説明

水性結合剤又はサイジング組成物

ガラスなどのSiO含有基材とポリプロピレン(強化プラスチックにおいて特に有用)などのマトリックスポリマーとの間の結合で、向上した加水分解安定性を示す結合剤又はサイジング組成物が提供される。少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤、酸又は無水物改質ポリオレフィン、及びエポキシ官能性化合物を含有する水系組成物が提供される。本組成物は、ガラスとポリマーとの間に強力な結合を提供するためのガラス結合剤又はサイジング組成物(sizing)として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水性結合剤又はサイジング組成物。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン類及びその他のポリマー類は多くの場合、それらの剛性及び引張強度を増大させるために、ガラス繊維類と共に充填される。ガラスとマトリックスポリオレフィン樹脂との間の結合は、強化効果を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ガラス強化ポリオレフィン複合材料が、暑く、湿った環境にさらされると、ガラスマトリックス結合が損なわれ、したがって、複合材料の剛性及び引張強度が劣化する。これは多くの場合、加水分解安定性と呼ばれ、強化プラスチックの重要事項である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ガラスなどのSiO含有基材とポリプロピレンなどのポリマーマトリックス樹脂との間の結合において向上した加水分解安定性を示す結合剤又はサイジング組成物に関する。少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤、及び酸又は無水物改質ポリオレフィン、並びにエポキシ官能性化合物を含有する水系組成物が提供される。本組成物は、ガラス(例えば、ガラス繊維)とポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)との間に強力な結合を提供するためのガラス結合剤又はサイジング組成物(sizing)として有用である。本サイジングがガラスに適用された場合、ガラスとポリプロピレンとの間に形成される結合は強く、場合によっては、従来のガラスサイジング処方物よりも強いことが見出された。より重要なことに、結合は、多くのガラス強化プラスチック用途において重要な熱水浸漬にも耐えることが判明したことである。
【0005】
前記サイジング組成物は、(i)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、(ii)酸又は無水物改質ポリオレフィン(ここで、酸又は無水物改質ポリオレフィンは、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在する)と、(iii)2.0以下の官能値を有するエポキシ官能性化合物と、の水性混合物である。本発明によれば、エポキシ官能性化合物及び改質ポリオレフィンの重量分率の結果は、水性混合物の全固形分を基準にして、少なくとも0.150である。
【0006】
別の実施形態では、組成物は、(i)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、(ii)酸又は無水物改質ポリオレフィン(ここで、酸又は無水物改質ポリオレフィンは、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在する)と、(iii)エポキシ官能性化合物の水性混合物と、を含む。本実施形態では、エポキシ官能性化合物及び改質ポリオレフィン(b)の重量分率の結果は、水性混合物の全固形分を基準にして、0.150〜0.20である。
【0007】
本発明は更に、ポリマー基材と別の基材又は組成物との間の結合強度を向上させるためのサイジング組成物の利用を意図する。例えば、サイジング組成物は、高分子物品をガラスなどの別の基材へ結合するために用いてもよい。あるいは、サイジング組成物を用いて、高分子マトリックス中に分散させた化合物間の結合を向上させることができる。好ましい実施形態では、強化化合物は、高分子マトリックス全体に分散される。強化化合物は、(i)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、(ii)酸又は無水物改質ポリオレフィン(ここで、酸又は無水物改質ポリオレフィンは、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在する)と、(iii)2.0以下の官能値を有するエポキシ官能性化合物と、のサイジング組成物にて少なくとも部分的にコーティングされる。エポキシ官能性化合物及び改質ポリオレフィン(ii)の重量分率の結果は、水性混合物の全固形分を基準にして、少なくとも0.150である。あるいは、エポキシ官能性化合物が2より大きい官能値を有する場合、エポキシ官能性化合物(iii)及び改質ポリオレフィン(ii)の重量分率の結果は、組成物の全固形分を基準にして、0.15〜0.20である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記サイジング組成物は、(i)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、(ii)酸又は無水物改質ポリオレフィン(ここで、酸又は無水物改質ポリオレフィンは、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在する)と、(iii)2.0以下の官能値を有するエポキシ官能性化合物と、の水性混合物である。水性混合物の全固形分を基準にして、エポキシ官能性化合物及び改質ポリオレフィン(ii)の重量分率の結果が0.150〜0.20である場合は、エポキシ官能性化合物は、2.0より大きい官能値を有してもよい。
【0009】
アミノ官能性カップリング剤は、「シラン」として知られているシリコン系カップリング剤の範囲から選択してもよい。これらは、一般式X−SiーY(4−n)で表すことができ、式中、Xはアルキルアミノ基であり、Yは基材反応性基であり、nは好ましくは1であるが、2又は3であってもよい。好ましくは、Yは、加水分解してヒドロキシル基を水性混合物内に形成するアルコキシである。最も好ましくは、アルコキシ基はメトキシ又はエトキシ基である。アミノシランは、窒素を含む少なくとも1種の官能性化学基(例えば、一級、二級又は三級アミノ基)、及び加水分解後にシリコンに結合する少なくとも1つのヒドロキシル基を含むカップリング剤である。カップリング剤は、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン若しくはN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン又は任意のその他の類似のアミノシランなどのモノ−若しくはジ−アミン化アミノシランであってもよい。また、シリコン以外、例えば、チタン、クロム、ジルコニウムを含む遷移金属錯体をベースにし、かつ必要なアミノ基系官能値をも含むその他のカップリング剤は、単独で、又はシリコン系アミノシランと組み合わせて含まれてもよい。好ましいアミノ官能性カップリング剤は、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(SIA0610)(ジェレスト社(Gelest Inc.)(米国モリスビル(Morrisville))から入手可能)である。アミノ官能性カップリング剤は、単独で、又はその他のカップリング剤(アルキルアミノ基以外の官能基を有し得る)と組み合わされて使用されてもよい。
【0010】
アミノ官能性カップリング剤は一般に、水性混合物の全乾燥固形分を基準にして、約0.05重量%〜約23重量%の濃度で、サイジング組成物中に含まれる。好ましくは、アミノ官能性カップリング剤は、全乾燥固形分に対して、約0.2重量%〜約15重量%の量にて使用される。
【0011】
本発明の酸又は無水物改質ポリオレフィンは、ほとんどの場合、酸若しくは無水物改質ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせである。最も好ましくは、本発明のポリオレフィンは、酸若しくは無水物改質ポリプロピレン、酸若しくは無水物改質ポリプロピレン誘導体、又はこれらの混合物である。本発明の酸又は無水物改質ポリオレフィン構成成分はまた、酸又は無水物改質ポリオレフィンと未改質ポリオレフィンとの混合物であってもよい。好ましくは、エマルションが幾つかのポリオレフィンを含む場合、ポリオレフィンの大部分は、そこへグラフト化された少なくとも1種の酸又は無水物を有する。ポリオレフィン上にグラフト化された酸又は無水物は、特に、エチレン置換カルボン酸及び/又はポリカルボン酸及び/又は無水物、例えば、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸又はシトラコン酸(若しくは無水物)などであってもよい。最も好ましくは、本発明の酸又は無水物改質ポリオレフィンは、無水マレイン酸改質ポリプロピレンである。
【0012】
これらの酸又は無水物改質ポリオレフィンを水相中に分散させて、エマルション又は分散体を形成するための各種方法が知られている。これらのエマルションは、一般に、好適な塩基及び界面活性剤の存在下にて、圧力をかけて、かつポリオレフィンの融点より高い温度にて、所望量のポリオレフィン(単一又は複数)を混合することを包含する方法によって製造される。塩基は、グラフト化されたポリオレフィン又はポリオレフィンによって運ばれる酸性基(単一又は複数)を中和し、その後、好適な界面活性剤により中和されたポリオレフィン(単一又は複数)のエマルションを形成し、次に冷却される。
【0013】
本発明において有用な、好ましい酸又は無水物改質ポリオレフィン分散体の例は、ハイドロサイズ(Hydrosize)XM−10075、ハイドロサイズ(Hydrosize)PP2−01、ハイドロサイズ(Hydrosize)PP1−01(全て、ハイドロサイズ・テクノロジーズ社(Hydrosize Technologies, Inc.)(ノースカロライナ州ラーレー)から)及びマイケム・エマルション(Michem Emulsion)91735(マイケルマン社(Michelman, Inc.)(オハイオ州シンシナティ)から)などの無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン分散体である。
【0014】
本発明の酸又は無水物改質ポリオレフィンの量は、水性混合物の全固形分を基準にして、45〜80%の範囲であり、好ましくは50〜70%である。
【0015】
本発明の水性混合物は、1種以上の水溶性、分散性又は乳化性のエポキシ官能性化合物を含む。用語「エポキシ官能性化合物」を本明細書で使用する場合、少なくとも1つの反応性エポキシ基を含有する任意の有機化合物を意味する。本発明において有用なエポキシ化合物としては、例えば、(i)多価アルコール類若しくはチオール類のポリグリシジルエーテル類、例えば、ポリビスフェノールAエポキシ樹脂類若しくはエポキシノボラック樹脂、又は(ii)不飽和モノエポキシ化合物類とそれら自体との反応物(reaction)、又はその他化合物類、例えば、ホモポリマー化して、ポリ(アリルグリシジルエーテル)などのポリエポキシポリマー生成することができる不飽和モノエポキシ化合物が挙げられる。本発明において有用なエポキシ官能性化合物としては更に、EPI−REZ(商標)5520−W−60(ヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズ(Hexion Specialty Chemicals)(オハイオ州コロンバス)から入手可能)などのウレタン改質エポキシ樹脂も挙げられる。
【0016】
有用な市販のエポキシ化合物の非限定的例は、EPON(商標)826、828(ビスフェノールAエポキシ樹脂の一例)、1002、及びSU−3エポキシ樹脂(ヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズ(Hexion Specialty Chemicals)(オハイオ州コロンバス)から入手可能)である。
【0017】
好ましい実施形態では、エポキシ化合物は、一般に、170〜約4,000、好ましくは170〜1,000のエポキシド当量(EW)を有する。エポキシド当量(EW)は、エポキシ(オキシラン)官能基の1グラム当量を含有するエポキシ官能性化合物のグラム量として定義される。
【0018】
上記エポキシ化合物の水性分散体又はエマルションは、当業者によって、界面活性剤及び乳化剤を使用して調製することが可能である。エポキシ化合物の乳化及び分散に有用な界面活性剤の幾つかの非限定例としては、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンコポリマー(例えば、プルロニック(PLURONIC)(登録商標)F 108(BASF社(BASF Corporation)(ニュージャージー州フローラム・パーク(Florham Park))から入手可能))、エトキシル化アルキルフェノール(例えば、ローディア・ノヴェケア(Rhodia Novecare)(ニュージャージー州クランベリー(Cranbury))からのIGEPAL CA 630などのエトキシル化オクチルフェノキシエタノール)、フェノキシポリエチレン−オキシ(エタノール)、フェノキシ(エチレンオキシ)エタノール、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルグリコールエーテル(例えば、トリトン(TRITON)X−100(ダウケミカル社(The Dow Chemical Company)(ミシガン州ミッドランド)から入手可能))、ソルビトールエステルのエチレンオキシド誘導体(例えば、ツゥィーン(Tween)81(ユニケマ社(Uniqema)(デラウェア州ニューキャッスル)から入手可能))、及び/又はポリオキシエチル化植物油(例えば、エマルフォー(EMULPHOR)(登録商標)EL−719(ステパン社(Stepan Company)(イリノイ州ノースフィールド(Northfield))から入手可能))などのポリオキシアルキレンブロックコポリマーが挙げられる。当業者によって効果的に実施され得るように、好適な乳化剤は更に、エポキシ官能性オリゴマーの、ヒドロキシル官能性水溶性ポリマーとの反応により合成されてもよい。エポキシ化合物を乳化するための好ましい界面活性剤は、1マイクロメートル未満の粒子サイズの水性エポキシ分散体を生じるようなものである。本発明で有用な水性エポキシ分散体の例は、アンカレッツ(Ancarez)AR550(エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals, Inc.)(ペンシルベニア州アレンタウン))、ウィトコボンド(Witcobond)W−XW(ケムチュラ(Chemtura))、EPI−REZ(商標)3510−W−60及びEPI−REZ(商標)5003−W−55(ヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズ(Hexion Specialty Chemicals)(オハイオ州コロンバス))である。これらの分散体は通常、それぞれ0.5、0.5〜0.8マイクロメートルの分散体積平均粒子サイズとして入手可能である。
【0019】
エポキシ化合物としては、ブロックコポリマーの1つ以上のセグメントが少なくとも1つのエポキシ基を含有する、ブロックコポリマーを挙げてもよい。かかるエポキシ化合物は、例えば、グリシジルメタクリレートなどの不飽和モノエポキシ化合物を、少なくとも1種のその他のアニオン重合性化合物(イソステアリルメタクリレートなど)とアニオン重合することによって製造してもよい。エポキシ含有ブロック(bock)コポリマーは、本明細書で言及したものに限定されず、当該技術分野において既知の方法にしたがって製造してもよい。
【0020】
本発明のサイジング組成物によりコーティングされた基材又は充填剤を使用して、任意の高分子材料を当業者に既知の任意の方法で結合し又は補強することができる。例えば、本発明の組成物で処理されかつオーブン内で乾燥させたガラスシートをポリプロピレンフィルムへと積層させてもよい。その他の実施形態では、補強するために、充填剤などの基材を高分子マトリックス全体に分散させてもよい。
【0021】
好適な高分子マトリックス樹脂としては、ポリオレフィン、改質ポリオレフィン、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、ポリオキサイド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリ無水物(polyanhydrides)、ポリイミンエポキシド(polyiminesepoxies)、ポリアクリル酸、ポリビニルエステル、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂ポリマーブレンド、ポリマー合金及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
好ましくは、高分子マトリックスはポリオレフィンである。ポリオレフィンは、ホモポリマー、コポリマー(copopolymers)であることができ、かつ耐衝撃性改良剤を含有していてもあるいは含有していなくてもよい。このようなポリオレフィンの一例は、バゼル・プロファックス(Basell Profax)6523(バゼル(Basell)(オランダ、ホーフドロープ(Hoofddorp)))として市販されているポリプロピレンホモポリマーである。配合プロセス中、複合材料配合物は更に、カップリング剤、相溶化剤、接着促進剤、難燃剤、色素、酸化防止剤、潤滑剤、帯電防止剤及び充填剤(全て、ほとんどの場合、室温で固形である)などの従来から公知の添加剤を1種以上含んでもよい。配合プロセス中に使用される好適な市販の酸化防止剤は、商標名HP2215(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Inc.)(スイス、バーゼル))にて販売されている製品である。クロンプトン・ポリボンド(Crompton Polybond)3200(無水マレイン酸グラフトポリプロピレン)などのカップリング剤は、ケムチュラ(Chemtura)(ミシガン州ミドルベリ(Middlebury))から入手可能である。通常は、添加剤は、サイジング済強化繊維及びマトリックス樹脂の総重量の約0.1重量%〜約10重量%の量で適用され、好ましくは約0.2重量%〜約7.5重量%、最も好ましくは約0.25重量%〜約5重量%で添加される。
【0023】
本発明における使用に好適な基材材料又は強化化合物としては、アミノ官能性カップリング剤と強力な結合を形成可能な全ての材料が挙げられる。特に有用なのは、セラミックス、ガラス及び粘土などのSiO含有基材である。粘土の例は、モンモリロナイト粘土(例えば、サザン・クレイ・プロダクツ(Southern Clay Products)からのクロイサイト(Cloisite)Na+)である。本発明で有用なセラミックス及びガラス基材は、多くの異なった形状及びサイズにて入手可能である。例えば、ガラスは、ボロシリケートガラス(例えば、北米ショット(Schott North America)(ケンタッキー州ルーイビル)から入手可能なボロフロート(Borofloat)(登録商標)33)などの平面シート、繊維、ビーズ、中空球状物又は粉末の形態であってもよい。本発明で有用な繊維は、E−ガラス、Sーガラス(例えば、アドバンスト・グラスファイバー・ヤーンズ(Advanced Glassfiber Yarns)(サウスカロライナ州エーケン(Aiken))からのS−2ガラス(登録商標))及び石英ガラスファイバー(例えば、JPSガラス(JPS Glass)(サウスカロライナ州スレーター(Slater))からのアストロクオーツ(Astroquartz)(登録商標))(これらはプラスチックを補強するために一般的に使用されている)である。これらは、連続フィラメント及びチョップトストランドの両方で入手可能である。中空ガラス球状物(例えば、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール)からのS35スコッチライト(商標)ガラスバブル)は、有用な中空球状物の例である。有用なセラミック繊維の一例は、ネクステル(Nextel)(登録商標)312(3M社(3M Company)(ミネソタ州、セントポール)から入手可能)である。有用なSiO含有充填剤の例としては、ウォラストナイト(wollastonite)、雲母、タルク、ゼオライト(例えば、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール)からのゼオスフィアーズ(Zeospheres)(商標))、ヒュームドシリカ、石英ガラス、及びシリカエアロゲル(例えば、ダウ・コーニング社(ミシガン州ミッドランド)から入手可能なダウ・コーニング(登録商標)VM−2260エアロゲルビーズ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
サイジング組成物は、水性組成物を適用するための従来のコーティング方法を使用する、一般的な基材コーティングによって用いられてもよい。例えば、サイジンズ済ガラス繊維強化材料を提供するために、ガラス繊維などの繊維基材をコーティングする場合、繊維形成及びサイジング用途のための既知の方法を使用してもよい。繊維形成及びサイジング用途の例示的実施例は、米国特許第3,849,148号(図2)にて提供されている。ガラスビーズなどの粒子状基材をコーティングする場合、このような材料をコーティングする既知の方法を使用してもよい。例えば、高分子マトリックス内に分散するための強化化合物の利用のような、ある種の好ましい用途においては、コーティングされた強化化合物は、多くの場合、強化化合物を高分子マトリックスに添加する前に乾燥させることが好ましい。
【0025】
本発明のサイジング組成物の適用は、高分子マトリックスと基材との間の結合を向上させる。例えば、組成物は、「浸水試験」によれば、少なくとも0.5N/mmの剥離強度を示す。本試験において、ステップ2の後でかつステップ3にしたがって試験する前にサンプルがコンディショニングされることを除けば、サンプルは実施例に記載されている「試験手順」にしたがって調製かつ試験される。コンディショニング工程は、95℃の脱イオン水中で4日間、サンプルを浸漬することと、次にステップ3にしたがって試験する前にサンプルを室温まで冷却させること、から構成される。ステップ3の試験は、サンプルを温水から取り出して1時間以内に行なわれる。本発明を適用することによって得られた、向上した性質の別の指標としては、改良ASTM試験方法(剥離接着性)(試験用樹脂が、未改質ポリプロピレンであって、試験用基材がボロシリケートガラスである)によって示される、結合後3N/mm超及び浸水試験後0.5N/mm超の結合強度が挙げられる。
【実施例】
【0026】
試験手順
改良ASTM D3167剥離接着性試験方法
使用したガラス基板:ショット社(SCHOTT)製ボロフロート(Borofloat)(登録商標)33ボロシリケートガラス(6.4mm厚)、約25×100mmの片に切断したもの。
【0027】
このガラスは、一般に使用されるガラス繊維のE−ガラスに組成が類似している。
【0028】
マトリックスポリマーは、プラスチックフィルムをほぼ300マイクロメートルの厚さへと押し出すこと、及びこれらを20mm幅、100mm長の片へと切断することによって製造される。
【0029】
評価用に製造されたポリプロピレンフィルムは、次の2タイプであった。
【0030】
оフィルム#1:バゼル・プロファックス(Basell Pro-fax)6523(100%)
оフィルム#2:バゼル・プロファックス(Basell Pro-fax)6523(98%)+クロンプトン・ポリボンド(Crompton Polybond)3200(2%)
試験片の調製及び試験の手順は、次の通りである。
【0031】
ステップ1:
оメタノールにてガラスを拭き、残留物を除去する。
【0032】
оガラスの片端に20mmテープを巻く(コーティングからマスクするため)。
【0033】
оガラスをサイジング溶液に浸漬する。
【0034】
о圧縮空気にて直ちに吹き飛ばす(<2秒)。
【0035】
оテープを取り除く。
【0036】
оコーティングしたガラスをオーブン内で200℃にて4分間コンディショニングする。
【0037】
ステップ2:
оコーティングしたスライド・ガラスを250℃にて1分間予備加熱する。
【0038】
о取り外し、事前に切断された20mm×100mmの試験用フィルムを熱したガラス上へと配置する。
【0039】
оフィルム付ガラスをオーブン内に232℃で3.5分間置く。
【0040】
о取り外し、室温まで冷却する。
【0041】
о必要であれば、ステップ3の前に試験用サンプルをコンディショニングする。
【0042】
ステップ3:
оガラス上のフィルムに刃で、13mmの間隔を空けた切れ目を2箇所入れる(エッジ効果を排除する)。
【0043】
о非コーティング表面(接着なし)からフィルム先端をはがす。
【0044】
оASTM D 3167にしたがって剥離試験を実施する。
【0045】
(実施例1)
水性サイジング組成物は、7.14gのハイドロサイズ(Hydrosize)XM−10075を、3.64gのアンカレッツ(Ancarez)AR550と混合し、続いて38.7gの脱イオン水を加えることによって調製した。これに続いて、0.5gのA−1100アミノシランを徐々に添加した。基材をコーティングする前に、溶液の攪拌を少なくとも1時間維持した。試験に使用された基材は、ショット社(SCHOTT)製ボロフロート(Borofloat)(登録商標)33ボロシリケートガラス(6.4mm厚)(北米ショット社(SCHOTT North America, Inc.)(ケンタッキー州ルーイビル(Louisville))から入手可能)をほぼ25×100mmのサイズの片に切断したものであった。
【0046】
ガラス基材をコーティングかつ乾燥し、改良ASTM D3167剥離接着性試験方法にしたがってポリマーフィルムを積層させた。2つのタイプのポリマーフィルムを使用した。フィルム#1は、300マイクロメートルフィルムへと押し出し、20mm幅かつ100mm長のフィルム片へと切断したバゼル・プロファックス(Basell Pro-fax)6523ポリプロピレンであった。フィルム#2は、98部のバゼル・プロファックス(Basell Pro-fax)6523(バゼル(Basell)(オランダ、ホーフドロープ(Hoofddorp)))と、2部のクロンプトン・ポリボンド(Crompton Polybond)3200(マレイン化ポリプロピレン樹脂)(ケムチュラ社(Chemtura Corporation)(コネティカット州ミドルベリ))との乾燥ブレンドを、300マイクロメートルフィルムへ押し出し、20mm幅かつ100mm長のフィルム片に切断したものであった。処理済ガラスを230℃にて1.5分間予備加熱し、次にフィルム片をガラス表面へと押圧し、フィルム付ガラスをオーブンへ戻して更に3.5分間処理し、ポリマーフィルムを溶融させてガラスへ結合させることによって、これらのフィルムを処理済ガラスの上へ積層させた。サンプルを室温まで冷却した。初期結合強度測定値(表1中の「初期」)については、ポリマーフィルムは、サンプル調製(フィルム積層)から24時間以内に剥離試験を行った。室温でエージングさせた「RTエージング」サンプルについては、剥離接着力試験前に、積層サンプルは23℃及び相対湿度10%にて92時間維持した。結合の加水分解安定性(表1中の「水エージング」)の試験については、サンプルは、脱イオン水(フィルム#1は87時間、フィルム#2は97時間、95℃にてコントロールされた)中での浸水試験に供した。サンプルを水中から取り出し、室温まで冷却させ、布で軽くたたいて乾燥させ、水浸漬から取り出してから1時間以内に、剥離接着性を試験した。このサイジング組成物の結果は、表2に示す。
【0047】
(実施例2)
使用したハイドロサイズ(Hydrosize)XM−10075の量が9.29gであるとともに、使用されたアンカレッツ(Ancarez)AR550の量が4.55gであった以外は、実施例1と同様にして、水性サイジング組成物を調製、処理及び試験した。これら2つの分散体(dispersions)の固形分%が異なることから、サイジング組成物の最終固形分を10重量%レベルに維持するために、わずか37.9gの水を加えた。
【0048】
(実施例C1〜C5)
ハイドロサイズ(Hydrosize)XM−10075、アンカレッツ(Ancarez)AR550、A−1100及び水を表1に示すように使用した以外は、実施例1と同様にして、比較実施例C1〜C5を調製、処理及び試験した。
【0049】
(実施例C6)
最初に11.14gのハイドロサイズ(Hydrosize)XM−10075を37.8gの脱イオン水と混合し、次に1.1gのA−1100アミノシランを混入することによってサイジング組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、比較実施例C6を調製、処理及び試験した。この組成物の最終固形分もまた、10%であった。
【0050】
【表1】

【0051】
シランA−1100:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GEシリコーン(GE Silicones)から入手可能)
ハイドロサイズ(Hydrosize)(登録商標)XM−10075:無水物改質ポリプロピレン分散体(ハイドロサイズ・テクノロジーズ社(Hydrosize Technologies, Inc.)から入手可能)
アンカレッツ(Ancarez)AR550:エポキシポリマー/オリゴマー分散体(エア・プロダクツ(Air Products)から入手可能)
【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、
(b)酸又は無水物改質ポリオレフィンであって、酸又は無水物改質ポリオレフィンが、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在するものと、
(c)2.0以下の官能値を有するエポキシ官能性化合物であって、エポキシ官能性化合物及び構成成分(b)の改質ポリオレフィンの重量分率の結果が、水性混合物の全固形分を基準にして、少なくとも0.150であるものと、からなる水性混合物を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、脱イオン水に95℃で4日間浸漬後に改良ASTM D3167法で少なくとも0.5N/mmの剥離強度を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシ官能性化合物が、ポリビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、又はブロックコポリマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミノ官能性カップリング剤が、一般式X−SiーY(4−n)で表され、式中、Xはアルキルアミノ基であるとともに、Yは基材反応性基であり、かつnが1〜3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミノ官能性カップリング剤がγ−アミノプロピルトリエトキシシランである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン含有化合物が、無水マレイン酸改質ポリオレフィン又は無水マレイン酸改質ポリプロピレンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(a)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、
(b)酸又は無水物改質ポリオレフィンであって、酸又は無水物改質ポリオレフィンが、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在するものと、
(c)エポキシ官能性化合物であって、エポキシ官能性化合物及び構成成分(b)の改質ポリオレフィンの重量分率の結果が、水性混合物の全固形分を基準にして、0.150〜0.20であるものと、からなる水性混合物を含む組成物。
【請求項8】
前記組成物が、脱イオン水に95℃で4日間浸漬後に改良ASTM D3167法で少なくとも0.5N/mmの剥離強度を示す、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記エポキシ官能性化合物が、ポリビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、又はブロックコポリマーから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記アミノ官能性カップリング剤が、一般式X−SiーY(4−n)で表され、式中、Xはアルキルアミノ基であるとともに、Yは基材反応性基であり、かつnが1〜3である、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記アミノ官能性カップリング剤がγ−アミノプロピルトリエトキシシランである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリオレフィン含有化合物が、無水マレイン酸改質ポリオレフィン又は無水マレイン酸改質ポリプロピレンから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
(a)高分子マトリックスと、
(b)(i)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、(ii)酸又は無水物改質ポリオレフィン(酸又は無水物改質ポリオレフィンが、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在するもの)と、(iii)2.0以下の官能値を有するエポキシ官能性化合物であって、エポキシ官能性化合物及び構成成分(ii)中の改質ポリオレフィンの重量分率の結果が、水性混合物の全固形分を基準にして、少なくとも0.150であるものと、のサイジング組成物によって高分子マトリックスに結合した基材と、を含む物品。
【請求項14】
前記基材が、高分子マトリックス全体に分散された強化化合物である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記高分子マトリックスが、ポリオレフィン又はポリオレフィンのブレンドを含む、請求項13に記載の物品。
【請求項16】
前記高分子マトリックスが未改質ポリオレフィンであって、前記基材がボロシリケートガラスであり、かつ、前記物品が改良ASTM D3167法にて3N/mm超、及び脱イオン水に95℃で4日間浸漬した場合に0.5N/mm超の結合強度を示す、請求項13に記載の物品。
【請求項17】
(a)高分子マトリックスと、
(b)(i)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、(ii)酸又は無水物改質ポリオレフィン(酸又は無水物改質ポリオレフィンが、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在するもの)と、(iii)エポキシ官能性化合物であって、エポキシ官能性化合物及び改質ポリオレフィン(ii)の重量分率の結果が、水性混合物の全固形分を基準にして、0.150〜0.20であるものと、からなるサイジング組成物によって高分子マトリックスに結合した基材と、を含む物品。
【請求項18】
前記基材が、高分子マトリックス全体に分散された強化化合物である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記高分子マトリックスが、ポリオレフィン又はポリオレフィンのブレンドを含む、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記高分子マトリックスが未改質ポリオレフィンであって、前記基材がボロシリケートガラスであり、かつ、前記物品が改良ASTM D3167法にて3N/mm超、及び脱イオン水に95℃で4日間浸漬した場合に0.5N/mm超の結合強度を示す、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
(i)少なくとも1種のアミノ官能性カップリング剤と、(ii)酸又は無水物改質ポリオレフィン(酸又は無水物改質ポリオレフィンが、水性混合物の全固形分含量を基準にして少なくとも45重量%の量で存在するもの)と、(iii)2.0以下の官能値を有するエポキシ官能性化合物であって、当該エポキシ官能性化合物及び構成成分(ii)の改質ポリオレフィンの重量分率の結果が、水性混合物の全固形分を基準にして、少なくとも0.150であるものと、からなる水性サイジング組成物により、基材をコーティングすることを含む方法。
【請求項22】
前記基材が、SiO含有基材、繊維、ビーズ、中空球状物、粉末又はこれらの組み合わせから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基材が強化化合物であり、かつ前記方法が、強化化合物を高分子マトリックスに添加する前に、コーティングした強化化合物を乾燥することを更に含む、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2011−500944(P2011−500944A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531173(P2010−531173)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/080677
【国際公開番号】WO2009/055403
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】