説明

水性分散液およびその製造方法

【課題】本発明の目的は分散粒子が小さく、かつ各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)、ならびに溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を、前記カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に含む水性分散液、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性分散液およびその製造方法に関する。本発明の水性分散液は各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、加工性、耐水性、耐油性等の樹脂特性が優れる上に安価であることから、家庭電化製品や自動車部品用プラスティックとして多量に使用されており、その付加価値を高めるためにポリオレフィン成形品の表面に塗装を施したり、他の樹脂との積層体を形成することが試みられているが、ポリオレフィンは極性が低く、一般の塗料や他の樹脂との付着性が悪いという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、あらかじめポリオレフィン成形品の表面をクロム酸、火炎、コロナ放電、プラズマ、溶剤等を用いて処理することにより成形品表面の極性を高め、塗料や他の樹脂との付着性を改善することが従来より試みられてきたが、これらの処理においては、複雑な工程を必要としたり、腐食性の薬剤を多量に使用するため危険を伴ったりするといった問題点があった。
【0004】
このような状況下に、ポリオレフィン成形品の表面を塩素化ポリオレフィン樹脂や変性ポリオレフィン樹脂を主成分とするプライマーで下塗りする方法(特許文献1参照)が提案されたが、これらの樹脂は人体に対して有害なトルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒に溶解させて使用することから、安全性や環境上の問題が生じるおそれが高いといった欠点があった。そこで塩素化ポリオレフィン樹脂や変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化する方法(特許文献2参照)が提案されたが、この方法においてもその水性分散液の安定性を向上させるために界面活性剤を多量に含有させなければならず、それに起因して塗布皮膜の密着性や耐水性が悪化するおそれがあった。
【0005】
この問題を解決するために、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)とカルボキシル基または無水カルボン酸基を含むビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能なビニル系単量体からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体を塩基性水溶液に分散してなる水性分散液が提案されている(特許文献3参照)。この方法では界面活性剤を用いずに水性分散液を調製することが可能であるため、水性分散液の貯蔵安定性および、該水性分散液からなる塗布皮膜の耐水性の向上が期待できる。しかしながらこの方法で得られる水性分散液中の分散粒子は大きく、基材へ塗装した場合の造膜性に欠け、密着性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−321588号公報
【特許文献2】特開平6−73250号公報
【特許文献3】特開2001−98140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかして、本発明の目的は分散粒子が小さく、かつ各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)とカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)ならびに溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を、前記カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散してなる水性分散液、ならびにその製造方法を提供することによって達成される。
すなわち本発明は、以下の〔1〕〜〔7〕を提供するものである。
〔1〕オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)、ならびに溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を、前記カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に含む水性分散液。
〔2〕疎水性溶剤(E)をさらに含む、〔1〕記載の水性分散液。
〔3〕水溶性溶剤(D)と疎水性溶剤(E)の重量比が(D)/(E)=99.9〜50/0.1〜50である、(2)記載の水性分散液。
〔4〕さらに界面活性剤(F)を、ブロック共重合体(C)100重量部に対して、0.1〜20重量部含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の水性分散液。
〔5〕水溶性溶剤(D)および疎水性溶剤(E)またはいずれか一方が留去され、実質的に溶剤類を含まない、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の水性分散液。
〔6〕オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)、ならびに溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を、前記カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散する、水性分散液の製造方法。
〔7〕〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の水性分散液を含有する、プライマー、塗料、インキまたは接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散粒子径が小さく、かつ各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液およびその製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、水性分散液において乳化剤の添加量を減らす、または添加しないことができ、各種基材との付着性、貯蔵安定性、耐候性、耐水性等に優れる水性分散液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)ならびに水溶性溶剤(D)を、塩基性物質の水溶液に含むものである。
【0011】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、以下に述べる重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)から構成されており、例えば、AB型ジブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、BAB型トリブロック共重合体などを挙げることができる。これらのなかでも、AB型ジブロック共重合体が好ましい。
【0012】
重合体ブロック(A)は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロックである。すなわち、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体により構成される重合体ブロックである。重合体ブロック(A)におけるオレフィン系単量体単位の含有量としては、重合体ブロック(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて50〜100モル%の範囲内であるのが好ましく、70〜100モル%の範囲内であるのがより好ましく、80〜100モル%の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0013】
オレフィン系単量体単位とは、オレフィン系単量体から誘導される単位を意味する。オレフィン系単量体単位としては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等のα−オレフィン;2−ブテン;イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエン;ビニルシクロヘキサン;β−ピネンなどのオレフィン系単量体から誘導される単位を挙げることができ、重合体ブロック(A)は、これらのオレフィン系単量体単位のうち1種または2種以上を含有することができる。重合体ブロック(A)は、エチレン、プロピレンから誘導される単位を含むのが好ましい。中でも、プロピレンから誘導される単位からなる重合体ブロック;プロピレンから誘導される単位およびプロピレン以外の他のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、エチレンなど)から誘導される単位からなる共重合体ブロックであるのがより好ましい。上記のオレフィン系単量体単位がブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエンから誘導される単位の場合には、残存する不飽和結合が水素添加されていてもよい。
プロピレンから誘導される単位およびプロピレン以外の他のα−オレフィンから誘導される単位からなる共重合体ブロック中の、プロピレンから誘導される単位のモル%は、特に限定されるものではないが、60モル%以上が好ましい。60モル%未満である場合、これを含むブロック共重合体や、その水性分散液のプロピレン等の基材に対する付着性が低下するおそれがある。
本発明で用いる重合体ブロック(A)の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜300,000である。中でも後述のように1,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。上記好ましい範囲において、下限は10,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。重合体ブロック(A)の重量平均分子量の測定法としては、重合体ブロック(C)を分解して重合体ブロック(A)部分を取り出して測定する方法、重合体ブロック(C)の製造工程における中間体の一例である、末端にメルカプト基などの置換基を有する重合体ブロックの重量平均分子量を測定し、この測定値として得る方法が例示され、前者が好ましい。尚、実施例を含む本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
【0014】
重合体ブロック(A)を構成する重合体は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなるものである。従ってオレフィン系単量体単位のほかに、オレフィン系単量体以外の単位を含み得る。例えば必要に応じて、上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体から誘導される単位を0〜50モル%の範囲内の割合で含有することができる。該単量体単位の含有量は、0〜30モル%の範囲内であるのが好ましく、0〜20モル%の範囲内であるのがより好ましい。
【0015】
上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニルが好ましい。
【0016】
重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体は、変性されていてもよい。該変性は、該重合体に対して、塩素化、臭素化等のハロゲン化;クロロスルフォン化;エポキシ化;ヒドロキシル化;無水カルボン酸化;カルボン酸化などの公知の諸法を用いて行なうことができる。
【0017】
重合体ブロック(A)は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を減成したものであっても良い。これにより、重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、重合体ブロック(A)の分子量を調整することができる。減成の方法としては、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中400〜500℃にて熱分解する方法や、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中、有機過酸化物存在下にて分解する方法が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。前記有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。
【0018】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体からなる重合体ブロックである。すなわち、前記置換基を有するビニル系単量体及び該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の重合体により構成される重合体ブロックである。
【0019】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて2〜100モル%含有する。該単位の含有量は2〜50モル%の範囲内であるのが好ましく、2〜30モル%の範囲内であるのがより好ましい。カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の含有量が2モル%を下回る場合は、水性分散液の分散粒子は大きくなり、さらには水性分散液が得られない場合がある。
【0020】
カルボキシル基を有するビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0021】
無水カルボン酸基(式:−CO−O−CO−で示される基)を有するビニル系単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、無水マレイン酸が好ましい。
【0022】
また、スルホン酸基を有するビニル系単量体としては、例えば、4−スチレンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。なお、スルホン酸基が、ナトリウムやカリウム等の金属の塩や各種アンモニウム塩となっているビニル単量体を使用することも可能である。
【0023】
重合体ブロック(B)は、上記のカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて0〜98モル%含有する。該単位の含有量は、好ましくは50〜98モル%、より好ましくは70〜98モル%である。上記の他のビニル系単量体とは、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体を意味し、スチレン、p−スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン系単量体;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンなどが例示され、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニルが好ましい。
【0024】
本発明における重合体ブロック(B)を構成する、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の重合体は、塩素化されていてもよい。塩素化はラジカル付加法など公知の方法を用いて行なうことができる。この塩素化は後述するブロック共重合体(C)を製造した後に重合体ブロック(A)と共に行なうこともできる。なお、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタアクリレートを指すものとする。
【0025】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量としては、1,000〜200,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜100,000の範囲内であるのがより好ましい。重合体ブロック(B)の重量平均分子量としては、1,000〜200,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜100,000の範囲内であるのがより好ましい。ブロック共重合体(C)の重量平均分子量としては、5,000〜300,000の範囲内であるのが好ましく、10,000〜200,000の範囲内であるのがより好ましい。なお、本発明でいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値である。
【0026】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とから構成されていればよく、その製造方法は特に限定されない。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下に、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分をラジカル重合することにより製造することができる。この方法によれば、目的とする数平均分子量および分子量分布を有するブロック共重合体(C)を簡便かつ効率的に製造することができる。
【0027】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)は、各種の方法により製造することができる。例えば、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、この二重結合を介して、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸またはチオ吉草酸などを付加させた後、酸またはアルカリで処理する方法、アニオン重合法によりオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を製造する際の停止剤としてエチレンスルフィドを用いる方法などにより製造することができる。
【0028】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下における、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分のラジカル重合は、公知の方法によって進めることが可能である。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)をトルエンに溶解した後、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分を加え、撹拌下ラジカル発生剤を添加する溶液法などが挙げられる。前記ラジカル重合を行う際のラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択することができる。特にアゾ系開始剤が好ましく、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられ、ラジカル重合を行う温度に応じて適切な半減期温度を有するものを選択できる。
【0029】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)ならびに溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散して製造される。詳しくは、ブロック共重合体(C)に、溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を加えて、好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは60℃〜120℃にて加温溶融したものを、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質を含有する水溶液に分散させることにより本発明の水性分散液を製造することができる。また、ブロック共重合体(C)に水溶性溶剤(D)を加えたもの(好ましくはさらに加温溶融したもの)の溶融状態が不良の場合には、後述する疎水性溶剤(E)を加えて溶融状態を向上させることができる。
【0030】
水溶性溶剤(D)は水溶性の溶剤であって、溶解度パラメータが11.5(cal/cm31/2以下であることが好ましく、9.1(cal/cm3-1/2以上11.5(cal/cm3-1/2以下であることがより好ましい。このような水溶性溶剤としては、テトラヒドロフラン(溶解性パラメーター:9.1)、エチレングリコールモノブチルエーテル(溶解性パラメーター:9.5)、エチレングリコールモノエチルエーテル(溶解性パラメーター:10.5)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶解性パラメーター:10.5)、ダイアセトンアルコール(溶解性パラメーター:9.2)、アセトン(溶解性パラメーター:9.9)、t−ブチルアルコール(溶解性パラメーター:10.6)、イソプロピルアルコール(溶解性パラメーター:11.5)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの1種または2種以上を組み合わせて水溶性溶剤として用い得る。これらのうちでも、上記したブロック共重合体を加熱溶融する場合の容易さ、留去による含有量調節の容易さ等の観点から、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、t−ブチルアルコール、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0031】
上記溶解度パラメータδは溶媒のモル容積V(cm3/mol)および蒸発エネルギーE(cal/mol)を用いて、δ=(E/V)1/2によって定義される値である。
【0032】
水溶性溶剤(D)は、ブロック共重合体(C)を溶融し、塩基性物質の水溶液への分散を容易にする作用がある。水性分散液の調製後には、水溶性溶剤(D)はブロック共重合体(C)の粒子内には存在せずに水相中に溶解しており、留去等によってその含有量を調節可能である。さらに水溶性溶剤(D)は、本発明における水性分散液を基材へ塗布した後には速やかに乾燥され、さらに皮膜形成時の造膜助剤として機能する。
【0033】
塩基性物質は、ブロック共重合体の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上のものを用い得る。上記の塩基性物質としては、アンモニア、ヒドロキシアミン、水酸化アンモニウム、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、(ジ)ブチルアミン、(ジ)ヘキシルアミン、(ジ)オクチルアミン、(ジ)エタノールアミン、(ジ)プロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、モルホリン等のアミン化合物;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等の金属酸化物;水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩などが例示される。これらのうちでも、入手の容易さ、水性分散液の安定性の観点から、アンモニア、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(ジ)ブチルアミン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、アンモニア、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。尚、本発明において「(ジ)」とは、置換基が1または2つあることを意味する。例えば「(ジ)メチルアミン」は、メチルアミンおよびジメチルアミンの両方を意味する。
【0034】
これらの塩基性物質は、水溶液として、ブロック共重合体(C)の中和と水溶性溶剤(D)の分散に用いられる。塩基性物質の使用量は、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上である。この使用量は、分散粒子径を微細化する観点からは、ブロック共重合体(C)の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.2〜5.0当量の範囲内であるのが好ましく、0.3〜1.5当量の範囲内であるのがより好ましい。
【0035】
本発明の水性分散液におけるブロック共重合体(C)と塩基性物質の水溶液との配合割合は、ブロック共重合体(C)5〜70重量部に対して塩基性物質の水溶液95〜30重量部の範囲内であるのが好ましい。本発明の水性分散液においてブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基のうちの一部、通常は5モル%以上が、塩基性物質によって中和されることにより、塩を形成する。
【0036】
疎水性溶剤(E)としては、水に溶解しない有機溶剤が好ましい。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、p−メンタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、イソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、脂肪族炭化水素系溶剤と芳香族系溶剤とから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、n−ヘプタン、トルエン、キシレンがさらにより好ましい。
【0037】
本発明の水性分散液が疎水性溶剤(E)を含む場合における水溶性溶剤(D)と疎水性溶剤(E)の配合割合は、重量比にて(D)/(E)=99.9〜50/0.1〜50であることが好ましい。疎水性溶剤(E)の重量比が50重量%を超える場合は、得られる水性分散液の粒子径が大きくなり、さらには水性分散液を得ることができない場合がある。
本発明の水性分散液には、水性分散液の貯蔵安定性の向上や各種基材へ塗布した場合の造膜性や塗布皮膜表面のぬれ性向上等を目的に、皮膜の耐水性を低下させない程度に界面活性剤(F)が添加され得る。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が例示され、何れも使用できる。ノニオン界面活性剤の方が、耐水性低下を引き起こし難いため好ましい。
【0038】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。特に好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0039】
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0040】
水性分散液が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の水性分散液への添加量は、ブロック共重合体(C)100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。20重量%を超える場合は、塗布皮膜の密着性や耐水性を著しく低下させ、又、乾燥皮膜とした際に可塑効果、ブリード現象を引き起こし、ブロッキングが発生し易いため、好ましくない。
【0041】
本発明の水性分散液は、ブロック共重合体(C)ならびに水溶性溶剤(D)を、重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散して製造される。製造条件を一例を挙げて説明すると次の通りである。上記したブロック共重合体(C)に溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)および必要に応じて疎水性溶剤(E)を加えて、好ましくは50℃〜150℃にて加温溶融し、ブロック共重合体の重合体ブロック(B)におけるカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質を含む水溶液を滴下していくことで製造できる。
【0042】
得られた水性分散液に含まれる水溶性溶剤(D)および必要に応じて用いられる疎水性溶剤(E)は、常圧下、沸点以上に加温する、または減圧留去することによってその含有量を調整することもできる。中でも、水溶性溶剤(D)や必要に応じて用いられる疎水性溶剤(E)は、少なくともいずれか一方、好ましくは両方が留去され、最終的な水性分散液には溶剤類が実質的に含まれないことが、環境面において好ましい。ここで「溶剤類」とは、水溶性溶剤(D)および必要に応じて用いられる疎水性溶剤(E)を意味する。また、「実質的に含まれない」とは、水性分散液の引火点や臭気が観測されない程度であればよく、通常は0.2重量%以下(対水性分散液)である。留去の方法としては、常圧下、沸点以上に加温する方法、減圧留去する方法が例示される。
【0043】
本発明の水性分散液は、分散物質の粒子径が小さいため、貯蔵安定性が良好であり、相分離が起こりにくい。本発明の水性分散液の分散物質の粒子径は、通常0.3μm未満、好ましくは、0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。下限については小さければ小さいほどよいが、製造可能なのは0.03μm程度である。このため、本発明の水性分散液は、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレンに対する付着性に優れており、極性基材に対する付着性にも優れている。これらのことから、本発明の水性分散液は、塗装や接着の際のプライマー、塗料、接着剤として有用である。さらに、本発明の水性分散液は、フィルム、紙、木、金属、プラスティック等のコーティング剤(防水剤用途、離型剤用途、ヒートシール剤用途等)、塗装や接着におけるプライマーおよびアンカーコート剤、水性塗料、水性接着剤、水性インキ等の改質剤(顔料分散、光沢付与、耐摩耗性付与、耐水化等)、インクジェットインキやカラーコピーのバインダー、トナーの改質剤、つやだし剤、金属表面処理剤などとして有用である。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例および比較例において、分散粒子の平均粒子径測定および、水性分散液を使用したポリプロピレン基材への付着試験については、次のようにして行った。
【0045】
(平均粒子径測定):マルバーン社製「ゼータサイザー」を用いて動的光散乱法により測定した。
【0046】
(塗装板作成方法):表面をイソプロピルアルコールで清拭したポリプロピレン基材に水性分散液を噴霧塗布した。塗布後、試験片を乾燥機中で90℃30分間焼き付けし塗装板を得た。
【0047】
(1次付着試験):塗装板を23℃で24時間放置した後、JIS K 5400に記載されている碁盤目はく離試験の方法に準じて2mm間隔で100マス(10×10)の碁盤目を付けた試験片を作製しセロハンテープを貼り付けた後、90℃方向にはく離させ、100マスの碁盤目のうちはく離されなかった碁盤目数にて評価した。評価としては、はく離されなかったマスの数が多い方が付着性が良好とした。
【0048】
(耐湿付着試験):塗装板を50℃相対湿度95%の状態に1週間放置した後、JIS K 5400に記載されている碁盤目はく離試験の方法に準じて2mm間隔で25マス(5×5)の碁盤目を付けた試験片を作製しセロハンテープを貼り付けた後、90℃方向にはく離させ、25マスの碁盤目のうちはく離されなかった碁盤目数にて評価した。評価としては、はく離されなかったマスの数が多い方が付着性が良好であり、耐湿性・耐水性に優れるとした。
【0049】
(参考例1)
ブロック共重合体(ポリオレフィンブロック/エチルアクリレート−アクリル酸ブロック共重合体)の製造
(1) ポリオレフィン(三井化学株式会社製「タフマーXM5070」、プロピレンおよび1−ブテンを単量体単位とする重合体)を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造した。
【0050】
(2) 上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部およびチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
【0051】
(3) 上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
【0052】
(4) 上記(3)で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート90重量部、アクリル酸2.5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり約15%になるように2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が90%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレート−アクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(1)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(1)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は約40000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は約35000、エチルアクリレートとアクリル酸はそれぞれ96.3モル%、3.7モル%、ブロック共重合体(1)の重量平均分子量は約75000であり、融点は75℃であった。
【0053】
(実施例1)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン100重量部、t−ブチルアルコール(t−BuOH)200重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)10部をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.13μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0054】
(実施例2)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン50重量部、イソプロピルアルコール(IPA)100重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.09μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0055】
(実施例3)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン50重量部、t−ブチルアルコール200重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.09μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0056】
(実施例4)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン50重量部、t−ブチルアルコール150重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.11μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0057】
(実施例5)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン30重量部、t−ブチルアルコール150重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.11μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0058】
(実施例6)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびt−ブチルアルコール150重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.14μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0059】
(実施例7)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびt−ブチルアルコール150重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃にてt−ブチルアルコール100重量部を常圧留去し、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.14μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0060】
(実施例8)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)100重量部を入れ、100℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.14μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0061】
(実施例9)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびn−ヘプタン10重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル200重量部を入れ、100℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)10部をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.12μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0062】
(実施例10)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン50重量部、t−ブチルアルコール200重量部、アルキルアミン系乳化剤(エソミンC15)15重量部を入れ、80℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.09μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0063】
(実施例11)
撹拝機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびテトラヒドロフラン(THF)200重量部を入れ、60℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拝後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃にて減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.10μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0064】
(比較例1)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン50重量部、アルキルアミン系乳化剤(エソミンC15)35重量部を入れ、120℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.10μmであった。この水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなく安定であった。
【0065】
(比較例2)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン50重量部を入れ、120℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却したところ凝集物が多量に発生し水性分散液を得ることはできなかった。
【0066】
(比較例3)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン200重量部を入れ、120℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却して水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散粒子は真球状で平均粒子径を測定したところ0.50μmであった。この水性分散液は1週間静置したところ2層分離していた。
【0067】
(比較例4)
撹拌機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびn−ヘプタン100重量部を入れ、100℃で撹拌した。次に、25%アンモニア水1.5部(ブロック共重合体(1)のカルボキシル基に対し1.2当量程度)をゆっくり滴下した。その後、さらに30分間撹拌後、温水300重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、溶剤を120℃で減圧留去し、溶剤を留去後、冷却したところ凝集物が多量に発生し水性分散液を得ることはできなかった。
【0068】
(比較例5)
撹拝機を備えた1Lのオートクレーブに参考例1で得られたブロック共重合体(1)100重量部およびトルエン50重量部、エチルアルコール(溶解性パラメータ:12.7)200重量部を入れ、80℃で撹拌した。この場合、ブロック共重合体はトルエンおよびエチルアルコールの混合溶剤に溶融せず、水性分散液を調製する操作が続行不可能であった。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
上記の結果から明らかなように、実施例の水性分散液はいずれも粒子径が小さく、1次付着性試験および耐湿付着性試験の両方において良好な成績を収めたことから基材との付着性、耐候性に優れていた。また、実施例の水性分散液は1週間静置しても粒子径に変化はなかったことから、貯蔵安定性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)、ならびに溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を、前記カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に含む水性分散液。
【請求項2】
疎水性溶剤(E)をさらに含む、請求項1記載の水性分散液。
【請求項3】
水溶性溶剤(D)と疎水性溶剤(E)の重量比が(D)/(E)=99.9〜50/0.1〜50である、請求項2記載の水性分散液。
【請求項4】
さらに界面活性剤(F)を、ブロック共重合体(C)100重量部に対して、0.1〜20重量部含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項5】
水溶性溶剤(D)および疎水性溶剤(E)またはいずれか一方が留去され、実質的に溶剤類を含まない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項6】
オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位2〜100モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜0モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成されるブロック共重合体(C)、ならびに溶解性パラメータが11.5(cal/cm31/2以下の水溶性溶剤(D)を、前記カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基に対して0.05当量以上の塩基性物質の水溶液に分散する、水性分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性分散液を含有する、プライマー、塗料、インキまたは接着剤。

【公開番号】特開2010−84138(P2010−84138A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202318(P2009−202318)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】