説明

水性分散液および紙力増強方法

【課題】
未糊化粒状澱粉スラリーを凝集前処理し、ワイヤーに留め紙力増強剤として使用する場合、歩留効果を高めしかも紙面全体均一に粒状デンプンを止めることにより、効率よく紙力効果を高める粒状デンプンスラリーの処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
未糊化澱粉粒子スラリーを定義で表示される電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子によって凝集処理した水性分散液であって、前記水溶性高分子は、(A)(メタ)アクリル系水溶性高分子、(B)ビニルアミン系水溶性高分子、
(C)ポリアミジン系水溶性高分子から選択される一種以上の水溶性高分子を添加した水性分散液によって達成できる。またこの水性分散液を抄紙前の製紙原料中に添加し、抄紙し湿紙の状態でドライヤーを通過させることにより効率よく紙強度の高い紙を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性分散液およびその使用方法に関するものであり、詳しくは未糊化澱粉粒子スラリーを定義で表示される電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子であって、前記水溶性高分子が、特定の単量体を必須として含有する単量体混合物を重合した水溶性高分子によって凝集処理した水性分散液に関し、またその水性分散液を抄紙前の製紙原料中に添加し抄紙する紙力増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙力増強剤は、デンプンなど天然物を原料としたものとポリアクリルアミドなど化学合成により生成したものとに大別されるが、デンプンはリサイクルが可能であるバイオマスの一種であり、地球環境の保全の見地からも今後、見直される原料の一種と考えられる。現在、デンプン系紙力増強剤は、化学変性の施されたカチオン化デンプンがほぼ全て使用され、加熱糊化され水溶液として製紙原料スラリーに添加されるが、添加量が対製紙原料0.5から1質量%と高いことも原因し、この時一部は、未吸着のまま白水中に流出し、COD(化学的酸素要求量)あるいはBOD(生物学的酸素要求量)成分として排水の負荷のもとになる。またカチオン性であるため地合崩れの原因になり、他の製紙薬剤への影響もあり、特に蛍光染料はカチオン性物質からの影響に敏感である。さらに同時に添加される歩留向上剤へ影響を与え、歩留向上剤効果の低下に繋がる。
【0003】
そのためカチオン化反応をせず非イオン性のまま、しかも糊化せず粒状で製紙原料スラリーに加え、抄紙し、ドライヤー乾燥時に湿紙中の水分を利用し、糊化させ紙力増強効果を発現させる処方が検討されている。しかし非イオン性であるためワイヤー上で歩留にくく、歩留向上ための種々の工夫がなされている。例えば特許文献1では、澱粉粒子及び一種以上の澱粉歩留り向上剤を混合した紙力剤を1重量%のパルプスラリーに添加する場合、澱粉歩留り向上剤はアクリル系のカチオン性高分子が使用され、またこれにアニオン性微粒子あるいはアニオン性高分子を併用する処方が開示されているが、架橋性高分子などの記載は見当たらない。また特許文献2では、溶解していないデンプン粒子及びカチオン性ポリマー系凝析剤そしてアニオン性微細粒子凝集助剤を組合せ、デンプン粒子をある程度の凝集粒子に変形し、このスラリーを別に調製し、製紙原料スラリーに加えワイヤー上に留め易い処理としている。ここで使用されているカチオン性ポリマー系凝析剤は、やはりアクリル系のカチオン性高分子が使用されているが、架橋性高分子などの記載は見当たらない。この場合、同時にワイヤー上での歩留向上を目的として、アニオン性架橋化凝析剤の水性液を添加することにより、剪断した懸濁液を再凝集し、その後抄紙しているが、このアニオン性架橋化凝析剤は、デンプンの前処理剤としては使用していない。
【特許文献1】特開2004−131851号公報
【特許文献2】特表2001−504174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、未糊化粒状澱粉スラリーを凝集前処理し、ワイヤーに留め紙力増強剤として使用する場合、歩留効果を高めしかも紙面全体均一に粒状デンプンを止めることにより、効率よく紙力効果を高める粒状デンプンスラリーの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討をした結果、以下に述べる発明に到達した。すなわち請求項1の発明は、未糊化澱粉粒子スラリーを下記定義で表示される電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子によって凝集処理した水性分散液であって、前記水溶性高分子が(A)〜(C)に記載される化学組成から選択される一種以上であることを特徴とする水性分散液である。
(A)下記一般式(1)で表わされる単量体および/又は下記一般式(2)で表わされる単量体を必須とし、適宜下記一般式(3)を含有する単量体混合物を重合した水溶性高分子。
(B)下記一般式(4)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
(C)下記一般式(5)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
定義)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【化4】

一般式(4)
11、R12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。
【化5】

一般式(5)
12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。
【0006】
請求項2の発明は、前記架橋性高分子の分子量が、重量平均分子量として1万〜500万であることを特徴とする請求項1に記載の水性分散液である。
【0007】
請求項3の発明は、前記未糊化澱粉粒子が、カチオン変性澱粉であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の水性分散液である。
【0008】
請求項4の発明は、下記(A)〜(C)に記載される化学組成から選択される一種以上であり、下記定義で表示される電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子により未糊化澱粉粒子スラリーを凝集処理した水性分散液を、抄紙前の製紙原料中に添加し抄紙することを特徴とする紙力増強方法である。
(A)下記一般式(1)で表わされる単量体および/又は下記一般式(2)で表わされる単量体を必須とし、適宜下記一般式(3)を含有する単量体混合物を重合した水溶性高分子。
(B)下記一般式(4)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
(C)下記一般式(5)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
定義)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【化4】

一般式(4)
11、R12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。
【化5】

一般式(5)
12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微細な凝集フロックを生成させた水性分散液の対象物は、未糊化澱粉粒子である。澱粉粒子は、1ミクロン〜数十ミクロンと思いのほか微細なものであり、抄紙時、低分子量の水溶性高分子により弱く凝集させ、ワイヤー上に歩留らせようとすると留まる前に凝集粒子が崩壊してしまい、意図したように留まらない。高分子量の水溶性高分子により強力な凝集を発生したのでは、凝集粒子が大きくなるが、シェアに対して抵抗力は大きくない。従って特別な物性の水溶性高分子を使用する必要がある。
【0010】
すなわち直鎖状水溶性高分子では、上記のような単なる弱い凝集あるいは強い凝集が発生してしまう。これは直鎖状水溶性高分子が、水中に分子が広がった状態で存在することによる。重合系のような高分子量のカチオン性水溶性高分子の凝集作用は、いわゆる「架橋吸着作用」による多数懸濁粒子を水溶性高分子の分子鎖による結合作用で起きると考えられている。しかし直鎖状水溶性高分子は伸びた状態にあり、そこに懸濁粒子を吸着させ生成した凝集フロックは、大きいがふわふわして強固になりにくい。
【0011】
これに対し架橋性水溶性高分子は、架橋することによって水中における分子の広がりが抑制される。そのためにより「密度の詰まった」分子形態として存在し、さらに架橋が進めば水膨潤性の微粒子となる。通常高分子凝集剤として使用されるのは、前記の「密度の詰まった」分子形態である場合が効率的とされる。架橋性水溶性高分子が汚泥中に添加されると懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こる。この時「密度の詰まった」分子形態であるため粒子表面と多点で結合し、より締った強度の高いフロックを形成すると推定される。ここでこの架橋性水溶性高分子の分子量を調節することにより小さく強度の高い凝集フロックを形成させることができる。特に本発明では、架橋度の比較的高い水溶性高分子を使用する。この架橋度の比較的高い水溶性高分子は、水中において「密度の詰まった」分子形態の傾向が強くなり「粒子的」性質が高くなる。これが澱粉粒子に好適な微細フロックを生成させるためと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の水性分散液は、生澱粉などの水性スラリーを初めに調製する。分散液は、水中に粉末状の澱粉を投入し、ホモジナイザーなどのような強攪拌が可能な攪拌機によって均一に分散させることにより調製する。その後、本発明で使用する水溶性高分子を、生澱粉などの水性スラリーに添加し、微細凝集粒子を形成させ製造する。この時、澱粉は弱い凝集を起こし、澱粉粒子が凝集した微細なフロックを形成する。凝集粒子の大きさは、本発明で使用する水溶性高分子の添加量や水溶性高分子の分子量によって変化するため、紙の種類によって適宜選択する。
【0013】
本発明で使用する澱粉粒子は、未変性澱粉と化工澱粉とのいずれか一方、又は両方を用いることができる。上記未変性澱粉としては、トウモロコシ、タピオカ、馬鈴薯、小麦等から得られる未変性の澱粉があげられる。また、上記化工澱粉とは、上記の未変性澱粉を化学修飾や物理的処理、生物学的処理によって変性された澱粉である。上記未変性澱粉の具体例としてはトウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉等が挙げられる。また、化工澱粉の具体例としては、ジエチルアミノエチル化澱粉や三級アンモニウム澱粉等のカチオン化澱粉、カルボキシメチル澱粉等のアニオン化澱粉、両性澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等のエーテル化澱粉、リン酸化澱粉や酢酸澱粉等のエステル化澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉が挙げられる。上記澱粉粒子としては、未変性澱粉と化工澱粉とのいずれか一方、又は両方を用いることができる。
【0014】
使用する水溶性高分子は、請求項に記載される(A)〜(C)の化学組成から選択される一種以上であり、下記定義で表示される電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子である。
定義)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
【0015】
ここで電荷内包率に関して説明する。すなわち電荷内包率の高い水溶性高分子は、架橋が高まった水溶性高分子であり、電荷内包率の低い水溶性高分子は、架橋が少ない水溶性高分子であると言える。この理由は、以下の通りに説明される。直鎖状水溶性高分子は、希薄溶液中では、分子はほぼ「伸びきった」形状をしている。一方、架橋性水溶性高分子は、溶液中において粒子状の丸まった形状をしていて、粒子状の内部に存在するイオン性基は、外側には現われにくく、反対電荷との反応も緩慢に起こると考えられる。
【0016】
前記滴定量αは、試料である架橋性水溶性カチオン性高分子に反対電荷を有するポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を滴下して行き、水溶性カチオン性高分子の「表面」(粒子状の表面部)に存在するイオン性基にイオン的静電反応を行わせる操作を意味する。
【0017】
次に架橋性水溶性カチオン性高分子の理論的な電荷量を中和するに十分な量以上の反対電荷を有するポリビニルスルホン酸カリウムを添加し、反応時間を十分取ったその後、余剰のポリビニルスルホン酸カリウムをジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液により滴定する。また別に架橋性水溶性カチオン性高分子を添加しないでポリビニルスルホン酸カリウム溶液をジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液により滴定し、ブランク値を出しておき、ブランク値より架橋性水溶性カチオン性高分子を添加した場合の滴定量を差し引き、この値がβとなる。β値は、架橋性水溶性カチオン性高分子の化学組成から計算される理論的な電荷量に相当すると考えられる。すなわち架橋性カチオン性水溶性高分子に対し、反対電荷が多量に存在するので、表面のカチオン性電荷だけでなく、内部の電荷まで静電的な中和反応が行われると考えられる。架橋度が高ければ、αはβに対し小さくなり、(1−α/β)値は、1に比べ大きくなり電荷内包率は大きい(すなわち架橋の度合いは高くなる)。
【0018】
本発明では上記のような電荷内包率を有する架橋性水溶性カチオン性高分子(A)を製造するため重合時あるいは重合後、構造変性剤として架橋性単量体を単量体総量に対し0.0005〜0.0050モル%、また好ましくは0.0008〜0.002モル%存在させる。架橋性単量体の例としては、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸―1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシランなどがあるが、この場合の架橋剤としては、水溶性ポリビニル化合物がより好ましく、最も好ましいのはN,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。またギ酸ナトリウム、イソプロピルアルコール等の連鎖移動剤を併用して使用することも架橋性を調節する手法として効果的である。
【0019】
本発明の微細な凝集フロックを生成させた水性分散液の対象物は、未糊化澱粉粒子である。澱粉粒子は、数ミクロン〜数十ミクロンと思いのほか微細なものであり、抄紙時、低分子量の水溶性高分子により弱く凝集させ、ワイヤー上に歩留らせようとすると留まる前に凝集粒子が崩壊してしまい、意図したように留まらない。高分子量の水溶性高分子により強力な凝集を発生したのでは、凝集粒子が大きくなるが、シェアに対して抵抗力は大きくない。従って特別な物性の水溶性高分子を使用する必要がある。
【0020】
すなわち直鎖状水溶性高分子では、上記のような単なる弱い凝集、強い凝集が発生しまう。これは直鎖状水溶性高分子は、水中に分子が広がった状態で存在する。重合系のような高分子量のカチオン性水溶性高分子の凝集作用は、いわゆる「架橋吸着作用」による多数懸濁粒子を水溶性高分子の分子鎖による結合作用で起きると考えられている。しかし直鎖状水溶性高分子は伸びた状態にあり、そこに懸濁粒子を吸着させ生成した凝集フロックは、大きいがふわふわして強固になりにくい。強度を増すため添加量を増加していってもフロックの改善はない。その原因は、伸びた状態にあるため生成した凝集フロックとの接触サイトが多く、その凝集フロックにさらに直鎖状水溶性高分子が吸着して、その結果見かけ上の電荷的飽和になりやすい。攪拌強度を増加させ生成フロックを破壊し新しい吸着面を作ればよいが、破壊し小さくしたフロック表面にはまた直鎖状水溶性高分子が吸着して、小さいが強度の弱いことには変わりはない。この時繊維分の多い汚泥では繊維がフロックの補強剤となるが、繊維分の少ない汚泥では、結局強固なフロックは生成しない。
【0021】
これに対し架橋性水溶性高分子は、架橋することによって水中における分子の広がりが抑制される。そのためにより「密度の詰まった」分子形態として存在し、さらに架橋が進めば水膨潤性の微粒子となる。通常高分子凝集剤として使用されるのは、前記の「密度の詰まった」分子形態である場合が効率的とされる。架橋性水溶性高分子が汚泥中に添加されると懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こる。この時「密度の詰まった」分子形態であるため粒子表面と多点で結合し、より締った強度の高いフロックを形成すると推定される。ここでこの架橋性水溶性高分子の分子量を調節することにより小さく強度の高い凝集フロックを形成させることができる。特に本発明では、架橋度の比較的高い水溶性高分子を使用する。この架橋度の比較的高い水溶性高分子は、水中において「密度の詰まった」分子形態の傾向が強くなり「粒子的」性質が高くなる。これが澱粉粒子に好適な微細フロックを生成させるためと考えられる。
【0022】
次に水溶性高分子(A)〜(C)に関して説明する。水溶性高分子(A)は、
下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単量体を5〜80モル%、好ましくは10〜80モル%共重合して得られる水溶性カチオン性高分子、あるいは下記一般式(3)で表される単量体を適宜共重合して水溶性両性高分子である。下記一般式(3)で表される単量体は、0〜30モル%、好ましくは5〜20モル%共重合する。また重合時、単量体総量に対して架橋性単量体を単量体総量に対し0.0005〜0.0050モル%、また好ましくは0.0008〜0.002モル%存在させる。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、QはSO、CSO
CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素、メチル基またはCOOYであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0023】
これら水溶性カチオン性高分子あるいは水溶性両性高分子は、以下の単量体を共重合することにより製造できる。一般式(1)単量体の例は、第4級アンモニウム塩あるいは第3級アミンの塩を含有するカチオン性単量体である。具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩などが挙げられる。一般式(2)で表される単量体は、ジアリルアンモニウム塩であり、具体的にはジアリルジメチルアンモニウム塩化物、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0024】
これら水溶性高分子は、非イオン性単量体との共重合体でも使用可能であり、非イオン性単量体は、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
水溶性両性高分子は、上記カチオン性単量体とアニオン性単量体を必須として含有する単量体混合物を重合して得ることができる。アニオン性単量体の例は、アクリル酸、メタアクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェートなどが挙げられる。
【0026】
また下記一般式(4)で表わされる水溶性高分子は、ビニルアミン系高分子である。これらはN−ビニルホルムアミド重合物あるいは共重合体を重合体中のホルミル基を変性することにより容易に得ることができる。すなわちN−ビニルホルムアミドと他の共重合可能な単量体とのモル比が、通常50:50〜100:0の混合物、好ましくは、70:30〜100:0の混合物の混合物をラジカル重合開始剤の存在下、重合することにより製造される。
【0027】
酸あるいはアルカリによりホルミル基を加水分解するため、共重合する単量体の一部も加水分解され、カルボキシル基が生成する場合が多い。そのためアクリロニトリルなどが共重合する場合便利である。その他アクリルアミド、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nプロピル、クリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−secブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。これら単量体は、アニオン性基が生成するので、共重合体中のモル比は、20モル%未満であることが好ましい。
【0028】
重合あるいは共重合したN−ビニルホルムアミド共重合体は、そのままの溶液状もしくは分散状で、あるいは希釈、もしくは、公知の方法で脱水または乾燥して粉末状としたのち変性することにより、新規なるビニルアミン共重合体とすることが出来る。また、酸性変性に使用される変性剤としては、強酸性に作用する化合物ならばいずれも使用することが可能であり、例えば、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、スルファミン酸、アルカンスルホン酸等が挙げられる。変性剤の使用量は、重合体中のホルミル基に対して、通常0.1〜2倍モルの範囲から目的の変性率に応じて適宜選択される。
【0029】
また下記一般式(5)で表わされる水溶性高分子は、ポリアミジン系高分子である。これらはN−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとの共重合物を重合体中のホルミル基を変性し、その後酸性雰囲気中で変性することにより容易に得ることができる。すなわちN−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルの共重合のモル比は、通常70:30〜30:70の混合物、好ましくは、40:60〜60:40の混合物をラジカル重合開始剤の存在下、重合せしめることにより製造される。重合後の変性は、ビニルアミン系水溶性高分子とほぼ同様である。
【化4】

式中R11、R12、13は水素原子またはメチル基を、X- は陰イオンを表わす。
【0030】
本発明で使用する水溶性高分子(A)〜(C)は、重量平均分子量が10,000〜5,000,000であり、好ましくは100,000〜3,000,000である。本発明の水性分散液は、未糊化澱粉粒子が凝集していることが必要である。そのためこれに使用する水溶性高分子は、一定以上の分子量が必要になり、10,000未満では凝集が不十分であり、また5,000,000以上では凝集が強くなりすぎ、好ましくない。
【0031】
本発明の水性分散液は、生澱粉などを水に分散させた水性スラリーとして調製する。これに水溶性高分子を添加する。その後、攪拌下、凝集粒子を形成させ製造する。または予め必用な量の水を用意し、その中に水溶性高分子を溶解しておき、そこに生澱粉などを投入していっても良い。
【0032】
分散液中の生澱粉などの濃度は、15〜60質量%であるが、20〜50質量%であるほうがより好ましい。またホモジナイザーなどによる攪拌回転数は、凡そ100〜1000回転/分であるが、200〜1000回転/分であるほうがより好ましい。攪拌時間としては、水溶性高分子を添加して5〜20分であることが好ましい。あまり長時間攪拌を持続すると凝集粒子が細かくなりすぎ、製紙原料に添加した場合、澱粉粒子の歩留率の低下や製紙薬剤としての性能に影響を与えるからである。
【0033】
本発明の電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子により凝集処理した粒子の粒度分布は、5質量%の無機物微粒子水性分散液を前記処理剤によって処理し、10倍希釈後、分散液を粒度分布計などによって解析し、体積累積メジアン径を管理することによって適切な凝集粒子部を得ることが出来る。すなわち処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo、処理剤を添加し、微細凝集処理後の体積累積メジアン径をDmとした場合、Dm/Dmoが2以上、6以下の範囲であると本発明の目的とする条件に適合する。この場合の電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子添加量としては、2〜15質量%である。ここでメジアン径というのは、ある粒度分布中の全粒子の体積に対して、小さいほうの粒子から体積を累積していき、全体積に対して50%となる粒子の粒径を表わす。例えばメジアン径が5μmであれば5μmに近い範囲の粒子がそこに集中していることを示す。ただしその分布が広い分布か狭い分布かまでは表わしていない。
【0034】
例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリルアミドからなるカチオン性高分子では、無機物に1〜5質量%添加し、分散液を処理してもDm/Dmoは、0.7〜0.8程度にしかならない。また界面活性剤系の嵩高剤により処理した場合でも、前記比は0.2〜1.1程度である。従って、原料として使用する無機粒子や攪拌条件、使用する水溶性高分子によって変化するが、本発明で使用する電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子によって処理すると、適度な大きさの粒子径、すなわち大よそには体積累積メジアン径において10〜16μmのものが、比較的狭い範囲で分布した分散粒子が生成する。この時、処理剤無添加では、3〜4μmであり、界面活性剤系の嵩高剤により処理した場合は2〜5μm、親水性単量体のみからなるジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリルアミドからなるカチオン性高分子では2〜4μmである。
【0035】
本発明の未糊化澱粉からなる水性分散液は、抄紙前の製紙原料に添加して紙力向上効果を発現させることができる。すなわち製紙機のワイヤー上で澱粉粒子を他の製紙原料とともに湿紙中に歩留させ、その後ドライヤーによる乾燥時、水分がある状態に置かれ、未糊化澱粉が糊化し、湿紙中に浸透していく。この現象によって紙力向上効果が発現すると考えられる。製紙機のワイヤーに乗る手前ならば、製紙工程中のいずれの場所に添加してもかまわないが、希釈前の
製紙原料が白水によって希釈されるファンポンプの手前などに添加すると、水性分散液を調製する過程で生成した微細なフロックが破壊されず、効率的に湿紙の紙層中に歩留る。その他添加場所は、ミキシングチェスト、種箱、マシンチェストやヘッドボックスや白水タンク等のタンク、またはこれらの設備と接続された配管中などである。
【0036】
本発明の未糊化澱粉からなる水性分散液を湿紙の紙層中に歩留せるため、溶解した状態の澱粉が白水などに流出しにくく、排水中のBOD(生物化学的酸素要求量)が上昇せず処理の軽減に繋がる。添加量としては、対製紙原料乾燥分当たり0.1〜5質量%であり、好ましくは0.5〜2質量%である。
【0037】
本発明では、必要に応じて、サイズ剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤、ピッチコントロール剤、硫酸アルミニウム、アクリルアミド基を有する化合物、ポリエチレンイミン等の凝結剤等を併用することができる。
【0038】
また、本発明の紙の製造方法によって得られる紙は、新聞用紙、書籍用紙、印刷・情報用紙、包装用紙等の紙、また特には板紙である。すなわち強度が要求されるダンボール用のライナーがある。
【0039】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制約はされない。
【実施例1】
【0040】
(未糊化澱粉からなる水性分散液の調製)未糊化コーン生澱粉の水性スラリーに表1に記載する水溶性高分子を添加し、凝集処理を行い、紙用添加剤を調製した。すなわち未糊化コーン生澱粉を水に分散させ20質量%の水性分散液とし、これに各水溶性高分子を対澱粉2.0質量%添加し、マグネチックスターラーにより400回転/分で10分攪拌することにより微細凝集粒子部を形成させ製造した。また比較の水溶性高分子(アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物とアクリルアミド共重合物)(比較試料−1)、ポリアミンジンからなる水溶性高分子(比較試料−2)、アニオン性多糖類(カルボキシメチルセルロース、分子量30万、アニオン化度、35.5対グルコース単位、比較試料−3)、によって処理した水性分散液を調製した。使用した水溶性高分子の物性を表1に示す。
【0041】
(表1)

AAC;アクリル酸、AAM;アクリルアミド、DMQ;アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、DADMAC;ジアリルジリメチルアンモニウム塩化物、MBA;メチレンビスアクリルアミド、AN;アクリロニトリル、NVF;N−ビニルホルムアミド、DMC;メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
【0042】
(粒度分布の測定)コンーン生澱粉からなる水性分散液の粒度分布は以下のようにして測定した。その後、炭酸カルシウムスラリーを40倍(0.5質量%)に希釈し、HORIBA、レーザ回折/散乱式粒度分布計、LA−920にて粒度分布を解析し、処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo(μm)、処理剤添加時の体積累積メジアン径をDm(μm)とし、その比Dm/Dmoを算出した。結果を表2に示す。
【0043】
処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo、処理剤を添加し、微細凝集処理後の体積累積メジアン径をDmとした場合、Dm/Dmoが2以上、6以下の範囲であると、水溶性高分子により処理した結果、巨大な凝集フロックではなく、適度な大きさのフロックを生成し、本発明の目的に沿ったものになる。ここでメジアン径というのは、ある粒度分布中の全粒子の体積に対して、小さいほうの粒子から体積を累積していき、全体積に対して50%となる粒子の粒径を表わす。例えばメジアン径が5μmであれば5μmに近い範囲の粒子がそこに集中していることを示す。ただしその分布が広い分布か狭い分布かまでは表わしていない。


【0044】
(表2)

【実施例2】
【0045】
0.5質量%のLBKPパルプスラリー(CSF400ml)を、抄紙後のシートの坪量が80g/mになるように量りとり、攪拌下、試料S−1〜試料−6によって処理した澱粉水性スラリーをパルプに対し澱粉量として1.0質量%添加し、軽質炭酸カルシウムスラリーを仕込みで対LBKP
30質量%添加し、最後に歩留向上剤として高分子量アクリル系水溶性高分子(ポリアクリルアミド系、重量平均分子量1800万、カチオン当量値2.09meq/g)をパルプに対し0.03%添加した。
【0046】
これを1/16mタッピースタンダードシートマシンにて抄紙し、湿紙を得た。得られた湿紙を3.5Kg/mで5分間プレスし、100℃で2分間乾燥し、その後20℃、65RHの条件で調湿した。調湿した紙のその坪量(g/m)と厚み(mm)を測定し、坪量/厚みにより、紙の密度を求めた。また引っ張り強度を測定後、裂断長を算出した(JIS−P8113)。紙中灰分は、525℃で灰化することにより測定した。さらに同じ紙の別の部分を使用し、白色度計(テクニダイン社製、分光光度計型測色計、カラータッチPC)によりISO白色度(JIS、8148;2001)、引っ張り強度(JAPAN−TAPPI−No.18−1:2000)は、オリエンテック社製テンシロン−RTC−1210A、移送速度20mm/min.により測定した。結果を表3に示す。
【0047】
紙中の澱粉量は、以下の方法で測定した。実施例1あるいは比較例1で抄紙した成紙を、約1g切りだし、5mmの紙片に断裁後、混合攪拌して0.2gを精秤し、測定に用いた。紙片に含まれる澱粉をグルコシダーゼでグルコースにまで分解抽出し、全糖量を測定した。そしてこの値から、紙中澱粉量を算出した。
【0048】
(比較例1)実施例2と同様な操作により、比較試料C−1〜比較試料C−3によって処理した製紙用添加剤を添加し、紙を抄き、紙質の試験を実施した。結果を表3に示す。
【0049】
(表3)

厚み;mm、密度;g/m、白色度は無次元、裂断長;Km、紙中灰分;紙に対する質量%、澱粉歩留率仕込み量に対する紙中に存在する量の割合%
【実施例3】
【0050】
(未糊化澱粉からなる水性分散液の調製)市販されているカチオン変性コーン(カチオン化度;グルコース単位に対し2.1モル%)の未糊化澱粉水性スラリーに実施例1と同種の表1に記載する水溶性高分子を添加し、凝集処理を行い、実施例1と同様に紙用添加剤を調製した。
【0051】
(粒度分布の測定)実施例2と同様な操作によって行った。結果を表4に示す。












【0052】
(表4)

【実施例4】
【0053】
実施例4と同様な操作によって、澱粉水性スラリーを添加し抄紙を行い、その後測定を行った。結果を表5に示す。
【0054】
(比較例2)実施例3と同様な操作により、比較試料C−1〜比較試料C−3によって処理した製紙用添加剤を添加し、紙を抄き、紙質の試験を実施した。結果を表5に示す。
【0055】
(表5)

厚み;mm、密度;g/m、白色度は無次元、裂断長;Km、紙中灰分;紙に対する質量%、澱粉歩留率仕込み量に対する紙中に存在する量の割合%


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未糊化澱粉粒子スラリーを下記定義で表示される電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子によって凝集処理した水性分散液であって、前記水溶性高分子が下記(A)〜(C)に記載される化学組成から選択される一種以上であることを特徴とする水性分散液。
(A)下記一般式(1)で表わされる単量体および/又は下記一般式(2)で表わされる単量体を必須とし、適宜下記一般式(3)を含有する単量体混合物を重合した水溶性高分子。
(B)下記一般式(4)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
(C)下記一般式(5)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
定義)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【化4】

一般式(4)
12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。
【化5】

一般式(5)
12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。
【請求項2】
前記架橋性高分子の分子量が、重量平均分子量として1万〜500万であることを特徴とする請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
前記未糊化澱粉粒子が、カチオン変性澱粉であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の水性分散液。
【請求項4】
下記(A)〜(C)に記載される化学組成から選択される一種以上であり、下記定義で表示される電荷内包率50%以上90%以下の水溶性高分子により未糊化澱粉粒子スラリーを凝集処理した水性分散液を、抄紙前の製紙原料中に添加し抄紙することを特徴とする紙力増強方法。
(A)下記一般式(1)で表わされる単量体および/又は下記一般式(2)で表わされる単量体を必須とし、適宜下記一般式(3)を含有する単量体混合物を重合した水溶性高分子。
(B)下記一般式(4)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
(C)下記一般式(5)で表わされる構造単位を含有する水溶性高分子。
定義)水溶性カチオン性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体共重合率の差が正である水溶性両性高分子の場合
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液をポリビニルスルホン酸カリウム水溶液にて滴定した滴定量。βは酢酸にてpH4.0に調整した水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を前記水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子の電荷の中和を行うに十分な量加え、その後ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量をブランク値から差し引いた滴定量。ここでブランク値とは、水溶性カチオン性高分子あるいは両性水溶性高分子水溶液無添加時にポリビニルスルホン酸カリウム水溶液をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液にて滴定した滴定量である。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【化4】

一般式(4)
11、R12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。
【化5】

一般式(5)
12、13は水素またはメチル基、Hは無機酸および/または有機酸を表し、未中和時H=0である。

【公開番号】特開2010−270263(P2010−270263A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124797(P2009−124797)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】