフトの中心から搬送ローラの上面までの距離(即ちパスライン)を同じとすることにより、異なる径の搬送ローラAと搬送ローラBを共通の回転シャフトからの回転力を用いて回転させても、板体を直線的に搬送することができるので、板体の曲りや折れを防止することができる。
搬送ローラAと搬送ローラBとの間に搬送ローラBと同径の搬送ローラC(リングローラ)を設置し、搬送ローラAと搬送ローラBとの距離を小さくすることにより、搬送ローラAと搬送ローラB間における、板体の乗り継ぎをより安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にて述べる板体とは、上下に略平面を有したものであり、平面視での形状は特に限定されるものでなく、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、曲線形状等とすることができる。より具体的には、半導体業界で使われているガラス基板やリードフレーム、プリント基板業界で使われている積層板やフレキシブル基板等である。
【0012】
本発明にて述べるスプレー領域とは、板体に対しスプレーノズルにより表面処理液を噴射できる領域を示し、スプレーノズルは、上面のみ、下面のみ、上下面両方等、任意に設置することができる。
また、スプレーノズルを上下に配置した場合は、その噴射圧を上下で等しくしても、異ならせても良い。
【0013】
本発明にて述べる液切領域とは、先に述べたスプレー領域の下流に配置され、板体に付着した表面処理液を液切できる領域を示す。
尚、液切りは、具体的にはストレートローラや吸水ローラなどにより行われる。
【0014】
本発明にて述べる搬送ローラAとは、シャフトと、このシャフトに固着されているリングコマとを備えたリングローラを意味する。
【0015】
本発明にて述べる搬送ローラBとは、シャフトと、このシャフトに固着されているゴム等の弾性体で構成されているストレートローラを意味する。
【0016】
本発明にて述べる搬送ローラCとは、シャフトと、このシャフトに固着されているリングコマとを備えたリングローラを意味する。搬送ローラCのリングコマの外径は搬送ローラBと同じで、リングコマ間ピッチは搬送ローラAと同じである。
【0017】
本発明にて述べる回転シャフトとは、シャフトと、このシャフトに固着されている駆動歯車とを備えたものであり、搬送ローラに対し回転力を伝達する。
【0018】
本発明にて述べる周速度とは、搬送ローラ外周上の点が、単位時間当たりに走行する距離である。異なる径のローラに対し、同じ周速度にするためには、搬送ローラ外径別に駆動装置を設け、回転速度を調整する方法と、同一の駆動系で噛合い歯車の歯数を調整する方法があるが、部品点数を減らせることから、後者の方法を用いることが好ましい。
【実施例】
【0019】
本実施例の板状ワークの水平搬送型表面処理装置は、厚さ0.1mm未満である薄物板状ワークを主として表面処理するものである。図1は本実施例の板状ワークの水平搬送型表面処理装置に用いる上下のローラを示す正面図、図2は隣接ローラや点検窓を含んだ平面図、図3は上下搬送ローラA及び駆動歯車を含んだ図2のG−G断面に相当する図、図4は上下搬送ローラB及び駆動歯車を含んだ図2のH−H断面に相当する図である
【0020】
本実施例では、搬送ローラA1が、外径10mmのステンレスシャフトと、外径ΦA=45mmの樹脂リングコマで構成されたリングローラであり、搬送ローラB2が、外径10mmのステンレスシャフトと、外径ΦB=30mmのゴムで構成されたストレートローラで、搬送ローラC3が、外径10mmのステンレスシャフトと外径30mmの樹脂リングコマで構成されたリングローラである。搬送ローラAの間の距離Pa(図1参照)は30mmで、搬送ローラBの間の距離Pb(図1参照)は32mmとしている。
【0021】
スプレー領域23で、ローラのシャフトによって隠されている部分の比率は、0.33(シャフト外径:搬送ローラA間距離Pa=10:30=0.33)となっている。
【0022】
図7は、本発明と従来装置の搬送ローラAのリングローラ寸法比較図である。左図は本発明で、右図は従来装置である。ここで、Φ1=45、Φ2=30、Φ3=10、P1=30、P2=26とすると、Θ1=96°、Θ2=60°、h1=5.7、h2=7.5である。h1とh2は板状ワークがローラ間を乗り継ぐときに、板状ワーク5の端部が垂下がる最大量であり、当然ながら垂下がりが多いほど板状ワーク5の曲り、折れ、ローラへの巻込みが発生しやすくなり、搬送性が悪化する。本発明によればコマ外径を大きくすることによってローラ間ピッチを広くしても、板状ワーク5の垂下がりを少なくすることができ、従来装置同等以上の搬送性が確保できる。
【0023】
図3と図4において、受動歯車A8及び受動歯車B14の歯数は同じ9で、駆動歯車A9の歯数TAは12で、駆動歯車A15の歯数TBは18である。ここで、搬送ローラA1のリングローラ外径ΦA、搬送ローラB2のストレートローラ外径ΦB、駆動歯車A9の歯数TA、駆動歯車A15の歯数TBとの間にΦA:ΦB=TB:TA(45:30=18:12)の関係が成立し、同一の駆動軸で搬送ローラAと搬送ローラBを同じ周速度(即ち搬送速度)で回転させることができる。
【0024】
受動歯車A8及び受動歯車B14はモジュール2(モジュール:歯車の歯の大きさを表す指標)、ネジレ角45°、歯数9で、駆動歯車A9はモジュール2、ネジレ角45°、歯数12で、駆動歯車A15はモジュール2、ネジレ角45°、歯数18である。
このままだと、駆動歯車A9と駆動歯車A15の直径が異なるので、スプレー領域23の駆動歯車A9中心から下側搬送ローラA12の上面までの距離Haが52.2mm、液切り領域の駆動歯車A15中心から下側搬送ローラB16の上面までの距離Hbが53.2mmとなり、液切り領域のパスラインの高さがスプレー領域23のパスラインより1.0mm高くなるため、板体ワーク5の搬送に支障がある。
そこで、駆動歯車A9をプラス転位(転位係数0.3)、駆動歯車A15をマイナス転位(転位係数−0.2)させることによって、駆動シャフト中心からローラ上面の距離HaとHbは同じ52.6mmになるため、パスラインが同じとなり、スムーズなワーク搬送ができる。
なお、本実施例では上側の搬送ローラには駆動が必要ではなかったため、フリーローラとしているが、上側搬送ローラにも駆動が必要な場合であっても、下側ローラと同様にしてパスラインを合わせることができる。
【0025】
図5は従来装置の正面図であり、図6は従来装置の平面図である。本実施例と従来装置のどちらでも、受動歯車A8と受動歯車B14は共に安定搬送するため、最低歯数9を必要とし、歯先円直径が29.5mmとなる。従来装置は板状ワーク5を安定して搬送するために、スプレー領域23のローラ間距離を26mm以下にする必要があるので、受動歯車同士が干渉し、両側駆動としなければならない。一方、本発明では搬送ローラA1の径を大きくすることにより、スプレー領域23と液切領域24の両方ともローラ間距離を30mm以上にすることができるため、表側の片側駆動ですべてのローラを回転させることができる。その結果、裏側のローラガイドと外壁間の距離Eを短縮することができ(−100mm)、裏側点検窓7も省略できる(−150mm)ので、従来装置より装置巾を250mm狭くすることができる。
また、片側駆動とすることでメンテナンスが容易で安価な装置とすることができる。
【0026】
図8は搬送ローラCの役割を説明する図である。搬送ローラCがない場合、搬送ローラB2はストレートローラであるため、搬送ローラA1とオーバーラップできないので、ローラ間の距離P3がローラ半径の和以上(39mm)必要となり、板状ワーク5の搬送性が低下する要因となる。搬送ローラC3を追加することによって、搬送ローラA1と搬送ローラC3間の距離P4が30、搬送ローラC3と搬送ローラB2間の距離P5が32となり、搬送ローラB2間距離と同等にすることができるので、板状ワーク5の搬送性を確保できる。
【0027】
以上によって、薄物板状ワーク搬送時でも、ワークの搬送性を確保しながら、表面処理を効率よく行うことができ、且つコンパクトでメンテナンスが容易で安価に製造できる水平搬送型表面処理装置を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】は板状ワークの水平搬送型表面処理装置に用いる上下のローラを示す正面図である。
【図2】は隣接ローラや点検窓を含めた平面図である。
【図3】は上下搬送ローラA及び駆動歯車を含んだ図2のG−G断面に相当する図である。
【図4】は上下搬送ローラB及び駆動歯車を含んだ図2のH−H断面に相当する図である。
【図5】は従来装置の正面図である。
【図6】は従来装置の平面図である。
【図7】は本発明と従来装置の搬送ローラAのリングローラ寸法比較図である。
【図8】は搬送ローラCの役割を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
1.スプレー領域に使われるリングローラ(搬送ローラA)
2.液切領域で使われるストレートローラ(搬送ローラB)
3.スプレー領域と液切領域との境界で使われるリングローラ(搬送ローラC)
4.スプレーノズル
5.板状ワーク
6.表側点検窓
7.裏側点検窓
8.受動歯車A
9.駆動歯車A
10.コンベアガイド
11.ローラシャフト用軸受け
12.下側搬送ローラA
13.上側搬送ローラA
14.受動歯車B
15.駆動歯車A
16.下側搬送ローラB
17.上側搬送ローラB
20.上側ローラ
21.下側ローラ
23.スプレー領域
24.液切領域
25.リングローラ
26.ストレートローラ
Pa.リングローラ間距離
Pb.ストレートローラ間距離
ΦA.リングローラ外径
ΦB.ストレートローラ外径
Ha.リングローラ部駆動歯車中心から下側搬送ローラAの上面までの距離
Hb.ストレートローラ部駆動歯車中心から下側搬送ローラB上面までの距離
Φ1.本発明リングローラ外径
Φ2.従来装置リングローラ外径
Φ3.ローラシャフト外径
P1.本発明リングローラ間距離
P2.従来装置リングローラ間距離
θ1.本発明リングローラ交点での接線間角度
θ2.従来装置リングローラ交点での接線間角度
h1.本発明リングローラ上面頂点からリングローラ交点までの距離
h2.従来装置リングローラ上面頂点からリングローラ交点までの距離
P3.搬送ローラC未適用時搬送ローラAと搬送ローラB間の距離
P4.搬送ローラC適用時の搬送ローラAと搬送ローラC間の距離
P5.搬送ローラC適用時の搬送ローラCと搬送ローラB間の距離
C.ローラガイド巾寸法
D.表側ローラガイドと装置外壁間の距離
E.裏側ローラガイドと装置外壁間の距離
F.点検窓の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板体を上下のローラで挟持し水平搬送しながら、上記板体に表面処理液を接触させて表面処理を施す装置において、スプレーにより液を噴射するスプレー領域と、このスプレー領域より下流にて板体に付着した液体を液切りする液切り領域を備え、上記スプレー領域が板体を搬送する搬送ローラAを有し、上記液切り領域が板体を搬送し液切りする搬送ローラBを有し、上記搬送ローラAの径を搬送ローラBの径よりも大とする水平搬送型表面処理装置。
【請求項2】
請求項1において、搬送ローラA、Bが共通の回転シャフトからの回転力を用いて回転させられる水平搬送型表面処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、搬送ローラAと搬送ローラBとが、同じ周速度にて回転させられる水平搬送型表面処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、搬送ローラA及び搬送ローラBが、各々のローラを駆動する駆動歯車A、駆動歯車Bを転位させ、駆動シャフトの中心から搬送ローラの上面までの距離を同じとする水平搬送型表面処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、搬送ローラAと搬送ローラBとが、その間に搬送ローラBと同径の搬送ローラCを設置される水平搬送型表面処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−158790(P2009−158790A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336815(P2007−336815)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(501041159)日化設備エンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】