説明

水性着色剤組成物および種子の処理でのそれの使用

【課題】 種子の処理で使用する水性着色剤組成物
【解決手段】 この課題は、少なくとも1種類のワックスコポリマーA、少なくとも1種類の着色剤Bおよび少なくとも1種類の造膜性湿潤剤Cを、水性着色剤調製物の製造に慣用の他の添加物の他に含有する水性着色剤組成物によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願の優先権の基礎となる2005年10月25日に出願されたドイツ特許出願第102005050995.9に記載されており、その内容をここに全て記載したものとする。
【0002】
本発明は水性着色剤組成物およびそれを種子の処理に、場合によっては植物保護剤と組み合わせて用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
種子を処理するための活性剤調製物は、活性剤そのものの他に一般に着色剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、保存剤、乾燥制御剤、増粘剤、溶剤、接着剤および生分解性ポリマーを含有している。しかしながら分配性および付着性を改善するために、追加的助剤、例えば湿潤剤、分散剤または接着剤は種子の処理においても使用される。特に付着性を改善するために接着剤が使用される。合成ポリマー、例えばポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドンまたはアルキルセルロースが接着剤として使用される。これらの助剤は活性剤調製物のあらゆる種類で使用することができる。
【0004】
活性剤調製物として水性ベースまたは油性ベースの懸濁製剤SC、水和剤WP、乳剤EC、水性溶液SL、サスポエマルジョンSE、粉剤DP、水分散性粒剤WGが使用される。“流動体種子処理剤”調製物として知られる水性分散物を使用するのが有利である。
【0005】
有効物質調製物で種子を処理する方法のためには、実施において慣用される方法、種子塗工(seed dressing)法として説明されている様な方法が使用される。好ましくはこれらは次の用に実施することができる:
− 好ましくは付着ビルダー、例えばパラフィン油またはタルクの添加下での乾燥種子の塗工;
− 好ましくは湿潤剤、分散剤、乳化剤、接着剤、不活性フィラーおよび着色剤の添加下でのスラリー状態での種子塗工;
− 好ましくは乳化剤、分散剤、増粘剤、凍結防止剤、ポリマー、接着剤および着色剤の添加下での水性液での種子塗工;
− 好ましくは溶剤および着色剤の添加下での溶剤含有液での種子塗工;
− 好ましくは乳化剤、溶剤および着色剤の添加下でのエマルジョンでの種子塗工。
【0006】
種子の塗工は実地において慣用される種子塗工装置またはドラム型ミキサー中で実施され、例えばドラム型ミキサーの場合には建築分野において通例のもの中で実施される。
【0007】
個々の方法段階の準備およびそれ故に必要な添加物は色々であり、個々の場合に何度も互いに適合させなければならない。この関係では、個々の成分は最終的には、処理された種子の発芽挙動に不利な影響を及ぼす。
【0008】
大過剰量の接着剤を使用することで確かに付着性が改善されるが不利にも発芽に影響を及ぼし得る。同様に湿潤剤および分散剤は有効物質が種子中に移動するのを促進させ得るが、同様に発芽に不利な影響を及ぼし得る。要するに着色剤または接着剤調製物の各成分がどのように発芽挙動に影響を及ぼすのかがしばしば予想できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故に本発明の課題は、種子塗工の複雑さを低減しそして同時にそれによって、種子の発芽挙動をこの関係において不利に変化させることなしに種子に活性剤調製物を塗工する作用を改善するために、場合いよっては着色剤と組み合わせて良好に注文に合った簡単なバインダー/接着剤系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、少なくとも1種類のワックスコポリマーA、少なくとも1種類の着色剤Bおよび少なくとも1種類の造膜性湿潤剤Cを、水性着色剤調製物の製造に慣用の他の添加物の他に含有する水性着色剤組成物によって達成される。
【0011】
本発明の着色剤組成物は簡略化された種子塗工調製物、特に市販の殺かび剤および殺虫剤と組合せて使用するのに適しそして荷された要求に適合している。本発明の着色剤組成物の系および種子塗工は乾燥状態の、スラリー状態の、分散物状態のまたは溶液状態のあらゆる種類の調製物に合わせることができる。驚くべきことに活性剤は一様に分配されそして種子の表面にフィルム状で付着されている。造膜は非常に速やかに行われそして塗工された種子は粘つかず、容易に運搬できる。とりわけ、本発明の着色剤組成物で処理された種子の発芽力はそれによって悪化されておらず、反対に発芽挙動が更に均一化されてさえいる。
【0012】
着色剤組成物は好ましくはワックスコポリマーAとして重合性ワックス化合物、好ましくはポリオールワックスエステルアクリレートとエチレン性不飽和酸、好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸および/またはそれらの誘導体、例えばアクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸アミドまたはメタクリル酸エステルおよび/またはスチレンまたはスチレン誘導体との反応生成物を含む。このポリマーは種子粒子とそれの周囲との物質交換に関して植物および種子粒子の天然ワックス層のように挙動する結晶質部分を有するフィルムを形成する。ポリオールワックスエステルアクリレートとして塗工されるかゝる反応生成物は、多価アルコール、例えばグリセロールまたはトリメチロールプロパンまたはペンタエリスリットとワックス酸、例えば工業用モンタンワックス酸とのおよびエチレン性不飽和酸、例えばアクリル酸との反応で得られる。この種の市販の生成物にはClariant社の“Licomont”ER 165の登録商標で入手できるペンタエリスリット−2,5−モンタナート−アクリレートがある。かゝるポリマーの製造は予備乳化されたワックスとアクリル酸またはメタクリル酸またはアクリル酸エステルおよび/またはスチレンの付加物との乳化重合によって行われる。
【0013】
本発明の着色剤組成物は着色剤Bとして種子に適用するのに通例の顔料を粉末または水性調製物の状態で含有する。不所望の沈降は観察できなかった。
【0014】
本発明の着色剤組成物は造膜性湿潤剤C、好ましくはすべすべしたエトキシレート類、例えばモンタンワックス酸エトキシレート、ワックスアルコールエトキシレートまたはワックスエトキシレートを含有している。エトキシレート成分は活性剤の分配および物質交換の両方を助成しそして中でも湿気の取り込みを助け、それによってワックス成分はポリマーと良好に組み合わせることができそして造膜に寄与する。
【0015】
本発明の着色剤組成物は種子の塗工を相当な程度で簡略化する。種子の塗工は着色および中和の両方を兼ね備える。結果としていずれの場合にも活性物質および着色剤が均一に分配され、摩擦に対して保護され、均一で且つ速やかな発芽を保証しそして視覚的に魅力的に作り上げられている種子をもたらす。
【0016】
実施例:
原料1:
【0017】
【表1】

【0018】
方法の説明:
水と乳化剤を混合しそして反応容器に装入しそして75℃の温度に加熱する。次いで15%のモノマー1を攪拌下に開始剤と一緒に添加して化学反応を開始する。化学反応を開始した時にモノマー1の残りを80℃の温度で1時間に亙って添加する。その後でモノマー2を2時間に亙って添加する。こうして得られる混合物を次いで更に90分に亙って攪拌し続ける。その後に、攪拌された混合物を冷却しそして次いでアスコルビン酸、過酸化水素および保存剤を添加しそしてその混合物を濾過する。
【0019】
原料2:
エトキシル化モンタンワックス酸をベースとするワックスエトキシレート分散物
物質:
モンタンワックス酸 EO 25 30
水 70
原料3:
エトキシル化アルコールをベースとするワックスエトキシレート分散物
物質:
ワックスアルコール EO 50 30
水 70
原料4:
原料1に従うワックスコポリマー分散物 33.5
原料2に従うワックスエトキシレート分散物 33.5
水 33
原料5:
原料1に従うワックスコポリマー分散物 50
原料2に従うワックスエトキシレート分散物 50
原料6:
原料1に従うワックスコポリマー分散物 35
原料3に従うワックスエトキシレート分散物 20
脂肪アルコールエトキシレート 15
水 30
方法の説明:
原料1の分散物と原料3の分散物を混合し、反応容器内で水で希釈する。10単位のエトキシレートを含有するオレインアルコールをこの混合物に添加しそして10分の時間に亙って攪拌する。こうして製造される分散物は塗工液として容易に使用することができる。
【0020】
【表2】

【0021】
量はそれぞれgを意味する。
【0022】
小麦を着色するために、本発明の着色剤組成物を、顔料含有量が1〜6%となり、1tの小麦当たり5〜30gの顔料が使用されるように調整する。
【0023】
【表3】

【0024】
量はそれぞれgを意味する。
【0025】
活性剤は水で希釈し、着色剤組成物と一緒にしそして種子用ミキサー中で小麦とタルクとの回転する混合物に供給する。
【0026】
比較するために、2部の着色された活性剤調製物Landor CTと2部の水との混合物を適用した。顔料含有量は全ての用途で同じである。
【0027】
本発明の調製物を使用した場合に塗膜がより均一で、色がより強くそして摩擦特性が改善されることが確かめられた。着色時間が短かった。
【0028】
通常使用される市販の接着剤を使用した場合に比べて、乾燥挙動および流動挙動が
本発明によって明らかに改善された。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
量はそれぞれgを意味する。
【0032】
水および原料4のコポリマー分散物を混合する。コーンを混合容器に添加しそして10部の水−コポリマー混合物で湿らせる。次いでタルクを添加する。残りの水−コポリマー混合物を活性剤および着色剤調製物と一緒にしそして15秒の間に混合機に同様に添加する。次いで攪拌を更に15秒間実施しそして次に混合機を空にする。
【0033】
【表6】

【0034】
量はそれぞれgを意味する。
【0035】
水と原料4のコポリマー分散物を混合する。コーンを混合用容器に添加しそして10部の水−コポリマー混合物で湿らせる。次いでタルクを添加する。水−コポリマー混合物の残りを活性剤と一緒にしそして15秒の間に混合機に同様に添加する。次いで攪拌を更に15秒間実施しそして次に混合機から取り出す。
【0036】
【表7】

【0037】
水と原料4に従うコポリマー分散物を混合する。次いでコーンを混合用容器に添加しそして10部の水−コポリマー混合物で湿らせる。次いでタルクを添加する。水−コポリマー混合物の残りを活性剤および着色剤調製物と一緒にしそして15秒の間に混合機に同様に添加する。次いで攪拌を更に15秒間実施しそして次に混合機から取り出す。
【0038】
評価:
赤色に着色したMesurolを製造元の忠告に従ってコーンに10〜20ml/kg適用する。実地においては充填剤、例えば粉末化した石またはタルクを調製物の乾燥および付着性が悪過ぎると評価されるので添加する。視覚的改善は実施例1および2に従うコポリマー分散物の添加によって既に達成できる。活性剤が無色で調製されそして本発明の完成着色剤調製物と一緒にした場合には常に良好な結果が達成される。良好な付着性および摩耗性を有する塗膜を有する速やかに乾燥する種子が得られる。摩耗は製造元の注意に従う塗工種子でよりも著しく少ない。
【0039】
同様にして、加工は液体状態または乾燥種子塗工活性剤で調製された他の種子塗工活性剤を用いても実施することもできる。
【0040】
【表8】

【0041】
量はそれぞれgを意味する。
【0042】
【表9】

【0043】
量はそれぞれgを意味する。
【0044】
水と原料5に従うコポリマー分散物を混合する。次いで菜種の種子を混合用容器に添加しそして10部の水−コポリマー混合物で湿らせる。次いでタルクを添加する。水−コポリマー混合物の残りを活性剤および着色剤調製物と一緒にしそして15秒の間に混合機に同様に添加する。次いで攪拌を更に15秒間実施しそして次に混合機から取り出す。
【0045】
【表10】

【0046】
量はそれぞれgを意味する。
【0047】
水と原料6に従うコポリマー分散物を混合する。菜種の種子を混合用容器に添加しそして10部の水−コポリマー混合物で湿らせる。その後にタルクを添加する。水−コポリマー混合物の残りを活性剤と一緒にしそして15秒の間に混合機に同様に添加する。次いで攪拌を更に15秒間実施しそして次に混合機から取り出す。分配および付着性はコポリマー分散物の添加によって改善される。種子は比較的に輝いている。
【0048】
【表11】

【0049】
量はそれぞれgを意味する。
【0050】
水と原料5に従うコポリマー分散物を混合する。次いで菜種の種子を混合用容器に添加しそして10部の水−コポリマー混合物で湿らせる。次いでタルクを添加する。水−コポリマー混合物の残りを活性剤および着色剤調製物と一緒にしそして15秒の間に混合機に同様に添加する。次いで攪拌を更に15秒間実施しそして次に混合機から取り出す。
【0051】
発芽試験を処理した全ての色々な種子で実施する。忠告に従って塗工された製品と差異がなかった。
【0052】
使用した着色剤:
以下の着色剤を本発明の着色された着色剤組成物の製造に使用した。これらはClariant社の市販品である。
Flexonyl Orange G100
Flexonyl Red A-LCLL
Flexonyl Red FGR131
Flexonyl White RS;
Colanyl Yellow 2GXD500
Colanyl Red FGR131;
Viscofil Orange S-RL
Viscofil Orange 顔料分散物
Viscofil Red A-WTS 30
Viscofil Green A-GNS
Viscofil Violet BLN
Viscofil Blue A-BGS。
【0053】
以下にリストアップしたEckar社のマイカ顔料を、光学的効果を達成するために使用した:
真珠光沢顔料 PX1000
真珠光沢顔料 Amethyst
使用した充填剤:
タルク、市販品(プラスチック用品質)
石灰石、市販品(プラスチック用品質)
石粉末、市販品(肥料品質)
使用した活性剤:
Landor CT(Bayer社製):フルジオキソニル(fludioxonil)、
ジヘノコナゾール(difenoconazole)、
テブコナゾール(tebuconazole)活性剤組合せ物
Solitar(Bayer社製):フルジオキソニル、
シプロジニル(cyprodinil)、
テブコナゾールの活性剤組合せ物
Arena(Bayer社製):フルジオキソニル、
テブコナゾールの活性剤組合せ物
Baytan(Bayer社製):フベリダゾール(fuberidazole)、
イマザリル(imazalil)、
トリアジメノ(triadimeno)の活性剤組合せ物
Mesurol(Bayer社製):活性剤のメチカルボ(methiocarb)含有
Chinook(Bayer社製):β-シフルトリン(beta-cyfluthrin)、
イミダクロプリド(imidacloprid)の活性剤組合せ物含有
Monceren(Bayer社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1種類のワックスコポリマーA、
− 少なくとも1種類の着色剤B、
− 少なくとも1種類の造膜性湿潤剤C
および水性着色剤調製物を製造するための普通の別の添加物を含有する、水性着色剤組成物。
【請求項2】
ワックスコポリマーAがエチレン性不飽和酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、および/またはそれらの誘導体、例えばアクリル酸エステルおよび/またはアクリルアミド、メタクリル酸エステル、および/またはスチレンまたはスチレン誘導体と重合可能なワックス化合物のポリマーである、請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項3】
着色剤Bとして顔料粉末または水性顔料調製物を含有する、請求項1または2に記載の着色剤組成物。
【請求項4】
着色剤Bとして染料を含有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の着色剤組成物。
【請求項5】
造膜性湿潤剤Cとしてエトキシル化されたワックスまたはエトキシル化された脂肪誘導体を含有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の着色剤組成物。
【請求項6】
それぞれ水性着色剤組成物の固形分含有重量を規準として1〜99重量%の量のワックスコポリマーA、0.1〜40重量%の量の着色剤Bおよび1〜60重量%の量の造膜性湿潤剤Cを含有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の着色剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の着色剤組成物を種子に適量適用する種子の着色方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の着色剤組成物を、植物保護用活性剤と組合せて種子に適量適用する種子の塗工方法。

【公開番号】特開2007−119779(P2007−119779A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288442(P2006−288442)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(597109656)クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (115)
【Fターム(参考)】