説明

水徐溶性組成物、及びそれを用いた洗浄方法

【課題】水洗便器内面、台所や洗面台等のシンク表面や排水口、及び浴室の排水口などの流水と接触する任意の面に塗布することができ、塗布後流水によって剥離することがなく、該流水により洗浄剤成分を徐溶させて持続的に洗浄を行うことができる水徐溶性組成物、及びそれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】(A)水溶解遅延成分と、(B)薬剤成分と、(C)溶媒とを少なくとも含み、前記水溶解遅延成分(A)が、水に膨潤乃至溶解し、前記水溶解遅延成分(A)の分散液乃至水溶液が、粘着性及び徐溶性を示すことを特徴とする水徐溶性組成物である。該水徐溶性組成物を、被洗浄物の表面であって、流水と接触する面に塗布し、該流水により前記水徐溶性組成物を徐溶させて、前記被洗浄物を洗浄することを特徴とする洗浄方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水徐溶性組成物、及びそれを用いた洗浄方法に関し、詳しくは、流水と接触する任意の面に塗布し、該流水により徐溶させて洗浄を行うことができる水徐溶性組成物、及びそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水洗便器内面、台所や洗面台等のシンク表面や排水口、及び浴室の排水口などは、有機物汚れ(排泄物、食材、石鹸カス、垢等)が付着しやすく、かつ常に水と接触する場所であるため、ぬめりやカビが発生沈着しやすく、また悪臭等も発生しやすい。これらの洗浄は不快を伴い、負担が大きい作業である。
このため、近年、水洗便器や排水口等の洗浄効果を簡便かつ持続的に得ることを目的とした各種洗浄剤組成物が提案されている。
【0003】
例えば、水洗便器の洗浄剤組成物としては、水洗便器のタンク内の洗浄水に洗浄剤有効成分を溶出させて、持続的に便器の汚れを洗浄し、清潔な状態を保たせることを目的とした洗浄剤組成物が知られている。
具体的には、ノニオン界面活性剤をポリエチレングリコールの誘導体を用いて固化させた水洗トイレ用固形消臭洗浄剤(例えば、特許文献1参照)、溶出速度の水温依存性、効力の持続性を向上させるために、ポリエチレングリコールジステアレートにヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合された固体状の芳香洗浄剤(例えば、特許文献2参照)などが知られている。更に、洗浄剤の有効成分を高濃度に配合できるものとして、ゲル化剤としてカラギーナンを用いて固形状に成形されたゲル状の水溶性洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1〜3の洗浄剤組成物は、水洗便器のタンク上部の手洗い部分に設置して使用すること、タンク内の貯水部分に投入して使用することを想定したものであり、その形態も固形状の成形体や、専用容器に組み込まれて提供されるものである。このため、便器の形態によっては使用が制限されることがあり、特に、近年増加しているタンクレス型の水洗便器には適用できないという問題がある。
【0005】
一方、排水口用の洗浄剤組成物としては、例えば、機械力でこすることなく除去するために、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等の抗菌成分を固体状にした錠剤を、プラスチック容器に収蔵させて、洗浄成分を徐々に放出する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、洗浄剤組成物を流水下に設置しておくために、容器を伴う場合には、該容器が様々な排水口の大きさや形状に適応する必要があり、すべての排水口に対応できない可能性がある。
【0006】
また、持続的な洗浄効果や殺菌効果等を得るためには、溶出した洗浄剤成分が排水口の被洗浄面に接触する必要があるが、容器の形態によっては排水口全体の洗浄が困難な場合があり、容器を伴わない場合は、流水により洗浄剤組成物の滞留が妨げられる場合がある。
【0007】
よって、流水と接触する任意の面に塗布することができ、塗布後流水によって剥離することがなく、該流水により徐溶させて洗浄、殺菌、防汚、消臭等を行うことができる水徐溶性組成物、及びそれを用いた洗浄方法は未だ提供されておらず、さらなる改良が望まれているのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−179298号公報
【特許文献2】特開平08−109366号公報
【特許文献3】特公昭63−56280号公報
【特許文献4】特開2001−317101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、水洗便器内面、台所や洗面台等のシンク表面や排水口、及び浴室の排水口などの流水と接触する任意の面に塗布することができ、塗布後流水によって剥離することがなく、該流水により洗浄剤成分を徐溶させて持続的に洗浄、殺菌、防汚、消臭等を行うことができる水徐溶性組成物、及びそれを用いた洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、水に膨潤性乃至溶解性を示す高分子化合物であり、その分散液乃至水溶液が、粘着性及び徐溶性を示す高分子化合物を配合することにより、流水と接触する任意の面に塗布することができ、塗布後流水によって剥離することがなく、該流水により徐溶する組成物が得られ、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)水溶解遅延成分と、(B)薬剤成分と、(C)溶媒とを少なくとも含み、前記水溶解遅延成分(A)が、水に膨潤乃至溶解し、前記水溶解遅延成分(A)の分散液乃至水溶液が、粘着性及び徐溶性を示すことを特徴とする水徐溶性組成物である。
<2> 水溶解遅延成分(A)の含有量が1〜30質量%、薬剤成分(B)の含有量が1〜50質量%、溶媒(C)の含有量が20〜98質量%である前記<1>に記載の水徐溶性組成物である。
<3> 0〜40℃において、流動性を有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の水徐溶性組成物である。
<4> 0.17g/cmとなるように水徐溶性組成物を塗布した塗布面に、25℃の水を流速600mL/sで10秒間流した時、前記水徐溶性組成物の残存率が90%以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の水徐溶性組成物である。
<5> 水溶解遅延成分(A)が、その5%分散液及び5%水溶液のいずれか6gを10cm×10cmのステンレス板に展着させた後乾燥し、0.3gの皮膜としたものを25℃の水2L中に投入し、前記水を100rpmで10分間攪拌した時、前記皮膜からの溶出率が20質量%未満である前記<1>から<4>のいずれかに記載の水徐溶性組成物である。
<6> 水溶解遅延成分(A)が、セルロースエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載の水徐溶性組成物である。
<7> 薬剤成分(B)が、界面活性剤及び殺菌剤の少なくともいずれかである前記<1>から<6>のいずれかに記載の水徐溶性組成物である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の水徐溶性組成物を、被洗浄物の表面であって、流水と接触する面に塗布し、該流水により前記水徐溶性組成物を徐溶させて、前記被洗浄物を洗浄することを特徴とする洗浄方法である。
<9> 被洗浄物が、水洗便器、及び排水口のいずれかである前記<8>に記載の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、流水と接触する任意の面に塗布することができ、塗布後流水によって剥離することがなく、該流水により薬剤成分を徐溶させて持続的に洗浄、殺菌、防汚、消臭等を行うことができる水徐溶性組成物、及びそれを用いた洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(水徐溶性組成物)
本発明の水徐溶性組成物は、(A)水溶解遅延成分と、(B)薬剤成分と、(C)溶媒とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
本発明の水徐溶性組成物は、0〜40℃において、流動性を有することが好ましく、被洗浄物の表面に塗布して使用し、塗布面上を通過する流水により流失することなく、前記被洗浄物の表面に剤型を保ちながら滞留し、前記流水により徐々に溶解する性状を有する。
具体的には、0.17g/cmとなるように前記水徐溶性組成物を塗布した塗布面に、25℃の水を流速600mL/sで10分間流した時、前記水徐溶性組成物が剥離せずに残存し、その残存率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0014】
(A)水溶解遅延成分
前記水溶解遅延成分は、水に膨潤乃至溶解し、その分散液乃至水溶液が、粘着性及び徐溶性を示すものであれば、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができる。
具体的には、前記水溶解遅延成分の5%分散液及び5%水溶液のいずれか6gを10cm×10cmのステンレス板に展着させた後乾燥させて前記水溶解遅延成分の皮膜を形成し、これをステンレス板とともに25℃の水2L中に投入し、前記水を100rpmで10分間攪拌した時、前記水溶解遅延成分の皮膜の溶出率が20質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましい。
【0015】
前記水溶解遅延成分としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースエーテル、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びポリビニルアルコールなどが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
前記ヒドロキシプロピルセルロースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、徐溶性の観点から、置換基であるヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が3.0〜4.0であるものが好ましい。ここで、前記置換モル数とは、セルロースのグルコース環単位当たりに付加した置換基の平均モル数を表す。
前記ヒドロキシプロピルセルロースの市販品としては、例えば、日曹HPC(日本曹達社製)、KLUCEL(HERCULES社製)等を用いることができる。
【0017】
前記ヒドロキシエチルセルロースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、徐溶性の観点から、置換基であるヒドロキシエチル基の置換度が1.0〜1.3であることが好ましく、ヒドロキシメチル基の置換モル数が1.8〜2.5であることが好ましい。ここで、前記置換度とは、セルロースのグルコース環単位当たり置換された水酸基の平均個数を表し、前記置換モル数とは、セルロースのグルコース環単位当たりに付加した置換基の平均モル数を表す。
また、前記ヒドロキシエチルセルロース水溶液の粘度としては、25℃における1%水溶液の粘度として300〜6,000mPa・sであることが好ましく、1,000〜3,000mPa・sであることがさらに好ましい。
なお、粘度測定はBL型粘度計、ローターNo.3、回転数30rpmにて測定を行い、前記範囲で適さない場合、例えば粘度が高すぎるときには、ローターNo.4、回転数12rpmとし、粘度が低すぎるときには、ローターNo.2、回転数60rpmなどというように、ローターと回転数とを適切に選択して測定することができる。
前記ヒドロキシエチルセルロースの市販品としては、例えば、HECダイセル(ダイセル化学工業(株)製)等を用いることができる。
【0018】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、徐溶性の観点から、置換基であるメトキシル基の置換度が1.4〜1.9であり、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.15〜0.25であることが好ましい。ここで、前記置換度とは、セルロースのグルコース環単位当たり置換された水酸基の平均個数を表し、前記置換モル数とは、セルロースのグルコース環単位当たりに付加した置換基の平均モル数を表す。
また、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液の粘度としては、20℃における2%水溶液の粘度として100〜30,000mPa・sであることが好ましく、400〜5,000mPa・sであることがさらに好ましい。
なお、粘度測定はBL型粘度計、ローターNo.3、回転数30rpmにて測定を行い、前記範囲で適さない場合、例えば粘度が高すぎるときには、ローターNo.4、回転数12rpmとし、粘度が低すぎるときには、ローターNo.2、回転数60rpmなどというように、ローターと回転数とを適切に選択して測定することができる。
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの市販品としては、例えば、メトローズ(信越化学工業(株)製)等を用いることができる。
【0019】
前記ポリビニルアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、けん化度が75〜98mol%であるものが好ましく、85〜90mol%であるものがより好ましい。前記けん化度が75mol%未満であると、溶解性が高くなり、徐溶性が得られないことがあり、98mol%を超えると、溶解性が著しく低下し、良好な徐溶性が得られないことがある。
また、前記ポリビニルアルコールの重合度としては、1,700〜3,500が好ましい。
【0020】
(B)薬剤成分
前記薬剤成分は、前記水徐溶性組成物中において、前記水溶解遅延成分中に均一に分散乃至溶解していることが好ましい。これにより、前記薬剤成分は、前記水徐溶性組成物と接触した流水によって前記水溶解遅延成分とともに徐溶し、前記被洗浄物に対して持続的に作用する。
【0021】
前記薬剤成分としては、特に制限は無く、洗浄、殺菌、防汚、消臭等の目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、漂白剤、殺菌剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、芳香剤、酵素等が挙げられる。更に、本発明の効果を損なわない範囲で洗浄剤に一般的に使用されるその他の成分、例えば、着色剤、キレート剤、無機塩、有機酸塩などを配合してもよい。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0022】
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸塩、アルキル基の炭素数8〜18のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜10)及びアルキルエーテル硫酸エステル塩を挙げることができ、中でもアルキル基の炭素数14〜18のα−オレフィンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数10〜14のポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜5)、アルキル硫酸エステル、アルキル基の炭素数10〜15のアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。また、上記塩としては、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。
【0024】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸グリコシドエステル、脂肪酸メチルグリコシドエステル、及びアルキルメチルグルカミド等を挙げることができ、中でもアルキル基の炭素数が8〜12であり、ポリオキシエチレン平均付加モル数が5〜40のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0025】
前記カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の第4級アンモニウム塩、アルキルピリニジウム塩、及びアルキルイミダゾリニウム塩などを挙げることができ、中でもアルキル基の炭素数が8〜12のジアルキルジメチルアンモニウム塩が防汚効果の点から好ましい。また、対陰イオンとしては、ハロゲンイオン又は炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンが好ましい。
【0026】
前記両性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドアミン型ベタイン、及びアルキルイミダゾリン型ベタインなどが挙げられる。
【0027】
なお、上記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高い洗浄効果および起泡性による洗浄実感を得るためには、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を用いることが好ましく、また、持続的な防汚効果を得るためにはカチオン性活性剤を用いることが好ましい。
【0028】
前記漂白剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩;亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩;トリクロロイソシアヌル酸等のハロゲン化シアヌル酸;ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等のハロゲン化シアヌル酸塩;1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5−メチル−5−エチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−メチル−5−エチルヒダントイン等のハロゲン化ヒダントイン;などが好ましく、これらの中でも、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインがより好ましい。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
前記殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、トリクロロカルバニリド、及び塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0030】
前記防カビ剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チアベンダゾール、有機ヨウ素系化合物、及び安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0031】
前記消臭剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物抽出物、有機化合物、及び無機化合物から選ばれる1種又は2種以上の消臭成分を使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸、塩酸、燐酸、スルファミン酸、シュウ酸、ソルビン酸、フミン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、メチルリンゴ酸、マロン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、メチルフマル酸、メチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アセチレン酸、クエン酸、イソクエン酸、グリコール酸、酒石酸、木酢、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、塩素、過酸化水素、過酸化物、過マンガン酸カリウム、ホルマリン、グリオキサール、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、ジヒドロキシ−アセトン、3,5,5−トリメチルヘキサノール、β−エトキシプロピオンアルデヒド、グルタロアルデヒド、メタアクリル酸エステル、マレイン酸エステル、マレイン酸モノエステル、マレイン酸モノアミド、マレイン酸イミド、フマル酸ジアルキル、フマル酸エステル、β−アシルアクリル酸、β−アシルアクリル酸塩、セネシオン酸シトロネリル、1,3−ペンタジエン−1−カルボン酸アルキルエステル、ピナンハイドロパーオキサイド、p−サイメンパーオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、グリシジルエーテル、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、オクタアセチルサッカロース、Fe(III)−オクタカルボキシフタロシアニン、Fe(III)−テトラカルボキシフタロシアニン、5−メチル−2−イソプロピル−2−ヘキセナール、オイゲノール、p−ブトキシフェノール、カテコール、ハイドロキノン、4−メチルカテコール、1,2,4−トリハイドロキシベンゼン、3−メチルカテコール、3−メトキシカテコール、没食子酸、カルノソール、ロズマノール、ブラジリン、ヘマトキシリン、シコニン、ミリセチン、バイカレイン、バイカリン、フラボノイド、タンニン、シトラール、バニリン、クマリン、マツ科植物の抽出物、モクセイ科植物の抽出物、シソエキス、茶エキス、柿抽出エキス、及び亜鉛化合物(酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フマル酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛等)などが挙げられる。
また、植物抽出物消臭剤の市販品として、「ピュリエール」(松下電工(株)製)、「スメラル」(環境科学開発(株)製)、「パンシル」(リリース科学工業(株)製)を用いることができる。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
前記芳香剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然植物精油、動物性香料、合成香料等の香料などが挙げられ、具体的には、特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料成分A〜Dが挙げられる。
【0033】
前記無機塩としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び硫酸マグネシウムなどが挙げられ、これらの中でも、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び硫酸マグネシウムが好ましく、硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0034】
前記着色剤は、前記水徐溶性組成物の残留量の確認を容易にするために、また前記水徐溶性組成物に清涼感や衛生感を付与するために、前記水徐溶性組成物中に0.001〜5質量%含有させることが好ましい。
前記着色剤としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、顔料、及び染料のいずれでもよいが、具体的には、メチレンブルー、シアニンブルー、青色1号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、赤色106号、及び緑色3号などの水溶性色素が好ましい。
【0035】
前記酵素としては、例えば、タンパク汚れを分解するためのプロテアーゼ等のタンパク質分解酵素が挙げられる。
前記キレート剤としては、例えば、グルコン酸ソーダ、EDTA、NTA等が挙げられる。
【0036】
(C)溶媒
前記溶媒としては、水(例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、及び超純水等)が好ましく、更に、炭素数1〜4のアルコール、炭素数2〜8のジオール、炭素数3〜8のポリオール、及びエアゾール噴射剤から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
前記炭素数1〜4のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
前記炭素数2〜8のジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられる。
前記炭素数3〜8のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。
前記エアゾール噴射剤としては、例えば、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)等が挙げられる。
これらの中でも、使用時の操作性及び安全性の観点から、エタノール、イソプロパノール、LPG、DME、及びLPGとDMEとの混合溶媒が好ましい。
【0037】
前記水徐溶性組成物の処方としては、前記水溶解遅延成分1〜30質量%、前記薬剤成分1〜50質量%、及び前記溶媒20〜98質量%が好ましい。
前記水溶解遅延成分の含有量が、1質量%未満であると、十分な粘着性が得られず、塗布面が傾斜面である場合等、流水により流失してしまうことがあり、30質量%を超えると、流動性が低くなり、塗布が困難となる場合がある。
前記薬剤成分の含有量が、1質量%未満であると、十分な洗浄効果及び防汚効果が得られないことがあり、50質量%を超えると、他の成分の含有量が減少することにより、均一に分散乃至溶解させることが困難となることがある。
前記水徐溶性組成物の処方は、上記の範囲内であれば、使用目的に応じて適宜調整することができ、例えば、高い洗浄効果を得るための処方としては、前記水溶解遅延成分1〜20質量%、前記薬剤成分2〜50質量%、前記溶媒30〜97質量%が好ましく、前記水溶解遅延成分5〜15質量%、前記薬剤成分5〜30質量%、前記溶媒55〜90質量%がより好ましい。また、持続的な防汚効果を得るための処方としては、前記水溶解遅延成分5〜30質量%、前記薬剤成分1〜10質量%、前記溶媒60〜94質量%がより好ましく、前記水溶解遅延成分10〜20質量%、前記薬剤成分2〜5質量%、前記溶媒75〜88質量%がより好ましい。
【0038】
本発明の水徐溶性組成物の製法としては、特に制限はなく、常法に準じて調製することができる。調製する装置としては、例えば、剪断力の付与及び全体混合ができる複数の攪拌羽根、例えば、プロペラ、タービン、ディスパーなどを備えた攪拌装置などが挙げられ、アジホモミキサー、逆流ミキサー、ハイブロッドミキサーなどが好適に挙げられる。
【0039】
本発明の水徐溶性組成物の剤型としては、0〜40℃において流動性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液状(水溶液状、水分散液状)、ゲル状、ゾル状、ペースト状等が挙げられる。また、前記水徐溶性組成物を、吸湿性を有する任意の支持体に含有させてシート状としてもよく、加熱してシート状に成形してもよい。前記支持体としては、例えば、不織布、織布、編布、紙、及びフィルムなどが挙げられる。
【0040】
本発明の水徐溶性組成物は、通常の容器に充填することができる。前記容器としては、例えば、アルミニウムラミネートチューブ、EVALチューブ、アルミチューブ、ガラス蒸着プラスチックチューブ等のチューブ、機械的又は差圧によるディスペンサー容器、エアゾール容器、トリガー容器、スクイーズ容器、ラミネートフィルム容器、スポイト容器、スティック容器、ジャー容器、ボトル容器などが挙げられる。前記ラミネートフィルム容器の材質は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、二軸延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、及びエチレン酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂、紙、アルミ蒸着プラスチック等から適宜選択される。また、前記ラミネートフィルム容器の構造は、強度、柔軟性、耐候性等を考慮し、2〜5層構造とすることが好ましい。前記ボトル容器の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−ビニルアルコール樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド等の樹脂容器、及びガラス容器から適宜選択される。また、前記ボトル容器の構造は、単層又は2層以上の層構造とすることが好ましい。
【0041】
(洗浄方法)
本発明の水徐溶性組成物を用いた洗浄方法は、前記水徐溶性組成物を、被洗浄物の表面であって、流水と接触する面に塗布し、該流水により前記水徐溶性組成物を徐溶させて、前記被洗浄物を洗浄する方法である。前記水徐溶性組成物中に配合した前記薬剤成分に応じて、洗浄、殺菌、防汚、消臭等の効果が得られる。
【0042】
前記水徐溶性組成物の塗布方法としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)チューブ容器に充填された前記水徐溶性組成物を、チューブ容器から適量押し出して直接被洗浄物表面に塗布する方法、(2)前記水徐溶性組成物を任意の塗布用具(スパチュラ、たわし、ブラシ、スポンジ等)にとり、被洗浄物表面に塗布する方法、及び(3)トリガー容器やエアゾール容器等のスプレーヤーに充填された前記水徐溶性組成物を、直接面被洗浄物表面に噴射して塗布する方法等が挙げられる。
【0043】
前記水徐溶性組成物は、被洗浄物の表面に塗布した後1分間〜6時間、流水と接触させずに放置することにより、溶媒成分を蒸発させて粘着性を向上させてもよい。
【0044】
前記被洗浄物としては、流水と接触する面を有し、該流水により前記水徐溶性組成物が徐溶し、洗浄されるものであれば、特に制限はないが、例えば、水洗便器、台所や洗面台等のシンク表面及び排水口、浴室の排水口、排水管、ストレーナー、三角コーナーなどが挙げられる。
【0045】
本発明の水徐溶性組成物は、流水と接触する任意の面に塗布することができ、塗布後流水によって剥離することがなく、該流水により徐溶することによって、持続的に洗浄を行うことができる。また、本発明の水徐溶性組成物を用いた洗浄方法は、前記水徐溶性組成物を、被洗浄物の流水と接触する面に塗布することにより、該流水により前記薬剤成分を含む前記水徐溶性組成物が徐溶するため、持続的に洗浄が行われる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(試験例)
〔水溶解遅延成分の徐溶性試験〕
前記水溶解遅延成分として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールジステアレート、及びポリビニルアルコールについて、5%分散液又は5%水溶液を調製し、下記の方法により、その徐溶性を調べた。結果を表1に示す。
【0048】
10×10cmのステンレス板上に、前記水溶解遅延成分の5%分散液又は5%水溶液6gを6×6cmに展着させた後、乾燥させ、0.3gの皮膜を形成した試験片を調製した。3Lビーカー中に用意した25℃の水2L中に前記試験片を浸漬し、メカニカルスターラーを用いて100rpmで攪拌した。
10分後、前記試験片を取り出し、室温にて24時間風乾させて重量を測定し、下記計算式に従い、前記水溶解遅延成分の溶出率(%)を求めた。
【数1】

【0049】
【表1】

*1:HPC−H(日本曹達(株)製)
*2:メトローズ90SH−4000(信越化学工業(株)製)
*3:HEC SE−900(ダイセル化学工業(株)製)
*4:リオノンDT−600S(ライオン(株)製)
*5:クラレポバールPVA−235(クラレ(株)製)
【0050】
表1の結果から、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールジステアレート、及びポリビニルアルコールは徐溶性を示し、本発明の水徐溶性組成物の水溶解遅延成分として好適であることがわかった。
【0051】
(実施例1〜7、比較例1〜3)
下記表2に示す各成分を、100mLビーカー中で均一になるまでメカニカルスターラーを用いて攪拌した後、常温(25℃)下に1日静置して水徐溶性組成物を得た。
得られた前記水徐溶性組成物について、下記の方法により、塗布性、粘着性、徐溶性(洗浄持続性)を評価した。結果を表2にあわせて示す。
【0052】
〔塗布性の評価〕
前記水徐溶性組成物6.0gをスパチュラにとり、10×10cmのステンレス板、及び10×10cmの陶製タイル表面に、それぞれ6×6cmとなるように塗布して展着させた時の、塗布のしやすさを下記の基準に従い評価した。
−評価基準−
○:塗布しやすい
△:やや塗布しにくい
×:塗布しにくい
【0053】
〔粘着性及び徐溶性の評価〕
上記塗布性の評価と同様にして各試験片を調製した。前記試験片を45度の角度に傾斜させた状態で、前記水徐溶性組成物の塗布面に対し、25℃の水道水を600mL/秒の流速で10秒間流した後、前記水徐溶性組成物の塗布領域の状態を観察し、下記の基準に従い粘着性を評価した。
−評価基準−
○:変化なし
△:流水の方向に沿って塗布領域のズレがみられる
×:流失している
【0054】
また、前記試験において流水処理後、残存している前記水徐溶性組成物の重量を測定し、下記式から残存率を求め、下記の基準に従い、徐溶性を評価した。
【数2】

−評価基準−
○:残存率が90%以上
△:残存率が89〜21%
×:残存率が20%以下
【0055】
〔徐溶性(洗浄持続性)の評価〕
前記水徐溶性組成物3.0gをスパチュラにとり、10×10cmの陶製タイル表面に、6×3cmとなるように塗布して展着させ、さらに塗布領域の1辺の1cm外側部分に、下記の組成からなるモデル汚垢を3滴(1滴あたり約0.03g)付着させて試験片を調製した。前記モデル汚垢の付着させた辺が、流水の下流側となるように前記試験片を45度の角度に傾斜させて設置し、前記水徐溶性組成物の塗布面に対し、25℃の水道水を600mL/秒の流速で10秒間流した。その後、前記モデル汚垢のみを同様にして付着させ、25℃の水道水を600mL/秒の流速で10秒間流した。これを繰り返し行い、前記モデル汚垢を洗浄できた回数から、下記の基準に従い、徐溶性(洗浄持続性)を評価した。
−評価基準−
◎:40回以上
○:30回以上
△:10回〜29回
×:9回以下
【0056】
−モデル汚垢の組成−
オレイン酸 47.5質量%
トリオレイン 40.0質量%
NaCO 0.2質量%
水 10.0質量%
メチレンブルー 2.3質量%
【0057】
【表2】

*1:HPC−H(日本曹達(株)製)
*2:メトローズ90SH−4000(信越化学工業(株)製)
*3:HEC SE−900(ダイセル化学工業(株)製)
*4:リオノンDT−600S(ライオン(株)製)
*5:クラレポバールPVA−235(クラレ(株)製)
*6:アロンビスS(三晶(株)製)
*7:KELZAN ASXT(三晶(株)製)
*8:ポリエチレングリコール、平均分子量150〜200万(和光純薬工業社製)
*9:リボランLB−440(ライオン(株)製)
*10:ポリオキシエチレン(p=5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
*11:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(20E.O.)(日本エマルジョン社製)
*12:Mint Oil(曽田香料社製)
*13:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物(関東化学製)
【0058】
(実施例8〜12、比較例4〜6)
下記表3に示す各成分を、100mLビーカー中で均一になるまでメカニカルスターラーを用いて攪拌した後、常温(25℃)下に1日静置して水徐溶性組成物を得た。
得られた前記水徐溶性組成物について、実施例1と同様にして、塗布性、粘着性及び徐溶性を評価し、下記の方法により流水耐性及び殺菌持続性を評価した。結果を表3にあわせて示す。
【0059】
〔流水耐性及び殺菌持続性の評価〕
前記水徐溶性組成物10.0gを、一般家庭(4人家族)の浴室の排水口縁部に塗布した。浴室を通常通りに使用し、前記水徐溶性組成物が残存した日数を計測し、下記の基準に従い、流水耐性を評価し、さらに、7日目に排水口の状態を観察し、殺菌持続性を評価した。
−流水耐性評価基準−
◎:10日以上
○:5日以上
△:1日以上
×:1日未満
−殺菌持続性評価基準−
○:ぬめりや悪臭がない
×:ぬめりや悪臭がある
【0060】
【表3】

*1〜*8:表2と同様
*14:ライオン(株)製、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド
*15:関東化学製(1.0質量%水溶液)
【0061】
表2及び3の結果から、実施例1〜12の本発明の水徐溶性組成物は、被洗浄物としてステンレス、陶製タイルに塗布が容易であり、良好な粘着性及び徐溶性を示し、持続的な洗浄効果、抗菌効果を示すことがわかった。一方、比較例1〜6の洗浄剤組成物は、水溶解遅延成分として配合した高分子化合物が、粘着性を示さず、さらに曳糸性を有するため塗布性が悪化し、徐溶性も劣るため、洗浄持続性や殺菌持続性が得られないことがわかった。
【0062】
(実施例13、14、比較例7、8) 下記表4に示す各成分を、エアゾール容器(内容量100mL)内に配合・混合し、軽く振とうした後、常温にて一日放置した。得られた前記水徐溶性組成物について、下記の方法により吐出性、粘着性及び徐溶性、徐溶性(洗浄持続性)を評価した。結果を表4にあわせて示す。
【0063】
〔吐出性の評価〕
前記水徐溶性組成物を、10×10cmの陶製タイル表面に、6×3cmとなるように3秒間プッシュして吐出させた時の吐出性を、下記評価基準により評価した。
評価基準
○:簡単に吐出できた。
△:はじめは吐出できたが、途中でつまりが生じた。
×:吐出できない。
【0064】
〔粘着性および徐溶性の評価〕
上記吐出性の評価と同様にして各試験片を調製し、乾燥させた。前記試験片を45度の角度に傾斜させた状態で、前記水徐溶性組成物の塗布面に対し、25℃の水道水を600mL/秒の流速で10秒間流した後、前記水徐溶性組成物の塗布領域の状態を観察し、下記の基準にしたがい、粘着性を評価した。
―評価基準―
○:変化なし
△:流出部分が見られる
×:全て流出している
また、前記試験において流水処理後、残存している前記水徐溶性組成物の重量を測定し、下記式から残存率を求め、下記基準に従い、徐溶性を評価した。
残存率(%)=(流水処理後の試験片重量(g))/(流水処理前の試験片重量(g))×100
―評価基準―
○:残存率が90%以上
△:残存率が89〜21%
×:残存率が20%以下
【0065】
〔徐溶性(洗浄持続性)の評価〕
上記吐出性の評価と同様にして各試験片を調製し、乾燥させた。塗布領域の一辺の1cm外側部分に、前記モデル汚垢を3滴(1滴あたり約0.03g)付着させて試験片を調製した。前記モデル汚垢を付着させた辺が、流水の下流側となるように前記試験片を45度の角度に傾斜させて設置し、前記水徐溶性組成物の塗布面に対し、25℃の水道水を600mL/秒の流速で10秒間流した。その後、前記モデル汚垢のみを同様にして付着させ、25℃の水道水を600mL/秒の流速で10秒間流した。これを繰り返し行い、前記モデル汚垢を洗浄できた回数から、下記の基準に従い、徐溶性(洗浄持続性)を評価した。
−評価基準−
○:30回以上
△:10〜29回
×:9回以下
【0066】
【表4】

*16:HPC−L(日本曹達(株)製)
*17:アシッドブルー9 1.0質量%水溶液(東京化成(株)製)
*4、*7〜*9、*12:表2と同様
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の水徐溶性組成物は、流水と接触する任意の面に塗布することができ、塗布後流水によって剥離することがなく、該流水により徐溶して前記水徐溶性組成物中の薬剤成分が徐々に放出されることにより、持続的に洗浄を行うことができるため、水洗便器、台所や洗面台のシンク及び排水口、浴室の排水口等の水回りの洗浄剤組成物等として好適である。また、本発明の水徐溶性組成物を用いた洗浄方法は、前記水徐溶性組成物を、被洗浄物の流水と接触する面に塗布することにより、該流水により前記水徐溶性組成物が徐溶し、持続的に洗浄効果が得られるため、水洗便器、台所や洗面台のシンク及び排水口、浴室の排水口等の水回りに対し、容易に、持続的な洗浄、殺菌、防汚、消臭効果等を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶解遅延成分と、(B)薬剤成分と、(C)溶媒とを少なくとも含み、前記水溶解遅延成分(A)が水に膨潤乃至溶解し、前記水溶解遅延成分(A)の分散液乃至水溶液が、粘着性及び徐溶性を示すことを特徴とする水徐溶性組成物。
【請求項2】
水溶解遅延成分(A)の含有量が1〜30質量%、薬剤成分(B)の含有量が1〜50質量%、溶媒(C)の含有量が20〜98質量%である請求項1に記載の水徐溶性組成物。
【請求項3】
0〜40℃において、流動性を有する請求項1から2のいずれかに記載の水徐溶性組成物。
【請求項4】
0.17g/cmとなるように水徐溶性組成物を塗布した塗布面に、25℃の水を流速600mL/sで10秒間流した時、前記水徐溶性組成物の残存率が90%以上である請求項1から3のいずれかに記載の水徐溶性組成物。
【請求項5】
水溶解遅延成分(A)が、その5%分散液及び5%水溶液のいずれか6gを10cm×10cmのステンレス板に展着させた後乾燥し、0.3gの皮膜としたものを25℃の水2L中に投入し、前記水を100rpmで10分間攪拌した時、前記皮膜からの溶出率が20質量%未満である請求項1から4のいずれかに記載の水徐溶性組成物。
【請求項6】
水溶解遅延成分(A)が、セルロースエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の水徐溶性組成物。
【請求項7】
薬剤成分(B)が、界面活性剤及び殺菌剤の少なくともいずれかである請求項1から6のいずれかに記載の水徐溶性組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の水徐溶性組成物を、被洗浄物の表面であって、流水と接触する面に塗布し、該流水により前記水徐溶性組成物を徐溶させて、前記被洗浄物を洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項9】
被洗浄物が、水洗便器、及び排水口のいずれかである請求項8に記載の洗浄方法。

【公開番号】特開2006−206882(P2006−206882A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366487(P2005−366487)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】