説明

水流交絡不織生地、その製造方法、および水流交絡不織生地を具備する吸収用品

不織生地は、1dtex以下の繊度と少なくとも30mmの長さとを有しかつ水流交絡によって結合された微細繊維を、重量で少なくとも50%備えている。この生地は、水流交絡前に梳毛されており、そして水流交絡によって穿孔される。この生地は、吸収用品における表面シートとして使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1dtex(デシテックス)以下の繊度(fineness)を有しかつ水流交絡によって結合された微細繊維からなる不織生地に関するものである。さらに、本発明は、不織生地を製造するための方法に関するものである。その上、本発明は、表面シート材料としての不織生地を備える吸収用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水流交絡もしくはスパンレーシング(spunlacing)は、1970年代に導入された技術である(例えば特許文献1参照)。この方法は、乾式もしくは湿式ウェブのいずれか一方の繊維ウェブを形成し、その後、繊維を、高圧力下で非常に細かい噴射水を用いて交絡することを伴うものである。噴射水のいくつかの列を繊維状ウェブに対して導く(それは移動可能なワイヤもしくは有孔ドラムによってサポートされている)。続いて、交絡繊維状ウェブを乾燥する。材料に使用される繊維は、天然繊維(特にセルロースパルプ繊維)、人工不連続繊維(合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、もしくは例えばビスコース、レーヨンまたはリオセルなどの再生不連続繊維)、およびパルプ繊維と不連続繊維との混合物であってもよい。水流交絡材料は、適切なコストに応じてかつ使用される繊維のタイプに応じて、高品質となるように生産可能であり、それらは、高い液体吸収性、液体拡散性、液体吸入性、軟度などの所望の特性を有する。これは、例えば、医療における使い捨て可能な材料として、また表面シート材料および吸収体などとしての衛生用品における使い捨て可能な材料として、家庭用もしくは工業用のワイピング材料(wiping material)として使用することもできる。
【0003】
生理用ナプキン、オムツ、パンツ型オムツ、失禁ガードなどの吸収用品における表面シート材料は、体液を、それを介して迅速にかつ蓄積するために下方にある吸収体の中へと拡散させかつ移動させるように設計されている。この移送が、素早く、方向的に調整され、かつ申し分のないようになるばなるほど、用品の表面は、より乾燥しかつより清潔となり、そして着用者によって体感される快適さを向上する。その液体処理能力を最大化しかつ特性を向上させるために、多くの場合、表面シートとして使用される不織生地を改良する必要がある(改良とは、例えば穿孔、波形付与、および/もしくは界面活性物質または軟化剤などの液体改質剤を用いる処理など行うことである)。不織生地の軟度は、機械的および/または化学的処理によって改良することができる。
【0004】
肌は、肌表面に接する繊維をたわませるために必要な力の変化に敏感である。繊維の曲げ剛性は、その繊度の関数である。したがって、所与のポリマーに関して、微細繊維において線形繊度を減少することは、それが有する軟度を増大させる傾向がある。スパンボンドおよびメルトブローン技術は、1dtex以下の繊度を有する細かい微細繊維を製造することに使用できる。微細繊維を備えた不織材料を製造するための他の技術もまた公知である。
【0005】
特許文献2には、吸収用品における表面シートとして有用な穿孔不織生地の製造方法が開示されており、ここでは、湿潤シートは、パルプ繊維と、7から30mmの長さおよび0.1〜0.8デニールの繊度を有する合成微細繊維との混合物を含む湿潤スラリーから形成される。シートは、水流交絡の影響を受ける。ウェブは、水流交絡の結果として、もしくは針を用いた穿孔によって、のいずれかのために穿孔される。
【0006】
特許文献3には、吸収用品における表面シートとして使用される複数の帯状穿孔ウェブが開示されている。このウェブは、異なる孔サイズを有する少なくとも二つの互いに異なる領域を有している。孔は、穿孔サポート部材上にウェブを配置すること、そして続いて、それを高い液圧にさらすこと(水流交絡を意味する)によって形成可能である。
【0007】
特許文献4には、水流交絡によって結合された、紡織繊維のウェブ、ポリマー微細繊維のネットおよびメルトブローン微細繊維からなる少なくとも一つのウェブからなる群から選択される一つの層を備えた不織複合材が開示されている。ウェブは、水流交絡によって穿孔されてもよく、そして異なるサイズの孔が形成されてもよい。生地は、吸収用品における表面シートとして使用されてもよい。
【0008】
特許文献5には、吸水性微細繊維と疎水性微細繊維との混合体を備えた吸収パンティライナーのための結合された被覆層および吸収層が開示されており、ここでは、吸水性微細繊維より多量の疎水性微細繊維は、被覆層の上面に配置される。
【特許文献1】カナダ特許第841 938号明細書(CA patent no.841 938)
【特許文献2】米国特許第6,270,623号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0125687号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 418 493号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0148969号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、依然として、軟度、液体吸収、および再湿潤などの特性に関して、(吸収材料における表面シートとして適した)不織生地を改良することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、微細繊維から構成され、かつ軟度、液体吸収および再湿潤のような特性を兼ね備え、これによって吸収用品における表面シート材料として特に有用となるようにされた不織生地を提供することである。本発明に基づく生地は、微細繊維を重量で少なくとも50%有しており、この微細繊維は、1dtex以下の繊度と、少なくとも30mm、好ましくは少なくとも32mm、そしてさらに好ましくは少なくとも35mmの長さとを有しておりかつ水流交絡によって結合されたものである。生地は、当該水流交絡によって穿孔される。
【0011】
本発明のある態様において、生地は、上記微細繊維の少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%を備えている。ある実施形態によれば、それは、100%の人工繊維から構成されており、パルプ繊維などの天然繊維を含んでいない。他の実施形態によれば、それは、100%の上記微細繊維から構成される。
【0012】
本発明のさらなる態様において、生地は、離散領域内に配置された少なくとも二つの異なるサイズの孔を備えている。少なくとも二つの異なるサイズの孔は、加工方向、または生地の横方向、または加工方向および横方向の両方向に繰り返されるパターンにおける生地の離散領域内に配置されてもよい。
【0013】
個々の孔のサイズは、0.1から8mm2、好ましく0.8から4mm2で変更可能である。穿孔生地の穿孔領域は、10%から50%、好ましくは20%から40%であってもよい。
【0014】
生地は、16から60g/m2、好ましくは20から40g/m2の坪量を有していてもよい。
【0015】
さらなる実施形態において、すべての微細繊維は、疎水性微細繊維である。
【0016】
生地は、湿潤剤を含んでいてもよい。
【0017】
本発明のある態様において、生地は、1.0dtexを超えかつ5.0dtexまでの繊度を有する人工繊維を重量で50%以下となるよう備えている。1.0dtexより大きい繊度を有する繊維は、主に、生地の片面に配置されており、一方で、生地の反対側には、微細繊維が主に含まれている。
【0018】
さらに本発明は、不織生地を製造する方法に関するものであり、この方法は、1.0dtex以下の繊度と少なくとも30mmの長さとを有する人工繊維を重量で少なくとも50%備える梳毛繊維状ウェブを形成するステップと、穿孔水流交絡不織生地を形成するために、水流交絡の際に、穿孔サポート部材を用いて梳毛繊維状ウェブを水流交絡すること、と、からなるステップを備えている。
【0019】
ある実施形態において、この方法は、水流交絡生地の離散領域内に配置された少なくとも二つの異なるサイズの穿孔を形成する水流交絡において、穿孔支援部剤を使用することを含んでいる。
【0020】
本発明のある態様において、この方法では、さまざまなサイズの穿孔を形成する穿孔サポート部材を使用しており、さまざまなサイズの孔は、加工方向、または生地の横方向、もしくは加工方向および横方向の両方向に繰り返されるパターンにおいて、水流交絡生地の離散領域内に配置される。
【0021】
本発明のさらなる実施形態において、この方法は、他の繊維と層状構造となるよう設けられている微細繊維を重量で少なくとも50%含んでおり、かつ1.0dtexより大きい繊度と少なくとも30mmの長さとを有する他の繊維を重量で50%以下となるよう含んでいる梳毛繊維状ウェブを形成するステップと、片側には主に微細繊維を、そしてその反対側には主に他の繊維を備えた水流交絡不織生地を形成するために梳毛ウェブを水流交絡するステップとを備えている。
【0022】
本発明のある態様において、梳毛繊維状ウェブは、70から120バールの水流交絡圧力を用いて水流交絡される。
【0023】
さらに本発明は、例えば生理用ナプキン、パンティライナー、失禁ガード、乳児用オムツ、パンツ型オムツ、および生理用ショーツなどの吸収用品に関するものであり、この用品は、吸収体の着用者に面する側に配置される表面シートを備えており、ここで、表面シートは、上で説明したような、梳毛され、水流交絡され、かつ穿孔された不織生地を備えている。
【0024】
ある実施形態において、表面シートは、表面シートの離散領域内に配置された少なくとも二つの異なるサイズの孔を備えている。相対的に大きいサイズの孔は、湿潤領域を形成するための用品の中央部に配置されてもよく、一方で、相対的に小さいサイズの孔は、湿潤領域の周囲領域に配置されてもよい。
【0025】
さらなる実施形態において、表面シートを形成する不織生地は、1.0dtexより大きい繊度と少なくとも30mmの長さとを有する他の繊維を重量で50%以下となるよう備えており、他の繊維は、主に、吸収体に面する表面シート側に配置されており、その一方で、着用者に面する側には、主に微細繊維が含まれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔規定〕
本明細書において使用する「微細繊維」という用語は、1.0dtex以下(0.9デニール以下に相当する)の繊度を有する小さな直径の繊維の太さを意味する。微細繊維は、例えば、レーヨン、リオセル、ビスコースなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、再生セルロース繊維などのポリマー材料からなる人工繊維である。
【0027】
「吸水性」という用語は、繊維に接する水性液(aqueous fluids)によって湿潤する繊維を意味する。繊維の湿潤度について、濡れ角(wetting angle)の点から見て説明する。
【0028】
特定の繊維材料の濡れ角を測定するための装置は、Cahn SFA-222 表面力解析システムによって実現可能である。このシステムを用いて測定するとき、水に対して90度より小さい接触角を有する繊維は、湿潤可能な「吸水性」繊維と呼ばれており、一方で、90度より大きい接触角を有する繊維は、「疎水性」繊維と呼ばれている。
【0029】
「梳毛ウェブ」という用語は、繊維を梳き不純物を除きかつ長さのそろった繊維を平行に揃えるユニットを経て送り出された基本的な長さの繊維から製造される繊維状ウェブを意味しており、ユニットは、一般的な加工方向に方向付けられた繊維状不織層を形成するために、不連続繊維を分離させるか、もしくは別々に細分化し、そして加工方向(MD)に一列にそろえる。
【0030】
「水流交絡」という用語は、乾式もしくは湿式のいずれか一方の繊維状ウェブを形成すること、および高圧化の非常に細かい噴射水を用いて繊維状ウェブを絡ませることを含む。噴射水のいくつかの列は、繊維状ウェブに対して方向付けられ、それは、移動可能なワイヤもしくは有孔ドラムによって維持される。
【0031】
本明細書において使用する「孔」という用語は、水流交絡中に形成される少なくとも0.1mm2の領域を有する孔を意味する。
【0032】
「吸収用品」という用語は、尿、大便および月経液などの体滲出液を吸収しかつ保持する、着用者の皮膚に対して配置される製品を意味する。本発明は、主に、使い捨て吸収用品に関するものであり、それは、使用後に、洗濯するかまたは他の方法によって、吸収用品として再生もしくは再利用されない用品であることを意味する。使い捨て吸収用品の一例として、例えば生理用ナプキン、パンティライナー、タンポンおよび生理用ショーツなどの女性用衛生製品、幼児および失調症の成人のためのオムツおよびパンツ型オムツ、失禁パッド、ならびにオムツインサートなどが挙げられる。
【0033】
〔本発明の詳細な説明〕
図1には、穿孔水流交絡不織生地を製造するための装置を概略的に示す。繊維からなるウェブ10は、ベルトコンベヤ11の上で、有孔ドラムの形態のサポート部材12および複数の多数のノズル13(それからウェブ10に対して高圧の噴射水が導かれる)を備えた水流交絡ステーションへと運ばれる。ノズルは、ウェブ10の幅を覆うように、ウェブ10を横切る列に配置される。噴射水は、繊維状ウェブを交絡すること、すなわち、繊維を絡み合わせることを実現する。
【0034】
水流交絡における圧力は、70から120バールの範囲内のものであることが好ましい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、繊維からなるウェブ10は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、かつ100%までの微細繊維を備えた梳毛ウェブであり、微細繊維は、1.0dtex以下の繊度と、少なくとも30mm、好ましくは少なくとも32mm、そしてさらに好ましくは少なくとも35mmの長さを有している。その上、微細繊維の最大長さは、70mmであることが好ましい。梳毛ウェブは、水流交絡ステーションに運ばれるとき、例えばいわゆる通気結合(through-air-bonding)によってわずかに結合されていてもよく、もしくは結合されていなくてもよい。
【0036】
微細繊維は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ならびにレーヨン、リオセル、およびビスコースなどの再生セルロース繊維である人工ポリマー材料からなる。好ましくは、それらは、ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリエステルなどの疎水性ポリマーからなる。適切なポリマーの一例として、ポリプロピレン(PP)およびポリエステル(PET)が挙げられる。
【0037】
微細繊維はまたはその少なくとも一部は、波形状繊維であってもよい。「波形状」という用語は、繊維が波形組織を有しており、そしてそのため完全に直線的ではないということを意味している。
【0038】
1.0dtexより大きくかつ5.0dtex以下の、好ましくは2〜4dtexの繊度を有するより粗い繊維の一部は、ある実施形態によれば、ウェブの中に存在してもよい。これらのより粗い繊維は、もし存在するならば、次に説明するとおり、ウェブの片側に配置されることが好ましい。他の実施形態において、ウェブはより粗い繊維を含んでおらず、したがって、すべての繊維が微細繊維となる。このより粗い繊維の長さは、微細繊維と同様の範囲内にあることが好ましい。
【0039】
層状構造における微細繊維と、より粗い繊維との両方を含んでいる繊維を製造するとき、二層ウェブが形成されるが、このものにおいて、一つの層が微細繊維を含み、そしてもう一つの層がより粗い繊維を含む。さらに、一方の面には主に微細繊維を備え、かつその反対側の面にはより粗い繊維を備える二層構造を維持しながら、二つの層は、水流交絡中に機械的に結合される。
【0040】
好ましくは、このウェブは、木材パルプ繊維などの天然繊維を含んでいない。
【0041】
水流交絡ウェブ14は、吸水ボックス(図示せず)をの上でかつベルトコンベヤ15を経て水気を切られ、そしてさらなる処理もしくは蓄積ロール18での巻取りのために、絞りロール16と乾燥ステーション17とを経て運搬される。この装置は、例えば、その反対側から繊維状ウェブを絡ませる付加的な水流交絡ステーションを備えてもよい。これは、この技術分野において公知である。
【0042】
水流交絡中に、孔は、特にこのために設計されたサポート部材12を用いることによって、ウェブ10内に形成される。図1に図示した実施形態において、サポート部材は、ドラムの表面から突出する複数の隆起部19を有するドラムの形態のものである。複数の水抜き孔20が隆起部19同士の間の領域内に設けられている。同様に、隆起部内に水抜き孔を有することも可能であろう。穿孔水流交絡不織生地の製造に適したドラムのさらなる詳細は、例えば欧州特許出願公開第0 223 614号明細書に開示されている
【0043】
また、穿孔生地を製造するために、ドラムのほかに、例えば、国際公開第01/88261号パンフレットに開示されている粗い三次元組織パターンを有するワイヤ、もしくはモールドされた閉網状スクリーンなどの他のタイプのサポート部材12を使用することも可能である。
【0044】
異なるサイズの孔は、サイズを変更することによって孔を形成するサポート部材12の変化する三次元構造を有することによって、ウェブ内に製造されてもよい。ウェブの離散領域内、もしくはウェブの加工方向にまたはその横方向に繰り返されるパターンのいずれかにおいて配置される異なるサイズの孔は、サポート部材12によって形成されてもよく、サポート部材12は、それぞれの加工方向または横方向、もしくは加工方向および横方向の両方向において変化する三次元構造を有するものである。
【0045】
図3には、水流交絡された微細繊維21の梳毛ウェブを備えた、本発明に基づく穿孔不織生地14を示す。ウェブは、上述したとおり、水流交絡によって形成された複数の孔22を備えている。
【0046】
図4には、生理用ナプキン23の形態の吸収用品の実施形態を示すが、通常、生理用ナプキン23は、液体透過性表面シート24と、液体非透過性背面シート25と、それらの間に取り囲まれた吸収コア26とを備えている。液体透過性表面シート24は、肌に対して柔らかくかつ低刺激性のものであり、そして例えば尿および月経液などの体液を直ちに透過させるものであることが望ましい。本発明によれば、液体透過表面シートは、上記微細繊維21からなる水流交絡不織生地である。この生地は、穿孔されていることが好ましい。図4に示すとおり、異なるサイズの孔22が、表面シート24の離散領域内に配置されている。したがって、用品の中央部27において、それによって、排出された体液は用品内に入り込むこととなり、表面シート24は、用品における周囲部28内に配置された孔よりも大きい孔を備えている。他の実施形態において、選択された領域、例えば用品の端部に近接する領域は、孔を備えていない。さらなる実施形態において、表面シートは、用品の中央領域内のみが穿孔されている。さらに他の実施形態において、すべての孔は、同一のサイズのものである。
【0047】
孔22のサイズは、0.1から8mm2、好ましく0.8から4mm2で変更可能である。表面シート24の総面積に対する表面シート24の穿孔部におけるその全空所領域は、10から50%、好ましくは20%から40%である。
【0048】
表面シート24は、16から60g/m2、好ましくは20から40g/m2の坪量を有している。それは、100%までの微細繊維を含んでいてもよく、もしくはある量、重量で50%以下の他の人工繊維(1.0dtex以上の繊維を有する)を含んでいてもよい。そうしたより粗い繊維が含まれる場合、それは、主に、着用者と反対の方向に面する表面シートの面に配置されることが好ましい。微細繊維および/またはより粗い繊維(もし存在するならば)は、あるいは微細繊維またはより粗い繊維の一部は、波形状のものであってもよい。
【0049】
表面シート24は、湿潤剤を用いて処理されてもよい。
【0050】
用品の液体非透過性背面シート25は、薄手のプラスチックフィルム、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンフィルム、液体非透過性材料で被覆された不織材料、疎水性不織材料、プラスチックフィルムおよび不織材料の耐液体浸透性のものもしくはラミネートからなってもよい。背面シート材料25は、吸収コアから水蒸気を放出させることを可能とするために通気性のものであり、一方で、依然として、液体が背面シート材料を通過することを防止するものであってもよい。
【0051】
表面シート24および背面シート材料25は、平面上に、吸収コア26よりある程度大きな広がりを有しておりかつその端部の外側へ延在している。表面シート24および背面シート25は、例えば熱または超音波を用いる接着もしくは溶着によって、その突出部29の内側で互いに結合されている。表面シートおよび/または背面シートは、さらに、この技術分野において公知の方法、例えば粘着材、熱接着などによって吸収コアに付加されてもよい。その上、吸収コアは、表面シートおよび/または背面シートに対して付着されていなくともよい。
【0052】
粘着領域30の形態の固定手段は、使用中に、着用者とは反対側の背面シート25の片側に設けられる。粘着材は、分離可能に着用者の下着に取り付けられてもよい。使用前に、剥離紙31が粘着領域30を保護する。粘着領域30は、例えば細長いもしくは横方向の帯片、ドット、全被覆領域などの、なんらかの適切な形態を有していてもよい。
【0053】
本発明の他の実施形態において、他のタイプの固定具、例えば摩擦ファスナー、テープ型タブまたは面ファスナーのような機械的ファスナーなどは、着用者の下着もしくはウエストの周囲に対して用品を固定するために使用されてもよい。ある吸収用品は、パンツの形態をしており、そのため、特別な固定手段を必要としない。その他の場合において、吸収用品は、付加的な固定具を必要とせずに、専用の弾性パンツ内に装着される。
【0054】
吸収体26は、従来型のものであってもよい。一般的に用いられる吸収材料の一例として、セルロースフラッフパルプ、ティッシュ層、エアレイドセルロース材料もしくは高吸収ポリマー(いわゆる超吸収体)などが挙げられる。吸収体の中でセルロース繊維と超吸収体とを結合することは一般的である。また、液体捕捉能力、液体拡散能力および蓄積能力に関して異なる特性を備えたさまざまな材料の層からなる吸収体を有することも一般的である。これは、当業者には公知であるため、本明細書では詳細に説明しない。現在用いられている吸収用品における一般的な薄手の吸収体は、多くの場合、セルロース繊維と超吸収材料との圧縮混合物もしくは層状構造物から構成される。吸収コアのサイズおよび吸収能力は、生理用ナプキン、パンティライナー、成人用失禁パッドおよびオムツ、幼児用オムツ、パンツ型オムツなど、さまざまな用途に適するように変更可能である。
【0055】
[試験結果]
試験は、さまざまな不織生地の再湿潤性および液体吸引時間に関して実施した。生地は、以下の特徴を有する。
サンプルA:梳毛水流交絡生地、坪量30gsm、0.99dtexの繊度と38mmの長さとを有するPET微細繊維、孔なし、湿潤剤:Dr Synthesin 7290 0.5%、供給者Dr Th Bohme KG
サンプルB:梳毛水流交絡生地、坪量50gsm、0.99dtexの繊度と38mmの長さとを有するPET微細繊維、孔なし、湿潤剤:サンプルAと同じ
サンプルC:梳毛水流交絡生地、坪量25gsm、0.99dtexの繊度と38mmの長さとを有するPET微細繊維、孔3.2mm2、開口面積13%、湿潤剤:サンプルAと同じ
サンプルD:梳毛水流交絡生地、坪量50gsm、0.99dtexの繊度と38mmの長さとを有するPET微細繊維、孔3.2mm2、開口面積13%、湿潤剤:サンプルAと同じ
サンプルE:スパンボンド材料の形態の基準材料、坪量48gsm、3.0dtexの繊度を有するPP繊維、孔なし、湿潤剤:サンプルAと同じ
【0056】
以下、試験で使用した方法について説明する。
【0057】
[再湿潤性]
この方法は、多量の液体を保持する生理用ナプキンが有する能力を測定するために考案された。
〔装置〕
・測定装置、Dosimat 665
・流体パイプ
・ストップウォッチ、精度0.1s
・タイマー、精度1s
・はかり、精度0.01g
・荷重、900g、(φ48mm=18.09mm2)、測定圧力 〜5kPa
・濾紙、φ48mm、等級2282 Schleicher & Schuell社製
・人工月経液
〔試料準備〕
・製品は、実験室で調整されるべきでありかつ試験に関連するバッチの標本であるべきである。
〔手順〕
・試験液の温度が23+1/−2℃であることを点検する。
・テーブル上に生理用ナプキンを平らに配置し、2±0.1Nの静的荷重下で液体パイプを降下させる。
・液体パイプの内側にDosimatホースを固定する。
・Dosimatを設定する。:1ml/min 15ml
・動的荷重を用いて試験装置をスタートさせ、タイマーを45分に設定してDosimatと同時に作動させる。
・測定処理が完了したら、その15分後に試験装置を停止させ、そして生理用ナプキンを取り除く。
・さらなる30分後:はかりの上に5枚の濾紙を載せ、その重さを差し引く。五枚の濾紙を湿潤ポイント上の中心に置く。濾紙の上面に注意深く重りを載せ、そしてストップウォッチを作動させる。
・正確に15秒後に、濾紙を取り除く。
・濾紙の重さを差し引かれたはかりで濾紙の重さを量り、そして精度0.01gで、再湿潤度を記録する。
【0058】
[吸入時間]
図6、図7および図8に、人工月経液が製品(傾斜面に配置されている)の上に注がれたときの完成品の透過率を評価するための方法を示す。
〔原理〕
透過時間を測定する。
〔装置〕
・角度25°のプレキシガラステーブル
・適所に製品を保持するための留め具付きスタンド
・ガラスチューブ
・ガラスチューブへ連結されるDosimat、内径2.9mm
・タイマー、精度±0.3s
・ストップウォッチ、精度±0.3s
・人工月経液
〔設定〕
・流速:20ml/min
・供与量:5ml
・プレキシガラステーブルの角度:25°
ガラスチューブは、垂直となるように、すなわち傾斜プレキシガラス板から115°となるように配置されていることが望ましい(図8参照)。
〔試料準備〕
〔手順〕
・ガラスチューブが吸収コアの約10mm内側に存在するように、クリップを用いて製品を取り付ける。
・製品が直線的に配置されるように、製品を調整する。
・ガラスチューブの開口部と製品10との間の距離を約10mmとなるよう調整する。
・タイマーおよびDosimatを同時に作動させる。
・液体が付与されるとき、ストップウォッチを用いて、液体が表面材料を透過するのに要する時間を測定する。
・5分後に、処理をポイント4から繰り返す。処理は、2回(すなわち3回分の液体)繰り返されることが望ましい。
【0059】
試験結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
得られた試験値は、6回の測定の平均である。
【0062】
微細繊維不織生地に関して、素早い吸入時間および低い再湿潤性の両方を実現するために穿孔することが重要であると結論付けることができる。
【0063】
本発明は上記説明および図面に示す実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変更可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に基づく水流交絡不織生地を製造するための装置の概略図である。
【図2】穿孔生地を形成するべく構成された水流交絡サポート部材の一例を示す斜視図である。
【図3】拡大された穿孔不織生地の斜視図である。
【図4】例えば生理用ナプキン、オムツ、パンティライナーおよび失禁ガードなどの本発明に適した吸収製品の一例を示す平面図である。
【図5】図4における線IV−IVでの吸収用品の断面図である。
【図6】吸入時間を測定するための試験方法を示す図である。
【図7】吸入時間を測定するための試験方法を示す図である。
【図8】吸入時間を測定するための試験方法を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10 ウェブ
11,15 ベルトコンベア
12 サポート部材
13 ノズル
14 不織生地
16 絞りロール
17 乾燥ステーション
18 蓄積ロール
19 隆起部
20 水抜き穴
21 微細繊維
22 孔
23 生理用ナプキン
24 表面シート
25 背面シート
27 湿潤領域
28 周囲領域
29 突出部
30 粘着領域
31 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0dtex以下の繊度を有し、かつ水流交絡によって結合された微細繊維を具備してなる不織生地であって、
前記生地は、前記水流交絡によって穿孔されており、かつ、
前記生地は、重量で少なくとも50%の前記微小繊維を具備してなり、
前記微細繊維は、少なくとも30mmの長さを有し、かつ水流交絡される前に梳毛されたものであることを特徴とする不織生地。
【請求項2】
少なくとも70%、そして好ましくは90%の前記微細繊維から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の生地。
【請求項3】
100%の人工繊維から構成され、かつパルプ繊維のような天然繊維を使用していないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生地。
【請求項4】
100%の前記微細繊維から構成されることを特徴とする請求項3に記載の生地。
【請求項5】
前記微細繊維は、少なくと
も32mmの長さを、好ましくは少なくとも35mmの長さを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の生地。
【請求項6】
前記生地は、離散領域内に配置された少なくとも二つの異なるサイズの孔(22)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の生地。
【請求項7】
前記生地は、加工方向、または前記生地の横方向、または加工方向および横方向の両方向に繰り返されるパターンで前記生地の離散領域内に配置される少なくとも二つの異なるサイズの孔(22)を具備してなることを特徴とする請求項6に記載の生地。
【請求項8】
個々の前記孔(22)のサイズは、0.1から8mm2、好ましく0.8から4mm2で変更可能となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の生地。
【請求項9】
前記穿孔生地の開口領域は、10%から50%、好ましくは20%から40%であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の生地。
【請求項10】
前記生地は、16から60g/m2、好ましくは20から40g/m2の坪量を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の生地。
【請求項11】
前記生地は、多量の波形状微細繊維を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の生地。
【請求項12】
すべての微細繊維は、疎水性微細繊維であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の生地。
【請求項13】
前記生地は、潤湿剤を具備してなることを特徴とする請求項12に記載の生地。
【請求項14】
前記生地は、1.0dtexを超えかつ5.0dtexまでの、好ましくは2.0dtexから4.0dtexの繊度を有する人工繊維を、重量で50%まで具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の生地。
【請求項15】
1.0dtexより大きい繊度を有する前記繊維は、主に、前記生地の片側に配置されており、一方で、前記生地の反対側は、主に、微細繊維から構成されていることを特徴とする請求項14に記載の生地。
【請求項16】
不織生地を製造するための方法であって、
1.0dtex以下の繊度と、少なくとも30mmの長さ、好ましくは32mm、そしてさらに好ましくは少なくとも35mmの長さと、を有する微細繊維を、重量で少なくとも50%具備してなる梳毛繊維状ウェブを形成するステップと、
穿孔水流交絡不織生地を形成するために、水流交絡の際に、穿孔サポート部材(12)を用いて前記梳毛繊維状ウェブを水流交絡するステップと、
を具備することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記水流交絡生地の離散領域内に配置された少なくとも二つの異なるサイズの孔(22)を形成する前記水流交絡の際に、穿孔サポート部材(12)を使用することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
加工方向、または生地の横方向、または加工方向および横方向の両方向に繰り返されるパターンにおいて、前記水流交絡ウェブの離散領域内に配置された異なるサイズの孔を形成する穿孔サポート部材(12)を使用することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
他の繊維と層状構造となるよう設けられている微細繊維を重量で少なくとも50%具備してなり、かつ1.0dtexより大きい繊度と少なくとも30mmの長さとを有する他の繊維を重量で50%以下となるよう具備してなる梳毛繊維状ウェブを形成することと、
片側には主に微細繊維を、そしてその反対側には主に他の繊維を具備してなる水流交絡不織生地を形成するために前記梳毛ウェブを水流交絡することと、
を具備することを特徴とする請求項16ないし請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
70から120バールの水流交絡圧力を用いて、前記梳毛繊維状生地を水流交絡することを特徴とする請求項16ないし請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
例えば生理用ナプキン、パンティライナー、失禁ガード、乳児用オムツ、パンツ型オムツ、および生理用ショーツなどの吸収用品であって、前記用品は、吸収体(26)の着用者に面する側に配置される表面シート(24)を具備してなり、前記表面シート(24)は、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載されたような、梳毛され、水流交絡され、かつ穿孔された不織生地を具備してなることを特徴とする吸収用品。
【請求項22】
前記表面シート(24)は、前記表面シートの離散領域内に配置された少なくとも二つの異なるサイズの孔(22)を具備してなることを特徴とする請求項21に記載の吸収体。
【請求項23】
相対的に大きなサイズの前記穿孔(22)は、湿潤領域(27)を形成することを意図された前記用品の中央部に配置されており、一方で、相対的に小さなサイズの穿孔は、前記湿潤領域の周囲の領域(28)内に配置されていることを特徴とする請求項22に記載の吸収用品。
【請求項24】
前記表面シート(24)を形成する前記不織生地は、1.0dtexより大きい繊度と少なくとも30mmの長さとを有する他の繊維を重量で50%以下となるよう具備してなり、
前記他の繊維は、主に、前記吸収体(26)に面する前記表面シート側に配置されており、その一方で、着用者に面する前記表面シート側は、主に微細繊維から構成されていることを特徴とする請求項21ないし請求項23のいずれか一項に記載の吸収用品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−532590(P2009−532590A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502715(P2009−502715)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000392
【国際公開番号】WO2007/114742
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(506215320)エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー (157)
【Fターム(参考)】