説明

水性塗料用樹脂組成物、該水性塗料用樹脂組成物を配合してなる塗料

【課題】耐汚染性、光沢等の塗膜外観を低下させることなく、耐候性を向上させる水性塗料用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)水溶性および/または水分散性樹脂、(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物、(C)アルコキシシリル基の加水分解縮合反応を促進させる硬化触媒、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含有する2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築内外装、屋根、窯業系建材、自動車、家電用品、プラスチックなどに対する各種塗装の水性塗料として好適に用いられる、親水性表面を形成し、耐候性に優れた水性塗料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料の分野においても、公害対策あるいは省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、水溶性あるいは水分散樹脂への転換が試みられている。しかし、水性塗料は溶剤系塗料に比べ、塗膜性能が劣る傾向にあった。こういった状況下、水性塗料においても溶剤系塗料と同等の塗膜物性が要求され、特に耐汚染性といった高度な性能付与が要求されている。
【0003】
これらの要求に対して、塗料中にオルガノシリケートを配合する方法が知られている(例えば特許文献1第4表参照)。この方法により、形成した塗膜の親水性が向上し、油性の汚染物質の付着防止に効果があり、また、付着した汚染物質を降雨等の水滴で洗い流すことが可能である。しかしながら、上記方法を水性塗料に適用した場合、オルガノシリケートの水性塗料への混和性が悪く、表面光沢が低下するという問題があった。
【0004】
これに対して、オルガノシリケートの水性塗料への混和性を改良する方法として、オルガノシリケートを分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤、アルコキシシラン化合物の加水分解・縮合を促進する化合物と混合して添加する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。この方法により、水性塗料との混和性は改善され、表面光沢や耐水性の極端な低下は解決された。
【0005】
一方、耐汚染性と並ぶ重要の機能として、耐候性が上げられる。その耐候性を向上させて手段のひとつして、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)の添加が一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO94/06870号公報
【特許文献2】特開2005−015676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的なHALSをオリガノシリケートを用いて耐汚染性を付与した塗料に対して適応すると、耐汚染性を低下させる課題があった。また、HALSの種類のよっては、水性塗料に対する混和性が悪く、光沢等の外観を低下させるものもあり、水性塗料に対して適用できるものが少ないという課題もあった。本発明が解決しようとする課題は、耐汚染性や光沢等の塗膜外観を低下させることなく、耐候性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の酸解離定数の逆数の対数値(pKa)を有するヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を用い、添加方法を工夫することで、耐汚染性や光沢等の塗膜外観を低下させることなく、耐候性を向上させることを見出した。
【0009】
すなわち、(A)水溶性および/または水分散性樹脂、(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物、(C)アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含有する2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。(請求項1)
前記、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)の環状アミン部の構造が次の一般式(1)または(2)である請求項1記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R1は、アルキル基および/またはシクロアルキル基、R2は、アルキル基および/またはシクロアルキル基を示す。)
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、R3は、アルキレン基。nは1から8の整数。)(請求項2)
(A)水溶性および/または水分散性樹脂を含有する基材(I)と(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物、(C)アルコキシシリル基の加水分解縮合反応を促進させる硬化触媒、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、(E)分子中に反応性官能基と親水基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤を含有してなる助剤(II)を使用前に混合して用いる2液型あるいは多成分型である請求項1または2の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。(請求項3)
前記、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が、分子量600未満のもの(d1)と分子量600以上のもの(d2)を併用して用いる請求項1〜3の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。(請求項4)
前記、(C)アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒が、有機錫化合物、酸性リン酸エステルおよび酸性リン酸エステルとアミンの反応物の中から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。(請求項5)
前記、(A)水溶性および/または水分散性樹脂がポリオキシアルキレン鎖を有する樹脂である請求項1〜5の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。(請求項6)
前記、(A)水溶性および/または水分散性樹脂がアルコキシシリル基含有アクリル樹脂である請求項1〜6の何れか1項記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。(請求項7)
請求項1〜7の何れか1項記載の水性塗料用樹脂組成物を配合してなる塗料組成物。(請求項8)
基材(I)に(A)水溶性および/または水分散性樹脂に加え、(F)二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムの少なくとも3種類の表面処理を施した二酸化チタンを配合してなる請求項8記載の塗料組成物。(請求項9)
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性塗料用樹脂組成物より得られる塗膜は、耐汚染性、光沢等の塗膜外観を低下させることなく、耐候性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0016】
[(A)水溶性および/または水分散性樹脂]
(A)水溶性および/または水分散性樹脂としては、塗膜形成能を有するものであれば特に制限なく従来公知のものを使用でき、その具体例としては、アクリル樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ポリエステル樹脂エマルション、アルキド樹脂エマルション、メラミン樹脂エマルションなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。これらの中で形成塗膜の耐候性などの点から、アクリル樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション及びウレタン樹脂エマルションよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
アクリル樹脂エマルションとしては、アクリル系単量体、及びアクリル系単量体と共重合可能な単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0018】
使用可能な上記単量体としては、特に限定はないが、具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシスチレン、アロニクス5700(東亞合成(株)製)、placcelFA−1、placcelFA−4、placcelFM−1、placcelFM−4(以上、ダイセル化学(株)製)、HE−10、HE−20、HP−10、HP−20(以上日本触媒(株)製)、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーNKH−5050、ブレンマーGLM(以上日油(株)製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどの水酸基含有ビニル系単量体;東亞合成(株)製のマクロモノマーである、AS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物、ビニルメチルエーテル、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0019】
更に、エマルションの安定性を向上させることが可能な親水性を有するビニル系単量体も使用可能である。使用可能な親水性基を有するビニル系単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が挙げられる。
【0020】
特にポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体を用いると、後述の(B)オリガノシリケートおよび/またはその変性物との相乗効果により、耐汚染性が大幅に向上する。
【0021】
ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体に限定はないが、ポリオキアルキレン鎖を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。
【0022】
具体例としては日油(株)製の市販品である、ブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−350、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーPP−1000、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー700PEP−350B、ブレンマー10PEP−550B、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーAEP、ブレンマーAET、ブレンマーAPT、ブレンマーPLE、ブレンマーALE、ブレンマーPSE、ブレンマーASE、ブレンマーPKE、ブレンマーAKE、ブレンマーPNE、ブレンマーANE、ブレンマーPNP、ブレンマーANP、ブレンマーPNEP−600;共栄社化学(株)製の市販品である、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトエステルMTG、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EA、ライトアクリレートEHDG−A;日本乳化剤(株)製の市販品である、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、MPG130−MA、Antox MS−60、MPG−130MA、RMA−150M、RMA−300M、RMA−450M、RA−1020、RA−1120、RA−1820;新中村化学工業(株)製の市販品である、NK−ESTER M−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、LA;三洋化成(株)製の市販品であるエレミノールRS−30、RS−300などがあげられる。
【0023】
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体を使用することも可能である。
【0024】
また、トリフルオロ(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有ビニル系単量体を使用することにより高度な撥水・撥油を有するフッ素含有アクリル系樹脂エマルションも作製可能である。
【0025】
また、上記単量体にカルボニル基含有ビニル系単量体を共重合し、ヒドラジンおよび/またはヒドラジド基を含有する化合物を配合した架橋型アクリル樹脂エマルションも作製可能である。
【0026】
アクリルシリコン樹脂エマルションは、前記アクリル樹脂エマルションを珪素含有化合物で変性したものであり、アクリル樹脂エマルションに比して耐候性が向上している。その変性はエマルションの合成段階で行っても、合成終了後に別途行っても良い。
【0027】
また、アクリルシリコン樹脂エマルションのなかでも、特にアルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルションが、耐汚染性、耐候性の点で優れている。
【0028】
さらに、アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルションを多段重合を用いて、コア/シェル構造にすることで、耐汚染性や耐候性を低下させることなく、可とう性を付与することができ、弾性塗料等の柔軟な下地に対しても適用できるようになる。
【0029】
アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルションは、(a)アクリル系単量体、(b)アルコキシシリル基含有単量体及び(c)これらと共重合可能な単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0030】
(a)アクリル系単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどが上げられる。
【0031】
特に炭素数4以上のアルキル基および/又はシクロアルキル基を有するメタクリル酸エステルを60重量%以上使用するとエマルションの貯蔵安定性が大きく向上する。
【0032】
(b)アルコキシシリル基含有単量体は特に限定されないが、一般式(3)で示されるアルコキシシリル基含有単量体(b1)をシェル部の重合に、一般式(4)で示されるアルコキシシリル基含有単量体(b2)をコア部の重合に用いることが好ましい。
【0033】
アルコキシシリル基含有単量体(b1)は、一般式(3)
56(3-n)SiXn (3)
(式中、R5は重合性二重結合を有する1価有機基、R6は炭素数1〜4のアルキル基、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、nは2又は3)で示される有機けい素化合物で、2又は3個のアルコキシ基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシランなどが上げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができる。なかでも、エマルションの保存安定性の観点から、Xは炭素数2〜4が特に好ましい。
【0034】
これらをコア/シェル型エマルションにおけるシェル部100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部用いることによって、シェル部が高度に架橋し、耐候性、塗膜硬度、耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0035】
また、アルコキシシリル基含有単量体(b2)は、一般式(4)
78(3-a)SiYa (4)
(式中、R7は重合性二重結合を有する1価有機基、R8は炭素数1〜4のアルキル基、Yは炭素数1〜4のアルコキシ基、aはa<nの関係を有する1又は2の整数)で示される有機けい素化合物で、1又は2個のアルコキシ基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。その具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルブトキシシランなどが上げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0036】
これらをコア/シェル型エマルションにおけるコア部100重量部に対して0〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部用いることによって、コア部に緩やかな架橋構造が導入され、柔軟性を損なうことなく、耐水性、耐候性を向上させることができる。
【0037】
(b1)および(b2)のアルコキシ基の炭素数X、Yは、X>Yの関係を有することが、付着性、タック性、可とう性、保存安定性の面で好ましい。
【0038】
(c)成分は、(a)、(b)とは異なり、これらと共重合可能なものであれば、特に限定はされない。その具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシスチレン、アロニクス5700(東亞合成(株)製)、placcelFA−1、placcelFA−4、placcelFM−1、placcelFM−4(以上、ダイセル化学(株)製)、HE−10、HE−20、HP−10、HP−20(以上日本触媒(株)製)、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーNKH−5050、ブレンマーGLM(以上日油(株)製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどの水酸基含有ビニル系単量体;東亞合成(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物、ビニルメチルエーテル、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0039】
更に、親水性を有するビニル系単量体も使用可能である。使用可能な親水性基を有するビニル系単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体に限定はないが、ポリオキアルキレン鎖を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましく、具体例としては日油(株)製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、AP−400、AP−550、AP−800、700PEP−350B、10PEP−550B、55PET−400、30PET−800、55PET−800、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、PME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、AME−400、50POEP−800B、50AOEP−800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP−600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC−A、MTG−A、130A、DPM−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、EHDG−A、日本乳化剤(株)製MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、MPG130−MA、Antox MS−60、MPG−130MA、RMA−150M、RMA−300M、RMA−450M、RA−1020、RA−1120、RA−1820、新中村化学工業(株)製NK−ESTER M−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、LAなどがあげられる。
【0040】
また、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体を使用することも可能である。この場合、生成した粒子内部に架橋を有する構造となり、形成した塗膜の耐水性が向上する。
【0041】
更に、トリフルオロ(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどのふっ素含有ビニル系単量体を使用することにより高度な撥水・撥油を付与することも可能である。
【0042】
また、ダイアセトンアクリルアミド、メチルビニルケトン等のカルボニル基含有ビニル系単量体を用い、ヒドラジンおよび/またはヒドラジド基を含有する化合物を配合することにより、架橋性を付与することも可能であり、形成した塗膜の耐水性が向上する。
【0043】
特に、水酸基含有ビニル系単量体および/またはポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体をエマルション粒子の0.5〜20重量%に相当する量を用いると、アルコキシシリル基の安定性を損なうことなく、エマルションの機械的安定性、化学的安定性を向上させることができる。なかでも、末端に水酸基を持つポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が特に有効である。
【0044】
使用量が0.5重量%未満では、機械的安定性、化学的安定性が劣り、20重量%を越えると耐水性が低下する。特に好ましくは1〜5重量%である。
【0045】
次にエマルションの製造方法について説明する。
【0046】
(a)、(b)、(c)成分からなる混合物を公知の乳化重合法で乳化重合して得られる。
【0047】
また、コア/シェル型エマルションの製造は、まず、(a)、(b2)、(c)成分からなる混合物を第1段として公知の乳化重合法で、乳化重合し、得られたコア成分の存在下に、(a)、(b1)、(c)からなる混合物を乳化重合し、シェル成分を導入する。なお、コア部、シェル部各成分内の重合は、何回かに分割して行ってもよい。
【0048】
また、コア成分が、シェル成分に対して十分に疎水性である場合には、シェル成分の重合を先に行っても、目的とする組成物が得られる。
【0049】
乳化重合に際しては、通常用いられるイオン性または非イオン性の界面活性剤を用いることができる。
【0050】
イオン性界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアリルエーテルサルフェート、オクチルフェノキシエトキシエチルスルホネート、ポリオキシエチレントリデシルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;イミダゾリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイドなどのアンモニウム塩などが代表例として挙げられるが、これらの中では、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0051】
また、非イオン性界面活性剤としては、たとえばポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレン類;L−77、L−720、L−5410、L−7602、L−7607(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)などのシリコーンを含む非イオン系の界面活性剤などが代表例として挙げられる。
【0052】
本発明においては、界面活性剤として1分子中に重合性二重結合を有する反応性界面活性剤を用いることが耐水性、耐候性の点で好ましい。また、特に分子内にポリオキシアルキレン基を有する反応性界面活性剤を用いた場合には、機械的安定性を向上させることができる。
【0053】
かかる反応性界面活性剤の具体例としては、例えば、(株)ADEKA製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、SR−05、SR−10、SR−20、SR−30、SR−1025、SR−10S、NE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10N)、日本乳化剤(株)製Antox−MS−60、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、第一工業製薬(株)製アクアロンKH−05、KH−10、KH−0530、KH−1025、RN−20、RN−30、RN−50、RN−2025、HS−10、HS−20、HS−1025、BC−05、BC−10、BC−0515、BC−1025、三洋化成工業(株)製エレミノールJS−2、JS−20、RS−30、RS−300、花王(株)製ラテムルS−180、S−180A、PD−104、PD−420、PD−430、PD−450などが挙げられる。
【0054】
なかでも、環境への配慮から、非アルキルフェノール系のものが好ましい。
【0055】
前記界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができ、その使用量は、単量体全量100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.5〜8重量部である。
【0056】
重合開始剤としては、特に限定はないが、重合をより安定に行なうために、重合開始剤としてレドックス系を用いることが好ましい。また、重合中の混合液の安定性を保持し、重合を安定に行なうためには、温度は70℃以下、好ましくは40〜65℃であり、pHは5〜9に調整することが好ましい。
【0057】
前記レドックス系に用いる開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられ、これらに組み合わせる還元剤としては、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、Bruggolite FF−6(BruggamannChemicalUS製)、二酸化チオ尿素、L−アスコルビン酸などがあげられる。特に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物とロンガリット、Bruggolite FF−6または二酸化チオ尿素との組み合わせが好ましい。
【0058】
なお、還元剤は、環境への配慮からホルムアルデヒド発生のないBruggolite FF−6、二酸化チオ尿素が特に好ましい。
【0059】
前記重合開始剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.01〜10部、好ましくは0.05〜5重量部である。かかる重合開始剤の使用量が0.01重量部未満である場合には、重合が進行しにくくなることがあり、10重量部を超える場合には、生成する重合体の分子量が低下する傾向がある。
【0060】
また、重合開始剤の触媒活性を安定的に付与するために、硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート化剤を用いてもよい。かかるキレート化剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部である。
【0061】
重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤の添加も可能である。連鎖移動剤としては公知のもの、例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−hブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン系化合物、クロロホルム、四塩化炭素等の有機ハロゲン化物、スルフィドベンゼン、イソプロピルベンゼン、塩化第二鉄等が挙げられる。
【0062】
エマルションの安定性を保持するため、重合完了後に塩基および/または緩衝剤によりpHを6〜10に保つのが好ましい。この調整、維持は、塩基および/または緩衝剤は、一般に使用されるものであれば、特に限定されないが、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;アンモニア、有機アミン類など、緩衝剤としては、たとえば炭酸水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸塩またはカルボン酸塩があげられる。これらのpH調整剤、緩衝剤において、アルカリ金属を含むものが好ましく、炭酸水素ナトリウムの使用がより好ましい。
【0063】
アクリル樹脂エマルションおよびアクリルシリコン樹脂エマルションの樹脂固形分濃度は、20〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%となるように調整する。かかる樹脂固形分濃度が70重量%を超える場合には、系の粘度が著しく上昇するため、重合反応に伴なう発熱を除去することが困難になったり、重合器からの取り出しに長時間を要するようになる傾向がある。また、樹脂固形分濃度が20重量%未満である場合には、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂量が少なく、経済面で不利となるとともに、得られる塗膜の膜厚が薄くなるなど、塗装作業性、塗膜性能低下の点で不利となる。
【0064】
また、アクリル樹脂エマルションおよびアクリルシリコン樹脂エマルションは、平均粒子径が0.02〜1.0μm程度が好ましい。平均粒子径は、重合初期に仕込む界面活性剤の量で調整することが可能である。
【0065】
これらアクリル樹脂エマルションおよびアクリルシリコン樹脂エマルションは、各社より市販されており、例えば、DIC(株)製の市販品である、ボンコート、ウォーターゾール;日本触媒(株)製の市販品である、アクリセット、ユーダブル;昭和高分子(株)製の市販品であるポリゾール;ヘンケルテクノロジーズジャパン(株)製の市販品である、ヨドゾール、カネビノール;旭化成ケミカルズ(株)製の市販品である、ポリトロン、ポリデュレックス;中央理化工業(株)製の市販品であるリカボンド;ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製の市販品であるプライマル;BASFジャパン(株)製の市販品であるアクロナール;ニチゴー・モビニール(株)の市販品であるモビニール;(株)カネカ製の市販品である、カネカゼムラック、カネビラック等があげられる。
【0066】
ウレタン樹脂エマルションとしては、ウレタン樹脂を水中に分散したものであり、ウレタン樹脂に親水基を付与し自己分散型にしたものと、疎水性のウレタン樹脂を乳化剤等で強制的に乳化したものがあり、何れも使用可能である。
【0067】
これらは、例えば、第一工業製薬(株)製の市販品である、スーパーフレックス90、スーパーフレックス107M、スーパーフレックス110、スーパーフレックス126、スーパーフレックス130、スーパーフレックス150、スーパーフレックス150HS、スーパーフレックス160、スーパーフレックス300、スーパーフレックス361、スーパーフレックス370、スーパーフレックス410、スーパーフレックス420、スーパーフレックス460、スーパーフレックス460S、スーパーフレックス500、スーパーフレックス600、スーパーフレックスE−2000、スーパーフレックスE−2500、スーパーフレックスE−4000、スーパーフレックスE−4500、スーパーフレックスE−4700、スーパーフレックスR−5000、エラストロンBN−08、エラストロンBN−11、エラストロンBN−50D;DSM.N.K製の市販品である、NeoRez R−960、NeoRez R−972、NeoRez R−9637、NeoRez R−9679、NeoRez AX−311、NeoRez R−966、NeoRez R−967、NeoRez R−9603、NeoRez R−600、NeoRez R−9320、NeoRez R−9617、NeoRez R−9621、NeoPac R−9000、NeoPac R−9699;三井化学ポリウレタン(株)製の市販品である、タケラックW−615、タケラックW−6010、タケラックW−6020、タケラックW−6061、タケラックW−511、タケラックW−405、タケラックW−7004、タケラックW−605、タケラックW−512A6、タケラックW−635、タケラックW−635C、タケラックWS−7000、タケラックWS−5000、タケラックWS−5070X、タケラックWS−4000、タケラックXW−75−X35;(株)ADEKA製の市販品である、アデカボンタイターHUX−290H、(アデカボンタイターHUX−290K、アデカボンタイターHUK−290N、アデカボンタイターHUX−395D、アデカボンタイターHUX−394、アデカボンタイターHUX−232、アデカボンタイターHUX−240、アデカボンタイターHUX−320、アデカボンタイターHUX−350、アデカボンタイターHUX−380、アデカボンタイターHUX−381、アデカボンタイターHUX−388、アデカボンタイターHUX−380A、アデカボンタイターHUX−386、アデカボンタイターHUX−401、アデカボンタイターHUX−750、アデカボンタイターHUX−670、アデカボンタイターHUX−680、アデカボンタイターHUX−575、アデカボンタイターHUX−580、などがあげられる。
【0068】
ウレタン樹脂エマルションは単独系でも他の樹脂系エマルションとの混合系でも使用できる。特にアクリル樹脂エマルションとの混合系が塗料設計の容易さやコストの点で有用である。
【0069】
フッ素樹脂エマルションとしては、フルオロオレフィン重合体および/またはフルオロオレフィンと共重合可能な単量体との共重合体を水中に分散させたものが使用できる。
【0070】
フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンなどがあげられる。
【0071】
フルオロオレフィンと共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;ブチルビニルエステル、オクチルビニルエステル、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル(ヘキシオン・スペシャルティケミカルズ ジャパン(株)製ベオバ10、ベオバ9、ベオバ11)などのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチルアリルエーテルなどのアリルエーテル類やブチルアリルエステルなどのアリル化合物;(メタ)アクリル酸エステル類などがあげられる。
【0072】
これらは、各社から市販されており、例えば、旭硝子(株)製の市販品であるルミフロン;ダイキン工業(株)製の市販品であるゼッフル;セントラル硝子(株)製の市販品であるセフラルコート;DIC(株)製の市販品であるフルオネート;東亜合成(株)製の市販品であるザフロンなどがあげられる。
【0073】
[(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物]
オルガノシリケートは、加水分解性珪素基を含有する化合物であり、一般式(5)として現される化合物であり、エマルションに添加することにより、得られた塗膜の耐汚染性を大幅に向上させる。その具体的化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン及びそれらの部分加水分解・縮合物が例示できる。中でもエチルシリケート40、エチルシリケート48が好ましい。上記化合物は1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。また、同一分子中に異なったアルコキシシリル基を含有するオルガノシリケートも使用可能である。例えば、メチルエチルシリケート、メチルプロピルシリケート、メチルブチルシリケート、エチルプロピルシリケート、プロピルブチルシリケートなどである。これらの置換基の比率0〜100%の間で任意に変更可能である。また、これらのシリケートの部分加水分解・縮合物も使用可能であると記述したが、縮合度は1〜20程度が好ましい。更に好ましい縮合度の範囲は、3〜15である。
【0074】
Si-(OR)4 (5)
(式中、Rは同じかまたは異なり炭素数1〜4のアルキル基)
【0075】
上記オルガノシリケート化合物ではアルコキシシリル基の官能基のアルコキシ部の炭素数は1〜4の化合物を例示しているが、炭素数が少なくなるほど反応性が向上することは一般的に知られている。水性塗料へ添加した場合、炭素数が小さいオルガノシリケート、例えば、メチルシリケートを用いた場合、反応性が高く、塗料のゲル化までの時間、すなわち、ポットライフが短くなる。これに対し、炭素数が大きいブチルシリケートを用いた場合、耐汚染性付与率が低下し、ポットライフが長くなる。この耐汚染性とポットライフのバランスを考えると、アルコキシシリル基のアルキル部は炭素数が1と炭素数が2、3又は4が混在している場合、炭素数が2と炭素数が3又は4が混在していることが好ましく、平均として炭素数が1.5〜2.8が好ましい。即ち、メチルシリケートとエチルシリケートの等モル混合物もしくは同一分子中にメチル基とエチル基を同数有するシリケートがアルキル部1.5と言える。
【0076】
オルガノシリケートは、エマルションに対する混和性が低いため、塗膜の光沢を低下させることがある。光沢低下を防止するためには、予め界面活性のある物質で水中に乳化して添加するか、あるいは界面活性のある物質とオルガノシリケートとの混合物を直接添加する方法が好ましい。界面活性のある物質とは、分子中に親水基と疎水基とを有する物質で、オルガノシリケートを水中に乳化分散させることのできるものである。具体的には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などである。
【0077】
上記したアニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキル(ベンゼン)スルホン酸塩、アルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールサルフェート塩、スチレンスルホン酸塩ないしはビニルサルフェート塩、アルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリアクリル酸(塩)およびスルホン酸塩よりなる群から選ばれる、各種の水溶性オリゴマー類などであるし、水溶性アクリル樹脂または此等の誘導体類の如き、種々の化合物などであるが、これらは単独使用でも、あるいは2種以上の併用でもよい。
【0078】
また、上記したノニオン性界面活性剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリビニルアルコールまたはヒドロキシエチルセルロースなどで代表されるような、各種の水溶性高分子系ノニオン型活性剤などであり、これらは単独使用でも、あるいは2種以上の併用でもよい。
【0079】
さらに、上記したカチオン性界面活性剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アルキルアミン塩、アルキルトリアルキルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、アルキルベタインまたはアミンオキサイドなどであり、これらは単独使用でも、あるいは2種以上の併用でもよい。
【0080】
上掲したような、それぞれ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤は、単独使用でも、あるいは2種以上の併用でもよいが、これらのうちでも特に好適に使用できる界面活性剤としては、イオン性基を有しないノニオン性界面活性剤の使用が、より好ましい。
【0081】
これら界面活性剤の使用量は、オルガノシリケート100重量部に対して有効成分量として0.05〜50重量部、好ましくは、0.1〜30重量部である。0.05重量部未満では安定な乳化物が得られず、貯蔵安定性も低下する。50重量部を越えると得られる塗膜の外観や耐水性の低下などの問題が発生する。
【0082】
さらに、上記したカチオン性界面活性剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アルキルアミン塩、アルキルトリアルキルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、アルキルベタインまたはアミンオキサイドなどであり、これらは単独使用でも、あるいは2種以上の併用でもよい。
【0083】
上掲したような、それぞれ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤は、単独使用でも、あるいは2種以上の併用でもよいが、これらのうちでも特に好適に使用できる界面活性剤としては、イオン性基を有しないノニオン性界面活性剤の使用が、より好ましい。
【0084】
これら界面活性剤の使用量は、オルガノシリケート100重量部に対して有効成分量として0.05〜50重量部、好ましくは、0.1〜30重量部である。0.05重量部未満では安定な乳化物が得られず、貯蔵安定性も低下する。50重量部を越えると得られる塗膜の外観や耐水性の低下などの問題が発生する。
【0085】
また、混和性を改善する別の方法として、ポリオキシアルキレン鎖やアミノ基等の親水性基を導入し、オルガノシリケートが水溶性あるいは自己水分散性になるように変性することもできる。
【0086】
これらオルガノシリケートおよび/またはその変性物の添加量は(A)水溶性および/または水分散性樹脂の固形分100重量部に対して、2〜40重量部添加することが好ましい。2重量部未満では、耐汚染性能が十分でなく、また、40重量部を越えると塗膜光沢の低下する傾向がある。更に好ましいオルガノシリケート化合物の添加量は、5〜20重量部である。
【0087】
[(C)アルコキシシリル基の加水・分解縮合反応を促進させる硬化触媒]
本発明の水性樹脂組成物を塗装する際にアルコキシシリル基の加水分解縮合反応を促進させる硬化触媒を添加することにより、架橋反応が促進される。硬化触媒としては、有機金属化合物、酸性触媒、塩基性触媒が使用される。
【0088】
特に、有機錫化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンの反応物が活性の点で好ましい。
【0089】
有機錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩、オクチル酸錫などが挙げられる。
【0090】
なかでも、水中での安定性の観点からジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩などのメルカプチド系のものが好ましい。
【0091】
添加方法は、特に限定されないが、予め界面活性のある物質と混合してから添加する方法が、エマルションへの混和性、塗膜の光沢発現の観点で好ましい。
【0092】
酸性リン酸エステル化合物としては、プロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートなどが挙げられる。これらの酸性リン酸エステル化合物と反応させるアミン化合物としては、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、アンモニアなどが挙げられる。
【0093】
添加方法は、特に限定されないが、自己乳化性あるものはそのままで添加できる。また、アミン化合物で(部分)中和はすることで、乳化性を示すものは、予め水に乳化させてから添加することが好ましい。さらに、アミノ基含有樹脂のエマルションに担持させて添加することもできる。
【0094】
硬化触媒の添加量は(A)水溶性および/または水分散性樹脂の固形分100重量部に対し、0.01〜10重量部配合することが好ましく、特に0.05〜5重量部が好ましい。0.01重量部未満では、硬化活性が低く、10重量部を超えると塗料の可使時間が短くなり、また、塗膜の耐水性、耐候性が低下する。
【0095】
[(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)]
ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、塗膜劣化時の生じるラジカルを補足し、無害化することで、塗膜の耐候性を向上させる化合物であり、一般的に用いられている。しかし、一般的の用いられているHALSは、酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が高い、すなわち塩基性を示すものが多く、これらの塩基性の高いHALSをオルガノシリケートまたはその変性物を用いて耐汚染性を付与した水性塗料に添加すると、多くの場合、耐汚染性能を低下させる。ところが、pKaが7以下のHALSは、オルガノシリケートまたはその変性物を用いて耐汚染性を付与した水性塗料に添加しても、耐汚染性の低下が見られない。好ましいpKaは6.5以下、1.5以上、特に好ましいpKaは6以下2.0以上である。
【0096】
pKa測定は非水性の滴定により得られる。水の中での公知のpKa値を有する有機参照物質を非水系メディア(1:1アセトニトリル:クロロホルムおよび0.1N過塩素酸/ジオキサン滴定系)に滴下し、pKaに対する非水系の半−中和位置(HNP)検量線のプロットを作成する。次いでHNPを決定するために“未知の”HALSを滴定し、そしてこの検量線プロットから相当するpKa推測することで得られる。
【0097】
pKaが7以下となる具体的な構造としては、例えば、HALS中の環状アミン構造が次の一般式(1)または(2)である場合である。
【0098】
【化5】

【0099】
(式中、R1はアルキル基および/またはシクロアルキル基、R2はアルキル基および/またはシクロアルキル基を示す。)
【0100】
【化6】

【0101】
(式中、R3は、アルキレン基を示す。nは1から8の整数。)
一般式(1)の構造を有する市販品としては、例えば、チバ・ジャパン(株)製TINUVIN 123、TINUVIN 152、TINUVIN NOR 371 FF、TINUVIN XT855 FF、TINUVIN XT850 FF、TINUVIN 5100(株)ADEKA製アデカスタブLA−81、クラリアントジャパン(株)製Hostavin 3058 Liq.、Hostavin 3068 Liq.等が挙げられる。
TINUVIN 123:
【0102】
【化7】

【0103】
アデカスタブLA−81:
【0104】
【化8】

【0105】
Hostavin 3058 Liq.:
【0106】
【化9】

【0107】
また、一般式(2)の構造を有する市販品としては、例えば、チバ・ジャパン(株)製TINUVIN 622等が挙げられる。
TINUVIN 622:
【0108】
【化10】

【0109】
また、市販されている多くのHALSは、水の対しての混和性が悪く、水性塗料に添加した場合、光沢等の外観を低下させるものが多い。
【0110】
この問題の解決策して、あらかじめ水に分散した状態のものが市販されている。例えば、TINUVIN 123を水分散したチバ・ジャパン(株)製TINUVIN 123−DW、アデカスタブLA−81を水分散した(株)ADEKAの試作品であるSDX−2987等があげられる。
【0111】
また、別の解決方法として、(B)オルガノシリケートおよび/またはその変成物、(C)アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進する硬化触媒および後述の(F)分子中に反応性官能基と親水基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤と予め混合した助剤(II)とし、(A)水溶性および/または水分散性樹脂を含有する基材(I)を使用前に混合して用いる2成分系あるいは多成分系の水性塗料用樹脂組成物とすることがあげられる。
【0112】
界面活性能があり、HALSと相溶性の高い(F)分子中に反応性官能基と親水基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤と一緒に基材(I)に添加することで、混和性が大幅に向上する。
【0113】
また、この添加方法を用いると混和性の問題で、従来水性塗料への適応が難しかった高分子量型のHALSや固体のHALSも用いることが可能となる。
【0114】
さらに、分子量が600未満のHALS(d1)と分子量が600以上のHALS(d2)を併用して用いることで、さらに光沢等の外観を向上させることができる。
【0115】
これら、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)の添加量は(A)水溶性および/または水分散性樹脂の固形分100重量部に対し、0.1〜10重量部配合することが好ましく、更に好ましくは0.3〜7重量部、特に好ましくは1〜4部である。0.1重量部未満では、十分な耐候性向上効果が得られず、10重量部を超えると耐汚染性、塗膜硬度が低下する。
【0116】
[(E)分子中に反応性官能基と親水基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤]
分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤とは、親水基、疎水基に加え、さらに反応性官能基を有するもの物質のことである。
【0117】
その反応性官能基が水性塗料中に配合されている樹脂成分および/またはその他の配合剤、さらには反応性官能基自身で反応することにより、得られた塗膜の耐水性を低下させることなく(むしろ向上させる)、オルガノシリケートおよびHALSを水中に乳化分散させることができる。なお、反応性官能基は、親水基あるいは疎水基と同一であっても良い。具体的な反応性官能基として、(ブロック)イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、ヒドラジド基、アリル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0118】
(ブロック)イソシアネート基含有化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネートおよびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリアルキレンオキシド基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にしたものである。さらにこれらのイソシアネート基をブロック剤(フェノール・εカプロラクタム等)でマスクしたものでもよい。なかでも、耐候性の観点から無黄変または難黄変のイソシアネートを用いたものが好ましい。
【0119】
これらは一般に架橋剤として市販されており、例えば、住化バイエルウレタン(株)製バイヒジュール3100、バイヒジュール2336、バイヒジュールLS2150/l、バイヒジュールBL116、バイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235、バイヒジュールTPLS2186、バイヒドロールTPLS2153、三井化学ポリウレタン(株)製タケネートWD−220、タケネートWD−240、タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−726、タケネートWD−730、タケネートWB−700、タケネートWB−720、タケネートWB−730、タケネートWB−920、日本ポリウレタン工業(株)製アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210、アクアネート120、旭化成ケミカルズ(株)製デュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWT20−100、デュラネートWT30−100などがあげられる。
【0120】
また、(ブロック)イソシアネート基を有するビニル系単量体、親水性基含有ビニル系単量体およびその他のビニル系単量体との共重合体でもよい。
【0121】
(ブロック)イソシアネート基有するビニル系単量体としては、例えば、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリル酸−2−(O−[1´−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。
【0122】
親水性基含有ビニル系単量体としては、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート塩酸塩、2−アミノエチル(メタ)アクリラート塩酸塩、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体などがあげられる。
【0123】
α、β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フタル酸、シトラコン酸などがあげられる。
【0124】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート塩酸塩としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミンエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびその塩酸塩があげられる。
【0125】
ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体に特に限定はないが、ポリオキシアルキレン鎖を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましく、具体例としては、日油(株)製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、AP−400、AP−550、AP−800、700PEP−350B、10PEP−550B、55PET−400、30PET−800、55PET−800、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、PME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、AME−400、50POEP−800B、50AOEP−800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP−600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC−A、MTG−A、130A、DPM−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、EHDG−A、日本乳化剤(株)製MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、MPG130−MA、Antox MS−60、MPG−130MA、RMA−150M、RMA−300M、RMA−450M、RA−1020、RA−1120、RA−1820、新中村化学工業(株)製NK−ESTER M−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、LA、三洋化成(株)製エレミノールRS−30、RS−300などがあげられる。
【0126】
エポキシ基含有化合物としては、多くのものが市販されており、例えば、ナガセケムテック(株)製デナコールEX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−301、EX−313、EX−314、EX−321、EX−211、EX−810、EX−811、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−921、EX−931、EX−145、EX−171、EX−701、共栄社化学(株)製エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト100MF、坂本薬品工業(株)製SR−NPG、SR−16H、SR−TMP、SR−TPG、SR−4PG、SR−2EG、SR−8EG、SR−8EGS、SR−GLG、SR−DGE、SR−4GL、SR−4GLS、日油(株)製エピオールBE−200、G−100、E−100、E−400、E−1000、P−200、NPG−100、TMP−100、エピオールOHなどが上げられる。
【0127】
また、エポキシ基有するビニル系単量体、親水性基含有ビニル系単量体およびその他のビニル系単量体との共重合体でもよい。
【0128】
エポキシ基を有するビニル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4,−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートダイセル化学工業(株)製M−GMA、Cyclomer M−100、Cyclomer A−200、Cyclomer M−101、セロキサイド2000などがあげられる。
【0129】
カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、特開平8−59303号記載の水溶性又は自己乳化型カルボジイミド化合物などがあげられる。
【0130】
これは、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート等の多官能イソシアネート類の1種または2種以上を脱二酸化炭素縮合反応させることにより、カルボジイミド化し、末端の残存イシシアネート基を親水性基で封止したものである。
【0131】
封止する親水基としては、アルキルスルホン酸塩の残基、ジアルキルアミノアルコールの残基の四級塩、アルコキシ基末端を封鎖されたポリオキシアルキレンの残基などがあげられる。
【0132】
なお、これらは、水性樹脂架橋剤として市販されており、例えば、日清紡製カルボジライトV−02、V−04、V−06、V−02−L2、E−01、E−02、E−03、E−04、E−05などがある。
【0133】
また、水を含まないものとしてV−02B、V−04B、V−04K、Elastostab H01などがある。
【0134】
アルコキシシリル基含有化合物しては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製A−1230、MAC−2101、MAC−2301などがある。
【0135】
また、ポリオキシアルキレンの末端のヒドロキシ基にイソシアネート系シランカップリング剤を反応させても得られる。
【0136】
ポリオキシアルキレンは末端に1個以上のヒドロキシ基を有しているものであれば、特に限定されない。
【0137】
イソシアネート系シランカップリング剤としては、例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製A−1310、Y−5187、信越化学工業(株)製KBE−9007などがあげられる。
【0138】
また、前記、エポキシ基を有する化合物にアミノ系シランカップリング剤を反応させて得ることもできる。
【0139】
アミノ系シランカップリング剤としたては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製KBE−9103、KBM−575、KBM−6123、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製A−1102、A−1122、A−1170などがあげられる。
【0140】
さらに、アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体、親水性基含有ビニル系単量体およびその他のビニル系単量体との共重合体でもよい。
【0141】
アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体としては、具体例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等があげられる。
【0142】
オキサゾリン基含有化合物は、水性架橋剤として市販されており、例えば、日本触媒(株)製エポクロスWS−500、K−2010E、K−2020E、K−2030E、K−1010E、K−1020E、K−1030Eなどがあげられる。
【0143】
ヒドラジド基含有化合物は、例えば、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、アミノポリアクリルアミドなどがあげられる。
【0144】
これら(E)分子中に反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤は、(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物、(C)アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進する硬化触媒、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)をあらかじめ混合し、助剤(II)としておき、塗装直前に(A)水溶性および/または水分散樹脂を含有する基材(I)と混合すると、非常に良好な塗膜外観と優れた耐汚染性を示す塗膜が得られる。
【0145】
上記、(E)反応性官能基と親水性基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤の使用量は、(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物100重量部に対し、5〜300部、好ましくは10〜200部、より好ましくは20〜100部である。5重量部未満では、(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物、(D)HALSおよび(C)硬化触媒が塗料中に均一に分散せず、形成した塗膜の光沢値が低下する。また、300重量部以上用いた場合、形成した塗膜の硬度が低下する。
【0146】
さらに、アセチレングリコール系界面活性剤を併用すると、光沢を向上させ、表面タックを低減することができる。アセチレングリコール系界面活性剤の具体例として、日信化学工業(株)製サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、2502、82、DF110D、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、FS−85、ダイノール604、エンバイロジェムAD−01、オルフィンSTG、SPC、E1004、E1010、AK−02、PD−001、PD−002W、PD−004、PD−301、WE−001、WE−002、WE−003、AF−103、AF−104等が挙げられる。なかでも、表面タック低減には、エチレンオキサイドが付加されていないサーフィノール104シリーズ、サーフィノール2502、エンバイジェムAD−01が特に好ましい。
【0147】
[(F)二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムの少なくとも3種類以上の表面処理を施した二酸化チタン]
着色に用いる白色顔料としての通常、二酸化チタンが用いられる。その二酸化チタンは光触媒反応性を有しており、塗膜劣化の原因となる。塗料用に市販されている二酸化チタンは、その光触媒反応を抑える目的や分散安定性を付与するために、各種表面処理が行われる。その表面処理の材料として、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、リン酸エステル、ポリオールなどがあげられる。
【0148】
これらのなかで、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムの少なくとも3種類以上の表面処理を施した二酸化チタンを、オルガノシリケートおよびその変性物を用いて耐汚染性を付与した水性塗料に用いると、特に耐汚染性、耐候性、光沢等の外観に優れた塗膜が得られる。
【0149】
これら、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムの少なくとも3種類以上の表面処理を施した二酸化チタンは各社から市販されており、例えば、堺化学工業(株)製
D−918、D−2667、石原産業(株)製PFC−105、ドイツ国クロノス社製KRONOS2315、KRONOS2310等があげられる。
【0150】
これら、(F)二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムの少なくとも3種類以上の表面処理を施した二酸化チタンの添加量は、目的とする色に調色する為に必要な量を添加すれば良い。
【0151】
ただし、大量に添加することで、光沢、耐候性、調色性の低下を招くことから、好ましくは(A)水溶性および/または水分散性樹脂の固形分100重量部に対し、200重量部以下、より好ましくは、150重量部以下、更に好ましくは、100重量部以下にすることが良い。
【0152】
得られた水性塗料用樹脂組成物には、必要に応じて、通常塗料に用いられる顔料、たとえば二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、カーボン、弁柄、黄土、シアニンブルーなど、成膜助剤、たとえばベンジルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどのグリコールエステル類など、コロイダルシリカ、可塑剤、溶剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、防腐剤、凍結防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの通常塗料に用いられる添加剤を添加することもできる。
【実施例】
【0153】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0154】
[(A)水溶性および/または水分散性樹脂の合成(合成例1〜3)]
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水192重量部、Newcol−707SN(日本乳化剤(株)製:有効成分30%)0.46重量部、5%炭酸水素ナトリウム水溶液1.0重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。昇温後、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液2.0重量部、10%Bruggolite FF−6水溶液1.4重量部、硫酸第一鉄・7水和物(0.10%)/エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(0.40%)混合水溶液2.8部を添加し、表1(A−1〜3)コア部記載のモノマー混合物に、アデカリアソープSR−1025((株)ADEKA製:有効成分25%)9.6重量部、アデカリアソープER−20((株)ADEKA製:有効成分75%)1.5重量部および脱イオン水50重量部を加え乳化したモノマー乳化液を160分かけて等速追加した。その間、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液1.6重量部および2.5%Bruggolite FF−6水溶液3.2重量部を2回に分けて添加した。モノマー乳化液追加終了後、1時間後重合を行った。
【0155】
さらに、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液1.3重量部、2.5%Bruggolite FF−6水溶液3.6重量部を添加した後、表1シェル部記載のモノマーおよび連鎖移動剤混合物にアデカリアソープSR−1025((株)ADEKA製:有効成分25%)14.4重量部、アデカリアソープER−20((株)ADEKA製:有効成分75%)2.3重量部および脱イオン水71重量部を加え乳化したモノマー乳化液を240分かけて等速追加した。その間、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液2.3重量部および2.5%Bruggolite FF−6水溶液3.4重量部を3回に分けて添加した。追加終了後、1.5時間後重合を行った。得られたエマルションに5%炭酸水素ナトリウム水溶液22部を添加後、脱イオン水で固形分濃度50%に調整した(A−1〜3)。
【0156】
【表1】

【0157】
[基材(I)の製造例]
合成した樹脂組成物(A−1〜3)および市販の水性樹脂組成物を用い、表2の顔料ペーストを用いて、表3に示す配合処方で塗料を作成した。
【0158】
【表2】

【0159】
D−918:堺化学工業(株)製(表面処理:二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム)
TATANIX JR−901S:テイカ(株)製(表面処理:酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム)
Ti−Pure R−706:デュポン(株)製(表面処理:二酸化珪素、酸化アルミニウム、ポリオール)
【0160】
【表3】

【0161】
スーパーフレックス410:第一工業製薬(株)製ウレタン樹脂エマルション
ゼッフルSE−310:ダイキン工業(株)製フッ素樹脂エマルション
【0162】
[助剤(II)の製造例]
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた容器に表4記載の原料を上から順番に投入した。投入終了後40℃に昇温し、60分撹拌し、耐汚染性付与組成物(QA−1〜8)を得た。
【0163】
【表4】

【0164】
CS−12:チッソ(株)製2,2,4−トリメチルペンタンジオール1,3−モノイソブチレート
プログライドDMM:ダウ・ケミカル日本(株)製ジプロピレングリコールジメチルエーテル
カルボジライトV−04B:日清紡ケミカル(株)製ポリカルボジイミド
シリケート40:多摩化学工業(株)製テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(シリカ残存比率40%)
エンバイロジェムAD−01:日信化学工業(株)製アセチレングリコール系界面活性剤類似品
ユニルーブ70MO−10SB:日油(株)製非イオン性界面活性剤
TINUVIN 123:チバ・ジャパン(株)製ヒンダードアミン系光安定剤、pKa=4.4、分子量:737
【0165】
【化11】

【0166】
アデカスタブLA−81:(株)ADEKA製ヒンダードアミン系光安定剤、pKa=2.4、分子量:681
【0167】
【化12】

【0168】
Hostavin 3058 Liq.:クラリアントジャパン(株)製ヒンダードアミン系光安定剤、pKa≦7、分子量:449
【0169】
【化13】

【0170】
TINUVIN XT 850 FF:チバ・ジャパン(株)製ヒンダードアミン系光安定剤、pKa≦7
TINUVIN 292:チバ・ジャパン(株)製ヒンダードアミン系光安定剤、pKa=8.9 分子量509
【0171】
【化14】

【0172】
アデカスタブLA−62:(株)ADEKA製ヒンダードアミン系光安定剤、pKa>7、分子量:900
【0173】
○ガラス板光沢
作製した基材(I)に助剤(II)を添加・攪拌混合後、6milのアプリケータを用いて、ガラス板に塗布し、室温で7日間乾燥させた。コニカミノルタ(株)製光沢計Multi−Gloss268を用い、この試験体の入射角60°の光沢値を測定した。
【0174】
○耐候性評価
フレキシブル板上にSK#1000プライマー(エスケー化研(株)製、溶剤系2液エポキシ樹脂系下塗材)を塗装し、室温で1日養生後、作製した基材(I)に助剤(II)を添加・攪拌混合後、スプレーで2回塗装し、室温で7日間乾燥させた。この試験板をメタルハライドランプ灯式試験機に600時間入れた。コニカミノルタ(株)製光沢計Multi−Gloss268を用い、あらかじめ測定しておいた試験前の入射角60°の光沢値と試験後の測定値から光沢保持率を算出した。
なお、試験条件は、次の通りである。
照射 63℃ 50% 4時間 照度:85mW/cm2
結露 30℃ 98% 4時間
シャワー 照射中15分間隔に5秒
【0175】
○耐汚染性の評価
フレキシブル板上にSK#1000プライマー(エスケー化研(株)製、溶剤系2液エポキシ樹脂系下塗材)を塗装し、室温で1日養生後、作製した基材(I)に助剤(II)を添加・攪拌混合後、スプレーで2回塗装し、室温で7日間乾燥させた。この試験板を大阪府摂津市で南面45度で3カ月間曝露した。汚染性は、曝露初期のL*a*b*表色系で表される明度を色彩色差計(コニカミノルタ(株)製:CR−300)で測定し、曝露前後の明度差の絶対値(ΔL値)を汚染性の尺度とした。また、暴露後の塗膜を軽く水洗し、3時間以上乾燥させた後、水の静的接触角を測定した。
【0176】
【表5】

【0177】
実施例1〜2は、pKaが7以下のHALSを塗装直前に混合したものであるが、HALSを添加していない比較例1と比べて、耐候性の向上が見られ、耐汚染性の低下がほとんど見られず、接触角も良好な値を示してしる。ただし、実施例1は、分子量の比較的大きなHALSを用いたため、光沢の低下が見られる。
【0178】
実施例3は、実施例1と同じHALSを添加量が同じになるように助剤(II)中に添加したものであるが、実施例1同様、耐候性の向上が見られ、耐汚染性の低下がほとんど見られていない。さらに、光沢低下も大幅に改善されている。
【0179】
実施例4は、分子量449のHALSと分子量737のHALSを併用したものであるが、良好な耐候性、耐汚染性を示している。また、低分子量のHALSを併用しなかった実施例3に比べ、光沢が更に向上している。
【0180】
実施例5〜8は、基材(I)中に用いる二酸化チタンの種類を換えたものであるが、何れも良好な耐候性、耐汚染性を示している。なかでも、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムで表面処理された二酸化チタンを用いた実施例6は、特に良好な耐候性、耐汚染性を示している。
【0181】
実施例9〜10は、HALSの種類を換えたものであるが、何れも良好な耐候性、耐汚染性を示している。
【0182】
実施例11は、HALS添加量を減量したものであるが、向上幅は低下しているものの、十分な耐候性を示している。また、耐汚染性への影響は見られない。
【0183】
実施例12から15は、エマルションの種類を変更したものである。アルコキシシリル基含有エマルションを用いた実施例11に比べ、耐汚染性が低いが、助剤(II)およびHALSを添加していない比較例4から7に比べれば、耐汚染性、耐候性の向上が見られる。
【0184】
比較例2は、pKaが7以上のHALSを用いたものであるが、耐候性の向上は見られるものの、耐汚染性が明らかに低下している。
【0185】
比較例3は、助剤(II)を添加せず、pKaが7以上のHALSを直接添加したものであるが、耐候性の向上は見られるものの、耐汚染性、光沢の低下が著しい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性および/または水分散性樹脂、(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物、(C)アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含有する2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
前記、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)の環状アミン部の構造が次の一般式(1)または(2)である請求項1記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は、アルキル基および/またはシクロアルキル基、R2は、アルキル基および/またはシクロアルキル基を示す。)
【化2】

(式中、R3は、アルキレン基を示す。nは1から8の整数。)
【請求項3】
(A)水溶性および/または水分散性樹脂を含有する基材(I)と(B)オルガノシリケートおよび/またはその変性物、(C)アルコキシシリル基の加水分解縮合反応を促進させる硬化触媒、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、(E)分子中に反応性官能基と親水基を有する水溶性および/または水分散性硬化剤を含有してなる助剤(II)使用前に混合して用いる2液型あるいは多成分型である請求項1または2の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【請求項4】
前記、(D)酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が7以下のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が、分子量600未満のもの(d1)と分子量600以上のもの(d2)を併用して用いる請求項1〜3の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【請求項5】
前記、(C)アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応を促進させる硬化触媒が、有機錫化合物、酸性リン酸エステルおよび酸性リン酸エステルとアミンの反応物の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【請求項6】
前記、(A)水溶性および/または水分散性樹脂が、ポリオキシアルキレン鎖を有する樹脂である請求項1〜5の何れか1項に記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【請求項7】
前記、(A)水溶性および/または水分散性樹脂が、アルコキシシリル基含有アクリル樹脂である請求項1〜6の何れか1項記載の2液または多成分型水性塗料用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載の水性塗料用樹脂組成物を配合してなる塗料組成物。
【請求項9】
基材(I)に(A)水溶性および/または水分散性樹脂に加え、(F)二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムの少なくとも3種類の表面処理を施した二酸化チタンを配合してなる請求項8記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2010−280852(P2010−280852A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136492(P2009−136492)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】