説明

水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法

【課題】自動車用バンパーなどのプラスチック成形品に高明度或いは高彩度の塗色を形成可能で、十分な導電性を有し、耐水性、耐湿性等に優れたプライマー塗膜を形成できる水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性ウレタン樹脂及び/又は水性アクリル樹脂、(C)導電性金属酸化物、及び(D)アルミニウム片を含んでなり、成分(A)/成分(B)の固形分質量比が15/85〜80/20の範囲内にあり、且つ成分(C)を組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して50〜300質量部の範囲内で含有し、成分(D)を組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して1〜30質量部の範囲内で含有することを特徴とする水性プライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用バンパーなどのプラスチック成形品に高明度或いは高彩度の塗色を形成可能で、十分な導電性を有し、耐水性、耐湿性等に優れたプライマー塗膜を形成できる水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用バンパーなどに使用されているプラスチック素材は、通常、約1010Ω/cm以上の体積固有抵抗値を有するものであり、このようなプラスチック成形品に塗着効率に優れる静電塗装法を用いて塗料を直接塗装することは困難であるため、従来、このような素材面にはまず導電性プライマー塗料を塗装した後、着色を目的とした上塗り塗料が静電塗装されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなプラスチック素材は、通常、黒色などの濃い色が付いており、淡彩色や隠蔽性の低い上塗り塗料を塗装する場合には、上記導電性プライマー塗料に高い隠蔽性や高明度色が求められる。そこで明度の比較的高い導電フィラーを用いた導電性塗料が種々提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。これらのうち明度が比較的高く導電性も良好なアンチモンドープタイプの導電フィラーでは毒性の問題があり、また針状の導電材は安全衛生面から敬遠されつつある。
【0004】
さらに上記導電性塗料のうち、安全衛生、環境保全の観点から、水性塗料を採用すると、ビヒクル成分として使用されている塩素化ポリオレフィン等の水性分散液に、水分散化のために多量の乳化剤を用いる必要があり、これを配合したプライマーでは、形成塗膜の耐水性、耐湿性等が不十分となる場合が見られ、特に90℃以下の低温焼付で厚膜形成時の耐水性、耐湿性、耐ガソホール性が低下しやすいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−165966号公報
【特許文献2】特開平9−12314号公報
【特許文献3】特開平10−53417号公報
【特許文献4】特開2006−219521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、自動車用バンパーなどのプラスチック成形品に高明度或いは高彩度の塗色を形成可能で、十分な導電性を有し、耐水性、耐湿性等に優れたプライマー塗膜を形成でき、たとえ90℃以下の低温焼付で厚膜形成時であっても耐水性、耐湿性、耐ガソホール性などに優れた塗膜を形成する水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いたプラスチック成型品の塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性ウレタン樹脂及び/又は水性アクリル樹脂、(C)導電性金属酸化物、及び(D)アルミニウム片を含んでなり、成分(A)/成分(B)の固形分質量比が15/85〜80/20の範囲内にあり、且つ成分(C)を組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して50〜300質量部の範囲内で含有し、成分(D)を組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して1〜30質量部の範囲内で含有することを特徴とする水性プライマー組成物、及びこれをプラスチック成形品に塗装し、ついでその塗面に上塗り塗料を静電塗装することを特徴とするプラスチック成形品の塗装方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変性ポリオレフィンの水性分散体、水性ウレタン樹脂及び/又は水性アクリル樹脂、及び特定の導電材を組合せて特定量配合することによって、プラスチック成形品に高明度或いは高彩度の塗色を形成可能で、十分な導電性を有し、耐水性、耐湿性等に優れたプライマー塗膜を形成でき、たとえ90℃以下の低温焼付で厚膜形成時であっても耐水性、耐湿性、耐ガソホール性などに優れたプライマー塗膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明の水性プライマー組成物は、変性ポリオレフィンの水性分散体(A)を含有する。変性ポリオレフィンには、通常、ポリオレフィンの不飽和カルボン酸又は酸無水物変性物、アクリル変性物、塩素化物、またこれらの変性物を組合せて用いて得られる変性ポリオレフィンなどが包含され、なかでも不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)が特に好適である。
【0010】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、通常、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数が2〜10のオレフィン類から選ばれた1種又は2種以上を重合せしめてなるポリオレフィンを、さらに(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸又はそれらの酸無水物を用いて、既知の方法に従ってグラフト共重合させて変性したものであり、特にマレイン酸又はその酸無水物によって変性されたものが好適である。該不飽和カルボン酸又はその酸無水物によるグラフト共重合量は、ポリオレフィンの固形分質量に対して1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%の範囲内が適当である。
【0011】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)に使用されるポリオレフィンとしては、特に得られるポリオレフィンの分子量分布が狭く、ランダム共重合性等にも優れる等の点から、その重合触媒としてシングルサイト触媒を用いて製造されたものが好適である。シングルサイト触媒は、活性点が同種(シングルサイト)のものであり、該シングルサイト触媒の中でも特にメタロセン系触媒が好ましく、該メタロセン系触媒は、通常、共役五員環配位子を少なくとも1個有する周期律表4〜6族及び8族の遷移金属化合物や3族の希土類遷移金属化合物であるメタロセン(ビス(シクロペンタジエニル)金属錯体及びその誘導体)と、これを活性化できるアルミノキサン等の助触媒、さらにトリメチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を組合せて得られるものである。該ポリオレフィンの製造方法には、従来公知の方法が採用でき、例えばプロピレンやエチレン等と水素を反応容器に供給しながら連続的にアルキルアルミニウムとメタロセン系触媒を添加しながら製造する方法が挙げられる。
【0012】
また上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、必要に応じて、さらにアクリル変性されていても良い。該アクリル変性に使用する重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−もしくはi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−もしくはt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマーやさらにスチレンなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0014】
上記アクリル変性の方法としては、例えば不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどをまず反応させて重合性不飽和基を導入し、次いで他のモノマーを単独で又は2種以上混合して用いて、重合性不飽和基が導入された不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンと共重合させるなどの方法が挙げられる。アクリル変性する場合の上記重合性不飽和モノマーの使用量は、得られる変性ポリオレフィン中において固形分質量で85質量%以下、好ましくは0.1〜80質量%の範囲内とすることが他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の点から望ましい。
【0015】
また上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、必要に応じて、さらに塩素化されていても良い。ポリオレフィンの塩素化は、例えば、ポリオレフィン又はその変性物の有機溶剤溶液又は分散液に塩素ガスを吹き込むことによって行うことができ、反応温度は50〜120℃とすることができる。ポリオレフィンの塩素化物(固形分)中の塩素含有率は、ポリオレフィンの塩素化物に望まれる物性などに応じて変えることができるが、形成塗膜の付着性などの点から、一般には、ポリオレフィンの塩素化物の質量を基準にして35質量%以下、特に10〜30質量%、とりわけ12〜25質量%の範囲内とすることが望ましい。
【0016】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)に使用されるポリオレフィンは、特にプロピレンを重合成分として含有するものであることが好適であり、該不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)におけるプロピレンの質量分率は、0.5〜0.99、好ましくは0.7〜0.95であることが他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の点から好適である。
【0017】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)は、融点が120℃以下、好ましくは50〜100℃の範囲内であり、質量平均分子量(Mw)が30,000〜200,000、好ましくは50,000〜120,000の範囲内であるのがよい。これらの範囲から逸脱すると本発明の目的が達成されず、他成分との相溶性、形成塗膜のポリオレフィン基材や上塗り塗膜層との層間付着性が低下することがあるので好ましくない。また変性ポリオレフィン(i)の融解熱量は、1〜50mJ/mg、好ましくは2〜50mJ/mgの範囲内であることが上記のような付着性の点から望ましい。
【0018】
ここで融点及び融解熱量は、「DSC−5200」(セイコー電子工業社製、商品名)を使用し、変性ポリオレフィン20mgを用いて、−100℃から150℃まで昇温速度10℃/分にて熱量を測定して得たものである。融点の調整はポリオレフィンの組成、特にα−オレフィンモノマー量を変化させることにより行なうことができる。融解熱量が求め難い場合には、測定試料を120℃まで加熱後、10℃/分で冷却してから、2日間以上静置し、上記の方法で熱量を測定しても良い。
【0019】
また上記変性ポリオレフィンの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した質量平均分子量をポリスチレンの質量平均分子量を基準にして換算した値であり、「HLC/GPC150C」(Water社製、60cm×1)により、カラム温度135℃、溶媒としてo−ジクロロベンゼンを使用し、流量1.0ml/minで測定したものである。注入試料は、o−ジクロロベンゼン3.4mlに対しポリオレフィン5mgの溶液濃度となるように140℃で1〜3時間溶解して調製した。尚、ゲルパーミエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「GMHHR −H(S)HT」(東ソー(株)社製、商品名)を挙げることができる。
【0020】
本発明では、さらに上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.5〜4.0、好ましくは2.0〜3.5であることが他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の点から望ましい。
【0021】
本発明においては耐湿性、耐ガソホール性付与の点から、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性することができる。
【0022】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物におけるポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。
【0023】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物は、数平均分子量が400〜3,000、好ましくは500〜2,000の範囲内にあることが好適である。数平均分子量が400より小さい場合には親水基としての効果を十分発揮することができず、また塗膜性能(特に耐水性)に悪影響を及ぼすことがあるため好ましくなく、一方、3,000より大きい場合には、室温において固形化し溶解性が悪くなるため、取り扱いにくいことがあるので好ましくない。
【0024】
上記変性ポリオレフィンとしては、上記ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性されたものであれば特に制限なく使用可能であり、特に不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)に水酸基やアミノ基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)を反応させて得られるものや、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)がアクリル変性される場合に重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(iii)を用いてなるものが好適に使用できる。
【0025】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の変性に用いる水酸基やアミノ基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)としては、例えばポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルファニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミンのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド重合体付加物などのポリオキシアルキレンアルキルアミン等が挙げられ、これらは1種のみで又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
前記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)と水酸基やアミノ基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)との反応は、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を80〜200℃で加熱溶融し、そこへ化合物(ii)を添加し、必要に応じて塩基性物質等を添加し加熱して行うことができる。その使用割合は、(i)の固形分100質量部に対して(ii)0.5〜50質量部、好ましくは0.5〜25質量部の範囲内が望ましい。
【0027】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)の変性に用いる重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(iii)としては、例えばポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルマレイン酸エステル、アリル基含有ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられ、これらは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
前記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)と重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(iii)との反応は、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を80〜200℃で加熱溶融し、上記アクリル変性の説明で述べた通り不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを添加し、必要に応じて重合禁止剤や塩基性物質等を添加し加熱して変性ポリオレフィン(i)に重合性不飽和基をまず導入し、次いでそこへ化合物(iii)を添加し、必要に応じて重合開始剤等を添加し、加熱して行うことができる。その使用割合は、(i)の固形分100質量部に対して(iii)0.5〜50質量部、好ましくは0.5〜25質量部の範囲内が望ましい。
【0029】
本発明において、変性ポリオレフィンの水性分散体(A)は、上記の通り得られる変性ポリオレフィンを水性媒体中に分散させることによって得られるものであり、必要に応じて変性ポリオレフィン中のカルボキシル基の一部もしくは全部をアミン化合物で中和し、及び/又は乳化剤を加えても良い。上記変性ポリオレフィンがポリオキシアルキレン鎖を有する場合には、該アミン化合物や乳化剤を使用せず、もしくは少量を使用して変性ポリオレフィンを水性媒体中に分散させることが可能である。
【0030】
上記アミン化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミンなどが挙げられる。
【0031】
上記アミン化合物を使用する場合には、その使用量は上記変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して0.1〜1.0モル当量の範囲内であることが望ましい。
【0032】
上記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のノニオン系乳化剤;アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩等のアニオン系乳化剤などが挙げられ、さらに1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン系乳化剤や1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン系乳化剤なども挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0033】
上記乳化剤を使用する場合には、その使用量が上記変性ポリオレフィンの固形分100質量部に対して25質量部以下、好ましくは0.5〜20質量部の範囲内であることが望ましい。
【0034】
本発明の水性プライマー組成物は、水性ウレタン樹脂及び/又は水性アクリル樹脂(B)を含有する。
【0035】
水性ウレタン樹脂は、分子中にウレタン結合を有する水溶性もしくは水分散性の樹脂であり、酸価を持つ自己乳化型エマルションや乳化剤を併用したエマルション、水溶性樹脂が挙げられ、特にディスパージョンの形態が好適である。ウレタンディスパージョンは、通常、乳化剤の存在下に予めジオールとジイソシアネート、さらに必要に応じてジメチロールアルカン酸等を反応させて得られるウレタンプレポリマーを水中に分散させながら、強制乳化または自己乳化させることにより得られるディスパージョンである。
【0036】
上記水性ウレタン樹脂の骨格としては、例えばエーテル系、カーボネート系、エステル系などが挙げられ、これらのうち形成膜の耐水性の点からはエーテル系やカーボネート系が望ましい。また上記水性ウレタン樹脂は水酸基を含有するものであっても良い。
【0037】
上記水性アクリル樹脂は、通常、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなる混合物を共重合させることにより得られる、質量平均分子量5,000〜100,000、好ましくは5,000〜50,000の範囲内の水溶性アクリル樹脂、或いは質量平均分子量50,000以上、好ましくは100,000以上のアクリル樹脂エマルションが挙げられる。かかる質量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した質量平均分子量をポリスチレンの質量平均分子量を基準にして換算したときの値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置には「HLC8120GPC」(東ソー(株)社製、商品名)が使用でき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を使用する。
【0038】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらのうちのジカルボン酸のハーフモノアルキルエステル化物などが挙げられ、これ以外の親水性基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えばポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレン鎖含有重合性不飽和モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;4級アンモニウム塩化カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等などが挙げられる。
【0039】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−もしくはi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−もしくはt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0040】
上記モノマー混合物の共重合は、特に制限されるものではなく、それ自体既知の方法で行うことができ、例えば水溶性アクリル樹脂は溶液重合法などによって、またアクリル樹脂エマルションは乳化重合法などによって行なうことができる。
【0041】
上記水性アクリル樹脂が、特に乳化重合によって得られるアクリル樹脂エマルションである場合には、水及び乳化剤の存在下にモノマー混合物を用いて多段階で乳化重合させて得られる多層構造粒子状のエマルションであってもよい。
【0042】
上記水性アクリル樹脂中の親水性基含有重合性不飽和モノマーに由来するカルボキシル基などの酸性基は、必要に応じて塩基性物質を用いて中和することができる。塩基性物質としては、水溶性であることが好ましく、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどが挙げられ、これらは1種で又は2種以上組合せて使用できる。
【0043】
上記水性アクリル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水酸基価20〜200mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、酸価1〜100mgKOH/g、好ましくは10〜70mgKOH/gの範囲内であることが、水分散性や他成分との相溶性、形成塗膜の硬化性の点から望ましい。
【0044】
本発明では、前記水性分散体(A)と上記樹脂(B)との使用比が、前記成分(A)/成分(B)の固形分質量比で15/85〜80/20、好ましくは20/80〜75/25の範囲内である。この範囲を外れると形成塗膜の素材への付着性、耐水性、耐ガソホール性等が低下するので好ましくない。
【0045】
本発明の水性プライマー組成物は、導電材として導電性金属酸化物(C)及びアルミニウム片(D)を含有する。導電性金属酸化物(C)としては、球状の導電性金属酸化物(c−1)が組成物の貯蔵安定性や塗膜の仕上り性の点から好適であり、また導電性向上の点から球状の導電性金属酸化物(c−1)に板状の導電性金属酸化物(c−2)を併用しても良い。
【0046】
球状の導電性金属酸化物(c−1)は、平均粒子径0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内であることが組成物の貯蔵安定性や塗膜の仕上り性の点から好適である。ここで平均粒子径はレーザー回折散乱式測定器(商品名「マイクロトラック FRA」、日機装社製)によって得られるものである。
【0047】
上記(c−1)としては、例えば酸化錫を主成分とするものが挙げられ、また酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどを基材としてその表面に酸化錫や酸化ニッケル、リン、アンチモンなどを含む導電層を有するもの等が例示でき、具体的な市販品としてはET500W、ET521W(いずれも石原産業社製)などが挙げられる。これらのうち特に酸化錫を含む導電層を表面に有する導電性酸化チタンが好適である。かかる酸化錫を含む導電層を表面に有する導電性酸化チタンとしては、酸化錫が酸化チタンに対してSn/Ti=10/90〜50/50の割合(質量比)で含まれることが導電性や明度の点から望ましく、環境の面からはアンチモンフリーであることが望ましい。
【0048】
板状の導電性金属酸化物(c−2)は、平均長径5〜30μm、好ましくは8〜25μmの範囲内で、平均厚み0.01〜1μm、好ましくは0.02〜1μmの範囲内であることが仕上り性、導電性の点から好適である。ここで平均長径はレーザー回折散乱式測定器(商品名「マイクロトラック FRA」、日機装社製)によって得られるものであり、平均厚みは電子顕微鏡で直接観察によって算出されたものである。
【0049】
上記(c−2)としては、例えば板状の酸化チタン、マイカなどを基材としてその表面に酸化錫や酸化ニッケル、リン、アンチモンなどを含む導電層を有するもの等が例示でき、具体的な市販品としてはデントールTM200(大塚化学社製)、ミナテック40CM、ミナテック30CM(いずれもメルク社製)などが挙げられる。これらのうち特に酸化錫を含む導電層を表面に有する導電性酸化チタン及び/又は導電性マイカが好適である。かかる酸化錫を含む導電層を表面に有する導電性酸化チタンや導電性マイカとしては、酸化錫が酸化チタンやマイカに対して10/90〜50/50の割合(質量比)で含まれることが導電性と明度のバランスの点から望ましく、環境の面からはアンチモンフリーであることが望ましい。
【0050】
上記導電材(C)は本発明組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して50〜300質量部、好ましくは120〜200質量部の範囲内で含有するのがよい。この範囲を外れると導電性が不十分になったり、形成塗膜の付着性、耐水性などが低下する恐れがあるので好ましくない。また上記(c−1)及び(c−2)を併用する場合、質量比で99/1〜50/50の範囲内、好ましくは90/10〜50/50の範囲内で併用することが導電性の点から好適である。
【0051】
上記アルミニウム片(D)は平均長径5〜30μm、好ましくは8〜20μmの範囲内で、平均厚み0.01〜1μm、好ましくは0.02〜0.5μmの範囲内であることが仕上り性、導電性の点から好適である。ここで平均長径はレーザー回折散乱式測定器(商品名「マイクロトラック FRA」、日機装社製)によって得られるものであり、平均厚みは電子顕微鏡で直接観察によって算出されたものである。
【0052】
上記アルミニウム片(D)は、水との接触による反応を抑制する点から、リン酸エステル類やリン酸基含有樹脂などによって前処理されることが望ましく、特にリン酸基含有重合性不飽和モノマーと、その他の重合性不飽和モノマーを共重合させることにより得られる酸価10〜200mgKOH/gのリン酸基含有樹脂(iv)で前処理されることが望ましい。
【0053】
リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、下記一般式(1)
【0054】
【化1】

【0055】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは−O−又は−NH−、好ましくは−O−を表し、Rは炭素数1〜30の2価の有機基を表す。]で表されるリン酸基含有重合性不飽和モノマーであれば特に制限されないが、例えば、アルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー、オキシアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー、ポリエステル変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー、ポリカーボネート変性リン酸基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが好適である。特にアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマー、オキシアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種が耐水性、付着性の点から好適である。
【0056】
上記アルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートを用いることが特に好適である。上記オキシアルキレン変性リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アシッドホスホキシテトラ(オキシエチレン)グリコールモノメタクリレート、アシッドホスホキシペンタ(オキシエチレン)グリコールモノメタクリレート、アシッドホスホキシペンタ(オキシプロピレン)グリコールモノメタクリレート、アシッドホスホキシヘキサ(オキシプロピレン)グリコールモノメタクリレート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−もしくはi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−もしくはt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香環含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用できる。これらのうち、炭素数が6以上の直鎖状、分岐状もしくは環状で飽和又は不飽和の炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマーや芳香環含有重合性不飽和モノマーを用いることが得られる塗膜の耐水性等の点から好適である。
【0058】
上記リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーの使用割合は、通常、質量比で10/90〜70/30、好ましくは15/85〜60/40、さらに好ましくは20/80〜55/45の範囲内であることが好適である。
【0059】
これらのモノマーの共重合は、それ自体既知の方法、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水性媒体中でのエマルション重合法などの方法により行なうことができるが、なかでも溶液重合法が好適である。溶液重合法による共重合法としては、例えば、前記リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーとラジカル重合開始剤の混合物を、有機溶媒に溶解もしくは分散せしめ、通常、約80〜約200℃の温度で1〜10時間程度撹拌しながら加熱して重合させる方法を挙げることができる。
【0060】
かくして得られるリン酸基含有樹脂(iv)は、酸価が10〜200mgKOH/g、好ましくは40〜170mgKOH/g、さらに好ましくは70〜150mgKOH/gの範囲内であることが好適であり、水酸基価が15〜200mgKOH/g、好ましくは20〜140mgKOH/g、さらに好ましくは30〜100mgKOH/g、特に好ましくは40〜90mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0061】
リン酸基含有樹脂(iv)は、塗料に配合するに先立ち、例えば、アンモニア、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノールなどの塩基で予め中和しておくことができる。
【0062】
上記アルミニウム片(D)とリン酸基含有樹脂(iv)の使用比は、質量比で50/50〜85/15、好ましくは70/30〜85/15の範囲内であることが導電性や耐水性等の点から好適である。
【0063】
上記アルミニウム片(D)は本発明組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して1〜30質量部、好ましくは5〜15質量部の範囲内で含有されるのがよい。この範囲を外れると導電性が不十分になったり、形成塗膜の付着性、耐水性などが低下する恐れがあるので好ましくない。
【0064】
本発明の水性プライマー組成物には、必要に応じて上記(C)や(D)以外の導電材や塗料分野で通常使用されるそれ自体既知の顔料、例えば、着色顔料、体質顔料などを配合することができる。
【0065】
上記(C)や(D)以外の導電材としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイル等の導電性カーボンや、銀、ニッケル、銅、グラファイト等の金属粉、酸化錫やアンチモン等を導電層として表面に有する針状酸化チタン等の針状の導電性金属酸化物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0066】
上記着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、ベンガラ、アルミペースト、アゾ系、フタロシアニン系などが挙げられ、体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0067】
本発明組成物には、さらに必要に応じて、架橋剤を含有せしめることができる。該架橋剤としては、通常、上記樹脂(B)などに含まれる水酸基と反応し得る、アミノ樹脂及び/又は(ブロック)ポリイソシアネートが挙げられる。また、変性ポリオレフィンの水分散体(A)中のカルボキシル基と反応し得るエポキシ化合物を、架橋剤として用いてもよい。
【0068】
上記アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられ、なかでもメラミン樹脂が好適である。メラミン樹脂としては、特に、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシルなどのアルキル基でエーテル化されたアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましく、疎水性又は親水性のいずれのタイプのものであってもよい。これらのメラミン樹脂はさらにメチロール基、イミノ基などを有していてもよい。アミノ樹脂は、通常、500〜5,000、特に800〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することが望ましい。かかるアミノ樹脂の数平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、流量1.0ml/minでゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算したときの値である。ゲルパーミエエーションクロマトグラフィ装置としては、「HLC8120GPC」(東ソー(株)社製、商品名)を使用することができ、カラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)などを使用することができる。
【0069】
上記(ブロック)ポリイシソアネートは、好ましくは、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、及びそのイソシアネート基を必要に応じてブロック剤でブロックしたものである。
【0070】
上記のポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;これらの脂肪族ポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−もしくは−2,6−ジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;これらの脂環族ジイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらの芳香族ジイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;水添MDI及び水添MDIの誘導体;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0071】
ブロックポリイソシアネートは、上記のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を付加させたものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約80〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル系;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル系;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジフェニルなどのマロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸エステル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系等のブロック剤が挙げられる。低温硬化性や変性ポリオレフィンの水分散体(A)及び樹脂(B)などとの相溶性などの点から、これらのうち、特に、活性メチレン系のブロック剤によるブロックポリイソシアネートが好適である。
【0072】
また、上記ブロックポリイソシアネートとして水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネートを用いることもできる。水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をヒドロキシモノカルボン酸を含むブロック剤でブロックし、ヒドロキシモノカルボン酸により導入されたカルボキシル基を中和することによって水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネートや、界面活性剤などの添加又は反応によって水分散化したものなどが包含される。
【0073】
上記エポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば、特に制限はなく、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。該エポキシ化合物は、必要に応じて水分散化して使用することができる。
【0074】
上記架橋剤の含有量は、水性分散体(A)や樹脂(B)などとの相溶性や、形成塗膜の硬化性、付着性、耐水性などの点から、一般に、組成物中の全樹脂固形分中に40質量%以下、特に3〜30質量%の範囲内の範囲内とすることができる。
【0075】
本発明組成物は、さらに必要に応じてポリオキシアルキレン鎖を有するアミンやアミドなどの窒素含有化合物を(D)成分の長期の貯蔵安定性向上や仕上り性、耐水付着性向上の点から含有することができる。かかる窒素含有化合物は、分子量が100〜4,000、好ましくは200〜2,000、さらに好ましくは300〜1,500の範囲内であることが好適であり、HLB値が8〜18、好ましくは10〜17、さらに好ましくは13〜16の範囲内であることが好適である。上記窒素含有化合物は(D)成分100質量部あたり2〜200質量部、好ましくは5〜120質量部の範囲で使用されることが望ましい。
【0076】
本発明組成物は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、消泡剤、有機溶剤、表面調整剤などの塗料用添加剤等を適宜含有することができる。
【0077】
本発明の水性プライマー組成物は、前述のとおり、プラスチック成形品に塗装されることにより、付着性、耐湿性、耐ガソホール性などに優れた塗膜を形成することができる。
【0078】
プラスチック成形品としては、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外板部;家庭電化製品の外板部などに使用されているプラスチック成形品などが挙げられ、その材質としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数2〜10のオレフィン類の1種もしくは2種以上を(共)重合せしめてなるポリオレフィンが特に好適であるが、それ以外に、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドなどにも本発明の組成物を適用することができる。
【0079】
これらのプラスチック成形品には、本発明の組成物の塗装に先立ち、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理などを適宜行なっておくことができる。
【0080】
本発明組成物の塗装は、プラスチック成形品に対し、通常、乾燥膜厚で1〜40μm、好ましくは5〜30μmの範囲内となるように、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬塗装、刷毛などを用いて行なうことができる。該組成物の塗装後、得られる塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間セッティングし又は40〜80℃程度の温度で1〜60分間予備加熱することができ、あるいは約60〜約140℃、好ましくは約70〜約120℃の温度で20〜40分間程度加熱して硬化させることができる。
【0081】
上記の如くして形成されるプライマー塗膜は、導電性を付与し得るものであり、表面抵抗率が1×10Ω/□以下であることが望ましい。これによって導電プライマー塗膜として次の工程での良好な静電塗装が可能となる。なお、ここで、「表面抵抗率」の測定は、乾燥膜厚が約15μmとなるように塗装した塗膜を、80℃で10分間の条件で乾燥させ、TREK社製表面抵抗計、商品名「TREK MODEL 150」を用いて行うことができる(単位:Ω/□)。
【0082】
上記の通り本発明組成物が塗装されたプラスチック成型品には、次いでその塗面に、上塗り塗料を静電塗装することができる。上塗り塗料としては、着色塗料を単独で用いて塗装しても良いし、該着色塗料をベース塗料として用いて、ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装することもできる。
【0083】
上記着色塗料としては、それ自体既知のものを使用することができ、通常、有機溶剤及び/又は水を主たる溶媒とし、着色顔料、光輝顔料、染料などの着色成分と、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分を主に含有するものが用いられる。
【0084】
上記着色塗料に使用される基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基のような架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等を挙げることができる。また架橋剤としては、これらの官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸等を挙げることができる。
【0085】
上記着色塗料は、さらに必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、塗面調製剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックス、防腐剤などの塗料用添加剤等を適宜含有することができる。
【0086】
上記着色塗料は、前記の未硬化の又は硬化されたプライマー塗膜上に、通常、乾燥膜厚で5〜50μm、好ましくは10〜20μmの範囲内となるように静電塗装し、得られた塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間セッティングしたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱することができ、あるいは約60〜140℃、好ましくは約80〜120℃程度の温度で20〜40分間加熱して硬化させることができる。
【0087】
上記クリヤー塗料としては、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分と、有機溶剤や水などを主に含有し、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックスなどの塗料用添加剤を配合してなる有機溶剤系或いは水系の熱硬化性塗料であって、形成されるクリヤー塗膜を透して下層塗膜を視認できる程度の透明性を有するものを用いることができる。
【0088】
上記基体樹脂としては、例えば水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの少なくとも1種の架橋性官能基を含有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられ、特に水酸基含有アクリル樹脂が好適である。架橋剤としては、これらの官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物などが挙げられ、特にポリイソシアネート化合物が好適である。
【0089】
上記クリヤー塗料の塗装は、未硬化の又は硬化された着色ベース塗膜上に、乾燥膜厚で10〜50μm、好ましくは20〜40μmの範囲内となるように静電塗装し、得られた塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間セッティングしたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱した後、約60〜140℃、好ましくは約70〜120℃の温度で20〜40分間加熱して硬化させることにより行うことができる。
【0090】
かくして本発明に従うプライマー塗膜上に、着色ベース塗膜及びクリヤー塗膜が塗装されたプラスチック成形品を得ることができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、例中の「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0092】
変性ポリオレフィンの水性分散体の製造
製造例1
攪拌器、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(メタロセン系触媒を用いて得られたポリプロピレンに対しマレイン酸付加量4質量%で変性したもので、融点80℃、Mw約15万、Mw/Mn約2.5)100gを140℃で加熱溶融し、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(「ニューコール1820」、片末端水酸基含有ポリオキシエチレン化合物、日本乳化剤社製)15gを添加し、攪拌しながら140℃で4時間反応を行った。反応後、90℃に冷却し、脱イオン水を加えてろ過を行い、固形分30%の変性ポリオレフィンの水性分散体(A−1)を得た。
【0093】
製造例2
攪拌器、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(メタロセン系触媒を用いて得られたポリプロピレンに対しマレイン酸付加量4質量%で変性したもので、融点80℃、Mw約15万、Mw/Mn約2.5)200gを120℃で加熱溶融し、2−ヒドロキシアクリレート10gと重合禁止剤(ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン)0.1g、トリエチルアミン2.0gを添加し、1時間撹拌した。そこへポリエチレングリコールモノメタクリレート(「ブレンマーPE−350」、日本油脂社製)30gと重合開始剤(「パーブチルO」、日本油脂社製)0.3gを、攪拌しながら120℃で1時間添加して反応を行った。反応後、トリエチルアミン4gを添加し、30分攪拌後、90℃に冷却し、脱イオン水を加えてろ過を行い、固形分30%の変性ポリオレフィンの水性分散体(A−2)を得た。
【0094】
水酸基含有アクリル樹脂溶液の製造
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル40部を入れ、120℃に加熱保持して、シクロヘキシルメタクリレート53部、n−ブチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート21部、アクリル酸6部およびアゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下後、同温度で1時間熟成させ、アゾビスジメチルバレロニトリル1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル10部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに1時間熟成後、ジメチルエタノールアミン7.4部、脱イオン水193部を攪拌しながら添加し、酸価47mgKOH/g、水酸基価101mgKOH/g、質量平均分子量約1万の水酸基含有アクリル樹脂溶液(B−1)を得た。
【0095】
アルミニウム分散液の製造
攪拌器、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル120部を入れ、110℃に加熱し、同温度に保持してから、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(分子量210)6部、アシッドホスホキシペンタ(オキシプロピレン)グリコールモノメタクリレート(分子量456)34部、n−ブチルアクリレート30部、スチレン20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3部からなる混合物(I)103部を4時間を要して滴下し、滴下終了後1時間攪拌熟成を行なった。その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1部とプロピレングリコールモノメチルエーテル30部とからなる開始剤溶液を1時間を要して滴下し、滴下終了後1時間攪拌熟成して分散用樹脂(P1)を得た。得られた顔料分散用樹脂(P1)の酸価は112mgKOH/g、水酸基価は48mgKOH/g、質量平均分子量は17,000、固形分濃度は40%であった。
【0096】
アルミニウム顔料ペースト「アルペースト55−519」(東洋アルミニウム社製、商品名、平均長径約15μm、平均厚み約0.1μm、アルミニウム粉含有率66%)17.8部、エチレングリコールモノブチルエーテル25部、上記で得た顔料分散用樹脂(P1)8部、及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、アルミニウム分散液(D−1)を得た。
【0097】
水性プライマーの作成
実施例1
変性ポリオレフィンの水性分散体(A−1)を固形分質量で50部、水酸基含有アクリル樹脂溶液(B−1)を固形分質量で20部、水性ウレタン樹脂(B−2)(「ユーコートUX−310」、三洋化成社製、ウレタンディスパージョン)を固形分質量で30部、導電材(C1−1)(注3)75部、導電材(C2−1)(注4)75部、アルミニウム分散液(D−1)を固形分質量で10部を、常法に従って配合し、固形分35%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(1)を得た。
【0098】
実施例2〜12及び比較例1〜6
実施例1において、配合組成を表1に示す通りとする以外は実施例1と同様に行って各水性プライマー(2)〜(18)を得た。
【0099】
表1の配合は固形分表示であり、表1中の(注1)〜(注6)は下記の通りである。
(注1)変性ポリオレフィンの水性分散体(A−3):メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5%)に対しマレイン酸付加量8質量%で変性したもので、融点が80℃、Mwが約10万、Mw/Mnが約2.1であるものを、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにポリプロピレン/エチレン共重合体100部に対して乳化剤10部使用で水分散化したもの。(注2)変性ポリオレフィンの水性分散体(A−4):「EH−801」、塩素化ポリオレフィンの水性分散体、東洋化成社製、商品名、塩素化度16%、固形分30%。(注3)導電材(C1−1):国際公開2005/012449パンフレットの製造例1に記載の方法に準じて製造される、酸化錫を含む導電層を表面に有する球状導電性酸化チタン粉末、平均粒子径約0.25μm。(注4)導電材(C2−1):国際公開2004/010439パンフレットの実施例3に記載の方法に準じて製造される、酸化錫を含む導電層を表面に有する薄片状導電性酸化チタン粉末、平均長径約10μm、平均厚み約0.5μm。(注5)「JR−806」、テイカ社製、チタン白。(注6)窒素含有化合物:ポリオキシエチレンラウリルアミン。(注7)導電材(C1−2):「W−1」、アンチモンドープ酸化錫層を表面に有する球状導電性粉末、三菱マテリアル社製。(注8)導電材(C1−3):「ET500W」、アンチモンドープ酸化錫層を表面に有する球状導電性粉末、石原産業社製。(注9)導電材(C2−2):「ミナテック40CM」、アンチモンドープ酸化錫層を表面に有するマイカ、メルク社製。(注10)メラミン樹脂:「サイメル325」、日本サイテック社製。
【0100】
【表1】

【0101】
試験塗装物の作成
バンパーに成型加工したポリプロピレン(脱脂処理済)に、上記の通り作成した水性プライマー(1)〜(18)を乾燥膜厚で約15μmになるようにスプレー塗装し、80℃で3分間プレヒート後、その上に着色ベースコート塗料として「ソフレックス415H」(関西ペイント社製、溶剤型着色ベースコート塗料)を乾燥膜厚で約15μmとなるように静電塗装し、80℃で3分間プレヒート後、クリヤー塗料として「ソフレックス 7500Hクリヤー」(関西ペイント社製、アクリルウレタン系溶剤型クリヤー塗料)を乾燥膜厚で約30μmとなるように静電塗装して、80℃で30分間加熱乾燥させて各試験塗装物を作成した。
【0102】
上記の通り作成した各試験塗装物を下記性能試験に供した。その結果を表1に併せて示す。
【0103】
性能試験方法
(*1)導電性:ポリプロピレン板(脱脂処理済)に、各水性プライマー(1)〜(18)をそれぞれ乾燥膜厚で約15μmになるようにスプレー塗装して形成したプライマー塗膜を80℃で5分間加熱した後、各塗膜面の表面抵抗率(Ω/□)を「MODEL150」(TREK社製、商品名)で20℃にて測定した。◎は1MΩ未満、○は1MΩ以上100MΩ未満、△は100MΩ以上10000MΩ未満、×は10000MΩ以上を示す。
【0104】
(*2)明度(L値):ポリプロピレン板(脱脂処理済)に、各水性プライマー(1)〜(18)をそれぞれ乾燥膜厚で約15μmになるようにスプレー塗装して形成したプライマー塗膜を80℃で5分間加熱した後、各塗膜面の明度L値を「CR−300」(ミノルタ社製、商品名)で測定した。
【0105】
(*3)初期付着性:各試験塗装物の塗膜面に素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmのマス目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープ(登録商標)を貼着し、20℃においてそれを急激に剥離した後のマス目の残存塗膜数を調べた。○は100個(ハガレなし)、△は99〜50個、×は49個以下を示す。
【0106】
(*4)耐水性:各試験塗装物の塗装したバンパーの一部を切り取り、40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げて乾燥してから、上記の初期付着性試験と同様にして付着性試験を行ない、残存塗膜数を調べて上記と同様に評価した。
【0107】
(*5)リコート付着性:各試験塗装物を室温で1日間放置し、その塗面に同一のクリヤー塗料を再塗装し硬化させてから、室温で1日間放置した後、上記の初期付着性試験と同様にして付着性試験を行なった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、プラスチック成形品に高明度或いは高彩度の塗色を形成可能で、十分な導電性を有し、耐水性、耐湿性等に優れたプライマー塗膜を形成できる水性プライマー組成物を提供することができるので、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)水性ウレタン樹脂及び/又は水性アクリル樹脂、(C)導電性金属酸化物、及び(D)アルミニウム片を含んでなり、成分(A)/成分(B)の固形分質量比が15/85〜80/20の範囲内にあり、且つ成分(C)を組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して50〜300質量部の範囲内で含有し、成分(D)を組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して1〜30質量部の範囲内で含有することを特徴とする水性プライマー組成物。
【請求項2】
変性ポリオレフィンの水性分散体(A)が、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を水性媒体中に分散させたものである請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項3】
変性ポリオレフィンの水性分散体(A)が、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)を、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性せしめたポリオレフィンを水性媒体中に分散させたものである請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項4】
導電性金属酸化物(C)が、球状の導電性金属酸化物(c−1)である請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項5】
導電性金属酸化物(C)が、球状の導電性金属酸化物(c−1)及び板状の導電性金属酸化物(c−2)からなる請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項6】
導電性金属酸化物(c−1)及び(c−2)の使用比が、(c−1)/(c−2)の質量比で50/50〜99/1の範囲内である請求項5記載の水性プライマー組成物。
【請求項7】
アルミニウム片(D)が、リン酸基含有重合性不飽和モノマーと、その他の重合性不飽和モノマーを共重合させることにより得られる酸価10〜200mgKOH/gのリン酸基含有樹脂(iv)で前処理される請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項8】
アルミニウム片(D)とリン酸基含有樹脂(iv)の使用比が、質量比で50/50〜85/15の範囲内である請求項7記載の水性プライマー組成物。
【請求項9】
プラスチック成形品に、上記請求項1ないし8のいずれか1項に記載の水性プライマー組成物を塗装し、次いでその塗面に上塗り塗料を静電塗装することを特徴とするプラスチック成形品の塗装方法。
【請求項10】
請求項9記載の塗装方法により得られる塗装物品。

【公開番号】特開2009−30020(P2009−30020A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125026(P2008−125026)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】