説明

水性コポリマー分散体およびコーティング組成物

【課題】本発明によって解決される課題は、高PVCコーティング組成物のための改善された水性コポリマー分散体であって、形成された乾燥コーティングのより高い湿潤スクラブ耐性および対応する配合物の改善された安定性を示すものを見出すことである。
【解決手段】水性コポリマー分散体であって、前記コポリマーが、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで:
a)89〜99.93%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、
b)0.05〜5%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含まないもの、またはその塩、
c)0.01〜3%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、および
d)0.01〜3%の、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩を含むモノマーの混合物から得られる、水性コポリマー分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、スクラブ耐性および組成物安定性において総合的に改善された特性を有するコーティングを調製するための水性コポリマー分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6492451号は、バインダーとしてホスホネート基を有する少なくとも1種の水不溶性ポリマーの水性分散体を含む比較的高いPVC着色コーティング組成物を開示している。しかしながら、より高いレベルのスクラブ耐性およびより良好な配合物安定性が依然として望まれる。
【特許文献1】米国特許第6492451号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によって解決される課題は、高PVCコーティング組成物のための改善された水性コポリマー分散体であって、形成された乾燥コーティングのより高い湿潤スクラブ耐性および対応する配合物の改善された安定性を示すものを見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、水性コポリマー分散体であって、前記コポリマーが、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで:
a)89〜99.93%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、
b)0.05〜5%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含まないもの、またはその塩、
c)0.01〜3%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、および
d)0.01〜3%の、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩を含む、モノマーの混合物から得られる、水性コポリマー分散体に関する。
【0005】
本発明はさらに、水性コーティング組成物であって、
(i)少なくとも1種の水性コポリマー分散体であって、該コポリマーは、50〜350ナノメートルの平均粒子直径および−35〜60℃のガラス転移温度(Tg)を有し、該コポリマーは、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで:a)92〜99.94%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、b)0.05〜5%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含まないもの、またはその塩、およびc)0.01〜3%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含む混合物から得られる、水性コポリマー分散体;
(ii)少なくとも1種の顔料(ここで、前記コーティング組成物は、40〜90%の顔料体積濃度(PVC)を有する)、
(iii)少なくとも1種のコーティングアジュバント
を含む水性コーティング組成物にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、本発明の中核として、改善された安定性を有する高PVCコーティング配合物および金属、セラミック、プラスチック、およびセメント質基体上で乾燥された場合に、より高いレベルのスクラブ耐性を有する水性高PVCコーティング組成物のための特異的な水性コポリマー分散体を提供することにより、最新技術のコーティングの欠点を克服することである。
【0007】
本発明の第一の態様は、水性コポリマー分散体であって、該コポリマーが、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで:
a)89〜99.93%、好ましくは94〜99.7%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、
b)0.05〜5%、好ましくは0.2〜3%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含まないもの、またはその塩、
c)0.01〜3%、好ましくは0.05%〜1.5%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、および
d)0.01〜3%、好ましくは0.05〜1.5%の、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩を含むモノマーの混合物から得られる、水性コポリマー分散体である。
【0008】
エマルジョンコポリマーは、少なくとも1種の共重合したエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含む。本明細書において「非イオン性モノマー」とは、共重合したモノマー残基が、pH=1〜14の間のイオン電荷を有さないことを意味する。エチレン性不飽和非イオン性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルエステルモノマー、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;アミノ官能性およびウレイド官能性モノマー;アセトアセテート官能基を有するモノマー;スチレンおよび置換スチレン;ブタジエン;エチレン、プロピレン、α−オレフィン、例えば、1−デセン;ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベルサテート(vinyl versatate)および他のビニルエステル;およびビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンが挙げられる。
【0009】
エマルジョンコポリマーは、コポリマーの乾燥重量基準で0.05重量%〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%の共重合したエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート基官能基を有さないもの、またはその塩を含む。リン含有モノマーは、これに限定されないが、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、およびホスホブチル(メタ)アクリレート(ここで、(メタ)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを表す);ホスホアルコキシ(メタ)アクリレート、例えば、ホスホエチレングリコール(メタ)アクリレート;ホスホジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホトリ−エチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホジ−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホトリ−プロピレングリコール(メタ)アクリレート(ここで、(メタ)アクリレートはメタクリレートまたはアクリレートを表す);ホスホアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、ホスホエチル(メタ)アクリルアミド、ホスホプロピル(メタ)アクリルアミド(ここで、(メタ)アクリルアミドはメタクリルアミドまたはアクリルアミドを表す);ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、ビニルホスフェートおよび(メタ)アリルホスフェートが挙げられる。ホスホアルキル(メタ)アクリレートまたはホスホアルコキシ(メタ)アクリレート、またはその塩、特に、ホスホエチルメタクリレートから選択されるのが好ましい。共重合されたエチレン性不飽和リン含有モノマーが、少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマーおよびリン可能性前駆体モノマーの重合後に形成されてもよいことも意図される。リン可能性前駆体モノマーは、重合後に、リン含有化合物と反応して、ポリマーに結合したリン含有官能基を生成することができる反応性基を有するモノマーである。例えば、重合単位としてヒドロキシエチルメタクリレートを含有するポリマーであって、当該分野において周知のように、次いで反応させて、例えばホスホエチルメタクリレートを形成することができるものが挙げられる。同様に、例えば、重合されたカルボン酸単位は、その後、当該分野において周知のように、エポキシホスフェートまたはアミノホスフェートと反応させることができる。
【0010】
エマルジョンコポリマーは、少なくとも1種のアルコキシシラン官能性、好ましくは、加水分解可能なアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーをコポリマーの乾燥重量基準で、0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜1.5重量%含む。この種類のモノマーは、これに限定されないが、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、例えば、アルキルビニルジアルコキシシラン、(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、例えば、(メタ)アクリルオキシエチルトリメトキシシランまたは(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、またはその誘導体を包含する。シラン官能基が、少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマーおよびアルコキシシラン可能性前駆体モノマーの重合後に追加され得ることも意図される。アルコキシシラン可能性前駆体モノマーは、重合後にアルコキシシラン含有化合物と反応して、ポリマーと結合したアルコキシシラン含有官能基を生成できる反応性基を有するモノマーである。例えば、重合単位として、当該分野において周知のように、エポキシシランまたはアミノシランを含有するコポリマーであって、例えばシラン含有コポリマーを形成するものが挙げられる。
【0011】
エマルジョンコポリマーは、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩をコポリマーの乾燥重量基準で、0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜1.5重量%含む。このモノマーの例は、これに限定されないが、ビニルおよびアリルスルホン酸、ビニルおよびアリル硫酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、アリールスルホン酸、例えば、スチレンスルホネートまたはスチレンスルホネートの類似体など、アリール硫酸、例えば、スチレンスルフェートまたはスチレンスルフェートの類似体など、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエタン硫酸、メタクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、メタクリルアミド−2−メチル−プロパン硫酸、およびスルホン酸および硫酸のアルカリ金属塩、特に、そのナトリウム塩、特にナトリウムスチレンスルホネートを包含する。重合可能な硫黄系界面活性剤、例えば、Cognis CO.から得られるTrem LF−40、またはKDS Co.から得られるHitenol BCシリーズの界面活性剤も含まれる。
【0012】
好ましくは、エマルジョンポリマーはさらにe)コポリマーの乾燥重量基準で最大5重量%まで、好ましくは0.5〜3重量%の、カルボキシル、無水カルボン酸、ヒドロキシル、アミド、およびその混合物から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーをさらに含む。これらの種類のモノマーの例は、エチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、またはアミド、特に、前記カルボン酸のN−アルキロールアミドまたはヒドロキシアルキルエステル、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートである。好ましいのは、コポリマーの乾燥重量基準で0.5〜3重量%の共重合したエチレン性不飽和カルボン酸モノマーである。
【0013】
本発明の一つの好ましい実施形態において、エマルジョンコポリマーは、コポリマーの乾燥重量基準の重量%で:
a)95.65〜97.61%の、(メタ)アクリレート、スチレンおよびその誘導体から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、
b)0.05〜1.96%の少なくとも1種のエチレン性不飽和ホスフェート官能基含有モノマー、
c)0.01〜2%の、アルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
d)0.15〜0.4重量%の、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩、および
e)0〜2.5重量%のカルボキシルまたはアミド官能基を有する少なくとも1種のエチレン性風飽和モノマー
を含有する。
【0014】
エマルジョンコポリマーにおけるモノマーのパーセンテージの合計は100%である。コポリマー中に選択的成分がある場合、他の成分は上限の低下によりその割合が縮小する。
【0015】
範囲における用語「最大〜まで」は、0より多い任意のあらゆる値から範囲の終点以下を意味する。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、エマルジョンコポリマーは、カルボキシル、無水カルボン酸、ヒドロキシル、アミド、またはその混合物の官能基を有するモノマーを含有しない。このコポリマーは、コーティング膜においてより高いレベルのスクラブ耐性を示し、カルボキシル、無水カルボン酸、ヒドロキシル、アミド、およびその混合物を含有するものと比較して、許容される二価イオン安定性を達成するために若干多い界面活性剤を必要とするのみである。
【0017】
あるいは、化合物d)およびe)の合計量は、コポリマーの乾燥重量基準で0.05〜4.5重量%の範囲である。d)およびe)のレベルがより高いと、スクラブ耐性の減少をもたらし得る。
【0018】
前記のモノマー内で、b)、c)、d)またはe)の範疇に入る任意のモノマーはa)の範疇に含まれない。
【0019】
場合によって、水性エマルジョンコポリマーは、コポリマーの乾燥重量基準で、最大5重量%まで、好ましくは0.5重量%〜3重量%、特に、1.0〜2.5重量%の共重合した多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびジビニルベンゼンなどを含有し得る。共重合した多エチレン性不飽和モノマーを使用しないのが好ましい。
【0020】
エマルジョンコポリマーのガラス転移温度(Tg)は、35℃〜60℃、好ましくは−15℃〜40℃、さらに好ましくは−10℃〜30℃である。本明細書において用いられるTgは、Fox式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.、第1巻、第3号、123ページ(1956))を用いることにより計算されるものである。すなわち、モノマーM1およびM2のコポリマーのTgの計算に関しては、下記式である。
【0021】
【数1】

【0022】
式中、Tg(計算)はコポリマーに関して計算されたガラス転移温度であり、w(M1)はコポリマー中のモノマーM1の重量分率であり、w(M2)はコポリマー中のモノマーM2の重量分率であり、Tg(M1)はM1のホモポリマーのガラス転移温度であり、及びTg(M2)はM2のホモポリマーのガラス転移温度であり、全ての温度はKである。ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、“Polymer Handbook”、J.BrandrupおよびE.H.Immergut編、Interscience Publishersにおいて見出すことができる。
【0023】
水性エマルジョンコポリマーを調製するために使用される重合技術は当該分野において周知である。乳化重合プロセスにおいて、通常の界面活性剤、例えば、アニオン性および/または非イオン性乳化剤、たとえば、アルキル、アリール、またはアルキルアリールスルフェート、スルホネートまたはホスフェートのアルカリ金属またはアンモニウム塩;アルキルスルホン酸;スルホコハク酸塩;脂肪酸;エチレン性不飽和界面活性剤モノマー;およびエトキシル化アルコールまたはフェノール;を使用することができる。使用される界面活性剤の量は、通常、モノマーの重量基準で、0.1重量%〜6重量%である。熱またはレドックス開始プロセスのいずれも使用することができる。反応温度は反応の過程を通して100℃より低い温度に維持される。30℃と95℃の間、さらに好ましくは50℃と90℃の間の反応温度が好ましい。モノマー混合物をニートまたは水中エマルジョンとして添加することができる。モノマー混合物は、1回以上の添加で、または反応期間全体にわたって連続して、線形にまたはそうではなく、あるいはその組み合わせで添加することができる。
【0024】
通常のフリーラジカル開始剤、例えば、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アンモニウムおよび/またはアルカリ金属過硫酸塩、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸およびその塩、過マンガン酸カリウム、ならびにペルオキシ二硫酸のアンモニウムまたはアルカリ金属塩を、典型的には、合計モノマーの重量基準で、0.01重量%〜3.0重量%のレベルで使用できる。例えば、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、硫黄含有酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩、例えば、ナトリウムの亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ハイドロサルファイト、硫化物、水硫化物または亜ジチオン酸塩、ホルマジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、アセトンビサルファイト、アミン、例えば、エタノールアミン、グリコール酸、グリオキシル酸水和物、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸および前記酸の塩などの好適な還元剤と結合した同じ開始剤を使用するレドックス系を使用してもよい。レドックス反応を触媒する鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、またはコバルトの金属塩を使用してもよい。金属のキレート剤を任意に使用することができる。
【0025】
エマルジョンポリマーの分子量を低下させるため、および/またはそれ以外の方法で任意のフリーラジカル生成開始剤を用いて得られるのとは異なる分子量分布を得るために、連鎖移動剤、たとえば、ハロゲン化合物、たとえば、テトラブロモメタン;アリル化合物;またはメルカプタン、たとえば、アルキルチオグリコレート、アルキルメルカプトアルカノエート、およびC4−C22直鎖または分岐アルキルメルカプタンを使用できる。連鎖移動剤は、1回以上の添加、または全反応期間のほとんどまたは全体にわたって、または反応期間の限定された一部の過程で、例えば、釜装填においておよび残りのモノマー段階の還元において、連続して、線形的またはそうではなく添加することができる。連鎖移動剤は、典型的には、水性エマルジョンコポリマーを形成するために使用されるモノマーの合計重量基準で0〜5重量%のレベルで使用される。連鎖移動剤の好適な量は、水性エマルジョンコポリマーを形成するために使用されるモノマーの合計モル数基準で0.01〜0.5、さらに好ましくは0.02〜0.4、最も好ましくは0.05〜0.2モル%である。
【0026】
本発明のもう一つ別の実施形態において、水性エマルジョンポリマーは、多段乳化重合プロセスにより調製することができ、ここで、組成が異なる少なくとも2つの段は連続した方法で重合される。場合により、このようなプロセスの結果、少なくとも2つの相互に非混合性であるポリマー組成物が形成され、この結果、ポリマー粒子内に少なくとも2つの層が形成される。このような粒子は様々な形状または形態の2以上の相からなり、例えば、コア/シェルまたはコア/シース粒子、シェル相がコアを不完全に封入するコア/シェル粒子、複数のコアを有するコア/シェル粒子、および相互貫入ネットワーク粒子などである。これらの場合の全てにおいて、粒子の表面積の大部分は、少なくとも1種の外相により占められ、粒子の内部は、少なくとも1種の内相により占められる。多段エマルジョンポリマーの段のそれぞれは、エマルジョンポリマーについて本明細書において前述されるのと同じモノマー、界面活性剤、連鎖移動剤などを含有し得る。多段ポリマー粒子の場合、本発明の目的のためのTgは、本明細書において詳細に記載されるFox式により、エマルジョンポリマーの全体的な組成を用いて、その中の段または相の数に関係なく計算される。同様に、多段ポリマー粒子に関して、モノマーの量は、その中の段または相の数に関係なく、エマルジョンポリマーの全体的組成から決定されるべきである。例えば、第一段組成は主にスチレンからなり、第二段は本発明により記載される組成からなる。さらに、コポリマー粒子のコアは中空(すなわち、空気の細孔)であってもよい。かかる多段エマルジョンポリマーを調製するために使用される重合技術は例えば、米国特許第4,325,856号;第4,654,397号;および第4,814,373号など、当該分野において周知である。好ましい多段エマルジョンポリマーは、段のうちの1つだけにモノマーb)を含有する。
【0027】
エマルジョンコポリマー粒子の平均粒子直径は、BI−90パーティクル・サイザーにより測定すると、50から350ナノメートル、好ましくは50から300ナノメートルである。特定の理論により拘束されないが、粒子サイズが小さいと、エマルジョンコポリマー剪断不安定性が大きくなり、粒子サイズが大きいと、結合能力が低くなり、従って、スクラブ耐性が低くなると考えられる。
【0028】
一つの実施形態において、水性コーティング組成物は、リン含有モノマーの精製により達成され得るような水溶性リン酸化合物が実質的になく、水性エマルジョンコポリマーが実質的になく、水性コーティング組成物が実質的になく、または前記の1以上が実質的にない。
【0029】
水性エマルジョンコポリマーは、US20030236374において開示されているように、2より低いpHでのプロセスにより調製することができる。
【0030】
本発明の第二の態様は:
(i)少なくとも1種の水性コポリマー分散体(前記コポリマーは、50から350ナノメートルの平均粒子直径、および−35℃から60℃のガラス転移温度(Tg)を有し、前記コポリマーは、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで;a)92〜99.94%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、b)0.05〜5%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含有しないもの、またはその塩、およびc)0.01〜3%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーの混合物から得られる)、
(ii)少なくとも1種の顔料(前記コーティング組成物は40〜90%の顔料体積濃度(PVC)を有する、
(iii)少なくとも1種のコーティングアジュバント
を含む水性コーティング組成物である。
【0031】
好ましくは、モノマーの混合物はさらに:d)コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで最大3%まで、好ましくは0.01〜3%の、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩を含む。
【0032】
さらに好ましくは、モノマーの混合物は:e)コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで最大5%までの、カルボキシル、無水カルボン酸、ヒドロキシル、アミド、およびその混合物から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーをさらに含む。
【0033】
本明細書におけるモノマーa)、b)、c)、d)およびe)は、それぞれ、本発明の第一の態様の前記の記載において定義されるものと同じである重合性エチレン性不飽和モノマーのカテゴリーを含む。これらのモノマーの本発明の第一の態様のものとの違いは、使用される重量パーセンテージのみである。
【0034】
好ましくは、水性コーティング組成物は、本発明の第一の態様において記載されるコポリマーをバインダーとして使用する。
【0035】
前記水性コーティング組成物は、少なくとも1種の顔料を含む。水性コーティング組成物は、任意に、体質顔料を含有することができる。水性コーティング組成物は、40〜90%、好ましくは65〜90%のPVCを有する。PVCは次の式により計算される。
【0036】
【数2】

【0037】
本明細書における「顔料」とは、粒子状無機物質であって、コーティングの不透明性または隠蔽力に物質的に寄与できるものを意味する。このような物質は、典型的には、1.8より大きな屈折率を有し、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などを包含する。好ましいのは、二酸化チタンである。本明細書における「体質顔料」とは、粒子状無機物質であって、1.8以下、1.3より大きい屈折率を有するものを意味し、例えば、炭酸カルシウム、クレイ、硫酸カルシウム、アルミノシリケート、シリケート、ゼオライト、および珪藻土を包含する。水性コーティング組成物は、任意に、60℃より高いTgを有する固体または有孔コポリマー粒子を含有することができ;該コポリマー粒子は共重合単位としてホスフェートモノマーを含まず、かかるコポリマー粒子は、本発明においてPVC計算のために体質顔料として分類される。
【0038】
本発明においてポリマー組成物およびコーティングの項の両方において記載されるコポリマー組成物は、本発明におけるような40%から90%のPVC範囲において使用されない従来のコポリマー組成物と比較して、スクラブ耐性の著しい利点を示す。PVCが90%より高い場合、乾燥されたコーティングの許容される機械的一体性を達成することは困難であり;PVCが40%より低い場合、本発明におけるコポリマー組成物は、使用することができるが、本発明において述べられていない従来のコポリマーよりも優れた利点を示さない。
【0039】
前記の水性コーティング組成物は、基体のコーティングのために使用することができ、そのコーティング法は:
(1)本発明の第二の態様において記載される水性コーティング組成物を形成し;
(2)前記水性組成物を基体に適用し;及び
(3)前記水性組成物を乾燥するか、または乾燥させることを含む。
【0040】
本発明の水性コーティング組成物は、当該分野において、低光沢または平坦コーティング、プライマー、テクスチャー加工コーティングなどと説明され場合のあるコーティングまたは塗料組成物を包含することが意図される。水性コーティング組成物は、コーティング分野において周知の技術により調製される。まず、任意に、少なくとも1種の顔料を水性媒体中に、COWLESミキサーにより得られるような高剪断下でよく分散させるか、別法としては、少なくとも1種のあらかじめ分散された顔料を用いることができる。次に、水性エマルジョンコポリマーを低剪断撹拌下、所望により他のコーティングアジュバントとともに添加する。別法として、水性エマルジョンコポリマーを任意の顔料分散段階において含めることができる。水性組成物は通常のコーティングアジュバント、例えば、粘着付与剤、乳化剤、造膜助剤、例えば、Texanol(商標)(Eastman Chemical Co.)、補助溶剤、例えば、グリコールおよびグリコールエーテル、緩衝液、中和剤、増粘剤、レオロジー改良剤、保湿剤、湿潤剤、殺生物剤、可塑剤、消泡剤、着色剤、ワックス、および酸化防止剤を含有することができる。
【0041】
水性コーティング組成物は、本明細書において前述された水性エマルジョンコポリマーに加えて、1以上の追加のコポリマー、好ましくは追加のエマルジョンコポリマーであって、共重合単位としてホスフェートモノマーを含有しないものも含有してもよく;かかる追加のコポリマーは、水性エマルジョンコポリマーの重量基準で、最大200重量%までのレベルで存在し得る。一つのかかる実施形態において、水性コーティング組成物は、例えば、40〜70重量%の、50から350ナノメートルの平均粒子直径を有する前述の水性エマルジョンコポリマー、および30〜60重量%の、50から350ナノメートルの平均粒子直径を有する第二のエマルジョンコポリマーを含み、ここで、前記コポリマーは、コポリマーの乾燥重量基準での重量パーセンテージで:a)92〜99.94%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、b)0.05〜5%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含有しないもの、またはその塩、およびc)0.01〜3%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーの混合物から得られる。好ましくは、前記コポリマーは、d)コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで最大3%までの、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩をさらに含む。さらに好ましくは、e)コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで最大5%までの、カルボキシル、無水カルボン酸、ヒドロキシル、アミド、およびその混合物から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーも含む。
【0042】
水性コーティング組成物の固形分は、約10体積%から約70体積%であり得る。水性組成物の粘度は、Brookfield粘度計を用いて測定すると0.05〜10Pa.s(50cps〜10000cps)であり得;異なる適用法にふさわしい粘度は、かなり変化する。
【0043】
水性組成物は、通常の適用法、例えば、刷毛塗り、ローラー適用、および噴霧法、例えば、空気噴霧(air−atmized)スプレー、エアアシスト(air−assisted)スプレー、エアレススプレー、高体積低圧スプレー、およびエアアシストエアレススプレーにより適用され得る。
【0044】
本発明の方法において、水性コーティング組成物は、基体、例えば、プラスチック、木材、金属、下塗りされた表面、あらかじめ塗装された表面、およびセメント質基体に施用される。基体上にコーティングされた水性コーティング組成物は、典型的には1℃〜95℃の温度で、乾燥するか、または乾燥される。
【実施例】
【0045】
I 原材料
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
II 試験手順
ラテックスの二価イオン安定性
中国国家規格試験法を用いて、ラテックス二価イオン安定性を評価した。所定のラテックスの二価イオン安定性を試験するために、6mlの0.5重量%CaCl溶液を60mlラテックス中に添加し、混合物を一定の期間撹拌して、均一な分散体を形成した。混合物分散体を観察前48時間ベンチ上で静置した。試験後に凝集の形成、粒子、および相分離がないラテックスを「合格」と見なした。試験に不合格のラテックスについて、一定レベルの後添加(post−add)界面活性剤を添加して、これらが二価イオン安定性に合格するのを助けた。後添加界面活性剤のレベルがより少ないことは、より良好な二価イオン安定性を示す。ここでは2種の界面活性剤:アニオン性界面活性剤、RhodafacTM RS−710(Rhodia);非イオン界面活性剤、TergitolTM15−S−50(Dow)を後添加として使用した。
【0049】
乾燥コーティングの湿潤スクラブ耐性
塗料のスクラブ耐性は、ASTM試験法D2486−74Aの修正版を使用して決定する。標準的ASTM法と比較して、本明細書おいて使用する試験法には4つの変更点がある。第一に、使用されるPVCが55%より高い塗料についてのスクラブ媒体は、0.5重量%の家庭用洗剤溶液であるが、研磨スクラブ媒体は顔料がより少ない塗料について使用される。第二に、コーティングフィルムを、長軸に垂直なビニルチャート上に置いた。三番に、スクラブ機のアルミニウム金属板上にシムはない。最後の違いは、試験ブラシの毛を作るために使用される物質である。本明細書において使用されるブラシは、ナイロン繊維ではなく豚毛で作られていた。各ビニルチャート上に、4つのコーティングを適用し、そのうちの1つは常に対照と同じ塗料から作られ、他の3つは対照とサンプル間の相対的評価を得ることができるようなサンプルであった。所定の塗料について、4つのコーティング標本を作成し、4つの標本の結果を平均することにより最終的評価を得た。コーティングを、スクラブ試験前、7日間、25℃の温度、50%の湿度の恒温室中で乾燥した。
【0050】
水性コーティング組成物の配合物安定性
水性コーティング組成物の配合物安定性を評価するために、いくつかのコーティング組成の2種類のストーマー(Stormer)粘度変化:
長期Δストーマー粘度=20日間の平衡化後のストーマー粘度−初期ストーマー粘度;
H/AΔストーマー粘度=10日間熱老化後のストーマー粘度−初期ストーマー粘度
を測定した。ΔKUが小さいほど、良好な配合物安定性を示す。
【0051】
実施例1
水性エマルジョンコポリマーの調製
ラテックス1
643gのBA、858gのST、30.4gのAA、5.6gのSSS、456gのDI水、および64.26gの22.5重量%DBS水性溶液を組み合わせ、撹拌しながら乳化することにより、モノマーエマルジョンを調製する。次に、14.11gの22.5重量%のDBS水性溶液および563gのDI水を、機械的撹拌を備えた5リットル多口フラスコに添加した。フラスコの内容物を窒素雰囲気下で90℃に加熱する。撹拌されたフラスコに、52.4gのモノマーエマルジョン、35.4gのDI水中1.91gのNaCO、0.02gの硫酸第一鉄および0.19gのEDTAを添加し、続いて15.6gのDI水中5.46gのAPSを添加する。残りのモノマーエマルジョンおよび60gのDI水中の2.2gAPSの溶液および60gのDI水中の2.34gSBSの溶液を次にフラスコに180分にわたって添加する。リアクター温度を87℃に維持する。次に、26gのDI水を使用して、リアクターへのエマルジョン供給ラインを洗浄する。リアクターの内容物を冷却した後、3.85mgの硫酸第一鉄、4.61gのt−ブチルヒドロペルオキシド(70%水性)、および水性溶液中の2.31gのイソアスコルビン酸をフラスコに添加する。フラスコの内容物を水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、あるいは臭いの少ない他の不揮発性塩基でpH7.0〜9.0に中和する。冷却されたバッチに対して、32.5gのDI水中の32.8gのFA−40をフラスコに添加し、32.5gのDI水で洗浄する。次に、17.4gのDI水中の3.48gのMITをフラスコに添加し、続いて0.22gのNXZ(商標)(Cognis)を添加する。コポリマーのTg計算値は30℃である。
【0052】
ラテックス2およびラテックス3
ラテックス1と同じ方法であるが、表1に基づいてモノマーの量および種類を変更したものを使用して、ラテックス2およびラテックス3を調製した。さらに、ラテックス2のプロセスでは緩衝溶液を使用しなかった。
【0053】
ラテックス4〜ラテックス15、ラテックス17〜ラテックス20およびラテックス22〜ラテックス24
ラテックス2と同じ方法であるが、表1に基づいてモノマーの量および種類を変更して使用して、ラテックス4〜ラテックス15、ラテックス17〜ラテックス20およびラテックス22〜ラテックス24を調製した。
【0054】
ラテックス16およびラテックス21
ラテックス2と同じ方法を、表1に基づいてモノマーの量および種類を変更し、ならびに異なる釜の石けんレベルを使用して、ラテックス16およびラテックス21を調製した。ラテックス16を調製するために使用される釜の石けんレベルは28gであり、ラテックス21を調製するために使用されるのは14.5gである。
【0055】
アクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、(i)30〜99.9重量%、または60重量%以上または70重量%以上または95重量%までの1以上のアクリルモノマー;(ii)0〜60重量%、または30重量%までの1以上の共重合性エチレン性不飽和モノマー;(iii)0〜10重量%、好ましくは0.1重量%以上、またはさらに好ましくは0.5重量%以上、または5重量%までの1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸または無水物モノマー、またはその塩;(iv)0〜10重量%、好ましくは5重量%までの1以上の極性共重合性モノエチレン性不飽和モノマー;(v)0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の1以上の官能性共重合性モノエチレン性不飽和モノマー;および(vi)0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%の以上の架橋またはグラフト結合モノマーを含み得る(すべての比率は(コ)ポリマーを調製するために使用される全モノマーの重量基準である)。
【0056】
ラテックス1〜ラテックス4、およびラテックス24は本発明から外れるものである。
【0057】
【表3】

【0058】
実施例2
水性コーティング組成物の調製
塗料1
水性エマルジョンコポリマーラテックス1をコポリマー固形分に基づいて1.5重量%のTergitol(商標)15−S−40とともに含有する塗料を、次の手順を用いて調製して、水性コーティング組成物塗料1を形成した。表2において記載された成分(グラインド)を高速Cowel分散機を用いて混合した。表2(レットダウン)において記載された成分を通常の実験室用ミキサーを用いて添加した。結果として得られる塗料のPVCは78%である。結果として得られる塗料の体積固形分は32.5%である。
【0059】
塗料2〜塗料24
塗料2〜塗料24(ラテックス2〜ラテックス24と、Ca2+試験に合格するための一定レベルの界面活性剤とを含有する)を塗料1の調製の手順に従って調製した。塗料3は後添加界面活性剤を含まないラテックス3を含有する。水およびバインダー重量の適切な調節を行って、結果として得られる塗料が32.5%の体積固体および78%のPVCを有するようにした。
【0060】
塗料1〜塗料4は本発明から外れるものである。
【0061】
【表4】

【0062】
塗料25
水性エマルジョンポリマーラテックス1を、ポリマー固形分に基づいて1.5重量%のTergitol(商標)15−S−40とともに含有する塗料を、次の手順を用いて調製して、水性コーティング組成物塗料25を形成した。表3(グラインド)において記載される成分を、高速Cowles分散機を用いて混合した。表3(レットダウン)において記載される成分を、通常の実験室用ミキサーを用いて添加した。結果として得られる塗料のPVCは55%である。結果として得られる塗料の体積固形分は32.3%である。
【0063】
【表5】

【0064】
塗料26
塗料26(ラテックス7と、Ca2+試験に合格するための一定レベルの界面活性剤とを含有する)を塗料25の調製についての手順に従って調製した。水およびバインダー重量の適切な調節を行って、結果として得られる塗料が体積固形分32.3%およびPVC55%を有するようにした。
【0065】
塗料27
水性エマルジョンポリマーラテックス1と、ポリマー固形分基準で1.5重量%のTergitol(商標)15−S−40とを含有する塗料を、次の手順を用いて調製し、水性コーティング組成物塗料27を形成した。表4において記載される成分(グラインド)を、高速Cowles分散機を用いて混合した。表4(レットダウン)において記載される成分を、通常の実験室用ミキサーを用いて添加した。結果として得られる塗料のPVCは90%である。結果として得られる塗料の体積固形分は32.3%である。
【0066】
【表6】

【0067】
塗料28
塗料28(実施例ラテックス7と、Ca2+試験に合格するための一定レベルの界面活性剤とを含有する)を塗料27の調製についての手順に従って調製した。水およびバインダー重量の適切な調節を行って、結果として得られる塗料が体積固形分32.1%およびPVC90%を有するようにした。
【0068】
塗料29
水性エマルジョンポリマーラテックス1とポリマー固形分基準で1.5重量%のTergitol(商標)15−S−40を含有する塗料を、次の手順を用いて調製し、水性コーティング組成物塗料29を形成した。表5において記載される成分(グラインド)を、高速Cowles分散機を用いて混合した。表5(レットダウン)において記載される成分を、通常の実験室用ミキサーを用いて添加した。結果として得られる塗料のPVCは90%である。結果として得られる塗料の体積固形分は35%である。
【0069】
【表7】

【0070】
塗料30
塗料30(実施例ラテックス7と、Ca2+試験に合格するための一定レベルの界面活性剤を含有する)を塗料29の調製についての手順に従って調製した。水およびバインダー重量の適切な調節を行って、結果として得られる塗料が体積固形分35%およびPVC40%を有するようにした。
【0071】
塗料25、塗料27、および塗料29は本発明から外れるものである。
【0072】
III.水性エマルジョンコポリマーおよび水性コーティング組成物の結果
表6は、全てのラテックスの性質および塗料1〜塗料24の性質を記載する。
【0073】
【表8】

【0074】
前記表における結果は、乾燥コーティングのスクラブ耐性がラテックス粒子サイズが増大するにつれ減少することを示す。SSSをエマルジョンコポリマーから除去すると、安定性の低いラテックスおよびコーティング組成物が得られる。スクラブ耐性と安定性の良好なバランスがコーティング組成物に必要である。
【0075】
表7は塗料25〜塗料30の性質を記載する。
【0076】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性コポリマー分散体であって、前記コポリマーが、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで:
a)89〜99.93%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、
b)0.05〜5%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含まないもの、またはその塩、
c)0.01〜3%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性飽和モノマー、および
d)0.01〜3%の、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩
を含むモノマーの混合物から得られる、水性コポリマー分散体。
【請求項2】
モノマーb)が、ホスホアルキル(メタ)アクリレートまたはホスホアルコキシ(メタ)アクリレート、またはその塩から選択される請求項1記載の水性コポリマー分散体。
【請求項3】
モノマーの混合物が、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで、モノマーe)最大5%までの、カルボキシル、無水カルボン酸、ヒドロキシル、アミド、およびその混合物から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、請求項1記載の水性コポリマー分散体。
【請求項4】
前記コポリマーが、50〜350ナノメートルの平均粒子直径および−35℃〜60℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1記載の水性コポリマー分散体。
【請求項5】
前記コポリマー粒子が中空内部コアを有する請求項1記載の水性コポリマー分散体。
【請求項6】
前記コポリマー分散体が、不揮発性塩基により調節された7.0〜9.0のpHを有する請求項1記載の水性コポリマー分散体。
【請求項7】
水性コーティング組成物であって、
(i)少なくとも1種の水性コポリマー分散体であって、該コポリマーは、50〜350ナノメートルの平均粒子直径および−35〜60℃のガラス転移温度(Tg)を有し、該コポリマーは、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで:a)92〜99.94%の少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマー、b)0.05〜5%の少なくとも1種のエチレン性不飽和リン含有モノマーであって、ホスホネート官能基を含まないもの、またはその塩、およびc)0.01〜3%の、少なくとも1種のアルコキシシラン官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーの混合物から得られる、水性コポリマー分散体;
(ii)少なくとも1種の顔料(ここで、前記コーティング組成物は、40〜90%の顔料体積濃度(PVC)を有する)、
(iii)少なくとも1種のコーティングアジュバント
を含む水性コーティング組成物。
【請求項8】
モノマーがさらに、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで、モノマーd)最大3%までの、硫黄ベースの酸から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーまたはその塩を含む請求項7記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
モノマーがさらに、コポリマーの乾燥重量基準の重量パーセンテージで、モノマーe)最大5%までの、カルボキシル、無水カルボン酸、ヒドロキシル、アミド、およびその混合物から選択される少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種のエチレン性飽和モノマーを含む請求項7記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
モノマーb)が、ホスホアルキル(メタ)アクリレートまたはホスホアルコキシ(メタ)アクリレート、またはその塩から選択される、請求項7記載の水性コーティング組成物。

【公開番号】特開2008−280522(P2008−280522A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−60604(P2008−60604)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】