説明

水性医薬製剤

本発明は、水溶性のメタンスルホン酸塩の形態の5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン、生理的食塩水、エタノールおよびポビドン12PFを含み、当該液体は4.8以上であるが5.2以下のpHを有し、酸素量が0.8ppm以下であるように制御され;濾過および/または加熱処理によって滅菌することができ、より長期間保存でき、ボーラス注射に使用できるかまたは静脈内点滴用に希釈できる、安定した水性医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイクラプリムとして公知の5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンを含む、安定した水性医薬組成物に関する。
【0002】
イクラプリムは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を含むグラム陽性細菌の広域スペクトルに対する強力な活性を持つ新規のジアミノピリミジン抗生物質である。イクラプリムは複数の重要なグラム陰性病原体および細胞内病原体に対しても活性がある。イクラプリムは迅速な殺菌効力を示し、それゆえ病原体の増殖を単に停止するのではなく、病原体を積極的に殺傷することができる。さらに、細菌病原体の治療がしばしば困難である組織(例えば、皮膚、軟組織および肺など)の中へ良好に浸透することが示された。
【0003】
イクラプリムを含むこの新しいクラスのジアミノピリミジン抗生物質は、タブレット、コートタブレット、ドラジェ、硬ゼラチンカプセルおよび軟ゼラチンカプセル、溶液、エマルジョンまたは懸濁物の単位投与量形態で米国特許5,773,446中に記載され、溶液、エマルジョンまたは懸濁物が、該溶液の組成物に関するいかなる詳細の提供なしに、経直腸投与(例えば坐剤の形態で)、または非経口投与(例えば注射溶液の形態で)できることは米国特許5,773,446中にさらに報告される(特許文献1)。米国特許5,773,446中に示された例は、スルファメトキサゾールと組み合わせた4−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルメチル)−8−メトキシ−2H−1−ベンゾピラン−7−イルオキシ]−酪酸を含むタブレット製剤に関する。溶液の形態の製剤(特に5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンを含む溶液)は、例示されない。
【0004】
5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンの塩のいくつかは水溶性であり、したがって、例えば、メタンスルホン酸塩を含有する水性医薬組成物の調製は、容易に遂行することができることが予想される。しかしながら、メタンスルホン酸塩の形態で5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンを含有する水性医薬組成物を調製する場合、水性製剤が安定でないことが意外にも見出された。固体物質の形態におけるイクラプリム塩は荷重条件下でさえ安定であるので、これは予想外であった。
【0005】
例えば、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩が、水性の30%のプロピレングリコールとして、または10%のグリコフロール溶液中で調製された場合、これらの水性標準製剤は模倣長期貯蔵条件下で深刻な安定性の問題を起こした。
【0006】
類似した標準製剤は模倣滅菌条件下での安定性についても研究され、溶液のpHを3.5未満のpHに調整した場合、再び深刻な安定性の問題がさらに増加することを示した。
【0007】
さらに、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンの濃度を、例えば10%のプロピレングリコール塩類溶液などの塩類溶液中で、7.5mg/mLを超えて増加させた場合、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩の塩類溶液中での沈殿が観察された。
【0008】
したがって、濾過および/または乾熱減菌などの当技術分野において公知の方法によって滅菌することができ、親化合物の変化または副産物の形成なしに長期保存を可能にすることができる、濃縮された(ストック)溶液の形態の改善された製剤が望まれた。そのように配合されたストック溶液は、ボーラスとして直接注射、または適切な注射可能溶液による希釈物後に静脈内点滴として適切に使用することができる。
【0009】
したがって、そのまま使用することができるか、または使用の前に非経口投与のための通常の塩類溶液で希釈することができる、例えば、メタンスルホン酸塩などの、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンの酸付加塩の濃縮された(ストック)溶液を調製することが、本発明の目的の1つである。
【0010】
成分が長期間(特に1か月乃至少なくとも24か月の間)安定であり、保存および出荷が容易という長所を有するバイアルまたはアンプルなどの容器中に規定することができる、濃縮された(ストック)溶液を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許5,773,446
【0012】
本発明によれば、水性濃縮溶液から酸素を除外または実質的に除外することが、意外にもイクラプリムの化学的安定性を大幅に改善することが見出された。溶液のpHが約pH4.2乃至約pH5.7の間の範囲で維持されるならば、イクラプリムは生理学的に許容される溶液中で自在に可溶性であり安定なままであることがさらに見出された。
【0013】
したがってここで、本発明は、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩の生理学的に許容される溶液から本質的にはなる、イクラプリムの安定した水性溶液、特に濃縮された(ストック)安定した水性溶液を含み、該溶液が酸素を不含有であるかまたは本質的には不含有であることで特徴づけられる、組成物を提供する。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、溶液の酸素含有量は0.8ppm以下である。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、溶液の酸素含有量は0.8ppm未満である。
【0016】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、鉱酸、有機スルホン酸および有機カルボン酸の塩からなる塩の群から選択された5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩のそれぞれおよびその混合物を含む。
【0017】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、鉱酸、特にハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素およびヨウ化水素など)、硫酸、硝酸、リン酸および同種のものからなる群から選択された鉱酸の、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩のそれぞれおよびその混合物を含む。1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、有機スルホン酸、特にアルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸、特にメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸および同種のものからなる群から選択されたアルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸の、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩のそれぞれおよびその混合物を含む。
【0018】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、有機カルボン酸、特に酢酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、アスコルビン酸および同種のものからなる群から選択された有機カルボン酸の、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩のそれぞれおよびその混合物を含む。
【0019】
1つの実施形態において、本明細書において以前に記載されたように、溶液のpHが、pH4.0乃至pH5.9の間の範囲、特にpH4.2乃至pH5.7の間の範囲、特にpH4.4乃至pH5.5の間の範囲、特にpH4.6乃至pH5.2の間の範囲、特にpH4.9乃至pH5.1の間の範囲であるが、とりわけpH4.8乃至pH5.2の間の範囲である、本発明に従う組成物が提供される。
【0020】
pH4.5未満の範囲でpHを調整するために、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、生理学的に許容される酸、特に塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸および同種のものからなる群から選択された無機鉱酸、または酢酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸および同種のものからなる群から選択された有機酸のそれぞれおよびその混合物を含有することができる。
【0021】
1つの実施形態において、生理学的に許容される酸性緩衝液溶液、特にクエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液および同種のものの群から選択された緩衝液溶液のそれぞれおよびその混合物によって、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物において、pH調整を遂行することができる。
【0022】
pH4.5を超えた範囲でpHの調整するために、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、生理学的に許容されるアルカリ化剤、特に水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、ならびに同種のものの群から選択された薬剤のそれぞれおよびその混合物を含むことができる。
【0023】
1つの実施形態において、生理学的に許容される緩衝液溶液、特にリン酸緩衝液、トリス緩衝液および同種のものの群から選択されたアルカリ緩衝液のそれぞれおよびその混合物によって、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物において、pH調整を遂行することができる。
【0024】
1つの実施形態において、本明細書において以前に記載されたように、生理学的に許容される溶媒が、アルコール、生理的塩類溶液、脂肪族アミン、グリコール、ポリアルコール、ポリアルコールのエステル、ポリグリコール、ポリエーテル、糖アルコールまたはその混合物からなる群から選択された水または有機溶媒である、本発明に従う組成物が提供される。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、生理学的に許容される溶媒は、水の体積で、特に約100%乃至約40%、特に約95%乃至約55%、特に約80%乃至約65%の混合物を含有する水および有機溶媒の混合物である。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、生理学的に許容される溶媒は水である。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、生理学的に許容される有機溶媒はエタノールである。
【0028】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、共可溶化剤、特にポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、エタノール、ポリエチレングリコール、脂肪酸のエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセリン、オレイン酸、および同種のものからなる群から選択された共可溶化剤のそれぞれおよびその混合物を含む。
【0029】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、生理学的に許容される無機塩化物、特に塩化ナトリウムを含む。
【0030】
本発明の1つの実施形態において、生理学的に許容される無機塩化物、特に塩化ナトリウムは、0%乃至3%の間の濃度、特に0.1%乃至2.5%の間の濃度、特に0.2%乃至2.0%の間の濃度、特に0.5%乃至1.5%の間の濃度、特に0.6%乃至1%の間の濃度で水性溶液中に存在する。
【0031】
1つの実施形態において、本明細書において以前に記載されたように、溶液中の5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の濃度が、少なくとも0.1%(w/w)の範囲、特に少なくとも0.5%(w/w)の範囲、特に少なくとも1.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも2.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも5.0%(w/w)の特に少なくとも8.0%(w/w)の範囲である、本発明に従う組成物が提供される。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、溶液中の5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の濃度は少なくとも1%の範囲であるが、2%を上回らない。
【0033】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、例えば、湿潤剤、特にN−メチルピロリドン、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドン12PF、ポビドン17PF、ポビドン25、ポビドン30、ポビドン90Fなど)、シクロデキストリン(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど)、マクロゴールヒドロキシステアラートおよびマクロゴールグリセロールリシノレアートからなる群から選択された湿潤剤を含む生理学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む。
【0034】
本発明の1つの実施形態において、湿潤剤の濃度は、0%乃至20%の間の範囲、特に0.5%乃至15%の間の範囲、特に1%乃至10%の間の範囲、特に6.5%乃至9.5%の間の範囲であるが、とりわけ5%乃至10%の間の範囲である。
【0035】
本発明の1つの実施形態において、本質的には生理学的に許容される溶媒からなるイクラプリムの安定した水性溶液であって、特に水およびエタノールの混合物(特に水の体積で約100%乃至約40%、特に約95%乃至約55%、特に約80%乃至約65%の水およびエタノールを含有する混合物)、生理学的に許容される無機塩化物(特に塩化ナトリウム、特に0%乃至3%の間の濃度、特に0.1%乃至2.5%の間の濃度、特に0.2%乃至2.0%の間の濃度、特に0.5%乃至1.5%の間の濃度、特に0.6%乃至1%の間の濃度の塩化ナトリウム)、生理学的に許容される湿潤剤(特に、例えば、ポビドン12PF、ポビドン17PF、ポビドン25、ポビドン30、ポビドン90Fなどのポリビニルピロリドン、特に0.5%乃至15%の間の濃度範囲、特に1%乃至10%の間の範囲、特に6.5%乃至9.5%の間の範囲であるが、とりわけ5%乃至10%の間の範囲)、および5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩(特に5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)のメタンスルホン酸付加塩であり、特に少なくとも0.1%(w/w)の濃度、特に少なくとも0.5%(w/w)の範囲、特に少なくとも1.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも2.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも5.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも8.0%(w/w)の範囲であるが、とりわけ少なくとも1%の範囲であるが、2%を上回らない)を含み、該溶液が酸素を不含有であるかまたは本質的には不含有であり、特に0.8ppm以下の酸素濃度を有し、溶液のpHがpH4.0乃至pH5.9の間の範囲、特にpH4.2乃至pH5.7の間の範囲、特にpH4.4乃至pH5.5の間の範囲、特にpH4.6乃至pH5.2の間の範囲、特にpH4.9乃至pH5.1の間の範囲であるが、とりわけpH4.8乃至pH5.2の間の範囲である組成物が提供される。
【0036】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物は、長期保存および容易な出荷のための特に濃縮されたストック溶液のようなストック溶液として提供される。
【0037】
1つの実施形態において、前記ストック溶液は水溶液である。
【0038】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物は、ボーラス注射のための即時使用可能注射溶液として提供される。
【0039】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物は、本明細書において上で記載されたようなストック溶液を補充し、注射可能水、グルコース溶液、完全電解質溶液(アミノ酸、脂質、ビタミン、微量元素および他のミネラルを含有するかまたは含有しない)、リンガー乳酸塩溶液、リンガー酢酸塩溶液、塩化ナトリウム溶液(等張溶液、低張溶液または高張溶液の形態)からなる群から選択された生理学的に許容される溶質により所望の体積にした、即時使用可能注射溶液として提供される。
【0040】
本発明の1つの実施形態において、本明細書において以前に記載されたような、生物学的に活性のある薬剤または化合物、特に薬学的に活性のある薬剤または化合物、特にさらなる抗微生物化合物、特に抗菌化合物をさらに含む組成物が提供される。
【0041】
1つの実施形態において、組成物は、さらなる抗菌化合物、特に葉酸生合成に関与する酵素の阻害剤として作用する抗菌化合物、特にイクラプリムと組み合わせて投与された場合相乗効果を示す化合物、特にスルホンアミドまたはプテリジン誘導体、特にスルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファジメトキシン、ダプソーンからなる群から選択されたスルホンアミドを含む。
【0042】
本発明のさらなる態様は、長時間保存および/または非経口投与に適切なパッケージング中の、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物の供与に関する。
【0043】
1つの実施形態において、本発明は、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物を含む、容器、特に密封した容器、特にバイアルまたはアンプルを提供する。
【0044】
本発明の1つの実施形態において、前記容器はプラスチック容器またはガラス容器である。
【0045】
本発明の1つの実施形態において、前記容器は、酸素を不含有であるかまたは本質的には不含有である生理学的に許容される溶液を含み、ヘッドスペースにおける酸素濃度が5%(v/v)未満、特に4%(v/v)未満であるが、とりわけ3%(v/v)未満である、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物を含む。
【0046】
本発明の1つの実施形態において、前記ガラス容器は、密封したガラスのバイアルまたはアンプル、特に全体積が5mL乃至10mLの間、特に5mL乃至8mLの間、特に5.5mL乃至6.5mLの間の密封したガラスのバイアルまたはアンプルである。
【0047】
本発明は、生理学的に許容される溶媒および5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩から本質的にはなる、イクラプリムの安定した水性溶液、特に濃縮された安定した水性溶液を含み、該溶液が酸素を不含有であるかまたは本質的には不含有であることで特徴づけられる、組成物を製造するプロセスであって、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)、特にその生理学的に許容される酸付加塩を、そのための生理学的に許容される溶媒中に溶解することと;酸素を不含有であるかまたは本質的には不含有である溶液、特に0.8ppm以下の酸素濃度の溶液を得るために酸素を溶液から除去することと;組成物を滅菌することとを含むプロセスも提供する。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、窒素の溶液のパージによって溶液から酸素を除去することができる。
【0049】
1つの実施形態において、本明細書において上で記載されたように、pH4.0乃至pH5.9の間の所望の範囲、特にpH4.2乃至pH5.7の間の範囲、特にpH4.4乃至pH5.5の間の範囲、特にpH4.6乃至pH5.2の間の範囲、特にpH4.9乃至pH5.1の間の範囲であるが、とりわけpH4.8乃至pH5.2の間の範囲内にpHを調整する追加工程を含む、プロセスが提供される。
【0050】
本発明の1つの実施形態において、pHは、本明細書において以前に開示されたような生理学的に許容される酸および/またはアルカリ化剤および/または緩衝液を加えることによって上で示されるような所望の範囲に調整されうる。
【0051】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたようなプロセスは、以前に本明細書において詳述されたような生理学的に許容される賦形剤および/または生理学的に許容される無機塩化物種などのさらなる成分を加える追加工程を含む。
【0052】
本発明の1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物の滅菌は、滅菌フィルターを通して溶液を通過することによって遂行される。
【0053】
本発明の1つの実施形態において、本発明に従う組成物の滅菌は、溶液が、定義された期間(特に5分乃至2時間の間、特に10分乃至30分の間の範囲の期間)で、高温(特に100℃乃至175℃の間、特に115℃乃至160℃の間の温度)、および高圧(特に997mbar乃至2900mbarの間、特に1600mbar乃至2500mbarの間の範囲の圧力)を受けることによって遂行される。
【0054】
本発明の1つの実施形態において、本発明に従う組成物の滅菌は、溶液が、上記されたような滅菌濾過および高温/高圧レジームの組合せを受けることによって遂行される。
【0055】
1つの実施形態において、本発明は、即時使用可能注射溶液、特にボーラス注射のための即時使用可能注射溶液の製造のためのプロセスを提供する。
【0056】
1つの実施形態において、本発明は、即時使用可能注射溶液、特に点滴のための即時使用可能注射溶液の製造のためのプロセスであって、注射可能水、グルコース溶液、完全電解質溶液(アミノ酸、脂質、ビタミン、微量元素および他のミネラルを含有するかまたは含有しない)、リンガー乳酸塩溶液、リンガー酢酸塩溶液、塩化ナトリウム溶液(等張溶液、低張溶液または高張溶液の形態)からなる群から選択された生理学的に許容される溶質により所望の体積が達成されるまで、本発明に従い本明細書において以前に記載されたようなストック溶液を希釈することを含むプロセスを提供する。
【0057】
1つの実施形態において、本発明は、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物を含む容器、特に密封した容器、特にバイアルまたはアンプルの製造のためのプロセスであって、
a)酸素を除外するかまたは実質的に除外する条件下で(例えば窒素雰囲気中で)、水および組成物の成分(例えば生理学的に許容される有機溶媒、生理学的に許容される無機塩化物、生理学的に許容される湿潤剤など)を完全に溶解するまで混合する工程と、
b)続いて5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩を完全に溶解するまで添加する工程と、
c)続いてpH4.0乃至pH5.9の間の所望の範囲、特にpH4.2乃至pH5.7の間の範囲、特にpH4.4乃至pH5.5の間の範囲、特にpH4.6乃至pH5.2の間の範囲、特にpH4.9乃至pH5.1の間の範囲であるが、とりわけpH4.8乃至pH5.2の間の範囲にpHを調整する工程と、
d)続いて滅菌濾過、特に滅菌フィルターを介して窒素圧下で濾過する工程と、
e)続いて清浄で滅菌され脱パイロジェン化されたガラスのアンプルまたはバイアルの中に溶液を満たし、アンプルを窒素でパージし、続いてアンプルを密封する工程と;任意で
f)続いて熱処理の形態でさらに滅菌をする工程と
を含むプロセスを提供する。
【0058】
さらに本発明の別の態様において、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物は、感染症の制御または予防、特に細菌感染の制御、特にグラム陽性菌、多剤耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌、カリニ肺炎菌、寄生生物および日和見病原体の制御において使用することができる。
【0059】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において上で記載されたような組成物は、感染症の制御または予防、特に細菌感染の制御、特にグラム陽性菌、多剤耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌、カリニ肺炎菌、寄生生物および日和見病原体の制御における使用のために提供される。
【0060】
本発明の1つの実施形態において、かかる治療を必要とする患者に薬学的に効果的な量で本発明に従う組成物を非経口的に投与することを含む、感染症の制御または予防、特に細菌感染の制御、特にグラム陽性菌、多剤耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌、カリニ肺炎菌、寄生生物および日和見病原体の制御のための方法が提供される。
【0061】
本発明の1つの実施形態において、投与は静脈内ボーラス注射または点滴によって遂行される。
【0062】
以下において、本発明の具体的な態様はさらに詳細に説明され、本発明に従う組成物の具体的な実施例が提供され、それは本発明をさらに例証するためのみに役立つが、いかなる点でも限定的であると判断されるべきではない。
【0063】
本発明の範囲内で、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンおよびその酸付加塩の様々な標準的水性製剤は、長期安定性について試験された。例えば、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩のバイアルは、20mg/mLのイクラプリムの濃度で水中の30%プロピレングリコールにおいて調製された。
【0064】
上記の標準製剤の安定性を検討するために、モデルシステムを使用して長期貯蔵条件を模倣した。このモデルシステムにおいて、試験される溶液は40℃および70℃で少なくとも12日間荷重加熱される。
【0065】
上記の標準製剤のさらなる安定性試験を、pHをクエン酸により3.5未満に調整し、100℃で2時間のような模倣滅菌条件下で実行した。
加熱工程の完了後の溶液の解析は、例えばHPLC測定などの当業者に周知の方法を使って行われた。
【0066】
これらのモデル条件下では、試験する標準製剤は深刻な安定性問題を示した。HPLC解析により、イクラプリム化合物の分解産物を表わす新しいピークがさらに示された。
プロピレングリコールの量を減少させること、および4.0を超えるpHの維持によって、イクラプリム化合物の分解を減少させることができるが、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩について塩類溶液中で達成された最大の可溶性は、以前に定義された20mg/mLに比較して、わずか7.5mg/mLだった。
【0067】
穏やかな荷重加熱を適用して上で記載されたモデルシステムを使用することによって得られた結果から、室温での長時間保存が使用される成分に依存して沈殿または副産物の形成を導きうると結論できる。
【0068】
さらに、溶液の色変化が、実験室規模の低pHの模倣滅菌試験の間に観察され、このことから、これらの標準製剤がこれらの条件下で感受性があり、したがって最終的に滅菌されるべきでないという仮説が導かれた。
【0069】
したがって、親化合物の沈殿または副産物の形成なしに保存のための長期安定性を保証する改善された製剤(加熱滅菌を可能にする高温の短期暴露に対して安定である)を提供することが本発明の目的である。
【0070】
この概念は、例えば、アンプルまたはバイアルなどの適切な容器中の、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンの酸付加塩の濃縮された溶液(静脈内ボーラス注射にそのまま使用することができるか、または使用の前に適切な注射可能溶液により希釈することができる)の製造を示唆する。さらにこの概念は、その中に含まれる成分が長期間安定であり、保存および出荷が容易という長所を有するバイアルまたはアンプルなどの容器中に規定することができる、濃縮物溶液の供与を示唆する。
【0071】
本発明の範囲内で、濃縮された溶液および/または閉じた容器中の溶液上に重なるヘッドスペースから酸素を除外または実質的に除外することによって、上の概念を実現できることが、ここで意外にも見出された。
【0072】
溶液からの酸素の除去は当業者に周知の方法によって達成することができる。本発明の具体的な実施形態において、生理学的に許容される溶媒および5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩から本質的にはなる、イクラプリムの水性溶液を、酸素濃度が溶液中で0.8ppm以下になり、閉じた容器中の溶液上に重なるヘッドスペースにおいて5%(v/v)未満、特に4%(v/v)未満であるが、とりわけ3%(v/v)未満になるまで、窒素によりパージすることができる。
【0073】
溶液の安定性は、溶液のpHを、pH4.0乃至pH5.9の間の範囲、特にpH4.2乃至pH5.7の間の範囲、特にpH4.4乃至pH5.5の間の範囲、特にpH4.6乃至pH5.2の間の範囲、特にpH4.8乃至pH5.0の間の範囲であるが、とりわけpH4.8乃至pH5.2の間の範囲に調整することによって、さらに増加させることができる。
【0074】
上で示された範囲内にpHを調整するために、生理学的に許容される酸を溶液に加えることができる。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸および同種のものを含む無機鉱酸、またはアルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸(メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸および同種のものなど)を含む有機スルホン酸、または酢酸、L−酒石酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、アスコルビン酸、D,L−乳酸、L−乳酸、D−乳酸、ジグリコール酸、フマル酸、ゲンチシン酸、マロン酸、シュウ酸および同種のものを含むカルボン酸などの任意の生理学的に許容される酸を、pHを所望の範囲、特に約4.0乃至4.5の範囲に調整および維持するために使用することができる。さらに、例えば、塩化物緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液および同種のものなどの酸性の生理学的に許容される緩衝液溶液を使用することができる。
【0075】
約4.5乃至約5.9の範囲にpHを調整および維持するために、生理学的に許容されるアルカリ化剤、例えば、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンもしくはトリエタノールアミンまたは同種のものなどを、溶液に加えることができる。代替的に、生理学的に許容される緩衝液溶液、例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液または同種のものなどを溶液に加えることができる。
【0076】
1つの実施形態において、本発明に従う組成物は、したがって、生理学的に許容される溶媒および5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩から本質的にはなる、イクラプリムの安定した水性溶液、ならびに約pH4.2乃至約pH5.7の間の範囲にpHを維持するpH調整剤を含み、該溶液が酸素を不含有であるかまたは本質的には不含有である。
【0077】
1つの実施形態において、本発明に従い本明細書において以前に記載されたような組成物は、生理学的に許容される溶媒、および0.1%(w/w)乃至10%(w/w)の間の濃度、特に0.2%(w/w)乃至8%(w/w)の間の濃度範囲、特に0.3%(w/w)乃至5%(w/w)の間の範囲、特に0.5%(w/w)乃至3%(w/w)の間の範囲、特に0.6%(w/w)乃至2%(w/w)の間の範囲、特に0.8%(w/w)乃至1.8%(w/w)の間の範囲であるが、とりわけ1%(w/w)乃至2%(w/w)の間の範囲の5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)またはその酸付加塩から本質的にはなる、イクラプリムの安定した水性溶液を含む。
【0078】
イクラプリム化合物がメタンスルホン酸付加塩と同等の水可溶性を示すならば、イクラプリム化合物は、任意の薬学的に許容される酸付加塩(例えば、鉱酸、有機スルホン酸および有機カルボン酸の群から選択された付加塩のそれぞれおよびその混合物など)の形態で本発明に従う組成物中に存在することができる。
【0079】
特に、鉱酸は、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸および同種のものからなる群から選択された酸付加塩として使用することができる。
【0080】
適切な有機スルホン酸付加塩は、例えばアルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸(メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ベンゼンスルホン酸および同種のものなど)からなる群から選択されたものである。
【0081】
本発明の範囲内で使用することができるカルボン酸付加塩は、酢酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、アスコルビン酸および同種のものからなる群から選択されたものである。
【0082】
さらに、生理的に許容されイクラプリムの溶解が可能な任意の溶媒を本発明に従う組成物中に使用することができる。適切な溶媒は、例えば、水、アルコール(特にエタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールおよび同種のものからなる群から選択されたアルコール)、グリコール(プロピレングリコールおよびポリグリコールなど、特にポリエチレングリコール(PEG 300、400、600、2000、3350、8000)、ポリプロピレングリコールおよび同種のものからなる群から選択されたポリグリコール)、グリセリンなどのポリアルコール、ポリアルコールのエステル(ジアセチン、トリアセチンおよび同種のものなど)、糖アルコール(特にマンニトール、キシリトール、ソルビトールおよび同種のものからなる群から選択されたもの)である。
【0083】
さらに、生理的塩類溶液、特に、注射可能水、完全電解質溶液(アミノ酸、脂質、ビタミン、微量元素および他のミネラルを含有するかまたは含有しない)、リンガー乳酸塩溶液、リンガー酢酸塩溶液、塩化ナトリウム溶液(等張溶液、低張溶液、高張溶液、および同種のもの)、脂肪族アミド(N−ヒドロキシ−2エチル−ラクトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、および同種のものなど)からなる群から選択された塩類溶液を使用することができる。
【0084】
イクラプリムおよび/またはその酸付加塩の可溶性は、例えば、N−メチルピロリドン、ポリビニルピロリドン(ポビドン12PF、ポビドン17PF、ポビドン25、ポビドン30、ポビドン90F)、シクロデキストリン、とりわけ2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、マクロゴールヒドロキシステアラート、マクロゴールグリセロールリシノレアートおよび同種のものからなる群から選択された湿潤剤などの追加の共可溶化剤の添加によってさらに改善することができる。
【0085】
本発明の1つの態様において、濃縮されたストック溶液は、水もしくはアルコールまたはその混合物中に、イクラプリムの酸付加塩、特にイクラプリムのメタンスルホン酸付加塩を溶解することによって調製される。特に、水/エタノールまたは水/プロピレングリコールの混合物、特に水の体積で約100%乃至約40%、特に約95%乃至約55%、特に約80%乃至約65%で含有する混合物を使用することができる。
【0086】
特に、27%乃至34%(重量/重量)の間のエタノールおよび73%乃至66%(重量/重量)の間の水、好ましくは29%乃至31%(重量/重量)の間のエタノールおよび71%乃至69%(重量/重量)の間の水を含む混合物であるが、とりわけ30.6%(重量/重量)のエタノールおよび69.4%(重量/重量)の水を含む混合物を使用することができる。
【0087】
このストック溶液は、例えば、生理学的に許容される無機塩化物、デキストロース、ラクトース、マンニトールおよび同種のものなどの等張性調整剤を加えることによって補充されうる。特に、塩化ナトリウムはストック溶液の等張性調整のために使用することができる。
【0088】
次いで、このストック溶液のpHを、ストック溶液に塩基を加えることによって、4.2乃至5.7の範囲のpH、特に4.8乃至5.2の範囲のpH、特に5.0のpHに調整することができる。特に、水酸化ナトリウム、特に0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を、ストック溶液のpHの調整のために使用することができる。
【0089】
水または水/アルコール混合物中の5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩の可溶性を改善するために、ストック溶液は、例えば、N−メチルピロリドン、ポリビニルピロリドン(ポビドン12PF、ポビドン17PF、ポビドン25、ポビドン30、ポビドン90F)、シクロデキストリン、とりわけ2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、マクロゴールヒドロキシステアラート、マクロゴールグリセロールリシノレアートおよび同種のものからなる群から選択された薬剤などの可溶化剤または湿潤剤の添加によって、さらに補充することができる。
【0090】
特に、ポビドン12PF(ポビドン)などのポリビニルピロリドンを、本発明に従うストック溶液中の湿潤剤として使用することができる。
【0091】
ストック溶液の酸素濃度は0.8ppm以下である。これは、酸素不含有溶液を生成するために一般に使用される当技術分野において公知の標準的手順(例えば浸透膜)によって、または窒素を通気した水を溶媒としてイクラプリム酸付加塩に使用することによって、または特に輸送および保存のための容器の中へのストック溶液の充填および密封の間にストック溶液を窒素でパージすることによって、達成することができる。
【0092】
本発明の1つの態様において、上で記載されたストック溶液は、特に本明細書において記載されたように滅菌フィルターを通して溶液を通過させることによって滅菌される。
本発明の別の態様において、本発明に従う組成物の滅菌は、溶液が、定義された期間(特に5分乃至少なくとも2時間の間、特に10分乃至30分の間の範囲の期間)で、高温(特に100℃乃至175℃の間、特に115℃および160℃の間の温度)、および高圧(特に997mbar乃至2900mbarの間、特に1600のmbar乃至2500mbarの間の範囲の圧力)を受けることによって遂行される。
【0093】
ストック溶液の滅菌は、溶液が、上記されたような滅菌濾過および高温/高圧レジームの組合せを受けることによっても遂行することができる。
【0094】
特に、溶液は、清浄な滅菌された容器の中へ0.2μmの公称孔サイズを持つ事前に滅菌されたフィルターを通して1乃至2barの窒素圧下で通過させることができる。次いで、そのように滅菌された溶液(約5.3mL)を、適切なサイズの清浄で滅菌されており脱パイロジェン化されたガラスのアンプルの中へ充填することができ、アンプルは窒素でパージし、切断し、密封する。
【0095】
次いで、アンプルを121℃で15分間加熱滅菌することができる。
【0096】
次いで、そのように調製されたアンプルは、室温下で長期間、特に少なくとも24か月間保存することができる。
【0097】
このストック溶液は、非経口投与のための即時使用可能注射溶液または点滴のための即時使用可能点滴溶液の調製に使用することができる。即時使用可能注射溶液はそのままストック溶液を使用することによって調製することができる。即時使用可能点滴溶液は、注射可能水、グルコース溶液、完全電解質溶液(アミノ酸、脂質、ビタミン、微量元素および他のミネラルを含有するかまたは含有しない)、リンガー乳酸塩溶液、リンガー酢酸塩溶液、塩化ナトリウム溶液(等張、低張または高張)および同種のものをそれぞれまたは様々な組み合わせで加えることによって、ストック溶液を所望の体積に希釈することによって調製することができる。
【0098】
次いで、本発明に従う組成物は、かかる治療を必要とする患者に薬学的に効果的な量で本発明に従う組成物を非経口的に投与することによって、感染症の制御または予防、特に細菌感染の制御、特にグラム陽性菌、多剤耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌、カリニ肺炎菌、寄生生物および日和見病原体の制御に使用することができる。本発明に従う組成物の非経口投与は、静脈内ボーラス注射、または点滴によって遂行することができる。
【0099】
具体的な実施形態において、本明細書において以前に記載されたような本発明の組成物は、さらなる抗菌化合物、特に葉酸生合成に関与する酵素の阻害剤として作用する抗菌化合物、特にイクラプリムと組み合わせて投与された場合相乗効果を示す化合物、特にスルホンアミドまたはプテリジン誘導体、特にスルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファジメトキシン、ダプソーンからなる群から選択されたスルホンアミドと組み合わせて使用することができる。
【0100】
さらなる抗菌化合物の共投与は、本発明に従う水性医薬組成物の投与と同時に、同じ組成物の一部として、または個別の組成物の形態でのいずれかで、行うことができる。あるいは、さらなる抗菌化合物は、本発明に従う水性医薬組成物の投与の前または後のいずれかで投与することができる。
【0101】
以下の実施例およびその中に記載された結果は、水性医薬組成物の開発がどのように進められたかを詳細に示す。実験は本発明を例証しているが、その範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0102】
A.実施例において使用される化学物質および装置
化学物質:
アセトニトリル バイオソルブ(Biosolve)社HPLCグレード
ギ酸 フルカ(Fluka)社プルム(purum)
塩酸 32%、フルカ社プリス(puriss)、p.a.
クエン酸 フルカ社プリス、p.a.
プロピレングリコール フルカ社プリス、p.a.
グリコフロール75 ロシュ(Roche)社

装置
高圧勾配HPLCシステム
ウォーターズ(Waters)社、アライアンス(Alliance)
HPLCカラム、スペルコ(Supelco)社、ディスカバリー(Discovery)C18
加熱チャンバー、サルビス(Salvis)社

B.検出方法
HPLC測定
カラム: スペルコ社、ディスカバリーC18
カラム温度: 室温
溶出液A: 10mMギ酸
溶出液B: アセトニトリル
勾配: 10分で80%Aから20%へ
5分間20%A
5分で20%Aから80%Aへ
注入体積: 10μl
検出波長: 254nm
流量: 0.5mL/分

ヘッドスペースまたは溶液における酸素の量を決定する方法:
溶液中の酸素含有量の測定:
溶液中の酸素含有量を電流測定法により酸素濃度計で測定する:
−キャリブレーション:−湿ったスポンジを含有するエアキャリブレーションビーカー中にプローブを置く
−測定を開始する;プローブの相対スロープについて容認される範囲が正しいことをチェックする
−測定モードは溶存酸素濃度(mg/L)を設定する

ヘッドスペース中の酸素含有量の測定:
アンプルヘッドスペース中の酸素含有量は、医薬用パッケージ中の酸素を測定するようにデザインした専門のヘッドスペース酸素分析計により測定される。
【0103】
この目的のために、アンプルをパッケージサポートに固定し、アンプルの下部をダイアモンド先端のペンで切り取る。脱気水をアンプルの中へ加え、酸素の含有量を事前にキャリブレーションしてある電流測定プローブで測定する。
【0104】
実施例1:イクラプリムの調製および標準製剤の試験
5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩(20mg/mL)のバイアルを、ミリポア(Miliipore)水中の30%のプロピレングリコールにおいて通常大気下で調製した。上記の製剤の安定性を検討するために、試験溶液が荷重加熱されるモデル実験を開発した。試験サンプルを40℃乃至70℃の間のような室温(約20℃)よりも高い温度で延長した期間加熱することによって、長期貯蔵条件を模倣することができることは、当技術分野において周知である。加熱工程の完了後の溶液の解析は、外観検査およびHPLC測定を使って行なった。
代表的な実験の結果を表1中に示す。
【0105】
【表1】

表1中の結果から、活性成分の量は時間と共に減少しているので、かかる製剤が長期保存に適していないと結論することができた。
【0106】
実施例2:pH3.5未満の模倣滅菌条件下のイクラプリムの安定性の研究
5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩のバイアルは、水中の30%のプロピレングリコールまたは10%のグリコフロールにおいて調製された。そのようにして得た溶液のpHを1Mのクエン酸でpH3または1Nの塩酸でpH1に調整し、滅菌プロセスを模倣するためにバイアルを加熱した。
加熱工程の完了後の溶液の解析は、外観検査およびHPLC測定を使って実行した。
代表的な結果を表2中に示す。
【0107】
【表2】

表2中の結果から、活性成分の量が時間と共に減少しているので、pH3以下ではかかる製剤が加熱滅菌に適していないと結論することができる。
【0108】
実施例3:イクラプリムメタンスルホン酸塩の可溶性
異なる水性溶液/有機溶液中のイクラプリムメシル酸の可溶性を研究し、表3中に提示する。固定量のイクラプリムメシル酸を異なる水性溶液/有機溶液中に懸濁した。懸濁物を24時間室温で撹拌した。溶液中のイクラプリムの量を決定するために、溶液の上澄をHPLCによって分析した。
代表的な結果を表3中に提示する。
【0109】
【表3】

【0110】
実施例4:ストック溶液の調製
注射用水(10容 体積/体積)、ポビドン12PF(2容)、塩化ナトリウム(0.2容)およびエタノール(7.5容)を、窒素の連続流れ下でステンレス鋼の混合タンク中で完全溶解まで撹拌した。溶液中の残留酸素の含有量が0.8ppm未満であることを保証するように、溶液を恒久的に制御した。
【0111】
続いて、5−[(2R,S)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミンのメタンスルホン酸塩(0.4容)を溶液に加え、完全溶解まで撹拌した。次いで、溶液のpHをpH4.8乃至5.2の間の値に0.1N水酸化ナトリウム溶液で調整した。溶液の体積を1.28%のイクラプリムの最終濃度に達するように調整した。
【0112】
クローズドシステムにおいて、そのように得られた溶液を、1乃至2barの窒素気流により0.2μmの公称孔サイズを持つ滅菌フィルターを通して濾過させた。適切なサイズの清浄で滅菌されており脱パイロジェン化されたガラスのアンプルを、無菌条件および窒素雰囲気下で、濾過溶液により充填し、1乃至2barの窒素気流による溶液のフラッシングによって窒素でパージし、炎で狭窄することにより密封した。
【0113】
さらなる滅菌工程は、15分間121℃で熱によってアンプルを処理することによって適用することができる。
【0114】
かかるアンプルの内容物を塩類溶液で希釈し、大量静脈内点滴のための安定した溶液を生ずることができる。
【0115】
実施例5:安定性試験
実施例5.1:
上記の実施例4中に記載されるように、密封したアンプル(アンプルの全体積は6.5mL乃至5.5mLの間)を、充填の間にヘッドスペース中で3%v/v以下の酸素量を維持するために窒素でアンプルをパージすることによって、ストック溶液(全体積5.3mL)を含有するように調製した。工程11に従う加熱滅菌処理は実行されなかった。
アンプルを開き、直ちに上記された方法を使用してHPLCによって分析した。
【0116】
実施例5.2:
実施例5.1中に記載されていたものなどの密封されたアンプルは、実施例4の工程11中に記載されるように121℃で15分間追加の加熱滅菌処理を行なった。アンプルを開き、直ちに上記された方法を使用してHPLCによって分析した。
【0117】
実施例5.3:
実施例5.1におけるものなどの密封されたアンプルを開き、溶液を通常大気条件(約20%酸素を含有する)下で別の空アンプル中に補充した。
そのようにして得た溶液を、上記された方法を使用してHPLCによって分析した。
【0118】
実施例5.4:
実施例5.1におけるものなどの密封したアンプルは開き、溶液を通常大気条件(約20%酸素を含有する)下で別の空アンプルの中へ補充した。
アンプルは、実施例4の工程11中に記載されるように121℃で15分間追加の加熱滅菌処理を行なった。
アンプルを開き、直ちに上記された方法を使用してHPLCによって分析した。
代表的な結果を表4中に提示する。
【0119】
【表4】

カラム: YMC ODS−AQ、250×4.6mm、5μm
カラム温度: 40℃
移動相A: HPO0.1%
移動相B: MeOH
移動相C: CHCN

勾配: 時間(分) %A %B %C
0 75 15 10
15 60 15 25
30 10 15 75
35 10 15 75

流量: 1mL/分
後運転 10分
検出器 230nmのUV
注入体積: 10μL
運転時間 35分
希釈剤 水/MeOH/CHCN 6/2/2 v/v/v

観察された不純物1、2および3はイクラプリムの酸化に起因する分解産物である:
イクラプリム:[M+H]=355、HPLC保持時間:6.1
不純物1:[M+H]=353、HPLC保持時間:9.2
不純物2:[M+H]=371、HPLC保持時間:3.8
不純物3:[M+H]=389、HPLC保持時間:3.3

実施例5.4の結果は、大気(約20%酸素を含有する)に対するサンプルの暴露が有意な変色(BY6乃至BY4))を引き起こすことに加えて、活性成分を減少させることおよび/または加圧滅菌後に分解産物がかなり増加することを実証する。開けてないサンプルのみが、加圧滅菌(実施例5.2)後のわずかな変色(BY6乃至BY5)を示した。実施例5.3の結果は、溶液の安定性を影響せずに、通常大気下でバイアルを開いて扱うことができることを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される溶媒および5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の付加塩から本質的にはなる溶液中に、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)を含み、該溶液が酸素を本質的には不含有であることで特徴づけられる、組成物。
【請求項2】
前記溶液中の酸素濃度が0.8ppm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生理学的に許容される溶媒が、水、アルコール、生理的塩類溶液、脂肪族アミド、グリコール、ポリアルコール、ポリアルコールのエステル、ポリグリコール、ポリエーテルおよび糖アルコールまたはその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記生理学的に許容される溶媒が、水またはエタノールまたは水/エタノール混合液である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
0%乃至50%の間、特に5%乃至45%の間、特に20%乃至35%の間の濃度範囲でエタノールを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
特に0%乃至3%の間、特に0.1%乃至1%の間の濃度の塩化ナトリウム(NaCl)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記溶液のpHが、pH4.2乃至pH5.7の間の範囲、特にpH4.4乃至pH5.5の間の範囲、特にpH4.6乃至pH5.2の間の範囲、特にpH4.9乃至pH5.1の間の範囲であるが、とりわけpH4.8乃至pH5.2の間の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶液中の5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の前記濃度が、少なくとも0.1%(w/w)の範囲、特に少なくとも0.5%(w/w)の範囲、特に少なくとも1.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも2.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも5.0%(w/w)の範囲、特に少なくとも8.0%(w/w)の範囲であるが、とりわけ少なくとも1%の範囲であり、2%を上回らない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
湿潤剤、特にN−メチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、マクロゴールヒドロキシステアラートおよびマクロゴールグリセロールリシノレアートからなる群から選択された湿潤剤を、特に0%乃至20%の間、特に0.1%乃至10%の間、特に6.5%乃至9.5%の間であるが、とりわけ5%乃至10%の間の濃度でさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記付加塩が、鉱酸、有機スルホン酸および有機カルボン酸の塩からなる塩の群から選択された酸付加塩であるが、特にメタンスルホン酸付加塩のそれぞれおよびその混合物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
さらなる生物学的に活性のある薬剤または化合物、特に薬学的に活性のある薬剤または化合物、特にさらなる抗微生物化合物、特に葉酸生合成に関与する酵素の阻害剤などの抗菌化合物、例えばスルホンアミドまたはプテリジン誘導体、特にスルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファジメトキシン、ダプソーンからなる群から選択されたスルホンアミドを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含む容器、特にバイアルまたはアンプルなどの密封した容器。
【請求項13】
前記組成物が生理学的に許容される溶液を含み、ヘッドスペース中の酸素濃度が5%(v/v)未満、特に4%(v/v)であるが、とりわけ3%(v/v)未満である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を含む請求項12に記載の容器。
【請求項14】
生理学的に許容される溶媒および5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)の酸付加塩から本質的にはなる、イクラプリムの安定した水性溶液を含み、該溶液が酸素を本質的には不含有であることで特徴づけられる、組成物を製造するプロセスであって、5−[(2RS)−2−シクロプロピル−7,8−ジメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−5−イルメチル]−ピリミジン−2,4−ジアミン(イクラプリム)、特にその生理学的に許容される酸付加塩を、そのための生理学的に許容される溶媒中に溶解すること;酸素を本質的には不含有である溶液、特に0.8ppm以下の酸素濃度の溶液を得るために酸素を溶液から除去すること;組成物を滅菌することを含むプロセス。
【請求項15】
pH4.2乃至pH5.7の間の所望の範囲、特にpH4.4乃至pH5.5の間の範囲、特にpH4.6乃至pH5.2の間の範囲、特にpH4.9乃至pH5.1の間の範囲であるが、とりわけpH4.8乃至pH5.2の間の範囲内に、例えば生理学的に許容される酸および/またはアルカリ化剤および/または緩衝液を加えることによって、pHを調整する追加の工程を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
ボーラス注射のための即時使用可能注射溶液の製造のための請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
即時使用可能点滴溶液の製造のために請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、該使用プロセスが注射可能水、グルコース溶液、完全電解質溶液(アミノ酸、脂質、ビタミン、微量元素および他のミネラルを含有するかまたは含有しない)、リンガー乳酸塩溶液、リンガー酢酸塩溶液、塩化ナトリウム溶液(等張溶液、低張溶液または高張溶液の形態)からなる群から選択された生理学的に許容される溶質により、請求項1〜11のいずれか一項に記載のストック溶液を所望の体積が達成されるまで希釈することを含む。
【請求項18】
ヒトまたは動物における感染症の制御または予防、特に細菌感染の制御、特にグラム陽性菌、多剤耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌、カリニ肺炎菌、寄生生物および日和見病原体の制御で使用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
治療を必要とする患者に薬学的に効果的な量で請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の非経口的に投与することを含む、ヒトまたは動物における感染症の制御または予防、特に細菌感染の制御、グラム陽性菌、多剤耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌、カリニ肺炎菌、寄生生物および日和見病原体の制御のための方法。

【公表番号】特表2011−516509(P2011−516509A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503341(P2011−503341)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054232
【国際公開番号】WO2009/124586
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510268646)アシノ ファーマ アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】ACINO PHARMA AG
【Fターム(参考)】