説明

水添および脱水素方法そしてそれら用の触媒

【課題】石油化学原料の水添方法、特に前記原料に選択的水水素化を受けさせる方法を提供する。
【解決手段】不飽和を有する少なくとも1種の成分を含有する石油化学原料および水素を少なくとも30m/gの表面積を有していて10から200ミクロンの平均直径を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する結晶性ケイ酸カルシウムである支持体に担持されているIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属を含んで成る触媒に3から150バールの圧力下0から550℃の温度で接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和石油化学原料(petrochemical feedstocks)の水添方法、特に前記原料に選択的水添を受けさせる方法に関する。本発明は、また、石油化学原料の脱水素方法にも関する。本発明は、また、触媒、特に前記方法で用いるに適した触媒にも関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和炭化水素の水添方法はいろいろ知られている。大部分の用途で水添を選択的様式で行う必要がある、即ち他の不飽和炭化水素が水添されないようにしながらある種の不飽和炭化水素に水添を受けさせる必要がある。純粋な炭化水素の中で下記の3種類の不飽和炭化水素を考慮に入れることができる:(1)三重結合を有するアルキン、二重結合を2つ有するジオレフィンまたは更に二重結合をより多い数で有するマルチプルオレフィン(multiple olefins)である多不飽和炭化水素、(2)二重結合を1つのみ有する不飽和炭化水素、および(3)芳香核を有する芳香族不飽和炭化水素。選択的水添は、3種類の不飽和の中の1種類または2種類のみに還元を受けさせることを意味する。水添の非常に重要な産業的用途は下記である:(1)水蒸気分解装置の生成物流れから不純物を除去、例えばオレフィンが豊富な流れに入っている多不飽和炭化水素に選択的水添を受けさせるか或は芳香族が豊富な流れに入っている多不飽和および不飽和炭化水素に選択的水添を受けさせることでそれらを除去すること、そして(2)高分子、例えば炭化水素溶媒および基礎油、ポリアルファ−オレフィンおよび更に樹脂、重合体および共重合体などの水添。
【0003】
水添用不均一触媒は活性金属化合物または担体を含有する触媒である。
【0004】
そのような活性金属化合物はとりわけVIb、VIIbおよびVIII族の元素の化合物である。それらは金属の状態、酸化物の状態、還元をある程度受けた酸化物状態、または硫化を受けたか或は硫化をある程度受けた状態であり得る。また、Ia族の金属である金属も活性のある水添用触媒であることが知られている。最も好適な金属または金属化合物はPd、Pt、Ni、Rh、Co、Fe、Cu、Ir、Ru、Os、W、Mo、NaまたはKの金属または金属化合物である。そのような活性のある水添用触媒は全部がまた異性化活性(isomerisation activity)もある程度示し得る。特にNa、K、Fe、PdおよびNi金属が二重結合の移行に触媒作用を示す一方でPtおよびCuは異性化活性がずっと低い触媒であることが知られている。2種類の金属または2種類の金属の化合物を用いることで選択的水添用触媒が示す活性および選択性を更に一層向上させることも可能である。典型的な例は水素化処理(hydrotreatmt)で用いられるCoMo、NiWおよびNiMo硫化触媒(sulphided catalyst)である。選択的水添で用いられる他の例は、Cu−Pd、Cu−Ni、Cu−Co、Cu−Pt、Fe−Pd、Co−Pd、Ni−Pd、Pt−Pd、Ag−Pd、Fe−Pt、Ni−Pt、Pt−Sn、Pt−Pb、Pd−Sn、Pd−Pb、Au−Pdなど多数である。
【0005】
また、そのような金属化合物用の担体の特徴を用いて活性および選択性に影響を与えることも可能であることが知られている。そのような担体は金属または金属化合物の分散、金属または金属化合物の粒子サイズおよび金属または金属化合物の電子特性に影響を与え得る。
【0006】
公知の担体には炭素、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、塩類またはアルカリ
土類金属、そしてゼオライトまたはモレキュラーシーブが含まれる。そのような担体の酸−塩基特性はいくつかの理由で非常に重要であり得る。そのような担体の特性は金属または金属化合物の分散、それの電子特性、従ってそれの活性および選択性に影響を与え得る。その上、そのような担体が金属または金属化合物で完全には覆われていないと、残存する酸および/または塩基部位がその触媒の触媒挙動に影響を与え得る。多不飽和炭化水素に水添を受けさせる必要がある時、それらは酸性担体と強力に相互作用するが、それらは塩基性担体とはほとんど相互作用しないであろう。その上、水添に高い温度を要する場合、酸触媒による異性化または分解などの如き現場反応(site reaction)が起こる可能性がある。塩基性化合物を水添中に添加するか或は塩基性金属化合物を担体に添加しておくと触媒性能が向上することが知られている。公知の塩基性担体はアルカリ土類金属の塩である。しかしながら、それらが有する表面積は非常に小さい。
【0007】
不飽和炭化水素に選択的水添を受けさせる時に用いるに適した触媒は商業的にいろいろ入手可能である。そのような触媒には、例えばアルミナである支持体に担持されているパラジウム、活性炭である支持体に担持されているパラジウム、アルミナである支持体に担持されているニッケルタングステン、そして硫酸バリウムである支持体に担持されているパラジウムなどが含まれる。
【0008】
また、水添方法とは全く対照的な炭化水素の脱水素も公知である。例えば、軽質パラフィン、例えばプロパンおよびブタンなどの脱水素で用いるに適した脱水素用触媒では主に支持型(supported)白金、ニッケルまたはクロムが用いられていることは本技術分野で公知である。そのような支持型白金触媒では白金が金属として存在し、しばしば、錫が助触媒として用いられる。クロムが基になった触媒には酸化クロムが活性相として入っている。ニッケルが基になった触媒では主にニッケルが硫化物の形態で用いられ、それを支持体の上に存在させている。そのような3種類の触媒では、活性相の担体が触媒性能に非常に重要な影響を与える、即ち活性、選択性および安定性の全部が支持体の影響を受けることが本技術分野で知られている。そのような3種類の触媒はしばしばアルミナ型の担体に担持されているが、そのようなアルミナ型の担体は、アルミナが担体の中で示す酸性度を和らげる傾向があることで触媒の選択性および有効寿命を長くする傾向がある1種以上のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属化合物を添加することによる修飾を受けている。他方、そのような活性のある金属化合物をアルミナ型の担体よりも酸性度が低くかつ高い熱安定性を示すスピネル様の担体、例えばMgAlまたはZrOなどに担持させることも可能である。熱安定性が高いと言った特性は非常に重要である、と言うのは、脱水素反応は典型的に500から630℃の温度を要するからである。
【0009】
別の触媒作用脱水素方法は改質(reforming)方法であり、これは非常に重要な精製用途であり、それの主目的は、アルキルシクロパラフィンに脱水素を受けさせて芳香族を生じさせると同時に水素を生じさせることにある。通常の改質用触媒は典型的に酸性にしたアルミナ担体に担持されている白金を含んで成る。追加的パラフィンを異性体および芳香族に変化させる目的で異性化および脱水素環化が望まれる場合にそのような酸性機能が要求される。本技術分野では、炭素原子数が少なくとも6のパラフィンのみに変換を受けさせて芳香族化合物を生じさせると同時に水素を生じさせることに興味が持たれている。それは白金を染み込ませた塩基性のゼオライトである担体を含んで成る触媒を用いて実施可能であることが本技術分野で公知である。その塩基性のゼオライトである担体には酸性部位が存在しないことから、競合する反応、例えば異性化および水素化分解などが抑制され、その結果として、芳香族化合物生成の選択率が非常に高くなる。
【0010】
ニッケル、酸化マグネシウムおよび望まれるならばさらなる添加剤を含有する支持型触媒が特許文献1に開示されており、そこではMgとNiの含有量をモル比が(0.0075から0.075):1になるように低くしている。その触媒はまた1グラムのNi当た
り110から180平方メートルの活性ニッケル金属表面を有しかつ1グラム当たり160から450平方メートルのBET全表面積も有する。適切な支持体は水に不溶ないろいろな材料であり、それにはケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムおよび/またはケイ酸アルミニウムなど、アルミナ、シリカおよび/またはケイソウ土が含まれる。その触媒は脂肪族および/または芳香族炭化水素の水添で使用可能である。
【0011】
不飽和炭化水素に選択的水添を受けさせる時に用いるに適した触媒は商業的にいろいろ入手可能である。そのような触媒には、例えばアルミナである支持体に担持されているパラジウム、活性炭である支持体に担持されているパラジウム、アルミナである支持体に担持されているニッケルタングステン、そして硫酸バリウムである支持体に担持されているパラジウムなどが含まれる。そのような触媒は、エチレン系不飽和重合体に対する活性が低い、言い換えれば、シスおよびトランスエチレン系不飽和およびビニル不飽和の水添度合が比較的低いと言った技術的欠点を有する。
【0012】
しかしながら、本技術分野では脱水素用触媒の改良、特にそのような脱水素用触媒用の担体の改良が求められている。
【0013】
天然に存在するケイ酸塩および合成で製造されたケイ酸塩は本技術分野で多種多様に公知である。
【0014】
例えば、層状複合金属ケイ酸塩組成物、特にクリソタイル(chrysotiles)およびこれらの製造が特許文献2に開示されている。
【0015】
棒型結晶形状のゾノトライト(xonotlite)で主に構成されている水和ケイ酸カルシウムの製造が特許文献3に開示されており、そのゾノトライトは卓越した耐火特性を有することからゾノトライトで主に構成させた成形素地は他の無機材料が達成することができない強度を与えると記述されている。その明細書には、ゾノトライト型の水和ケイ酸カルシウムを耐火コーティング材料、耐火水分保持材料、そしてプラスチックおよびゴム製品用の効力のある充填材として建造物で用いることが開示されている。
【0016】
実験式5CaO・6SiO・5HOで表されるトバモライト(tobermorite)が生じるようにケイ酸カルシウム製品、例えば排水用パイプおよび絶縁材料などを製造する方法が特許文献4に開示されている。
【0017】
水和ケイ酸カルシウム、例えばゾノトライト、トバモライトなどの製造方法が特許文献5に開示されている。
【0018】
ゾノトライトの中空球形凝集物を製造する方法が特許文献6に開示されており、その凝集物を用いて成形品を成形している。
【0019】
ウォラストナイト(woolastonite)群のケイ酸カルシウム結晶(ウォラストナイトおよびゾノトライトを包含)の二次的球状粒子の製造が特許文献7に開示されている。
【0020】
ほぼ球形の非晶質シリカ粒子の製造が特許文献8に開示されており、そこでは、ほぼ球形の合成ケイ酸カルシウムに酸性加水分解を受けさせることでそれを得ている。そのような酸性加水分解で得た結果として生じたシリカ粒子は特に触媒の支持体として用いるに適すると開示されている。その出発材料には球形の合成ケイ酸カルシウム、例えばゾノトライト、トバモライトおよび/またはケイ酸カルシウム水化物などが含まれ得、それらに次にpHが0.6から3の酸水溶液による処理を受けさせると結果として触媒の支持体とし
て用いるに適したシリカ粒子が生じる。
【0021】
ゾノトライトの実質的に球形の合成結晶凝集物が特許文献9に開示されている。その凝集物を不活性な粒子と混合することで、例えば断熱製品などを製造することができる。別法として、この上に記述した特許文献8の場合と同様にシリカを得る目的でカルシウム原子を酸で抽出する時の出発材料としてゾノトライトの凝集物を用いることも可能である。
【0022】
ケイ酸カルシウムが基になった構成要素(structural elements)を用いて一酸化炭素と酸性物質が入っている排気ガスを高温で処理することが特許文献10に開示されている。好適なケイ酸カルシウムはゾノトライト、トバモライト、アフビライト(afwillite)、フォシャジャイト(foshagite)、オーケナイト(okenite)、ウォラストナイト(wollastonite)などであり、そしてこのようなケイ酸カルシウムに他の酸化用触媒、例えばMn、Fe、Co、Ni、Ce、La、Zr、Pdなどを添加してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第5155084号
【特許文献2】米国特許第3729429号
【特許文献3】米国特許第3806585号
【特許文献4】米国特許第3804652号
【特許文献5】米国特許第3928539号
【特許文献6】米国特許第3915725号
【特許文献7】米国特許第4298386号
【特許文献8】米国特許第4689315号
【特許文献9】米国特許第4849195号
【特許文献10】特開昭63 248426号[WPIデータベースの中のDerwentアクセス番号1988−334698(XP−002184999)]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、1つの好適な面において、不飽和石油化学原料に選択的水添を受けさせる改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
従って、本発明は、石油化学原料の中の不飽和に水添を受けさせる方法を提供し、この方法は、不飽和を有する少なくとも1種の成分を含有する石油化学原料および水素を少なくとも30m/gの表面積を有していて10から200ミクロンの平均直径を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する結晶性ケイ酸カルシウムである支持体に担持されているIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属を含んで成る触媒に3から150バール(bar)の圧力下0から550℃の温度で接触させることを含んで成る。
【0026】
好適には、前記少なくとも1種の石油化学原料を前記触媒の上に1から100時−1のLHSVで通す。
【0027】
選択的水添を受けさせるべき不飽和を有する前記少なくとも1種の成分に対する水素のモル比を0.7から200にしてもよい。
【0028】
本発明は、また、石油化学原料の中の不飽和に水添を受けさせる方法も提供し、この方法は、不飽和を有する少なくとも1種の成分を含有する石油化学原料および水素を化学組成CaSi17(OH)で表される結晶性ケイ酸カルシウムである支持体に担持されているIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属を含んで成る触媒に接触させることを含んで成る。
【0029】
本発明は、更に、少なくとも30m/gの表面積を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する結晶性ケイ酸カルシウムである支持体に担持されているIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属を含んで成る触媒も提供する。
【0030】
前記粒子に持たせる平均直径を好適には10から200ミクロンにする。
【0031】
本触媒は、本発明に従い、不飽和炭化水素原料の水添方法または炭化水素原料の脱水素または改質方法で使用可能である。
【0032】
本発明は、更にその上、少なくとも30m/gの表面積を有する分子式6CaO・6SiO・HOで表される結晶性ケイ酸カルシウムを含んで成っていて10から200ミクロンの平均直径を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する支持体に担持されている金属を含んで成る触媒も提供する。
【0033】
前記金属は好適には周期律表のIa、Ib、IIb、VIb、VIIbおよびVIII族から選択される少なくとも1種の金属を含んで成る。
【0034】
本発明は、更にその上、分子式6CaO・6SiO・HOで表される結晶性ケイ酸カルシウムを少なくとも30m/gの表面積を有していて10から200ミクロンの平均直径を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する触媒支持体として用いることも提供する。
【0035】
本発明は、少なくともある程度ではあるが、結晶性の塩基性水和ケイ酸カルシウムを触媒の支持体として用いると石油化学原料の選択的水添で用いるに適していて高い活性と選択性を示す水添用触媒が生じ得ることを驚くべきことに見いだしたことが基になっている。このことは、ゾノトライト型の材料は長年に渡って知られているにも拘らず本出願者の認識ではゾノトライト型の材料を触媒または触媒の担体として用いることは従来技術に開示も示唆も全く成されていなかったことから一層驚くべきことである。むしろ、例えばこの上に考察した如き特許文献8に開示されているように、従来技術にはゾノトライトをシリカ製造時の出発材料として用いることが提案されており、その場合、酸による加水分解でシリカ粒子を生じさせる時にゾノトライトの化学組成も構造も壊れてしまう。
【0036】
本発明は、また少なくともある程度ではあるが、ゾノトライトを包含する塩基性の結晶性水和ケイ酸カルシウムが脱水素および改質反応で用いるに適した担体である(何故ならば、そのような塩基性の担体は650℃に及ぶ温度で結晶度を保持しかつこれの細孔容積および表面積を実質的に保持する点でこの担体は高温安定性を示すからである)ことを驚くべきことに見いだしたことが基になっている。
【0037】
ここに、本発明の好適な態様をより詳細に単なる例として記述する。
【0038】
本発明の触媒は好適には担持されている貴金属触媒を含んで成る。
【0039】
本発明の触媒は、Ia、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属、例えばPd、Co、Rh、Ru、Ni、Mo、W、Fe、Cu、NaまたはKなど、またはこれらの組み合わせを含んで成り、特にパラジウムが好適である。
【0040】
前記金属1種または2種以上は金属の状態、酸化物の状態、還元をある程度受けた酸化物状態、または硫化を受けたか或は硫化をある程度受けた状態で存在していてもよい。場合により、金属が2種類の金属または金属が2種類の化合物を水添用触媒の中に組み込んでもよく、例えば水素化処理(hydro−treatment)の場合にはCoMo、NiWおよびNiMo硫化触媒(sulphided catalyst)などを組み込んでもよく、そして選択的水添の場合には、Cu−Pd、Cu−Ni、Cu−Co、Cu−Pt、Fe−Pd、Co−Pd、Ni−Pd、Pt−Pd、Ag−Pd、Fe−Pt、Ni−Pt、Pt−Sn、Pt−Pb、Pd−Sn、Pd−PbおよびAu−Pdなどを組み込んでもよい。
【0041】
好適な触媒支持体は、非常に開放されていて近づき易い孔構造を有する塩基性ケイ酸カルシウムである。最も好適な触媒支持体は化学組成CaSi17(OH)で表される合成の結晶性水和ケイ酸カルシウムを含んで成り、これは公知の鉱物であるゾノトライト(分子式6CaO・6SiO・HOで表される)に相当する。この触媒支持体に好適には球形の形態を持たせ、その球形粒子の平均直径を10から200μmにする。この支持体は、非常に密集した結晶構造(very close−crystal structure)を有する外側シェル(shell)を含んで成っていてそれが内部の開放された構造を取り囲んでいると言った非常に開放された構造を有する。それは卵の殻のような構造であると呼ぶことができるであろう。その外側シェルは連結した(interlocked)リボン形状の結晶で構成されており、それによって、それは規則的で均一な表面特性を示す。その外側シェルは直径が2000オングストローム以下、より好適には100から1000オングストロームの孔開口部を有する。それによって高い細孔容積を有する良好な孔構造が生じる。
【0042】
前記支持体の比表面積は好適には10m/gより充分に高く、30から200m/g、より好適には40から90m/gの範囲である。
【0043】
前記支持体材料のpHは好適には塩基性である。より好適には、前記支持体材料が示す最低塩基度はpHが7.5より高いことに相当する。このpHの測定は、前記支持体材料を水に4重量%浸漬することで実施可能である。
【0044】
合成水和ケイ酸カルシウムの合成は一般に自然発生的圧力下で水熱的に行われる。特に好適な合成水和ケイ酸カルシウムはPromat社(Ratingen、ドイツ)から商品名Promaxon Dの下で商業的に入手可能である。この材料はカルシウムの存在が理由でいくらか塩基性を示し、これを水に4重量%入れた分散液ではpHが約10の値に到達する。好適な合成水和ケイ酸カルシウムの具体的組成を表1に示す。
【0045】
ゾノトライトが熱に安定であること、従って、ゾノトライトを脱水素および改質反応用担体として用いることができることを立証する目的で、商品名Promaxon Dの下で販売されている商業的ゾノトライトに焼成を約50%の相対湿度下で異なる2種類の温度、即ち650℃および750℃の温度の周囲空気中で各々24時間受けさせた。初期のゾノトライトは結晶相CaSi17(OH)を有していて、それのBET表面積は51m/グラムで細孔容積(100ナノメートル未満の)は0.35ml/グラムであった。この担体に焼成を650℃で受けさせた時、これはこれの結晶度を保持しており、その結晶度はゾノトライトのそれに相当している。このように、焼成を650℃で24時間受けさせても、その結晶相はまだゾノトライト[CaSi17(OH)]を
含有していて、そのBET表面積は47.4m/グラムで細孔容積(100ナノメートル未満の)は0.30ml/グラムであった。その担体に焼成を750℃で受けさせると、これは水分子を1分子失うことでウォラストナイト(wollastonite)[結晶相CaSiOを有する]に変化した。それによって、その担体の塩基度が低くなった。その上、その担体に焼成を750℃で受けさせると、結果として、それの細孔容積が大きく失われ、0.09ml/グラム(孔サイズが100ナノメートル未満の)にまで低下し、そしてそれに相当してBET表面積が38m/グラムにまで低下した。
【0046】
このような結果は、ゾノトライトを塩基性担体として脱水素および改質反応に典型的な温度範囲である500から650℃、より特別には500から630℃の範囲の高温反応で用いることができることを示している。ゾノトライトはそのような温度範囲の時にそれの塩基性を保持し、その結果として、この担体は改質反応で用いられる触媒の中に組み込むに適する。
【0047】
Ia、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属を支持型触媒の重量を基準にして好適には0.01から10重量%、より好適には約0.5重量%の量で存在させる。
【0048】
Ia、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属をケイ酸カルシウムである支持体に含浸させることで本触媒を生じさせる。好適には、支持体の孔がある体積の前記金属含有溶液で満たされるようにする湿り開始含浸技術(incipient wetness impregnation technique)を用いる。この技術では、乾燥させた触媒にIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属の塩、例えば前記金属のハロゲン化物、特にVIII族の金属の塩化物が入っている溶液を含浸させる。前記支持体の金属含有量が所望の含有量、例えば金属含有量が支持型触媒の重量を基準にして0.01から10重量%、最も好適には支持型触媒の重量を基準にして約0.5重量%になるように、前記金属塩の量を計算する。その含浸を受けさせた固体に乾燥を最初に真空下で受けさせた後に高温で受けさせる。最後に、その生成物に焼成を例えば約250℃の温度で約3時間受けさせる。
【0049】
別法として、含浸段階中に溶液を過剰量で用いそしてその溶媒を蒸発で除去する。含浸用溶液および担体の特性に応じて、活性のある金属相は下記のいろいろな場所に位置し得る:(1)金属または金属化合物が外側表面に近い薄層の中に集中[これを「卵殻様式」と呼んでもよいであろう]、(2)金属または金属化合物が表面下の薄層の中に集中していて中心部には入り込んでいない[これを「卵白様式」と呼んでもよいであろう]、(3)金属または金属化合物が粒子状担体の中心部近くの小さい領域の中に集中[これを「卵黄様式」と呼んでもよいであろう]、および(4)金属または金属化合物が粒子状担体の全体に渡って均一に分布。前記金属の前駆体を前記担体と相互作用させる様式は等電位(IEP)(これは、前記担体の粒子が水溶液の中で正味の電荷を示さなくなるpHである)に依存する。pHがIEPより高い時、その表面は負の電荷を担持していることからカチオンが吸着され、pHがIEPより低い時には、その表面が担持している電荷は正であることから吸着されるのはアニオンのみであろう。前記含浸用溶液と前記担体を接触させている間にもまたイオン交換が起こり得る。その含浸用溶液に錯化剤(complexing agents)(これは金属前駆体の電荷を変え得る)を添加することでそれを変化させることも可能である。別の技術では、前記金属前駆体が前記担体の上を広がる度合を向上させる目的で競合するイオン(competing ions)を添加することも可能である。
【0050】
触媒製造方法の代替態様では、前記金属を前記支持体にイオン交換または蒸着(vapour phase deposition)で付着させることも可能である。
【0051】
本発明の触媒は不均一触媒であり、これはバッチ式または連続工程で使用可能である。本触媒を好適には固定床反応槽で用いる。最も好適な方法では連続運転固定床反応槽を用いる。
【0052】
本水添方法では、石油化学原料を前記触媒の上に選択した温度および選択した圧力下でバッチ式または連続的に通すことで接触させる。その温度を好適には0から250℃にする。全圧を好適には3から50バールにする。前記石油化学原料を前記触媒に好適には0.1から100時−1、より好適には1から100時−1の時間当たりの液体空間速度(liquid hourly space velocity)(LHSV)で接触させる。
【0053】
水添条件は石油化学原料の性質に応じて多様であり、本発明の方法を用いて多種多様な不飽和石油化学原料に水添を受けさせることができる。そのような原料は基本的に選択的水添を受けさせるべき原料であり、このような選択的水添では、2種類の不飽和の中の一方に還元を受けさせるか或は3種類の不飽和の中の1種または2種類に還元を受けさせ、そのような不飽和を、多不飽和炭化水素、例えば三重結合を有するアルキン、二重結合を2つ有するジオレフィンまたは二重結合をそれ以上の数で有するマルチプルオレフィンなど、二重結合を1つのみ有する不飽和炭化水素、および芳香核を有する芳香族不飽和炭化水素から選択する。
【0054】
1番目の好適な面では、本方法を、粗C4流れに入っているブタジエンに選択的水添を受けさせてブテンを生じさせる目的で用いる。そのようなC4流れはFCC装置、ビスブレーカー(visbreaker)またはコーカー(coker)に由来する流れであってもよいか、或は水蒸気分解装置(steam cracker)に由来するC4流れまたはエチレンプラントのC4溜分を含んで成っていてもよい。エチレンプラントのC4溜分はブタジエンを高濃度で(典型的には25から75重量%)含有する。そのようなブタジエンに水添を受けさせてブテンを生じさせ、それにさらなる処理を受けさせるのが望ましい。その上、C4溜分に変換または抽出を受けさせてブタジエンを除去した後でも、それは残存するブタジエンを含有している可能性がある。このような好適な方法では、典型的に、ブタジエンを含有するC4流れを水素と一緒に前記触媒の上に水素/ブタジエンのモル比が1から10になるようにして20から200℃の入り口温度、5から50バールの全圧および1から40時−1のLHSVを包含する工程条件下で送り込む。その反応槽の流出液を再循環させて出口温度を制御してもよい。場合により、数基の反応槽を直列で用い、冷却および/または原料に入っている水素含有量の制御を向上させる目的で水素の注入を断続的に伴わせてもよい。
【0055】
本発明の好適な2番目の面では、本方法を、粗C4流れに入っているビニル−およびエチルアセチレンに選択的水添を受けさせる目的で用いてもよい。そのようなC4流れは典型的に水蒸気分解装置に由来する流れである。エチレンプラントに由来するC4溜分は、この上に考察したブタジエン以外にビニルアセチレンおよびエチルアセチレンをいろいろな量で含有する。さらなる処理を行う前に、それらを例えば抽出または変換などで除去しておくべきである。この原料を水素と一緒に前記触媒の上に水素/ブタジエンのモル比が1から10になるようにして0から100℃の入り口温度、3から35バールの全圧および1から40時−1のLHSVを有する工程パラメーター下で送り込む。また、その反応槽の流出液を再循環させて出口温度を制御してもよく、かつ場合により、数基の反応槽を直列で用い、冷却および/または供給材料に入っている水素含有量の制御を向上させる目的で水素の注入を断続的に伴わせてもよい。
【0056】
本発明の3番目の好適な面では、本方法を、C3流れに入っているメチルアセチレンお
よびプロパジエンに選択的水添を受けさせてプロピレンを生じさせる目的で用いてもよい。この原料は典型的に水蒸気分解装置に由来するC3溜分を含んで成り、より典型的には、エチレンプラントから得た高プロピレン含有量のC3溜分である。この溜分はメチルアセチレンとプロパジエンを含有する。プロピレンにさらなる処理を受けさせるにはそのような化合物を除去しておく必要がある。本方法のこの面では、前記原料を水素と一緒に水素/MAPD(MAPDはメチルアセチレンとプロパジエンの総モル含有量である)のモル比が0.7から5になるようにして0から100℃の入り口温度、10から50バールの全圧および10から50時−1のLHSVを包含する工程パラメーター下で送り込む。この反応は多管の疑似等温反応槽または断熱反応槽内で実施可能である。他の好適な面と同様に、その反応槽の流出液を再循環させて出口温度を制御してもよく、かつ場合により、数基の反応槽を直列で用い、冷却および/または原料に入っている水素含有量の制御をより良好にする目的で水素の注入を断続的に伴わせてもよい。
【0057】
本発明の4番目の好適な面に従い、本発明の方法を、熱分解ガソリン(pyrolysis gasoline)の選択的水添[これは本技術分野ではまた熱分解ガソリンの「第一段階」水添としても知られ得る]で用いてもよい。このような原料には水蒸気分解装置、コーカー装置またはビスブレーカーに由来する熱分解ガソリンが含まれる。この面に従い、ジオレフィンおよび不飽和芳香族に変換を受けさせて相当するオレフィンおよび芳香族を生じさせる。その水添で生じた生成物は安定なガソリンブレンド用供給材料として使用可能であるか、或は芳香族を回収する目的でそれにさらなる水素化処理を受けさせてもよい。前記原料を前記触媒の上に水素と一緒に水素/ジエンのモル比が1から10になるようにして20から200℃の入り口温度、5から50バールの全圧および1から20時−1のLHSVの工程パラメーター下で通す。また、他の面と同様に、その反応槽の流出液を再循環させて出口温度を制御してもよく、かつ場合により、数基の反応槽を直列で用い、冷却および/または原料に入っている水素含有量のより良好な制御を達成する目的で水素の注入を断続的に伴わせてもよい。
【0058】
本発明の更に5番目の好適な面では、本発明の方法を、ガソリン溜分の選択的水添で用いる。このような原料には、水蒸気分解装置、コーカー装置またはビスブレーカーに由来する熱分解ガソリンから得られる溜分、およびFCC装置から得られる分解を受けた軽質ナフサが含まれ得る。この面では、エーテルを生じさせる目的で、そのようなガソリン溜分に入っているジエンおよびアセチレンを選択的に除去する。前記原料を前記触媒の上に水素と一緒に水素/ジエンのモル比が1から20になるようにして通し、そしてその工程パラメーターは20から250℃の入り口温度、5から50バールの全圧および1から20時−1のLHSVである。
【0059】
本発明の6番目の好適な面では、本発明の方法を、粗スチレン流れに入っているフェニルアセチレンに選択的水添を受けさせる目的で用いてもよい。この原料には粗スチレンが含まれる。エチルベンゼンの脱水素で生じた粗スチレンまたは熱分解ガソリンから回収された粗スチレンはフェニルアセチレンを少量含有するスチレンをもたらす傾向があり、それにさらなる処理を受けさせる前にフェニルアセチレンを除去しておく必要がある。そのようなスチレンを前記触媒の上に水素と一緒に水素/フェニルアセチレンのモル比が1から20になるようにして10から150℃の入り口温度、5から50バールの全圧および10から100時−1のLHSVで送り込む。
【0060】
本発明の7番目の好適な面における本発明の方法は、芳香族が豊富な溜分に入っているオレフィンに選択的水添を受けさせる方法である。このような原料には改質装置、コーカーまたは水蒸気分解装置に由来する芳香族が豊富な溜分が含まれ得る。そのように芳香族が豊富な溜分から芳香族を抽出するにはそれに処理を受けさせる必要がある。芳香族を抽出する前に残存臭素指数(これはオレフィン含有量を示す)を非常に低くしておく必要が
ある。オレフィン含有量を水添で低くする方法は、如何なる方法でも、芳香族の変換度を最低限にする必要がある。また、ほとんど純粋な芳香族溜分でも、それの臭素指数を更に低くするには、通常の粘土処理の代わりになり得るさらなる水添段階が必要であり得る。前記原料を前記触媒の上に水素と一緒に水素/オレフィンのモル比が5から100になるようにして5から250℃の入り口温度、5から50バールの全圧および5から50時−1のLHSVを包含する工程パラメーター下で通す。
【0061】
本発明の8番目の好適な面では、本発明の方法を改質方法と協力させて石油化学原料の選択的水添で用いてもよい。
【0062】
前記結晶性ケイ酸カルシウムである支持体(例えばゾノトライト)を脱水素または改質用触媒として用いる時には、この触媒ばかりでなく支持体にIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属、例えばPd、Co、Rh、Ru、Ni、Mo、W、Fe、Cu、NaまたはKなど、またはこれらの組み合わせを含有させる。脱水素用原料は典型的に軽質オレフィン、例えばプロパンおよびブタンなどを含んで成り得る。改質反応用の原料は典型的にシクロパラフィン、例えばシクロヘキサンなどを含んで成り得る。脱水素および改質反応は500から630℃の温度で実施可能である。
【0063】
ここに、以下の非限定実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例1】
【0064】
触媒調製
商品名Promaxon Dの下で商業的に入手可能な結晶性水和ケイ酸カルシウムの押出し加工品に乾燥を500℃の温度で3時間受けさせた。次に、湿式含浸(wet impregnation)技術を用いて、前記乾燥させた支持体に塩化パラジウム(PdCl)の溶液を染み込ませた。詳細には、65.38gの乾燥させたPromaxon
Dを38.23モルの塩化パラジウム水溶液に徐々に接触させたが、前記溶液の量を、この量が前記乾燥させたPromaxon Dの推定吸収容量に相当するように選択した。前記パラジウム塩の量を結果として生じる触媒に含まれる最終的パラジウム含有量が0.3重量%になるように計算した。前記含浸を受けさせた固体に乾燥を真空下25℃で36時間の後に乾燥を110℃の温度で16時間受けさせた。最後に、この触媒に焼成を400℃の温度で3時間受けさせた。
【0065】
熱分解ガソリンの選択的水添
前記活性化を受けさせた触媒(これはゾノトライトである担体に0.3重量%担持されているPdを含んで成る)を42.2g(75mlの体積を有する)の量で実験室規模の連続細流床(trickle bed)反応槽の中に窒素下で移した。次に、前記触媒に還元を120℃で流れる水素流下で受けさせた。その後、水蒸気分解装置から得た熱分解ガソリン(表2に示す組成および特性を有する)を前記反応槽の中に4.92時−1のLHSV[7.00時−1の時間当たりの重量空間速度(WHSV)に相当(296g/時の質量流量になる)]で通し、それと一緒に水素を40.0Nl/時の流量で通した。水素/ジエンのモル比は4.10であった。その全圧を30バールにし、そして入り口温度を約45℃から約120℃で変えた。
【0066】
前記反応槽の流出液の組成をいろいろな入り口温度に関して分析し、その結果を図1に要約する。
【0067】
前記流出液の芳香族含有量に関して、これは原料の芳香族含有量に比べて実質的に変わらないことが図1から分かるであろう。前記流出液に含まれるオレフィンの含有量の方が原料のそれよりも高かった。しかしながら、入り口温度を120℃にまで高くするとオレ
フィン含有量が低くなる傾向があった。入り口温度を約45から80℃にした場合、オレフィン含有量は約17重量%であったが、入り口温度を120℃にすると次第に低くなって約14重量%になった。パラフィン含有量に関して、前記流出液の中に含まれるパラフィン含有量の方が原料のパラフィン含有量よりも高かった。入り口温度を高くするにつれてパラフィン含有量が次第に高くなった。このように入り口温度を約45℃にした時のパラフィン含有量は約27重量%であったが、入り口温度を約120℃にするとパラフィン含有量が高くなって約33重量%になった。最も重要なことは、前記流出液のジエン含有量の方が前記原料のそれよりも有意に低いことであり、前記流出液のジエン含有量は入り口温度を高くするにつれて更に低くなる傾向があった。このように入り口温度を約45℃にした時のジエン含有量は約2重量%であり、元々のジエン含有量である約12重量%に比べて有意に低く、入り口温度を約120℃にすると流出液のジエン含有量が低くなって約0.25重量%になった。
【0068】
流出液のジエン含有量の方が原料のそれよりも有意に低く、それに相当してパラフィンおよびオレフィンの含有量が高くなる度合がより低くかつ芳香族含有量が実質的に変化しないままであることは、本発明の選択した水添用触媒が有効であることを示している。このように、本触媒はジエンの水添に非常に高い活性を示しかつオレフィンに関しては良好な選択率を保持している。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油化学原料の中の不飽和に水添を受けさせる方法であって、不飽和を有する少なくとも1種の成分を含有する石油化学原料および水素を化学組成CaSi17(OH)で表される結晶性ケイ酸カルシウムである支持体に担持されているIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属を含んで成る触媒に接触させることを含んで成る方法。
【請求項2】
前記支持体が10から200ミクロンの平均直径を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記支持体が7.5より高いpHに相当する塩基度を示す請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記支持体が30から200m/gの表面積を有する請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記VIII族の金属がパラジウムを含んで成っていて前記パラジウムが前記支持体に支持型触媒の重量を基準にして0.01から10重量%の量で染み込んでいる請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記石油化学原料を前記触媒の上に1から100時−1の時間当たりの液体空間速度、0から250℃の入り口温度および3から50バールの圧力で通す請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
水添を受けさせる不飽和を有する前記少なくとも1種の成分に対する水素のモル比を0.7から200にする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
水添を受けさせる不飽和を有する前記少なくとも1種の成分がC4流れの中に入っているブタジエン、C3流れの中に入っているメチルアセチレンおよびプロパジエンの中の少なくとも1種、熱分解ガソリンの中に入っているジオレフィンおよび不飽和芳香族の中の少なくとも1種、熱分解ガソリンの中に入っているジエンおよびアセチレンの中の少なくとも1種、スチレン流れの中に入っているフェニルアセチレン、または芳香族が豊富な溜分の中に入っているアルファオレフィンを含んで成る請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
触媒であって、少なくとも30m/gの表面積を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する結晶性ケイ酸カルシウムである支持体に担持されているIa、Ib、IIb、VIb、VIIbまたはVIII族の少なくとも1種の金属を含んで成る触媒。
【請求項10】
前記ケイ酸カルシウムが化学組成CaSi17(OH)で表される請求項9記載の触媒。
【請求項11】
前記支持体が7.5より高いpHに相当する塩基度を示す請求項9または請求項10記載の触媒。
【請求項12】
前記VIII族の金属がパラジウムを含んで成っていて前記パラジウムが前記支持体に支持型触媒の重量を基準にして0.01から10重量%の量で染み込んでいる請求項9か
ら11のいずれか1項記載の触媒。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項記載触媒の使用方法であって、不飽和炭化水素原料に水添を受けさせる方法における使用方法。
【請求項14】
請求項9から12のいずれか1項記載触媒の使用方法であって、炭化水素原料に脱水素または改質を受けさせる方法における使用方法。
【請求項15】
触媒であって、少なくとも30m/gの表面積を有する分子式6CaO・6SiO・HOで表される結晶性ケイ酸カルシウムを含んで成っていて10から200ミクロンの平均直径を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する支持体に担持されている金属を含んで成る触媒。
【請求項16】
前記金属が周期律表のIa、Ib、IIb、VIb、VIIbおよびVIII族から選択される少なくとも1種の金属を含んで成る請求項15記載の触媒。
【請求項17】
分子式6CaO・6SiO・HOで表される結晶性ケイ酸カルシウムの使用方法であって、少なくとも30m/gの表面積を有していて10から200ミクロンの平均直径を有する実質的に球形の粒子の形態でありかつ前記粒子の中の孔が100から2000オングストロームの直径を有する触媒支持体としての使用方法。

【公開番号】特開2009−161766(P2009−161766A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56712(P2009−56712)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【分割の表示】特願2003−514067(P2003−514067)の分割
【原出願日】平成14年7月16日(2002.7.16)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】