説明

水性放射線硬化性ポリウレタン組成物

本発明は、5乃至90重量%の重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)及び該ポリウレタン(A)の重量に対して1乃至60重量%の25℃で50g/l未満の水溶性を有する少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和化合物(B)を含む水性組成物並びに高光沢コーティング及びウッドステインを製造するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材及びプラスチック等の様々な基材の上にコーティングを製造するために特に適する水性放射線硬化性ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性ポリウレタン分散液は、金属、種々の木材及びプラスチック等の様々な基材に対するコーティングを提供し、良好な機械的及び化学的耐性並びにかなりのたわみ性を示すことが古くから知られている。
【0003】
エチレン性不飽和ポリウレタンは、ポリイソシアネート、低分子量及び高分子量ポリオールの混合物並びにヒドロキシ官能基エチレン性不飽和モノマーから製造されてきた。得られたエチレン性不飽和ポリウレタンプレポリマーの分子量は、ポリアミンを用いる鎖延長によって時にはさらにもっと増大される。得られたポリマーは、一般に、非常に高い分子量を有し、高含量のハードセグメントのため又はそれらのガラス転移温度Tgが十分に高いために殆ど物理的に乾燥し、放射線硬化の前にいわゆるタックフリーとなる。これは、そのポリマーが硬い尿素セグメントを含有するときに特にそうである。エチレン性不飽和ポリウレタンは、また、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーのエチレン性不飽和の特に(メタ)アクリルモノマーによるエンドキャッピングにより製造することもできる。
【0004】
これらの放射線硬化性組成物の既知の欠点は、それらの非常に平らなコーティングを提供する能力が限定されており、優れたミラー効果が要求される用途に対してそれらを不適にすることである。当技術分野で既知の組成物では、優れたミラー効果と相まった高い最終硬度、耐引っかき性及び耐汚染性を兼ね備えたコーティングを得ることは一般に不可能である。
【0005】
放射線硬化性樹脂は、ウッドステインを製造するためにも使用されてきた。ウッドステインは、溶媒、水又は有機溶媒、及び結合剤の「ビヒクル」中に懸濁した顔料を一般に含む。それらは、表面上に膜を生ずるよりもむしろ木材表面の微細孔中に染料又は極めて微細な顔料を送り込むように配合される。その結果、そのステインは木材基材にその自然のままの外観を隠すことなく色を加える。ウッドステインと関係する一般的な困難は、木材の同一断片においてさえも存在する吸収作用の差異による色の変化と関係している。また、顔料はサンディングシーラーの塗布中にローラーに移動し得る。既知の放射線硬化性ウッドステインは、放射線硬化性ステインを塗布した後に木材構造中へのステインの良好且つ均一な浸透を確保するために使用されるブラシに付着する不都合を有する。定常的なブラシの洗浄は、時間と費用がかかる。
【0006】
驚いたことに、本発明者らは今回これらの問題を克服する新たな放射線硬化性ポリウレタン分散液を見出した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
そのために、本発明は、
−10〜60重量%の少なくとも1つのポリイソシアネート(i)、イソシアネート基と反応することができる少なくとも1つの反応性基及びポリウレタンを水性媒体中に直接又は塩を提供する中和剤と反応させた後に分散するようにすることができる少なくとも1つの基を含有する3〜20重量%の少なくとも1つの親水性化合物(ii)、並びにイソシアネート基と反応することができる少なくとも1つの反応性基を含有する20〜85重量%の少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和化合物(iii)の反応から得られた5乃至90重量%の重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)と、
−ポリウレタン(A)の重量に対して1乃至60重量%の25℃で50g/l未満の水溶性を有する少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和化合物(B)と
を含む水性組成物に関する。
【0008】
重合可能なエチレン性不飽和基とは、本発明においては放射線照射及び/又は(光)開始剤の影響下でラジカル重合を受けることができる炭素−炭素二重結合を指すことが意図されている。重合可能なエチレン性不飽和基は、(メタ)アクリル基及びアリル基、好ましくは(メタ)アクリル基、最も好ましくはアクリル基から一般に選択される。本発明において、用語の「(メタ)アクリル」は、アクリル化合物及びメタクリル化合物の両方又はそれらの誘導体並びに混合物を包含するものと理解すべきである。
【0009】
該重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)は、化学量論的に過剰な化合物(i)と化合物(iii)との反応を含む第1ステップと、第1ステップの生成物と化合物(ii)との反応を含む第2ステップと、化合物(i)によって提供される残留している遊離のイソシアネート基が反応してアロファネート基を生じさせる第3ステップとを含むプロセスによって好ましくは得られる。
【0010】
このプロセスは、化合物(i)及び(iii)、並びに化合物(ii)を、好ましくは実質的に無水の条件下で、20℃と130℃の間、より好ましくは30℃と100℃の間の温度で、イソシアネート基とイソシアネート反応性基の反応が実質的に完了するまで反応させることによって実施することができる。イソシアネート含量は、アミンを用いる滴定によって追跡することができる。
【0011】
反応物は、化合物(i)によって提供されるイソシアネート基に対する化合物(ii)及び(iii)によって提供されるイソシアネート反応性基の当量比が約1.05:1乃至約2:1、好ましくは約1.1:1乃至1.45:1に相当する比率で一般に使用される。このプロセス中、イソシアネートのヒドロキシルに対する反応を促進する触媒を使用すること及び反応性不飽和のラジカル反応を防止するための抑制剤を使用することが普通である。本発明の枠組みにおいては、化合物(i)及び/又は化合物(ii)及び/又は(iii)を2回若しくは数回に分割するか又は連続供給によって追加的に加える逐次プロセスを使用することが可能である。
【0012】
化合物(ii)及び(iii)は、(ii):(iii)のモル比1:2〜1:10、より好ましくは1:2乃至1:5で好ましくは使用する。
【0013】
第3ステップは、残留イソシアネート含量が0.5meq/g未満、好ましくは0.1meq/g未満となるまで、通常は80乃至130℃、好ましくは90乃至110℃の高温で行う。
【0014】
一般に第4ステップにおいては、得られたポリウレタンを、該ポリマーをゆっくり水中に加えるか又は逆に水を該ポリマー中に加えることによって、水性媒体中に分散させる。化合物(B)は、その分散液を製造する前又は後に加えることができる。大抵は前に加える方が好ましい。通常、この分散は、高せん断混合のもとで進行する。通常、この分散には、化合物(ii)によって提供される親水性基、例えばカルボン酸基又はスルホン酸基等を予め中和して陰イオン塩にすることが必要である。これは、一般に、中和剤をポリマー又は水に加えることによって行われる。適当な中和剤としては、アンモニア、第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−メチルピロリジン及びN−メチルピペリジン等並びに一価の金属陽イオン、好ましくはアルカリ金属、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウム等、並びに、陰イオン、例えば、水酸化物、水素化物、カーボネート及びバイカーボネート等を含む無機塩基が挙げられる。好ましいのはアルカリ金属水酸化物であり、最も好ましいのは水酸化ナトリウムである。
【0015】
これらの中和剤の総量は、中和される酸基の総量に従って計算することができる。一般に、約0.3:1〜1.1:1の化学量論比が使用される。好ましくは、その化学量論比は、全部の酸基が中和されないように、0.3:1乃至0.95:1とする。
【0016】
該重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)は、好ましくは、1gのポリウレタン(固形分)当たり少なくとも0.2meqのアロファネート基−NH−CO−N−CO−O−を含有する。より好ましくは、ポリウレタン(A)中のアロファネート基の含量は、少なくとも0.3meq/gである。その含量は、通常、1meq/gを超えない。
【0017】
該重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)は、一般に、1乃至6meq/g、好ましくは2乃至4meq/gの二重結合当量(固形分1g当たりのエチレン性二重結合のミリ当量数)を有する。(メタ)アクリレート基及びエチレン性不飽和基の量は、通常は、核磁気共鳴分光法によって測定され、固体物質1g当たりのmeqで表される。組成物の試料を室温で1日と60℃で12時間乾燥し、次にN−メチルピロリドンに溶解する。その試料を、(メタ)アクリレート基及びエチレン性不飽和基のモル濃度を測定するために、内部標準として1,3,5−ブロモベンゼンを用いる1H−NMR分析にかける。内部標準の芳香族プロトンに与えられるピークと(メタ)アクリレート基及びエチレン性不飽和二重結合に与えられるピークとの間の比較により、(メタ)アクリレート基及びエチレン性不飽和基のモル濃度を、式(A×B)/C(式中、Aは、その試料によって提供される1H二重結合の積分値であり、Bは、その試料中の内部標準のモル数であり、Cは、その内部標準によって提供される1Hの積分値である)に従って計算することが可能である。
【0018】
別法では、該(メタ)アクリレート基及びエチレン性不飽和基の量は、前記不飽和基に対して過剰のピリジニウムサルフェートジブロミドの添加に続く滴定法によって(溶媒としての氷酢酸及び触媒としての酢酸水銀中で)測定することもできる。前記過剰分は、ヨウ化カリウムの存在下でヨウ素を遊離させ、そのヨウ素を次にチオ硫酸ナトリウムにより滴定する。
【0019】
該重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)は、好ましくは、硬化前は物理的に乾燥していないか又は粘着性がある。
【0020】
重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタンは、例えば、米国特許第5,596,065号に記載されている。
【0021】
ポリイソシアネート化合物(i)とは、少なくとも2つのイソシアネート基を含む有機化合物を指すことが意図されている。そのポリイソシアネート化合物は、3つを超えるイソシアネート基は通常含まない。該ポリイソシアネート化合物(i)は、最も好ましくはジイソシアネートである。該ポリイソシアネート化合物は、脂肪族、脂環式、芳香族及び/又は複素環式ポリイソシアネート或いはそれらの組合せから一般に選択される。
【0022】
脂肪族及び脂環式ポリイソシアネートの例は、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,1’−メチレンビス[4−イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)である。2つより多いイソシアネート基を含有する脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、1,6−ジイソシアナトヘキサンビウレット及びイソシアヌレートのような上記のジイソシアネートの誘導体である。芳香族ポリイソシアネートの例は、1,4−ジイソシアナトベンゼン(BDI)、2,4−ジイソシアナトトルエン(2,4−TDI)、2,6−ジイソシアナトトルエン(2,6−TDI)、1,1’−メチレンビス[4−イソシアナトベンゼン](MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)及びp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)である。
【0023】
該ポリイソシアネートは、好ましくは、脂肪族及び脂環式ポリイソシアネート、より好ましくはジイソシアネートから選択される。特に好ましいのは、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)である。
【0024】
該ポリウレタンポリマー(A)の合成のために使用するポリイソシアネート化合物(i)の量は、一般に、該ポリウレタンポリマー(A)の10乃至60重量%、好ましくは10乃至50重量%、より好ましくは20乃至40重量%の範囲である。
【0025】
該親水性化合物(ii)は、一般に、イオン性又は非イオン性の親水性の性質を示すことができる官能基を含むポリオールである。好ましくは、それは1つ又は複数の陰イオン塩基、例えばカルボン酸塩基及びスルホン酸塩基或いは陰イオン塩基に転化させることができる酸基、例えば、カルボン酸基又はスルホン酸基を含有するポリオールである。好ましいのは一般式(HO)R(COOH)(式中、Rは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は枝分かれした炭化水素残基であり、x及びyは、独立して1乃至3の整数である)によって表されるヒドロキシカルボン酸である。これらのヒドロキシカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、乳酸及び酒石酸が挙げられる。最も好ましいヒドロキシカルボン酸は、上記の一般式中x=2及びy=1であるα,α−ジメチロールアルカン酸、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸等である。
【0026】
親水性化合物(ii)の量は、一般に、該ポリウレタンポリマー(A)の3乃至25重量%、好ましくは5乃至20重量%である。
【0027】
イソシアネート基と反応することができる1つ又は複数の反応性基を有する重合可能なエチレン性不飽和化合物(iii)は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基が好ましい。
【0028】
アクリル又はメタクリル基等の1つ又は複数の不飽和官能基及び基本的にイソシアネートと反応することができる1つの求核性の基、好ましくはヒドロキシル基を含有する化合物が好ましい。より好ましいのは、(メタ)アクリロイルモノヒドロキシ化合物、より特定的にはポリ(メタ)アクリロイルモノヒドロキシ化合物である。アクリレートが特に好ましい。
【0029】
有用な化合物としては、約1個の残留平均ヒドロキシル官能基を有する脂肪族及び/又は芳香族ポリオールの(メタ)アクリル酸とのエステル化生成物が挙げられる。(メタ)アクリル酸の水酸基3個、4個、5個又は6個を含むポリオール或いはそれらの混合物との部分エステル化生成物が好ましい。これに関連して、開環反応でこれらのポリオールに加わる上記ポリオールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド或いはそれらの混合物との反応生成物、或いは上記ポリオールのラクトンとの反応生成物を使用することも可能である。適当なラクトンの例は、γ−ブチロラクトンと、特にδ−バレロラクトン及びε−カプロラクトンである。好ましいのは、そのようなヒドロキシル官能基当たり最大3個までのアルコキシ基を有するアルコキシル化ポリオール及びε−カプロラクトン変性ポリオールである。これらの変性された又は変性されていないポリオールは、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物と望ましい残留ヒドロキシル官能基に達するまで部分エステル化される。
【0030】
特に好ましいのは、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物、例えば、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びそれらの(ポリ)エトキシル化及び/又は(ポリ)プロポキシル化相当物等である。
【0031】
(メタ)アクリル酸と少なくとも1つの(メタ)アクリル官能基と共にエポキシ官能基を有する脂肪族、脂環式又は芳香族化合物との反応から得られた化合物も、同様に使用することができる。脂肪族、脂環式又は芳香族酸とグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を含有する(メタ)アクリレートとの反応から得られた化合物もまた使用することができる。
【0032】
その他の適当な化合物は、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのような、少なくとも1つのヒドロキシ官能基が遊離のまま残存している線状ポリオール又は枝分かれしたポリオールとの(メタ)アクリル酸エステルである。この範疇における好ましい分子は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0033】
好ましい実施形態においては、2つ以上の不飽和化合物(iii)の混合物が使用される。
【0034】
親水性化合物(iii)の量は、一般に、ポリウレタンポリマー(A)の20乃至85重量%、好ましくは35乃至85重量%、より好ましくは45乃至75重量%である。
【0035】
好ましくは、該重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)は、基本的に飽和ポリオールを含まず、特に基本的に飽和ポリエステルポリオールを含まない。
【0036】
一般に、本発明のポリウレタン(A)の重量平均分子量(Mw)は、3000と8000の間、より好ましくは3000と6000の間である。好ましくは、数平均分子量(Mn)は、1800と3500の間である。好ましくはその多分散性指数Mw/Mnは、1と3の間、最も好ましくは約2である。数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、GPCにより測定する(THF中、3×PLgel 5μm Mixed−D LS 300×7.5mmカラム、ポリスチレン標準により較正した分子量範囲162〜377400g/mol、40℃で)。50g/l未満の水溶性を有する重合可能なエチレン性不飽和化合物(B)は、1つ又は複数の(メタ)アクリル基を含む(メタ)アクリル化合物から好ましくは選択される。好ましい化合物(B)は、そのような25℃で10g/l未満、より具体的には5g/l未満の水溶性を有するものである。特に好ましいのは、実質的に水溶性ではないものである。
【0037】
かかる化合物(B)の例としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル(メタ)アクリレート及びより低分子量の(メタ)アクリレート、並びにそれらの混合物が挙げられる。低分子量(メタ)アクリレートとは、当然、最大で1000、好ましくは最大で500の分子量(Mw)を有する(メタ)アクリレートである。「より低分子量の(メタ)アクリレート」とは、(a)ポリオール及び/又はエポキシドと(b)(メタ)アクリル酸及び/又はそれらのエステルとのエステル化又はエステル交換反応の生成物を指すことを意味する。本発明の(メタ)アクリレート(B)は、場合によって後でアミン化することができる。
【0038】
本発明の(メタ)アクリレート(B)の調製において使用されるポリオール(a)は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はラクトンとの反応生成物のような変性ポリオールであり得る。使用されるエポキシド(a)は、特にポリプロピレングリコール(PPG)のグリシジルエーテル及び/又はジグリシジルエーテルのようなポリエポキシドである。
【0039】
(メタ)アクリレートとアミンとの間の反応はマイケル付加として知られている。一般に、第一級及び/又は第二級アミンがこれらのアミノ(メタ)アクリレートの調製においては使用される。適当な第一級及び第二級アミンの例は、当技術分野で周知であり、例えば国際公開第2008/000696号及び国際公開第2006/131259号に記載されている。
【0040】
本発明の(メタ)アクリレートは、以下のもの、即ち、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル(メタ)アクリレートで、好ましくは最大で1000、好ましくは最大で500の分子量(Mw)を有するもの、の1つ又は複数との混合物として使用することができる。
【0041】
好ましくは、化合物(B)は、モノマー又は反応性希釈剤である。
【0042】
本発明による第1の好ましい実施形態によれば、化合物(B)は、少なくとも2つの(メタ)アクリル基及び最大でも1つのその他の官能基を含む(メタ)アクリル化化合物から選択される。特に好ましいのは、最大でも1つのヒドロキシル基を含む(メタ)アクリル化化合物である。最大でも1、好ましくは1未満の平均残留ヒドロキシル官能基を有する、(メタ)アクリル酸の少なくとも2つのヒドロキシル基を含むポリオールとのエステル化生成物が好ましい。特に好ましいのは、アルコキシル化されていない化合物である。場合によってこれらの(メタ)アクリル化化合物(B)は、後でアミン化される。
【0043】
この第1の実施形態によれば、化合物(B)は、好ましくは、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジ−ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物から選択される。好ましいのは、2乃至6個の(メタ)アクリレート基、さらに特に、3乃至4個の(メタ)アクリレート基を有する化合物(B)である。特に好ましいのは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである。
【0044】
本発明による第2の好ましい実施形態によれば、化合物(B)は、アルコキシル化(メタ)アクリル化化合物から選択される。好ましい化合物は、エトキシル化及び/又はプロポキシレート化化合物である。より好ましいのは、(メタ)アクリル基当たり0.3〜3個、特に1乃至2個のアルコキシ基であるアルコキシル化の度合いを有する化合物である。場合によって、これらの(メタ)アクリル化化合物(B)は、後でアミン化される。
【0045】
特に好ましいのは、少なくとも2つの(メタ)アクリル基を含む化合物、特に(メタ)アクリル酸の、少なくとも2つのヒドロキシル基及びヒドロキシル基当たり0.3乃至3個のアルコキシ基を含むアルコキシル化ポリオールとのエステル化生成物である。この第2の実施形態によれば、化合物(B)は、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びアルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートから好ましくは選択される。
【0046】
化合物(B)の量は、一般に、ポリウレタン(A)の重量の1乃至60重量%、好ましくは、15乃至50、より好ましくは、25乃至50重量%である。
【0047】
本発明による水性放射線硬化性組成物は、10乃至60重量%、より好ましくは25乃至50重量%のポリウレタン(A)、3乃至30重量%、より好ましくは5乃至20重量%の化合物(B)及び20乃至80%、より好ましくは30乃至70%の水を好ましくは含有する。
【0048】
該組成物は、1つ又は複数の光開始剤及び/又は様々なその他の添加剤、例えば、レオロジー調整剤、増粘剤、融合助剤、消泡剤、湿潤剤、接着促進剤、フロー及びレベリング剤、殺生剤、界面活性剤、安定剤、酸化防止剤、ワックス、充填剤、顔料、染料及びチント等をさらに含有することができる。
【0049】
該放射線硬化性組成物は、化合物(B)を、ポリウレタン(A)にそれが水中に分散する前、途中又は後に加えることによって得ることができる。化合物(B)は、また、ポリウレタン(A)の合成の途中で加えることもできる。特に化合物(B)が化合物(i)、(ii)又は(iii)のいずれかと反応することができる官能基を含有しない場合、それは、ポリウレタン(A)の調製の第2、第3又は第4ステップのいずれかの前、途中又は後に加えることができる。
【0050】
本発明は、また、本明細書の上で記載されているような放射線硬化性組成物を調製するためのプロセスにも関係し、前記プロセスは、
−化合物(i)と(iii)との反応を含む第1ステップと、
−第1ステップの生成物と化合物(ii)との反応を含む第2ステップと、
−第2ステップ後に得られた生成物を、残留イソシアネート含量が1meq/g未満になるまでさらに反応させる第3ステップと、
−第3ステップ後に得られたポリウレタンの水性媒体中の分散を含む第4ステップと、
−化合物(ii)によって提供された親水性基を陰イオン塩に転化するための中和剤との反応を含む任意のステップと、
−エチレン性不飽和化合物(B)の添加を含むステップと
を含む。
【0051】
中和ステップは、第4ステップの前、途中又は後に行うことができる。
【0052】
エチレン性不飽和化合物(B)の添加は、該反応の第2、第3ステップ又は第4ステップの後に行うことができる。そのエチレン性不飽和化合物(B)がイソシアネート基と反応することができる官能基を含まない化合物であるときは、その化合物は、さらに、該反応の第2ステップの前又は途中に加えることができる。
【0053】
本発明による組成物及びプロセスは、好都合なことに、それらは低い揮発性有機物含量(VOC)、高い固形分含量、低粘度、低い粒径、優れた安定性及び低いフィルム形成温度を有する分散液を提供することができる。本発明の組成物は、例えば、60℃で少なくとも10日間安定である。
【0054】
本発明の水性分散液は、約30乃至60重量%、好ましくは約40乃至55重量%の全固形分含量;25℃で測定して500mPa未満、好ましくは200mPa未満の粘度;6〜11、好ましくは6〜8.5のpH値;約10〜1000nm、好ましくは30〜150nmの平均粒径を一般に有する。フィルム形成温度は、好ましくは0乃至20℃、より好ましくは0乃至5℃の範囲である。
【0055】
本発明の水性分散液は、硬化前は有利なことに粘着性である。硬化前の粘着性は本発明の分散液については有利なことに低い。硬化前の粘着性は、通常は、最大で8N/25mm、好ましくは、最大で5N/25mm、より好ましくは、最大で3N/25mmである。最も好ましくは、硬化前の粘着性は、FINAT FTM9によるタックループ測定により測定して2N/25mmを超えないことである。硬化前の粘着性は、一般に、少なくとも0.1N/25mm、好ましくは、少なくとも0.2N/25mm、より好ましくは、少なくとも0.4N/25mmである。
【0056】
有利なことに本発明の水性分散液は、硬化前は乾燥していない。
【0057】
本発明による放射線硬化性組成物は、好ましくは、一般に光開始剤の存在下で紫外線照射によって硬化することができる。それらは、また、光開始剤を含まない組成物の使用を可能にする電子線照射によっても硬化させることができる。本発明による組成物は、極めて高速の硬化を提供している。
【0058】
本発明による組成物から得られるコーティングは、例えば、木材、プラスチック、ガラス、金属及びコンクリートに対するコーティングのような多くの異なる応用分野を対象とすることを可能にする選択性のある機械的特性(より硬い及びより軟らかい)及びポリマー極性(より親水性又はより疎水性)を生じさせる。本発明による組成物は、インク及びオーバープリントワニスとして製造するためにも適する。
【0059】
本発明による組成物、特に第1の実施形態によるものは、放射線硬化後に水、溶媒及び汚れに対して優れた耐薬品性、引っかき及び磨耗に対する優れた機械抵抗を示し、その間常に優れた光沢及びミラー効果を与えるコーティングを得ることを可能にする。これらのコーティングは、多孔質の基材及び通気性のない基材に対して良好な接着性も示す。その光学特性は、良好な透明性及び高光沢に対処する。本発明による組成物は、木材家具のためのコーティング及び優れたミラー効果を有するプラスチックコーティングを製造するために特に適する。本発明による組成物は、また、場合によってその他のコーティング例えばポリウレタン等によってプレコートされている木製基材及びプラスチック製品、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルから製造された3次元物体をコーティングするために特に適する。
【0060】
本発明による組成物、特に第2の実施形態によるものは、木材へのUVステイン塗装に特に適している。それらは、ステインとの優れた相溶性及び安定性、低い泡立ち、低いブラシへの付着、非常に低い粘着性を与える。本発明による組成物に基づくステインは、木材中により均一に吸収され、より一様な色の外観をもたらす。それらは、木材に対して優れた明るい外観及び接着性を与える。さらにそれらは優れたプライマー特性を有する。したがって、該組成物は、プライマーに対して必要な優れた接着特性並びにステイン塗装に対して必要な望ましい特性を兼ね備える。それらはステインとプライマーが木材に2つの異なる層で塗布される2段階のプロセスをステインとプライマーが一体化されている1回のプロセスによって置き換えることを可能にする。
【0061】
本発明は、それ故、インク、ニス又はコーティングを製造するための該組成物の使用及び本明細書の上で記載した組成物を使用するインク、ニス及びコーティングを製造するためのプロセスにも関する。本発明は、また、基材又は物品を本発明による放射線硬化性組成物により被覆し、好ましくは、特にUV光又は電子線の照射下でさらに硬化を受けさせるステップを含む被覆した基材又は物品を調製するためのプロセスにも関する。
【0062】
本発明は、より特定的には、特に木材及びプラスチック基材上の高光沢コーティングを製造するためのプロセス及び該組成物の使用に関する。本明細書で上に記載した第1の実施形態による組成物は、そのために特に適する。
【0063】
本発明は、より特定的には、木材コーティングを製造するためのプロセス及び該組成物の使用に関する。本明細書で上に記載した第2の実施形態による組成物は、そのために特に適する。
【0064】
本発明は、また、本発明の組成物により部分的又は完全に被覆又は処理した物品又は基材にも関する。好ましくは、物品又は基材は木材又はプラスチックからできている。
【0065】
次に続く実施例は、本発明を説明するものでありそれを限定するものではない。
【実施例】
【0066】
(調製例1):水性ポリウレタン分散液の調製
機械撹拌機、熱電対、蒸気凝縮器及び滴下漏斗を備えた二重壁のガラス反応器に、109.6gの1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート及び0.14gのオクタン酸ビスマスを仕込んだ。その反応混合物を加熱し、1モルのエトキシル化トリメチロールプロパンTMP−3EOの2モルのアクリル酸との194.2gの反応生成物、55.5gの1官能性エポキシアクリレートEbecryl(登録商標)113及び1.1gの4−メトキシフェノールを空気スパージ(air−sparge)下の反応器にゆっくり加えた。1.79meq/gのイソシアネート含量になるまで熟成を行った。次に35.1gのジメチロールプロピオン酸及び1.1gの4−メトキシフェノールをこの反応混合物に加え、マス温度を95℃に加熱した。イソシアネート含量<0.02meq/gが得られるまで95℃で熟成を行った。この反応混合物を冷却し、23.4gの25重量%の水酸化ナトリウム水溶液をその反応器に加えた。NaOH溶液の添加を開始した後、この反応混合物をさらに冷却し、577.5gの脱塩水を高せん断撹拌下でその反応器にゆっくり加えた。その分散液を室温まで冷却し、5μmのフィルターバックにより濾過し、その固形分含量を水を加えることによって40%に調整した。乾燥物含量は、重量法によって測定した。
【0067】
この分散液の粘度は、33mPaであった(ブルックフィールドRVT粘度計により25℃でスピンドルN°1を用いて50rpmで測定した)。
【0068】
このポリウレタンは、ポリウレタン固形分1g当たり0.38meqのアロファネート基の含量を有した。
【0069】
この水性ポリマー分散液の平均粒径は、94nmであった(Malvern Autosizer粒子分析器を用いるレーザー光散乱によって測定した)。
【0070】
コロイド安定性を、60℃のオーブン中に入れた200gの試料についてデカンテーション及び/又は相分離を観察することによって評価し、10日後生成物の劣化は見られなかった。
【0071】
(例1)
10部のトリメチロールプロパントリアクリレートを、85.5部の調製例1のUV硬化性ポリウレタン分散液に加えた。その組成物は次に3%の光開始剤(Additol(登録商標)BCPK)を配合し、増粘剤UCECOAT(登録商標)8460:水(1:1)を最大2%まで用いて約1500mPa.s(ブルックフィールド)に調整し、その分散安定性について評価した。
【0072】
それにより得られた組成物及びコーティングの特性を表1に示す。
【0073】
安定性(分散液の):標準試験を実施した後−60℃で10日−分散液/乳濁液を何らかの沈殿又はその他の例えば粒径若しくはpHにおける変化について検査する。試料は重要な変化が検知されない場合良好と認められる。
【0074】
耐汚染性:この方法は、通気性のない基材(ハーフホワイト、ハーフブラックのLenetaペーパー)に塗布した36μウェットのコーティングの耐薬品性を対象とする。コーティングを60℃で5分間乾燥し、次に5m/分での80W/cmのUVランプ(Hg)下で硬化した。その耐性は、試験物質をコーティング上に置き、顕微鏡ガラスで覆い、4〜16時間そのままにしておくことによって評価する。使用した試験物質は、マスタード、コーヒー及び赤ワインである。汚れは、イソプロパノールを満たしたティッシュペーパーを用いて2〜3回こすることにより洗浄する。残っている汚れを、5が最高である1〜5の尺度を用いて視覚的に評価する。高い値(5)は、何らかの家庭の生成物のこぼれものに対する最高の保護を提供する。
【0075】
ミラー効果:該方法は、5が最も高品質の反射である1〜5の尺度を用いて反射した画像の品質を視覚的に判定する。高い値は、反射画像が重要な特徴である用途に対して必要となる。
【0076】
(比較例2及び3)
比較例2においては、トリメチロールプロパントリアクリレートの代わりに10部の水溶性ポリエーテルトリアクリレートEBECRYL(登録商標)12を使用した。比較例3においては、トリメチロールプロパントリアクリレートを省略した。
【0077】
(例4)
例4においては、トリメチロールプロパントリアクリレートをペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物と置換した。
【表1】

【0078】
例1及び4を比較例2(水溶性アクリレート含有)及び3(アクリレートを含有しない)と比較すると、改良された耐汚染性並びにミラー効果、特に高品質の反射画像の優れた耐汚染性との組合せを有するコーティングを得ることを可能にする本発明による組成物のより良好な性能が示されている。
【0079】
比較例3による組成物は比較的高い光沢を与えた事実にもかかわらずミラー効果は得られなかった。
【0080】
比較例2は、水溶性アクリレートが高度に安定な組成物を得ることを可能にしなかったことを示している。
【0081】
(例5)
15部のEBECRYL(登録商標)145として市販されているプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、80部のUV硬化性ポリウレタン分散液の調製例1及び22.5部の水を混合することによって分散液を作製した。その分散液を、それらの60℃における安定性及び0.3gの生成物を用いてTack−O−Scope(Testprint)により25℃において20m/分で測定したそれらの粘着性について評価した。その結果を表2に示す。
【0082】
(比較例6R〜9R)
プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートを省略する(比較例6Rにおいて)か、それぞれ、比較例7Rにおいてはポリエチレングリコール600ジアクリレート(EBECRYL(登録商標)11の品名のもとで市販されている)、比較例8RにおいてはEBECRYL(登録商標)12の品名で市販されているポリエーテルトリアクリレート、及び比較例9Rにおいてはポリエチレングリコール400ジアクリレート(EBECRYL(登録商標)13の品名で市販されている)である水溶性アクリレートによって置換した以外は例5におけるのと同様に分散液を調製して評価した。その結果を表2に示す。
【0083】
(例10)
プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートをEBECRYL(登録商標)853の品名で市販されているエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートによって置き換えた以外は例5におけるのと同様に分散液を調製して評価した。その結果を表2に示す。
【表2】

【0084】
結果は、水溶性アクリレートの使用が、UVステインを製造するために使用することができる安定な分散液を得ることを可能にしなかったことを示している。
【0085】
本発明による組成物は、それらを、UVステインを製造するために特に適するようにする極めて低い粘着性を示した。
【0086】
例5及び比較例6Rの組成物は、顔料を配合し、それらの色の安定性を試験した。例5の組成物は、比較例6Rのものより極めて良好な色の安定性を示した。その上この組成物は予想外の低い泡立ちを示した。
【0087】
例5及び10並びに比較例6Rの組成物は、それらの接着性及び耐引っかき性についてさらに評価した。
【0088】
そのために、それらの組成物は、光開始剤(Additol(登録商標)BCPK)、増粘剤UCECOAT(登録商標)8460、水及び顔料(重量比:23.75部の組成物、75部の水、4部の光開始剤、1部の増粘剤及び10部の顔料)を配合し、スプレーによってブナノキのパネルに塗布し(35g/m)、40〜50℃で乾燥し、UV光のもとで硬化した。次に、3×18g/mのUV硬化性シーラーを塗布して硬化させ、10g/mのUV硬化性トップコートを塗布して硬化させた。
【0089】
得られた結果を表3に示す。
【表3】

【0090】
結果は、本発明による組成物が、水不溶性アクリレートを含有しない組成物と比較して改良されている非常に良好な接着性及び耐引っかき性を示すことを立証している。
【0091】
表2及び3の結果は、本発明による組成物がUVステインとして使用するのに特に適していることを実証している。
【0092】
(例11):プラスチックコーティング
例4において記載したようにして調製した分散液を、ドクターブレードによりポリカーボネート(PC)に塗布し(ウェットで30μm)、40℃で10分間乾燥し、次いで80W/cmの2×10m/分でのUVランプ(Hg)のもとで硬化した。反応性、接着性(テープ剥離)及び耐汚染性を試験した。PC上の接着性以外にポリ塩化ビニル(PVC)及びポリエチレンテレフタレート(PET)上でも接着性を試験した。
【0093】
硬度及び耐引っかき性を評価するために、50μmの厚さのコーティングをドクターブレードによりガラスに塗布し、40℃で10分間乾燥し、次いで80W/cmの3倍の反応性でのUVランプ(Hg)のもとで硬化した。
【0094】
反応性:この方法は、本明細書において上で記載したように塗布して硬化させたコーティングを十分に架橋させるために必要な最低のUV線量を対象とする。最低線量は、100回のアセトン二重摩擦と同等以上の耐溶剤性を可能にするコンベアの速度(m/分)によって定義される。その摩擦は、アセトンを満たした綿ぼろの一片によって行われ、1回の二重摩擦は、塗装表面の前方と戻りのストロークに相当する。記録されている数字は、コーティングを取り除くために要する二重摩擦の回数である。
【0095】
接着性:この方法は、本明細書において上で記載したように塗布して硬化させたコーティングの接着性を対象とする。ナイフを用いて約1cmの長さと約1mmの間隔の5本の切れ目を作り、続いて5本の同様の切れ目をその横断方向に作る。接着性は、粘着テープをクロスカットしたコーティングにしっかり押し付けて素早く除去し、コーティングのクロスカットした表面積に対する接着の喪失による損傷を、5が最高である1〜5の尺度を用いて表現する。コーティングと基材の間の強力な不変の結合を確保するには高い接着性(5)が必要である。
【0096】
耐汚染性:この方法は、本明細書において上で記載したように塗布して硬化させたコーティングの耐薬品性を対象とする。その耐性は、別な風に記載されていない限りは、試験物質をコーティング上に置き、顕微鏡ガラスで覆い、4〜16時間そのままにしておくことによって評価する。汚れは、イソプロパノールを満たしたティッシュペーパーを用いて2〜3回こすることにより洗浄する。残っている汚れを、5が最高である1〜5の尺度を用いて視覚的に評価する。
【0097】
硬度:この方法は、本明細書において上で記載したように塗布して硬化させたコーティングの表面硬度を対象とする。塗装された試料を調整された部屋(20℃、50%湿度)に24時間おいて安定化させ、振子硬度(ペルソ(Persoz)法)を、表面の3箇所について測定する。平均値を計算する。
【0098】
耐引っかき性:この方法は、本明細書において上で記載したように塗布して硬化させたコーティングの耐引っかき性を対象とする。その引っかきは、800gのハンマーに取り付けた一片の鋼綿を用いて室温で前方と後方に移動させて塗装表面上を摩擦して評価する。記録された数字は、表面を損傷するために要した単一の摩擦の回数であり、磨耗による光沢の目に見える喪失を示している。得られた結果を表4に示す。
【表4】

【0099】
硬化前の粘着性:
例4及び5の組成物並びに欧州特許出願公開第1845143号又は米国特許第5,596,065号に例示されている組成物(それぞれ比較例13R及び14R)を、粘着性の測定に付した。硬化前の粘着性は、ここではFINAT FTM9によるタックループ法を用いて測定した。粘着性なし=0、低粘着性=0〜2、粘着性あり=2〜5、非常に粘着性あり>5。
【0100】
得られた結果を表5に示す。
【表5】

【0101】
本発明による組成物のみが、研磨又は艶出し無しでミラー効果を有するコーティングを得ることを可能にした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.2meq/gのアロファネート基を含有し、10〜60重量%の少なくとも1つのポリイソシアネート(i)、イソシアネート基と反応することができる少なくとも1つの反応性基及びポリウレタンを水性媒体中に直接又は塩を提供する中和剤と反応させた後に分散するようにすることができる少なくとも1つの基を含有する3〜25重量%の少なくとも1つの親水性化合物(ii)、並びにイソシアネート基と反応することができる少なくとも1つの反応性基を含有する20〜85重量%の少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和化合物(iii)の反応から得られた5乃至90重量%の重合可能なエチレン性不飽和水分散性ポリウレタン(A)と、
ポリウレタン(A)の重量に対して1乃至60重量%の25℃で50g/l未満の水溶性を有する少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和化合物(B)[但し、化合物(B)は、最大で1000の分子量を有する(メタ)アクリレートである]と
を含む水性組成物。
【請求項2】
ポリウレタン(A)が、化学量論的に過剰なポリイソシアネート(i)の重合可能なエチレン性不飽和化合物(iii)との反応と、第1ステップの生成物の親水性化合物(ii)との反応を含む第2ステップと、ポリイソシアネート(i)によって提供される残留している遊離のイソシアネート基が反応してアロファネート基を生じる第3ステップとを含むプロセスによって得られた、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
ポリウレタン(A)が、1乃至6meq/gのエチレン性不飽和二重結合を含有する、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項4】
ポリイソシアネートが、脂肪族及び脂環式ポリイソシアネートから選択される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項5】
親水性化合物(ii)が、α,α−ジメチロールアルカン酸から選択される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項6】
重合可能なエチレン性不飽和化合物(iii)が、ポリ(メタ)アクリロイルモノ−ヒドロキシ化合物から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項7】
重合可能なエチレン性不飽和化合物(B)が、25℃で10g/l未満の水溶性を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項8】
重合可能なエチレン性不飽和化合物(B)が、少なくとも2つの(メタ)アクリル基及び最大でも1つのその他の官能基を含む(メタ)アクリル化化合物から選択される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項9】
少なくとも2つの(メタ)アクリル基及び最大でも1つのその他の官能基を含む(メタ)アクリル化化合物が、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジ−ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の水性組成物。
【請求項10】
重合可能なエチレン性不飽和化合物(B)が、アルコキシル化(メタ)アクリル化化合物から選択される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項11】
アルコキシル化(メタ)アクリル化化合物が、(メタ)アクリル酸と少なくとも2つのヒドロキシル基及びヒドロキシル基当たり0.3乃至3個のアルコキシ基を含むアルコキシル化ポリオールとのエステル化生成物から選択される、請求項10に記載の水性組成物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物を調製するためのプロセスであって、
化合物(i)と(iii)との反応を含む第1ステップと、
第1ステップの生成物と化合物(ii)との反応を含む第2ステップと、
第2ステップ後に得られた生成物を、残留イソシアネート含量が1meq/g未満になるまでさらに反応させる第3ステップと、
第3ステップ後に得られたポリウレタンの水性媒体中の分散を含む第4ステップと、
化合物(ii)によって提供された親水性基を陰イオン塩に転化するための中和剤との反応を含む任意のステップと、
エチレン性不飽和化合物(B)の添加を含むステップと
を含む上記プロセス。
【請求項13】
コーティングを施した基材又は物品を調製するプロセスであって、前記基材又は物品に、請求項1から11までのいずれか一項に記載の組成物によりコーティングが施される上記プロセス。
【請求項14】
基材又は物品が、プラスチック又は木材の基材又は物品であり、請求項8又は9に記載の組成物が使用される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
基材又は物品が、木材の基材又は物品であり、請求項10又は11に記載の組成物がUVステインとして使用される、請求項13に記載のプロセス。

【公表番号】特表2011−527361(P2011−527361A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517118(P2011−517118)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058519
【国際公開番号】WO2010/003924
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】