説明

水溶性樹脂含有塗布物およびインクジェット記録材料の塗布方法ならびに廃液処理方法。

【課題】同時重層塗布装置に供給されて塗布されずに排出された前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液のゲル化を防止し生産性を低下させない水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法を提供する。
【解決手段】水溶性樹脂を含有する塗布液(A)と、該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物を含有する塗布液(B)とを、同時重層塗布装置を用いて支持体上に同時重層塗布する方法において、前記同時重層塗布装置に供給されて塗布されない前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液に、ゲル化を阻害する化合物を含有させることを特徴とする水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法に関する。更に詳しくは、フォトライクな高い光沢を有するインクジェット記録材料の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、インクジェット記録材料と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料とポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
近年、顔料として極微細な無機粒子を使用し、フォトライクな光沢を有する記録材料が知られている。例えば、500nm以下まで粉砕・分散した気相法シリカや湿式法シリカ等の無機超微粒子をインク受容層の顔料成分として用いることが提案されている。例えば、特公平3−56552号、特開平10−119423号、特開2000−211235号、特開2000−309157号公報に気相法シリカの使用例が、特開平9−286165号、特開平10−181190号公報に粉砕沈降法シリカの使用例が、特開2001−277712号公報に粉砕ゲル法シリカの使用例が開示されている。また、特開昭62−174183号、特開平2−276670号、特開平5−32037号、特開平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。
【0004】
しかし、無機超微粒子を使用すると高い光沢が得られる反面、塗布液の粘度が高くなりやすく、低い固形分濃度で塗布することから乾燥時の風紋、ひび割れ等の表面欠陥が発生しやすくなる。特に、高い光沢や良好な質感を得るためにポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の耐水性支持体を使用した場合、支持体がインクを吸収できないため、支持体上に設けられたインク受容層のインク吸収性が重要であり、従って多量の顔料を無機微粒子に対するバインダーの比率を低減して塗布する必要があり、乾燥時に欠陥が発生しやすかった。
【0005】
このような表面欠陥を防止するため、架橋剤を含む塗布液を支持体に塗布した後、乾燥を比較的穏やかな条件で行う方法が知られている。例えば、特開平10−119423号、特開2000−27093号、特開2001−96900号公報等では、ポリビニルアルコールの架橋剤としてほう酸、ほう砂等のほう素化合物を用い、塗布液を塗布し一度冷却して塗布液の粘度を上昇、ゲル化させた後、比較的低温で乾燥する方法が開示されている。しかし乾燥工程に長い時間が必要であるため、生産性を高くできないという問題点があった。
【0006】
一方、官能基を有する水溶性樹脂と架橋剤をインクジェット記録材料に使用することが知られており、例えば特開昭63−176173号(特許文献1)、特開昭63−176174号公報(特許文献2)、特開2003−335043号公報(特許文献3)に記載されている。また、特開2001−72711号(特許文献4)、特開2001−213045号公報には多孔質インク受容層のバインダー成分としてアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールと架橋剤を使用することが記載されている。これらの方法では、水溶性樹脂の官能基と架橋剤との作用により、ほう素化合物を用いたときとは異なり、冷却することなく塗布液の粘度が上昇、ゲル化し、このため乾燥工程が比較的短時間で終了させることが可能となる。
【0007】
無機超微粒子と官能基を有する水溶性樹脂からなる多孔質層に該架橋剤を加える方法として、塗布前に予め多孔質層用塗布液に該架橋剤を添加する方法を実施すると、支持体に塗布液の塗布を開始する以前に塗布液の粘度上昇を招き、支持体への塗布が非常に困難になる。このため無機超微粒子と官能基を有する水溶性樹脂からなる多孔質層に該架橋剤を加える方法としては、塗布の直前に添加する方法、該水溶性樹脂を含む多孔質層を塗布した後更に該架橋剤を含む塗布液を塗布する、あるいはスプレー等で噴霧する方法、官能基を有する水溶性樹脂を含む多孔質層が形成された支持体を該架橋剤液中に浸漬する方法、架橋剤を含む層を塗布形成した後に該水溶性樹脂を含む多孔質層を塗布する方法等がある。しかし該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液を同時塗布(重層塗布)する方法が効率的で好ましい。
【0008】
上記同時塗布を行う方法として、例えば特開平5−96223号公報、特開平11−290775号公報、特開2000−33314号、特開2002−274020号公報、特開2004−255352号公報等に記載されるスライドホッパー型塗布装置を用いたスライドビード塗布方式、また例えば特開平10−277458号公報、特開2000−176344号公報、特開2002−274020号公報等に記載されるスライドホッパー型塗布装置を用いたスライドカーテン塗布方式を挙げることができる。
【0009】
しかし上記塗布方法を用いて該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液の同時塗布(重層塗布)を実施すると新たな問題が発生した。上記塗布方式においては、同時塗布(重層塗布)を行う際、支持体への塗布の開始前に、スリット部分から塗布液が押し出された後、スライド面を流れ始めてからスライド面の先端に達するまでの液膜の安定性を確認し、塗布を開始することが行われる。安定な液膜が形成されるまでの期間、予め準備された該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液は、同時重層塗布装置に供給され続ける。この時の塗布液の流量は、インクジェット記録材料が目的とする性能が得られるべく定められたの多孔質層固形分量および架橋剤量、支持体の塗布幅、塗布速度等から算出された量であり、大量の塗布液を廃棄する。
【0010】
この液膜の安定性を確認する工程において、支持体上に塗布されない該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液は、スライドビード塗布方式の場合においては、スライドホッパー型塗布装置のスライド面の先端に達した後に減圧室へ流れ込みその後廃棄される。減圧室に流れ込んだ該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液は、減圧室でこれらの混合液となる。しかし減圧室に流れ込んだ混合液は次第に粘度が上昇、ゲル化し廃棄が困難となることがあった。場合によっては支持体への塗布が開始できなかった。
【0011】
混合液の粘度の上昇を回避するために、減圧室に流入した混合液を水で希釈し粘度上昇を防止し廃棄することは可能ではある。しかし大量に発生する塗布廃液に対して更に非常に多くの、例えば約3倍量以上の水を加えることが必要となり、廃液処理効率が低下し非経済的である。また本発明が対象とする水溶性樹脂含有塗布物は、官能基を有する水溶性樹脂とその架橋剤を利用することにより乾燥工程が比較的短時間で終了させることが可能であり、より高速で塗布することで効率的に生産することを目的とする。従ってその分だけ廃液が更に増加する。更に支持体への塗布が終了した後に残っている塗布液(塗布残液)を廃棄する際、同様の理由により該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液とを安易に混合、廃棄することはできず、大量の水を用いて希釈した後に排出する、もしくは個別に廃液を回収する必要があった。
【特許文献1】特開昭63−176173号公報(第1頁〜第3頁)
【特許文献2】特開昭63−176174号公報(第1頁〜第3頁)
【特許文献3】特開2003−335043号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献4】特開2001−72711号公報(第2頁〜第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、同時重層塗布装置に供給されて塗布されない前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液のゲル化を防止し廃液処理効率および生産性を低下させない水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法を提供することにある。また大量の水による希釈を必要としない前記塗布残液の廃液処理方法を提供することにある。更に詳しくは、フォトライクな高い光沢を有するインクジェット記録材料の塗布方法および塗布液の廃液処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題は以下の方法により解決された。
1.水溶性樹脂を含有する塗布液(A)と、該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物を含有する塗布液(B)とを、同時重層塗布装置を用いて支持体上に同時重層塗布する方法において、前記同時重層塗布装置に供給されて塗布されない前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液に、ゲル化を阻害する化合物を含有させることを特徴とする水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
2.前記ゲル化を阻害する化合物を、前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液量の2倍量以下の水に溶解し、前記混合液に含有させることを特徴とする前記1に記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
3.前記ゲル化を阻害する化合物が、前記水溶性樹脂の官能基と反応する基または該塗布液(A)をゲル化させる化合物の官能基と反応する基の何れかを分子中に1つ有する化合物であることを特徴とする前記1および2記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
4.前記塗布液(A)に含まれる水溶性樹脂がカルボキシル基、スルホ基、およびケト基から選ばれる1種または2種以上の官能基を有する水溶性樹脂であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
5.前記塗布液(B)に含まれる該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物が、2価以上の価数を有する金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、エポキシ化合物、N−メチロール化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
6.前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液が含有する前記ゲル化を阻害する化合物が更に、下記一般式1で表される化合物、または一般式2で表される部分構造を分子内に1つ有する化合物であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、R1は脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、R2は水素原子、脂肪族基、アリール基または複素環基を表す。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、R3は脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、Lは、単結合、−NR4−、−CONR5−、−NR6CONR7−または−NR8NR9CONR10−を表す。R4〜R10は水素原子または炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
7.前記水溶性樹脂含有塗布物がインクジェット記録材料である前記1に記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
8.前記水溶性樹脂を含有する塗布液(A)と、該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物を含有する塗布液(B)がインク受容層を塗設するための塗布液であり、該塗布液を塗布する際、加熱によって塗布液をゲル化させた後、乾燥することを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録材料の塗布方法。
9.水溶性樹脂を含有する塗布液(A)と、該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物を含有する塗布液(B)とを、同時重層塗布する方法において、前記同時重層塗布装置に供給されずに廃棄される前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液が、ゲル化を阻害する化合物を含有することを特徴とする水溶性樹脂含有塗布液の廃液処理方法。
10.前記ゲル化を阻害する化合物が、前記同時重層塗布装置に供給されずに排出される前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液量の2倍量以下の水に溶解されることを特徴とする前記9に記載の水溶性樹脂含有塗布液の廃液処理方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、同時重層塗布装置に供給されて塗布されずに排出された前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液のゲル化を防止し、廃液処理効率を低下させない水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、同時重層塗布装置に供給されて塗布されない前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液とは、液膜の安定性を確認する工程において生じる前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液のことである。スライドホッパー塗布装置を有する同時重層塗布の実施にあたり、支持体への塗布の開始前に、スライドホッパー塗布装置のスリット部分から塗布液が押し出された後、スライド面を流れ始めてからスライド面の先端に達するまでの液膜の安定性を確認する作業が通常行われる。前記作業が終了するまでの間、前記塗布液(A)と塗布液(B)は同時重層塗布装置に供給され続ける。供給され続ける前記塗布液(A)と塗布液(B)は、例えばスライドビート塗布装置においてはスライド面の先端に達した後に減圧室へ流れ込み、減圧室でこれらの混合液となる。しかし減圧室に流れ込んだ混合液は次第に粘度が上昇、ゲル化し廃棄が困難となることがあった。
【0020】
また本発明において、同時重層塗布装置に供給されずに廃棄される前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液とは、支持体への塗布が終了した後に残っている塗布液(塗布残液)のことである。塗布残液としての前記塗布液(A)と塗布液(B)を廃棄する際、これらを混合、廃棄すると次第に粘度が上昇、ゲル化し廃棄が困難となることがあった。従って安易に混合、廃棄できず、大量の水を用いて希釈した後に排出する、もしくは個別に廃液を回収する必要があった。
【0021】
前述の通り、官能基を有する水溶性樹脂と架橋剤をインクジェット記録材料に使用することで、冷却することなく塗布液の粘度が上昇、ゲル化し乾燥工程を短時間で終了させることができる。また無機超微粒子と官能基を有する水溶性樹脂からなる多孔質層に該架橋剤を加える方法としては、該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液を同時塗布(重層塗布)する方法が効率的である。同時塗布にはスライドホッパー型塗布装置を用いたスライドビード塗布方式やスライドカーテン塗布方式が好適である。
【0022】
図1は、同時(重層)塗布に用いられるスライドホッパー塗布装置の一実施態様の平面図(上面図)である。図1で例示したスライドホッパー塗布装置11は、3層の同時重層塗布が可能な装置であり、フロントバー1、セカンドバー2、サードバー3、及びバックバー4とから構成されている。それぞれのバーには、スライド面1a、2a、3a、及び4aがあり、スリット1b、2b、3bがある。スライド面上の両端部には、塗布幅規制板5が設けられている。塗工液の塗布に際し、フロントバー1の先端部(リップ先端部)6は、走行する支持体(図示せず)との間隙(100〜500μm)に、スライド面を流下してきた塗布液で液膜を形成する役目を有する。
【0023】
スライドホッパー塗布装置を用いた同時(重層)塗布を実施するにあたり、支持体への塗布の開始前に、スリット部分から塗布液が押し出された後、スライド面(1a、2a、3a)を流れ始めてからスライド面の先端6に達するまでの液膜およびスライド面の先端6から支持体表面に達するまでの液膜の安定性を確認した後、スライドホッパー塗布装置11を移動して支持体への塗布が開始される。液膜の安定性を確認する際、塗布装置11に供給された塗工液は、スリット(1b、2b、3b)から押し出されてスライド面(1a、2a、3a)を流下する。このとき、塗工液の液膜の両端部は、塗布幅規制板5に接触しながら流下する。
【0024】
図2はスライドホッパー塗布装置を用いた一般的なスライドビート塗布装置の模式断面図であり、塗布状態を示したものである。塗布していない状態においては、スライド面の先端部(リップ先端部)6は、走行もしくは停止する支持体との間隙が十分に確保される。上記液膜の安定性を確認する工程において、支持体上に塗布されない該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液と該架橋剤を含む塗布液は、スライドビード塗布方式の場合においては、スライド面の先端部(リップ先端部)6に達した後に減圧室17へ流れ込みここで混合し、その後排出口20から廃棄される。
【0025】
該水溶性樹脂を含む多孔質層用塗布液(A)と該架橋剤を含む塗布液(B)の混合液にゲル化阻害剤を含有させるにあたっては、前記塗布液(A)と塗布液(B)が減圧室17に流入すると同時、もしくは流入する直前から、減圧室17でゲル化阻害剤を添加することが好ましい。かかる添加にあたっては例えば減圧室17にゲル化阻害剤の水溶液供給位置21等を設けることが好ましい。一旦増粘、ゲル化した混合液が減圧室17に滞留すると、その後減圧室17に流入する前記塗布液(A)と塗布液(B)の混合液の廃棄が困難になる場合がある。一旦増粘、ゲル化した混合液にゲル化阻害剤を適用した場合、再び混合液の粘度が低下し流動性を示す混合液になるが粘度低下までにある程度の時間が必要である。従って流入する直前、即ちゲル化阻害剤の存在下で前記塗布液(A)と塗布液(B)が混合されることが好ましい。
【0026】
スライドカーテン塗布方式を用いて同時(重層)塗布を実施する場合、塗布装置に供給されて、塗布されない前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液は、例えば特開平8−201961号公報記載の液受け板、特開平10−323604号公報記載の受けパン、特開平11−169767号公報記載の液回収ボックス等の回収手段により回収される。従ってゲル化阻害剤はこれら液回収手段内で添加することが好ましい。
【0027】
ゲル化阻害剤を混合する量としてはゲル化させる化合物のモル数に対して等モル以上が好ましく、より好ましくは2倍モル量以上である。またゲル化阻害剤を添加するときの溶液の濃度は特に規定はしないが、廃液処理効率を低下させないために、前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液の合計量の2倍以下の水に対し、ゲル化させる化合物のモル数に対して等モル以上のゲル化阻害剤を溶解し用いることが好ましい。前記塗布液(A)と塗布液(B)が接触した事による増粘、ゲル化と、ゲル化阻害剤によるゲル化防止作用は競争反応である。従ってゲル化阻害剤の使用量を増加させると水の使用量は少なくすることができるが、極端に水の使用量を減量することは、ゲル化防止剤による反応は可逆的な反応であるため、ゲル化防止剤を添加した後に再度増粘、ゲル化を招くおそれがある。従って水使用量の下限は前記塗布液(A)量の1/2以上である。尚、ゲル化阻害剤の水溶液を作製する際、水溶液はゲル化阻害剤を溶解する目的でアルコール類等の水以外の溶媒を含んでも良い。この場合水以外の溶媒使用量は5質量%以下が好ましい。
【0028】
なお、前記記載のゲル化とは、前記塗布液(A)と塗布液(B)が混合もしくは接触することにより、粘度が上昇し実質的に流動性を示さない状態を指す。
【0029】
また前記塗布液(A)と塗布液(B)の混合液がゲル化阻害剤を含有する為の好ましい形態としては、スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方式により塗布液を支持体に塗布する際、スライドホッパー型塗布装置のスライド面に設置される塗布幅規制板近傍位置の塗布液面に、前記水溶性樹脂のゲル化阻害剤を供給することが挙げられる。
【0030】
前述の通り、塗布装置11に供給された前記塗布液(A)と塗布液(B)は、スリット(1b、2b、)から押し出されてスライド面(1a、2a、)を流下し、塗工液の液膜の両端部は、塗布幅規制板5に接触しながら流下する。この時、前記塗布液(A)と塗布液(B)の間には界面が形成される。一般に塗布幅規制板5は、コーティング部分の端の位置を正確に保つため、またスライド面の先端部(リップ先端部)6と支持体とのギャップを超えていく液膜の安定性を保つ等の理由で用いられる。しかし塗布幅規制板5を用いることにより、スライド面(1a、2a、3a)を流下する塗布幅規制板5の近傍位置は厚い縁となる。液膜の安定性を確認する工程において、安定した液膜が得られるまでの期間に、特に塗布幅規制板5の近傍の厚い縁となる部分とスライド面の先端部(リップ先端部)6では前記塗布液(A)と塗布液(B)の間に界面が形成されにくく混合状態に近くなる為、増粘、ゲル化が進むことがあった。この為、これに起因して塗布開始時からの塗布安定性がしばらくの間低下することがあったが、塗布幅規制板5近傍位置を流下する塗布液面に、前記水溶性樹脂のゲル化阻害剤を供給することで改善できる。
【0031】
上記スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方式の塗布幅規制板近傍位置の塗布液面に、前記水溶性樹脂のゲル化阻害剤を供給する方法においては、前記塗布液(A)と塗布液(B)の混合液のゲル化に対して十分な量のゲル化阻害剤の水溶液を供給すると、液膜の安定性が低下する場合があるが、ゲル化阻害剤の供給量が十分でなくともゲル化する時期を遅延させ、塗布開始時からの塗布安定性がしばらくの間低下することを防止することができる。
【0032】
本発明において、ゲル化阻害剤の水溶液の供給位置は、塗布幅規制板5の近傍付近の最上層の両端部であり、かつ最上層の塗工液がスライド面上で流下を開始した直後の位置もしくはそれより上流側の位置である。ここで最上層の塗工液がスライド面上で流下を開始した直後の位置とは、スリットに近接した位置(スリットから約1cm以内)である。
【0033】
具体的には、前記塗布液(A)と塗布液(B)を同時(重層)塗布する場合、最上層の塗工液は、スリット2bから押し出されてスライド面2aを流下する。この場合のゲル化阻害剤の水溶液の供給位置は、▲で示した符号7(最上層の塗工液がスライド面上で流下を開始した直後の位置)、もしくはそれより上流側(塗工液がスライド面上を流下するのとは逆方向)である。好ましくは、最上層の塗工液が押し出されるスリット(この場合はスリット2b)より上流側の位置が好ましく、より好ましくは該スリットに上流側で近接した位置(スリットから約1cm以内)であり、●で示した符号8の位置である。
【0034】
液膜の安定性を確認する工程において、スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方式の塗布幅規制板近傍位置に供給するゲル化阻害剤を溶解した水溶液の濃度としては0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また前記濃度の水溶液を液膜の安定性が失われない範囲の量、具体的には片側当たり0.5〜10ml/minの流量で供給することが好ましい。ゲル化阻害剤が溶解された液の供給方法としては、1分間に10ml以下という極めて低い供給速度であっても、ほぼ連続的に供給できる方法が好ましく、先端の口径が小さいノズルが好ましく用いられる。そしてその後前記塗布液(A)と塗布液(B)の混合液が流れ込む減圧室等にてゲル化を阻害するに十分な量のゲル化阻害剤を添加する。
【0035】
本発明は更に、同時塗布装置に供給されずに廃棄される、即ち前記塗布液(A)と塗布液(B)の塗布残液が生じた場合に於いても、本発明のゲル化阻害剤を用いる事によりそれぞれ個別に回収する必要がなく、また過剰な希釈を実施することによる廃液処理効率の低下を回避できる。
【0036】
無機微粒子等を含む塗布残液は一般に沈殿槽にて例えばフロキュレーション等により無機微粒子等を沈殿除去し、更にその上澄み液については環境基準に適合する様、例えば廃液のBOD,CODを低下させる処理等が行われる。前記処理を前記塗布液(A)と塗布液(B)の塗布残液についてそれぞれ個別に実施することは非経済的であり、経済的な方法としてはそれぞれの塗布残液を同時に回収し上記処理することが好ましい。その際、前記塗布液(A)と塗布液(B)が接触、混合することによる増粘、ゲル化は廃液処理効率の観点から好ましいものではなく、また過剰な希釈による増粘、ゲル化の防止も同様である。
【0037】
同時塗布装置に供給されずに排出される塗布液(A)と塗布液(B)の残液がゲル化阻害剤を含有する為の手段としては、塗布液(A)の塗布残液に対してゲル化阻害剤を添加し、その後塗布液(B)と混合する方法、塗布液(B)の塗布残液に対してゲル化阻害剤を添加し、その後塗布液(A)の塗布残液と混合する方法、塗布液(A)と塗布液(B)が混合された直後にゲル化阻害剤を添加する方法等があるが特に限定されない。好ましくは塗布液(A)と塗布液(B)がゲル化阻害剤の存在下で接触、混合することである。
【0038】
この場合においても前述の同時重層塗布装置に供給されて塗布されずに排出される前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液がゲル化阻害剤を含有する場合と同様に、ゲル化阻害剤を混合する量としてはゲル化させる化合物のモル数に対して等モル以上が好ましく、より好ましくは2倍モル量以上である。またゲル化阻害剤を添加するときの溶液の濃度は、前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液の合計量の2倍以下の水に対し、ゲル化させる化合物のモル数に対して等モル以上のゲル化阻害剤を溶解し用いることが好ましい。
【0039】
本発明に用いるゲル化阻害剤は、該水溶性樹脂の官能基と反応する基または該塗布液(A)をゲル化させる化合物の官能基と反応する基の何れかを分子中に1つ有する化合物である。該水溶性樹脂のゲル化は、ゲル化させる化合物が水溶性樹脂の官能基間に作用することにより粘度が上昇し実質的に流動性を示さない状態になるものである。従ってゲル化防止剤としては、該水溶性樹脂の官能基とゲル化させる化合物の官能基のいずれかに反応する基を1つ有する化合物を用いることにより、水溶性樹脂の官能基とゲル化させる化合物の官能基の何れかの官能基を封鎖し、該水溶性樹脂が架橋されることを防止することにより、流動性を示す状態を維持する化合物である。
【0040】
より具体的には、該水溶性樹脂が有するカルボキシル基、スルホ基、およびケト基等の官能基と反応する基、あるいは2価以上の価数を有する金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、エポキシ化合物、N−メチロール化合物等のゲル化させる化合物の官能基と反応する基の何れかを分子中に1つ有する化合物である。このような化合物としては、下記一般式1で表される化合物、または一般式2で表される部分構造を分子内に1つだけ有する化合物が好ましい。
【0041】
【化3】

【0042】
式中、R1は脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、R2は水素原子、脂肪族基、アリール基または複素環基を表す。
【0043】
【化4】

【0044】
式中、R3は脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、Lは、単結合、−NR4−、−CONR5−、−NR6CONR7−または−NR8NR9CONR10−を表す。R4〜R10は水素原子または炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
下記一般式の化合物を用いる。
【0045】
一般式1のうち好ましいものとして、下記一般式3の化合物を挙げることができる。
【0046】
【化5】

【0047】
式中、R11は脂肪族基を表し、Yは−O−または−NR13−を表し、R12は水素原子、脂肪族基、アリール基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
【0048】
一般式1について、詳細に説明する。R1、R2で表される脂肪族基としては、直鎖、分枝状、環状の脂肪族基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アリール基としては、単環または二環のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。複素環基としては、五員環または六員環の複素環が好ましく、例えば、トリアゾール環、テトラゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環等が挙げられる。
【0049】
これらの基は置換基を有していても良く、置換基としては、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ブテニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環式基(例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基等)、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メシルアミノ基、エチルスルホンアミド基、p−トルエンスルホンアミド基、2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、フェニルウレイド基等)等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有していても良い。
【0050】
一般式1で表される化合物のうち、一般式3で表される化合物が特に好ましい。R11は脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、一般式1のR1の説明で挙げた例がそのまま適用できる。R12は水素原子、脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、脂肪族基、アリール基、複素環基の例としては、一般式1のR1の説明で挙げた例がそのまま適用できる。Yは−O−または−NR13−を表し、R13は水素原子または炭素数1〜8の脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ブテニル基、プロパルギル基等)を表す。
【0051】
一般式1、一般式3で表される化合物の具体例としては、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、3−ペンタノン、4−メチルー2−ペンタノン、3−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2−オクタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、1−アセトナフトン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ダイアセトンアルコール、ダイアセトンアクリルアミド、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、レブリン酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸アミド、N−メチルアセト酢酸アミド、N,N−ジメチルアセト酢酸アミド、アセト酢酸アニリド、アセト酢酸o−アニシダイド、アセト酢酸m−キシリダイド、アセト酢酸o−クロロアニリド、アセト酢酸p−スルホアニリド等を上げることができる。これらの中で、アセトン、N,N−ジメチルアセト酢酸アミド、N−メチルアセト酢酸アミド、アセト酢酸アニリドが好ましく、特にアセト酢酸アニリドが好ましい。
【0052】
次に、一般式2について詳細に説明する。R3で表される脂肪族基としては、直鎖、分枝状、環状の脂肪族基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アリール基としては、単環または二環のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。複素環基としては、五員環または六員環の複素環が好ましく、例えば、トリアゾール環、テトラゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ブテニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環式基(例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基等)、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メシルアミノ基、エチルスルホンアミド基、p−トルエンスルホンアミド基、2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、フェニルウレイド基等)等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有していても良い。但し、一般式2で表される部分構造は分子中に1カ所のみである。
【0053】
Lは、単結合、−NR4−、−CONR5−、−NR6CONR7−、−NR8NR9CONR10−の何れかを表す。R4〜R10は水素原子または炭素数1〜8の脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ブテニル基、プロパルギル基等)を表す。
【0054】
一般式2で表される具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、4−フェニルセミカルバジド、1−フェニルカルボヒドラジド等を挙げることができる。これらの中で、特にプロピオン酸ヒドラジドが好ましい。
【0055】
なお、一般式1、一般式2で表される化合物は、取扱いし易さの面で水溶性であることが好ましく、25℃の水100gに、0.2g以上溶解する化合物が好ましい。
【0056】
本発明の塗布液(A)に用いられる水溶性樹脂は、カルボキシル基、スルホキル基、及びケト基から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有する。
【0057】
官能基としてカルボキシル基を有する水溶性樹脂は、例えばカルボキシル基を有するモノマーと他のモノマーを共重合する方法により得られる。カルボキシル基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。またポリマー反応でカルボキシル基を導入してもよく、例えばカルボン酸エステル基を有する単量体の共重合により得られる重合体を加水分解する方法、あるいはカルボン酸無水物を付加させる方法が挙げられる。更にカルボキシル基を有する水溶性樹脂は、多糖類あるいはゼラチン類を使用しても良い。
【0058】
官能基としてスルホ基を有する水溶性樹脂は、例えばスルホ基を有するモノマーと他のモノマーを共重合する方法により得られる。スルホ基を有するモノマーの具体例としては、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸等が挙げられる。更にスルホ基を有する水溶性樹脂は、例えばカラギーナン、アガロース等の多糖類を使用しても良い。
【0059】
官能基としてケト基を有する水溶性樹脂は、ケト基を有するモノマーと他のモノマーを共重合する方法等によって合成することができる。ケト基を有するモノマーの具体例としては、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクレート、4−ビニルアセトアセトアニリド、アセトアセチルアリルアミド等が挙げらる。また、ポリマー反応でケト基を導入しても良く、例えばヒドロキシ基とジケテンとの反応等によってアセトアセチル基を導入することができる。ケト基を有する樹脂バインダーの具体例としては、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性セルロース誘導体、アセトアセチル変性澱粉、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール、特開平10−157283号公報に記載の樹脂バインダー等が挙げられる。
【0060】
本発明の水溶性樹脂含有塗布物がインクジェット記録材料である場合、本発明における好ましい水溶性樹脂としては、上記官能基を有する変性PVA(例えばアニオン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール)、多糖類(例えばアルギン酸、ペクチン)、ゼラチン類、アクリル系樹脂(たとえばポリアクリル酸)が挙げられ、変性PVAが特に好ましく、更にアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0061】
アセトアセチル変性ポリビニルアルコールのアセトアセチル化度は0.1〜20モル%が好ましく、更に1〜15モル%が好ましい。鹸化度は80モル%以上が好ましく、更に85モル%以上が好ましい。重合度としては、500〜5000のものが好ましく、1000〜4500のものがより好ましく、2000〜4500のものが特に好ましい。
【0062】
ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールのジアセトンアクリルアミド単位の含有量としては、0.1〜15モル%の範囲が好ましく、更に0.5〜10モル%の範囲が好ましい。鹸化度としては85モル%以上、重合度としては500〜5000のものが好ましい。
【0063】
本発明ではカルボキシル基、スルホ基、およびケト基から選ばれる1種または2種以上の官能基を有する水溶性樹脂に加えて、更に他の公知の樹脂バインダーを併用してもよい。例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉や各種変性澱粉、ゼラチンや各種変性ゼラチン、キトサン、カラギーナン、カゼイン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールや各種変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を必要に応じて併用することができる。更にバインダー樹脂として各種ラテックスを併用しても良い。
【0064】
併用する水溶性樹脂バインダーの使用量は、カルボキシル基、スルホ基、およびケト基から選ばれる1種または2種以上の官能基を有する水溶性樹脂と、前記水溶性樹脂の官能基と反応し増粘、ゲル化させる化合物による作用が得られる範囲であれば特に限定されるものではない。
【0065】
水溶性樹脂含有塗布物がインクジェット記録材料である場合、樹脂バインダーの総含有量は、少ないほどインク受容層中の空隙容積が大きくなりインク吸収性が高くなる面で好ましいが、少なすぎるとインク受容層が脆弱となりひび割れ等の表面欠陥が多くなったり、光沢が低下するため、無機微粒子に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、特に10〜30質量%が好ましい。
【0066】
前記水溶性樹脂がカルボキシル基又はスルホ基を有する水溶性樹脂の場合、有する金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、エポキシ前記ゲル化させる化合物としては、2価以上の価数を化合物、N−メチロール化合物、アジリジン化合物及びオキサゾリン化合物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0067】
金属塩の具体例としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、四塩化チタン、乳酸チタン、テトライソプロピルチタネート、酢酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、クロムミョウバン、カリウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、塩化コバルト、塩化第1鉄、硫酸第1鉄、塩化第2鉄、酢酸クロム、酢酸バリウム 等が挙げられる。
【0068】
アミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリアミノプロパン、アミノ基を有する重合体(例えばポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン)等が挙げられる。
【0069】
ヒドラジン化合物の具体例としては、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、4,4’−オキシベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラジド基を有するビニル重合体(例えばアミノポリアクリルアミド)等が挙げられる。
【0070】
エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジレート、o−フタル酸ジグリシジレート、p−フタル酸ジグリシジレート、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0071】
N−メチロール化合物の具体例としては、N−メチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン、メチロールメラミン等が挙げられる。アジリジン化合物の具体例としてはトリメチロールプロパン−トリ−β−アジルジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボサミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボサミド)等が挙げられる。オキサゾリン化合物の具体例としては、1,2−ジオキサゾリニルエタン、1,4−ジオキサゾリニルブタン、1,4−ジオキサゾリニルベンゼン、N,N’−ジオキサゾリニルエチレンジアミン、オキサゾリニル基を有するビニル重合体等が挙げられる。
【0072】
これらの前記ゲル化させる化合物のうち、アルミニウム塩、ジルコニウム塩、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ポリアリルアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0073】
前記水溶性樹脂がケト基を有する水溶性樹脂である場合、前記ゲル化させる化合物は2価以上の価数を有する金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、エポキシ化合物及びN−メチロール化合物から選ばれる1種または2種以上が好ましい。前記ゲル化させる化合物の具体例としては、上記の例と同様である。これらの前記ゲル化させる化合物のうち、アミン化合物及びヒドラジン化合物から選ばれる1種または2種以上が好ましく、ポリアリルアミン、アジピン酸ジヒドラジド、アミノポリアクリルアミドが特に好ましい。
【0074】
上記水溶性樹脂/前記ゲル化させる化合物の組み合わせは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いても良い。前記ゲル化させる化合物の使用量は、水溶性樹脂に対して1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0075】
水溶性樹脂含有塗布物がインクジェット記録材料である場合について、本発明を更に詳細に説明する。
【0076】
本発明のインク受容層に用いられる無機微粒子としては、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種微粒子が挙げられるが、インク吸収性と生産性の点で非晶質合成シリカ、アルミナ又はアルミナ水和物が好ましい。
【0077】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0078】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0079】
本発明には、特に粉砕した気相法シリカ又は湿式法シリカが好ましく使用できる。本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い光沢を得るためには、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nm(特に3〜10nm)でかつBET法による比表面積が200m2/g以上(好ましくは250〜500m2/g)のものを用いることである。尚、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0080】
本発明に用いられる湿式法シリカ粒子としては、平均一次粒子径50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、且つ平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカ粒子が好ましく、特に分散液の初期粘度上昇が抑制され、高濃度分散が可能となり、粉砕・分散効率が上昇してより微粒子に粉砕することができることから、吸油量が210ml/100g以下、平均凝集粒子径5μm以上の沈降法シリカを使用することが好ましい。高濃度分散液を使用することによって、記録用紙の生産性も向上する。吸油量は、JIS K−5101の記載に基づき測定される。
【0081】
本発明のインク受容層用いるシリカ粒子は、カチオン性化合物の存在下で分散したものが、好ましく使用できる。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカ又は湿式法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。シリカ分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。尚、本発明でいう平均二次粒子径とは、得られた記録材料のインク受容層を電子顕微鏡で観察することにより、観察される分散された凝集粒子の粒子径の平均値を求めたものである。
【0082】
上記気相法シリカ及び湿式法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、特開昭59−33176号、特開昭59−33177号、特開昭59−155088号、特開昭60−11389号、特開昭60−49990号、特開昭60−83882号、特開昭60−109894号、特開昭62−198493号、特開昭63−49478号、特開昭63−115780号、特開昭63−280681号、特開平1−40371号、特開平6−234268号、特開平7−125411号、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
【0083】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられ、中でもアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0084】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式4、5、または6で示され、例えば[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0085】
[Al2(OH)nCl6-nm 一般式4
[Al(OH)3nAlCl3 一般式5
Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n 一般式6
【0086】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0087】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0088】
本発明に使用するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
【0089】
本発明のアルミナ水和物はAl23・nH2O(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロボキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
【0090】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ギ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
【0091】
本発明では、前記塗布液(A)をゲル化させる化合物の他に、ほう酸、ほう酸塩、ほう砂の如き無機架橋剤等を併用できる。
【0092】
本発明のインク受容層のpHは、2乃至7に調整することが好ましい。前記pH範囲外では、該水溶性化合物をゲル化させる化合物による樹脂バインダーのゲル化反応が進行しにくいため、乾燥空気の気流によって塗層の凹凸が発生したり、欠陥が生じやすく、乾燥条件を強くできないため、生産性を高くすることができない。また、十分にゲル化させた塗布液を乾燥することによって、高光沢であり且つインク吸収性に優れたインクジェット記録材料が得られる。上記pH範囲外では、例えば光沢が低かったり、インク吸収性の低いインク受容層になりやすい。
【0093】
なお、インク受容層のpHはJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.49−1〜49−3に記載の方法に従って測定することができる。
【0094】
本発明の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法としては、該塗布液を塗布した後、加熱によって塗布液をゲル化させ、その後乾燥する製造方法が好ましい。本発明でゲル化とは、粘度が上昇し乾燥工程で吹き付ける風で塗布液が流動しない状態を指す。好ましくは、実質的に流動性を示さない状態を指す。
【0095】
インク受容層および塗布液のpHは、酸またはアルカリを適当に組み合わせて調整することができる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸が用いられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、または弱アルカリとして、弱酸のアルカリ金属塩が用いられる。
【0096】
支持体に塗布後加熱する方法としては、高温空気中を通過させる方法、ヒートロールに密着させる方法、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置等を用いる方法等が使用できる。加熱温度としては、塗布液が水系である場合には、30〜100℃が好ましく、特に40〜95℃の範囲が好ましい。また生産性の面から、加熱時間としては1秒〜10分が好ましく、更に5秒〜5分が好ましい。
【0097】
本発明のインク受容層の乾燥塗布量としては、インク吸収性、インク受容層の強度、及び生産性の面で、無機微粒子の固形分として8〜40g/m2の範囲、特に10〜30g/m2の範囲が好ましい。
【0098】
本発明では、インク染料の耐水性改良目的等でインク受容層に更にカチオン性化合物を含有することが好ましい。カチオン性化合物の例としては、シリカの分散の説明で挙げたカチオン性ポリマー、及び水溶性金属化合物が挙げられる。また、水溶性金属化合物の例としてカルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。中でも分子量5,000〜10万程度のカチオン性ポリマー、及びアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましく、特にアルミニウム化合物を含有することが好ましい。カチオン性化合物は一種類を使用しても、複数の化合物を併用しても良い。
【0099】
本発明において、インクジェット記録材料には、少なくとも1つの上記インク受容層に加え、さらに他の構成のインク吸収層、あるいは保護層等の他の機能を有する層を設けてもよい。
【0100】
本発明において、各層のインク受容層には、更に界面活性剤、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0101】
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の耐水性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体等が用いられる。好ましくは耐水性支持体が用いられる。耐水性支持体の中でも特にポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましい。これらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
【0102】
支持体、特に耐水性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.01〜2μmの範囲である。
【0103】
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0104】
フィルム支持体や樹脂被覆紙にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、好ましくはコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が行われる。
【0105】
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができるが、同時重層塗布が可能である装置、例えばスライドビード方式、カーテン方式等の方法を用いる。
【0106】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【実施例1】
【0107】
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m2/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20%のシリカ分散液1を製造した。このシリカ分散液1と水に溶解した他の薬品を30℃で混合して下記組成のインク受容層用塗布液1を調整した。
<インク受容層塗布液1>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール 23部
(アセトアセチル化度3%、ケン化度98%、平均重合度2500)
固形分濃度 15.3%
【0108】
次に下記の水溶性樹脂をゲル化させる化合物を溶解した塗布液aを調整した。
〈塗布液a〉
(値は上記シリカ分散液1のシリカ固形分に対する重量部)
アジピン酸ジヒドラジド 2.3部
固形分濃度 5%
【0109】
上記インク受容層用塗布液1と塗布液aを混合し、その30秒後に下記表1に記載のゲル化阻害剤を含有する希釈液を添加した。その後これらの液の粘度をB型粘度計で測定した。この結果を表2に記した。ゲル化阻害剤を溶解した溶液の濃度は1%であり、添加液量はインク受容層用塗布液1と塗布液aを合わせた量に対する量である。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
表2より、水による希釈は3倍量の希釈液量が必要であるが、本発明の化合物を用いることにより等量の希釈液量を加えることにより、ゲル化が防止できる。
【実施例2】
【0113】
実施例1で作製した〈塗布液a〉に用いたアジピン酸ジヒドラジドの代わりにオキシ塩化ジルコニウムを用いた以外は実施例1と同様に試験した。この結果、実施例1と同様本発明の化合物を用いることにより等量の希釈液量を加えることにより、ゲル化を防止することができた。
【実施例3】
【0114】
実施例1で作製した〈インク受容層塗布液1〉に用いたアセトアセチル変性ポリビニルアルコールの代わりにジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールを用いた以外は実施例1と同様に試験した。この結果、実施例1と同様、本発明の化合物を用いることにより等量の希釈液量を加えることにより、ゲル化を防止することができた。
【実施例4】
【0115】
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100部の樹脂に対して、10部のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0116】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成のプライマー層をゼラチンが50mg/m2(約0.05μm)となるように塗布乾燥して支持体を作製した。
【0117】
<プライマー層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0118】
<インクジェット記録材料の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と沈降法シリカ(吸油量200ml/100g、平均一次粒子径16nm、平均凝集粒子径9μm)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作製した。次に得られた予備分散物をビーズミルで処理して、固形分濃度30%のシリカ分散液を得た。このシリカ分散液と水に溶解した他の薬品を30℃で混合して下記組成のインク受容層塗布液2と前記塗布液aを調製し、スライドホッパー型塗布装置を有するスライドビート塗布方式を用いてインク受容層塗布液2が下層、塗布液aが上層となる様に上記作製の支持体上に重層塗布を行った。インク受容層塗布液2の塗布量は110g/m2、塗布液aの塗布量は10g/m2、塗速は100m/minである。塗布後の乾燥は最初80℃で15秒間加熱して塗工液をゲル化させ、次いで80℃、55℃の空気を順次吹き付けて乾燥した。
<インク受容層塗布液2>
シリカ分散液2 (シリカ固形分として)100部
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール 23部
(アセトアセチル化度3%、ケン化度98%、平均重合度2500)
変性エタノール 4%
水を加えて固形分濃度 15.3%
【0119】
スライドホッパー型塗布装置を用いたスライドビード塗布装置にインク受容層塗布液2と前記塗布液aを供給し、支持体と塗布液とのギャップを超えていく液膜の安定性が保たれているのを確認して上記作製の支持体上に同時重層塗布を開始した。液膜の安定性を確認する期間、スライドホッパー型塗布装置の塗布幅規制板近傍位置の両端の塗布液面に、水溶性樹脂のゲル化阻害剤としてアセト酢酸アニリドの1%溶液をそれぞれ1分間あたり2mlの流量で供給し、また減圧室17に流れ込む塗布液aが含有するアジピン酸ジヒドラジドの2倍モル量になるようアセト酢酸アニリドの0.3%溶液を減圧室17に添加し、インク受容層塗布液2と塗布液aとがアセト酢酸アニリド存在下で混合されるようにした。
【0120】
この結果、塗布開始から塗布故障のない良好な膜面を有するインクジェット記録材料が得られた。また減圧室に流入した、支持体上に塗布されなかったインク受容層塗布液2と塗布液aの混合液は流動性を失うことなく、効率的に排出できた。これに対し減圧室にアセト酢酸アニリドを添加しなかった場合、インク受容層塗布液2と塗布液aの混合液は流動性を失い、混合液の排出ができず塗布できるに至らなかった。またスライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方式の塗布幅規制板近傍位置の両端の塗布液面に、アセト酢酸アニリドを用いなかった場合には、塗布開始直後の塗布面にやや乱れが生じた。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に用いられるスライドビード塗布方式に用いられるスライドホッパー塗布装置の一実施態様の平面図
【図2】スライドホッパー塗布装置を有する一般的なスライドビード塗布装置の模式断面図
【符号の説明】
【0122】
1 フロントバー
2 セカンドバー
3 サードバー
4 バックバー
1a、2a、3a、4a スライド面
1b、2b、3b スリット
5 塗布幅規制板
6 リップ先端
7、8、9 ゲル化阻害剤の水溶液供給位置
12 スライドホッパー
13 塗布液供給口
14 スライド面
15 支持体
16 バックアップロール
17 減圧室
18 吸引口
19 塗布ビード部
20 排出口
21 ゲル化阻害剤の水溶液供給位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂を含有する塗布液(A)と、該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物を含有する塗布液(B)とを、同時重層塗布装置を用いて支持体上に同時重層塗布する方法において、前記同時重層塗布装置に供給されて塗布されない前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液に、ゲル化を阻害する化合物を含有させることを特徴とする水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【請求項2】
前記ゲル化を阻害する化合物を、前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液量の2倍量以下の水に溶解し、前記混合液に含有させることを特徴とする請求項1に記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【請求項3】
前記ゲル化を阻害する化合物が、前記水溶性樹脂の官能基と反応する基または該塗布液(A)をゲル化させる化合物の官能基と反応する基の何れかを分子中に1つ有する化合物であることを特徴とする請求項1および2記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【請求項4】
前記塗布液(A)に含まれる水溶性樹脂がカルボキシル基、スルホ基、およびケト基から選ばれる1種または2種以上の官能基を有する水溶性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【請求項5】
前記塗布液(B)に含まれる該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物が、2価以上の価数を有する金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、エポキシ化合物、N−メチロール化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【請求項6】
前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液が含有する前記ゲル化を阻害する化合物が更に、下記一般式1で表される化合物、または一般式2で表される部分構造を分子内に1つ有する化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【化1】

式中、R1は脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、R2は水素原子、脂肪族基、アリール基または複素環基を表す。
【化2】

式中、R3は脂肪族基、アリール基または複素環基を表し、Lは、単結合、−NR4−、−CONR5−、−NR6CONR7−または−NR8NR9CONR10−を表す。R4〜R10は水素原子または炭素数1〜8の脂肪族基を表す。
【請求項7】
前記水溶性樹脂含有塗布物がインクジェット記録材料である請求項1に記載の水溶性樹脂含有塗布物の塗布方法。
【請求項8】
前記水溶性樹脂を含有する塗布液(A)と、該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物を含有する塗布液(B)がインク受容層を塗設するための塗布液であり、該塗布液を塗布する際、加熱によって塗布液をゲル化させた後、乾燥することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録材料の塗布方法。
【請求項9】
水溶性樹脂を含有する塗布液(A)と、該水溶性樹脂と反応して該塗布液(A)をゲル化させる化合物を含有する塗布液(B)とを、同時重層塗布する方法において、前記同時重層塗布装置に供給されずに廃棄される前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液が、ゲル化を阻害する化合物を含有することを特徴とする水溶性樹脂含有塗布液の廃液処理方法。
【請求項10】
前記ゲル化を阻害する化合物が、前記同時重層塗布装置に供給されずに排出される前記塗布液(A)と塗布液(B)との混合液量の2倍量以下の水に溶解されることを特徴とする請求項9に記載の水溶性樹脂含有塗布液の廃液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−239520(P2006−239520A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56855(P2005−56855)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】