説明

水硬性組成物

【課題】黒色微粒成分が多く含まれる配合系に於いても硬化体肌面に発生する黒ずみを抑制できる水硬性組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)、水硬性粉体(C)、黒色微粉末を含む粉体(X)、細骨材、粗骨材、及び水を含有し、水硬性粉体(C)と黒色微粉末を含む粉体(X)との比率が、(C)/(X)=95/5〜20/80(体積比)であり、水硬性粉体(C)と黒色微粉末を含む粉体(X)の合計100重量部に対する重合体(A)の含有量が0.02〜0.3重量部である、水硬性組成物。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート用混和材は、セメントペーストと反応させてあるいは複合させてコンクリートの性質を改質するために用いられる材であり、無機質の粉末からなるものが多く、セメントの代替やコンクリートに特別の機能を付与するために汎用される。代表的な混和材として、セメント代替を目的とする高炉スラグ、人工ポゾラン(フライアッシュ、シリカヒューム等)等があり、これらを適正に添加することはコンクリート製造において重要である。一般に、高炉スラグや、フライアッシュ、シリカヒュームには黒色微粉末等が含まれる。
【0003】
しかし、近年のシリカヒュームやフライアッシュ、高炉スラグ等の使用の増加、セメントへの焼却灰の混合(産業廃棄物の利用)、亜炭の含まれる骨材や混和材の使用、また、作業性、環境性向上を目的としたコンクリートの高流動化が原因となり、コンクリート硬化後の肌面に黒い斑状が生じる或いは全体的に黒ずむ現象が発生し、有効な改善策が望まれている。これを改善する技術として、特許文献1、2に鎖状オレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸との共重合体を用いる技術が開示されている。また、特許文献3には、特定のリン酸エステル系重合体と特定のオレフィン−マレイン酸共重合体とを含有するコンクリート混和剤が、コンクリート肌面の黒ずみ防止効果に優れることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−83303号公報
【特許文献2】特開2004−175651号公報
【特許文献3】特開2007−186396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水硬性組成物用の混和剤では、黒色微粒成分が多く含まれる配合系では、硬化体肌面の黒ずみ防止効果は充分ではなかった。
【0006】
本発明は、黒色微粒成分が多く含まれる配合系に於いても硬化体肌面に発生する黒ずみを抑制できる水硬性組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)〔以下、(A)成分という〕、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)〔以下、(B)成分という〕、水硬性粉体(C)〔以下、(C)成分という〕、黒色微粉末を含む粉体(X)〔以下、(X)成分という〕、骨材、及び水を含有する水硬性組成物であって、
(C)成分と(X)成分との比率が、(C)/(X)=95/5〜20/80(体積比)であり、
(C)成分と(X)成分の合計100重量部に対する(A)成分の含有量が0.02〜0.3重量部である、
水硬性組成物に関する。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、黒色微粒成分が多く含まれる配合系に於いてもコンクリート肌面等、硬化体肌面に発生する黒ずみを抑制できる水硬性組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(X)成分、骨材、及び水を含有する水硬性組成物である。以下、かかる水硬性組成物に用いられる成分等について説明する。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、構成単位の70重量%以上が上記式(1)で表される単量体〔以下、単量体(1)という〕由来の構成単位である重合体である。(A)成分は構成単位の75重量%以上、更に85重量%以上、より更に90重量%以上が単量体(1)由来の構成単位であることが好ましい。構成単位中の単量体(1)由来の構成単位の割合がこの範囲にある(A)成分を(B)成分と併用することで、流動保持性を付与し、黒ずみを抑制することができる。なお、(A)成分の構成単位中に中和された酸又は塩基の塩がある場合は、その構成単位は、中和前の酸型又は塩基型の重量で換算して、式(1)で表される単量体由来の構成単位の重量%を計算する。
【0011】
コンクリート等の硬化体の表面の黒ずみを抑制する観点から、(A)成分の重量平均分子量は1000〜100000が好ましく、より好ましくは3000〜80000であり、さらに好ましくは5000〜60000である。(A)成分の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)を使用し、RI検出器並びに検量物質としてポリスチレンを使用することにより測定されたものである。測定条件は後述の合成例1の通りである。
【0012】
(A)成分は公知の重合方法で得ることができ、工業的な観点から重合濃度10重量%以上であることが好ましい。重合方法は、ラジカル重合、リビングラジカル重合、イオン重合等の方法で行うことが可能であり、好ましくはラジカル重合である。重合溶媒としては、モノマーが可溶であれば限定されないが、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0013】
重合開始剤としてはアゾ系開始剤、パーオキシド系開始剤、マクロ開始剤、レドックス系開始剤等の公知の開始剤を使用してよい。水を含む重合溶媒の場合、重合開始剤としては、過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が挙げられる。水を含まない重合溶媒の場合、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等が挙げられる。
【0014】
さらに必要に応じて分子量調整剤等の目的で連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0015】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、更に、一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
【0017】
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
重合温度については限定されないが、好ましくは重合溶媒の沸点未満の領域で制御すればよい。
【0019】
(A)成分は、単量体(1)以外の単量体を構成単量体とすることができる。例えば、(i)(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸又はそれらの塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはそれらのエステル(例えば単量体(1)以外のアクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸エステル)が挙げられる。さらに、例えば、(ii)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はその酸無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられる。これらの中でも好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、又はこれらのアルカリ金属塩、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である(以下同様)。
【0020】
<(B)成分>
(B)成分は、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物であり、コンクリートの流動性の観点から、重量平均分子量は200000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、80000以下が更に好ましく、50000以下がより好ましい。また、重量平均分子量は1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、4000以上がさらに好ましく、5000以上がより好ましい。したがって、1000〜200000が好ましく、3000〜100000がより好ましく、4000〜80000が更に好ましく、5000〜50000がより更に好ましい。(B)成分のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0021】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行っても良い。また、中和で副生する水不溶解物を除去しても良い。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2〜1.4モルを用い、150〜165℃で2〜5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95〜0.99モルとなるようにホルマリンを85〜95℃で、3〜6時間かけて滴下し、滴下後95〜105℃で縮合反応を行う。要すれば縮合物に、水と中和剤を加え、80〜95℃で中和工程を行う。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0〜1.1モル倍添加することが好ましい。また中和による生じる水不溶解物を除去、好ましくは濾過により分離しても良い。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液はそのまま或いは他の成分を適宜添加して(B)成分して使用することができる。該水溶液の固形分濃度は用途にもよるが、(B)成分としては、30〜45重量%が好ましい。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩を得ることができ、これを粉末状の(B)成分として用いてもよい。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0022】
<(C)成分>
水硬性粉体とは、水と反応して硬化する性質をもつ粉体及び単一物質では硬化性を有しないが、2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する粉体をいう。水硬性粉体(C)としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)等のセメントが挙げられる。セメント以外の水硬性粉体として、下記に示す黒色微粉末を含む粉体以外の石膏等が含まれてよい。
【0023】
<(X)成分>
黒色微粉末とは、疎水性黒色系粒子であって、一般に未燃カーボンをいう。黒色微粉末を含む粉体(X)としては、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカヒュームからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。なお、(X)成分に該当する成分が(C)成分に配合されている場合、その量は(X)成分の量に算入するものとする。
【0024】
<骨材>
また、本発明の水硬性組成物は骨材を含有する。骨材として細骨材及び粗骨材が好ましい。骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。細骨材としては、山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、亜炭の含まれる細骨材を用いてもよい。また、粗骨材としては、山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。
【0025】
<その他の成分>
また、本発明の水硬性組成物は、材料分離の防止、又は環境面からリサイクルの目的で、水硬性粉体や黒色微粉末を含む粉体以外の粉体を含有することができる。水硬性粉体や黒色微粉末を含む粉体以外の粉体としては、炭カル、石粉、ゴミ焼却灰等が挙げられる。
【0026】
また、その他に、本発明に用いられる水硬性組成物は、AE剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、増粘剤、防水剤、消泡剤、収縮低減剤、膨張剤、水溶性高分子、界面活性剤等を含有することができる。
【0027】
<水硬性組成物の組成等>
本発明の水硬性組成物は、(C)成分と(X)成分との比率が、(C)/(X)=95/5〜20/80(体積比)であり、好ましくは90/10〜30/70、より好ましくは80/20〜40/60である。(C)/(X)の比率がこの範囲にあることで、コンクリート表面の黒ずみ抑制効果が顕著となる。
【0028】
また、本発明の水硬性組成物は、(C)成分と(X)成分の合計100重量部に対する(A)成分の含有量が0.02〜0.3重量部であり、好ましくは0.03〜0.25重量部、より好ましくは0.05〜0.2重量部である。(A)成分の含有量がこの範囲にあることで、優れた水硬性組成物の流動保持性を付与でき、コンクリート表面の黒ずみ抑制が可能となる。
【0029】
また、本発明の水硬性組成物は、初期流動性を任意に調整する観点から、(C)成分と(X)成分の合計100重量部に対する(B)成分の含有量が0.2〜1.5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.25〜1.0重量部、更に好ましくは0.3〜0.75重量部である。
【0030】
また、本発明の水硬性組成物においては、(A)成分と(B)成分の重量比率は、(A)/(B)=3/97〜45/55、更に5/95〜40/60、より更に10/90〜30/70であることが、水硬性組成物の流動保持性及びコンクリートの黒ずみ抑制の観点から好ましい。
【0031】
本発明に用いられる水硬性組成物の水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、水硬性粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕は、10〜60重量%、更に10〜50重量%、更に10〜40重量%、より更に10〜35重量%であってもよい。W/Pの値が小さいほど、水硬性組成物が有する低い粘性特性が顕著になるため、締め固め性の効果も顕著となる。なお、(X)成分のうち、水硬性を有する粉体は、(C)成分(水硬性粉体)としてW/Pの算出を行うものとする。従って、例えば(X)成分を含む(C)成分を用いる場合は、その量をそのまま水硬性粉体の量として用いてW/Pを算出できる。なお、(X)成分の量は、未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して最大330kgが好ましい。
【0032】
本発明の水硬性組成物は、細骨材及び粗骨材を含有するが、細骨材の含有量は、未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、600〜1100kg、更に650〜850kgであることが好ましい。また、粗骨材の含有量は、未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、800〜1200kg、更に900〜1100kgであることが好ましい。
【0033】
また、本発明の水硬性組成物では、細骨材率(s/a)が38〜55体積%、更に40〜50体積%であることが好ましい。s/aは、細骨材(S)と粗骨材(G)の体積に基づき、s/a=〔S/(S+G)〕×100(体積%)で算出されるものである。
【0034】
本発明の水硬性組成物は、(C)成分、(X)成分(例えば、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカヒューム等)、骨材(好ましくは、細骨材及び粗骨材)及び(A)成分と(B)成分を含む水を配合する方法により調製することができる。配合する場合はこれらを同時に混合してもよく、又は予め粉体だけを混合してから骨材を混合し更に水溶液を混合してもよく等、種々の配合方法をおこなうことができる。
【0035】
本発明の水硬性組成物は、コンクリートとして使用でき、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【実施例】
【0036】
〔(A)成分〕
(A)成分として以下の合成例の重合体を用いた。
【0037】
<合成原料>
・ヒドロキシエチルアクリレート:Aldrich(有効分96%)〔単量体(1)〕
・アクリル酸:Aldrich(有効分99%)
・メルカプトプロピオン酸:Aldrich
・ペルオキソ二硫酸アンモニウム:和光純薬工業(株)
【0038】
<合成例>
合成例1
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水84.2gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。アクリル酸(以下、AAと表記する)20.2gとヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと表記する)83.5gを混合し、単量体液を調製した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.3gをイオン交換水26.4gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸2.6gをイオン交換水25gに溶解し連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にして単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.3gをイオン交換水6.6gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH5の重合体A−1の水溶液を得た。
仕込み組成比:
AA/HEA=19.5/80.5(重量比)(HEA80.5重量%)
AA/HEA=28.0/72.0(モル比)
重量平均分子量:34500
AA:反応率97%(HPLC)
HEA:反応率98%(HPLC)
分子量の測定は以下のGPC条件で行った。
[GPC条件]
標準物質:ポリスチレン換算
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0039】
合成例2
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水85.6gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。AA11.7gとHEA92.1gを混合し、単量体液を調製した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.3gをイオン交換水25.2gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸2.5gをイオン交換水25gに溶解し連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にして単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.3gをイオン交換水6.3gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH5の重合体A−2の水溶液を得た。
仕込み組成比:
AA/HEA=11.3/88.7(重量比)(HEA88.7重量%)
AA/HEA=17.0/83.0(モル比)
重量平均分子量:30600
AA:反応率97%(HPLC)
HEA:反応率98%(HPLC)
GPCの測定条件は合成例1と同様である。
【0040】
合成例3
反応容器の4つ口フラスコにイオン交換水224.5gを仕込み、脱気後窒素雰囲気下にした。ペルオキソ二硫酸アンモニウム4.4gをイオン交換水90gに溶解し開始剤水溶液(1)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸10.2gをイオン交換水80gに溶解した連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を80℃にしてHEA280gの単量体液、開始剤水溶液(1)及び連鎖移動剤水溶液を同時に90分かけて滴下した。その後、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.6gをイオン交換水10gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分掛けて滴下し、更に80℃で60分間反応させた。反応終了後に常温にして、48%水酸化ナトリウム水溶液で攪拌しながら中和した。pH5の重合体A−3の水溶液を得た。
仕込み組成比:HEA100モル%(100重量%)
重量平均分子量:14200
HEA:反応率96%(HPLC)
GPCの測定条件は合成例1と同様である。
【0041】
〔(B)成分〕
(B)成分として、マイテイ150〔ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系混和剤、花王(株)製〕を用いた。これをB−1とした。
【0042】
〔コンクリートの調製及び評価〕
上記(A)成分、(B)成分を、表1の配合の成分に対して、表2の添加量で用いて、下記に示す方法で、コンクリートを調製し、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1中の使用材料は以下のものである。
W(水):水道水
C(セメント):普通ポルトランドセメント〔太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメント/住友大阪セメント製普通ポルトランドセメント=1/1(重量比)の混合セメント〕、密度3.16(g/cm3
S:細骨材、城陽産山砂、密度2.55(g/cm3
G:粗骨材、鳥形山産石灰砕石、密度2.72(g/cm3
FA:北陸電力製フライアッシュ2種、密度2.22(g/cm3
BS:住金鉱化製高炉スラグ、密度2.88(g/cm3
W/P=〔W/(C+FA+BS)〕×100(重量%)
FA、BSは、水硬性粉体に該当するため、これらの量もW/Pの算出に用いる。
【0045】
(性能評価)
(1)コンクリートのスランプフロー保持評価方法
60L練り二軸ミキサーに表1のコンクリート配合の30L分、全材料と表2の練り水に溶解した(A)成分、(B)成分を投入して120秒間混練りした。調製直後と30分後のコンクリートについて、スランプフローを測定した。下記の方法でスランプ保持率を算出した。
スランプ保持率(%)=(30分後のスランプフロー値/調製直後のスランプフロー値)×100
【0046】
(2)黒ずみの評価方法
60L練り二軸ミキサーに表1のコンクリート配合の30L分、全材料と表2の練り水に溶解した(A)成分、(B)成分を投入して120秒間混練りした。調製直後のコンクリートを縦60cm、横100cm、高さ20cmのブリキ容器に入れ、コンクリート表面を写真撮影し、目視観察により黒ずみ部分を判断し、写真の2値化を行い、画像解析で全面積に対する黒ずみ部分の面積を求め、黒ずみ面積率とした。なお、(B)成分のみを添加したコンクリートについても同様に黒ずみ量〔「黒ずみ量(B)」とする〕を判定した。この「黒ずみ量(B)」と、(A)成分及び(B)成分の両方〔比較例の一部は(B)成分のみ〕を用いた場合(表中、試験系と表記)の黒ずみ量〔「黒ずみ量(A)+(B)」とする〕とから、以下の式による黒ずみ抑制率で黒ずみ抑制の評価を行った。
黒ずみ抑制率(%)={(黒ずみ量(B))−(黒ずみ量(A)+(B))}/(黒ずみ量(B))×100
【0047】
【表2】

【0048】
表2中、C/FA/BSは粉体比率(体積比)であるが、水硬性粉体(C)には、Cが、黒色微粉末を含む粉体(X)にはFA、BSが該当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単量体由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体(A)〔以下、(A)成分という〕、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(B)〔以下、(B)成分という〕、水硬性粉体(C)〔以下、(C)成分という〕、黒色微粉末を含む粉体(X)〔以下、(X)成分という〕、骨材、及び水を含有する水硬性組成物であって、
(C)成分と(X)成分との比率が、(C)/(X)=95/5〜20/80(体積比)であり、
(C)成分と(X)成分の合計100重量部に対する(A)成分の含有量が0.02〜0.3重量部である、
水硬性組成物。
2C=CHCOOCH2CH2OH (1)
【請求項2】
骨材が細骨材及び粗骨材である請求項1記載の水硬性組成物。
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の重量比率が、(A)/(B)=3/97〜45/55である請求項1又は2記載の水硬性組成物。
【請求項4】
(C)成分と(X)成分の合計100重量部に対する(B)成分の含有量が0.2〜1.5重量部である請求項1〜3の何れか1項記載の水硬性組成物。
【請求項5】
(X)成分が、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカヒュームからなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜4の何れか1項記載の水硬性組成物。

【公開番号】特開2010−37130(P2010−37130A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200927(P2008−200927)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】