説明

水性複合粒子分散液を製造するための方法

重合することができないシラン化合物を使用した水性複合粒子分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体および微細無機固体で構成された粒子の水性分散液(水性複合粒子分散液)を製造するための方法において、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体に分散させ、少なくとも1つの分散した微細無機固体および少なくとも1つの分散助剤の存在下で少なくとも1つの遊離ラジカル重合開始剤を使用して遊離ラジカル水性乳化重合法によって重合する方法であって、
a)無機固体は、0nmより大きく、100nm以下の平均粒径を有し、
b)モノマー100質量部当たり1〜1000質量部の無機固体が使用され、
c)モノマー100質量部当たり0.01〜10質量部のケイ素含有化合物(シラン化合物)が使用され、シラン化合物は、Si−OH、または100℃以下の温度にて脱イオン水中で加水分解してSi−OHもしくはSi−O−Si基を形成する少なくとも1つのSi−OH基または少なくとも1つの官能基を有し、シラン化合物は、遊離ラジカル共重合性エチレン性不飽和基を有さず、
d)無機固体の少なくとも一部が、固体の水性分散液の形で、水性重合媒体における初期充填物に含められ、次いで
e)シラン化合物の少なくとも一部が、5〜240分にわたって水性重合媒体に計量供給され、続いて
f)場合により、20質量%以下のモノマーが水性重合媒体に添加され、遊離ラジカル重合され、続いて
g)無機固体の残留物、シラン化合物の残留物、モノマーの残留物または全量が、重合条件下で水性重合媒体に計量供給される方法に関する。
【0002】
本発明は、また、本発明の方法によって得られる水性複合粒子分散液およびそれらの使用、ならびに水性複合粒子分散液から得られる複合粒子粉体およびそれらの使用に関する。
【0003】
水性複合粒子分散液は、広く認識されている物体である。それらは、ポリマーマトリックスと称する複数の変性重合体鎖からなる重合体コイルと、微細無機固体粒子(複合粒子)とを水性分散媒に分散して含む流体系である。複合粒子の平均粒径は、一般に、10nm〜100nmの範囲、しばしば50nm〜400nmの範囲、往々にして100nm〜300nmの範囲である。
【0004】
複合粒子およびそれらを水性複合粒子分散液の形で製造するための方法、ならびにそれらの使用は、当業者に既知であり、例えば、明細書US−A3,544,500、US−A4,421,660、US−A4,608,401、US−A4,981,882、EP−A104498、EP−A505230、EP−A572128、GB−A2227739、WO01/18081、WO01/29106、WO03/000760およびWO06/072464、ならびにLong et al.,Tianjin Daxue Xuebao 1991,4,pp. 10−15、Bourgeat−Lami et al.,Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1996,242,pp. 105−122、Paulke et al.,Synthesis Studies of Paramagnetic Polystyrene Latex Particles in Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers,pp. 69−76、Plenum Press,New York,1997およびArmes et al.,Advanced Materials 1999,11,No.5,pp. 408−410に開示されている。
【0005】
本発明に関連する先行技術は、以下の通りである。
【0006】
Van Herk et al.in Macromolecules 2006,39,pp. 4654−4656には、乳化剤が存在しない条件下での「供給不足」乳化重合法と呼ばれるものによって、シランモノマーで共有結合変性された層状ケイ酸塩を含む層状ケイ酸塩をラテックス粒子に封入することが開示されている。層状ケイ酸塩は、そこで、ジクロロメタンにて変性され、複数の処理工程を介して処理されてから乳化重合に導入される。
【0007】
Bourgeat−Lami et al.in Progress in Solid State Chemistry 2006,34,pp. 121−137には、トルエン中層状ケイ酸塩の疎水共有結合変性、ならびにそれらの精製およびその後の乳化重合への導入が記載されている。
【0008】
WO02/24756には、懸濁重合およびミニエマルジョン重合における疎水化層状ケイ酸塩の使用が開示されている。
【0009】
また、WO02/24758には、乳化重合における「易変性」疎水化層状ケイ酸塩の使用が開示されているが、具体的な変性は記載されていない。
【0010】
US−A2004/77768には、有機シラン化合物を用いたシリカゾルのシラン処理が開示されている。シラン処理は、50℃未満の温度で有機シラン化合物の水溶液を使用して行われる。使用されるシリカゾルおよび有機シラン化合物に応じて、混合時間は3時間までであってよいが、5分未満、特に1分未満の混合時間が好ましい。得られたシラン処理シリカを下流の工程において有機バインダとブレンドすることができ、得られた結合混合物を広範な異なる応用分野に使用することができる。
【0011】
出願番号07107552.7の未公開欧州特許出願には、水性複合粒子分散液を製造するための、ケイ素含有基を含むエチレン性不飽和モノマーの使用が開示されている。
【0012】
本発明の目的は、非重合性有機ケイ素化合物を使用した安定的な水性複合粒子分散液の新たな製造方法を提供することであった。
【0013】
本発明の方法は、その全量が、水性複合粒子分散液に対して30質量%〜99質量%、有利には35質量%〜95質量%、特に有利には40質量%〜90質量%である例えば透明飲料水などの透明水、特に有利には脱イオン水を使用する。本発明によれば、水の少なくとも一部が該方法の工程d)において重合容器内の初期充填物に含められ、残留物が該方法の続く工程e)からg)の少なくとも1つに計量供給される。有利には、該方法の工程f)およびg)、好ましくは該方法の工程g)において水の残留物が添加される。
【0014】
本発明の方法に好適な微細無機固体は、基本的にはすべて0より大きく、100nm以下の平均粒径を有するものである。
【0015】
本発明に従って使用することができる微細無機固体は、基本的には、金属、金属酸化物および金属塩などの金属化合物、ならびに半金属化合物および非金属化合物である。使用することができる微細金属粉末は、例えばパラジウム、銀、ルテニウム、プラチナ、金およびロジウムなどの貴金属コロイド、ならびにそれらの合金である。挙げることができる微細金属酸化物の例としては、非晶質および/またはそれらの異なる結晶変性形の二酸化チタン(例えば、Sachtleben Chemie GmbHからHombitec(登録商標)グレードとして市販される)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)(例えば、Akzo−NobelからNyacol(登録商標)SNグレードとして市販される)、酸化アルミニウム(例えば、Akzo−NobelからNyacol(登録商標)ALグレードとして市販される)、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄(II)(ウスタイト)、酸化鉄(III)(ヘマタイト)および酸化鉄(II/III)(マグネタイト)などの各種酸化鉄、酸化クロム(III)、酸化アンチモン(III)、酸化ビスマス(III)、酸化亜鉛(例えば、Sachtleben Chemie GmbHからSachotec(登録商標)グレードとして市販される)、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化銅(II)、酸化イットリウム(III)(例えば、Akzo−NobelからNyacol(登録商標)YTTRIAグレードとして市販される)、酸化セリウム(IV)(例えば、Akzo−NobelからNyacol(登録商標)CEO2グレードとして市販される)、ならびに例えば非晶質および/またはそれらの異なる結晶変性形の酸化ヒドロキシチタン(IV)、酸化ヒドロキシジルコニウム(IV)、酸化ヒドロキシアルミニウム(例えば、Condea−Chemie GmbHからDisperal(登録商標)グレードとして市販される)および酸化ヒドロキシ鉄(III)などのそれらのヒドロキシ酸化物がある。非晶質および/またはそれらの異なる結晶構造の以下の金属塩を基本的に本発明の方法に使用することができる。硫化鉄(II)、硫化鉄(II)、二硫化鉄(II)(パイライト)、硫化スズ(II)、硫化スズ(IV)、硫化水銀(II)、硫化カドミウム(II)、硫化亜鉛、硫化銅(II)、硫化銀、硫化ニッケル(II)、硫化コバルト(II)、硫化コバルト(III)、硫化マンガン(II)硫化クロム(III)、硫化チタン(II)、硫化チタン(III)、硫化チタン(IV)、硫化ジルコニウム(IV)、硫化アンチモン(III)および硫化ビスマス(III)などの硫化物、水酸化スズ(II)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄(II)および水酸化鉄(III)などの水酸化物、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウムおよび硫酸鉛などの硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ジルコニウム(IV)、炭酸鉄(II)および炭酸鉄(III)などの炭酸塩、オルトリン酸リチウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛、オルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸アルミニウム、オルトリン酸スズ(III)、オルトリン酸鉄(II)およびオルトリン酸鉄(III)などのオルトリン酸塩、メタリン酸リチウム、メタリン酸カルシウムおよびメタリン酸アルミニウムなどのメタリン酸塩、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸亜鉛、ピロリン酸鉄(III)およびピロリン酸スズ(II)などのピロリン酸塩、リン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸亜鉛アンモニウムなどのアンモニウムリン酸塩、ヒドロキシルアパタイト[Ca5{(PO43OH}]、オルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)およびオルトケイ酸ジルコニウム(VI)などのオルトケイ酸塩、メタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウムおよびメタケイ酸亜鉛などのメタケイ酸塩、特に、例えばOptigel(登録商標)SHおよびOptigel(登録商標)EX0482(Suedchemie AGの商標)、Saponit(登録商標)SKS−20およびHektorit(登録商標)SKS21(Hoechst AGの商標)およびLaponite(登録商標)RDおよびLaponite(登録商標)GS(Rockwood Holdings,Inc.の商標)などの自然剥離形のケイ酸ナトリウムアルミニウムおよびケイ酸ナトリウムマグネシウムなどの層状ケイ酸塩、アルミン酸リチウム、アルミン酸カルシウムおよびアルミン酸亜鉛などのアルミン酸塩、メタホウ酸マグネシウムおよびオルトホウ酸マグネシウムなどのホウ酸塩、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ジルコニウム(IV)、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸亜鉛およびシュウ酸アルミニウムなどのシュウ酸塩、酒石酸カルシウムなどの酒石酸塩、アセチルアセトン酸アルミニウムおよびアセチルアセトン酸鉄(III)などのアセチルアセトン酸塩、サリチル酸アルミニウムなどのサリチル酸塩、クエン酸カルシウム、クエン酸鉄(II)およびクエン酸亜鉛などのクエン酸塩、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウムおよびパルミチン酸マグネシウムなどのパルミチン酸塩、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛などのステアリン酸塩、ラウリン酸カルシウムなどのラウリン酸塩、リノール酸カルシウムなどのリノール酸塩、オレイン酸カルシウム、オレイン酸鉄(II)またはオレイン酸亜鉛などのオレイン酸塩が挙げられる。
【0016】
本発明に従って使用することができる重要な半金属化合物として、非晶質二酸化ケイ素および/または異なる結晶構造で存在する二酸化ケイ素を挙げることができる。本発明に従って好適な二酸化ケイ素は、市販されており、例えば、Aerosil(登録商標)(Degussa AGの商標)、Levasil(登録商標)(Bayer AGの商標)、Ludox(登録商標)(DuPontの商標)、Nyacol(登録商標)およびBindzil(Alzo−Nobelの商標)およびSnowtex(登録商標)(Nissan Chemical Industries,Ltd.の商標)として得ることができる。本発明に従って好適な非金属化合物は、例えば、コロイドグラファイトまたはダイアモンドである。
【0017】
特に好適な微細無機固体は、20℃および1.013バール(絶対)における水への溶解度が1g/l以下、好ましくは0.1g/l以下、特に0.01g/l以下のものである。二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ(IV)、酸化イットリウム、酸化セリウム(IV)、酸化ヒドロキシアルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、オルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)およびオルトケイ酸ジルコニウム(IV)などのオルトケイ酸塩、メタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウムおよびメタケイ酸亜鉛などのメタケイ酸塩、特に、例えばNanofil(登録商標)、Optigel(登録商標)、Closite(登録商標)(Suedchemie AGの商標)、Somasif(登録商標)、Lucentite(登録商標)(CBC Japan Co.,Ltdの商標)、Saponit(登録商標)、Hektorit(登録商標)(Hoechst AGの商標)およびLaponite(登録商標)(Rockwood Holdings,Inc.の商標)などを含む製品の自然剥離形のケイ酸ナトリウムアルミニウムおよびケイ酸ナトリウムマグネシウムなどの層状ケイ酸塩、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、二酸化チタン、ヒドロキシルアパタイト、酸化亜鉛および硫化亜鉛からなる群から選択される化合物が特に好ましい。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つの微細無機固体は、二酸化ケイ素、層状ケイ酸塩、酸化アルミニウム、酸化ヒドロキシアルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、酸化スズ(IV)、酸化セリウム(IV)、酸化イットリウム(III)、二酸化チタン、ヒドロキシルアパタイト、酸化亜鉛および硫化亜鉛からなる群から選択される。
【0019】
熱分解法(ヒュームド)シリカ、コロイドシリカおよび/または層状ケイ酸塩などのケイ素化合物が特に好適である。
【0020】
本発明の方法において、有利には、Aerosil(登録商標)、Levasil(登録商標)、Ludox(登録商標)、Nyacol(登録商標)およびBindzil(登録商標)グレード(二酸化ケイ素)、Nanofil(登録商標)、Optigel(登録商標)、Somasif(登録商標)、Cloisite(登録商標)、Lucentite(登録商標)、Saponit(登録商標)、Hektorit(登録商標)およびLaponite(登録商標)グレード(層状ケイ酸塩)、Disperal(登録商標)グレード(酸化ヒドロキシアルミニウム)、Nyacol(登録商標)ALグレード(酸化アルミニウム)、Hombitec(登録商標)グレード(二酸化チタン)、Nyacol(登録商標)SNグレード(酸化スズ(IV))、Nyacol(登録商標)YTTRIAグレード(酸化イットリウム(III))、Nyacol(登録商標)CEO2グレード(酸化セリウム(IV))およびSachtotec(登録商標)グレード(酸化亜鉛)の市販の化合物を使用することも可能である。
【0021】
複合粒子を製造するのに使用することができる微細無機固体は、水性重合媒体に分散されると、100nm以下の粒径を有する粒子を有する。問題なく使用される微細無機固体は、その分散粒子が0nmより大きく90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下または10nm以下およびそれらの間のすべての値の粒径を有するものである。有利には、50nm以下の粒径を有する微細無機固体が使用される。
【0022】
微細無機固体、および本発明の方法によって得られる複合粒子の粒径の測定は、本明細書の目的では、一般に、Malvern Instruments Ltdの高性能粒子選別装置(HPPS)を使用して、準弾性光散乱法(DIN ISO13321)によって行われる。
【0023】
微細固体の獲得可能性は、基本的に当業者に既知であり、それらは、例えば、気相における沈殿反応および化学反応によって得られる(この点については、E.Matijevic,Chem.Mater.5(1993)pp. 412−426;Ulmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Vol.A 23,pp. 583−660,Verlag Chemie,Weinheim,1992;D.F.Evans,H.Wennerstroem in The Colloidal Domain,pp. 363−405,Verlag Chemie,Weinheim,1994およびR.J.Hunter in Foundations of Colloid Scienece,Vol.1,pp. 10−17,Claredon Press、Oxford,1991参照)。
【0024】
本発明によれば、この場合、微細無機固体を粉末の形、またはゾルとして知られる固体の安定水性分散液の形で使用することができる。
【0025】
固体の安定水性分散液は、水性媒体における微細無機固体の合成中に直接製造され、または微細無機固体を水性媒体に分散させることによって製造されることが多い。前記微細無機固体を製造する方法に応じて、これは、例えば沈殿または熱分解法二酸化ケイ素、酸化アルミニウムの場合は直接行われ、あるいは例えば分散装置または超音波ソノトロードの適切な補助装置を使用することによって行われる。
【0026】
固体の安定水性分散液は、固体の水性分散液に対して0.1質量%以上の初期固体濃度において、さらに撹拌または振盪することなく、それらの製造、または沈殿微細固体の均一分散の1時間後も90質量%を超える量の本来の分散固体を分散形態で含む固体の水性分散液を指すものと理解される。
【0027】
初期固体濃度および1時間後の固体濃度の定量は、本明細書の目的では、分析用超遠心法によって行われる(この点については、S.E.Harding et al.,Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science,Royal Society of Chemistry,Cambridge,Great Britain 1992,Chapter 10,Analysis of Polymer Dispersions with an Eight−Cell AUC Multiplexer:High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques,W.Maechtle,pp. 147−175参照)。
【0028】
本発明によれば、使用される全エチレン性不飽和モノマーの100質量部(全モノマー量)に対して、0.1〜1000、有利には1〜100、特に有利には2〜70質量部の無機固体が使用される。
【0029】
本発明の方法の工程d)において、水性固体分散液を形成するために、無機固体の全量の少なくとも一部、有利には10質量%以上、30質量%以上または50質量%以上、特に有利には60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上または90質量%以上が水性重合媒体における初期充填物に含められる。該方法の工程g)において、無機固体の残留物が、重合条件下で水性重合媒体に、1回以上に分けて断続的に、または流動を一定にし、もしくは変化させながら連続的に、特に安定水性固体分散液の形で計量供給される。しかし、有利には、該方法の工程d)において、無機固体の全量が、水性重合媒体における初期充填物に水性固体分散液の形で含められる。無機固体が粉末形態で使用される場合、例えば攪拌機、分散装置または超音波ソノトロードの適切な補助装置を使用することによって微細固体粉末を水性重合媒体に分散させることが有利であり得る。
【0030】
水性複合粒子分散液を製造するために、使用される分散助剤は、一般には、微細無機固体粒子ばかりでなく、モノマー滴および水性重合媒体に分散した生成複合粒子を維持するため、製造される複合粒子の水性分散液の安定性を確保するものである。好適な分散助剤は、遊離ラジカル水性乳化重合を実施するのに広く使用される保護コロイドおよび乳化剤の両方を含む。
【0031】
好適な保護コロイドの詳細な説明が、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,Volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe[Macromolecular compounds],Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,pp. 411−420に示されている。
【0032】
好適な中性保護コロイドの例は、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、セルロース誘導体、デンプン誘導体およびゼラチン誘導体である。
【0033】
好適なアニオン性保護コロイド、すなわちその分散成分が少なくとも1つの負電荷を有する保護コロイドは、例えば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸およびそれらのアルカリ金属塩、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−スチレンスルホン酸および/または無水マレイン酸を含むコポリマー、および当該コポリマーのアルカリ金属塩、ならびに例えばポリスチレンなどの高分子量化合物のスルホン酸のアルカリ金属塩である。
【0034】
好適なカチオン性保護コロイド、すなわちその分散成分が少なくとも1つの正電荷を有する保護コロイドは、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミノ官能性アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを含むホモポリマーおよびコポリマーのN−プロトン化および/またはN−アルキル化誘導体である。
【0035】
当然、乳化剤および/または保護コロイドの混合物を使用することも可能である。分散助剤として、その相対分子量が、保護コロイドの相対分子量と異なり、通常1500g/mol以下である乳化剤を専ら使用するのが一般的である。表面活性物質の混合物が使用される場合、個々の成分が互いに相溶性を有していなければならず、疑わしい場合は、それをいくつかの予備実験によって確認することができる。好適な乳化剤の概要が、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,Volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe[Macromolecular compounds],Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,pp. 192−208に示されている。
【0036】
通例の非イオン性乳化剤は、例えば、エトキシ化モノ、ジおよびトリアルキルフェノール(EO単位:3〜50、アルキル:C4〜C12)およびエトキシ化脂肪アルコール(EO単位:3〜80;アルキル:C8〜C36)である。それらの例は、BASF AGのLutensol(登録商標)Aグレード(C1214脂肪アルコールエトキシレート、EO単位:3〜8)、Lutensol(登録商標)AOグレード(C1315オキソアルコールエトキシレート、EO単位:3〜30)、Lutensol(登録商標)ATグレード(C1618脂肪アルコールエトキシレート、EO単位:11〜80)、Lutensol(登録商標)ONグレード(C10オキソアルコールエトキシレート、EO単位:3〜11)およびLutensol(登録商標)TOグレード(C13オキソアルコールエトキシレート、EO単位:3〜20)である。
【0037】
通例のアニオン性乳化剤は、例えば、アルキル硫酸塩(アルキル:C8〜C12)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、硫酸モノエステルとエトキシ化アルカノール(EO単位:4〜30、アルキル:C12〜C18)およびエトキシ化アルキルフェノール(EO単位:3〜50、アルキル:C4〜C12)とのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル:C12〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ならびにアルキルアリールスルホン酸(アルキル:C9〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0038】
さらなるアニオン性乳化剤として好適であることが証明された化合物は、また、一般式III
【化1】

[式中、
8およびR9は、水素またはC4〜C24のアルキルであるが、双方が同時に水素であることはなく、
AおよびBは、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであり得る]の化合物である。一般式IIIにおいて、R8およびR9は、好ましくは、6〜18個の炭素、特に6、12および16個の炭素の直鎖状または分枝状アルキル基、あるいはHであり、R8およびR9がともに同時に水素であることはない。AおよびBは、好ましくは、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであり、ナトリウムが特に好ましい。特に有利な化合物IIIは、AおよびBがナトリウムであり、R8が12個の炭素の分枝状アルキル基であり、R9が水素またはR8である化合物である。往々にして、50〜90質量%のモノアルキル化製造物のフラクションを含む工業グレードの混合物、例えば、Dowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Companyの商標)が使用される。化合物IIIは、例えばUS−A4,269,749から広く知られ、市販されている。
【0039】
好適なカチオン活性乳化剤は、一般には、C6−C18アルキル、アラルキルまたはヘテロシクリル含有一級、二級、三級または四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩およびアミン酸化物の塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩である。例としては、酢酸ドデシルアンモニウムまたは対応する塩酸塩、様々なパラフィン酸2−(N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルエステルの塩化物または酢酸塩、塩化N−セチルピリジニウム、硫酸N−ラウリルピリジニウムおよび臭化N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、臭化N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、臭化N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、塩化N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム、ジェミニ界面活性剤の二臭化N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンが挙げられる。多くのさらなる例をH.Stache,Tensid−Taschenbush,Cari−Hanser−Verlag,Munich,Vienna,1981およびMcCutcheon’s,Emulsifiers & Detergents,MC Publishing Company,Glen Rock,1989に見いだすことができる。
【0040】
水性複合粒子分散液を製造するために、それぞれの場合に水性複合粒子分散液の全量に対して0.1質量%〜10質量%、しばしば0.5質量%〜7.0質量%、往々にして1.0質量%〜5.0質量%の分散助剤が往々にして使用される。乳化剤、特に非イオン性および/またはアニオン性乳化剤を使用するのが好ましい。アニオン性乳化剤の使用が特に有利である。
【0041】
本発明によれば、適切な場合には、無機固体の一部またはすべてを含む水性重合媒体の成分として、分散助剤の一部またはすべてを重合容器における初期充填剤に含めることが可能である[方法工程d]。あるいは、該方法の工程e)〜g)中に、分散助剤のすべてまたは残留物を水性重合媒体に供給することが可能である。その場合、分散助剤のすべてまたは残留物を1回以上に分けて断続的に、または流量を同一にし、もしくは変化させながら連続的に水性重合媒体に計量供給することができる。特に有利には、分散助剤の少なくとも一部が、該方法の工程g)における重合反応中に、特に水性モノマーエマルジョンの一部として同一の流量で連続的に計量供給される。
【0042】
本発明によれば、モノマー100質量部当たり0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、特に好ましくは0.1〜2質量部の少なくとも1つのケイ素含有化合物(シラン化合物)が使用され、シラン化合物は、少なくとも1つのSi−OH基、または100℃以下の温度にて脱イオン水中で加水分解してSi−OHもしくはSi−O−Si基を形成する少なくとも1つの官能性基を有し、シラン化合物は、遊離ラジカル共重合性エチレン性不飽和基を有さない。
【0043】
特に、少なくとも1つのC1−C4アルコキシまたはハロゲン基を有するシラン化合物は、100℃以下の温度にて脱イオン水中で完全加水分解する。非常に好適なシラン化合物は、その1gの量が100gの脱イオン水に導入されると、90℃で1時間以内に完全加水分解する。加水分解の過程を、例えばIR分光法により分光学的に、またはガスクロマトグラフィーによって監視することができる。
【0044】
シラン化合物として、一般式I
【化2】

[式中、
1〜R4は、OH、C1−C4アルコキシ、特にメトキシ、エトキシ、n−プロポキシまたはイソプロポキシ、n−ブトキシ、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、
非置換または置換C1−C30アルキル、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、ヘキサデシルなどの非置換アルキル、または例えばアミノ、アセトキシ、ベンゾイル、ハロゲン、シアノ、グリシジルオキシ、ヒドロキシ、イソシアナト、メルカプト、フェノキシ、ホスファトもしくはイソチオシアナト基によって置換された置換アルキル、
非置換または置換(対応する置換基についてはC1−C30アルキル参照)C5−C15シクロアルキル、特にシクロペンチルまたはシクロヘキシル、
アルキレンが特にエチレンまたはプロピレンであるC1−C4アルキレン−[O−CH2CH2x−O−Z、
非置換または置換(対応する置換基についてはC1−C30アルキル参照)C6−C10アリール、特にフェニル、ハロフェニルまたはクロロスルホニルフェニル、
非置換または置換(対応する置換基についてはC1−C30アルキル参照)C7−C12アラルキル、特にベンジルであり、
Zは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどのC1−C4アルキル、好ましくは水素またはメチルであり、
nは、0〜5の整数、好ましくは0または1、特に0であり、
xは、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、特に好ましくは2〜4の整数であり、
基R1〜R4の少なくとも1つがOH、C1−C4アルコキシまたはハロゲンである]の化合物、あるいは
一般式II
【化3】

[式中、
5〜R7は、R1〜R4について記載されているような非置換または置換C1−C30アルキル、非置換または置換C5−C15シクロアルキル、特にシクロペンチルまたはシクロヘキシル、非置換または置換C6−C10アリール、特にフェニル、非置換または置換C7−C12アラルキル、特にベンジルである]の化合物を使用するのが有利である。
【0045】
シラン化合物として、本発明により有利には、2−アセトキシエチルトリクロロシラン、2−アセトキシエチルトリエトキシシラン、2−アセトキシエチルトリメトキシシラン、アセトキシメチルトリエトキシシラン、アセトキシメチルトリメトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アセトキシプロピルメチルジクロロシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、m−N−(2−アミノエチル)アミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、p−N−(2−アミノエチル)−アミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチル−ジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリヒドロキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリヒドロキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ベンゾイルプロピルトリメトキシシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、[1,3−ビス(グリシジルオキシ)プロピル]テトラメチルジシロキサン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、o−ブロモフェニルトリメトキシシラン、m−ブロモフェニルトリメトキシシラン、p−ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、11−ブロモウンデシルトリメトキシシラン、11−ブロモウンデシルトリクロロシラン、tert−ブチルジフェニルメトキシシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、tert−ブチルトリクロロシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、3−トリクロロシリルプロピオン酸メチル、トリヒドロキシシリル酢酸ナトリウム塩、4−クロロブチルジメチルクロロシラン、2−クロロエチルジクロロメチルシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルジメチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリクロロシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリクロロシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、o−クロロフェニルトリクロロシラン、m−クロロフェニルトリクロロシラン、p−クロロフェニルトリクロロシラン、o−クロロフェニルトリエトキシシラン、m−クロロフェニルトリエトキシシラン、p−クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−[4−クロロスルホニルフェニル]エチルトリクロロシラン、2−[4−クロロスルホニルフェニル]エチルトリメトキシシラン、3−シアノブチルジメチルクロロシラン、3−シアノブチルメチルジクロロシラン、3−シアノブチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルジメチルクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジメトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、11−シアノウンデシルトリクロロシラン、11−シアノウンデシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、n−デシルジメチルクロロシラン、n−デシルメチルジクロロシラン、n−デシルトリクロロシラン、n−デシルトリエトキシシラン、ジ−n−ブチルジクロロシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、(ジクロロメチル)メチルジクロロシラン、1,3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、N,N−ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジエトキシシラン、2−(ジエチルホスホリル)エチルトリエトキシシラン、ジメチルジヒドロキシシラン、ジ−n−ヘキシルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、3,N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ジ−n−オクチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジフルオロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、ドコシルトリクロロシラン、ドデシルジメチルクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、3−N−エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、3−N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、エチルジメチルクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、m−エチルフェネチルトリメトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘプチルメチルジクロロシラン、n−ヘプチルトリクロロシラン、n−ヘキサデシルトリクロロシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、n−ヘキシルトリクロロシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、イソブチルジメチルクロロシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、イソブチルトリクロロシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルジメチルクロロシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、イソオクチルトリクロロシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソプロピルジメチルクロロシラン、イソプロピルメチルジクロロシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)]プロピルトリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリフルオロシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、トリス(メトキシエトキシ)メチルシラン、n−オクタデシルジメチルクロロシラン、n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、n−オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウム塩化物、n−オクタデシルメトキシジクロロシラン、n−オクタデシルメチルジクロロシラン、n−オクタデシルメチルジエトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、S−(オクタノイル)−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルメトキシシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリクロロシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、2−フェニルエチルトリクロロシラン、2−フェニルエチルトリメトキシシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、3−(N−フェニルアミノ)−プロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−プロピルジメチルクロロシラン、n−プロピルメチルジクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、テトラ−n−プロポキシシラン、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、トリ−tert−ブトキシヒドロキシシラン、3−(2−スルホラニルオキシエトキシ)−プロピルトリエトキシシラン、3−(tert−ブチルオキシカルボニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(エチルオキシカルボニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−[(2−ヒドロキシポリエチレンオキシ)−カルボニルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−(トリエトキシシリルプロピル)ジヒドロ−3,5−フランジオン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヒドロキシスルホニル)プロピルトリヒドロキシシラン、3−(メチルホスホニル)プロピルトリヒドロキシシラン、トリイソプロピルシラン、N−[(5−トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキシペンチル]カプロラクタム、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン三酢酸三ナトリウム塩、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩化物、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルフルオロシラン、トリメチルヨードシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチル−n−プロポキシシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニルヒドロキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジ−n−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを使用することが可能である。本発明によれば、シラン化合物の混合物を使用することも可能であることが理解されるであろう。
【0046】
シラン化合物として、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよび/または1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンを使用することが特に好適である。
【0047】
該方法の工程e)において、シラン化合物の少なくとも一部が、5〜240分間、有利には30〜120分間、特に有利には45〜90分間にわたって水性重合媒体に計量供給される。この計量供給は、有利には同一の連続流量で行われる。該方法の工程e)において、本発明によれば、シラン化合物の全量に対して、0.1質量%〜100質量%、有利には5質量%〜70質量%、特に有利には10質量%〜50質量%のシラン化合物が、重合媒体に計量供給される。
【0048】
この場合、シラン化合物をそのまま、または水性もしくは有機媒体に溶解させて使用することができる。有利には、シラン化合物は、さらなる溶媒を用いることなくそのまま使用される。
【0049】
概して、該方法の工程e)は、20℃以上の温度、有利には50〜100℃の温度、特に有利には60〜100℃、特に有利には75〜95℃の温度で水性重合媒体を用いて行われる。
【0050】
該方法の工程g)において、シラン化合物の残留物を水性重合媒体に、1回以上に分けて断続的に、または流動を一定にし、もしくは変化させながら連続的に計量供給することができる。特に有利には、シラン化合物の計量供給は、該方法の工程g)における重合反応中に、特に水性モノマーエマルジョンの一部として同一流量で連続的に行われる。
【0051】
本発明によれば、好適なエチレン性不飽和モノマーとしては、水性媒体中で容易に遊離ラジカル重合し、水性乳化重合から当業者に熟知されているあらゆる当該モノマーが挙げられる。これらとしては、なかでも、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレンもしくはビニルトルエンなどのビニル芳香族モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、ラウリル酸ビニルおよびステアリン酸ビニルなどのビニルアルコールとC1−C18モノカルボン酸とのエステル、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などの好ましくはC3−C6α,β−モノエチレン性不飽和モノおよびジカルボン酸と一般にはC1−C12、好ましくはC1−C8、特にC1−C4アルカノールとのエステル、例えば特に、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチルおよび2−エチルヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、マレイン酸ジメチルおよびマレイン酸ジ−n−ブチル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル、ならびにC4-8共役ジエン、例えば1,3−ブタジエンおよびイソプレンが挙げられる。これらのモノマーは、一般には、全モノマー量に対して通常50質量%以上、80質量%以上または90質量%以上の割合を占める主要モノマーを構成する。概して、これらのモノマーは、標準的な条件下[20℃、1気圧(絶対)]で中程度または低い水溶解性を有する。
【0052】
ポリマーマトリックスのフィルムの内部強度を慣例的に高めるさらなるモノマーは、通常、少なくとも1つのヒドロキシル、N−メチロールもしくはカルボニル基、または少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を含む。ここでの例は、2つのビニル基を有するモノマー、2つのビニリデン基を有するモノマー、および2つのアルケニル基を有するモノマーである。この文脈で特に有利なのは、二価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルであり、なかでもアクリル酸およびメタクリル酸が好適である。2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するこの種のモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ならびにジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートである。メタクリル酸およびアクリル酸C1−C8ヒドロキシアルキルエステル、例えば、n−ヒドロキシエチル、n−ヒドロキシプロピルまたはn−ヒドロキシブチルアクリレートおよびメタクリレート、ならびにジアセトンアクリルアミドおよびアセチルアセトキシエチルアクリレートおよびメタクリレートなどの化合物もこの文脈で特に重要である。本発明によれば、前記モノマーは、各場合、全モノマー量に対して5質量%、往々にして0.1質量%〜3質量%、しばしば0.5質量%〜2質量%の量で重合に使用される。
【0053】
これらの他に、モノマーとして、さらに、少なくとも1つの酸基および/またはその対応するアニオンを含むエチレン性不飽和モノマーS、あるいは少なくとも1つのアミノ、アミド、ウレイドまたはN−複素環式基および/またはそのN−プロトン化もしくはN−アルキル化アンモニウム誘導体を含むエチレン性不飽和モノマーAを使用することが可能である。全モノマー量に対して、モノマーSまたはモノマーAの量は、それぞれ10質量%、しばしば0.1質量%〜7質量%、往々にして0.2質量%〜5質量%である。
【0054】
使用されるモノマーSは、少なくとも1つの酸基を含むエチレン性不飽和モノマーである。酸基は、例えば、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、リン酸および/またはホスホン酸基であってよい。当該モノマーSの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸、ならびにn−ヒドロキシアルキルアクリレートおよびn−ヒドロキシアルキルメタクリレートのリン酸モノエステル、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、少なくとも1つの酸基を含む前記エチレン性不飽和モノマーのアンモニウムおよびアルカリ金属塩を使用することも可能である。特に好適なアルカリ金属は、ナトリウムおよびカリウムである。当該化合物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸のアンモニウム、ナトリウムおよびカリウム塩、ならびにヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルのモノおよびジアンモニウム、ナトリウムおよびカリウム塩である。
【0055】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸をモノマーSとして使用するのが好ましい。
【0056】
モノマーAとしては、少なくとも1つのアミノ、アミド、ウレイドもしくはN−複素環式基および/またはそのN−プロトン化もしくはN−アルキル化アンモニウム誘導体を含むエチレン性不飽和モノマーが使用される。
【0057】
少なくとも1つのアミノ基を含むモノマーAの例は、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノ−n−ブチルアクリレート、4−アミノ−n−ブチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−イソ−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−イソ−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)TBAEMAとして市販される)、2−(N,N,−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)ADAMEとして市販される)、2−(N,N,−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)MADAMEとして市販される)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−tert−ブチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−tert−ブチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)プロピルアクリレートおよび3−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレートである。
【0058】
少なくとも1つのアミド基を含むモノマーAの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソ−プロピルアクリルアミド、N−イソ−プロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソ−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソ−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、ならびにN−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムである。
【0059】
少なくとも1つのウレイド基を含むモノマーAの例は、N,N’−ジビニルエチレン尿素および2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレート(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)100として市販される)である。
【0060】
少なくとも1つの複素環式基を含むモノマーAの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾールおよびN−ビニルカルバゾールである。
【0061】
モノマーAとして以下の化合物:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよび2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレートを使用するのが好ましい。
【0062】
水性反応媒体のpHに応じて、前記窒素含有モノマーAの一部またはすべてがN−プロトン化四級アンモニウムの形で存在することが可能である。
【0063】
窒素上に四級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーとして挙げることができる例としては、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT MC80として市販される)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレート塩化物(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)MADAMQUAT MC75として市販される)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレート塩化物、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT BZ80として市販される)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート塩化物(例えば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)MADQUAT BZ75として市販される)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレート塩化物、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレート塩化物、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリレート塩化物、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリレート塩化物、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレート塩化物、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレート塩化物、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレート塩化物、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレート塩化物、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリレート塩化物、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリレート塩化物、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレート塩化物、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレート塩化物、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレート塩化物および3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレート塩化物が挙げられる。当然、挙げられた塩化物の代わりに対応する臭化物および硫酸塩を使用することも可能である。
【0064】
2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレート塩化物および2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート塩化物を使用するのが好ましい。
【0065】
当然、前記エチレン性不飽和モノマーSおよび/またはBの混合物を使用することも可能である。
【0066】
少なくとも1つのケイ素官能基を含むモノマー(シランモノマー)、例えば、ビニルアルコキシシラン、例えば特に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(3−メトキシプロポキシ)シランおよび/またはビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、アクリロイルオキシシラン、例えば特に、2−(アクリロイルオキシエトキシ)トリメチルシラン、アクリロイルオキシメチルトリメチルシラン、(3−アクリロイルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロイルオキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシランおよび/または(3−アクリロイルオキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロイルオキシシラン、例えば特に、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジエトキシシランおよび/または(3−メタクリロイルオキシプロピル)メチルジエチルオキシシランをさらに加えることが往々にして有利であり得る。本発明により特に有利には、アクリロイルオキシシランおよび/またはメタクリロイルオキシシラン、特にメタクリロイルオキシシラン、例えば好ましくは(3−メタクリロリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジエトキシシランおよび/または(3−メタクリロイルオキシプロピル)メチルジエチルオキシシランが使用される。シランモノマーの量は、各場合、全モノマー量に対して10質量%以下、有利には0.01〜5質量%、特に有利には0.1〜2質量%である。
【0067】
この場合、該方法の工程f)およびg)において、すべての上記エチレン性不飽和モノマーを個別の流体として、または混合物として1回以上に分けて断続的に、または流量を同一にし、もしくは変化させながら連続的に計量供給することができる。有利には、エチレン性不飽和モノマーを、混合物として、特に有利には水性モノマーエマルジョンの形で添加する。
【0068】
特に有利には、エチレン性不飽和モノマーの組成は、それらの単独重合によって、100℃以下、好ましくは60℃以下、特に40℃以下、往々にして−30℃以下、しばしば−20℃以下または−10℃以下のガラス転移温度を有する重合体が得られるように選択される。
【0069】
ガラス転移温度は、通常、DIN53 765(示差走査熱測定、20K/分、中間点測定)に従って測定される。
【0070】
Fox(T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.1956[Ser.II]1,p. 123およびUllmann’s Encyclopaedie der Technischen Chemie,Vol.19,p. 18,4th edition,Verlag Chemie,Weinheim,1980)によれば、架橋の程度が高くないコポリマーのガラス転移温度Tgについては、以下の式
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+....xn/Tgn
[式中、x1、x2、....xnは、モノマー1、2、....nの質量分率であり、Tg1、Tg2、....Tgnは、各場合、モノマー1、2、....nの1つから合成された付加ポリマーのケルビン度単位のガラス転移温度である]で良好に近似される。大多数のモノマーのホモポリマーのTg値は、既知であり、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th ed.,Vol.A21,p. 169,Verlag Chemie,Weinheim,1992に掲載されており、ホモポリマーのガラス転移温度のさらなる情報源は、例えば、J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,1stEd.,J.Wiley,New York,1966;2ndEd.J.Wiley,New York,1975および3rdEd.J.Wiley,New York,1989によって構成される。
【0071】
本発明によれば、該方法の工程e)に続いて、場合により、20質量%以下、有利には1質量%〜15質量%、特に有利には2質量%〜10質量%のモノマーが、水性重合媒体に添加され、遊離ラジカル重合される。
【0072】
遊離ラジカル重合を開始するのに好適な開始剤としては、遊離ラジカル水性乳化重合を誘発することが可能なあらゆる遊離ラジカル重合開始剤(ラジカル開始剤)が挙げられる。開始剤は、基本的に、過酸化物およびアゾ化合物の両方を含むことができる。酸化還元開始剤系も当然好適である。使用される過酸化物は、基本的に、無機過酸化物、例えば、過酸化水素またはペルオキソ二硫酸塩、例えば、それらの一および二ナトリウムおよびカリウム塩またはアンモニウム塩を例とするペルオキソ二硫酸の一または二アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、あるいは有機過酸化物、例えば、tert−ブチル、p−メチルおよびクミルヒドロ過酸化物を例とするアルキルヒドロ過酸化物、ならびにジアルキルまたはジアルキル過酸化物、例えばジ−tert−ブチル過酸化物またはジクミル過酸化物であり得る。使用されるアゾ化合物は、主として、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)および2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩(Wako ChemicalsのV50に対応するAIBA)である。酸化還元開始剤系のための好適な酸化剤は、基本的に、上記過酸化物である。使用される、対応する還元剤は、低酸化状態の硫黄の化合物、例えば、アルカリ金属亜硫酸塩、例えば、亜硫酸カリウムおよび/またはナトリウム、亜硫酸水素アルカリ金属、例えば、亜硫酸水素カリウムおよび/またはナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えば、メタ重亜硫酸カリウムおよび/またはナトリウム、ホルムアルデヒド−スルホキシレート、例えば、カリウムおよび/またはナトリウムホルムアルデヒドースルホキシレート、脂肪属スルフィン酸のアルカリ金属塩、特にカリウム塩および/またはナトリウム塩、および硫化水素アルカリ金属、例えば、硫化水素カリウムおよび/またはナトリウム、多価金属の塩、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えば、ジヒドロキシマレイン酸、ベンゾインおよび/またはアスコルビン酸、ならびに還元糖、例えば、ソルボース、グルコース、フルクトースおよび/またはジヒドロキシアセトンであり得る。概して、使用される遊離ラジカル開始剤の量は、全体で、全モノマー量に対して0.1〜5質量%、有利には0.5〜2質量%である。
【0073】
重合反応の開始とは、遊離ラジカル開始剤による遊離ラジカルの形成後に水性重合媒体に存在するモノマーの重合反応の開始を指す。重合反応の開始は、重合条件下で遊離ラジカル開始剤を水性重合媒体に添加すること[方法工程g)]によって起こり得る。代替的な可能性は、例えば[方法工程e)およびf)]において、低温にて重合反応を開始するのに適さない条件下で、初期充填物に含まれるモノマーを含む水性重合媒体に遊離ラジカル開始剤の一部またはすべてを添加した後、水性重合混合物に重合条件を設定することである。ここで、重合条件とは、一般に、遊離ラジカル開始水性乳化重合が十分な重合速度で進行する温度および圧力を指す。それらは、特に、使用される遊離ラジカル開始剤に左右される。有利には、遊離ラジカル開始剤の性質および量、重合温度ならびに重合圧力は、遊離ラジカル開始剤が、3時間以下、特に有利には1時間以下、特に有利には30分以下の半減期を有すると同時に、重合反応を開始・維持するのに十分な開始遊離ラジカルを常に提供するように選択される。
【0074】
微細無機固体の存在下での遊離ラジカル水性乳化重合反応に好適な反応温度は、0〜170℃の全範囲を包含する。概して、使用される温度は、50〜120℃、往々にして60〜110℃、しばしば70〜100℃である。遊離ラジカル水性乳化重合を1atm(気圧)未満または以上の圧力で実施することができ、重合温度は、100℃を超えてよく、170℃までであり得る。重合は、好ましくは、高圧下でエチレン、ブタジエンまたは塩化ビニルなどの高揮発性モノマーBの存在下で実施される。この場合、圧力としては、1.2、1.5、2.5、10または15バールまたはそれ以上の値を採用することができる。乳化重合が大気圧未満の圧力で実施されるときは、950ミリバール、往々にして900ミリバール、しばしば850ミリバール(絶対)が設定される。遊離ラジカル水性乳化重合は、有利には、酸素の不在下で、特に不活性ガス雰囲気下、例えば窒素またはアルゴン下で1atm(絶対)にて実施される。
【0075】
この場合、遊離ラジカル開始剤を、基本的に、1回以上に分けて断続的に、または流量を同一にして、もしくは変化させながら連続的に計量供給することができる。遊離ラジカル開始剤の添加は、それ自体重要でなく、当業者に熟知されており、いくつかの予備実験で当業者により適切な重合系に適応され得る。
【0076】
モノマーが方法の工程f)において初期充填剤に導入される場合、それらは、遊離ラジカル開始剤の少なくとも一部を添加し、重合条件を少なくとも70質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に90質量%までの変換率に調整することによって重合される。
【0077】
続いて、無機固体の残留物、シラン化合物の残留物、およびすべてのモノマーの残留物が、重合条件下で、1回以上に分けて断続的に、または有利には、流量を一定にし、もしくは変化させながら連続的に、特に有利には流量を一定にしながら水性重合媒体に計量供給される。有利には、遊離ラジカル開始剤の少なくとも一部が、一定の流量で連続的に添加される。この場合、重合条件は、有利には、使用されるモノマーが、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、特に98質量%以上までの変換率で重合されるように選択される。
【0078】
基本的に、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのみならずアセトンの易水溶性有機溶媒を水性重合媒体に最小限の量で添加できることが本発明の方法にとって重要である。しかし、有機溶媒の添加量は、該方法の工程e)の終了時に、各場合、本発明により得られる水性複合粒子分散液における水の全量に対して10質量%以下、有利には5質量%以下、特に有利には2質量%以下になるような量であることが重要である。本発明によれば、当該溶媒が全く存在しないことが有利である。
【0079】
上記成分の他に、水性複合粒子分散液を製造するための本発明の方法において、場合により、重合によって得られる重合体の分子量を低減または制御するために遊離ラジカル鎖移動化合物を使用することも可能である。このタイプの好適な化合物としては、基本的に、脂肪族および/または芳香脂肪族ハロゲン化合物、例えば、塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、ヨウ化n−ブチル、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジル、有機チオ化合物、例えば、一級、二級または三級脂肪族チオール、例えば、エタンチオール、n−プロパンチオール、2−プロパンチオール、n−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、n−ペンタンチオール、2−ペンタンチオール、3−ペンタンチオール、2−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−2−ブタンチオール、n−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、3−ヘキサンチオール、2−メチル−2−ペンタンチオール、3−メチル−2−ペンタンチオール、4−メチル−2−ペンタンチオール、2−メチル−3−ペンタンチオール、3−メチル−3−ペンタンチオール、2−エチルブタンチオール、2−エチル−2−ブタンチオール、n−ヘプタンチオールおよびその異性体、n−オクタンチオールおよびその異性体、n−ノナンチオールおよびその異性体、n−デカンチオールおよびその異性体、n−ウンデカンチオールおよびその異性体、n−ドデカンチオールおよびその異性体、n−トリデカンチオールおよびその異性体、置換チオール、例えば2−ヒドロキシエタンチオール、芳香族チオール、例えば、ベンゼンチオール、オルト−、メタ−またはパラ−メチルベンゼンチオール、ならびにPolymer Handbook 3rdedition,1989,J.Brandrup and E.H.Immergut,John Wiley & Sons,Section II,pp. 133−141に記載されているすべての他の硫黄化合物、ならびに脂肪族および/または芳香族アルデヒド、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよび/またはベンズアルデヒド、不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸、非共役二重結合を有するジエン、例えばジビニルメタンもしくはビニルクロロヘキサン、または易抽出性水素原子を有する炭化水素、例えばトルエンが挙げられる。しかし、相互に相溶性を有する上記遊離ラジカル鎖移動化合物の混合物を使用することも可能である。使用される遊離ラジカル鎖移動化合物の全量は、場合により、全モノマー量に対して、一般に5質量%以下、しばしば3質量%以下、往々にして1質量%以下である。
【0080】
使用される固体の水性分散液の安定性に応じて、該方法の工程e)からg)を酸性、中性または塩基性pH範囲で実施することができる。層状ケイ酸塩を使用する場合、pHは、有利には5〜11、特に有利には6〜10である(それぞれのサンプルは20℃および1atmで測定される)。pH範囲の調整は、当業者に熟知されており、特に、塩酸、硫酸もしくはリン酸などの非酸化性無機酸、またはアンモニア、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどの無機塩基を用いて行われる。
【0081】
当然、本発明の方法によって得られる水性複合粒子分散液は、当業者に熟知されているさらなる任意の助剤、例えば、増粘剤、消泡剤、緩衝物質、防腐剤として既知のものなどを通例の量で含むこともできる。
【0082】
本発明の方法によって得られる水性複合粒子分散液は、全固体含有量が、通常、1質量%〜70質量%、往々にして5質量%〜65重合%、しばしば10質量%〜60質量%である。
【0083】
本発明によって得られる複合粒子は、一般に、10nmより大きく1000nm以下、往々にして25nm〜500nm、しばしば50nm〜250nmの粒径を有する。複合粒子の粒径の測定は、本明細書の文脈では、Malvern Instruments Ltdの高性能粒子選別装置(HPPS)を使用して、準弾性光散乱法(DIN ISO13321)によって行われる。
【0084】
本発明の方法によって得られる複合粒子は、異なる構造を有することができる。これらの複合粒子は、1種以上の微細無機固体粒子を含むことができる。微細無機固体粒子をポリマーマトリックスで完全に覆うことができる。しかし、微細無機固体粒子の一部をポリマーマトリックスで覆い、他をポリマーマトリックスの表面に配置させることも可能である。理解されるように、微細無機固体粒子の大部分をポリマーマトリックスの表面に結合させることも可能である。
【0085】
重合反応の完了後に水性重合媒体に残る残存量の未反応モノマーまたは他の易揮発性化合物を、水性複合粒子分散液の特性を不利に変化させることなく、水蒸気ストリッピングおよび/または不活性ガスストリッピングによって、あるいは例えば明細書DE−A4419518、EP−A767180またはDE−A3834734に記載されている化学的脱臭によって除去することができる。
【0086】
無機固体粒子を含む重合体フィルムを、本発明の方法によって得られる水性複合粒子分散液から簡単に製造することができる。無機固体粒子を含まない重合体フィルムと比較して、これらの重合体フィルムは、一般に、機械強度の向上、白化の減少、無機表面に対する接着性の向上、耐有機溶媒性の向上、ならびに耐引掻き性、耐ブロッキング性および熱安定性の向上を特徴とする。
【0087】
したがって、本発明の方法に従って製造された水性複合粒子分散液は、例えば、バインダとして、保護被膜を生成するために、接着剤の成分として、もしくはセメント配合物およびモルタル配合物を改質するために、または医学診断薬に特に好適である(例えば、K.Mosbach and L.Andersson,Nature 270(1977),pp. 259−261;P.L.Kronick,Science 200(1978),pp. 1074−1076;およびUS−A4,157,323参照)。また、複合粒子を様々な水性分散系における触媒として使用することもできる。
【0088】
本発明に従って得られる水性複合粒子分散液を単純な方法で(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥によって)乾燥させて、再分散可能な複合粒子粉体を形成することができる。これは、本発明に従って得られる複合粒子のポリマーマトリックスのガラス転移温度が50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、非常に好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上または100℃以上である場合に特に当てはまる。複合粒子粉体は、なかでも、プラスチックの添加剤として、トナー配合物の成分として、または電子写真用途における添加剤として、ならびにセメント配合物およびモルタル配合物における成分として好適である。
【0089】
本発明の方法は、遊離ラジカル共重合することができないシラン化合物を使用する水性複合粒子分散液への一段階および無溶媒接触を可能にする。また、本発明の水性複合粒子分散液から得られるフィルムは、破断荷重および/または破断点伸びの向上を特徴とする。フィルムは、無機固体の比較的均一な分布を示す。
【0090】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0091】
実施例
a)水性複合粒子分散液の製造
実施例1
還流コンデンサ、温度計、機械的攪拌機および計量装置が装着された2lの四口フラスコに、20〜25℃(室温)および1atm(絶対)にて窒素雰囲気下で撹拌(200回転毎分)しながら、489gの脱イオン水、粉末の形の200gのLaponite(登録商標)RDS層状ケイ酸塩(Rockwood Holdings,Inc.の商標;分離・分散状態での平均粒径:20〜50nm)を5分間にわたって充填した。層状ケイ酸塩を完全に分離させるために、初期充填物を15分間さらに撹拌し(200回転毎分)、次いで82℃に加熱した。続いて、供給ラインを介して、1.1gのn−オクチルトリメトキシシランを1時間にわたって連続的に計量供給した。次いで、40gの脱イオン水、2.1gの10質量%強度の水酸化ナトリウム水溶液および0.6gのペロオキソ二硫化ナトリウムからなる溶液を、さらなる個別の供給ラインを介して2分間にわたって添加し、5分間経過させた。続いて、反応混合物を85℃に加熱した。これと並行して、401gの脱イオン水、8.9gの45質量%強度のDowfax(登録商標)2A1の水溶液、18.4gの10質量%強度の水酸化ナトリウム水溶液、4gのメタクリル酸、118gのアクリル酸n−ブチル、60gのメタクリル酸メチル、16gのアクリル酸エチルおよび1.6gのn−オクチルトリメトキシシランからなる均一エマルジョンを供給物1として製造し、161gの脱イオン水と8.5gの10質量%強度の水酸化ナトリウム水溶液。2.4gの過酸化ナトリウムとの混合物を供給物2として製造した。加熱処理後、2つの供給物を同一の流量で同時に2時間にわたって連続的に計量供給した。最終的に、反応混合物を反応温度で30分間撹拌し、最後に室温まで冷却した。
【0092】
そのようにして得られた水性複合粒子分散液は、固体含有量が、水性複合粒子分散液の全質量に基づいて18.8質量%であった。
【0093】
概して、約1gの複合粒子分散液を、150℃の乾燥炉にて、約3cmの内径を有する開放アルミニウム坩堝内で一定の質量まで乾燥させることによって固体含有量を測定した。固体含有量を測定するために、それぞれの場合に2つの個別の測定を実施し、対応する平均値を求めた。
【0094】
複合粒子分散液のpHは9.4であった。
【0095】
概して、Wissenschaftlich−Technische−Werkstaetten(WTW)GmbHのMicropal pH538装置によって室温でpHを測定した。
【0096】
概して、Malvern Instruments Ltdの高性能粒子選別装置(HPPS)を使用して、準弾性光散乱法(DIN ISO13321)によって複合粒子の粒径を測定した。平均粒径は118nmであった。
【0097】
実施例2
0.2gのn−オクチルトリメトキシシランを初期充填物に含め、2.7gのn−オクチルトリメトキシシランをモノマーエマルジョンの一部として計量供給したこと以外は、実施例2を実施例1と同様にして製造した。
【0098】
そのようにして得られた水性複合粒子分散液は、固体含有量が水性複合粒子分散液の全質量に基づいて19.0質量%であった。
【0099】
複合粒子分散液のpHは9.1であった。
【0100】
平均粒径は128nmであった。
【0101】
実施例3
0.1gのn−オクチルトリメトキシシランおよび0.1gの3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを初期充填物に含め、1.5gのn−オクチルトリメトキシシランおよび1.0gの3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランをモノマーエマルジョンの一部として計量供給したこと以外は、実施例3を実施例1と同様にして製造した。
【0102】
そのようにして得られた水性複合粒子分散液は、固体含有量が水性複合粒子分散液の全質量に基づいて19.0質量%であった。
【0103】
複合粒子分散液のpHは8.9であった。
【0104】
平均粒径は122nmであった。
【0105】
分析用超遠心器を使用して、得られた複合粒子が1.13g/cm3の均一密度を有することを検出することも可能であった。層状ケイ酸塩固体の遊離粒子は検出不可能であった(この点については、S.E.Harding et al.,Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science,Royal Society of Chemistry,Cambridge,Great Britain 1992,Chapter 10,Analysis of Polymer Dispersions with an Eight−Cell AUC Multiplexer:High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques,W.Maechtle,pp. 147−175参照)。
【0106】
比較例1
n−オクチルトリメトキシシランの全量をモノマーエマルジョンの一部として供給物1に計量供給したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1を製造した。
【0107】
そのようにして得られた水性複合粒子分散液は、固体含有量が水性複合粒子分散液の全質量に基づいて18.3質量%であった。
【0108】
複合粒子分散液のpHは8.9であった。
【0109】
平均粒径は115nmであった。
【0110】
水性複合粒子分散液の固体含有量に基づいて約2質量%の遊離層状ケイ酸塩のフラクションを、分析用超遠心器を使用して検出可能であった。
【0111】
比較例2
n−オクチルトリメトキシシランを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2を製造した。
【0112】
そのようにして得られた水性複合粒子分散液は、固体含有量が水性複合粒子分散液の全質量に基づいて18.5質量%であった。
【0113】
複合粒子分散液のpHは9.0であった。
【0114】
平均粒径は103nmであった。
【0115】
水性複合粒子分散液の固体含有量に基づいて約10質量%の遊離層状ケイ酸塩のフラクションを、分析用超遠心器を使用して検出可能であった。
【0116】
比較例3
n−オクチルトリメトキシシランの全量を1分間にわたって層状ケイ酸塩に計量供給したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3を製造した。
【0117】
そのようにして得られた水性複合粒子分散液は、固体含有量が水性複合粒子分散液の全質量に基づいて18.7質量%であった。
【0118】
複合粒子分散液のpHは8.8であった。
【0119】
平均粒径は117nmであった。
【0120】
水性複合粒子分散液の固体含有量に基づいて約10質量%の遊離層状ケイ酸塩のフラクションを、分析用超遠心器を使用して検出可能であった。
【0121】
b)性能調査
破断荷重および破断点伸び
実施例1、2および3ならびに比較例1〜3の水性複合粒子分散液からフィルムを製造し、それらの破断荷重および破断点伸びを確認した。
【0122】
上記複合粒子分散液フィルムの破断−機械特性をDIN53504による引張試験で測定した。分散液フィルムの厚さは0.4〜0.5nmであり、引取速度は25.4mm/分であった。調査を開始する前に、対応する量の複合粒子分散液をテフロン支持体に塗布し、分散フィルムの形成に向けて、23℃および50%相対湿度の調節気候チャンバに14日間保管した。次いで、得られた複合粒子分散液フィルムをテフロン支持体から剥がした。以下の表に報告されている数字は、各場合、それぞれ5回の個別の測定の平均値である。
【0123】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体および微細無機固体で構成された粒子の水性分散液(水性複合粒子分散液)を製造するための方法であって、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体に分散させ、少なくとも1つの分散した微細無機固体および少なくとも1つの分散助剤の存在下で少なくとも1つの遊離ラジカル重合開始剤を使用して遊離ラジカル水性乳化重合法によって重合することで製造する方法において、
a)無機固体は、0nmより大きく、100nm以下の平均粒径を有し、
b)モノマー100質量部当たり1〜1000質量部の無機固体が使用され、
c)モノマー100質量部当たり0.01〜10質量部のケイ素含有化合物(シラン化合物)が使用され、前記シラン化合物は、少なくとも1つのSi−OH、または100℃以下の温度にて脱イオン水中で加水分解してSi−OHもしくはSi−O−Si基を形成する少なくとも1つの官能基を有し、かつ前記シラン化合物は、遊離ラジカル共重合性エチレン性不飽和基を有さず、
d)無機固体の少なくとも一部の量が、固体の水性分散液の形で、水性重合媒体に初充填され、次いで
e)シラン化合物の少なくとも一部の量が、5〜240分にわたって水性重合媒体に計量供給され、続いて
f)場合により、20質量%以下のモノマーが水性重合媒体に添加され、遊離ラジカル重合され、続いて
g)場合により残る無機固体の残留量、場合により残るシラン化合物の残留量、場合により残るモノマーの残留量または全量が、重合条件下で水性重合媒体に計量供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
工程d)において、無機固体の50質量%以上が初充填される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)において、無機固体の全量が初充填される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程e)が50〜100℃の温度で実施される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程e)において、シラン化合物の5質量%〜70質量%が計量供給される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
無機固体が、ケイ素を含有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱分解法シリカ、コロイドシリカおよび/または層状ケイ酸塩が無機固体として使用される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程e)の終了時に、水性重合媒体が、水の全量に対して10質量%以下の有機溶媒を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
シラン化合物として、一般式I
【化1】

[式中、
1〜R4は、OH、C1−C4アルコキシ、ハロゲン、非置換または置換C1−C30アルキル、非置換または置換C5−C15シクロアルキル、C1−C4アルキレン−[O−CH2CH2x−O−Z、非置換または置換C6−C10アリール、非置換または置換C7−C12アラルキルであり、
Zは、水素、C1−C4アルキルであり、
nは、0〜5の整数あり、
xは、1〜10の整数であり、
基R1〜R4の少なくとも1つがOH、C1−C4アルコキシまたはハロゲンである]の化合物、あるいは
一般式II
【化2】

[式中、
5〜R7は、非置換または置換C1−C30アルキル、非置換または置換C5−C15シクロアルキル、非置換または置換C6−C10アリール、非置換または置換C7−C12アラルキルである]の化合物が使用される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
シラン化合物として、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよび/または1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンが使用される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アニオン性および/または非イオン性乳化剤が分散助剤として使用される、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
モノマーの組成は、重合により、ガラス転移温度が60℃以下の重合体が得られるように選択される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法によって得られる複合粒子の水性分散液。
【請求項14】
バインダとしての、保護被膜を製造するための、接着剤の成分としての、セメント配合物およびモルタル配合物を改質するための、または医学診断薬における、請求項13に記載の複合粒子の水性分散液の使用。
【請求項15】
請求項13に記載の複合粒子の水性分散液を乾燥させることによって得られる複合粒子粉体。

【公表番号】特表2011−500931(P2011−500931A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530410(P2010−530410)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064075
【国際公開番号】WO2009/053317
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】